JP4123782B2 - 電磁駆動弁及びその製造方法 - Google Patents

電磁駆動弁及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の吸排気弁として用いられる電磁駆動弁及びその製造方法に関し、特に同電磁駆動弁を付勢するばねとして気体ばねを備えるものに採用して好適な弁構造及びその製造方法の具現に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の電磁駆動弁としては、例えば特開平11−93630号公報に記載されたものがある。この電磁駆動弁は、例えばその一例として図8に示すように、内燃機関のシリンダヘッド200に凹部211が形成されているとともに、その開口上端面が電磁石262で覆われ、この凹部211内に閉弁用空気ばね220及び開弁用空気ばね240が形成されている。ここで、閉弁用空気ばね220は、上記凹部211の底面側に配置されて弁体201の弁軸202と連結されたピストン222を備えている。そして、このピストン222と凹部211の下方部分とによって区画される空気室223内の空気によって同ピストン222に上記弁体201を閉弁させる方向への付勢力を付与する構造となっている。また、開弁用空気ばね240は、上記凹部211の開口部側に配置されて上記電磁石162の電磁力の作用するアーマチャ261の支持軸(アーマチャ軸260)に連結されたピストン242を備えている。そして、このピストン242と凹部211の上方部分とによって区画される空気室243内の空気によって同ピストン242に上記弁体201を開弁させる方向への付勢力を付与する構造となっている。
【0003】
なお、上記凹部211を覆う電磁石262は、上記アーマチャ261を弁体201の開弁方向に付勢する電磁石262であり、このアーマチャ261を挟んで上記電磁石262と対向する位置に設けられている電磁石263が、同アーマチャ261を弁体201の閉弁方向に付勢する電磁石である。そして、これら電磁石262、263は、それぞれその中心部に設けられる孔265及び266を軸受けとして上記アーマチャ軸260を摺動可能に軸支しつつ、それら各電磁力と上記開弁用空気ばね240及び閉弁用空気ばね220による各ばね力との協働により、上記弁体201を開閉駆動する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記空気ばねを用いた電磁駆動弁にあっては、空気ばねの付勢力を適切に確保するために、上記各ピストン及び凹部によって区画される各空気室には高い密閉性が要求される。そこで従来は、例えば特開平2000−34912号公報に見られるように、上記ピストンの上記凹部との摺動面にシール部材を設ける提案もなされている。
【0005】
ただし、こうしたシール部材をピストンに設ける場合であれ、特に開弁用空気ばねのピストンを上記凹部に挿入する際には、次のような不都合が無視できないものとなる。すなわち、上記電磁石のシリンダヘッドに対する装着精度が極めて高く要求されるとともに、その精度が少しでも満たされない場合には、上記凹部と上記アーマチャ軸の軸受けとの間に軸心ずれが生じることとなる。そして、このような軸心ずれが生じる場合には、これに起因してピストンに設けられたシール部材が損傷するなど、シール不良が生じることがある。また、上記開弁用空気ばねのピストンの上記凹部への挿入後においても、こうした軸心ずれが原因となってシール部材が偏った圧縮力を受け、その摺動抵抗が不要に大きくなる。
【0006】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、少なくとも上記アーマチャ軸に連結される気体ばねとしてのシール性能、並びに摺動性能を容易に確保、維持することのできる電磁駆動弁及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明は、アーマチャ軸に連結されたアーマチャをアーマチャ軸の軸方向に付勢する電磁石と、前記アーマチャ軸に連結されたピストン及び該ピストンを収容するシリンダを備えて前記ピストンに作用する圧力に基づき前記アーマチャをアーマチャ軸の軸方向に付勢する気体ばねとを備え、それら電磁石による電磁力と気体ばねによるばね力とによる前記アーマチャ軸の摺動に応動して内燃機関の吸気弁又は排気弁として機能する弁体を駆動する電磁駆動弁において、前記アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部と前記気体ばねとして前記ピストンを収容するシリンダとが一体に形成されてなること、前記気体ばねを構成するシリンダが、前記内燃機関のシリンダヘッドに設けられた凹部に収納されてなること、及び前記気体ばねは、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁用気体ばねであるとともに、前記凹部の底面側に、前記弁体の軸である弁軸に連結されたピストンを有してこのピストンに作用する圧力に基づき前記弁体を閉弁方向に付勢する閉弁用気体ばねを備え、それら開弁用気体ばねのピストン及び閉弁用気体ばねのピストン間には、それら各ピストンを隔壁として前記アーマチャ軸と前記弁軸とのタペットクリアランスを調整するための油圧ラッシュアジャスタ機構が設けられてなること、をその要旨とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、アーマチャ軸に連結されたアーマチャをアーマチャ軸の軸方向双方向にそれぞれ付勢する一対の電磁石と、内燃機関の吸気弁又は排気弁として機能する弁体を開弁側及び閉弁側にそれぞれ付勢する一対のばね手段とを備え、前記電磁石による電磁力と前記ばね手段によるばね力との協働により前記弁体を開閉駆動するに、前記一対のばね手段の1つとして前記アーマチャ軸に連結されたピストン及び該ピストンを収容するシリンダにより気体ばねとして構成されるものを用いる電磁駆動弁において、前記アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部と前記気体ばねとして前記ピストンを収容するシリンダとが一体に形成されてなること、前記気体ばねを構成するシリンダが、前記内燃機関のシリンダヘッドに設けられた凹部に収納されてなること、及び前記気体ばねは、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁用気体ばねであるとともに、前記凹部の底面側に、前記弁体の軸である弁軸に連結されたピストンを有してこのピストンに作用する圧力に基づき前記弁体を閉弁方向に付勢する閉弁用気体ばねを備え、それら開弁用気体ばねのピストン及び閉弁用気体ばねのピストン間には、それら各ピストンを隔壁として前記アーマチャ軸と前記弁軸とのタペットクリアランスを調整するための油圧ラッシュアジャスタ機構が設けられてなること、をその要旨とする。
【0009】
上記各構成では、アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部と気体ばねのピストンを収容するシリンダシリンダとが一体形成されている。このため、アーマチャ軸の軸心とシリンダの軸心とを簡易に一致させることができる。すなわち、アーマチャ軸に連結されたピストンがシリンダの内周面を摺動する際の中心軸と、アーマチャ軸が軸受け部の内周面を摺動する際の中心軸とを一致させることができる。このため、ピストンにシール部材を設けたとしても、シリンダ内にピストンを挿入する際に、このシール部材が傷つくことを回避することができるようになる。また、ピストン及びシリンダ間のクリアランスを低減する設計をしたとしても、ピストン及びシリンダ間の摺動を円滑に行うことができる。
【0010】
したがって、上記各構成によれば、シリンダとピストンとの間を好適にシールすることができ、ひいては、アーマチャ軸に連結される気体ばねとしてのシール性能、並びに摺動性能を容易に確保、維持することのできる電磁駆動弁を構成することができる。
また上記各構成では、内燃機関のシリンダヘッドに形成された凹部に気体ばねのシリンダが収容される。したがって、ピストンの変位領域がシリンダヘッドに形成された凹部に位置されることとなり、同ピストンの変位領域が凹部以外に位置される場合と比較して、電磁駆動弁の軸方向のサイズの増大を抑制した構成が可能となる。
なお、凹部の内周面とシリンダの外周面との間は、シリンダの内周面とピストン外周面との間ほどにはシール性が要求されない。したがって、凹部の内周とシリンダの外周との間に十分なマージンを設けることができる。このため、たとえこの凹部とアーマチャ軸及びシリンダとの軸心にずれが生じていたとしても、凹部内にアーマチャ軸に連結されたピストンを収容するシリンダを的確に挿入することができる。
ところでアーマチャ軸及び弁軸間には、これらの間の動力の伝達を行うタペットとなる部分がある。この際、上記弁体を確実に閉弁させるためには、これら一対のタペット間に間隙(タペットクリアランス)を設ける。すなわち、弁軸やアーマチャ軸の長さは温度等によって変化するため、これら弁軸やアーマチャ軸の長さの変化にかかわらず上記弁体を確実に閉弁させるべく、閉弁状態において両タペット間が離間するような間隙を設ける。
ただし、このようにタペットクリアランスを設けると、弁体の変位に伴って上記一対のタペットに衝突が生じ、その結果、電磁駆動弁に打音が生じる。この点、上記構成では、油圧ラッシュアジャスタ機構を設けることで、上記弁軸やアーマチャ軸の長さの変化にかかわらず上記弁体を確実に閉弁させることができるとともに、上記打音の発生も回避することができる。
また、上記各構成では、開弁用気体ばねと閉弁用気体ばねとがシリンダヘッドの凹部に配置されていることで、これら両気体ばねのピストンの変位領域がこれら両気体ばねで共有されることとなる。したがって、電磁駆動弁の軸方向のサイズの増大を好適に抑制することができる。
【0011】
なお、上記軸受け部は、上記電磁石を構成する部材の一部であってもよい。これに対し、請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の発明において、前記アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部が、前記電磁石とは別体で構成されてなるようにする。
【0012】
このように軸受け部が電磁石とは別部材で構成されることで、電磁石及び軸受け部を構成する部材としてそれぞれ適切な部材を選択することができる。
すなわち、電磁石を構成する磁性体は一般にその硬度が低い。これに対し、シリンダや軸受け部には、硬度の高い部材を用いることが望ましい。この点、上記構成によれば、軸受け部と電磁石とを各別の部材とすることで、それぞれ適切な部材を用いることができる。
【0026】
請求項記載の発明は、アーマチャ軸に連結されたアーマチャをアーマチャ軸の軸方向に付勢する電磁石と、前記アーマチャ軸に連結されたピストン及び該ピストンを収容するシリンダを備えて前記ピストンに作用する圧力に基づき前記アーマチャをアーマチャ軸の軸方向に付勢する気体ばねとを備え、それら電磁石による電磁力と気体ばねによるばね力とによる前記アーマチャ軸の摺動に応動して内燃機関の吸気弁又は排気弁として機能する弁体を駆動する電磁駆動弁であって、前記アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部と前記気体ばねとして前記ピストンを収容するシリンダとが一体に形成されてなり、前記気体ばねを構成するシリンダが、前記内燃機関のシリンダヘッドに設けられた凹部に収納されてなるとともに、前記気体ばねは、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁用気体ばねであるとともに、前記凹部の底面側に、前記弁体の軸である弁軸に連結されたピストンを有してこのピストンに作用する圧力に基づき前記弁体を閉弁方向に付勢する閉弁用気体ばねを備え、それら開弁用気体ばねのピストン及び閉弁用気体ばねのピストン間には、それら各ピストンを隔壁として前記アーマチャ軸と前記弁軸とのタペットクリアランスを調整するための油圧ラッシュアジャスタ機構が設けられてなる電磁駆動弁を製造する方法であって、前記アーマチャ軸を摺動可能に支持する軸受け部と前記気体ばねの前記ピストンを収容するためのシリンダとを形成する単一の部材に、前記軸受け部とする孔と前記シリンダとする穴とを同心状態を維持しつつ穿設することによって、これら軸受け部とシリンダとを一体形成することをその要旨とする。
また請求項5記載の発明は、アーマチャ軸に連結されたアーマチャをアーマチャ軸の軸方向双方向にそれぞれ付勢する一対の電磁石と、内燃機関の吸気弁又は排気弁として機能する弁体を開弁側及び閉弁側にそれぞれ付勢する一対のばね手段とを備え、前記電磁石による電磁力と前記ばね手段によるばね力との協働により前記弁体を開閉駆動するに、前記一対のばね手段の1つとして前記アーマチャ軸に連結されたピストン及び該ピストンを収容するシリンダにより気体ばねとして構成されるものを用いる電磁駆動弁であって、前記アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部と前記気体ばねとして前記ピストンを収容するシリンダとが一体に形成されてなるとともに、前記気体ばねを構成するシリンダが、前記内燃機関のシリンダヘッドに設けられた凹部に収納されてなり、且つ前記気体ばねは、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁用気体ばねであるとともに、前記凹部の底面側に、前記弁体の軸である弁軸に連結されたピストンを有してこのピストンに作用する圧力に基づき前記弁体を閉弁方向に付勢する閉弁用気体ばねを備え、それら開弁用気体ばねのピストン及び閉弁用気体ばねのピストン間には、それら各ピストンを隔壁として前記アーマチャ軸と前記弁軸とのタペットクリアランスを調整するための油圧ラッシュアジャスタ機構が設けられてなる電磁駆動弁を製造する方法であって、前記アーマチャ軸を摺動可能に支持する軸受け部と前記気体ばねの前記ピストンを収容するためのシリンダとを形成する単一の部材に、前記軸受け部とする孔と前記シリンダとする穴とを同心状態を維持しつつ穿設することによって、これら軸受け部とシリンダとを一体形成することをその要旨とする。
【0027】
上記製造方法では、軸受け部とする孔を穿設する工程と、ピストンを収容するためのシリンダとする穴を穿設する工程とが、それら穿設する孔と穴との同心状態を維持しつつ行われる。したがって、シリンダのピストン摺動面及びアーマチャ摺動面の形成に際し、アーマチャ軸受け部の軸心とシリンダの軸心とを精度よく合わせることが可能となる。このため、上記製造方法によれば、シリンダとピストンとの間を好適にシールすることができる電磁駆動弁を製造することができ、ひいては、アーマチャ軸に連結される気体ばねとしてのシール性能、並びに摺動性能を容易に確保、維持することのできる電磁駆動弁を製造することができる。
【0028】
請求項記載の発明は、請求項4又は5記載の発明において、前記軸受け部とする孔と前記シリンダとする穴との穿設を、それら各穿設対象に対応した形状を有する単一の切削工具を用いて行うことをその要旨とする。
【0029】
上記製造方法では、軸受け部とする孔と前記シリンダとする穴との穿設を、それら各穿設対象に対応した形状を有する単一の切削工具を用いて行う。したがって、シリンダのピストン摺動面及びアーマチャ摺動面の形成に際し、アーマチャ軸受け部の軸心とシリンダの軸心とを一致させることが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電磁駆動弁及びその製造方法の第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0031】
本実施形態にかかる電磁駆動弁は、アーマチャ軸に連結されたアーマチャをアーマチャ軸方向双方にそれぞれ付勢する一対の電磁石を備えている。また、この電磁駆動弁は、内燃機関のシリンダヘッドの凹部に内燃機関の吸気弁又は排気弁として機能する弁体を開弁側及び閉弁側に付勢する一対の空気ばねを備えている。そして、これら一対の電磁石によってアーマチャに作用する電磁力と一対の空気ばねの付勢力との協働によって、上記弁体を開閉駆動する。
【0032】
図1に、この電磁駆動弁の構成を示す。同図1に示すように、弁体1には、内燃機関のシリンダヘッド10において往復動可能に支持された弁軸2を備えている。
【0033】
上記弁体1は、シリンダヘッド10に形成された円柱状の凹部11に収納された閉弁用空気ばね20及び開弁用空気ばね40によって、開弁方向及び閉弁方向に付勢される。
【0034】
ここで、閉弁用空気ばね20においては、上記凹部11の内周面とその外周面とが所定のクリアランスを有するようにシリンダ21が配置されている。そして、このシリンダ21には、上記弁軸2の上記弁体1と対向する端部に連結されたピストン22が収容されている。詳しくは、このピストン22は円環状の部材であり、上記弁軸2がこのピストン22の中心を貫通するかたちで連結されている。そして、これらシリンダ21及びピストン22によって空気室23が区画形成されている。この空気室23は、シリンダ21に形成された連通孔24、25を介してシリンダヘッド10内に形成されている供給通路26、排出通路27とそれぞれつながっている。上記閉弁用空気ばね20は、これらピストン22、シリンダ21、連通孔24、25、供給通路26、排出通路27を備えて構成されている。
【0035】
なお、この閉弁用空気ばね20においては、ピストン22及びシリンダ21間のシール性を向上させるべく、ピストン22の外周面にシール部材30が設けられている。また、この閉弁用空気ばね20においては、弁軸2及びシリンダ21の底面間のシール性を向上させるべく、シリンダ21の底面のうち、弁軸2の摺動面にシール部材31が設けられている。
【0036】
また、シリンダ21及び凹部11を形成するシリンダヘッド10の内周面12とのシール性を向上させるべく、シリンダ21側には収納溝32が形成され、同収納溝32内にOリング33が設けられている。また、シリンダヘッド10の内周面12側には、収納溝34が形成されており、この収納溝34にはOリング35が設けられている。
【0037】
更に、凹部11には、閉弁用空気ばね20に対向して開弁用空気ばね40が収納されている。この開弁用空気ばね40においては、上記凹部11の内周面とその外周面とが所定のクリアランスを有するようにシリンダ41が配置されている。そして、このシリンダ41には、上記電磁石の電磁力の作用するアーマチャの軸であるアーマチャ軸60と連結されたピストン42が収容されている。詳しくは、このピストン42は円環状の部材であり、上記アーマチャ軸60がこのピストン42の中心を貫通するかたちで連結されている。そして、これらシリンダ41及びピストン42によって空気室43が区画形成されている。この空気室43は、シリンダ41に形成された連通孔44、45を介してシリンダヘッド10内に形成されている供給通路46、排出通路47とそれぞれつながっている。上記開弁用空気ばね40は、これらピストン42、シリンダ41、連通孔44、45、供給通路46、排出通路47を備えて構成されている。
【0038】
なお、この開弁用空気ばね40においては、ピストン42及びシリンダ41間のシール性を向上させるべく、ピストン42の外周面にシール部材50が設けられている。また、この開弁用空気ばね40においては、アーマチャ軸60及びシリンダ41の底面間のシール性を向上させるべく、シリンダ41の底面のうち、アーマチャ軸60の摺動面にシール部材51が設けられている。
【0039】
また、シリンダ41及び凹部11を形成するシリンダヘッド10の内周面12とのシール性を向上させるべく、シリンダ41側には収納溝52が形成され、同収納溝52内にOリング53が設けられている。また、シリンダヘッド10の内周面12側には、収納溝54が形成されており、この収納溝54にはOリング55が設けられている。
【0040】
上記弁軸2がピストン22から突き出した端部と、アーマチャ軸60がピストン42から突き出した端部とは互いに対向して配置されている。換言すれば、弁軸2とアーマチャ軸60とは、同軸上に配置されている。これにより、上記閉弁用空気ばね20と開弁用空気ばね40とを用いて弁体1を閉弁方向及び開弁方向に付勢することができる。
【0041】
すなわち、閉弁用空気ばね20の空気室23の膨張に伴いピストン22が凹部11の開口面方向へ変位することで、このピストン22と連結された弁軸2が凹部11の開口面方向へ変位する。これにより、この弁軸2に連結された弁体1が閉弁方向に変位する。一方、開弁用空気ばね40の空気室43の膨張に伴いピストン42が凹部11の底面方向へ変位することで、このピストン42と連結されたアーマチャ軸60が凹部11の底面方向へ変位する。そして、このアーマチャ軸60によって弁軸2が凹部11の底面方向へ押し下げられる。これにより、弁軸2と連結された弁体1が開弁方向に変位する。
【0042】
なお、上記態様にて開弁動作時及び閉弁動作時に動力(付勢力)の伝達を行うタペットとしての弁軸2及びアーマチャ軸60は、温度変化等によってその軸方向の長さが変化することがある。このため、弁軸2やアーマチャ軸60の軸方向の長さが変化しても弁体1を確実に閉弁させるべく、換言すれば図1に示すバルブシート3に対し弁体1を確実に着座させるべく、本実施形態では、弁軸2及びアーマチャ軸60に間隙(タペットクリアランス:図中、C)を設ける。この間隙は、弁体1の閉弁時において、アーマチャ軸60が凹部11の開口面方向の逆方向に最大量変位したときに弁軸2及びアーマチャ軸60間に生じる間隙である。
【0043】
更に、上記アーマチャ軸60のうち、上記ピストン42と対向する端部には、高透磁性材料からなる円環状の部材であるアーマチャ61が連結されている。そして、このアーマチャ61を挟んで、その両側には、上記一対の電磁石として開弁用電磁コア62及び閉弁用電磁コア63が備えられている。なお、これら開弁用電磁コア62及び閉弁用電磁コア63は、シリンダヘッド10に取り付けられた電磁コアアッシー64によって覆われている。
【0044】
ここで、閉弁用電磁コア63は、アーマチャ61に対し上記ピストン42と対向する側に配置されている。そして、この閉弁用電磁コア63の電磁力がアーマチャ61に作用することで、同アーマチャ61が閉弁用電磁コア63に引き付けられる。これにより、アーマチャ軸60は、弁体1の閉弁方向へ付勢される。
【0045】
一方、開弁用電磁コア62は、アーマチャ61に対し上記ピストン42の配置される側に配置されている。詳しくは、この開弁用電磁コア62は、上記開弁用空気ばね40のシリンダ41の底部を形成する面のうち上記空気室43と対向する側の面に載置されている。更に、この開弁用電磁コア62は、上記アーマチャ軸60を摺動可能に軸支する円筒上のアーマチャ軸受け部65の外周を囲うようにして配置されている。そして、この開弁用電磁コア62の電磁力がアーマチャ61に作用することで、同アーマチャ61が開弁用電磁コア62に引き付けられる。これにより、アーマチャ軸60は、弁体1の開弁方向へ付勢される。
【0046】
ところで、上記開弁用空気ばね40のシリンダ41と、上記アーマチャ軸受け部65とは、一体形成されている。この構成により、アーマチャ軸60の軸心とシリンダ41の軸心とを簡易に一致させることを可能としている。
【0047】
ここで、図2及び図3に基づいて、本実施形態にかかる電磁駆動弁の製造方法について、特に、開弁用空気ばね40のシリンダ41と、上記アーマチャ軸受け部65とを一体形成する工程を中心として説明する。
【0048】
これら一連の工程は、基本的には、シリンダ41及びアーマチャ軸受け部65とする単一の部材に対し、同心状態が維持されるかたちで、アーマチャ軸受け部65とする孔の穿設と、及びシリンダ41の内周とする穴の穿設とを行う。詳しくは、同心状態を維持すべく、シリンダ41及びアーマチャ軸受け部65とする単一の部材を同一の支持部材で支持した状態で上記各穿設を行う。
【0049】
具体的には、まず、図2(a)において、シリンダ41及びアーマチャ軸受け部65とする単一の部材からなる加工対象部材Aを、支持部材70で支持する。この加工対象部材Aは、第1の円柱部A1と、同第1の円柱部が拡径された第2の円柱部A2とからなる同心円柱体である。ちなみに、この第1の円柱部A1は、アーマチャ軸受け部65とする部分であり、その外径がアーマチャ軸受け部65の軸受け径よりも大きく形成されている。また、第2の円柱部A2は、シリンダ41とする部分であり、その外径がピストン42の直径よりも大きく形成されている。そして、上記アーマチャ軸受け部65のアーマチャ軸60摺動面を形成すべく、同図2(a)に示すように、この加工対象部材Aのシリンダとする側から、この加工対象部材Aを切削する機能を有するドリル71にて同加工対象部材Aの内部を切削除去する作業を行う。この作業は、上記支持部材70及びドリル71を相対的に回転させることで行う。
【0050】
この作業により、図2(b)に示すように、加工対象部材Aを貫通する孔Ahが形成される。この孔Ahのうち上記第1の円柱部A1の部分が、上記アーマチャ軸受け部65のアーマチャ軸60摺動面となる。
【0051】
こうして孔Ahを形成した後、上記シリンダ41のピストン42摺動面を形成すべく、同図2(b)に示すように、この加工対象部材Aを切削する機能を有する切削工具72にて同加工対象部材Aの内部を切削除去する作業を行う。この作業は、上記支持部材70及び切削工具72を相対的に回転させることで行う。なお、この際、各切削作業時における上記ドリル71の軸心と、この切削工具72の軸心とを同一に設定する適宜の装置を備えることが望ましい。これは、例えば上記ドリルを取り付けて上記支持部材70との相対回転を生じさせる装置と上記切削工具72を取り付けて上記支持部材70との相対回転を生じさせる装置とを共有することで行ってもよい。これにより、この装置と支持部材との上記相対回転を除く位置関係を固定しておくことで、各切削作業時における上記ドリル71の軸心とこの切削工具72の軸心とを同一に設定することができる。
【0052】
この作業により、図2(c)に示すように、加工対象部材Aの内部のうち上記第2の円柱部A2の内部が除去される(穴が穿設される)。
こうして内部の切削除去作業の終了された加工対象部材Aには、更に先の図1に示した収納溝52を形成してシール部材51を設けたり、連通孔44、45を形成したりする。そして、アーマチャ軸受け部65に一体形成されたシリンダ41が形成されると、これに対して、次の一連の作業を行う(順不同)。
・ピストン42にシール部材50を取り付ける。
・ピストン42の連結されたアーマチャ軸60をアーマチャ軸受け部65に挿入する。
・開弁用電磁コア62をシリンダ41及びアーマチャ軸受け部65に対して配置する。
・アーマチャ軸60にアーマチャ61を取り付ける。
・閉弁用電磁コア63を配置する。
【0053】
ここで、ピストン42の連結されたアーマチャ軸60をアーマチャ軸受け部65に挿入する際、シリンダ41及びアーマチャ軸受け部65の軸心が一致して形成されているために、ピストン42に設けられたシール部材50を傷つけることを回避することができる。
【0054】
そして、図3に示すように、シリンダヘッド10の凹部11に、ピストン42が収容されたシリンダ41を収容する。なお、上記シリンダ41の外周と上記シリンダヘッド10に設けられた凹部11の内周との間に適切なクリアランスを有するように、これらピストン42の外径と凹部11の内径とを設定する。これにより、たとえこの凹部11とアーマチャ軸60及びシリンダ41との軸心にずれが生じていたとしても、これを吸収することができる。
【0055】
ちなみに、凹部11の内周面とシリンダ41の外周面との間は、シリンダ41の内周面とピストン42の外周面との間ほどにはシール性が要求されない。したがって、凹部11の内周とシリンダ41の外周との間に十分なマージンを設けることができる。そして、こうすることで、シリンダヘッド10に設けられた凹部11にシリンダ41を簡易に挿入することができる。なお、この凹部11の内周面とシリンダ41の外周面との間は、上記Oリング53、55を用いることで、十分にシールされる。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)アーマチャ軸受け部65とシリンダ41とを一体形成した。このため、アーマチャ軸60の軸心とシリンダ41の軸心とを簡易に一致させることができる。したがって、シリンダ41とピストン42との間を好適にシールすることができ、ひいては、付勢部材としての品位を好適に維持することのできる空気ばねを備えた電磁駆動弁を構成することができる。
【0057】
(2)ドリル71によってシリンダ41及びアーマチャ軸受け部65とする加工対象部材Aの内部を切削除去することで、アーマチャ摺動面を形成した。また、切削工具72によって加工対象部材Aの内部を切削除去することで、ピストン摺動面を形成した。そしてこの際、加工対象部材Aを一つの部材とするとともに、これを同一の支持部材70で支持しつつ切削することで、アーマチャ摺動面及びピストン摺動面を形成した。
【0058】
したがって、ピストン摺動面及びアーマチャ摺動面の形成にかかる各穿設工程を、それら穿設対象となる孔(穴)の同心状態を維持しつつ行うことができる。このため、アーマチャ軸受け部65の軸心とシリンダ41の軸心とを精度よく合わせることが可能となる。
【0059】
(3)アーマチャ軸受け部65の外周に同アーマチャ軸受け部65と別部材で開弁用電磁コア62が配置されることで、開弁用電磁コア62及びアーマチャ軸受け部65を構成する部材としてそれぞれ適切な部材を選択することができる。ちなみに、開弁用電磁コア62を構成する磁性体は一般にその硬度が低い。これに対し、シリンダ41やアーマチャ軸受け部65には、硬度の高い部材を用いることが望ましい。この点、本実施形態では、アーマチャ軸受け部65と開弁用電磁コア62とを各別の部材とすることで、それぞれ適切な部材を用いることができる。
【0060】
(4)開弁用空気ばね40と閉弁用空気ばね20とがシリンダヘッド10の凹部11に配置されていることで、これら両空気ばね40、20のピストン42、22の変位領域がこれら両空気ばねで共有されることとなる。したがって、電磁駆動弁の軸方向のサイズの増大を好適に抑制することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる電磁駆動弁及びその製造方法の第2の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0062】
図4は、本実施形態にかかる電磁駆動弁の製造方法について、特に、開弁用空気ばね40のシリンダ41と、上記アーマチャ軸受け部65とを一体形成する工程を示す断面図である。
【0063】
図4(a)においても、先の第1の実施形態同様、シリンダ41及びアーマチャ軸受け部65とする単一の部材からなる加工対象部材Aを、支持部材70で固定する。この加工対象部材Aも、第1の円柱部A1と、同第1の円柱部が拡径された第2の円柱部A2とからなる同心円柱体である。
【0064】
ただし、本実施形態では、上記第1の円柱部A1に対する孔の穿設と上記第2の円柱部A2に対する穴の穿設とをそれら穿設対象に対応した形状を有する単一の切削工具を用いて行う。具体的には、同図4(a)に示すように、上記アーマチャ軸受け部65のアーマチャ軸60摺動面を形成する部材と、シリンダ41のピストン42摺動面を形成する部材とが一体形成された切削工具73を用いる。すなわち、この切削工具73は、上記アーマチャ軸受け部65のアーマチャ軸60摺動面を形成する第1切削部73aと、シリンダ41のピストン42摺動面を形成する第2切削部73bとからなる。そして、この加工対象部材Aの第2の円柱部A2側から、切削工具73にて同加工対象部材Aの内部を切削除去する作業を行う。この作業は、上記支持部材70及び切削工具73を相対的に回転させることで行う。
【0065】
これにより、図4(b)に示すように、加工対象部材Aの内部のうち上記アーマチャ軸摺動面となる部分及び上記ピストン摺動面となる部分に対応した部分が除去される。
【0066】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)、(3)及び(4)の効果に加えて、以下の効果が得られるようになる。
(5)上記第1切削部及び第2切削部が一体形成されている切削工具73を用いて、アーマチャ摺動面及びピストン摺動面を形成した。すなわち、第1切削部73aによって第1円柱部A1の内部を切削除去することで、アーマチャ摺動面を形成した。また、第2切削部73bによって第2円柱部A2の内部を切削除去することで、ピストン摺動面を形成した。そしてこの際、シリンダ41及びアーマチャ軸受け部65とする加工対象部材Aを一つの部材とするとともに、これを同一の支持部材70で支持しつつ切削することで、アーマチャ摺動面及びピストン摺動面を形成した。
【0067】
したがって、ピストン摺動面及びアーマチャ摺動面の形成に際し、アーマチャ軸受け部65の軸心とシリンダ41の軸心とを一致させることが可能となる。
(第3の実施形態)
以下、本発明にかかる電磁駆動弁及びその製造方法の第3の実施形態について、上記第1及び第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0068】
上記各実施形態では、上述したように、弁軸2及びアーマチャ軸60間に、上記弁体1を確実に閉弁させるべく、タペットクリアランスを設けた。ただし、このようにタペットクリアランスを設けると、弁体1の変位に伴って弁軸2及びアーマチャ軸60間に衝突が生じ、その結果、電磁駆動弁に打音が生じる。そこで、本実施形態では、上記タペットクリアランスを調整する油圧ラッシュアジャスタ機構を設けることで、上記弁軸2やアーマチャ軸60の長さの変化にかかわらず上記弁体1を確実に閉弁させることを可能とするとともに、上記打音の発生の回避も図る。
【0069】
図5(a)に、本実施形態にかかる電磁駆動弁において、上記開弁用空気ばね40のピストン42及び閉弁用空気ばね20のピストン22、並びにその周囲の構造を示す。
【0070】
同図5(a)に示すように、油圧ラッシュアジャスタ機構80は、高圧室81及び背圧室82からなるとともに、これら高圧室81及び背圧室82を区画形成する隔壁としてピストン22及びピストン42が用いられている。詳しくは、ピストン22のうちピストン42と対向する面には、背圧室用隔壁83が設けられている。一方、ピストン42のうちピストン22と対向する面には、高圧室用隔壁84が設けられている。これら背圧室用隔壁83、高圧室用隔壁84、ピストン22、42によって、高圧室81及び背圧室82が区画形成される。
【0071】
更に、ピストン42のうち、上記ピストン22側に突き出したアーマチャ軸60には、その軸方向に変位可能な弁89が備えられており、同弁89はスプリング85によってピストン22側に付勢されている。
【0072】
一方、ピストン22側に設けられた背圧室用隔壁83には、上記弁89が着座する着座壁86が設けられている。これにより、弁89が着座壁86に着座することで、高圧室81及び背圧室82間が仕切られる。そして、高圧室81及び背圧室82には作動油が充填されているとともに、高圧室81側の油圧は、背圧室82側の油圧と比較して高く設定されている。
【0073】
なお、この弁89及び着座壁86によって、高圧室81から背圧室82側への作動油の流出を禁止する逆止弁が構成される。また、本実施形態では、図5(a)に示すように、上記ピストン22からは弁軸2が突出していないようにして、同弁軸2にピストン22が連結されている。
【0074】
また、上記背圧室用隔壁83には連通孔87が形成されており、これにより、シリンダヘッド10に形成されている給油通路88と背圧室82とが連通されている。
【0075】
ところで、上記背圧室用隔壁83と上記高圧室用隔壁84との間には、クリアランスが設けられている。これにより、弁体1の開弁動作に伴いピストン42に大きな付勢力が付与される等、ピストン22及びピストン42間のタペットクリアランスが減少される場合には、図5(b)に示すような作動用の流出が生じる。すなわち、背圧室用隔壁83及び高圧室用隔壁84間のクリアランスを介して、高圧室81内の作動油が給油通路88側へと流出する。なお、この背圧室用隔壁83及び高圧室用隔壁84間のクリアランスは、これを介した作動油の流出によって、アーマチャ軸60の軸方向の長さが変位した場合等においても、弁体1の開弁時のリフト量を略一定に保てるように設定するのが望ましい。
【0076】
これに対し、アーマチャ61が閉弁用電磁コア63側に最大量変位した後にも弁体1がバルブシート3に着座していない場合等、ピストン22及びピストン42間のタペットクリアランスが増大される場合には、図5(c)に示すような作動油の流入が生じる。すなわち、給油通路88側から連通孔87を介して作動油が背圧室82、高圧室81へと流入する。なお、上記スプリング85の弾性力は、アーマチャ61が閉弁用電磁コア63側に最大量変位する際、閉弁用空気ばね20によってピストン22が上記閉弁用電磁コア63側に付勢される際の付勢力によって作動油が高圧室81側へ流入することができるように設定するのが望ましい。
【0077】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態上記(1)〜(4)の効果や、先の第2の実施形態の上記(5)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0078】
(6)油圧ラッシュアジャスタ機構80を設けることで、上記弁軸2やアーマチャ軸60の長さの変化にかかわらず上記弁体1を確実に閉弁させることができるとともに、上記打音の発生も回避することができる。
【0079】
(7)油圧ラッシュアジャスタ機構80を一対のピストン22、42を隔壁として構成するために、同機構80を備える電磁駆動弁の大型化を好適に抑制することができる。更に、一対のピストン22、42を隔壁として利用するために、部品点数の低減を図ることができ、ひいては、電磁駆動弁の低コスト化を促進することができる。
【0080】
(第4の実施形態)
以下、本発明にかかる電磁駆動弁及びその製造方法の第4の実施形態について、上記第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0081】
本実施形態では、油圧ラッシュアジャスタ機構の代わりに、図6に示す構成を有する緩衝機構90を備える。
図6に示すように、ピストン22には、弁軸2の軸線上であってこれと対向する面に突起部91が設けられている。この突起部91は、その外径が弁軸2の外径よりも大きく設定されている。また、ピストン42には、アーマチャ軸60の軸線上であってこれと対向する面に突起部92が設けられている。この突起部92は、その外径がアーマチャ軸60の外径よりも大きく設定されている。これら突起部91及び突起部92は、その上面に凹部91a、凹部92aがそれぞれ形成されている。そして、これら突起部91及び92の側壁には例えばゴムからなるシール部材93が設けられており、これにより、粘性流体室94が区画形成されている。そして、この粘性流体室94には、オイルやグリス等、粘性流体が充填されている。なお、上記シール部材93としては、粘性流体の移動に伴って変形可能であればよく、また、弾性部材であることが望ましい。
【0082】
更に、この粘性流体室94の外側であって、ピストン22及びピストン42間には、これらの間隙を拡大する方向に力を及ぼすスプリング95が備えられている。上記緩衝機構90は、突起部91、92、シール部材93、スプリング95及び粘性流体室94に充填される粘性流体を備えて構成される。
【0083】
なお、これら突起部91及び突起部92間は、弁体1の閉弁時であってアーマチャ61が上記閉弁用電磁コア63に最大量変位したときに、間隙を有するように設定する。
【0084】
こうした構成において、弁体1の開弁動作に伴いピストン42に大きな付勢力が付与される場合等においては、ピストン22及びピストン42間のタペットクリアランスが減少される。ただし、スプリング95及び粘性流体室94内に充填された粘性流体によって、このタペットクリアランスを低減させる勢いは弱められる。このため、突起部91及び突起部92間の衝突が回避されるか、衝突に伴う打音が抑制される。
【0085】
一方、弁体1の閉弁後アーマチャ軸60が更に上記閉弁用電磁コア63側へと変位する場合等には、ピストン22及びピストン42間のタペットクリアランスが増大される。ただし、この場合においても、粘性流体室94内に充填された粘性流体によって、このタペットクリアランスを増大させる勢いは弱められる。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態上記(1)〜(4)の効果や、先の第2の実施形態の上記(5)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0087】
(8)緩衝機構90を備えることで、上記弁軸2やアーマチャ軸60の長さの変化にかかわらず上記弁体1を確実に閉弁させることができるとともに、上記打音の発生も抑制することができる。
【0088】
以上説明した上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・油圧ラッシュアジャスタ機構80の構成としては、上記第3の実施形態で例示したものに限らず、例えばピストン22を貫通するようにして弁軸2を同ピストンに連結する構成としてもよい。
【0089】
・油圧ラッシュアジャスタ機構80としては、上記第3の実施形態で例示したものに限らない。例えば図7に示すような構成であってもよい。すなわち、上記背圧室用隔壁83及び高圧室用隔壁84間のクリアランスを介して高圧室81から流出する作動油を連通孔87を介して背圧室82側に戻す、例えばゴムや金属ベローズ等からなるシール部材100を備えた構成であってもよい。これによれば、シリンダヘッド10側に給油通路を設けなくてもよい。なお、上記シール部材100としては、ピストン22及びピストン42間の相対移動に伴って変形可能であればよく、また、弾性部材であることが望ましい。
【0090】
・緩衝機構90の構成としては、図6に例示したものに限らない。例えば粘性流体室94にピストン22及びピストン42の間隔を拡大する方向に力を及ぼすスプリング95を備える工程としてもよい。
【0091】
・アーマチャ軸摺動面やピストン摺動面を形成するための切削工具等については、図2及び図3において例示したものに限らない。例えば図2に示したドリル71の代わりに、リーマ等を用いてもよい。
【0092】
・上記各実施形態では、アーマチャ軸受け部65の外周を覆うようにして、その外側に同アーマチャ軸受け部65と別部材で開弁用電磁コア62を設けたが、開弁用電磁コア62がアーマチャ軸受け部65を備えて構成されるようにしてもよい。また、アーマチャ軸受け部の形状については、上記各実施形態で例示したものに限られず、アーマチャ軸を摺動可能に軸支できる範囲で適宜変更してもよく、電磁コアの配置についても、必ずしもアーマチャ軸受け部の外周を覆うようにして配置されるものに限らない。
【0093】
・シリンダ21、41及び凹部11の内周面間や、ピストン22及びシリンダ21間、ピストン42及びシリンダ41間のシール態様については、上記各実施形態で例示したものに限らない。
【0094】
・空気ばねの配置態様についても、上記各実施形態で例示したものに限らず、例えば特開平11-93630号公報の図1に記載のものでもよい。この場合であっても、アーマチャ軸受け部と空気ばねのシリンダとが一体形成される構成は有効である。
【0095】
・必ずしも一対の空気ばね20、40を備える必要はなく、弁体1を開弁側及び閉弁側にそれぞれ付勢する一対のばねのうち、いずれか一方のばねがアーマチャ軸に連結されたピストン及び同ピストンを収容するシリンダにより構成される空気ばねであればよい。例えば、他方のばねは、コイルスプリングといった適宜の(空気ばね以外の)ばねとして構成されるようにしてもよい。この場合であっても、アーマチャ軸受け部と空気ばねのシリンダとが一体形成される構成は有効である。
【0096】
・必ずしも一対の空気ばね20、40を備える構成でなくてもよい。例えば、開弁用電磁コアと閉弁用空気ばねとを備えて開弁動作及び閉弁動作を行うものであってもよく、閉弁用電磁コアと開弁用空気ばねを備えて閉弁動作及び開弁動作を行うものであってもよい。これらの場合であっても、アーマチャ軸受け部と空気ばねのシリンダとが一体形成される構成は有効である。
【0097】
・上記各実施形態で例示した空気ばね等の構成については、アーマチャ軸受け部と空気ばねのシリンダとが一体形成される構成を維持する範囲で適宜変更してよい。また、空気ばねの代わりに、空気以外の任意の気体を用いた気体ばねを備える構成であってもよい。この場合にも気体ばね等の構成については、アーマチャ軸受け部と気体ばねのシリンダとが一体形成される構成を維持する範囲で適宜変更してよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態にかかる電磁駆動弁の第1の実施形態の全体構成を示す断面図。
【図2】同実施形態にかかる電磁駆動弁の製造手順を示す断面図。
【図3】同実施形態にかかる電磁駆動弁の製造手順を示す断面図。
【図4】本実施形態にかかる電磁駆動弁の製造方法の第2の実施形態にかかる電磁駆動弁の製造手順を示す断面図。
【図5】本実施形態にかかる電磁駆動弁の第3の実施形態の構成を示す断面図。
【図6】本実施形態にかかる電磁駆動弁の第4の実施形態の構成を示す断面図。
【図7】上記第3の実施形態の変形例を示す断面図。
【図8】従来の電磁駆動弁を例示する断面図。
【符号の説明】
1…弁体、2…弁軸、3…バルブシート、10…シリンダヘッド、11…凹部、12…内周面、20…閉弁用空気ばね、21…シリンダ、22…ピストン、23…空気室、24、25…連通孔、26…供給通路、27…排出通路、30…シール部材、31…シール部材、32…収納溝、33…Oリング、40…開弁用空気ばね、41…シリンダ、42…ピストン、43…空気室、44、45…連通孔、46…供給通路、47…排出通路、50、51…シール部材、52…収納溝、53…Oリング、54…収納溝、55…Oリング、60…アーマチャ軸、61…アーマチャ、62…開弁用電磁コア、63…閉弁用電磁コア、64…電磁コアアッシー、65…アーマチャ軸受け部、70…支持部材、71…ドリル、72、73…切削工具、73a…第1切削部、73b…第2切削部、80…ラッシュアジャスタ機構、81…高圧室、82…背圧室、83…背圧室用隔壁、84…高圧室用隔壁、85…スプリング、86…着座壁、87…連通孔、88…給油通路、90…緩衝機構、91、92…突起部、91a、92a…凹部、93…シール部材、94…粘性流体室、95…スプリング、100…シール部材。

Claims (6)

  1. アーマチャ軸に連結されたアーマチャをアーマチャ軸の軸方向に付勢する電磁石と、前記アーマチャ軸に連結されたピストン及び該ピストンを収容するシリンダを備えて前記ピストンに作用する圧力に基づき前記アーマチャをアーマチャ軸の軸方向に付勢する気体ばねとを備え、それら電磁石による電磁力と気体ばねによるばね力とによる前記アーマチャ軸の摺動に応動して内燃機関の吸気弁又は排気弁として機能する弁体を駆動する電磁駆動弁において、
    前記アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部と前記気体ばねとして前記ピストンを収容するシリンダとが一体に形成されてなること、
    前記気体ばねを構成するシリンダが、前記内燃機関のシリンダヘッドに設けられた凹部に収納されてなること、
    及び前記気体ばねは、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁用気体ばねであるとともに、前記凹部の底面側に、前記弁体の軸である弁軸に連結されたピストンを有してこのピストンに作用する圧力に基づき前記弁体を閉弁方向に付勢する閉弁用気体ばねを備え、それら開弁用気体ばねのピストン及び閉弁用気体ばねのピストン間には、それら各ピストンを隔壁として前記アーマチャ軸と前記弁軸とのタペットクリアランスを調整するための油圧ラッシュアジャスタ機構が設けられてなること、
    特徴とする電磁駆動弁。
  2. アーマチャ軸に連結されたアーマチャをアーマチャ軸の軸方向双方向にそれぞれ付勢する一対の電磁石と、内燃機関の吸気弁又は排気弁として機能する弁体を開弁側及び閉弁側にそれぞれ付勢する一対のばね手段とを備え、前記電磁石による電磁力と前記ばね手段によるばね力との協働により前記弁体を開閉駆動するに、前記一対のばね手段の1つとして前記アーマチャ軸に連結されたピストン及び該ピストンを収容するシリンダにより気体ばねとして構成されるものを用いる電磁駆動弁において、
    前記アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部と前記気体ばねとして前記ピストンを収容するシリンダとが一体に形成されてなること、
    前記気体ばねを構成するシリンダが、前記内燃機関のシリンダヘッドに設けられた凹部に収納されてなること、
    及び前記気体ばねは、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁用気体ばねであるとともに、前記凹部の底面側に、前記弁体の軸である弁軸に連結されたピストンを有してこのピストンに作用する圧力に基づき前記弁体を閉弁方向に付勢する閉弁用気体ばねを備え、それら開弁用気体ばねのピストン及び閉弁用気体ばねのピストン間には、それら各ピストンを隔壁として前記アーマチャ軸と前記弁軸とのタペットクリアランスを調整するための油圧ラッシュアジャスタ機構が設けられてなること、
    を特徴とする電磁駆動弁。
  3. 前記アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部が、前記電磁石とは別体で構成されてなる
    請求項1又は2記載の電磁駆動弁。
  4. アーマチャ軸に連結されたアーマチャをアーマチャ軸の軸方向に付勢する電磁石と、前記アーマチャ軸に連結されたピストン及び該ピストンを収容するシリンダを備えて前記ピストンに作用する圧力に基づき前記アーマチャをアーマチャ軸の軸方向に付勢する気体ばねとを備え、それら電磁石による電磁力と気体ばねによるばね力とによる前記アーマチャ軸の摺動に応動して内燃機関の吸気弁又は排気弁として機能する弁体を駆動する電磁駆動弁であって、前記アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部と前記気体ばねとして前記ピストンを収容するシリンダとが一体に形成されるとともに、前記気体ばねを構成するシリンダが、前記内燃機関のシリンダヘッドに設けられた凹部に収納されてなり、且つ前記気体ばねは、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁用気体ばねであるとともに、前記凹部の底面側に、前記弁体の軸である弁軸に連結されたピストンを有してこのピストンに作用する圧力に基づき前記弁体を閉弁方向に付勢する閉弁用気体ばねを備え、それら開弁用気体ばねのピストン及び閉弁用気体ばねのピストン間には、それら各ピストン を隔壁として前記アーマチャ軸と前記弁軸とのタペットクリアランスを調整するための油圧ラッシュアジャスタ機構が設けられてなる電磁駆動弁を製造する方法であって、
    前記アーマチャ軸を摺動可能に支持する軸受け部と前記気体ばねの前記ピストンを収容するためのシリンダとを形成する単一の部材に、前記軸受け部とする孔と前記シリンダとする穴とを同心状態を維持しつつ穿設することによって、これら軸受け部とシリンダとを一体形成する
    ことを特徴とする電磁駆動弁の製造方法。
  5. アーマチャ軸に連結されたアーマチャをアーマチャ軸の軸方向双方向にそれぞれ付勢する一対の電磁石と、内燃機関の吸気弁又は排気弁として機能する弁体を開弁側及び閉弁側にそれぞれ付勢する一対のばね手段とを備え、前記電磁石による電磁力と前記ばね手段によるばね力との協働により前記弁体を開閉駆動するに、前記一対のばね手段の1つとして前記アーマチャ軸に連結されたピストン及び該ピストンを収容するシリンダにより気体ばねとして構成されるものを用いる電磁駆動弁であって、前記アーマチャ軸を摺動可能に軸支する軸受け部と前記気体ばねとして前記ピストンを収容するシリンダとが一体に形成されてなるとともに、前記気体ばねを構成するシリンダが、前記内燃機関のシリンダヘッドに設けられた凹部に収納されてなり、且つ前記気体ばねは、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁用気体ばねであるとともに、前記凹部の底面側に、前記弁体の軸である弁軸に連結されたピストンを有してこのピストンに作用する圧力に基づき前記弁体を閉弁方向に付勢する閉弁用気体ばねを備え、それら開弁用気体ばねのピストン及び閉弁用気体ばねのピストン間には、それら各ピストンを隔壁として前記アーマチャ軸と前記弁軸とのタペットクリアランスを調整するための油圧ラッシュアジャスタ機構が設けられてなる電磁駆動弁を製造する方法であって、
    前記アーマチャ軸を摺動可能に支持する軸受け部と前記気体ばねの前記ピストンを収容するためのシリンダとを形成する単一の部材に、前記軸受け部とする孔と前記シリンダとする穴とを同心状態を維持しつつ穿設することによって、これら軸受け部とシリンダとを一体形成する
    ことを特徴とする電磁駆動弁の製造方法。
  6. 前記軸受け部とする孔と前記シリンダとする穴との穿設を、それら各穿設対象に対応した形状を有する単一の切削工具を用いて行う
    請求項4又は5記載の電磁駆動弁の製造方法。
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