JP6855843B2 - レドックスフロー電池用電極とその製造方法、およびレドックスフロー電池 - Google Patents

レドックスフロー電池用電極とその製造方法、およびレドックスフロー電池 Download PDF

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Description

本発明は、レドックスフロー電池用電極とその製造方法、およびレドックスフロー電池に関する。
近年、電力貯蔵用電池として、レドックスフロー電池が注目されている。
レドックスフロー電池は、水素イオンが透過する隔膜により内部が正極室と負極室に分離された電解槽、正極電解液を貯留する正極タンク、負極電解液を貯留する負極タンク、電解液をタンクと電解槽との間で循環させるポンプなどで構成される。そして、正極タンクと正極室との間で正極電解液を循環させ、負極タンクと負極室との間で負極電解液を循環させ、正極室および負極室に設置された各電極上で酸化還元反応を進行させることで充放電が行われる。
レドックスフロー電池に用いられる電極としては、カーボンフェルトやカーボンペーパー等の炭素繊維集合体が用いられている(例えば特許文献1、2参照)。
特許第3601581号公報 国際公開第2016/104613号
カーボンフェルトを用いた電極は、製造コストがかかる、カーボンフェルトはある程度の厚みがあるため電極の薄膜化が困難、繊維が毛羽立ちやすいため短絡しやすい、などの問題があった。
一方、カーボンペーパーはカーボンフェルトに比べて安価であり、薄く、繊維が毛羽立ちにくい。そのため、カーボンペーパーを用いた電極は、カーボンフェルトを用いた電極に比べて安価であり、薄膜化が容易であることから、電池の低コスト化や小型化が可能であり、しかも短絡しにくい。
しかしながら、カーボンペーパーを用いた電極の場合、電池性能が必ずしも充分に高くはなかった。
本発明は、低コスト化および小型化を実現でき、短絡しにくく、電池性能に優れたレドックスフロー電池が得られるレドックスフロー電池用電極とその製造方法、およびレドックスフロー電池を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を有する。
[1] ポリアクリロニトリル系炭素繊維とバインダ樹脂の炭化物とを含むカーボンペーパーからなり、水銀圧入法により測定される比表面積が0.5〜1.5m/gである、レドックスフロー電池用電極。
[2] 前記カーボンペーパーは水銀圧入法により測定される細孔分布において少なくとも2つのピークを有する、[1]に記載のレドックスフロー電池用電極。
[3] 前記カーボンペーパーは炭素フィラーをさらに含む、[1]または[2]に記載のレドックスフロー電池用電極。
[4] 前記カーボンペーパーはポリアクリロニトリル系炭素繊維以外の炭素繊維をさらに含む、[1]〜[3]のいずれか1つに記載のレドックスフロー電池用電極。
[5] 以下の(A1)工程、(A2)工程、(A3)工程および(A4)工程を有する、レドックスフロー電池用電極の製造方法。
(A1)工程:ポリアクリロニトリル系炭素繊維を用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程。
(A2)工程:(A1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂と、炭素フィラーとを含むバインダ樹脂組成物を含浸させ、前駆体シートを作製する工程。
(A3)工程:(A2)工程で得られた前駆体シートを加熱し、バインダ樹脂を硬化させる工程。
(A4)工程:(A3)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程。
[6] 以下の(B1)工程、(B2)工程、(B3)工程および(B4)工程を有する、レドックスフロー電池用電極の製造方法。
(B1)工程:ポリアクリロニトリル系炭素繊維と、ポリアクリロニトリル系炭素繊維以外の炭素繊維とを用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程。
(B2)工程:(B1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂を含浸させ、前駆体シートを作製する工程。
(B3)工程:(B2)工程で得られた前駆体シートを加熱し、バインダ樹脂を硬化させる工程。
(B4)工程:(B3)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程。
[7] [1]〜[4]のいずれか1つに記載のレドックスフロー電池用電極を備えた、レドックスフロー電池。
本発明によれば、低コスト化および小型化を実現でき、短絡しにくく、電池性能に優れたレドックスフロー電池が得られるレドックスフロー電池用電極とその製造方法、およびレドックスフロー電池を提供できる。
本発明のレドックスフロー電池用電極の一例を示す概略構成図である。
「レドックスフロー電池用電極」
本発明のレドックスフロー電池用電極(以下、「RFB用電極」ともいう。)は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(以下、「PAN系炭素繊維」ともいう。)とバインダ樹脂の炭化物とを含むカーボンペーパーからなる。このカーボンペーパーは、炭素フィラーやPAN系炭素繊維以外の炭素繊維(以下、「非PAN系炭素繊維」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
なお、「カーボンペーパー」とは、概ね平面内においてランダムな方向に炭素繊維を分散させ、ペーパー状としたものである。また、「ランダムな方向に分散」とは、炭素繊維が概ね一つの面を形成するように横たわっていることを意味する。
<アクリロニトリル系炭素繊維>
PAN系炭素繊維は、耐酸性に優れる炭素繊維である。
レドックスフロー電池(以下、「RFB」ともいう。)の電解液としては、通常、酸性水溶液が用いられることから、RFB用電極には耐酸性が求められる。PAN系炭素繊維を含むカーボンペーパーからなる本発明のRFB用電極は、耐酸性に優れるので電解液と接触しても腐食しにくい。
PAN系炭素繊維の平均繊維長は、分散性の観点から2〜30mmが好ましく、2〜12mmがより好ましい。すなわち、PAN系炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系の炭素短繊維が好ましい。
PAN系炭素繊維の平均繊維長は、例えば走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を50倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる50本の単繊維を選び、その長さを計測し、これらの値を平均したものである。
PAN系炭素繊維の平均繊維径は、PAN系炭素繊維の生産コストおよび分散性の観点から、3〜20μmが好ましく、3〜9μmがより好ましい。特に、カーボンペーパーの平滑性の観点から、PAN系炭素繊維の平均繊維径は4〜8μmがさらに好ましい。
PAN系炭素繊維の平均繊維径は、例えば走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を50倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる50本の単繊維を選び、その繊維径を計測し、これらの値を平均したものである。
PAN系炭素繊維の引張弾性率は、200〜600GPaが好ましい。
PAN系炭素繊維の引張弾性率は、JIS R 7601:1986に準じて測定される値である。
PAN系炭素繊維の引張強度は、3000〜7000MPaが好ましい。
PAN系炭素繊維の引張強度は、JIS R 7601:1986に準じて測定される値である。
PAN系炭素繊維の製造は連続で行なう方法やバッチ式で行なう方法があるが、特に目付のコントロールが容易であるという点と生産性および機械的強度の観点から連続が好ましい。
PAN系炭素繊維の目付は、10〜200g/mとすることが好ましい。
カーボンペーパー中のPAN系炭素繊維の含有量は、カーボンペーパーの総質量に対して60〜75質量%が好ましく、66〜72質量%がより好ましい。PAN系炭素繊維の含有量が60質量%以上であれば、カーボンペーパーの強度を充分に保持できる。一方、PAN系炭素繊維の含有量が75質量%以下であれば、後述するバインダ樹脂の炭化物の割合を確保できるので、PAN系炭素繊維同士を充分に結着できる。
<バインダ樹脂の炭化物>
バインダ樹脂の炭化物は、バインダ樹脂を炭素化して得られるものである。バインダ樹脂の炭化物により、PAN系炭素繊維同士が結着する。
バインダ樹脂としては、PAN系炭素繊維との結着力を有し、かつ炭素化するものであれば特に制限されないが、炭素化後の残炭率が20質量%以上となるような樹脂が好ましい。このような樹脂としては、例えばフェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ピッチ、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、「残炭率」とは、バインダ樹脂を1200℃以上の温度で炭素化したときの質量を炭素化前の質量で割って100を乗じた値である。
フェノール樹脂としては、アルカリ触媒存在下においてフェノール類とアルデヒド類との反応によって得られるレゾールタイプのフェノール樹脂を用いることができる。
また、レゾールタイプのフェノール樹脂に公知の方法によって酸性触媒下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する、固体の熱融着性を示すノボラックタイプのフェノール樹脂を溶解混入させることもできるが、この場合は硬化剤、例えばヘキサメチレンジアミンを含有した、自己架橋タイプのものが好ましい。
フェノール類としては、例えばフェノール、レゾルシン、クレゾール、キシロールなどが挙げられる。アルデヒド類としては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラールなどが用いられる。また、これらを混合物として用いることができる。これらはフェノール樹脂として市販品を利用することも可能である。
カーボンペーパー中のバインダ樹脂の炭化物の含有量は、カーボンペーパーの総質量に対して25〜40質量%が好ましく、28〜34質量%がより好ましい。バインダ樹脂の炭化物の含有量が25質量%以上であれば、PAN系炭素繊維同士を充分に結着できる。一方、バインダ樹脂の炭化物の含有量が40質量%以下であれば、PAN系炭素繊維の割合を確保できるので、カーボンペーパーの強度を充分に保持できる。
<炭素フィラー>
炭素フィラーとしては、例えばカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、コークス、活性炭、非晶質炭素、ミルド炭素繊維、チョップド炭素繊維などが挙げられる。
これらの中でも、カーボンペーパーの比表面積を制御しやすい、あるいは電極の反応活性をより高めるなどの観点から、カーボンブラック、黒鉛、活性炭、非晶質炭素が好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
カーボンペーパー中の炭素フィラーの含有量は、カーボンペーパーの総質量に対して50質量%以下が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。炭素フィラーの含有量が50質量%以下であれば、電解液の拡散経路を閉塞することなくカーボンペーパーの比表面積を最大限に高めることができる。特に、炭素フィラーの含有量が1質量%以上であれば、電極の反応活性がより高まる。
<非PAN系炭素繊維>
非PAN系炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、活性炭繊維などが挙げられる。
これらの中でも、電極の反応活性をより高める観点ではピッチ系炭素繊維が好ましく、詳しくは後述するがカーボンペーパーの比表面積を制御しやすい観点では活性炭繊維が好ましい。
非PAN系炭素繊維の平均繊維長は、分散性の観点から2〜30mmが好ましく、2〜12mmがより好ましい。すなわち、非PAN系炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系以外の炭素短繊維が好ましい。
非PAN系炭素繊維の平均繊維長は、例えば走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を50倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる50本の単繊維を選び、その長さを計測し、これらの値を平均したものである。
非PAN系炭素繊維の平均繊維径は、非PAN系炭素繊維の生産コストおよび分散性の観点から、3〜20μmが好ましく、9〜15μmがより好ましい。
非PAN系炭素繊維の平均繊維径は、例えば走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を50倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる50本の単繊維を選び、その繊維径を計測し、これらの値を平均したものである。
カーボンペーパー中の非PAN系炭素繊維の含有量は、カーボンペーパーの総質量に対して1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。非PAN系炭素繊維の含有量が1質量%以上であれば、電極の反応活性向上やカーボンペーパーの比表面積の増大に寄与しやすい。一方、非PAN系炭素繊維の含有量が50質量%以下であれば、カーボンペーパーが脆くなり過ぎず、取り扱いが容易である。
<物性>
カーボンペーパーの水銀圧入法により測定される比表面積は、0.5〜1.5m/gであり、0.6〜1.3m/gが好ましい。比表面積が0.5m/g以上であれば、カーボンペーパーは充分な微細構造を有する。すなわち、カーボンペーパーは多孔質であり、このカーボンペーパーからなるRFB用電極の反応活性が向上する。よって、本発明のRFB用電極を備えたRFBは充電時の電圧が高く、電池性能に優れる。一方、比表面積が1.5m/gを超えると、カーボンペーパーの表面の水接触角が大きくなりすぎる。その結果、電解液を弾きやすくなり、電池性能が低下する。
カーボンペーパーの厚さは、50〜500μmが好ましく、100〜400μmがより好ましい。
カーボンペーパーは、水銀圧入法により測定される細孔分布において少なくとも2つのピークを有することが好ましい。具体的には、細孔分布における細孔の半径が10μm以下の範囲と、細孔の半径が50μm以上の範囲に少なくとも1つずつピークを有することが好ましい。細孔分布において少なくとも2つのピークを有していれば、カーボンペーパーの比表面積を0.5〜1.5m/gに制御しやすくなり、電池性能に優れるRFBが得られる。
<作用効果>
以上説明した本発明のRFB用電極はカーボンペーパーからなるので、カーボンフェルトに比べて安価であり、薄く、繊維が毛羽立ちにくい。そのため、本発明のRFB用電極は、カーボンフェルトを用いた電極に比べて安価であり、薄膜化が容易であることから、電池の低コスト化や小型化が可能であり、しかも電流短絡が起こりにくい。
しかも、本発明のRFB用電極は、比表面積が0.5〜1.5m/gであるカーボンペーパーからなるので、反応活性が高い。
よって、本発明のRFB用電極を用いれば、低コスト化および小型化を実現でき、短絡しにくく、電池性能に優れたRFBが得られる。
「レドックスフロー電池用電極の製造方法」
<第一の実施形態>
本発明の第一の実施形態のRFB用電極の製造方法は、以下の(A1)工程、(A2)工程、(A3)工程および(A4)工程を有する。
(A1)工程:PAN系炭素繊維を用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程。
(A2)工程:(A1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂と、炭素フィラーとを含むバインダ樹脂組成物を含浸させ、前駆体シートを作製する工程。
(A3)工程:(A2)工程で得られた前駆体シートを加熱し、バインダ樹脂を硬化させる工程。
(A4)工程:(A3)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程。
((A1)工程)
(A1)工程は、PAN系炭素繊維を用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程である。
抄紙方法としては、液体の媒体中にPAN系炭素繊維を分散させて抄造する湿式法、空気中にPAN系炭素繊維を分散させて降り積もらせる乾式法などが適用できる。これらの中でも、PAN系炭素繊維が単繊維に分散するのを助け、分散した単繊維が再び収束するのを防止できる観点から、湿式法が好ましい。
なお、炭素繊維紙は、PAN系炭素繊維とともに、後述するバインダ短繊維を抄紙して作製してもよい。
((A2)工程)
(A2)工程は、(A1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂と、炭素フィラーとを含むバインダ樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(A)」ともいう。)を含浸させ、前駆体シートを作製する工程である。
樹脂組成物(A)における炭素フィラーの割合は、炭素化前のバインダ樹脂100質量部に対して、1〜300質量部が好ましく、1〜100質量部がより好ましい。
なお、樹脂組成物(A)に、後述する、炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子を配合してもよい。
樹脂組成物(A)における炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子の割合は、炭素化前のバインダ樹脂100質量部に対して、100〜500質量部が好ましく、200〜400質量部がより好ましい。
炭素繊維紙に樹脂組成物(A)を含浸する方法としては特に制限されないが、連続的に行なうことができ、生産性および長尺ものも製造できるという点で、例えばコーターを用いて炭素繊維紙表面に樹脂組成物(A)を均一にコートする方法、絞り装置を用いるdip−nip方法、樹脂組成物(A)からなる樹脂フィルムと炭素繊維紙とを重ねて、樹脂組成物(A)を炭素繊維紙に転写する方法などが挙げられる。
炭素繊維紙への樹脂組成物(A)の含浸量は、炭素繊維紙100質量部に対して50〜200質量部が好ましく、60〜150質量部がより好ましい。
((A3)工程)
(A3)工程は、(A2)工程で得られた前駆体シートを加熱し、バインダ樹脂を硬化させる工程である。
(A4)工程の前に(A3)工程を行うことで、PAN系炭素繊維を樹脂組成物(A)中のバインダ樹脂で融着させ、かつ得られるカーボンペーパーの厚みムラを低減できる。
前駆体シートを加熱する方法としては、加熱加圧が好ましく、例えば前駆体シートの上下両面から平滑な剛板にて熱プレスする方法、連続ベルトプレス装置を用いて行う方法などが挙げられる。
連続製造による前駆体シートを加熱加圧する場合は、連続ベルトプレス装置を用いて行う方法が、長尺のカーボンペーパー(RFB用電極)を製造できるという点で好ましい。RFB用電極が長尺であれば、RFB用電極の生産性が高くなり、RFBのコスト低減化に大きく寄与することができる。また、本発明のRFB用電極は、連続的に巻き取ることも可能で、RFB用電極やRFBの生産性、コストの観点から好ましい。連続ベルト装置におけるプレス方法としては、ロールプレスによりベルトに線圧で圧力を加える方法と液圧ヘッドプレスにより面圧でプレスする方法があるが、後者の方がより平滑なRFB用電極が得られるという点で好ましい。
剛板に挟んで、または連続ベルトプレス装置で前駆体シートの加熱加圧を行う際は、剛板やベルトに樹脂組成物(A)などが付着しないように、予め剥離剤を塗っておくか、前駆体シートと剛板やベルトとの間に離型紙を挟んで加熱加圧を行うことが好ましい。
前駆体シートが加熱される温度は、効果的に表面を平滑にするために、100〜300℃が好ましく、120〜250℃がより好ましい。
前駆体シートが加圧される圧力は特に限定されないが、樹脂組成物(A)の比率が多い場合は、圧力が低くても前駆体シートの表面を平滑にすることが容易である。このとき必要以上にプレス圧を高くすることは、加圧時にPAN系炭素繊維を破壊する、RFB用電極としたときその組織が緻密になりすぎるなどの問題が生じる場合がある。よって、例えば20kPa〜10MPaの圧力で加圧することが好ましい。
加熱加圧の時間は、例えば30秒〜10分とすることができる。
((A4)工程)
(A4)工程は、(A3)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程である。
前駆体シートの炭素化は、PAN系炭素繊維を(A)中のバインダ樹脂で融着させ、かつバインダ樹脂を炭素化することより、カーボンペーパー(RFB用電極)の機械的強度と導電性を発現させることを目的に行う。
炭素化は、RFB用電極の導電性を高めるために、不活性ガス中で行うことが好ましい。
炭素化は、1000℃以上の温度で行うことが好ましく、より好ましくは1000〜3000℃であり、さらに好ましくは1000〜2500℃である。炭素化の温度が1000℃以上であれば、充分な導電性を有するRFB用電極が得られる。
炭素化の時間は、例えば10分〜1時間とすることができる。
連続製造による前駆体シートを炭素化する場合は、前駆体シートの全長にわたって連続で炭素化を行うことが、低コスト化という観点で好ましい。RFB用電極が長尺であれば、RFB用電極の生産性が高くなり、RFBのコスト低減化に大きく寄与することができる。また、本発明のRFB用電極は、連続的に巻き取ることも可能で、RFB用電極やRFBの生産性、コストの観点から好ましい。
(A4)工程により、炭素繊維紙に含浸した樹脂組成物(A)中のバインダ樹脂が炭素化され、炭化物となる。一方、樹脂組成物(A)中の炭素フィラーは、炭素化後もカーボンペーパーに残る。その結果、得られるカーボンペーパーの表面が凹凸状となる。具体的には、比表面積が0.5〜1.5m/gであるカーボンペーパーが得られる。
なお、樹脂組成物(A)が、炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子を含む場合、この粒子は(A4)工程により消失する。この消失した部分が空隙となることから、カーボンペーパーの比表面積を0.5〜1.5m/gに制御しやすくなる。
こうして得られたカーボンペーパーをRFB用電極として用いる。
(他の工程)
本発明の第一の実施形態のRFB用電極の製造方法は、(A3)工程と(A4)工程との間に、前処理工程および酸化処理工程の少なくとも一方を有していてもよい。
前処理工程では、前駆体シートを300〜800℃の程度の不活性雰囲気で焼成することが好ましい。
酸化処理工程では、前駆体シートを200℃以上300℃未満の温度で酸化処理することが好ましい。
(A4)工程の前に酸化処理工程を行えば、PAN系炭素繊維をバインダ樹脂でより融着させ、かつバインダ樹脂の炭素化率をより向上させることができる。
酸化処理は、200℃以上300℃未満の温度範囲で行うことが好ましく、より好ましくは240〜270℃である。
酸化処理は、大気雰囲気下で行うことが好ましい。
酸化処理の時間は、例えば30分〜2時間とすることができる。
連続製造による前駆体シートを酸化処理する場合は、前駆体シートの全長にわたって連続に行うことが低コスト化という観点で好ましい。RFB用電極が長尺であれば、RFB用電極の生産性が高くなり、RFBのコスト低減化に大きく寄与することができる。また、本発明のRFB用電極は、連続的に巻き取ることも可能で、RFB用電極やRFBの生産性、コストの観点から好ましい。
<第二の実施形態>
本発明の第二の実施形態のRFB用電極の製造方法は、以下の(B1)工程、(B2)工程、(B3)工程および(B4)工程を有する。
(B1)工程:PAN系炭素繊維と非PAN系炭素繊維とを用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程。
(B2)工程:(B1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂を含浸させ、前駆体シートを作製する工程。
(B3)工程:(B2)工程で得られた前駆体シートを加熱し、バインダ樹脂を硬化させる工程。
(B4)工程:(B3)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程。
((B1)工程)
(B1)工程は、PAN系炭素繊維と非PAN系炭素繊維とを用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程である。
非PAN系炭素繊維の割合は、PAN系炭素繊維100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
抄紙方法としては、液体の媒体中にPAN系炭素繊維と非PAN系炭素繊維の混合物を分散させて抄造する湿式法、空気中にPAN系炭素繊維と非PAN系炭素繊維の混合物を分散させて降り積もらせる乾式法などが適用できる。これらの中でも、PAN系炭素繊維および非PAN系炭素繊維が単繊維に分散するのを助け、分散した単繊維が再び収束するのを防止できる観点から、湿式法が好ましい。
PAN系炭素繊維と非PAN系炭素繊維を混合する方法としては、PAN系炭素繊維とともに水中で攪拌分散させる方法と、直接混ぜ込む方法があるが、均一に分散させるためには水中で拡散分散させる方法が好ましい。
なお、炭素繊維紙は、PAN系炭素繊維および非PAN系炭素繊維とともに、後述するバインダ短繊維を抄紙して作製してもよい。
((B2)工程)
(B2)工程は、(B1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂を含浸させ、前駆体シートを作製する工程である。
バインダ樹脂の含浸方法は、第一の実施形態において説明した(A2)工程と同じである。
なお、バインダ樹脂と炭素フィラーとを混合してバインダ樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(B)」ともいう。)を炭素繊維紙に含浸させてもよい。また、樹脂組成物(B)に、後述する、炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子を配合してもよい。
((B3)工程)
(B3)工程は、(B2)工程で得られた前駆体シートを加熱し、バインダ樹脂を硬化させる工程である。
前駆体シートを加熱する方法および条件は、第一の実施形態において説明した(A3)工程と同じである。
((B4)工程)
(B4)工程は、(B3)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程である。
前駆体シートを炭素化する方法および条件は、第一の実施形態において説明した(A4)工程と同じである。
(B4)工程により、炭素繊維紙に含浸したバインダ樹脂が炭素化され、炭化物となる。また、炭素繊維紙はPAN系炭素繊維と非PAN系炭素繊維とで構成されているので、得られるカーボンペーパーの表面が凹凸状となる。具体的には、比表面積が0.5〜1.5m/gであるカーボンペーパーが得られる。特に、活性炭繊維は、それ自体の表面が凹凸形状を有している。よって、非PAN系炭素繊維として活性炭繊維を用いれば、カーボンペーパーの比表面積を0.5〜1.5m/gに制御しやすい。
なお、炭素繊維紙に、バインダ樹脂とともに炭素フィラーを含浸させた場合、炭素フィラーは、炭素化後もカーボンペーパーに残るため、カーボンペーパーの表面が凹凸状となりやすく、カーボンペーパーの比表面積を0.5〜1.5m/gにより制御しやすくなる。
一方、炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子を含浸させた場合、この粒子は炭素化後に消失する。この消失した部分が空隙となることから、カーボンペーパーの比表面積を0.5〜1.5m/gにより制御しやすくなる。
こうして得られたカーボンペーパーをRFB用電極として用いる。
(他の工程)
本発明の第二の実施形態のRFB用電極の製造方法は、(B3)工程と(B4)工程との間に、前処理工程および酸化処理工程の少なくとも一方を有していてもよい。
前処理工程および酸化処理工程は、第一の実施形態において説明した前処理工程および酸化処理工程と同様である。
<第三の実施形態>
本発明の第三の実施形態のRFB用電極の製造方法は、以下の(C1)工程、(C2)工程、(C3)工程および(C4)工程を有する。
(C1)工程:PAN系炭素繊維を用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程。
(C2)工程:(C1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂と、炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子とを含むバインダ樹脂組成物を含浸させ、前駆体シートを作製する工程。
(C3)工程:(C2)工程で得られた前駆体シートを加熱し、バインダ樹脂を硬化させる工程。
(C4)工程:(C3)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程。
((C1)工程)
(C1)工程は、PAN系炭素繊維を用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程である。
抄紙方法としては、第一の実施形態において説明した(A1)工程と同じである。
炭素繊維紙は、PAN系炭素繊維とともにバインダ短繊維を抄紙して作製してもよい。バインダ短繊維を併用することで、炭素繊維紙中でPAN系炭素繊維の配向が変化するのを抑制できる。
バインダ短繊維としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる繊維などを用いることができる。これらの中でも、結着力に優れ、PAN系炭素繊維の脱落をより効果的に抑制できる観点で、PVAからなるバインダ短繊維が好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。PETからなるバインダ短繊維が好ましい。
((C2)工程)
(C2)工程は、(C1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂と、炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子とを含むバインダ樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(C)」ともいう。)を含浸させ、前駆体シートを作製する工程である。
炭素化後の残炭率が15質量%以下の樹脂からなる粒子に用いる樹脂は、炭素化時に熱分解して、導電性物質としてほとんど残存しない物質が好ましい。炭素化後の残炭率が10質量%以下の樹脂がより好ましい。
ここで、「残炭率」とは、樹脂を1200℃以上の温度で炭素化したときの質量を炭素化前の質量で割って100を乗じた値である。
残炭率が15質量%以下の樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。例えば炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂としてフェノール樹脂を用いる場合、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂やポリスチレンは、炭素化後の残炭率が20質量%以上のバインダ樹脂の溶液中で不溶であるため、粒子形状を維持できるという点で好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
炭素化後の残炭率が15質量%以下の樹脂からなる粒子の形状は、真球状、楕円状、ブロック状など、どのような形態であってよいが、炭素化時に消失することによって形成される空孔が連続的である点において真球状が好ましい。
粒子の平均粒子径は、炭素繊維紙中の空隙に包含させる点において、2μm以下であることが好ましい。また形成させる空隙によって保水性、排水性が向上する点において10nm以上であることが好ましい。粒子の平均粒子径は、30nm以上、1μm以下がより好ましく、50〜600nmがさらに好ましい。
粒子径の分布の分散性は高くても低くてもよいが、より精密に空隙サイズを制御できるという点から単分散性が高いほうが好ましい。また、単分散性が高い粒子径を持つ炭素化後の残炭率が15質量%以下の樹脂からなる粒子単体を用いてもよいが、単分散性が高い粒子径を持つ炭素化後の残炭率が15質量%以下の樹脂からなる粒子が複数からなる混合物を用いてもよい。
炭素化後の残炭率が15質量%以下の樹脂からなる粒子の製造方法は、例えば、シード乳化重合法が挙げられる。分散媒は、粒子が溶解せず、取り扱い良好な水系溶媒が好ましい。
樹脂組成物(C)における、炭素化後の残炭率が15質量%以下の樹脂からなる粒子の割合は、炭素化前のバインダ樹脂100質量部に対して、100〜500質量部が好ましく、200〜400質量部がより好ましい。
樹脂組成物(C)の含浸方法は、第一の実施形態において説明した(A2)工程と同じである。
((C3)工程)
(C3)工程は、(C2)工程で得られた前駆体シートを加熱し、バインダ樹脂を硬化させる工程である。
前駆体シートを加熱する方法および条件は、第一の実施形態において説明した(A3)工程と同じである。
((C4)工程)
(C4)工程は、(C3)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程である。
前駆体シートを炭素化する方法および条件は、第一の実施形態において説明した(A4)工程と同じである。
(C4)工程により、炭素繊維紙に含浸した、樹脂組成物(C)中のバインダ樹脂が炭素化され、炭化物となる。一方、樹脂組成物(C)中の炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子は、消失する。その結果、得られるカーボンペーパーの表面が凹凸状となる。具体的には、比表面積が0.5〜1.5m/gであるカーボンペーパーが得られる。
こうして得られたカーボンペーパーをRFB用電極として用いる。
(他の工程)
本発明の第三の実施形態のRFB用電極の製造方法は、(C3)工程と(C4)工程との間に、前処理工程および酸化処理工程の少なくとも一方を有していてもよい。
前処理工程および酸化処理工程は、第一の実施形態において説明した前処理工程および酸化処理工程と同様である。
<第四の実施形態>
本発明の第四の実施形態のRFB用電極の製造方法は、以下の(D1)工程、(D2)工程、(D3)工程、(D4)工程、(D5)工程および(D6)工程を有する。
(D1)工程:PAN系炭素繊維を用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程。
(D2)工程:(D1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂を含浸させ、前駆体シートを作製する工程。
(D3)工程:前記前駆体シートを前記バインダ樹脂の貧溶媒に浸漬させて、前駆体シート中のバインダ樹脂を凝固させる工程。
(D4)工程:(D3)工程後の前駆体シートから前記貧溶媒を除去する工程。
(D5)工程:(D4)工程後の前駆体シートを加熱し、前駆体シート中のバインダ樹脂を硬化させる工程。
(D6)工程:(D5)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程。
((D1)工程)
(D1)工程は、PAN系炭素繊維を用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程である。
抄紙方法としては、第一の実施形態において説明した(A1)工程と同じである。
炭素繊維紙は、PAN系炭素繊維とともにバインダ短繊維や非PAN系炭素繊維を抄紙して作製してもよい。
((D2)工程)
(D2)工程は、(D1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂を含浸させ、前駆体シートを作製する工程である。
バインダ樹脂の含浸方法は、第一の実施形態において説明した(A2)工程と同じである。
なお、バインダ樹脂と炭素フィラーとを混合してバインダ樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(D)」ともいう。)を炭素繊維紙に含浸させてもよい。また、樹脂組成物(D)に、炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子を配合してもよい。
((D3)工程)
(D3)工程は、前記前駆体シートを前記バインダ樹脂の貧溶媒に浸漬させて、前駆体シート中のバインダ樹脂を凝固させる工程である。
バインダ樹脂の貧溶媒としては、一般的には水系溶媒を用いることができるが、バインダ樹脂に対して貧溶媒となるものであれば特に限定されない。例えば、バインダ樹脂としてポリアクリロニトリルを用いた場合は、水、水とジメチルアセトアミドとの混合溶媒などを用いることができる。また、バインダ樹脂としてフェノール樹脂を用いた場合は、水、水とアルコールとの混合溶媒を用いることができる。
貧溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前駆体シート中のバインダ樹脂を凝固させることによって空隙を形成させることができ、バインダ樹脂の多孔質化を促すことができる。
空隙形成は、凝固浴中での凝固速度に依存する。凝固速度が比較的速い方が空隙を形成しやすいため、炭素繊維紙に炭素繊維紙を含浸させた際の樹脂溶液濃度、凝固浴組成、凝固浴温度によって精密に制御できる。
樹脂溶液濃度としては、含浸時の作業性の点で5〜40質量%とすることが好ましい。
また、例えば、バインダ樹脂としてポリアクリロニトリルまたはフェノール樹脂を用い、貧溶媒となる凝固浴として水を用いた場合、好ましい凝固浴温度10℃〜80℃である。
((D4)工程)
(D4)工程は、(D3)工程後の前駆体シートから前記貧溶媒を除去する工程である。
貧溶媒の除去方法としては、加熱乾燥や真空乾燥などが挙げられる。
乾燥温度は、貧溶媒の沸点近傍であり、かつ樹脂硬化に影響しにくい温度域が好ましい。例えば、貧溶媒が水である場合、乾燥温度は80〜120℃が好ましい。
((D5)工程)
(D5)工程は、(D4)工程後の前駆体シートを加熱し、前駆体シート中のバインダ樹脂を硬化させる工程である。
前駆体シートを加熱する方法および条件は、第一の実施形態において説明した(A3)工程と同じである。
((D6)工程)
(D6)工程は、(D5)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程である。
前駆体シートを炭素化する方法および条件は、第一の実施形態において説明した(A4)工程と同じである。
(D6)工程により、炭素繊維紙に含浸したバインダ樹脂が炭素化され、炭化物となる。上述したように、(D3)工程によりバインダ樹脂を凝固させることによってバインダ樹脂は多孔質化され、空隙が形成される。すなわち、バインダ樹脂の炭化物は多孔質化している。よって、得られるカーボンペーパーの表面が凹凸状となる。具体的には、比表面積が0.5〜1.5m/gであるカーボンペーパーが得られる。
こうして得られたカーボンペーパーをRFB用電極として用いる。
(他の工程)
本発明の第四の実施形態のRFB用電極の製造方法は、(D5)工程と(D6)工程との間に、前処理工程および酸化処理工程の少なくとも一方を有していてもよい。
前処理工程および酸化処理工程は、第一の実施形態において説明した前処理工程および酸化処理工程と同様である。
<第五の実施形態>
本発明の第五の実施形態のRFB用電極の製造方法は、以下の(E1)工程、(E2)工程、(E3)工程、(E4)工程、(E5)工程、(E6)工程および(E7)工程を有する。
(E1)工程:PAN系炭素繊維を用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程。
(E2)工程:(E1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂と、ポリビニルピロリドンとを含むバインダ樹脂組成物を含浸させ、前駆体シートを作製する工程。
(E3)工程:前記前駆体シート中のバインダ樹脂とポリビニルピロリドンとを相分離させる工程。
(E4)工程:(E3)工程後の前駆体シートを前記バインダ樹脂の貧溶媒に浸漬させて、前駆体シート中のバインダ樹脂を凝固させる工程。
(E5)工程:(E4)工程後の前駆体シートから前記貧溶媒を除去する工程。
(E6)工程:(E5)工程後の前駆体シートを加熱し、前駆体シート中のバインダ樹脂を硬化させる工程。
(E7)工程:(E6)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程。
((E1)工程)
(E1)工程は、PAN系炭素繊維を用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程である。
抄紙方法としては、第一の実施形態において説明した(A1)工程と同じである。
炭素繊維紙は、PAN系炭素繊維とともにバインダ短繊維や非PAN系炭素繊維を抄紙して作製してもよい。
((E2)工程)
(E2)工程は、(E1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂と、ポリビニルピロリドンとを含むバインダ樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(E)」ともいう。)を含浸させ、前駆体シートを作製する工程である。
ポリビニルピロリドンは、バインダ樹脂と相分離可能であり、しかも炭素化時に導電性物質としてほとんど残存しない樹脂である。また、ポリビニルピロリドンは相分離構造を形成した後、洗浄によって容易に除去できる。
樹脂組成物(E)における、ポリビニルピロリドンの割合は、炭素化前のバインダ樹脂100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
樹脂組成物(E)の含浸方法は、第一の実施形態において説明した(A2)工程と同じである。
なお、樹脂組成物(E)に、炭素フィラーや炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子を配合してもよい。
((E3)工程)
(E3)工程は、前記前駆体シート中のバインダ樹脂とポリビニルピロリドンとを相分離させる工程である。
バインダ樹脂とポリビニルピロリドンの相分離は、前駆体シートを静置または吸湿させればよく、こうすることで相分離構造を形成することができる。
例えば、バインダ樹脂とフェノール樹脂を用い、雰囲気を相対湿度90%、温度60℃で吸湿させた場合、好ましい相分離時間は5秒〜2分である。
バインダ樹脂とポリビニルピロリドンとの相分離構造のサイズは、静置時間、吸湿時間、吸湿量に依存する。前駆体シートに含浸させる際のバインダ樹脂とポリビニルピロリドンの混合溶液濃度、混合比、相分離時間、相分離時の雰囲気湿度等によって精密に制御できる。樹脂溶液濃度としては、含浸時の作業性の点で5〜40質量%とすることが好ましい。
((E4)工程)
(E4)工程は、(E3)工程後の前駆体シートを前記バインダ樹脂の貧溶媒に浸漬させて、前駆体シート中のバインダ樹脂を凝固させる工程である。
バインダ樹脂の貧溶媒としては、第四の実施形態において説明した(D3)工程で用いる貧溶媒と同じである。
前駆体シート中のバインダ樹脂を凝固させることによって、(E3)工程で形成された相分離構造を固定できる。
バインダ樹脂とポリビニルピロリドンとの相分離構造のサイズは、凝固浴中での凝固速度にも依存するため、凝固浴組成や凝固浴温度によっても精密に制御できる。
((E5)工程)
(E5)工程は、(E4)工程後の前駆体シートから前記貧溶媒を除去する工程である。
貧溶媒の除去方法としては、加熱乾燥や真空乾燥などが挙げられる。
乾燥温度は、貧溶媒の沸点近傍であり、かつ樹脂硬化に影響しにくい温度域が好ましい。例えば、貧溶媒が水である場合、乾燥温度は80〜120℃が好ましい。
((E6)工程)
(E6)工程は、(E5)工程後の前駆体シートを加熱し、前駆体シート中のバインダ樹脂を硬化させる工程である。
前駆体シートを加熱する方法および条件は、第一の実施形態において説明した(A3)工程と同じである。
((E7)工程)
(E7)工程は、(E6)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程である。
前駆体シートを炭素化する方法および条件は、第一の実施形態において説明した(A4)工程と同じである。
(E7)工程により、炭素繊維紙に含浸したバインダ樹脂が炭素化され、炭化物となる。上述したように、(E3)工程によりバインダ樹脂とポリビニルピロリドンを相分離させ、(E4)工程によりバインダ樹脂を凝固させることより、相分離構造を固定できる。しかも、ポリビニルピロリドンは炭素化により消失する。よって、得られるカーボンペーパーの表面が凹凸状となる。具体的には、比表面積が0.5〜1.5m/gであるカーボンペーパーが得られる。
こうして得られたカーボンペーパーをRFB用電極として用いる。
(他の工程)
本発明の第五の実施形態のRFB用電極の製造方法は、(E6)工程と(E7)工程との間に、前処理工程および酸化処理工程の少なくとも一方を有していてもよい。
前処理工程および酸化処理工程は、第一の実施形態において説明した前処理工程および酸化処理工程と同様である。
<第六の実施形態>
本発明の第六の実施形態のRFB用電極の製造方法は、以下の(F1)工程、(F2)工程、(F3)工程および(F4)工程を有する。
(F1)工程:PAN系炭素繊維と、炭素繊維以外の繊維からなり、濾水度が400〜900mLであるフィブリル状物とを用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程。
(F2)工程:(F1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂を含浸させ、前駆体シートを作製する工程。
(F3)工程:(F2)工程で得られた前駆体シートを加熱し、バインダ樹脂を硬化させる工程。
(F4)工程:(F3)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程。
((F1)工程)
(F1)工程は、PAN系炭素繊維と、炭素繊維以外の繊維からなり、濾水度が400〜900mLであるフィブリル状物とを用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製する工程である。
フィブリル状物は、炭素化により消失するが、フィブリル状物の周りに付着したバインダ樹脂が炭化物として残り、炭化物の網状構造形成に寄与する。
フィブリル状物の濾水度が400〜900mLである。濾水度を400mL以上とすることにより、カーボンペーパーの表面状態を良好なものとすることができる。また、炭素繊維紙を抄紙によって製造する場合には、抄紙時の水抜けが良好なものとなる。一方、濾水度を900mL以下とすることにより、フィブリル状物を形成する繊維の直径を適切なものとすることができ、カーボンペーパーの表面が粗になることがなく、RFBとしたときに他の部材との接触を良好に保つことができる。
フィブリル状物は、PAN系炭素繊維と一緒に分散し、炭素短繊維の再収束を防止する役割も果たす。また、バインダ樹脂によっては、バインダ樹脂の硬化に縮合水を生成するものもあるが、フィブリル状物には、その水を吸収、排出する役割も期待できる。そのため、水との親和性にも優れているものが好ましい。具体的なフィブリル状物としては、フィブリル化されたポリエチレン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維等の合成パルプなどが挙げられる。これらの中でも、PAN系炭素繊維との親和性、取り扱い性、コストの点からフィブリル化されたポリエチレン繊維が好ましい。
フィブリル状物は、抄紙時の分散媒に不溶でかつ膨潤しないことが好ましい。このようなフィブリル状物を用いれば、バインダ樹脂が付着する段階で形状が変化しにくいため、網状の樹脂炭化物を容易に形成できる。
架橋構造を効率的に形成するという点からフィブリル状物を構成する繊維の表面自由エネルギーが、PAN系炭素繊維の表面自由エネルギーより大きいものが好ましい。フィブリル状物を構成する繊維の表面自由エネルギーがPAN系炭素繊維より大きいことで、バインダ樹脂が繊維に優先的に付着し、炭素化後、網状の架橋構造が形成されやすくなる。
フィブリル状物の割合は、炭素繊維紙の総質量に対して、10〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。フィブリル状物の割合が10質量%以上であれば、網状の樹脂炭化物を十分に発達させることができ、RFB用電極に十分な機械強度を付与できる。また、フィブリル状物は、バインダ樹脂を押圧下で硬化するときに生じるうねりやシワ等の外力に打ち勝つための補強材としても作用する。フィブリル状物の割合が10質量%以上であれば、補強材としての効果が充分に得られる。一方、フィブリル状物の割合が70質量%以下であれば、PAN系炭素繊維に付着するバインダ樹脂の不足によりRFB用電極が崩れやすくなったり、厚み制御が難しくなったりすることを防ぐことができる。
抄紙方法としては、液体の媒体中にPAN系炭素繊維とフィブリル状物の混合物を分散させて抄造する湿式法、空気中にPAN系炭素繊維とフィブリル状物の混合物を分散させて降り積もらせる乾式法などが適用できる。これらの中でも、PAN系炭素繊維およびフィブリル状物が単繊維に分散するのを助け、分散した単繊維が再び収束するのを防止できる観点から、湿式法が好ましい。
PAN系炭素繊維とフィブリル状物を混合する方法としては、第二の実施形態の(B1)工程において説明した、PAN系炭素繊維と非PAN系炭素繊維を混合する方法と同じである。
なお、炭素繊維紙は、PAN系炭素繊維およびフィブリル状物とともに、非PAN系炭素繊維やバインダ短繊維を抄紙して作製してもよい。
((F2)工程)
(F2)工程は、(F1)工程で得られた炭素繊維紙に、炭素化後の残炭率が20質量%以上であるバインダ樹脂を含浸させ、前駆体シートを作製する工程である。
バインダ樹脂の含浸方法は、第一の実施形態において説明した(A2)工程と同じである。
なお、バインダ樹脂と炭素フィラーとを混合してバインダ樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(F)」ともいう。)を炭素繊維紙に含浸させてもよい。また、樹脂組成物(F)に、炭素化後の残炭率が15質量%以下である樹脂からなる粒子を配合してもよい。
((F3)工程)
(F3)工程は、(F2)工程で得られた前駆体シートを加熱し、バインダ樹脂を硬化させる工程である。
前駆体シートを加熱する方法および条件は、第一の実施形態において説明した(A3)工程と同じである。
((F4)工程)
(F4)工程は、(F3)工程後の前駆体シートを炭素化し、カーボンペーパーを作製する工程である。
前駆体シートを炭素化する方法および条件は、第一の実施形態において説明した(A4)工程と同じである。
(F4)工程により、炭素繊維紙に含浸したバインダ樹脂が炭素化され、炭化物となる。この炭化物は不定形である。また、上述したように、フィブリル状物は炭素化により消失するが、フィブリル状物の周りに付着したバインダ樹脂が炭化物として残り、網状構造の炭化物が形成される。PAN系炭素繊維同士は不定型な炭化物と、架橋構造の炭化物により結着される。その結果、PAN系炭素繊維同士が不定形な炭化物で結着されてできる大きな細孔と、PAN系炭素繊維同士が網状構造の炭化物で架橋されて形成される小さな細孔とを有するカーボンペーパーが得られる。そのため、細孔分布において少なくとも2つのピークを有することが可能となり、比表面積を0.5〜1.5m/gに制御しやすい。
こうして得られたカーボンペーパーをRFB用電極として用いる。
(他の工程)
本発明の第六の実施形態のRFB用電極の製造方法は、(F3)工程と(F4)工程との間に、前処理工程および酸化処理工程の少なくとも一方を有していてもよい。
前処理工程および酸化処理工程は、第一の実施形態において説明した前処理工程および酸化処理工程と同様である。
<作用効果>
以上説明した本発明のRFB用電極の製造方法によれば、比表面積が0.5〜1.5m/gであるカーボンペーパーを製造できる。本発明のRFB用電極の製造方法により得られるRFB用電極を用いれば、低コスト化および小型化を実現でき、短絡しにくく、電池性能に優れたRFBが得られる。
<他の実施形態>
本発明のRFB用電極の製造方法は、上述した製造方法に限定されない。
例えば、第一の実施形態や第二の実施形態において、前駆体シート中のバインダ樹脂を硬化する前に、前駆体シートをバインダ樹脂の貧溶媒に浸漬させてバインダ樹脂を凝固させてもよい。また、第一の実施形態や第二の実施形態において、炭素繊維紙にバインダ樹脂を含浸させる際にポリビニルピロリドンも含浸させ、前駆体シート中のバインダ樹脂とポリビニルピロリドンとを相分離させた後、バインダ樹脂を凝固させてもよい。さらに、第一の実施形態や第二の実施形態において、PAN系炭素繊維とフィブリル状物とを用いて抄紙し、炭素繊維紙を作製してもよい。
「レドックスフロー電池」
図1は、本発明のRFBの一例を示す概略構成図である。
この例のRFB10は、水素イオンが透過する隔膜11により内部が正極室12aと負極室12bに分離された電解槽12と、正極室12aに設置された正極電極13aと、負極室12bに設置された負極電極13bと、正極電解液を貯留する正極タンク14aと、負極電解液を貯留する負極タンク14bとを備える。
正極室12aと正極タンク14aは接続配管15a、16aを介して接続され、正極電解液はポンプ17aにより正極タンク14aと正極室12aとの間で循環される。
負極室12bと負極タンク14bは接続配管15b、16bを介して接続され、負極電解液はポンプ17bにより負極タンク14bと負極室12bとの間で循環される。
本実施形態において、正極電極13aおよび負極電極13bの少なくとも一方が、本発明のRFB用電極である。
正極電極13aおよび負極電極13bのいずれか一方が本発明のRFB用電極である場合、他方の電極としては公知の電極を用いることができる。
本実施形態のRFB10は、正極電極13aおよび負極電極13bの両方が、本発明のRFB用電極であることが好ましい。
正極電極13aおよび負極電極13b以外の構成は、従来のRFBと同じものを採用できる。
以上説明した本発明の本発明のRFBは、RFB用電極を備えているので、低コスト化および小型化を実現でき、短絡しにくく、電池性能に優れる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
「測定方法」
<厚さの測定>
カーボンペーパーの厚さは、厚み測定装置(株式会社ミツトヨ製、「ダイヤルシックネスゲージ7321」)を使用して測定した。測定子の大きさは直径10mmで、測定圧力は1.5kPaとした。
<比表面積の測定>
カーボンペーパーの比表面積は、水銀ポロシメーター(Quantachrome社製、「Pore Master−60」)を用い、水銀圧入法により測定した。
<電池性能の評価>
マッフル炉にてカーボンペーパーを600℃、30分間大気雰囲気中で加熱し、これを5cm四方にカットしたものを、アノード用とカソード用に2枚準備した。陽イオン交換膜(DuPont社製、「Nafion NRE−212」)を、アノード用、カソード用のカーボンペーパーで挟持し、さらにそれらを蛇行型の電解液流路を有する2枚のカーボンセパレーターによって挟み、単セルを形成した。
正極電解液および負極電解液としては硫酸バナジウム水溶液(バナジウムイオン濃度2M,硫酸イオン濃度4M)を用いた。25℃にて正極電解液および負極電解液を20mL/minで循環供給しながら、電流密度40mA/cmにおける電圧を測定した。
「実施例1」
PAN系炭素繊維(平均繊維径:7μm、平均繊維長:3mm)100質量部を水中に均一に分散して単繊維に解繊し、十分に分散したところに、バインダ短繊維としてポリビニルアルコール短繊維(株式会社クラレ製、「VBP105−1」、平均繊維長:3mm)40質量部、およびポリエチレンテレフタレート短繊維30質量部を均一に分散し、分散液を調製した。
次いで、標準角型シートマシン(熊谷理機工業株式会社製、「No.2555」)を用いてJIS P 8209法に準拠して手動により分散液を抄紙した後、乾燥させて、目付が40g/mの炭素繊維紙を得た。炭素繊維の分散状態は良好であった。
別途、炭素化後の残炭率が15質量%以下の樹脂からなる粒子として、真球状のポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(平均粒子径:233nm)を20質量%含む水分散液(PMMA粒子水分散液)を用意した。
先に得られた炭素繊維紙をPMMA粒子水分散液に含浸させ、室温にて8時間乾燥させることによって、目付が98g/mであり、PMMA粒が付与された炭素繊維紙を得た。
次いで、PMMA粒が付与された炭素繊維紙をフェノール樹脂(DIC株式会社製、「フェノライトJ−325」)を13質量%含むメタノール溶液に含浸させ、熱風乾燥機にて80℃で1時間乾燥させることによって、目付が115g/mであり、フェノール樹脂およびPMMA粒が付与された前駆体シートを得た。これは、PAN系炭素繊維100質量部に対し、フェノール樹脂を72質量部付着させたことになる。また、フェノール樹脂100質量部に対し、PMMA粒子を340質量部混合させたことになる。
次いで、得られた前駆体シートを2枚重ね合わせ、これを2枚のシリコーン系離型剤をコートした紙に挟んだ後、バッチプレス装置で180℃、30kPaの条件下で3分間加熱加圧した。
次いで、加熱加圧した前駆体シートをバッチ炭素化炉にて、窒素ガス雰囲気中、2000℃の条件下で1時間炭素化し、厚さ220μmのカーボンペーパーを得た。
得られたカーボンペーパーについて、比表面積を求めた。結果を表1に示す。また、得られたカーボンペーパーの表面を走査型電子顕微鏡により観察したところ、分散したPAN系炭素繊維同士が炭素化したフェノール樹脂により結着していた。また、PMMA粒子は消失しており、この消失したPMMA粒子の平均粒子径に依存した大きさの空隙が形成されていた。
得られたカーボンペーパーをRFB用電極として用い、図1に示すRFB10を製造した。ポンプ17a、17bを稼働させ、正極タンク14aと正極室12aとの間で正極電解液を循環させ、負極タンク14bと負極室12bとの間で負極電解液を循環させ、正極室12aおよび負極室12bに設置された各RFB用電極上で酸化還元反応を進行させることで充放電を行い、電池性能を評価した。結果を表1に示す。
「実施例2」
炭素繊維として、平均繊維長6mmにカットしたPAN系炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、「TR50S」、平均繊維径:7μm)20質量部と平均繊維長6mmにカットした非PAN系炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、「K223SE」)80質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ200μmのカーボンペーパーを作製し、比表面積を求めた。
また、得られたカーボンペーパーを用いた以外は、実施例1と同様にしてRFBを製造し、電池性能を評価した。結果を表1に示す。
「実施例3」
PMMA粒子水分散液の代わりに、炭素フィラーとして熱分解黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、「PC−H」)を20質量%含む水分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ195μmのカーボンペーパーを作製し、比表面積を求めた。結果を表1に示す。
また、得られたカーボンペーパーを用いた以外は、実施例1と同様にしてRFBを製造し、電池性能を評価した。結果を表1に示す。
「実施例4」
PAN系炭素繊維(平均繊維径:7μm、平均繊維長:3mm)100質量部を湿式短網連続抄紙装置のスラリータンクで水中に均一に分散解繊し、十分に分散したところに、バインダ短繊維としてポリビニルアルコール短繊維(株式会社クラレ製、「VBP105−1」、平均繊維長:3mm)20質量部、およびフィブリル状物としてポリエチレンパルプ(三井化学株式会社製、「SWP」、濾水度:450mL(JIS P 8121のパルプ濾水度試験法(1)カナダ標準型で測定))100質量部を均一に分散し、送り出した。
送り出されたウェブを短網板に通し、ドライヤー乾燥後、目付40g/m、長さ100mの炭素繊維紙を得た。
得られた炭素繊維紙をフェノール樹脂(DIC株式会社製、「フェノライトJ−325」)を13質量%含むメタノール溶液に含浸させ、熱風乾燥炉にて120℃で10分乾燥させることによって、目付が58g/mであり、フェノール樹脂が付与された前駆体シートを得た。これは、PAN系炭素繊維100質量部に対し、フェノール樹脂を100質量部付着させたことになる。
次いで、得られた前駆体シートを2枚貼り合せて一対のエンドレスベルトを備えた連続式加熱プレス装置(ダブルベルトプレス装置:DBP)にて連続的に加熱し、表面が平滑化されたシート(幅:30cm、長さ:100m)を得た。このときの予熱ゾーンでの予熱温度は150℃、予熱時間は5分であり、加熱加圧ゾーンでの温度は250℃、プレス圧力は線圧8.0×10N/mであった。なお、シートがベルトに貼り付かないように2枚の離型紙の間に挟んでDBPを通した。
次いで、このシートを窒素ガス雰囲気中、500℃の連続焼成炉にて5分間フェノール樹脂の硬化処理および前炭素化した後、窒素ガス雰囲気中、2000℃の連続焼成炉において5分間加熱し、炭素化することで厚さ200μmのカーボンペーパーを得た。
得られたカーボンペーパーについて、比表面積を求めた。結果を表1に示す。
また、得られたカーボンペーパーを用いた以外は、実施例1と同様にしてRFBを製造し、電池性能を評価した。結果を表1に示す。
「比較例1」
炭素繊維紙をPMMA粒子水分散液に含浸させなかった以外は、実施例1と同様にして厚さ190μmのカーボンペーパーを作製し、比表面積を求めた。結果を表1に示す。
また、得られたカーボンペーパーを用いた以外は、実施例1と同様にしてRFBを製造し、電池性能を評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006855843
表1から明らかなように、各実施例で得られたカーボンペーパーをRFB用電極として用いたRFBは、電池性能に優れていた。
一方、比表面積が0.5m/g未満であるカーボンペーパーをRFB用電極として用いた比較例1のRFBは、各実施例のRFBに比べて電池性能に劣っていた。
10 レドックスフロー電池
11 隔膜
12 電解槽
12a 正極室
12b 負極室
13a 正極電極
13b 負極電極
14a 正極タンク
14b 負極タンク
15a 接続配管
15b 接続配管
16a 接続配管
16b 接続配管
17a ポンプ
17b ポンプ

Claims (7)

  1. ポリアクリロニトリル系炭素繊維とバインダ樹脂の炭化物とを含むカーボンペーパーからなり、水銀圧入法により測定される比表面積が0.5〜1.5m/gである、レドックスフロー電池用電極。
  2. 前記カーボンペーパーは水銀圧入法により測定される細孔分布において少なくとも2つのピークを有する、請求項1に記載のレドックスフロー電池用電極。
  3. 前記カーボンペーパーは炭素フィラーをさらに含む、請求項1または2に記載のレドックスフロー電池用電極。
  4. 前記炭素フィラーが黒鉛である、請求項3に記載のレドックスフロー電池用電極。
  5. 前記カーボンペーパーはポリアクリロニトリル系炭素繊維以外の炭素繊維をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極の製造方法であって、
    ポリアクリロニトリル系炭素繊維と、炭素繊維以外の繊維からなるフィブリル状物とを含む炭素繊維紙を用いて前記カーボンペーパーを製造する、レドックスフロー電池用電極の製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極を備えた、レドックスフロー電池。
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