JP4128159B2 - 固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法 - Google Patents

固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法に関する。
燃料電池用のガス拡散層として、カーボンペーパやカーボンクロスなどのカーボン繊維を基材としてシート状に形成したものが広く使用されている。そしてガス拡散層としての性能を得るために、これらの基材に導電性を高めるための導電処理や撥水性を施すための撥水処理がなされている。しかしながらこれらの基材は、高コストであるため、燃料電池用のガス拡散層として用いた場合に、燃料電池は高価格となり、実用化に障害となる問題があった。
この問題を解決する手段として、特許文献1に開示されているように、カ一ボン繊維及びパルプを主要成分とする液状物であるスラリーを形成し、スラリーに含まれている固形分を堆積させることによりシートを成形し、その後、撥水性を有する高分子材料(PTFE等)をシートの内部に含浸させ、その後、シートを加熱保持することにより、シートに含有されているパルプを消失させてパルプ跡を細孔とし、これにより多孔質のカーボンシートを形成する方法が近年提案されている。このカーボンシートは、撥水性を有する高分子材料(PTFE等)により、カーボン繊維を結合するため、カーボン繊維の結合に柔軟性を有する。従ってこのカーボンシートは、ロール状に巻き取れる柔軟性を有する利点をもち、このためロール搬送性を有し、生産性に優れている。
特開2000−136493号公報
上記したカーボンシートによれば、カーボン繊維の結合に柔軟性があり、カーボンシートをロール状に巻き取れる柔軟性を有する反面、カーボンシートをガス拡散層としてセパレータと共に燃料電池として組み込んだとき、カーボンシートで形成されたガス拡散層の内部に存在する細孔が圧潰されることがある。
更に説明を加える。図7は、このカーボンシートをガス拡散層として使用する形態を模擬的に示す。図7に示すように、燃料電池として組みこんだとき、上記したカーボンシートからなるガス拡散層100Xをセパレータ200Xにより圧力を加えて挟む。このため、セパレータ200Xのガス流路210Xを形成する凸部220Xにより、ガス拡散層100Xは加圧される。故に、ガス拡散層100Xのうち、セパレータ200Xの凸部220Xに対面する領域110Xにおいて、内部の細孔111Xが潰れる頻度が高くなるおそれがある。
ここで、ガス拡散層100Xの内部に形成されている細孔111Xは、燃料ガスまたは酸化剤ガスといった反応ガスを供給する機能と、発電反応により発生した水を排出させる機能とを有する。このため細孔111Xが潰れる頻度が高いと、上記した機能が低下し、燃料電池の目標とする発電性能が得られにくいという不具合がある。
更に、上記したカーボンシートで形成されたガス拡散層100Xは前述したように厚み方向に柔軟性があるため、セパレータ200Xによりガス拡散層100Xが挟圧されると、図7に模擬的に示すように、ガス拡散層100Xの一部102Xがセパレータ200Xのガス流路210X内に膨出し、セパレータ200Xのガス流路210Xの流路断面積を目標流路断面積よりも過剰に小さくするおそれがある。この場合、セパレータ200Xのガス流路210Xを介してのガス供給性が充分でなくなるおそれがある。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、ガス拡散層の細孔が過剰に潰れたり、セパレータのガス流路の流路断面積が過剰に小さくなることを抑制するのに有利な固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法を提供することを課題とする。
本発明に係る固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法は、未硬化または半硬化状態で且つ固形状の熱硬化性樹脂と導電性を有する導電物質と消失可能な消失物質とを主要成分として含有する液状物を用意する工程と、液状物における固形状の熱硬化性樹脂、導電物質および消失物質の固形分を液状物の液分から分離して堆積させることにより、導電物質および消失物質を主要成分とすると共に固形状の熱硬化性樹脂を含むシートを形成するシート形成工程と、
撥水材をシートに含浸させ、その後、
シートに含まれている消失物質を消失させて前記シートの内部に細孔を形成してガス拡散性を有すると共に、導電物質、固形状の熱硬化性樹脂および撥水材を含むガス拡散層を形成する細孔形成工程とを順に実施する固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法であって、
細孔形成工程は、シートを加熱保持することによりシートに含まれている消失物質を燃焼により消失させて細孔を形成し、併せて、シートに含まれている未硬化または半硬化状態の固形状の熱硬化性樹脂を熱硬化させるものであり、
細孔形成工程後のガス拡散層に担持されている熱硬化された固形状の熱硬化性樹脂は、撥水材よりも硬くなることを特徴とするものである。
液状物に含まれている固形状の樹脂はガス拡散層に担持される。このようなガス拡散層は適度な柔軟性を有しつつも、適度に硬くなる。ガス拡散層がセパレータで挟圧されるとき、ガス拡散層の細孔が潰れにくくなる。
本発明方法によれば、液状物に含まれている未硬化または半硬化状態の固形状の熱硬化性樹脂を熱硬化させた樹脂は、ガス拡散層に担持されている。この樹脂を担持したガス拡散層は、この樹脂を担持しない場合に比較すると、適度に硬くなる。このためガス拡散層をセパレータで挟圧するときであっても、ガス拡散層の内部に形成されている細孔が過剰に潰れることを抑制することができる。更に、ガス拡散層をセパレータで挟圧するときであっても、セパレータの形成されているガス流路の流路にガス拡散層の一部が膨出することを抑制することができる。ひいてはガス流路が過剰に小さくなることを抑制することができる。
ところで、液状の樹脂をシートに含浸させた後に硬化させる方法も考えられる。しかしこの方法では、含浸されて硬化した樹脂がシートの内部の細孔を塞ぎ、細孔容積を減少させる頻度が高くなる不具合が生じるおそれがある。シートの細孔は前述したようにガス流路、水排出路として機能することができるため、シートの細孔を減少させることは好ましくない。更に、液状樹脂を含浸させた後に硬化させる方法では、カーボン繊維の表面を液状の樹脂が被覆した状態で硬化するおそれがある。この場合、カーボン繊維の導電性を損なう不具合が生じる。この点本願発明方法のように出発原料としての液状物に固形状の樹脂を含有させておけば、細孔を形成する前のシートに固形状の樹脂が担持されるため、上記した不具合が抑制される。
本発明方法によれば、未硬化または半硬化状態で固形状の熱硬化性樹脂と導電性を有する導電物質と消失可能な消失物質とを主要成分とする液状物を用意する工程と、液状物の液分から固形分を分離することにより、未硬化または半硬化状態で且つ固形状の熱硬化性樹脂と導電物質および消失物質を主要成分とするシートを固形分の堆積により形成するシート形成工程と、シートに含まれている消失物質を消失させてシート内部に細孔を形成する細孔形成工程とを順に実施する。細孔形成工程においては、シートを加熱保持することによりシートに含まれている消失物質を燃焼により消失させて細孔を形成し、併せて、シートに含まれている未硬化または半硬化状態の熱硬化性樹脂を熱硬化させる。
更に、シート形成工程と細孔形成工程との間に、撥水材をシートに含浸させる含浸工程を実施する。撥水材はガス通路が水で塞がれることを抑制する機能を有する。撥水材としては4フッ化エチレン(PTFE)、4フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE)、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)等のフッ素樹脂が例示される。
出発原料としての液状物に含有される導電性を有する導電物質としては、繊維状でも粒子状でも良い。導電物質としては、耐食性、導電性等を考慮すると、一般的には炭素系を用いることができる。炭素系としてはカーボン繊維、カーボン粒子等を例示することができる。カーボン繊維等の導電繊維としては、径が2〜50μm、殊に7〜18μm、長さが1〜50mm、殊に3〜24mmのものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
液状物に含有される消失可能な消失物質としては、加熱により焼失して細孔を形成する有機物質を採用できる。このような有機物質としてはパルプ等の植物系有機物質が例示される。パルプは抄紙の際にカーボン繊維等の導電物質を捕獲するのに有利である。パルプは上記した捕獲性及び吸水性を有する。出発原料としての液状物は固形状の樹脂を含む。液状物に含まれている固形状の樹脂は、カーボン繊維等の導電物質と共にシートに担持される。液状物に含まれている樹脂としては、主鎖が炭素−炭素結合を有するもの、主鎖が炭素と非炭素元素との結合を有するもの、主鎖が炭素とベンゼン環との結合を有するもの等を例示でき、熱硬化性樹脂を採用する
出発原料としての液状物に含有される熱硬化性樹脂としては、熱硬化前の状態とすることができる。焼成等の加熱処理が後工程としてシートに施されるときには、硬化反応が終了していない未硬化の熱硬化性樹脂を液状物に配合しておき、熱硬化性樹脂をシートに担持させ、その後、後工程である加熱処理により熱硬化性樹脂をシート内で硬化させる方法を採用する。シートに担持されたパルプ等の消失物質を燃焼により消失させる加熱処理が施されるとき、この加熱処理と同時に熱硬化性樹脂を熱硬化させる。この場合、熱硬化性樹脂を熱硬化させる工程を特に設けずとも良い。但し、シート厚み、シート内の気孔率、シートの表面状態をより制御したい場合には、加熱処理の前に熱プレス処理を行っても良い。熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を用いるときには、温度160〜200℃、プレス圧力2〜10MPa、プレス時間1〜10分間の熱プレス処理を例示できる。
熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などを採用することができる。
上記した液状物に含有されている樹脂(熱硬化性樹脂)としては、粉末粒子状である形態を採用することができる。粒径としては適宜選択できるが、2〜20μm、10〜50μm、20〜100μmとすることができる。粒径が過小であれば、ガス拡散層の硬度調整には限界がある。粒径が過剰であれば、ガス拡散層に表面凹凸を形成するおそれがある。
樹脂が粉末粒子状であれば、カーボン繊維等の導電物質を樹脂で覆うことが抑制され、ひいては導電物質の導電性を低下させることが抑制される。なお、液状の樹脂をシートに含浸させるときには、カーボン繊維等の導電物質を覆う面積が増加し、カーボン繊維等の導電物質の導電性を低下させるおそれがある。
本発明方法によれば、細孔形成工程は、シートを加熱保持することによりシートの消失物質を燃焼により消失させて細孔を形成する工程であり、併せて、シートの未硬化または半硬化状態の熱硬化性樹脂を熱硬化させる形態を採用する。この場合、熱硬化性樹脂を熱硬化させる工程をあえて新設せずとも良い。
以下、本発明の実施例について図1〜図6を参照しつつ具体的に説明する。
(実施例)
カーボン繊維(導電物質)の短繊維〈代表的な大きさとしては、径13μm、長さ3ミリメートル)と、パルプ(消失物質)と、熱硬化性樹脂として固形の粉末状のフェノール樹脂(カネボウ株式会社 ベルパールS890)とを、所定の比率で容器内の水に混合し、水中で叩解することにより、カーボン繊維とパルプと粉末状のフェノール樹脂とを均一に分散させた抄紙用スラリー10(液状物)を作製した。フェノール樹脂は硬化反応が済んでいない未硬化のものであり、平均粒子径が20〜30μm、形状は球状とした。所定の比率としては、重量比で、カーボン繊維:パルプ:フェノール樹脂=6:2:2とした。
その抄紙用スラリー10を網状部材により抄紙処理した。即ち、抄紙用スラリーに含まれている固形分と液分とを網状部材により分離し、厚さ約0.3ミリメートルの薄状シート20を製造した(図4参照)。従って、薄状シート20は、カーボン繊維とパルプと熱硬化性樹脂として固形の粉末粒子状のフェノール樹脂とを主要成分とする。抄紙処理の際に、抄紙用スラリー10にパルプが含有されていないときには、カーボン繊維及び固形の粉末状のフェノール樹脂の捕獲は困難となる。抄紙用スラリー10にパルプが含有されているため、カーボン繊維及び固形の粉末状のフェノール樹脂が薄状シート20に担持される。従ってパルプは捕獲促進物質として機能することができる。
図3は、抄紙で形成した薄状シート20をロール搬送している途中状態を示す。このように薄状シート20は、製造工程では、複数のロール500間を曲成されつつ搬送される。このとき、薄状シート20に担持されているフェノール樹脂は硬化反応が終了していないため、薄状シート20は硬化反応後よりも柔軟性に富む。このため薄状シート20をロール500間で曲走させて容易にロール搬送することができる。
本実施例では、導電物質であるカーボンブラック(バルカンXC−72)と撥水材(PTFE分散液 ダイキン工業 D−1)とを重量比で2:1で混合分散して形成したペーストを用いた。このペーストを上記薄状シート20にこれの表面から内部にロールコートにより含浸させた(図4参照)。その後、ペーストを含浸させた薄状シート20を乾燥させた後、所定の温度(380℃)にて加熱保持し、焼成した。焼成により、薄状シート20の内部に含まれているパルプを焼失(消失)させて、パルプの跡を細孔22とした(図5参照)。パルプは繊維状であるため、パルプ跡である細孔22は基本的にはパルプの担持形態に対応する形状となり、ガス透過性が良好な連続孔になると推察される。また焼成により、粉末粒子状のフェノール樹脂が薄状シート20内で熱硬化する。熱硬化したフェノール樹脂は、薄状シートに担持されている撥水材(PTFE)よりも硬いものである。
その後、薄状シート20をホットプレスにより厚み方向に加圧した。これにより厚みが面内で均一になるように調整し、実施例に係る多孔質性をもつガス拡散層100を形成した。このガス拡散層100は、基本的には、導電物質であるカーボン繊維、導電物質であるカーボンブラック、撥水材(PTFE)、熱硬化したフェノール樹脂を主要成分とする。
以上説明したように本実施例によれば、出発原料としての抄紙用スラリー10(液状物)にはカーボン繊維及びパルプの他に、固形の粉末粒子状のフェノール樹脂が含有されている。従って、ガス拡散層100となる薄状シート20に、固形の粉末粒子状のフェノール樹脂を担持させることができる。故に、液状樹脂をシートの内部に含浸させる方式を採用せずとも良い。従って、導電性を有するカーボン繊維を樹脂が広い面積で覆うことが抑制され、ガス拡散層100の導電性を確保するためのカーボン繊維の導電性が良好に維持される。
更に、当該フェノール樹脂を担持するカーボンシートでガス拡散層100が形成されているため、ガス拡散層100の必要以上の柔軟性を低下させ、ガス拡散層100を適度な硬さとさせることができる。
図1は、セパレータ200とともにガス拡散層100を燃料電池に組み込まれている状態を模擬的に示す。図1に示すように、カーボンシートからなるガス拡散層100と電解質膜400との間には触媒層410,420が配置されている。触媒層410,420は、白金等の触媒物質、カーボンブラックなどの電子伝導性物質および電解質物質を含む。図1に示すように、カーボンシートからなるガス拡散層100は、厚み方向の両側からセパレータ200により挟圧されている。この場合、セパレータ200のガス流路210を形成する凸部220が形成されており、凸部220の先端面220aによりガス拡散層100がこれの厚み方向に加圧されている。ここで、カーボンシートからなるガス拡散層100は熱硬化反応が終了した熱硬化性樹脂を含有しており、適度な硬さを備えている。このため、ガス拡散層100のうち、セパレータ200の凸部220に対面する領域101において、内部の細孔22が潰れるおそれが抑制される。
ここで、ガス拡散層100の内部に形成されている細孔22は、燃料ガスや酸化剤ガス等の反応ガスを通過させるガス透過機能と、発電反応により発生した水を排出させる水排出機能とを有する。本実施例では、細孔22の過剰潰れが抑制されるため、上記したガス透過機能及び水排出機能の双方が良好に確保され、燃料電池の発電性能が向上する。
更に、カーボンシートで形成されたガス拡散層100は熱硬化性樹脂により厚み方向に適度な硬さとされているため、セパレータ200によりガス拡散層100が厚み方向に挟圧されるときであっても、図7に示す従来形態と異なり、ガス拡散層100の一部がセパレータ200のガス流路210内に膨出することが抑制される。故に、セパレータ200のガス流路210の流路断面積を確保するのに有利となる。従って、セパレータ200のガス流路210を介してのガス供給性が良好に確保される。
更に本実施例によれば、薄状シート20に含まれているパルプを消失させて細孔22を形成する加熱処理(焼成)を行うと同時に、硬化前の熱硬化性樹脂の粒子を熱硬化させることができる。このため工程数の増加もなく、コスト低廉化に有利である。加えて本実施例によれば、パルプを消失させて細孔22を形成する加熱処理(焼成)を行うと同時に、硬化前の熱硬化性樹脂の粒子を熱硬化させるため、加熱処理(焼成)を実施するまでは熱硬化性樹脂は硬化反応が終了していない。故に、加熱処理(焼成)を実施する前の薄状シート20は良好な柔軟性を有している。よって、従来の抄紙法の利点であるロール搬送性が確保され、生産性が確保される。
(比較例)
比較例は基本的には実施例と同様に製造した。但し、比較例に係る抄紙用スラリーはフェノール樹脂の粉末粒子を含有していない。比較例では、まず、カーボン繊維であるカーボンファイバーの短繊維(代表的な大きさは径13μm、長さ3ミリメートル)とパルプとを所定の比率(6:4)で混合し、水中で叩解することによりカーボン繊維とパルプとを均一に分散させた抄紙用スラリーを作製した。その抄紙用スラリーを網状部材に抄紙処理し、抄紙用スラリーに含まれる液分と固形分とを分離し、上記実施例と同様に、厚さ約0.3ミリメートルの薄状シートを製造した。そしてカーボンブラック(バルカンXC−72)と撥水材(PTFE分散液ダイキン工業 D−1)とを重量比で2:1で混合分散したペーストを用い、このペーストを上記薄状シートにこれの表面からロールコートにより含浸し、乾燥後380℃にて焼成し、薄状シートに含まれているパルプを焼失(消失)させた。その後、シートをホットプレスし、厚みが面内で均一になるように調整し、比較例に係るカーボンシートを得た。
(発電性能)
上記した様な方法で得られたガス拡散層を電極として実施例及び比較例の燃料電池について、基本的に同一の条件で発電性能を評価した。燃料電池の発電性能の評価のために、12cm×12cmの電極サイズを有する膜電極接合体を作製した。そして膜電極接合体を2個のセパレータで厚み方向に挟んで組み付けた(図1参照)。セパレータはカーボン焼成品を用いた。セパレータのガス流路はストレート状である。得られたI−V特性を図6に示す。図6の横軸は電流密度(相対表示)、図6の縦軸は電圧(相対表示)を示す。図6に示すように実施例は比較例に比べて発電性能が良好であった。
(その他)
温度,処理時間,プレス圧力等の熱処理条件を検討すれば、熱可塑性材料であるポリフェニレンサルファイド(PPS),ポリエーテルサルフォン(PES),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)といった樹脂材料等も使用可能である。
上記した実施例では、出発原料としての抄紙用スラリー10に含有されているフェノール樹脂は硬化反応が済んでいない未硬化のものであるが、場合によっては、半硬化状態のものとしても良い。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
[付記項1]
導電性を有する導電物質と消失可能な消失物質とを主要成分とする液状物を用意する工程と、前記液状物から固形分を分離して堆積させることにより、前記導電物質および前記消失物質を主要成分とするシートを形成するシート形成工程と、前記シートに含まれている前記消失物質を消失させて前記シートの内部に細孔を形成してガス拡散性を有するガス拡散層を形成する細孔形成工程とを順に実施する固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法であって、前記液状物は固形状の樹脂を含み、前記液状物に含まれている樹脂を前記ガス拡散層に担持させることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法。樹脂は熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でも良い。熱可塑性樹脂であれば、焼成等の加熱処理を考慮すると、耐熱温度が比較的高いものを採用することができる。熱可塑性材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS),ポリエーテルサルフォン(PES),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂材料等も使用可能である。後工程で加熱処理されないとき、あるいは、加熱処理されたとしても加熱温度が低いときには、一般的な熱可塑性樹脂を採用することができる。
本発明は固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法に利用することができる。
実施例に係るガス拡散層を組みこんだ燃料電池を模式的に示す断面図である。 カーボン繊維、パルプ、固形の粉末状のフェノール樹脂とを配合して抄紙用スラリーを形成している過程を模式的に示す構成図である。 薄状シートをロール搬送している状態を示す構成図である。 カーボンブラックおよび撥水材を含むペーストを薄状シートに表面から含浸させている形態を模式的に示す構成図である。 細孔を有するカーボンシートで形成されたガス拡散層を示す構成図である。 実施例に係るガス拡散層を組み込んだ燃料電池と、比較例に係るガス拡散層を組み込んだ燃料電池とを用いて発電試験を行った結果を示すグラフである。 従来技術に係るガス拡散層を組みこんだ燃料電池を模式的に示す断面図である。
符号の説明
図中、100はガス拡散層、200はセパレータ、210はガス流路、220は凸部、10はスラリー、20は薄状シート、22は細孔を示す。

Claims (2)

  1. 未硬化または半硬化状態で且つ固形状の熱硬化性樹脂と導電性を有する導電物質と消失可能な消失物質とを主要成分として含有する液状物を用意する工程と、
    前記液状物における前記固形状の熱硬化性樹脂、前記導電物質および前記消失物質の固形分を前記液状物の液分から分離して堆積させることにより、前記導電物質および前記消失物質を主要成分とすると共に前記固形状の熱硬化性樹脂を含むシートを形成するシート形成工程と、
    撥水材を前記シートに含浸させ、その後、
    前記シートに含まれている前記消失物質を消失させて前記シートの内部に細孔を形成してガス拡散性を有すると共に、前記導電物質、前記固形状の熱硬化性樹脂および前記撥水材を含むガス拡散層を形成する細孔形成工程とを順に実施する固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法であって、
    前記細孔形成工程は、前記シートを加熱保持することにより前記シートに含まれている前記消失物質を燃焼により消失させて細孔を形成し、併せて、前記シートに含まれている未硬化または半硬化状態の前記固形状の熱硬化性樹脂を熱硬化させるものであり
    前記細孔形成工程後の前記ガス拡散層に担持されている熱硬化された前記固形状の熱硬化性樹脂は、前記撥水材よりも硬くなることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法。
  2. 請求項1において、前記液状物に含まれている前記樹脂は粉末粒子状であることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池のガス拡散層の製造方法。
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