JP4129093B2 - 車両用電動式ステップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の乗降を容易にするための乗降口の下方に張り出し可能に設けられている車両用電動式ステップに関し、とくにステップを駆動する電動機が故障した場合に、張り出し状態のステップを手動で収納できる車両用電動式ステップに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用電動式ステップとしては、例えばステップが平行リンクを介して車両に支持され、平行リンクと駆動電動機の間にはロッド、レバーが連結されているものがある。電動機を駆動することによって、その回転軸に取り付けられているレバーが回転し、駆動力がロッドによってリンクに伝えられる。駆動力を受けたリンクは平行移動し、ステップを格納位置から車体の外方へ張り出させる。
【0003】
ステップの張り出し位置としては、ロッドとリンクの連結点とレバーの回転中心を結ぶ直線上のデッドポイントを、ロッドとレバーの連結点が通過した位置とされる。この位置では、ステップは若干の変動が可能であるものの、格納方向への移動は、レバーをさらに張り出し方向へ回転させるから、ストッパとの当接によって位置制限される。これにより電動機からの駆動力がなくとも、ステップの位置保持が行われる。
また収納するときは、電動機が反対の方向に回転し、リンクによってステップが格納位置に戻される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の車両用電動式ステップにあっては、ステップの張り出し位置がリンク機構におけるデッドポイントを過ぎた位置となっているので、電動機が故障した場合は、単にステップを押し戻そうとしてもロック状態となって格納できないという問題があった。
本実施例は、上記の問題点に鑑み、電動機が故障しても、車載の工具で簡単にステップを格納位置へ収納できるようにした車両用ステップを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため請求項1記載の発明は、移動部材によって車両に支持され、格納位置と張り出し位置の間を移動することができるステップと、車両に固定され回転軸にレバーが取り付けられた電動機と、前記レバーと前記移動部材またはステップの間にまたがって駆動力を伝達するロッドとを備え、前記レバーは前記ステップの移動に対応した範囲内に回動するものとされ、前記ロッドは前記レバーからの駆動力を前記移動部材あるいはステップに伝達するとともに、ロッドと前記移動部材あるいはステップとの連結点と、前記レバーの回動中心を結ぶ直線上のデッドポイントを、前記ロッドと前記レバーの連結点が通過した位置が、前記ステップの張り出し位置とされる車両用電動式ステップにおいて、前記ロッドあるいは前記レバーに係止部材が取り付けられ、該係止部材に車載工具を係止させ、手動で前記ロッドを格納方向へ変位させることができるようにしたものとした。
【0006】
ロッドまたはレバーに係止部材を設けることによって、車載工具を係止させ、ロッドを格納方向に変位させることができるから、電動機が故障しても、ロッドとレバーの連結点位置を、デッドポイントを過ぎるまで変位させれば、ステップが自由移動可能になり、格納位置へ押しさえすれば収納させることができる。
【0007】
また、ロッドとレバーの連結点を含む一定の範囲を車両外方から見えるように設定し、係止部材がこの連結点の近傍に設けられることが望ましい。これにより、位置を確認しながら、車載工具を係止させることができる。
さらに、ステップの張り出し位置に対するロッドとレバーの連結点位置が、デッドポイントより、車両の外方にある場合は、ロッドまたはレバーに滑り止めのための当接部材を設けて係止部材とすることが望ましい。
【0008】
ロッドとレバーの連結点がデッドポイントに対して車両の外方にある場合、レバーまたはロッドを押して、ステップを収納することになるから、滑り止めの当接部材を設けることによって、車載工具をロッドまたはレバーに係止する役割を果たすと同時に、構造が簡単で、加工コストが低下する。また、車載工具が滑ることがなくなるから、思わぬ怪我を防止する効果が得られる。
なお、ステップを支持する移動部材は、車両に搖動可能に取り付けられた複数のアームで構成される平行リンクであることが可能である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる車両用電動式ステップの実施例を図面を参照して説明する。図1は車両の下方から見た下面図で、図2は拡大した横断面図である。
車両用電動式ステップは、車両乗降口の下方にユニットとして取り付けられている。車両の乗降口の下方、サイドシル32の内側にボルトによってホルダ1が固定されている。ホルダ1にアーム2、アーム3、アーム4が回動可能に取り付けられている。各アームの先端にステップ12が回動可能に連結されている。ステップ12に対するアーム2およびアーム4の連結点は車体に対して比較的外側、アーム3の連結点は内側に設定され、3つの連結点が一直線にならない。これにより、ステップ12は常に水平の姿勢を保持するようになっている。ステップ12の上面に滑り止めが設けられている
【0010】
両側のアーム2、4は図1の下面図においてJ字型、中間のアーム3はI字型、図2の横断面図においてはアーム3が、図示しないアーム2、アーム3とともに車両の下方にL字型に折り曲げられ、移動時に他の部材と干渉することを避けるようにしてある。各アームの支点間の距離は同じものとし、平行リンクに形成されている。この平行リンクの回動による平行移動で、ステップ12が乗降口下部に引込んだ格納位置と車体外側へ張り出した張り出し位置の間を移動することが可能である。
【0011】
ホルダ1の略中央部にドライブユニット5が取り付けられている。ドライブユニット5は駆動用電動機と減速機などを含んでいる。ドライブユニット5の出力軸は垂直に車両の下方に延び、レバー6が取り付けられている。レバー6はドライブユニット5の出力軸を中心に回転し、その先端の連結点にロッド8の一端が回動可能に連結されている。ロッド8の他端はアーム2に固定されるブラケット7に連結されている。ロッド8のレバー6との連結点側には車両の外方に向けて突出する当接部材10が設けられている。この当接部材10を含めてロッド8とレバー6の連結点Cの近傍一定範囲が車両の横方向から見えるように設定される。またこの位置では、ステップ12の下方から、アーム2、アーム3の間を通り、車両工具21を当接部材10と当接させることもできるようになっている。これにより位置の確認をしながら、車載工具を当接部材に当接させることができる。
【0012】
ステップ12は、レバー6が回動することによって、張り出しまたは格納される。ホルダ1には、ステップ12の移動に対応して、レバー6の回動範囲を制限するストッパ9、9’が設けられている。またドライブユニットには、これに対応する図示しないリミットスイッチが設けられている。レバー6がストッパ9、9’に当たる前にリミットスイッチが電動機への給電を遮断するようになっている。ドライブユニットは電源線11によって図示しない操作スイッチと接続されている。
【0013】
図1は、ステップ12が張り出し位置にある状態を示しており、レバー6が図中時計まわりに回動して、レバー6とロッドの連結点Cが、図3に示すアーム2に固定されるブラケット7とロッド8との連結点Bとレバーの回転中心Dを結ぶ直線上のデッドポイントAを過ぎた位置にある。この状態では、レバーとロッドの連結点CがデッドポイントAを過ぎているため、ステップ12を外側から押しても、レバー6が若干時計方向へ回動して当接部材9と当接するだけで、格納されることはなく、張り出し位置に保持される。
ステップ12を格納する場合は、ドライブユニット5を駆動してレバー6を反時計方向まわりに回動させることにより、連結点Cは何らの障害なく、デッドポイントを通過するので、平行リンクのアームが回動して、格納位置へ戻すことができる。
【0014】
次に、張り出し位置において、電動機などが故障した場合には、ステップ12が位置保持されているから、ステップを手動で収納するには、レバーとロッドの連結点Cをデッドポイントを過ぎるまで戻さなければならない。
そこで、車載工具を図4に示すようにステップ12の下方からロッド8とレバー6との連結点と当接部材10の間に車載工具11を当てる。このとき、車載工具の先端位置を車両の横方向から確認することができる。
【0015】
ロッド8が斜めになっているために、工具21が滑っても、後方の当接部材10の方へ移動して図5に示すように当接することになる。車載工具21を、図3に示すようにロッドとレバーの連結点CがデッドポイントAを過ぎるまで押して、ロック状態を解除する。レバーの連結点CがデッドポイントAを過ぎれば、ステップが自由移動可能な状態になり、ステップ12を車両側に押すことによって、格納位置に収納させることができる。
【0016】
本実施例は以上のように構成され、ロッドのレバーとの連結点近くに当接部材を設けることによって、電動機が故障し、ドライブユニットからの駆動力でステップを収納できなくなる状況でも、車載工具でロッドに押すだけで、ステップを手動で格納位置に収納させることができる。
【0017】
上記実施例では、張り出し位置のステップに対するレバーとロッド連結点位置がデッドポイントより車両の外方にあることになっているが、連結点が車両の内側にあるものについても、車載工具を使うことができる。これについては第2の実施例により説明する。
図6は第2の実施例の構成を示す下面図である。ブラケット7がアーム2のホルダ1と連結する端の先端に固定されている。これにより、レバー6が図中時計まわりに回動して、ステップ12を張り出し位置にステップ12を張り出したとき、ロッド8とレバー3の連結点CがデッドポイントAより車両の内側になる。ストッパ9、9’はレバー6の回動範囲に対応した位置に設置される。その他は第1の実施例と同様である。
【0018】
このような構成では、電動機が故障し、手動でステップを格納位置に戻すとき、連結点Cを車両の外方へ変位させることが必要である。このため、第1の実施例で使用される当接部材に代えて、車載工具を引掛ける半円の係止部材20をロッド8のレバー6との連結点側に例えば溶接で固定する。手動でステップを収納するときに、図7に示すように車載工具21を係止部材20に引掛け、図6に示すデッドポイントAを過ぎるまで、レバー6とロッド8の連結点Cを引っ張れば、ステップ12を手動で収納することができる。
なお、上記各実施例では、ロッドをアームと連結してステップを駆動する構成のものをベースに説明したが、これに限らず、例えばロッドをステップと連結して、駆動をステップに対して行う構成のものでも、上記と同じ効果が得られるのはいうまでもない。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、レバーとロッドにより電動機からの駆動力を移動部材あるいはステップに伝え、ステップを移動させる車両用電動式ステップにおいてロッドあるいはレバーに係止部材を設けることにより、電動機などが故障して、張り出したステップを収納できなくなる状況でも、車載工具を係止部材に係止させ、レバーとロッドを格納方向に変位させることができる。これによってロック状態を解除することができ、手動でステップを収納させることができる。これにより、ステップを張り出した状態で車両を走行させざるを得ない状況が回避される。
【0020】
また、ステップが張り出し位置に対するロッドとレバーの連結点が、ロッドと移動部材あるいはステップとの連結点とレバーの回動中心を結ぶ直線に対して、車両の外方にある車両用電動式ステップについては、ロッドまたはレバーに滑り止めのための当接部材を設けて前記係止部材とすることにより、構造が簡単で、殆どスペースを要せず、従来のものに大幅な改造を施すことなく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両の下方から見た車両用電動式ステップの下面図である。
【図2】車両用電動式ステップの構成を示す拡大横断面図である。
【図3】デッドポイントの位置を示す説明図である。
【図4】張り出したステップを車載工具で格納位置に戻すときの作業図である。
【図5】車載工具を当接部材に当てた状態を示す拡大図である。
【図6】第2の実施例を示す図である。
【図7】第2の実施例における係止部材に車載工具を引掛ける様子を示す図である。
【符号の説明】
1 ホルダ
2、3、4 アーム
5 ドライブユニット
6 レバー
7 ブラケット
8 ロッド
9、9’ ストッパ
10 当接部材(係止部材)
20 係止部材
21 車載工具
32 サイドシル
A デッドポイント
B、C 連結点
D 回動中心
Claims (4)
- 移動部材によって車両に支持され、格納位置と張り出し位置の間を移動することができるステップと、車両に固定され回転軸にレバーが取り付けられた電動機と、前記レバーと前記移動部材またはステップの間にまたがって駆動力を伝達するロッドとを備え、前記レバーは前記ステップの移動に対応した範囲内に回動するものとされ、前記ロッドは前記レバーからの駆動力を前記移動部材あるいはステップに伝達するとともに、ロッドと前記移動部材あるいはステップとの連結点と、前記レバーの回動中心を結ぶ直線上のデッドポイントを、前記ロッドと前記レバーの連結点が通過した位置が、前記ステップの張り出し位置とされる車両用電動式ステップにおいて、
前記ロッドあるいは前記レバーに係止部材が取り付けられ、該係止部材に車載工具を係止させ、手動で前記ロッドを格納方向へ変位させることができるようにしたことを特徴とする車両用電動式ステップ。 - 前記ロッドと前記レバーの連結点を含む一定の範囲を車両の外方から見えるように設定し、前記係止部材が前記連結点の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用電動式ステップ。
- 前記ステップの張り出し位置に対する前記ロッドと前記レバーの連結点位置が、前記デッドポイントより、車両の外方にある場合は、前記ロッドまたは前記レバーに滑り止めのための当接部材を設けて前記係止部材とすることを特徴とする請求項1または2記載の車両用電動式ステップ。
- 前記移動部材は、車両に搖動可能に取り付けられた複数のアームで構成される平行リンクであることを特徴とする請求項1、2または3記載の車両用電動式ステップ。
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