JP2004079406A - ガス拡散電極の製造方法及び燃料電池 - Google Patents

ガス拡散電極の製造方法及び燃料電池 Download PDF

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Abstract

【解決手段】(A)導電性粉末50〜90質量%、(B)カーボンファイバー5〜50質量%、(C)有機繊維3〜40質量%、及び(D)樹脂5〜40質量%を合計で100質量%となるように配合してなる固形分を含むスラリーを抄紙し、得られた抄紙体を加熱乾燥することを特徴とするガス拡散電極の製造方法。
【効果】本発明のガス拡散電極は良好な可とう性を有するため、ロール状に巻き取ることができ、連続生産が可能である。また、該拡散電極は燃料電池用ガス拡散電極に求められる体積固有抵抗値や熱伝導率、ガス透過率を有し、且つ電極製造時や電池作成時の加圧により壊れることがない。
本発明のガス拡散電極の製造方法は、製造工程が簡易的であるため製造コストを抑制することが可能であり、工業的に有用なものである。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンドリング性に優れた、燃料電池用として有効に用いられるガス拡散電極の製造方法、及び該ガス拡散電極を用いてなる燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
燃料電池の電極基材には、集電機能や電極反応に関与する物質の拡散・透過性といった基本的な特性に加え、電極基材の安定生産を可能とするため、ハンドリング性が必要とされる。
【0003】
特開平10−36179号公報や特開平11−185771号公報には、炭素繊維あるいは有機繊維からなる不織布もしくは抄紙体を熱硬化性樹脂に含浸し、その後硬化、焼成することによりガス拡散電極を製造する技術が開示されている。しかしながら、これらの従来技術では材料を焼成・炭化させるため、得られたガス拡散電極には可とう性が少なく、ハンドリング性について尚改良の余地があった。
【0004】
また、特開2000−299113号公報には、粒子状及び繊維状の導電性物質を、結合剤を含む水溶液中に分散させ、抄紙し、粗なる構造あるいは密なる構造を有する2種の抄紙体を製造し、この2種の抄紙体を重ねてプレスすることにより、電気抵抗が低く、ガス透過性が良好であって、加圧時にも壊れにくいガス拡散電極を製造する技術が開示されている。しかしながら、該拡散電極は粗密構造を有する2種の抄紙体から調製するため、製造工程が煩雑となる場合があり、より簡便に、燃料電池用ガス拡散電極を得る方法が求められていた。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、体積固有抵抗値や熱伝導率、ガス透過率を保持し、かつ優れたハンドリング性を有するガス拡散電極の製造方法、並びに、該ガス拡散電極を用いてなる燃料電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、特定の配合比で導電性粉末、カーボンファイバー、有機繊維、樹脂を含むスラリーを抄紙し、これを加熱乾燥することにより得られたガス拡散電極が、燃料電池用ガス拡散電極に求められる体積固有抵抗値や熱伝導率、ガス透過率を有し、かつ良好な可とう性を有するため、ハンドリング性に優れるガス拡散電極であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記のガス拡散電極の製造方法及び燃料電池を提供するものである。
請求項1:
(A)導電性粉末50〜90質量%、(B)カーボンファイバー5〜50質量%、(C)有機繊維3〜40質量%、及び(D)樹脂5〜40質量%を合計で100質量%となるように配合してなる固形分を含むスラリーを抄紙し、得られた抄紙体を加熱乾燥することを特徴とするガス拡散電極の製造方法。
請求項2:
上記導電性粉末の平均粒径が、10〜100μmであることを特徴とする請求項1記載のガス拡散電極の製造方法。
請求項3:
上記カーボンファイバーの繊維長が、0.1〜20mmであることを特徴とする請求項1又は2記載のガス拡散電極の製造方法。
請求項4:
上記加熱乾燥を、連続式乾燥機を用いて行なう、請求項1乃至3のいずれか1項記載のガス拡散電極の製造方法。
請求項5:
請求項1〜4のいずれか1項記載のガス拡散電極の製造方法により得られるガス拡散電極を用いてなる燃料電池。
【0008】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のガス拡散電極の製造方法は、(A)導電性粉末、(B)カーボンファイバー、(C)有機繊維、(D)樹脂を含むスラリーを抄紙し、得られた抄紙体を加熱乾燥することを特徴とするものである。
【0009】
本発明における(A)導電性粉末としては、電極として優れた電気伝導性を発現可能な導電性物質であれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、活性炭等が挙げられ、導電性、柔軟性の観点から、中でも膨張黒鉛が好適に用いられる。
【0010】
本発明におけるスラリー中の固形分のうち、上記導電性粉末の含有量としては、通常50質量%以上、好ましくは55質量%以上、上限として通常90質量%以下、好ましくは80質量%以下である。導電性粉末の含有量が少なすぎると、電極として必要な電気伝導性を得ることが困難な場合があり、導電性粉末の含有量が多すぎると、電極の強度が低下する場合や、抄紙性が悪くなって均一な品質を有する電極を得ることが困難となる場合がある。
また、上記導電性粉末の平均粒径としては、通常10μm以上、好ましくは30μm以上、上限として通常100μm以下、好ましくは80μm以下である。平均粒径が上記範囲を逸脱すると、スラリーの抄紙が困難となる場合がある。尚、本発明において平均粒径とは、レーザー回析式粒度分析計(Microtrac)により測定した値をいう。
【0011】
本発明における(B)カーボンファイバーとしては、電極強度の向上、ハンドリング性の向上、電気伝導性の向上が可能なカーボンファイバーであれば特に限定されるものではないが、例えばPAN系カーボンファイバー、ピッチ系カーボンファイバー、フェノール系カーボンファイバー等が挙げられ、圧縮強さ、引張破断伸度の大きさの観点から、中でもPAN系カーボンファイバーが好適に用いられる。
【0012】
本発明におけるスラリー中の固形分のうち、上記カーボンファイバーの含有量としては、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、上限として通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。カーボンファイバーの含有量が少なすぎると、電極の強度が不十分となると共に、電極としての充分な電気伝導性を得ることが困難となる場合がある。カーボンファイバーの含有量が多すぎると、抄紙性が悪くなって均一な品質を有する電極を得ることが困難となる場合がある。
また、上記カーボンファイバーの繊維長としては、通常0.1mm以上、好ましくは3mm以上、上限として通常20mm以下、好ましくは12mm以下である。カーボンファイバーの繊維長が長すぎると、繊維どうしが絡まりあって水への分散性が悪くなる場合があり、その結果、均一な電極を得ることが困難となる場合がある。一方、繊維長が短すぎると、電極の強度や電極の可とう性が損なわれる場合がある。
上記カーボンファイバーの繊維径としては、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、上限として通常20μm以下、好ましくは8μm以下である。カーボンファイバーの繊維径が大きすぎると厚さ方向への電気伝導性が低下する場合があり、繊維径が小さすぎると、電極の強度が低下する場合がある。
【0013】
なお、上記カーボンファイバーは、予め解繊機で綿状に解繊した後に、他の材料と配合することが好ましい。予め解繊機で綿状に解繊することにより、他の配合成分と同時に水中で一括配合した場合であっても、カーボンファイバーは水中に良好に分散し、均一な品質のガス拡散電極を得ることが可能となる。
【0014】
本発明における(C)有機繊維としては、スラリーの抄紙性を向上させることができ、導電性粉末を保持可能で300℃以下での加熱時に溶解しないものであれば特に限定されるものではないが、例えば木材パルプ、アラミド繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられ、耐薬品性、耐熱性の観点から、中でもアラミド繊維が好適に用いられる。
上記有機繊維の繊維長としては、通常0.1mm以上、好ましくは3mm以上、上限として通常20mm以下、好ましくは12mm以下である。有機繊維の繊維長が長すぎると、繊維どうしが絡まりあって水への分散性が悪くなる場合があり、その結果、均一な電極を得ることが困難となる場合がある。繊維長が短すぎると、電極の強度が低下する場合や、導電性粉末を保持する効果が損なわれるため、電気伝導性が悪くなる場合がある。
【0015】
本発明におけるスラリー中の固形分のうち、上記有機繊維の含有量としては、通常3質量%以上、好ましくは5質量%以上、上限として通常40質量%以下、好ましくは20質量%以下である。有機繊維の含有量が少なすぎると、電極の強度が不十分となったり、抄紙性が悪くなって均一な品質を有する電極を得ることが困難となる場合がある。有機繊維の含有量が多すぎると、電極としての充分な電気伝導性を得ることが困難となる場合がある。
【0016】
本発明における(D)樹脂としては、加熱温度300℃以下にて溶融し材料同士を結着させる能力があり、かつガス拡散電極の可とう性を向上可能な樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えばフェノール樹脂,エポキシ樹脂,メラミン樹脂,不飽和ポリエチレン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリビニルアルコール,ポリエチレン樹脂,ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、ゴムやエラストマー等が挙げられ、可とう性、ハンドリング性の観点から、中でも熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
【0017】
本発明におけるスラリー中の固形分のうち、上記樹脂の含有量としては、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、上限として通常40質量%以下、好ましくは25質量%以下である。樹脂の含有量が少なすぎると、ガス拡散電極のハンドリング性が低下し、カーボンの脱落が多くなる場合があり、樹脂の含有量が多すぎると、電極としての充分な電気伝導性を得ることが困難となる場合がある。
上記樹脂の形態には液状、粒状、繊維状のものがあるが、抄紙性や、抄紙時に出る排水の問題を鑑み、繊維状のものが好ましい。
【0018】
本発明における抄紙方法は、特に限定されるものではなく、公知の種々の方法を用いることができるが、例えば、各成分を含むスラリーを多数の吸引孔が形成された吸引成形型により吸引し、吸引成形型の表面に上述成分を堆積させる方法(吸引成型法)等を採用することが可能である。吸引成形法により得られる吸引成形体の密度は、吸引圧により容易にコントロール可能である。
抄紙を行う際には市販の抄紙機を用いることができ、短網式抄紙機、長網式抄紙機、円網式抄紙機、傾斜式抄紙機等を用いることができる。
【0019】
スラリーの調製方法としては、配合順序を特に限定するものではないが、例えば予め解繊機で綿状に解繊された(B)成分並びに(A)、(C)成分を、(D)成分の水溶液中に投入し、撹拌することによって調製することができる。スラリー中の固形分濃度は、上記に示す抄紙工程において、抄紙性を損なわない範囲で適宜選定することが可能であり、上限として通常10質量%以下、好ましくは3質量%以下である。尚、スラリーには、(A)〜(D)成分に加え、本発明の目的を損なわない範囲で任意の添加剤を、(A)〜(D)成分を配合してなる固形分100質量部に対し、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下の範囲で添加しても良い。添加剤としては、特に限定されるものではないが、例えば分散剤、安定剤、粘度調整剤、沈降防止剤、増粘剤、紙力増強剤、凝集作用を有する界面活性剤、特に高分子凝集剤や歩留り向上剤等が挙げられる。
【0020】
本発明のガス拡散電極の製造方法は、(A)〜(D)成分を含むスラリーを抄紙し、得られた抄紙体を加熱乾燥することによってガス拡散電極を製造するものである。
この場合、加熱乾燥方法及び条件に特に制限はなく、使用する(A)〜(D)成分の種類等を鑑み適宜選定することができるが、例えば乾燥温度としては通常100℃以上、好ましくは130℃以上、上限として通常400℃以下、好ましくは300℃以下であり、乾燥時間としては通常1分以上、上限として通常60分以下、好ましくは30分以下である。
加熱乾燥の際には、連続式乾燥機を用いて行なうことが好ましい。連続式乾燥機とは多筒式ドライヤー,ヤンキー式ドライヤー等のロール式乾燥機である。該連続式乾燥機を用いることにより加熱・加圧加工が連続的に一度に行なうことができ、連続生産が容易となる。
【0021】
本発明により得られるガス拡散電極は、燃料電池用ガス拡散電極に求められる体積固有抵抗値や熱伝導率、ガス透過率を有し、かつ良好な可とう性を有し、ハンドリング性に優れるため、燃料電池用ガス拡散電極として有効に用いられる。
【0022】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0023】
[実施例1,2、比較例1〜4]
導電性粉末、予め解繊したカーボンファイバー、有機繊維、樹脂とを表1に示した割合で、1重量%のポリエチレンオキシド水溶液中に投入し、撹拌機により撹拌し、材料が均一に分散したスラリーを調製した。このスラリーを傾斜式短網抄紙機で抄造し、その後連続式乾燥機にて150℃で2分間加熱乾燥し、ガス拡散電極を製造した。得られたガス拡散電極の物性を、表1に併記した。
【0024】
【表1】
Figure 2004079406
膨張黒鉛
導電性粉末:商品名カルファイト,(株)丸豊鋳材製作所製。平均粒径30μm。
カーボンファイバー
商品名ベスファイト,東邦テナックス(株)製。繊維長6mm。
アラミド繊維
有機繊維:商品名ケブラー,東レ・デュポン(株)製。繊維長3mm。
フェノール樹脂
商品名レヂトップXPG−4617B,群栄化学(株)製。
ポリエステル樹脂
商品名テピルスTJO4CNSD,帝人(株)製。
ポリエチレンオキシド
商品名PEO,住友化学(株)製。
厚さ
Mitutoyo社製マイクロメータにて測定した値を示した。
固有抵抗
JIS H−0602に準拠し、三菱化学(株)製、ロレスターSP MCP−T500を用いて測定した。
ガス透気度
JIS P−8117に準拠し、ガーレー透気度試験法にて測定した。
熱伝導率
JIS R−2616に準拠し、京都電子工業(株)製、QTM−500を用いて測定した。
ロール巻取り
直径4cmの金属ロールに電極を巻き取った際の可とう性を、下記基準にて評価した。
◎:容易に巻き取ることができ、巻き取った後も、ヒビや折れ等がないもの。
○:容易に巻き取れるが、巻き取り後、折れたあとが少し残ってしまうもの。
△:巻き取ることはできるが、ヒビや折れた後の線が多く残るもの。
×:巻き取ったときに割れてしまい、巻き取ることが不可能のもの。
【0025】
【発明の効果】
本発明のガス拡散電極は良好な可とう性を有するため、ロール状に巻き取ることができ、連続生産が可能である。また、該拡散電極は燃料電池用ガス拡散電極に求められる体積固有抵抗値や熱伝導率、ガス透過率を有し、且つ電極製造時や電池作成時の加圧により壊れることがない。
本発明のガス拡散電極の製造方法は、製造工程が簡易的であるため製造コストを抑制することが可能であり、工業的に有用なものである。

Claims (5)

  1. (A)導電性粉末50〜90質量%、(B)カーボンファイバー5〜50質量%、(C)有機繊維3〜40質量%、及び(D)樹脂5〜40質量%を合計で100質量%となるように配合してなる固形分を含むスラリーを抄紙し、得られた抄紙体を加熱乾燥することを特徴とするガス拡散電極の製造方法。
  2. 上記導電性粉末の平均粒径が、10〜100μmであることを特徴とする請求項1記載のガス拡散電極の製造方法。
  3. 上記カーボンファイバーの繊維長が、0.1〜20mmであることを特徴とする請求項1又は2記載のガス拡散電極の製造方法。
  4. 上記加熱乾燥を、連続式乾燥機を用いて行なう、請求項1乃至3のいずれか1項記載のガス拡散電極の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のガス拡散電極の製造方法により得られるガス拡散電極を用いてなる燃料電池。
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