JP4562994B2 - 耐熱性ポリエステルカップの製造方法とその製造装置 - Google Patents

耐熱性ポリエステルカップの製造方法とその製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下ポリエステルという)製カップ状容器、とくに耐熱性が付与され高温の内容物を注入することのできる耐熱性ポリエステル製カップ容器の製造方法とその製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル製のシートを一定温度に加熱し、熱成形によってカップ状容器を成形することは、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−94508号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術は、ポリエステルのシートを表面温度100〜140゜Cの範囲内で加熱し、プラグアシスト圧空成形によってカップ状容器を延伸成形しており、成形されたカップ状容器は耐熱性に劣るものであった。
そのため、カップに高温の内容物を注いだとき、カップの胴部、底部が変形するので、高温内容物の容器として使用できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題を考え、高温の内容物を注入しても変形しない耐熱性のポリエステル製カップ状容器の製造方法と、その製造装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するため、耐熱性ポリエステルカップの製造方法として、ポリエステルシートを延伸適温に加熱して、温度5〜30°Cの金型を用いて、カップを比較的低温で延伸成形する成形工程と、成形されたカップを所定の熱固定温度に加熱した加熱用金型に移送し、延伸カップのフランジをクランプで挟持し、1470〜3430kPaの高圧エアーを吹込んでカップを型面に密着させ、次いで、加熱用金型内に冷却コアを挿入して、高圧エアの吹込みを停止し熱収縮によりカップを冷却コアの型面に密着させ、カップを冷却固化する熱固定工程とからなることを特徴とする構成を採用する。
【0007】
製造方法の別実施形態として、ポリエステルシートを延伸適温に加熱して、温度5〜30°Cにした成形金型によりカップを比較的低温で延伸成形する成形工程と、前記成形金型を所定の熱固定温度に加熱するとともに、1470〜3430kPaの高圧エアーを吹込んでカップを型面に密着させて熱固定させ、次いで成形金型内に冷却コアを挿入し、高圧エアの吹込みを停止し熱収縮によりカップを冷却コアの型面に密着させ、カップを冷却固化する熱固定工程を行うことを特徴とする構成を採用する。
【0008】
具体的な実施態様として、カップ成形工程でのポリエステルシートの加熱温度が90〜110゜C、延伸表面積倍率が3〜6であることを特徴とする構成を採用する。
【0009】
耐熱性ポリエステルカップの製造装置として、加熱シートを温度5〜30°Cの金型により成形して延伸カップを成形する熱成形装置、並びに、上下動する冷却コアと1470〜3430kPaの高圧エアの吹込み装置とを具えた上型と延伸カップを密着させることができる所定の熱固定温度に加熱した加熱用金型を具えた下型とからなる熱固定装置とを備えていることを特徴とする構成を採用する。
【0010】
製造装置の別実施形態として、1470〜3430kPaの高圧エアー吹込み装置、および上下動する冷却コアとを具えた上型と、成形工程で温度5〜30°Cに冷却し、熱固定工程で所定の熱固定温度に加熱する、加熱・冷却可能な成形金型を具えた下型とを備え、成形金型により、カップの延伸成形と熱固定を連続して行うようにしたことを特徴とする構成を採用する。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明の耐熱性ポリエステルカップAは、図1に示すように、上端にフランジ1を具えた口部2と胴部3、底端4を具えた底部5とからなっており、ポリエステルシートsから熱成形により延伸成形され、熱固定されたカップ状容器である。
【0012】
実施例のカップは、その容量は200cc、口径75mmであり、ポリエステルシートとして、ポリエステルのホモポリマーまたはコポリマー、或いは、重量比50%以上のポリエステルを含むブレンドポリマー、積層体等が用いられる。
【0013】
次に、カップの熱成形方法について説明する。
熱成形装置として、図2に示すような概要のプラグアシスト熱成形装置Bが用いられる。
【0014】
図2において、B1は上型、B2は下型であり、上型B1は、上下動自在に装着されたプラグ10と、加熱シートsのクランプ11を具えており、クランプ11内には、上方から圧空が吹込まれるようになっている。
下型B2は、型台12と型台12に支持された雌金型13とを具えており、雌金型13は、成形すべきカップを形成する型面14と空気の吸引孔15とを具えている。
【0015】
熱成形は、図3に示すように90〜110゜Cに加熱されたポリエステルシートsを上型B1のクランプ11と下型B2との間に押圧挟持し、次いで、プラグ10を下降させ、ポリエステルシートsを下方に引き延ばすとともに圧空を吹込み、必要に応じて補助的に吸引孔15からの真空吸引によって、雌金型13の型面14に賦形させる。
【0016】
熱成形にあたって、1470〜3430kPaの高圧エアーが用いられ、延伸表面積倍率は、3〜6倍の範囲とする。
雌金型13の温度は、5〜30゜C、シート温度は90〜110゜Cであり、比較的低い温度で延伸させているので、延伸配向の程度はより大きくなっている。
延伸成形に続いて、成形品のフランジ1部分の周縁がカットされ、延伸カップAaが得られる。
【0017】
次に、延伸カップの熱固定について説明する。
延伸カップAaは熱固定装置Cに移され、熱固定される。
熱固定装置Cの概要は、図4に示すように、上型C1と下型C2とからなり、上型C1は、クランプ20とクランプ20内で上下動される冷却コア21とを具えており、クランプ20の上方から高圧エアが吹込まれるようになっている。
冷却コア21は、カップ形状の型面22と吸引孔23とを具え、該吸引孔23は真空源に接続されている。
【0018】
下型C2は、熱成形装置Bの雌金型13と同形の型面24と空気孔25を有し、内部に加熱装置または加熱媒体の通路を設けた雌金型26を具えている。
【0019】
熱固定は、図5に示すように、100〜150゜Cに加熱された雌金型26に延伸カップAaがセットされ、次いで、延伸カップAaのフランジ1をクランプ20により挟持して、延伸カップAaを雌金型26に押しつけ、上方より1470〜3430kPa(15〜35kgf/cm2 )の高圧エアーを吹込み、カップ表面を型面24に押圧密着させて加熱する。
【0020】
次いで、図6に示すように、冷却コア21を雌金型26内に挿入して高圧エアーの吹込みを停止する。
冷却コア21の温度は70゜C以下であり、冷却コア21の挿入と同時に、雌金型26底面の空気孔25より空気を吹込むとともに、冷却コア21の吸引孔23を通じて真空吸引を行い、カップの熱収縮と相まって延伸カップAaを冷却コア21の型面22に賦形する。
【0021】
次に、図7に示すように、冷却コア21を下型C2から切り離すことによって、冷却コア21に吸引されたカップを、雌金型26から隔離して冷却固化させる。
次いで、真空吸引を停止し、冷却コア21からカップを取外すことによって、熱固定された耐熱性ポリエステルカップAを得ることができる。
なお、冷却コア21による真空吸引、雌金型26の空気孔より空気を吹込む操作については、成形材料やカップの肉厚等により、その程度を適宜選択して実施することができる。
また、カップの取外しにあたって、冷却コア21の吸引孔23から空気を吹出すことによって、カップの離形をさらに容易にすることができる。
【0022】
次に、本発明の耐熱性ポリエステルカップの効果について説明する。
本発明カップの実施例として、次の条件で延伸カップを成形した。
シート温度 100゜C
成形金型温度 25゜C
高圧エアー 1960kPa
延伸表面積倍率 4.5倍
次いで、成形された延伸カップを、金型温度を120゜Cとし、5秒間で熱固定して、耐熱性ポリエステルカップを得た。
【0023】
比較例として、次の条件で延伸カップを成形した。
シート温度 115゜C
成形金型温度 25゜C
延伸表面積倍率 4.5倍
上記延伸カップは、熱固定しなかった。
【0024】
実施例の耐熱性カップと比較例の延伸カップのそれぞれに、80゜Cの熱湯を充填した。
実施例のカップは変形しなかったが、比較例のカップは変形した。
【0025】
また、耐熱性カップとして、加熱用金型温度を120゜C、130゜C、135゜Cとし、それぞれ5秒間で熱固定して耐熱性カップを成形し、80〜85゜Cの熱湯を入れて、外観を観察したが、何等の変形もなく、問題はなかった。
【0026】
また、本発明の延伸カップの平均密度は、従来のものでは1.35g/cm3 未満であったが、本発明のものは、1.35g/cm3 以上となっており、結晶化がより進んでいることを示している。
【0027】
前記実施形態では、カップの熱成形と熱固定を別個の金型内で行うようにしたが、1個の金型内で熱成形と熱固定を行うようにしてもよい。
この場合には、プラグと冷却コアを装着した上型と、加熱・冷却可能な雌金型を具えた下型とを備えた成形装置を用いる。
カップの成形は、加熱したシートsを圧空により雄金型の型面に賦形して延伸カップを成形し、同時に熱固定を行う。
【0028】
熱固定は、所定の熱固定温度に加熱された雌金型によって延伸カップを熱固定させ、次いで、雌金型内に冷却コアを挿入し、圧空を停止して延伸カップを収縮させ、収縮とともに雌金型の吸引孔よりの空気の吹込みと、冷却コアの吸引孔よりの真空吸引によって、延伸カップを冷却コアの型面に密着させ、延伸カップを冷却コアの型面に賦形させる。
次いで、冷却コアを雌金型から隔離して、成形品を早急に冷却固化されることによって耐熱性ポリエステルカップを得ることができる。
【0029】
前記実施形態で延伸カップの熱成形は、プラグアシスト圧空成形によって成形したが、プラグアシスト真空成形、またはインジェクションブロー等によってもよく、プラグアシスト圧空成形に限定されない。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、上記のように構成されているから、次の効果を奏する。
ポリエステル製延伸カップを簡単に熱固定することができるので、容易に耐熱性ポリエステルカップを得ることができるようになった。
【0031】
熱固定にあたって、加熱金型と金型内に挿入される冷却コアを併用し、延伸カップを加熱金型に密着させた後に、カップを冷却コアに移して冷却するようにしたから、熱固定が迅速に行われ、生産性を高めることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の耐熱性ポリエステルカップの説明図である。
【図2】熱成形装置の説明図である。
【図3】熱成形時の説明図である。
【図4】熱固定装置の説明図である。
【図5】 熱固定時の説明図である。
【図6】 冷却コアの挿入時の説明図である。
【図7】 カップの冷却時の説明図である。
【符号の説明】
A 耐熱性カップ
Aa 延伸カップ
B 熱成形装置
B1 上型
B2 下型
C 熱固定装置
C1 上型
C2 下型
s シート
1 フランジ
2 口部
3 胴部
4 底端
5 底部
10 プラグ
11 クランプ
12 型台
13 雌金型
14 型面
15 吸引孔
20 クランプ
21 冷却コア
22 型面
23 吸引孔
24 型面
25 空気孔
26 雌金型

Claims (5)

  1. ポリエステルシートを延伸適温に加熱して、温度5〜30°Cの金型を用いて、カップを比較的低温で延伸成形する成形工程と、
    成形されたカップを所定の熱固定温度に加熱した加熱用金型に移送し、延伸カップのフランジをクランプで挟持し、1470〜3430kPaの高圧エアーを吹込んでカップを型面に密着させ、
    次いで、加熱用金型内に冷却コアを挿入して、高圧エアの吹込みを停止し熱収縮によりカップを冷却コアの型面に密着させ、カップを冷却固化する熱固定工程とからなることを特徴とする耐熱性ポリエステルカップの製造方法。
  2. ポリエステルシートを延伸適温に加熱して、温度5〜30°Cにした成形金型によりカップを比較的低温で延伸成形する成形工程と、
    前記成形金型を所定の熱固定温度に加熱するとともに、1470〜3430kPaの高圧エアーを吹込んでカップを型面に密着させて熱固定させ、
    次いで成形金型内に冷却コアを挿入し、高圧エアの吹込みを停止し熱収縮によりカップを冷却コアの型面に密着させ、カップを冷却固化する熱固定工程を行うことを特徴とする耐熱性ポリエステルカップの製造方法。
  3. カップ成形工程でのポリエステルシートの加熱温度が90〜110゜C、延伸表面積倍率が3〜6であることを特徴とする請求項1または2記載の耐熱性ポリエステルカップの製造方法。
  4. 加熱シートを温度5〜30°Cの金型により成形して延伸カップを成形する熱成形装置、並びに、上下動する冷却コアと1470〜3430kPaの高圧エアの吹込み装置とを具えた上型と延伸カップを密着させることができる所定の熱固定温度に加熱した加熱用金型を具えた下型とからなる熱固定装置とを備えていることを特徴とする耐熱性ポリエステルカップの製造装置。
  5. 1470〜3430kPaの高圧エアー吹込み装置、および上下動する冷却コアとを具えた上型と、成形工程で温度5〜30°Cに冷却し、熱固定工程で所定の熱固定温度に加熱する、加熱・冷却可能な成形金型を具えた下型とを備え、成形金型により、カップの延伸成形と熱固定を連続して行うようにしたことを特徴とする耐熱性ポリエステルカップの製造装置。
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