JP4126635B2 - モールドプレス成形用光学ガラス - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はモールドプレス成形用光学ガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
CD、MD、DVDその他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、ビデオカメラや一般のカメラの撮影用レンズ等の光学レンズ用に、屈折率(nd)が1.55〜1.65で、アッベ数(νd)が45以上の光学ガラスが使用されている。従来、このようなガラスとしてSiO2 −PbO−R’2O(R’2Oはアルカリ金属酸化物)を基本とした鉛含有ガラスが広く使用されていたが、近年では環境上の問題からSiO2−B2O3−RO(ROは2価の金属酸化物)−R’2O系等の非鉛系ガラスに切り替えられつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
光ピックアップレンズや撮影用レンズの成形には、精密加工を施した金型によって軟化状態のガラス塊を加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写させる、いわゆるモールドプレス成形法が広く用いられている。
【0004】
しかしながら上記した非鉛系の光学ガラスは一般に軟化点が高いため、金型が劣化して成形精度が低下したり、ガラス成分の揮発による金型汚染が生じる等、モールドプレス成形に適していないという問題がある。またアルカリ金属酸化物を多量に含有させることで工業レベルでのモールドプレス成形を可能にしたガラスも一部には存在する。ところがこの種のガラスは、レンズやプリズム等の製造工程における切削、研磨、洗浄によって、ガラス成分が研磨洗浄水や各種洗浄溶液中へ溶出し、物性の劣化や表面の変質が起こる等、耐候性が悪く、また最終製品においても、高温多湿状態に長時間晒されるとガラスの表面が変質し、設計通りの光学特性を得られず、信頼性を損なうという問題がある。
【0005】
またCD、MD、DVD、ビデオカメラ、一般のカメラにおける市場では小型化、軽量化への要望が近年増々強くなっており、使用されるレンズにも低密度化が要望されている。特にCD、MD、DVDでは、光ディスクの信号は光ピックアップシステムが駆動して読み取る方式が採用されており、レンズの低密度化は駆動系の負担を減少しアクセスの高速化へも対応しやすい、また、駆動系の重量に対するレンズ重量の占める割合も高いという理由で一層要望されている。
【0006】
しかしながら1.55〜1.65の屈折率(nd)、及び45以上のアッベ数(νd)を有する光学ガラスの多くは、屈折率を高めるとともにアッベ数を高くするために、密度を増大させるLa2O3やGd2O3を多量に含有させており、上記した低密度化の要求を満足することができない。
【0007】
本発明の目的は、屈折率(nd)が1.55〜1.65、アッベ数(νd)が45以上の光学定数を有し、しかも低い軟化点及び密度と、高い耐候性を兼ね備えたモールドプレス成形用光学ガラスを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、重量%でSiO2 35〜57%、Al2O3 0〜15%、B2O3 0〜10.5%、MgO 0〜10%、CaO 1〜30%、BaO 0〜9.5%、SrO 7.5〜15%、ZnO 0〜10%、MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO 16〜40%、Li2O 3〜9%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜9%、TiO2 0〜9%、ZrO2 0〜10%、La2O3 0〜7%、Gd2O3 0〜7%、Nb2O5 0〜0.4%の組成を有することを特徴とする。
【0009】
【作用】
本発明のモールドプレス成形用光学ガラスは、屈折率(nd)が1.55〜1.65、アッベ数(νd)が45以上の光学定数を有する。またCD、MD、DVD等において、駆動系への負担を減少しアクセスの高速化に対応するためには、密度が3.0g/cm3以下であることが望ましい。また金型の劣化や汚染を防止するためには軟化点が650℃以下であることが必要である。さらに実用上十分な耐候性を得るためには、日本光学硝子工業会規格JOGISによる粉末法耐水性での重量減が0.10%未満、同粉末法耐酸性での重量減が0.30%以下であることが重要である。
【0010】
このような特性を有する光学ガラスとして、重量%でSiO2 35〜57%、Al2O3 0〜15%、B2O3 0〜10.5%、MgO 0〜10%、CaO 1〜30%、BaO 0〜9.5%、SrO 7.5〜15%、ZnO 0〜10%、MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO 16〜40%、Li2O 3〜9%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜9%、TiO2 0〜9%、ZrO2 0〜10%、La2O3 0〜7%、Gd2O3 0〜7%、Nb2O5 0〜0.4%の組成を有するガラスが挙げられる。以下に組成範囲を限定した理由を述べる。
【0011】
SiO2 はガラスの骨格を構成する成分であり、また密度を低下させる効果がある。その含有量は35〜57%、好ましくは40〜55%である。SiO2 が57%を超えると屈折率が低くなり過ぎたり、軟化点が650℃を超えてしまう。一方、35%より少ないと密度が高くなりすぎたり、耐酸性や耐水性等の耐候性が著しく悪化する。
【0012】
Al2O3はSiO2とともにガラスの骨格を構成する成分であり、また密度を低下させるとともに耐候性を改善する効果がある。Al2O3の含有量は0〜15%であるが、この系のガラスにおいて、ガラス中のアルカリ成分の、水への選択的溶出を抑制する効果が顕著であるため、1%以上含有させることが好ましい。しかしAl2O3 が10%以上、特に15%を超えると耐失透性が悪化したり、溶融性が著しく悪化し、脈理や泡がガラス中に残ってレンズ用ガラスとしての要求品位を満たさなくなる。
【0013】
B2O3は融剤として作用してガラスの溶融を助ける効果があり、その含有量は0〜10.5%、好ましくは0〜4.5%である。B2O3が10.5%を超えると耐候性、特に耐酸性が著しく悪化する。さらにガラス溶融時に揮発が多くなって脈理が生じ、十分に均質なガラスが得られず、またモールド成形時にも揮発が生じて金型を汚染し、金型の寿命を大きく縮めてしまう。
【0014】
MgO、CaO、BaO、SrO、ZnOは、融剤として作用するとともに、SiO2−B2O3−RO−R’2O系ガラスにおいて、アッベ数を低下させずに屈折率を高める効果がある。またこれらの成分を2種以上混合して使用すると耐候性を向上させることができる。ただしその他の特性、即ち、光学定数、密度、軟化点等を考慮すると、少なくともCaOとSrOの両者を必須成分として含有させる必要がある。またこれら成分の合量は16〜40%、特に20〜35%の範囲にあることが好ましい。これらRO成分の合量が上記範囲にあると、1.55〜1.65の屈折率と3.0g/cm3以下の低密度を両立することが容易になるが、16%より少ないと所望の屈折率を得にくくなり、またガラス安定性が悪くなって耐候性が悪化しやすくなる。一方、40%を超えると相対的にSiO2 やAl2O3の含有量が少なくなって密度が高くなったり、耐候性が悪化しやすくなる。
【0015】
MgOは、屈折率を高める成分であるが、分相性が強くなって耐失透性を低下させる傾向があるため、その含有量は10%以下、特に5%以下にすることが好ましい。
【0016】
CaOは、分相性を強めたり密度を上げることなく、屈折率を著しく高める成分であり、その含有量は1〜30%、好ましくは3〜25%である。CaOが1%未満のときは屈折率が著しく低下し、30%を超えるとガラスの溶融性が悪化したり、分相性が強くなって失透しやすくなる。
【0017】
BaOは、屈折率を高める成分であるが、密度を著しく増大させる傾向があるため、その含有量は9.5%以下、特に8%以下にすることが好ましい。
【0018】
SrOは、分相性を強めたり密度を上げることなく、屈折率を高め、また軟化点を低下させる成分であり、その含有量は7.5〜15%、好ましくは7.5〜13%である。SrOが7.5%未満のときは軟化点が高くなりすぎ、15%を超えるとガラスの溶融性が悪化したり、分相性が強くなって失透しやすくなる。
【0019】
ZnOは屈折率を高める成分であるが、密度を増大させる傾向があるため、その含有量は10%以下、特に8%以下にすることが好ましい。
【0020】
Li2Oは軟化点を低下させるための成分であり、その含有量は3〜9%、好ましくは5〜9%である。Li2Oが9%を超えると耐候性が悪化し、また失透性が増大して均質なガラスが得られなくなり、3%より少なくなると軟化点が高くなりすぎる。
【0021】
Na2Oも軟化点を低下させる成分であり、その含有量は0〜10%、好ましくは1.5〜10%である。Na2Oが上記範囲を超えると耐候性が悪化し、また失透性が増大して均質なガラスが得られなくなる。
【0022】
K2Oも軟化点を低下させる成分であるが、その含有量が3%を超えるとモールドプレス成形時に揮発する傾向が現れ、特に9%を超えると揮発が著しくなり、その結果、金型を汚染し、金型の寿命を大きく縮めてしまう。
【0023】
TiO2及びZrO2は屈折率を高める成分であり、その含有量はTiO2が0〜9%、好ましくは0〜6%、ZrO2が0〜10%、好ましくは0〜6%である。各成分がその範囲から外れるとアッベ数が45未満になる。また溶融性が悪くなったり、分相性が強くなって失透しやすくなる。
【0024】
La2O3及びGd2O3は、アッベ数を低下させることなく、屈折率を高めることが可能な成分であるが、密度を著しく上昇させるという欠点がある。このためこれら成分の含有量は何れも7%以下、好ましくは5%以下に制限される。上記範囲を超えると密度が高くなりすぎる。また耐候性や耐失透性が悪化しやすくなる。
【0025】
Nb2O5は屈折率を高める成分であるが、RO成分を多量に含む本発明の組成系では、失透性を強めてしまう。また原料が高価であるためコストを増大させる。このためNb2O3の含有量は0.4%以下に制限される。
【0026】
上記以外にも、本発明の光学ガラスには、例えばアッベ数を高めるためにP2O5を、また清澄剤としてSb2O3等を添加することができる。ただしPbOやAs2O3等は環境上好ましくないため、本発明のガラスには使用しないほうがよい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0028】
表1〜6は本発明の実施例(試料No.2〜13)、及び比較例(試料15〜22)を示している。なお試料試料No.1及び14は参考例である。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】
各試料は次のようにして調製した。まず表に示す組成になるようにガラス原料を調合し、白金ルツボを用いて1300〜1500℃で4時間溶融した。溶融後、融液をカーボン板上に流しだし、更にアニール後、各測定に適した試料を作製した。
【0036】
得られた試料について、屈折率nd、アッベ数νd、密度、軟化点Ts、耐水性及び耐酸性を測定した。結果を各表に示す。
【0037】
表から明らかなように、本発明の実施例であるNo.2〜13の各試料は、屈折率が1.5770〜1.6465、アッベ数が46.8以上、密度が2.998g/cm3以下、軟化点Tsが639℃以下であった。また耐水性は重量減少率が0.07%以下、耐酸性は重量減少率が0.30%以下であり、耐候性が良好であった。
【0038】
これに対し、比較例であるNo.15は、SiO2が57%より高いために屈折率が低く、また軟化点が高かった。No.16は、B2O3が10.5%より高いために耐候性が悪かった。No.17は、RO成分の合量が16%未満であるために屈折率が低く、また耐候性が悪かった。No.18は、RO成分の合量が40%より多いために密度が高かった。No.19は、BaOが11.5%より多いために密度が大きかった。No.20は、Li2Oが3%未満であるために軟化点が高かった。No.21は、SiO2が35%より少ないために密度が大きく、また耐候性が悪かった。No.22は、TiO2が9%より多いためにアッベ数が低かった。
【0039】
なお屈折率ndは、ヘリウムランプのd線(587.6nm)に対する測定値で示した。アッベ数νdは、水素ランプのC線(656.3nm)、F線(486.1nm)、ヘリウムランプのd線(587.6nm)の対する屈折率nC、nF、ndを測定し、(nd−1)/(nF−nC)の式から求めた。密度は、大きさ1×1×2(cm)の試料を水中に浸し、アルキメデス法によって求めた。軟化点は、日本工業規格R−3104に基づいたファイバーエロンゲーション法によって測定した。耐水性及び耐酸性は、日本光学硝子工業会規格06−1975に基づき、ガラス試料を粒度420〜590μmに破砕し、その比重グラムを秤量して白金篭に入れ、それを試薬の入ったフラスコに入れて沸騰水浴中で60分間処理し、処理後の粉末ガラスの質量減少率(重量%)を算出したものである。なお耐水性評価で用いた試薬はpH6.5〜7.5に調整した純水であり、耐酸性評価で用いた試薬は0.01Nに調整した硝酸水溶液である。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光学ガラスは、CD、MD、DVDその他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、ビデオカメラや一般のカメラの撮影用レンズ等の光学レンズに使用可能な1.55〜1.65の屈折率(nd)と45以上のアッベ数を有している。しかも密度が低く、光ピックアップレンズの軽量化の要請に適うものである。また耐候性が良好であり、製造工程や製品の使用中に物性の劣化や表面の変質を起こすことがない。さらに軟化点が低く、金型が劣化したり、ガラス成分が揮発することがないため、成形精度の低下や金型の汚染が生じず、モールドプレス成形用ガラス材料として好適である。
Claims (3)
- 重量%でSiO2 35〜57%、Al2O3 0〜15%、B2O3 0〜10.5%、MgO 0〜10%、CaO 1〜30%、BaO 0〜9.5%、SrO 7.5〜15%、ZnO 0〜10%、MgO+CaO+BaO+SrO+ZnO 16〜40%、Li2O 3〜9%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜9%、TiO2 0〜9%、ZrO2 0〜10%、La2O3 0〜7%、Gd2O3 0〜7%、Nb2O5 0〜0.4%の組成を有することを特徴とするモールドプレス成形用光学ガラス。
- 光ピックアップレンズ又は撮影用レンズに使用されることを特徴とする請求項1のモールドプレス成形用光学ガラス。
- 屈折率(nd)が1.55〜1.65、アッベ数(νd)が45以上、密度3.0g/cm3以下、軟化点が650℃以下、日本光学硝子工業会規格JOGISによる粉末法耐水性での重量減が0.10%未満、同粉末法耐酸性での重量減が0.30%以下であることを特徴とする請求項1又は2のモールドプレス成形用光学ガラス。
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