JP4127609B2 - X線診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線診断装置に関し、特に、マスク像のX線曝射位置に基づいた造影剤の追跡撮影が可能なX線診断装置に関する。
を特徴とする請求項4記載のX線診断装置。
【0002】
【従来の技術】
X線診断装置とは、被験者の体内を透過したX線の強弱を濃淡画像として表示する画像装置であり、診断・治療等の目的に応じて種々のものが存在する。この透過したX線像を可視化する手段は、大きく分けて撮影と透視の二つの方法に分けられる。例えば、透視を利用したX線診断装置は、収集したX線画像をテレビジョンのモニタにリアルタイムに動画として表示することができ、即時性に優れている。また、撮影を利用したX線診断装置は、強度のX線照射によりフィルムに写し込まれたX線像を、高い空間分解能と鮮鋭度にて提供することが可能である。
【0003】
このX線診断装置においては、DSA(Digital Subtraction Angiography)と呼ばれる血管造影剤透視・撮影方法ある。このDSAは、血管造影画像(コントラスト像)から造影前の背景画像(マスク像)を減算し、造影された血管のみを表示するX線透視・撮影方法である。特に、造影剤が高濃度の塊(ボーラス)となるように被検体に注入し、当該塊の血管内の移動を追跡してコントラスト像を得る手法を、ボーラスチェースDSAと呼ぶ。また、撮影系を体軸中心に回転させながら注入した造影剤の移動を追跡しコントラスト像を得る手法を、回転DSAと呼ぶ。
【0004】
ボーラスチェースDSAでは、例えば下肢の検査であれば、マスク像の収集において撮影系をつま先から腹部に移動させ、ボーラスの追跡(コントラスト像の収集)は腹部からつま先に移動させるといった様に、できるだけ検査時間を短縮する形態にて実行される。これは、検査時間の短縮による患者負担の軽減、撮影時の患者の動きによる動態ボケの軽減等を図るためである。正確にDSAを行うためには、撮影系の移動を停止することなしで、且つマスク像を収集した同じ位置にてコントラスト像を収集するためのX線を曝射する必要がある。収集したマスク像とコントラスト像とが対応するものでないと、引き算をしても正確なサブトラクション像を得ることができないからである。
【0005】
また、回転DSAの術式においても、患者への検査時間の短縮、患者の動態ボケを低減するために、往路でマスク像を収集し、復路でコントラスト像を収集する。このとき、往路及び復路ともに撮影系を停止せす、また、コントラスト像収集のためのX線をマスク像と同じ位置にて曝射する必要がある。なお、造影剤が動脈から静脈へ流入する動的な撮影を行うため、続けてもう一度往路でコントラスト像を収集することもある。
【0006】
ところで、従来のX線診断装置によるボーラスチェースDSA及び回転DSAでは、時間の経過時間に基づいてX線曝射のタイミングを図りマスク像、コントラスト像を収集している。そのため、例えばサブトラクション像に位置ずれが発生する場合がある。特に、マスク像とコントラスト像とのそれぞれの収集方向が逆である場合、或いは、ある位置に対し単一のX線曝射位置のみ設定されている場合等には、移動しながらのX線曝射では実際画像となるX線の曝射位置が異なり、サブトラクション像に位置ずれが発生することがある。
【0007】
また、コントラスト像収集の途中での寝台、Cアーム又は支持器の移動を停止した場合、時間によってX線曝射のタイミングを管理しているから、マスク像を収集した位置で停止できず、造影剤の流れを追うことができない。
【0008】
さらに、マスク像を収集した位置で停止したとしても、X線曝射開始位置と終了位置とを考慮しない単一のX線曝射位置のみ設定されている場合、実際画像となるX線の曝射位置とは異なってしまい、サブトラクション像に位置ずれが発生する可能性がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、マスク像を撮影する位置とコントラスト像を撮影する位置との間にずれのないサブトラクション像を撮影可能なX線診断装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0011】
請求項1に記載の発明は、被検体を載置する寝台と、前記被検体に対してX線を曝射するX線発生手段と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出手段とが設けられた支持器と、前記寝台に対する前記支持器の相対的位置を移動させる移動機構と、前記相対的位置を検出する位置検出手段と、前記移動機構により、第1の方向に沿って前記支持器の相対的位置を移動させながら、X線を曝射し第1の画像を撮影する場合、X線曝射のためのパルスの開始時の前記相対的位置と前記パルスの終了時の前記相対的位置とを取得し記憶する位置情報記憶手段と、前記移動機構により、前記第1の方向に沿って前記支持器を移動させながら、前記被検体に造影剤を注入した後にX線を曝射し第2の画像を撮影する場合、前記位置情報記憶手段に記憶された前記第1の画像に関する前記パルスの開始時の前記相対的位置にて前記第2の画像に関するX線曝射のためのパルスを開始し、且つ前記第1の画像に関する前記パルスの終了時の前記相対的位置にて前記第2の画像に関するX線曝射のためのパルスを終了するように、前記X線発生手段のX線曝射タイミングを制御する制御手段と、前記第1の方向に沿った移動において前記支持器を停止する場合には、前記位置情報記憶手段に記憶された前記相対的位置に関する情報に基づいて、最寄りの第1の画像に関する前記パルスの開始時の前記相対的位置と前記パルスの終了時の前記相対的位置との間の位置にて前記支持器が停止するように、前記移動機構を制御する移動機構制御手段と、前記第2の画像から前記第1の画像を差し引くことで、第3の画像を生成する手段と、を具備することを特徴とするX線診断装置である。
請求項5に記載の発明は、被検体を搭載する寝台と、前記被検体に対してX線を曝射するX線発生手段と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出手段とが設けられた支持器と、前記寝台に対する前記支持器の相対的位置を移動させる移動機構と、前記相対的位置を検出する位置検出手段と、前記移動機構により、第1の方向に沿って前記支持器の相対的位置を移動させながら、X線を曝射し第1の画像を撮影する場合、X線曝射のためのパルスの開始時の前記相対的位置と前記パルスの終了時の前記相対的位置をと取得し記憶する位置情報記憶手段と、前記移動機構により、前記第1の方向及び当該第1の方向とは異なる第2の方向に沿って前記支持器を移動させながら、前記被検体に造影剤を注入した後にX線を曝射し第2の画像を撮影する場合、前記位置情報記憶手段に記憶された第1の画像に関する前記パルスの終了時の前記相対的位置にて前記第2の画像に関するX線曝射のためのパルスを開始し、且つ前記第1の画像に関する前記パルスの開始時の前記相対的位置にて前記第2の画像に関するX線曝射のためのパルスを終了するように、前記X線発生手段のX線曝射タイミングを制御する制御手段と、前記第1の方向に沿った移動において前記支持器を停止する場合には、前記位置情報記憶手段に記憶された前記相対的位置に関する情報に基づいて、最寄りの第1の画像に関する前記X線曝射のためのパルス開始時の前記相対的位置と前記パルス終了時の前記相対的位置との間の位置にて前記支持器が停止するように、前記移動機構を制御する移動機構制御手段と、前記第2の画像から前記第1の画像を差し引くことで、第3の画像を生成する手段と、を具備することを特徴とするX線診断装置である。
【0013】
このような構成によれば、マスク像を撮影する位置とコントラスト像を撮影する位置との間にずれのないサブトラクション像を撮影可能なX線診断装置を実現することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
図1は、本実施形態に係るCアーム構造のX線診断装置10の外観を示した図である。
【0016】
図1に示すように、X線診断装置10は、アンギオ装置11、寝台21、情報処理部29(図1には示さず。図2及び図4参照。)からなる。アンギオ装置11は、X線発生部12、X線検出器14、支点15、Cアーム16、固定アーム17、接続部18、基台19を有し、寝台21は、天板22、脚24を有する。
【0017】
図1に示すように、Cアーム16の一端にはX線発生部12、他端にはX線検出器14が設けられており、双方を対向配置させて固定保持する構造になっている。Cアーム16の背面または側面にはレールが設けられており、固定アーム17に設けられた接続部18で挟み込むことにより当該Cアーム16はスライド可能になっている。固定アーム17は支点15によって支えられ、例えば天井に固設された基台19に固定される。
【0018】
Cアーム16の一端に設けられたX線発生部12は、被検体に対しX線を曝射するX線管球と、当該X線管球から曝射されたX線をコリメートするX線絞り装置を有している。X線管球は、X線を発生する真空管であり、図示していない高電圧発生装置で発生された高電圧により電子を加速させ、ターゲットに衝突させることでX線を発生させる。
【0019】
Cアーム16の他端に設けられたX線検出器14は、例えばI.I.(イメージ・インテンシファイア)と光学系とによって構成されている。X線検出器14は、I.I.によって被検者を透過したX線情報を光学情報に変換し、光学系によってこの光学情報を光学レンズで集光する。なお、I.I.以外の検出装置としては、X線平面検出器が挙げられる。このX線検出器は、被検体を透過したX線を光電膜に当てることで電子正孔を生成し、これを半導体スイッチにおいて蓄積し、電気信号として読み出すことでX線信号を検出するものである。本X線診断装置においては、いずれの検出器を使用する構成であってもよい。
【0020】
寝台21は、被検体と搭載するための天板22と、天板22を支える脚24とからなる。天板22は鉛直方向及び水平方向に移動可能となっており、これにより被検体は適当な撮影位置に配置される。
【0021】
図2は、X線診断装置10の機能ブロック図である。同図に基づいて、各構成要素が有する機能について説明する。
【0022】
X線診断装置10は、X線発生部12、X線検出器14、状態検出部30、X線曝射位置情報メモリ部34、データ収集部36、前処理部38、画像作成部40、画像表示部42、制御部44、画像メモリ46、操作部48を具備している。
【0023】
状態検出部30は、Cアーム16の位置情報を検出する検出器である。Cアーム16の位置情報とは、Cアーム16の寝台21(或いは被検体)に対する相対的位置を把握するための情報であり、例えば各方向に関する基準点からの距離、或いは回転角度等である。状態検出部30には、例えば光学的検出器、或いは各移動方向に関するCアーム駆動部32に対応するように設けられた機械的な検出器、或いは磁気方式、刷子式、あるいは光電式等となる、いわゆるアブソリュートエンコーダ等を使用することができる。また、状態検出部30は、ロータリエンコーダあるいはリニアエンコーダの何れの形態であってもよい。
【0024】
X線曝射位置情報メモリ部34は、X線曝射設定、X線曝射開始位置、X線曝射終了位置、Cアーム動作方向及び動作速度、撮影X線条件等をインデックス毎に記憶する。ここで、インデックスとは、マスク像及びコントラスト像を収集する位置を表す指標であり、画像収集方向、X線曝射間隔、撮影領域等に基づいて制御部44によって決定される。
【0025】
図3は、X線曝射設定、X線曝射開始位置、X線曝射終了位置、Cアーム動作方向及び動作速度、撮影X線条件等をインデックス毎に記憶するX線曝射位置情報メモリ部34の概念図を示している。
【0026】
データ収集部36は、上記X線検出器14から入力されるX線データを収集し、デジタル信号に変換する。また、データ収集部36は、状態検出部30から、Cアーム駆動部32の作用によって変化するCアーム16の位置情報を、収集フレーム毎に収集する。各位置情報は、フレーム毎の画像に付属され、属性情報としても管理される。
【0027】
前処理部38は、データ収集部36にてデジタル変換されたX線データに対し、種々のキャリブレーション処理等を行う。
【0028】
画像作成部40は、撮影されたX線画像データに対して所定の処理を施し、マスク像、コントラスト像、サブトラクション像等を生成する。これらの画像は、画像メモリ46に記憶される。
【0029】
画像表示部42は、画像作成部40により生成された画像データを表示する。
【0030】
制御部44は、X線画像データの収集に関する制御、及び収集した画像データの画像処理に関する制御を行う。また、制御部44は、マスク像撮影及びコントラスト像収集に関する制御、具体的には、Cアームの移動、X線曝射位置情報メモリ部34から読み出した位置情報と状態検出部30から入力した位置情報との比較、当該比較に基づくX線曝射等に関する制御を行う。
【0031】
画像メモリ46は、画像作成部40によって得られたX線画像を記憶する。
【0032】
操作部48は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備えた入力装置である。具体的には、X線曝射スイッチ、Cアーム移動方向・移動速度制御スイッチ、画像収集方向入力スイッチ、撮影領域、X線曝射位置間隔等を入力・設定するためのインタフェースが設けられている。
【0033】
上記構成を有するX線診断装置10により、DSA術式が実行される。このDSA術式には、大きく分けてボーラスチェースDSA、回転DSAとがある。
【0034】
(ボーラスチェースDSA)
ボーラスチェースDSAとは、造影剤が高濃度の塊(ボーラス)となるように被検体に注入し、この塊の血管内の移動を追跡してコントラスト像を取得する撮影形態である。このボーラスチェースDSAでは、通常図4に示すように、撮影系(X線発生手段12及びX線検出手段が設けられたCアーム16)が、被検体の体軸に沿って移動する。この移動は、マスク像収集とコントラスト収集とで同一方向となる場合もあり、逆方向となる場合もある。また、例えばコントラスト像収集での移動において、撮影者の意志等により任意のタイミングにて任意の位置で撮影系を停止させることもある。
【0035】
(回転DSA)
一方、回転DSAとは、当該被検体に注入した造影剤の移動を追跡してコントラスト像を取得する場合に、撮影系を図5に示すように被検体の体軸中心に回転させるものである。通常、マスク像を往路A、コントラスト像を復路Bにて撮影する。この往路Aと復路Bとから動脈に関するDSA画像は十分に得られるが、静脈等に関するDSA等を撮影する場合には、さらに往路Cによるコントラスト像撮影を行う場合ばある。この回転DSAにおいても、例えばコントラスト像収集での移動において、撮影者の意志等により任意のタイミングにて任意の位置で撮影系を停止させる場合がある。
【0036】
(DSA術式)
次に、上記のように構成したX線診断装置10のDSA術式について、図6、7、8、9を参照しながら説明する。なお、以下においては、説明を簡単にするためボーラスチェースDSAを例とする。
【0037】
図6、7、8、9は、本DSA術式において制御部44が実行する一連の処理を示したフローチャートであり、大きく撮影条件設定処理(図6)、マスク像撮影処理(図7)、コントラスト像撮影・サブトラクション処理(図8、9)に大きく分けることができる。
【0038】
i)撮影条件設定
図6において、まず操作者の入力に応じて、X線曝射位置の間隔を設定し(ステップS1)、続いて撮影領域を設定する(ステップS2)。撮影領域は、例えば「腹部から足先」といった具合に、撮影領域の両端の部位を設定する。
【0039】
続いて、操作者の入力に応じて、マスク像、コントラスト像のそれぞれの収集方向を設定する(ステップS3)。本実施形態では、マスク像を体軸に沿った腹部から足先方向、コントラスト像を体軸に沿った足先から腹部方向にて収集するものとする。
【0040】
S1〜S3において設定された内容から、X線曝射を行うCアームの位置とインデックス番号とが、例えば図3に示した形態にてX線曝射位置情報メモリ部34に設定される(ステップS4)。
【0041】
ii)マスク像撮影処理
撮影条件設定が完了するとマスク像撮影へと移行し、X線曝射スイッチがONされ(ステップS5)、撮影条件に基づいて体軸方向へCアームを移動させる(ステップS6)。このとき制御部44は、状態検出部30からCアームの位置情報を適宜取得しており(ステップS8)、Cアームの位置とステップS4にて設定されたX線曝射予定位置とが一致するか否かの判断を行っている(ステップS9)。このステップS9にて、一致すると判断された場合には、設定された予定位置においてX線曝射を実行する(ステップS10)。一方、ステップS9にて、一致しないと判断された場合には、Cアームを移動させながらの位置情報取得を行い、設定した予定位置と一致した時点でX線曝射が実行される。
【0042】
ステップS10において実行されたX線曝射の開始及び終了時のCアーム位置、及び撮影したマスク像に関する撮影条件は、X線曝射位置情報メモリ部34に保存され(ステップS11、ステップS13)、撮影されたマスク像は画像表示部42に表示され、画像メモリ46に保存され、一のマスク像撮影が完了する。
【0043】
ステップS7からステップS13までの処理は、ステップS4において設定した撮影位置での撮影がすべて完了するまで繰り返され、最終位置でも撮影が完了した場合には、コントラスト像の撮影処理へと移行する。
【0044】
iii)コントラスト像撮影処理
マスク像撮影処理が完了すると、コントラスト像の収集開始位置にCアームを移動させ(ステップS15)、X線曝射位置情報メモリ部34から位置情報、撮影条件を取得する(ステップS16)。
【0045】
制御部44は、状態検出部30からの現在のCアームの位置及び移動速度とステップS16にて取得した位置情報等とを比較して、現在のCアームの移動方向とマスク像収集におけるCアームの移動方向とが同方向である場合にはステップS18aに移行し、逆方向である場合には18cに移行する。また、特定の位置でのコントラスト像を望む等の理由によりCアームを停止させた場合には、ステップ18bへと移行する。各ステップでは、次の様な処理がそれぞれ実行される。
【0046】
図10、11、12は、それぞれステップ18a、18c、18bにおける処理を説明するための図であり、マスク像及びコントラスト像についてのX線曝射(全n回)のON・OFFを表すタイミングチャートを示している。なお、横方向は体軸(長手)方向である。
【0047】
まず、ステップ18aに移行した場合には、図10に示すように、マスク像撮影における第1回目のX線曝射開始位置及び終了位置を、それぞれコントラスト像のための第1回目のX線曝射開始位置及び終了位置として選択する(ステップS18a)。さらに、マスク像撮影における第2回目以後の各X線曝射開始・終了位置を、コントラスト像のための第2回目以後のX線曝射開始位置・終了に対応させて選択する。
【0048】
次に、ステップ18cに移行した場合には、図11に示すように、マスク像撮影における第n回目のX線曝射終了位置及び開始位置を、それぞれコントラスト像のための第1回目のX線曝射開始位置及び終了位置として選択する(ステップS18c)。さらに、マスク像撮影における第n−1回目以前の各X線曝射終了・開始位置を、コントラスト像のための第2回目以後のX線曝射開始位置・終了に対応させて選択する。
【0049】
最後に、ステップ18bに移行した場合には、例えば図12に示すようにコントラスト像のための第1回目のX線曝射前にCアームが停止しているのであれば、当該コントラスト像のための第1回目のX線曝射開始位置を、マスク像撮影における第1回目のX線曝射開始位置及び終了位置の中間位置とする(ステップ18b)。この様に中間位置を選択するのは、次の理由による。
【0050】
すなわち、通常ボーラスチェイスDSA(或いは、回転DSA)では、Cアームを所定の速度にて移動させながら或いは加速・減速させながら、各マスク像及び各コントラスト像を恣撮影する。従って、所定のパルス幅にてX線を曝射すると、Cアームの移動にて発生する画像のブレが発生する。マスク像とコントラスト像との撮影条件、撮影位置等を一致させるのは、双方の画像でなるべく近いブレを発生させるためでもある。
【0051】
しかしながら、Cアームを所定の速度にて移動させながらマスク像を撮影し、ステップ18bの様にコントラスト像の撮影においてCアームを停止した場合には、被検体の被爆を防ぐ観点からも、双方の画像で近いブレを発生させるのは困難である。
【0052】
そこで、本X線診断装置では、上記の様にマスク像撮影におけるX線曝射開始位置及び終了位置の中間位置をコントラスト像の撮影開始位置とする。こうすることで、マスク像で発生したブレを平均化することができ、その結果、マスク像収集時の移動による影響を最小限に抑えることができる。
【0053】
制御部44は、図8のステップ18a、18b、18cの何れかにおいて選択されたCアーム位置を設定し(ステップS19)、また、状態検出部30から適宜Cアーム位置情報を取得し(ステップS20)、当該設定されたCアーム位置と取得した位置情報とが一致するか否かの判別を行う(ステップS21)。ステップS21において一致しないと判別された場合には、ステップS20でのCアームを移動させながらの位置情報の取得を継続する。一方、ステップS21において一致すると判別された場合には、マスク像と同一の撮影条件にてコントラスト像収集のためのX線を曝射する(ステップS22)。
【0054】
こうして取得されたコントラスト像に、対応する(同位置にて取得された)マスク像をサブトラクションする処理を施して、サブトラクション像が生成される(ステップS24)。得られたサブトラクション像は画像メモリ46に保存される(ステップS24)。
【0055】
ステップS25において、撮影されたコントラスト像が規定の枚数に達したか、或いはX線曝射スイッチがOFFされたか否かの判別がなされ(ステップS25)、電源がOFFされておらず規定の枚数に達していない場合には、ステップS26へと移行する。
【0056】
ステップS26では、Cアームが体軸方向に停止状態か否か、すなわちステップS22においてコントラスト像を撮影した位置でさらにコントラスト像を撮影するか否かの判別を行う(ステップS26)。停止した状態であればステップS22に移行し、同位置でのさらなるコントラスト像撮影(X線曝射)が繰り返される。一方、Cアームが停止していなければ、次の位置でのコントラスト像を撮影するためステップS16に移行して、記述の処理を繰り返す。
【0057】
また、ステップS25において、撮影されたコントラスト像が規定の枚数に達した、或いはX線曝射スイッチがOFFされたと判別された場合には、一連の撮影作業が完了する。
【0058】
以上説明した処理を、取得したマスク像、コントラスト像、サブトラクション像にて概念的に表すと図13(a)、(b)、(c)の様になる。なお、各図中の円は、撮影された画像中の関心領域を表す。また、図13(a)、(b)、(c)にて示す例でのコントラスト像収集は、腹部から足先の一方向のみとしている。
【0059】
図13(a)に示すように、足先から腹部にかけて割り振られたインデックス毎に対応するマスク像を取得する。そして、図13(b)に示すように、腹部から足先にかけて割り振られたインデックス毎に対応するコントラスト像を取得する。こうして得られた、インデックス毎の各マスク像及びコントラスト像から、図13(c)に示すようにサブトラクション像が生成される。
【0060】
以上ボーラスチェースDSA術式を例として説明した。しかし、同様の技術的思想は、回転DSAにも適用可能である。この場合、インデックスは角度に関する指標となり、Cアームの位置、X線曝射開始位置及び終了位置等は、角度にて管理されることとなる。
【0061】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0062】
本X線診断装置10では、Cアームの移動に関する制御、及びマスク像に関するX線曝射位置とコントラスト像に関するX線曝射位置との対応は、位置及び角度によって管理される。従って、マスク像とコントラスト像との対応は正確なものとなり、より正確なサブトラクション像を生成するこが可能である。
【0063】
また、コントラスト像の撮影においてCアームの移動を停止させた場合には、対応するインデックスのマスク像に関するX線曝射開始位置と終了位置との中間位置にて、コントラスト像の撮影を行う。従って、マスク像とコントラスト像とのブレを最小限に抑えることができる。
【0064】
さらに、本X線診断装置10では、コントラスト像収集のためのX線曝射タイミングを位置情報にて管理している。従って、Cアームを任意のタイミングで任意の方向に移動した場合、例えば図14に示す様な種々のCアーム移動を伴う場合であっても、マスク像を撮影する位置とコントラスト像を撮影する位置との間にずれのないサブトラクション像を撮影することができる。
【0065】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変形例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0066】
以上本発明によれば、マスク像を撮影する位置とコントラスト像を撮影する位置との間にずれのないサブトラクション像を撮影可能なX線診断装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本実施形態に係るCアーム構造のX線診断装置10の外観を示した図である。
【図2】図2は、X線診断装置10の機能ブロック図である。
【図3】図3は、X線曝射設定、X線曝射開始位置、X線曝射終了位置、Cアーム動作方向及び動作速度、撮影X線条件等をインデックス毎に記憶するX線曝射位置情報メモリ部34の概念図を示している。
【図4】図4は、ボーラスチェースDSAにおけるX線診断装置の動作を説明するための図である。
【図5】図5は、回転DSAにおけるX線診断装置の動作を説明するための図である。
【図6】図6は、DSA術式において制御部44が実行する撮影条件設定処理を示したフローチャートである。
【図7】図7は、DSA術式において制御部44が実行するマスク像撮影処理を示したフローチャートである。
【図8】図8は、DSA術式において制御部44が実行するサブトラクション処理を示したフローチャートである。
【図9】図9は、DSA術式において制御部44が実行するサブトラクション処理を示したフローチャートである。
【図10】図10は、マスク像及びコントラスト像についてのX線曝射(全n回)のON・OFFを表すタイミングチャートを示している。
【図11】図11は、マスク像及びコントラスト像についてのX線曝射(全n回)のON・OFFを表すタイミングチャートを示している。
【図12】図12は、マスク像及びコントラスト像についてのX線曝射(全n回)のON・OFFを表すタイミングチャートを示している。
【図13】図13(a)、(b)、(c)は、取得したマスク像、コントラスト像、サブトラクション像にてDSA処理を概念的に示した図である。
【図14】図14は、マスク像収集及びコントラスト像収集におけるCアーム移動制御の組み合わせを示している。
【符号の説明】
10…X線診断装置
11…アンギオ装置
12…X線発生部
14…X線検出器
15…支点
16…Cアーム
17…固定アーム
18…接続部
19…基台
21…寝台
22…天板
24…脚
29…情報処理部
30…状態検出部
32…Cアーム駆動部
34…X線曝射位置情報メモリ部
36…データ収集部
38…前処理部
40…画像作成部
42…画像表示部
44…制御部
46…画像メモリ
48…操作部
Claims (8)
- 被検体を載置する寝台と、
前記被検体に対してX線を曝射するX線発生手段と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出手段とが設けられた支持器と、
前記寝台に対する前記支持器の相対的位置を移動させる移動機構と、
前記相対的位置を検出する位置検出手段と、
前記移動機構により、第1の方向に沿って前記支持器の相対的位置を移動させながら、X線を曝射し第1の画像を撮影する場合、X線曝射のためのパルスの開始時の前記相対的位置と前記パルスの終了時の前記相対的位置とを取得し記憶する位置情報記憶手段と、
前記移動機構により、前記第1の方向に沿って前記支持器を移動させながら、前記被検体に造影剤を注入した後にX線を曝射し第2の画像を撮影する場合、前記位置情報記憶手段に記憶された前記第1の画像に関する前記パルスの開始時の前記相対的位置にて前記第2の画像に関するX線曝射のためのパルスを開始し、且つ前記第1の画像に関する前記パルスの終了時の前記相対的位置にて前記第2の画像に関するX線曝射のためのパルスを終了するように、前記X線発生手段のX線曝射タイミングを制御する制御手段と、
前記第1の方向に沿った移動において前記支持器を停止する場合には、前記位置情報記憶手段に記憶された前記相対的位置に関する情報に基づいて、最寄りの第1の画像に関する前記パルスの開始時の前記相対的位置と前記パルスの終了時の前記相対的位置との間の位置にて前記支持器が停止するように、前記移動機構を制御する移動機構制御手段と、
前記第2の画像から前記第1の画像を差し引くことで、第3の画像を生成する手段と、
を具備することを特徴とするX線診断装置。 - 前記第1の方向は、前記寝台の長手方向に沿っていることを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
- 前記第1の方向は、前記寝台を軸とした回転方向に沿っていることを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
- 前記支持器が停止する位置は、最寄りの第1の画像に関する前記パルスの開始時の前記相対的位置と前記パルスの終了時の前記相対的位置との略中間位置であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のX線診断装置。
- 被検体を搭載する寝台と、
前記被検体に対してX線を曝射するX線発生手段と、前記被検体を透過したX線を検出するX線検出手段とが設けられた支持器と、
前記寝台に対する前記支持器の相対的位置を移動させる移動機構と、
前記相対的位置を検出する位置検出手段と、
前記移動機構により、第1の方向に沿って前記支持器の相対的位置を移動させながら、X線を曝射し第1の画像を撮影する場合、X線曝射のためのパルスの開始時の前記相対的位置と前記パルスの終了時の前記相対的位置をと取得し記憶する位置情報記憶手段と、
前記移動機構により、前記第1の方向及び当該第1の方向とは異なる第2の方向に沿って前記支持器を移動させながら、前記被検体に造影剤を注入した後にX線を曝射し第2の画像を撮影する場合、前記位置情報記憶手段に記憶された第1の画像に関する前記パルスの終了時の前記相対的位置にて前記第2の画像に関するX線曝射のためのパルスを開始し、且つ前記第1の画像に関する前記パルスの開始時の前記相対的位置にて前記第2の画像に関するX線曝射のためのパルスを終了するように、前記X線発生手段のX線曝射タイミングを制御する制御手段と、
前記第1の方向に沿った移動において前記支持器を停止する場合には、前記位置情報記憶手段に記憶された前記相対的位置に関する情報に基づいて、最寄りの第1の画像に関する前記X線曝射のためのパルス開始時の前記相対的位置と前記パルス終了時の前記相対的位置との間の位置にて前記支持器が停止するように、前記移動機構を制御する移動機構制御手段と、
前記第2の画像から前記第1の画像を差し引くことで、第3の画像を生成する手段と、
を具備することを特徴とするX線診断装置。 - 前記第1の方向及び前記第2の方向は、前記寝台の長手方向に沿っていることを特徴とする請求項5記載のX線診断装置。
- 前記第1の方向及び前記第2の方向は、前記寝台を軸とした回転方向に沿っていることを特徴とする請求項5記載のX線診断装置。
- 前記支持器が停止する位置は、最寄りの第1の画像に関する前記X線曝射のためのパルス開始時の相対的位置と前記パルス終了時の相対的位置との略中間位置であることを特徴とする請求項5乃至7のうちいずれか一項記載のX線診断装置。
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