JP4123343B2 - オキセタニル基を有する環状オレフィン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、架橋が可能であり、光学的透明性が高く、優れた耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性を有する、光学透明材料として有用な環状オレフィン系重合体の製造に用いられる環状オレフィンに関する。
【0002】
【従来の技術】
これまでにも架橋可能な置換基を有する環状オレフィンは、オレフィン系重合体の架橋を行うために、広く利用されている。例えば、エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(エチリデンノルボルネン:ENB)は、硫黄や過酸化物によりエチレン−プロピレンエラストマーの加硫を行う際の架橋モノマーとして、一般的に使用されている。
【0003】
環状オレフィン系重合体においても、耐薬品性、耐溶剤性の改良や物理特性の向上のために、架橋基の導入が求められており、例えば、特開平03−205408号公報では、ビニル基、ビニリデン基で代表される、炭化水素の不飽和結合を側鎖に有する環状オレフィン系付加重合体が開示されている。しかし、架橋反応部位としてこれらの不飽和結合基を用いた場合、高温での耐酸化劣化性が低下し、着色するなどの問題を生じる。また、架橋するためには、熱や光などで分解してラジカルを発生する開始剤化合物を多く必要とするが、これが重合体の劣化を招くこととなる。
【0004】
また、特開昭52−52999号公報、特開平7−196736号公報、特開平7−104474号公報、米国特許第5912313号明細書などには反応性シリル基を持つ環状オレフィンについてが記載されている。これらにおいて、ケイ素原子に結合する置換基は、アルコキシ、アリロキシ、ハロゲンなどの置換基である。しかし、反応シリル基を用いた場合、単量体や重合体の貯蔵中に、あるいは重合体から水や酸などを用いて重合触媒残さを除去する際に、水などと反応して分解したりゲル状の縮合体の生成を招くなどの問題を伴うことが多い。
【0005】
一方、エポキシ基を用いた環状オレフィン系重合体が、例えば特開平10−251343号公報、特開平10−182799号公報などに示されている。しかしながら、エポキシ基は非常に不安定であるため、エポキシ基を持つ環状オレフィンを単量体として重合することは困難である。
通常は、該公報の記載にあるような、ビニル基、ビニリデン基を持つ重合体を過酸化物などでエポキシ化させることで得る方法をとることが多いが、その際の反応試薬が重合体の劣化を招いたり、重合体中に不純物が混入したり、高い転化率が得られずに二重結合が残留したりする原因となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、環状オレフィン重合体の耐酸化劣化性や貯蔵安定性を損なうことなしに、架橋時にはすみやかに反応し、耐薬品性、耐溶剤性など、架橋体に求められる物性を環状オレフィン重合体へ付与することができる、環状オレフィンを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式(1)で表されるオキセタニル基を有する環状オレフィンに関する。
【0008】
【化2】
【0009】
[式(1)中、A1,A2,A3は、同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、アリール基、あるいは−(CR6R7)qZで表される極性基より選ばれる基である。ここで、Zは−OR8,−C(O)R9,−OC(O)R10,C(O)OR11を表す。Xは環状オレフィンとオキセタニル基とを接続する基であって、−(CH 2 ) s O(CH 2 ) t −を表す。R 1 〜R 11 は同一または異なり、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基あるいはハロゲン化炭化水素基を表し、p,qは0〜3の整数、s,tは0〜6の整数を表す。]
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明者らによる鋭意検討の結果、上記式(1)で表される環状オレフィンが本発明の目的に合致することが明らかとなった。
【0011】
オキセタン骨格は、カチオン重合可能なユニットであり、特に光カチオン重合開始剤を用いたオキセタン化合物の光重合系は、室温で重合可能であり、高生産性を示すなどの特徴を有している。また、アクリレートの重合系と比べ、重合反応時に酸素による阻害を受けにくいことが知られている。エポキシ化合物も同様の光カチオン重合性を持つものとして知られているが、オキセタン化合物と比べ、低い重合性しかもたない。
エポキシ基を含有する環状オレフィン重合体は、エポキシ基を有する環状オレフィンを単量体として重合させて得ることが非常に困難である。
そのため、このような重合体は、ビニル基、ビニリデン基を持つ重合体を過酸化物などによりエポキシ化することで得られるが、その際の過酸化物が重合体の劣化を招いたり、重合体中に不純物が混入したり、高い転化率が得られずに未反応の二重結合が残留したりする原因となることは既に述べたとおりである。また、エポキシ基を含有する環状オレフィン重合体は、長期保存時の安定性に問題がある。これに対し、オキセタン化合物は、酸の非存在下においては非常に安定であるうえ、エポキシ化合物と比較して高いカチオン重合性を持つ。それ故、オキセタン骨格を持つ環状オレフィンの構造単位は、高い安定性を持つと同時に、少ない含量ですみやかに架橋が進行することから、環状オレフィン系(共)重合体の架橋反応部位として優れたものである。
【0012】
また、アルコキシシリル基をはじめとする加水分解性シリル基を持つ環状オレフィンと比較した際においても、本発明のオキセタニル基を有する環状オレフィンは優れた特徴を持つ。加水分解性シリル基は、重合体の架橋反応に際し当量の水を必要とすることから、架橋を完了させるには激しい条件が必要とされ、また、反応後はアルコールなどが脱離するため、それが架橋体中に残留すると、光散乱による透過度の低下などの原因となる。一方、オキセタニル基は、架橋反応に際してそのような問題は無く、穏和な条件で高い光学透明性を維持したままの架橋が可能である。さらに、加水分解性シリル基と異なり、水分により徐々に加水分解を受けてのゲル化などを招くこともない。
以下に、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0013】
上記式(1)で表される環状オレフィンとしては、例えば、下記式(2)で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン誘導体、あるいは下記式(3)で表されるテトラシクロ[4.4.0.1.2,517,10]ドデセンの誘導体が望ましく挙げられる。
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
[式(2)および(3)中、A1〜A3、R1〜R5、およびXは式(1)に同じ。]
【0017】
式(2)で表される環状オレフィンとしては、以下の具体例で示されるものが、より望ましく用いられる。
エーテル結合を含む基により結合したもの:
2−[(3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、5−[(3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[(3−オキセタニル)メトキシエチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシエチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシエチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなど
【0018】
また、式(3)で表される環状オレフィンとしては、以下の具体例で示されるものが、より望ましく用いられる。
エーテル結合を含む基により結合したもの:
8−[(3−オキセタニル)メトキシ]テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−[(3−オキセタニル)メトキシメチル]テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなど
【0019】
上記具体例に挙げた環状オレフィンの中でも、上記式(2)および(3)においてXで表される環状オレフィンとオキセタニル基とを接続する基が、−(CH2)sO(CH2)t−で表されるエーテル結合を含むものを好ましく使用できる。[ここで、s,tは式(1)に同じ。]さらに好ましくは、上記具体例に挙げた環状オレフィンの中でも、2−[(3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、5−[(3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンが使用される。
【0021】
本発明のオキセタニル基を有する環状オレフィンの合成において、オキセタン構造は任意の方法により形成することができ、例としては、1,3−ジオールの部分塩素化/脱塩化水素反応や、1,3−ジオールの環状炭酸エステル化/脱炭酸反応などを利用できる。中でも、トリオール化合物を原料とし、3−ヒドロキシメチルオキセタン化合物を得る方法が、J.Macromol.Sci.,Pure Appl.Chem.,A30(2&3),189(1993)に示されているが、原料の入手性、誘導体への転化の容易さなどの点で有用である。
【0022】
オキセタニル基を環状オレフィンへと導入する方法としては、例えば、下記式(4)で表されるオレフィン化合物とシクロペンタジエンとのDiels−Alder反応を挙げることができ、この手法によって、上記式(2)で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの誘導体を得ることができる。
【0023】
【化5】
【0024】
[式(4)中、A1〜A3、R1〜R5、およびXは式(1)に同じ。]
【0025】
また、式(2)で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン誘導体について、さらにシクロペンタジエンとDiels−Alder反応を実施することによって、上記式(3)で表されるテトラシクロ[4.4.0.1.2,5.17,10]ドデセンの誘導体が得られる。
【0026】
式(4)で表されるオレフィン化合物の例としては、[(3−オキセタニル)メチル]ビニルエーテル、[(3−メチル−3−オキセタニル)メチル]ビニルエーテル、[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]ビニルエーテルなどのエーテル化合物が好ましく使用される。
【0027】
また、オキセタニル基は、その他の任意の方法を用いて環状オレフィン化合物へと導入してもよい。例えば、3−ハロメチルオキセタンなど脱離基を有するオキセタン化合物と、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−オールあるいは2−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンとの反応によりエーテル化合物を合成する方法を用いることができる。その他、Grignard反応による方法などを用いることもできる。さらには、あらかじめ環状オレフィンへと1,3−ジオール構造や、6員環の環状炭酸エステル構造を導入しておき、オキセタニル構造へと誘導する方法を用いてもよい。
【0028】
式(4)で表されるオレフィン化合物から式(2)で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン誘導体、および、式(2)で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン誘導体から式(3)で表されるテトラシクロ[4.4.0.1.2,5.17,10]ドデセンの誘導体へのDiels−Alder反応は、通常、シクロペンタジエン、あるいはその二量体であるトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)を添加して行われる。反応は、窒素、アルゴンなどの不活性気体の雰囲気下で行うことが好ましく、溶媒は特に必要のない限りは用いなくともよい。反応温度は高いほど反応速度が高くなる一方、選択性が低下することが多い。また、Diels−Alder反応の反応性が、式(4)のオレフィン化合物の置換基の性質によって大きく異なるため、反応温度はその置換基の選択に応じて適宜設定される。例えば、アクリル酸エステルなど、隣接するエステル構造を持つものの場合を例に挙げると、シクロペンタジエンとの反応は、望ましくは−20℃から150℃の範囲で実施される。一方、隣接するエステル構造を持たないオレフィン化合物の反応や、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエンを用いる反応などでは、通常、150〜250℃、好ましくは170〜230℃の範囲内で実施される。反応に際して、シクロペンタジエンあるいはトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエンは、選択性・収率などの面から、反応に用いるオレフィンに対し0.8〜1.3当量の範囲で添加することが好ましい。添加方法としては1回で加えてもよいし、また2回以上に分割して加えたり、連続的に加えてもよい。生成物は、蒸留、カラムクロマトグラフィー、再結晶などの公知の方法にて出発物質や副生成物などと分離、精製してよく、または特に分離精製操作を行うことなく、次の反応に用いてもよい。
【0029】
本発明の環状オレフィンは、その核磁気共鳴スペクトルにおいて、4.4ppmから4.5ppmの化学シフトの範囲に、オキセタン環の酸素に隣接する炭素原子に結合した水素核に由来する、特徴的な吸収が観測されることにより確認される。また、0.4〜3.1ppmには脂環式炭化水素に由来する吸収が、5.8〜6.2ppmには二重結合に炭素に結合した水素核に由来する吸収が、それぞれ観測される。また、赤外吸収スペクトルにおいては、例えば2−[(3−アルキル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンについてみると、オキセタン構造に由来する強い吸収が980〜990cm-1付近に観測される。すなわち、これらの吸収より、当該環状オレフィン中のオキセタン構造の存在を確認することができる。
【0030】
本発明のオキセタニル基を有する環状オレフィンは、単独または二種以上組み合わせて、あるいは他の環状オレフィン、α−オレフィンなどから選ばれるオレフィンと組み合わせて付加(共)重合体の製造に用いることができる。さらには、単独または二種以上組み合わせて、あるいは他の環状オレフィンと組み合わせてメタセシス開環(共)重合体、さらにその水素化(共)重合体の製造に用いることができる。
【0031】
また、本発明のオキセタニル基を有する環状オレフィンは、単独で、あるいは他のカチオン重合性モノマーと組み合わせて、オキセタン樹脂やエポキシ樹脂などのカチオン重合体の製造に用いることもできる。その際に、本発明の環状オレフィンと組み合わされるカチオン重合性モノマーとしては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ジ(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、アクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル、メタクリル酸3−エチル−3−オキセタニルメチル、フェノールノボラックオキセタン、上記式(4)で表されるオキセタニル基を有するオレフィン化合物などのオキセタン化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルなどエポキシ化合物などが挙げられる。
【0032】
また、本発明のオキセタニル基を有する環状オレフィンは、さらに公知の方法で別の化合物を得るための中間体として用いてもよい。例えば、オレフィン性二重結合のエポキシ化、ヒドロシリル化、ヒドロホウ素化、ヒドロホルミル化、ジオール化、マレイン酸無水物の付加などを行うことができる。
【0033】
これら、本発明のオキセタニル基を有する環状オレフィンを用いて得られる(共)重合体は、優れた耐熱性、光学特性、耐溶剤性、耐薬品性を有するので、液晶表示素子基板、エレクトロルミネッセンス表示素子基板、各種窓材、偏光フィルム、位相差フィルム、液晶フィルム、反射防止フィルムなどの光学フィルム、OHPフィルム、プリント基板用基材などをはじめ、光ディスク、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学フィルター、導光板、光導波路などの光学材料、半導体封止剤などの電子部品材料、医療機器、各種容器、コーティング剤、接着剤、バインダーなどに好適に用いられる。
【0034】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限を受けるものではない。
なお、(共)重合体の分子量、ガラス転移温度、全光線透過率、トルエン膨潤度、線膨張係数は、下記の方法で測定した。
【0035】
(1)重量平均分子量、数平均分子量:
ウォーターズ(WATERS)社製、150C型ゲルパーミエションクロマトフィー(GPC)装置で東ソ−(株)製Hタイプカラムを用い、o−ジクロロベンゼンを溶媒として、120℃で測定した。得られた分子量は標準ポリスチレン換算値である。
(2)Tanδのピーク温度(ガラス転移温度):
動的粘弾性のTanδ(貯蔵弾性率E'と損失弾性率E"との比E"/E'=Tanδ)のピーク温度で重合体のガラス転移温度を測定した。動的粘弾性の測定はレオバイブロンDDV−01FP(オリエンテック製)を用い、測定周波数が10Hz、昇温速度が4℃/分、加振モードが単一波形、加振振幅が2.5μmのものを用いて得られるTanδの温度分散のピーク温度で求めた。
(3)全光線透過率:
ASTM−D1003に準拠し、厚さが150μmのフィルムにして、全光線透過率を測定した。
(4)トルエン膨潤度:
厚さ50〜250μm、縦横1cm×2cmのフィルムを25℃のトルエンに3時間浸漬し、浸漬前後のフィルム重量を測定し、下記式で膨潤度を算出した。
トルエン膨潤度(%)=(トルエン浸漬後の重量/トルエン浸漬前の重量)×100
(5)線膨張係数:
TMA(Thermal Mechanical Analysis)/SS6100(セイコーインスツルメント社製)を用いて、膜厚100μm、幅3mm、長さ10cmの試料を、チャック間距離10mmで固定し、室温から200℃程度まで一旦昇温して残留ひずみをとった後、室温から3℃/minで昇温し、チャック間距離の伸びから線膨張係数を求めた。
【0036】
なお、実施例で用いられる3−アリロキシメチル−3−エチルオキセタンは、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成株式会社製)を用い、J.Macromol.Sci.PartA:Pure.Appl.Chem.,A30,173−187(1993)に記載の方法に従い合成した。また、アクリル酸(3−エチル−3−オキセタニル)メチルは、Macromolecules,25,1198(1992)に記載のエステル交換法を用いて合成した。
【0037】
実施例1
<2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンの合成>
充分に窒素で置換した容量200ミリリットルのステンレス製オートクレーブへ、3−アリロキシメチル−3−エチルオキセタンを100ミリリットル(0.59モル)と、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン)を25ミリリットル(0.19モル)とを仕込んだ。バルブを閉じ、170℃で2時間加熱した。
さらに、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエンを12ミリリットル(0.09モル)加え、2時間加熱する操作を2回繰り返した。得られた反応混合物を200ミリメートルのウィドマー型分留管を接続したガラス製フラスコに移し、0.1mmHgでの減圧蒸留により、90〜91℃の沸点にて、目的物を78グラム(収率60%)得た。実施例1で得られた環状オレフィンの、CDCl3中での1H−NMRスペクトルを図1に、IRスペクトルを図2に示す。
【0039】
参考例1
充分に乾燥し、窒素置換したガラス製200ミリリットル耐圧容器に、乾燥トルエンに溶解して5.79モル/リットルの濃度としたビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを17ミリリットル、乾燥トルエンを50ミリリットル仕込み、さらに、実施例1で得た2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンを1ミリモル加えた。撹拌しながら系の温度を30℃に調節した。(η6−トルエン)ビス(ペンタフルオロフェニル)ニッケルの乾燥トルエン溶液(濃度:0.05モル/リットル)を0.8ミリリットル加え、重合を開始した。60分間反応を行った後、トルエン約50ミリリットルで希釈、イソプロピルアルコール4ミリリットルに溶解し、さらにトルエン20ミリリットルで希釈した乳酸0.4グラムを加えて反応を停止した。精製水30ミリリットルで2度洗浄し、続いて約1リットルのイソプロピルアルコール中にて凝固、真空下90℃で40時間乾燥し、7.7グラム(収率81%)の環状オレフィン系共重合体を得た。重量平均分子量(Mw)は1,250,000、数平均分子量(Mn)は570,000、Mw/Mnは2.2であった。共重合体の1H−NMRによる分析における、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンの含有率は0.5モル%であった。また、共重合体のシクロヘキサン溶液からキャスト法により得られたフィルムのFT−IRスペクトルにおいて、983cm-1にオキセタン骨格に基づく吸収が観測された。
【0040】
参考例2
加えた2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンの量を5ミリモルとした以外は、参考例1と同様の操作を行い、7.0グラム(収率69%)の共重合体を得た。重量平均分子量(Mw)は1,400,000、数平均分子量(Mn)は535,000、Mw/Mnは2.6であった。共重合体の1H−NMRによる分析における、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンの含有率は3.3モル%であった。また、共重合体のシクロヘキサン溶液からキャスト法により得られたフィルムのFT−IRスペクトルにおいて、986cm-1にオキセタン骨格に基づく鋭い吸収が観測された。
【0042】
参考例4〜5
参考例1〜2にて得られた共重合体100重量部と、ジ[4−アルキル(C10〜C14)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(λmax=244nm)を3重量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ0.9重量部添加し、トルエンあるいはシクロヘキサン−トルエン混合溶液よりキャストしてフィルムを作成し、F1〜F2とした。得られたそれぞれのフィルムよりサンプル片を作成し、真空下150℃で1時間加熱した後、評価を行った。結果を表1に示す。
また、上で得られたF1〜F2について、メタルハライドランプを光源とし、それぞれのフィルムの両面を300mJ/cm2照射後、真空下150℃で2時間加熱した後、評価を行った。結果を表1に示す。いずれのサンプルにおいても架橋が進行し、トルエンに不溶なフィルムとなった。
【0043】
【表1】
【0044】
比較参考例1
2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンに代えて、5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンを10ミリモルを加えた以外は、参考例1と同様の操作を行い、6.7グラム(収率61%)の環状オレフィン系共重合体を得た。重量平均分子量(Mw)は1,050,000、数平均分子量(Mn)は403,000、Mw/Mnは2.6であった。得られた重合体について、参考例4〜6の手順にてキャストフィルムを作成後、メタルハライドランプによる光照射し、150℃で1時間加熱を行ったが、照射後のフィルムはトルエンに大部分が溶解した。また、ジ[4−アルキル(C10〜C14)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートに代えて、ベンゾイルパーオキシドを1重量部加えてフィルムを作成し、150℃で2分間加熱したが、加熱後のフィルムもトルエンに大部分が溶解した。
【0045】
【発明の効果】
本発明のオキセタニル基を有する環状オレフィンは、環状オレフィン(共)重合体の耐酸化劣化性を低下させるような二重結合の導入や、貯蔵安定性を低下させるようなエポキシ基や加水分解性シリル基の導入を不要とすることができ、さらには、架橋時にはすみやかに反応し、耐薬品性、耐溶剤性など、架橋体に求められる物性を環状オレフィン重合体へと付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた環状オレフィンのCDCl3中での1H−NMRスペクトルである。
【図2】 実施例1で得られた環状オレフィンのIRスペクトルである。
Claims (2)
- 式(1)で表されるオキセタニル基を有する環状オレフィン。
- 環状オレフィンが、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンである請求項1記載のオキセタニル基を有する環状オレフィン。
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