JP4126650B2 - 合成樹脂製壜体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特には2軸延伸ブロー成形され、略円弧殻状に陥没形成された底部を有する合成樹脂製の壜体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、合成樹脂性の、特に透明で機械的強度、ガスバリヤー性にも優れているポリエチレンテレフタレート樹脂(以下PETと記す。)を2軸延伸ブロー成形した壜体が多用されるようになっている。
【0003】
PETその他の熱可塑性樹脂を2軸延伸ブロー成形して壜体とするには、射出成形により1次成形品としてのプリフォームを成形し、このプリフォームをブロー成形金型内で2軸方向に延伸ブロー成形を行うが、多くの場合プリフォームの開口頸部をブロー成形金型に取り付け、延伸成形が可能な温度に加熱した後、延伸ロッドにより縦軸方向に延伸させながらブロー成形する。(特許文献1参照)
【0004】
このような方法によりブロー成形を行なうと、プリフォーム内に吹き込まれる空気圧による振動現象によってプリフォームが横振れを起こして壜体に偏肉を生じ易いという欠点があるが、この欠点を解消する方法として特許文献2にはプリフォームの開口頸部をブロー成形金型に取り付け、底部を内側の延伸ロッド先端面と外側の支持ピンの先端面とで挟持しながら支持して、延伸ロッドにより縦軸方向に延伸させる同時に、支持ピンを後退させながらながらブロー成形する方法についての記述がある。
【0005】
また、多くの場合これら壜体の底部は周縁部に接地部分となる環状平坦部を有し、
安定した接地面を確保すると共に、中央部は胴部内方向に陥没形成した陥没部を有し、内容液の重量による変形に抗する十分な剛性を確保している。またこの陥没部の形状を、たとえば内容液の高温充填の際の減圧状態に耐えるように半径方向へのリブを付設する等して、用途に応じた形状としている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭57−12617号公報
【特許文献2】
特開平10−71641号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高い生産性を確保するため通常壜体の成形後まだ温度が高い状態で金型からの取り出しを実施するため、成形品の離型時に、陥没部の面剛性が不足して、陥没部が壜体下方に引っ張り込まれ陥没高さが設計値より低くなってしまう、所謂、底落ち状の変形状態となる場合があり、この変形が陥没部の周縁に位置する環状平坦部の形状に影響を及ぼし、接地性が不良になる等の問題があり、また外観性の点からも問題であり、より円滑に離型可能で底部陥没部の底落ちを抑制することのできる底部の形状の創案が課題となっている。
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、壜本の底部の陥没部の底落ちを抑制することを技術的課題とし、もって自立安定性、外観性に優れた合成樹脂製壜体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決する本発明の内、第1の発明の手段は、
1次成形品であるプリフォームから2軸延伸ブロー成形され、底部を、周縁部に接地部分となる環状平坦部を有し、この環状平坦部の内周縁から中央にかけて、胴部内方向に陥没形成された陥没部を有すること、
陥没部中央下面に、2軸延伸ブロー成形時、プリフォームの底部を内側からの延伸ロッドと共に挟持した状態で、外側から支持する先端面が緩やかな凸形状の支持ピンにより形成された、緩やかな凹状部を有する構成とすること、
にある。
【0010】
第1の発明の上記構成の壜体は、プリフォームの開口頸部をブロー金型に取り付け、底部を内側の延伸ロッドと外側の支持ピンとで挟持した状態から、延伸ロッドにより縦軸方向に延伸させると同時に、支持ピンを後退させながらながらブロー成形する方法で成形され、本体割金型の開放、ブロー芯型及び延伸ロッドの後退等の型開き、離型工程を経て製品として取り出される。
【0011】
上記型開き、離型工程において、支持ピンはその基端部に設置されたスプリングの弾発力等によりその先端面が僅かに突出して壜体の陥没部中央下面を押圧して底部金型面からの離型を円滑に達成する機能を発揮する。
【0012】
また、延伸ロッドによる縦延伸およびエアブロー工程時に作用する力により、壜体の底部の陥没部下面が支持ピンの先端面に押し付けられ、密着した状態になっているので、両者を引き離す必要があるが、かなり密着力が大きいので、この引き離し操作により、陥没部が壜体の下方に引っ張られて所謂底落ち状の変形の原因となる。
【0013】
ここで第1の発明の構成にあるように、壜体の陥没部中央下面に支持ピンにより形成される形状を緩やかな凹状とすることにより、すなわち支持ピンの先端面を緩やかな凸状形状とすることにより、陥没部中央下面と支持ピンとの密着部分の周縁部では、上記延伸工程の際に発生する押し付け状の力の作用を小さくすることができるので、周縁部で両者の密着力を小さくすることができ、両者の引き離しを、この周縁部からスタートして中央部に向かってスムーズに進展させながら容易に円滑に達成することができ、陥没部の所謂底落ち状の変形を小さく抑制することができる。
【0014】
上記のような密着部の引き離しの機構を考えると、支持ピンの先端面は、周縁から緩やかな角度で立ち上がり、途中に段部がなく、全体高さが高すぎない形状であることが好ましい。
【0015】
一方、壜体の陥没部中央下面に支持ピンにより形成される形状が凸状あるいは略平坦であると、すなわち支持ピンの先端面が凹状あるいは略平坦な形状であると、密着部の周縁部における成形の際の相互の押し付け状の力の作用は中央部と同等もしくは大きくなる傾向にあり、周縁部の引き離しに大きな力を必要とし、その分、陥没部中央が密着力によりより壜体の下方に引っ張られ、大きな底落ち状態となる。
【0016】
第2の発明の手段は、凹状部の凹状深さを0.5〜2.5mmの範囲とすること、にある。
【0017】
凹状深さが0.5mm未満であると底落ちに対する効果が小さく、また凹状深さを大きくしすぎると、すなわち支持ピンの先端面での傾斜が大きくなりすぎると、接触面積が大きくなること、密着部の周縁部近傍で、両者を引き離す方向に有効に力が作用しないこと等の要因によりスムーズな引き離しが困難となるが、第2の発明の0.5〜2.5mmの範囲とすることにより、容量0.5〜5リッター程度の壜体において底落ちの抑制効果が十分に発揮される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を、図面(図1〜図5)を参照しながら説明する。
本一実施例による壜体1は、容量4リットルのPET製2軸延伸ブロー成形品であり、口部2、肩部3、胴部4および底部5からなる。
【0019】
底部5は、周縁部に接地部となる環状平坦部6を有し、その内周縁から中央にかけて胴部4内方向に、底面の十分な面剛性を確保するための略円弧殻状に陥没形成された陥没部7を有し、さらにこの陥没部7の中央下面に、壜体1の中心軸位置に2軸延伸ブロー成形時、プリフォームPの底面中央部を下方から支持する、先端面16aが凸形状の支持ピン15により形成された、緩やかな凹状部8を有する。
【0020】
図3〜図5は本一実施例の壜体1の成形方法の一例を示したもので、図3は成形装置にプリフォームPを取り付けた状態を示すものであり、ブロー成形のための金型は本体割金型11と、ブロー芯型12と、底部金型13とから構成されており、ブロー芯型12は、プリフォームPの開口頸部に嵌入する口頸部12aを有し、その中心部にブロー用の空気孔(図中省略)と延伸ロッド14を同心状に設け、口頸部12aと本体割金型11の上端部とでプリフォームPの開口頸部を挟持する。
【0021】
また、底部金型13は、中央部に進退可能な支持ピン15を設け、この支持ピン15の先端面16aを緩やかな凸状の形状としており、この先端面16aの凸状高さを1.5mmとしている。
【0022】
PETの射出成形により有底円筒、試験管状の形状をしたプリフォームPを1次成形品として予備成形して、このプリフォームPの開口頸部を、図3に示すように、ブロー成形装置の成形金型のブロー芯型12の口頸部12aに嵌入し、本体割金型11で挟着すると共に、プリフォームPの底部を内側に設けた延伸ロッド14と外側に設けた支持ピン15との間に延伸中心位置が変位しないように挟持する。
【0023】
上記状態から、延伸ロッド14を前進させてプリフォームPを縦方向に延伸させると同時に、支持ピン15を後退させながらプリフォームP内に加圧空気を噴射して膨張せしめて2軸方向に延伸ブロー成形して壜体1とする。
【0024】
図4は、上記のようにして延伸ブロー成形された壜体1の成形金型内での状態を示したものであるが、壜体1はこの状態から、成形金型内での所定のヒートセット、冷却等の熱処理操作後、本体割金型11の開放、ブロー芯型12及び延伸ロッド14の後退等の型開き、離型工程を経て製品として取り出される。
【0025】
上記離型工程において、支持ピン15は下方に設置されたスプリングの弾発力等によりその先端面16aが僅かに突出して壜体1の陥没部7中央下面を押圧して底部金型13面からの離型を円滑に達成する機能を発揮する。
【0026】
また、底部5の離型後、密着した支持ピン15の先端面16aと陥没部7中央下面を引き離す必要があるが、支持ピン15の先端面16aを緩やかな凸状の形状とすることにより、この引き離しを円滑に達成することができ、陥没部7中央がこの引き離しの際に下方に引っ張られ、所謂底落ちの状態になることを抑制することができる。
【0027】
図5は延伸ブロー後、成形金型内で本一実施例の壜体1の底部5が延伸ロッド14と支持ピン15によって挟持された状態を示したものであり、壜体1の底部5の
陥没部7中央下面には凹状部8が形成され、その凹状深さは略1.5mmであった。
【0028】
図6は比較例で、他の形状は上記一実施例と同様であり、陥没部7中央下面に凸状部9を有した底部5を有する壜体1である。また、図7はこの比較例の壜体1の成形の際の、上記一実施例の図5と同様な状態を示すものであり、支持ピン15の先端面16bを1.5mm凹んだ形状としている。
【0029】
上記実施例と比較例の壜体1について成形後その底落ち状態を測定した。
金型底部接地面から陥没部7の中央高さを測定したところ(図1、図6中の陥没部高さH参照)、一実施例では9.5mm、比較例では7.5mmであり、成形金型での寸法である11mmとに比較すると、所謂底落ちはそれぞれ1.5mmおよび3.5mmであり、本願発明の壜体1の底落ちは、小さく抑制されたものであった。
【0030】
なお、上記一実施例においてはたとえば陥没部7中央の壁全体がこの陥没部7下面から上方に凹んだ形状としたが、本願発明の作用効果は、特に陥没部7中央下面に支持ピン8により形成される形状を緩やかな凹状とすることにより、支持ピン15の引き離しが円滑に達成され、所謂底落ちを抑制するものであり、上記した一実施例に限定されるものでなく、底部5に陥没部7を有した壜体1で一般的に発揮されるものである。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
第1の発明にあっては、陥没部中央下面に支持ピンにより形成される形状を緩やかな凹状とすることにより、成形金型からの離型工程における壜体底部の陥没部中央下面と支持ピンの先端面との引き離しが円滑に達成され、底部陥没部の所謂底落ちを小さく抑制することができる。
【0032】
第2の発明にあっては、凹状部の凹部深さを0.5〜2.5mmの範囲とすることにより、容量0.5〜5リッター程度の壜体において底落ちの抑制効果が十分に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の合成樹脂製壜体の一実施例を示す、正面図。
【図2】図1の実施例の底面図。
【図3】本発明の合成樹脂製壜体の一実施例を成形する成形装置にプリフォームを挟持した状態を示す、縦断説明図。
【図4】図3中において、プリフォームを壜体に成形した状態を示す、縦断説明図。
【図5】図4中、壜体の陥没部中央の挟持状態を要部拡大して示した、縦断説明図。
【図6】合成樹脂製壜体の比較例を示す、正面図。
【図7】比較例の壜体の陥没部中央の挟持状態を要部拡大して示した、縦断説明図。
【符号の説明】
1 ; 壜本体
2 ; 口部
3 ; 肩部
4 ; 胴部
5 ; 底部
6 ; 環状平坦部
7 ; 陥没部
8 ; 凹状部
9 ; 凸状部
11 ; 本体割金型
12 ; ブロー芯型
12a ; 口頸部
13 ; 底部金型
14 ; 延伸ロッド
15 ; 支持ピン
16a ; 先端面
16b ; 先端面
P ; プリフォーム
H ; 陥没部高さ
Claims (1)
- 1次成形品であるプリフォーム(P)から2軸延伸ブロー成形され、底部(5)を、周縁部に接地部分となる環状平坦部(6)を有し、該環状平坦部(6)の内周縁から中央にかけて、胴部(4)内方向に陥没形成された陥没部(7)を有し、陥没部(7)中央下面に、2軸延伸ブロー成形時、プリフォーム(P)の底部を、内側からの延伸ロッド(14)と共に挟持した状態で、外側から支持する、先端面が緩やかな凸形状の支持ピン(15)により形成された、緩やかな凹状部(8)を有する構成とし、該凹状部(8)の凹状深さを0.5〜2.5mmの範囲とした合成樹脂製壜体。
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