JP4121878B2 - パーキングブレーキのレバーブーツ取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はパーキングブレーキに係り、特に、バッキングプレートから車体側へ突き出すブレーキレバーとバッキングプレートとの間を閉塞するレバーブーツの取付構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
(a) 車輪の回転軸心に対して略垂直になる姿勢で車体に一体的に固設されるバッキングプレートと、(b) それぞれ略円弧形状を成していて前記バッキングプレートに拡開可能に配設される一対のブレーキシューと、(c) 前記バッキングプレートに一体的に固設され、前記一対のブレーキシューの一端部がリターンスプリングによって常には当接状態に保持されるアンカブロックと、(d) そのアンカブロックの近傍において前記一対のブレーキシューに跨がって配設され、先端部がそのアンカブロックおよび前記バッキングプレートに設けられた挿通穴から前記車体側へ突き出すブレーキレバーが一方向へ回動させられることにより、前記リターンスプリングの付勢力に抗して機械的にその一対のブレーキシューを離間させ、回転ドラムに押圧して制動力を発生させる拡開機構と、(e) 筒状の一端開口部が前記バッキングプレートに固定されるとともに他端開口部が前記ブレーキレバーに係止され、そのブレーキレバーの回動を許容しつつ前記挿通穴との間の隙間を閉塞する弾性体製のレバーブーツと、を有するパーキングブレーキが知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、レバーブーツの一端開口部は、バッキングプレートの裏側(車体側)においてケーブルガイドとの間で挟まれた状態で固定されており、その一端開口部は車体側に一体的に取り付けられるベース部材(キャリアなど)の板厚より僅かに大きい肉厚を備えている。
【0003】
【特許文献1】
特開2003−28212号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のレバーブーツ取付構造は、ベース部材の板厚に応じてレバーブーツの一端開口部の肉厚を設定する必要があり、汎用性が乏しいとともに、必要以上に大きな肉厚にする必要があった。
【0005】
これに対し、未だ公知ではないが、図5に示すようにアンカブロック100の挿通穴102の周縁部に凹所104を設け、その凹所104内においてバッキングプレート106との間でレバーブーツ108の一端開口部110を挟んで固定することが考えられるが、アンカブロック100の鍛造加工で凹所104を高い寸法精度で成形することは困難なため、切削加工などの後加工で凹所104を設ける必要があり、製造コストが高くなる。すなわち、所定のシール性能を確保するために、例えば0.5〜1.2mm程度の締め代が必要とされるのに対し、鍛造加工の加工誤差は±1〜1.5mm程度で要求を満たさないのである。なお、図5の112は拡開機構で114はブレーキレバーであり、116はベース部材である。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、所定のシール性能を確保しつつバッキングプレートとアンカブロックとの間でレバーブーツの一端開口部を固定できる安価な取付構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 車輪の回転軸心に対して略垂直になる姿勢で車体に一体的に固設されるバッキングプレートと、(b) それぞれ略円弧形状を成していて前記バッキングプレートに拡開可能に配設される一対のブレーキシューと、(c) 前記バッキングプレートに一体的に固設され、前記一対のブレーキシューの一端部がリターンスプリングによって常には当接状態に保持されるアンカブロックと、(d) そのアンカブロックの近傍において前記一対のブレーキシューに跨がって配設され、先端部がそのアンカブロックおよび前記バッキングプレートに設けられた挿通穴から前記車体側へ突き出すブレーキレバーが一方向へ回動させられることにより、前記リターンスプリングの付勢力に抗して機械的にその一対のブレーキシューを離間させ、回転ドラムに押圧して制動力を発生させる拡開機構と、(e) 筒状の一端開口部が前記バッキングプレートに固定されるとともに他端開口部が前記ブレーキレバーに係止され、そのブレーキレバーの回動を許容しつつ前記挿通穴との間の隙間を閉塞する弾性体製のレバーブーツと、を有するパーキングブレーキにおいて、(f) 前記アンカブロックと前記バッキングプレートとの間には、前記挿通穴よりも大きい抜き穴が設けられた所定の板厚の金属プレートが介在させられ、その抜き穴の内側においてそのバッキングプレートとそのアンカブロックとの間で前記レバーブーツの一端開口部が挟まれて固定されていることを特徴とする。
【0008】
第2発明は、第1発明のパーキングブレーキのレバーブーツ取付構造において、前記拡開機構は、前記バッキングプレートと略平行な連結ピンまわりに相対回動可能に前記ブレーキレバーに連結されたストラットを有するとともに、それ等のブレーキレバーおよびストラットは前記アンカブロックの近傍において前記一対のブレーキシューの一方および他方に係合させられ、そのブレーキレバーがその連結ピンまわりの一方向へ回動させられることによりその一対のブレーキシューを離間させるものであることを特徴とする。
【0009】
【発明の効果】
このようなレバーブーツ取付構造においては、挿通穴よりも大きい抜き穴が設けられた金属プレートをアンカブロックとバッキングプレートとの間に介在させ、その抜き穴の内側においてバッキングプレートとアンカブロックとの間でレバーブーツの一端開口部を挟んで固定するようになっているため、所定のシール性能を確保しつつ製造コストを低減できる。すなわち、金属プレートの板厚の寸法誤差は、例えば2〜5mm程度の板厚の場合±0.2〜0.3mm程度であるため、そのままで0.5〜1.2mm程度の必要締め代を満足させることができ、レバーブーツの一端開口部を金属プレートの設定板厚よりも例えば0.8mm程度厚い肉厚にすれば所望のシール性能が得られるとともに、このような金属プレートはプレスによる打ち抜き加工によって簡単且つ安価に製造することができるのである。なお、要求締め代は、レバーブーツの材質や肉厚などにより適宜定められる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、第2発明のパーキングブレーキに好適に適用されるが、例えばブレーキレバーを一方のブレーキシューに所定の連結ピンまわりに回動可能に連結するとともに、他方のブレーキシューに係合させられたストラットとブレーキレバーとを係合させるようにしても良いなど、機械的にブレーキシューを離間させる種々の態様が可能である。ブレーキレバーを連結する連結ピンは、例えば別体に構成されるが、ブレーキレバー或いはその相手側の部材に一体に設けることも可能である。
【0011】
また、ディスクブレーキの内部にパーキングブレーキ用のドラムブレーキを組み込んだドラムインディスクブレーキに好適に適用されるが、単純なドラムブレーキのパーキングブレーキ機構など、種々のパーキングブレーキに適用できる。
【0012】
ブレーキレバーおよびストラットは、何れも1枚または複数の金属板にて構成し、バッキングプレートに対して略垂直になる姿勢で配設することが望ましいが、合成樹脂材料などを用いることも可能である。
【0013】
ブレーキレバーは、例えばパーキングブレーキケーブルやリンク機構などの連結機構を介して運転席のパーキング操作部材に連結され、運転者の操作力に従って一方向へ回動させられるように構成されるが、運転者のスイッチ操作などで電動モータなどの駆動源が作動させられることにより一方向へ回動させられるようにすることもできるなど、種々の態様が可能である。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、ディスクブレーキの内部にパーキングブレーキ用のドラムブレーキを組み込んだドラムインディスクブレーキの一例を示す正面図である。また、図2は、拡開機構22が配設された上部を示す部分拡大図で、図3、図4はそれぞれ図2におけるIII −III 断面、IV−IV断面に相当する図である。これ等の図において、円板状のバッキングプレート10は、図示しない車輪の回転軸心に対して略垂直になる姿勢で車体に一体的に固設されるもので、このバッキングプレート10には、それぞれ略円弧形状を成している一対の第1ブレーキシュー12および第2ブレーキシュー14が左右の外周縁に略沿って上下に配設され、それぞれシューホールドダウン装置16、18により拡開可能に保持されている。また、バッキングプレート10の裏側、すなわち車体側には、バッキングプレート10よりも外周側へ延び出すダストカバー20が一体的に設けられている。
【0015】
上記ブレーキシュー12、14の一端部間、具体的には上側の端部間には、拡開機構22、およびリターンスプリングとして引張コイルスプリング24がそれぞれ略水平に配設されており、引張コイルスプリング24によって互いに接近する方向へ付勢されて、常にはアンカブロック26に当接する状態に保持されるとともに、拡開機構22によりその引張コイルスプリング24の付勢力に抗して左右へ離間させられることにより、車輪に一体的に配設された回転ドラム28(図4参照)に押圧されて制動力を発生する。アンカブロック26は、一対のボルト30によりバッキングプレート10、更には車体に一体的に配設されるキャリア等のベース部材32に一体的に固定されており、回転ドラム28にはディスクロータ34が外周側へ突き出すように一体に設けられている。また、ブレーキシュー12、14の他端部間には、シュー間隙調節装置36および引張コイルスプリング38が略水平に配設されており、引張コイルスプリング38により互いに接近する方向へ付勢されてシュー間隙調整装置36に当接する状態に保持されるとともに、そのシュー間隙調整装置36によってシュー間隙すなわち一対のブレーキシュー12、14と回転ドラム28との間の隙間が調整される。
【0016】
前記拡開機構22は、図2〜図4に詳しく示されているように、互いに略重なるように平行に配設されるとともに、連結ピン40により相対回動可能に連結されたブレーキレバー42およびストラット44を備えており、連結ピン40がバッキングプレート10と略平行で且つ略上下方向となる姿勢、すなわちブレーキレバー42およびストラット44が略水平となる姿勢で一対のブレーキシュー12、14に跨がって配設されている。ブレーキレバー42は、長手状の金属板材にて構成されており、その一端部に第1ブレーキシュー12と係合させられる係合部46が設けられているとともに、その一端部の近傍において上記連結ピン40によりストラット44と連結されている一方、他端部すなわち先端部は前記アンカブロック26やバッキングプレート10、ダストカバー20、ベース部材32に設けられた挿通穴48から車体側へ突き出しており、図示しないパーキングブレーキケーブルが掛止されるようになっている。
【0017】
また、ストラット44は、同じく長手状の金属板材にて構成されており、図3に示す平面視においてブレーキレバー42に対して略直角に交差するように、中間部でそのブレーキレバー42に連結ピン40を介して連結されているとともに、第2ブレーキシュー14と係合させられる係合部50を備えている。ストラット44の両端部は、ブレーキレバー42と略同じ平面内に位置するようにそれぞれクランク状に曲げられているとともに、前記一対のボルト30の頭部に当接させられることにより、そのボルト30と一対のブレーキシュー12、14との間で位置決めされるようになっている。また、このストラット44には切り起こし部52が設けられ、ブレーキレバー42と係合させられることにより、そのブレーキレバー42の戻り方向の回動範囲を規定するようになっている。
【0018】
そして、運転席のパーキング操作部材(操作レバーなど)の操作に従ってブレーキレバー42が図3において矢印Fで示す右方向へ引っ張られ、連結ピン40の右まわりに回動させられると、そのブレーキレバー42の係合部46により第1ブレーキシュー12が外側(図3の左方向)へ押され、回転ドラム28の内周面に押圧されて制動力を発生する。また、反力で係合部46を支点として連結ピン40が図3の右方向へ移動させられると、ストラット44も右方向へ移動させられ、そのストラット44の係合部50により第2ブレーキシュー14が外側へ押されて、回転ドラム28の内周面に押圧されて制動力を発生する。なお、前記挿通穴48は、この時のブレーキレバー42の回動動作を許容するように左右方向に長い長穴である。
【0019】
一方、ブレーキレバー42とバッキングプレート10との間には、筒状の弾性体製、具体的にはゴム製のレバーブーツ54が配設され、ブレーキレバー42の回動を許容しつつ挿通穴48との間の隙間を閉塞するようになっている。レバーブーツ54の一端開口部56は挿通穴48の開口周縁部に固定され、他端開口部58はブレーキレバー42に嵌め着けられるようになっており、挿通穴48およびブレーキレバー42に対応して長手状の断面形状を成しているとともに、それ等の挿通穴48、ブレーキレバー42の長さ寸法に対応して、挿通穴48側の一端開口部56から反対側の他端開口部58に向かうに従って断面の長さ寸法が短くされている。
【0020】
上記一端開口部56は、バッキングプレート10のアンカブロック26側に取り付けられるようになっており、バッキングプレート10とアンカブロック26との間には、前記挿通穴48よりも大きい抜き穴62が設けられた金属プレート64が介在させられ、その抜き穴62の内側においてバッキングプレート10とアンカブロック26との間で一端開口部56が挟まれて固定されている。金属プレート64の板厚は2〜5mmで、その寸法誤差は±0.2〜0.3mm程度である一方、所定のシール性能を確保する上で一端開口部56の必要締め代は0.5〜1.2mm程度であり、本実施例では一端開口部56の肉厚が金属プレート64の設定板厚よりも0.8mm程度厚い寸法に定められている。また、抜き穴62は、プレスによる打ち抜き加工によって設けられている。なお、他端開口部58は、ブレーキレバー42の中間部分に設けられたくびれ部66に自身の弾性で嵌め着けられ、位置決めされている。
【0021】
このように、本実施例のレバーブーツ54の取付構造においては、挿通穴48よりも大きい抜き穴62が設けられた金属プレート64をアンカブロック26とバッキングプレート10との間に介在させ、その抜き穴62の内側においてバッキングプレート10とアンカブロック26との間でレバーブーツ54の一端開口部56を挟んで固定するようになっているため、所定のシール性能を確保しつつ製造コストを低減できる。すなわち、金属プレート64の板厚の寸法誤差は±0.2〜0.3mm程度で、一端開口部56の必要締め代は0.5〜1.2mm程度であるため、レバーブーツ54の一端開口部56を金属プレート64の設定板厚よりも例えば0.8mm程度厚い肉厚にすれば所望のシール性能が得られるとともに、このような金属プレート64はプレスによる打ち抜き加工によって簡単且つ安価に製造できるため、図5のように切削加工などでアンカブロック100に凹所104を設ける場合に比較して、全体として製造コストが低減されるのである。
【0022】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたパーキングブレーキの概略正面図である。
【図2】図1のパーキングブレーキの拡開機構の近傍を拡大して示す正面図である。
【図3】図2におけるIII −III 断面図である。
【図4】図2におけるIV−IV断面図である。
【図5】従来のレバーブーツ取付構造の一例を示す断面図で、図4に相当する図である。
【符号の説明】
10:バッキングプレート 12、14:ブレーキシュー 22:拡開機構 24:引張コイルスプリング(リターンスプリング) 26:アンカブロック 28:回転ドラム 40:連結ピン 42:ブレーキレバー 44:ストラット 48:挿通穴 54:レバーブーツ 56:一端開口部 58:他端開口部 62:抜き穴 64:金属プレート
Claims (2)
- 車輪の回転軸心に対して略垂直になる姿勢で車体に一体的に固設されるバッキングプレートと、
それぞれ略円弧形状を成していて前記バッキングプレートに拡開可能に配設される一対のブレーキシューと、
前記バッキングプレートに一体的に固設され、前記一対のブレーキシューの一端部がリターンスプリングによって常には当接状態に保持されるアンカブロックと、
該アンカブロックの近傍において前記一対のブレーキシューに跨がって配設され、先端部が該アンカブロックおよび前記バッキングプレートに設けられた挿通穴から前記車体側へ突き出すブレーキレバーが一方向へ回動させられることにより、前記リターンスプリングの付勢力に抗して機械的に該一対のブレーキシューを離間させ、回転ドラムに押圧して制動力を発生させる拡開機構と、
筒状の一端開口部が前記バッキングプレートに固定されるとともに他端開口部が前記ブレーキレバーに係止され、該ブレーキレバーの回動を許容しつつ前記挿通穴との間の隙間を閉塞する弾性体製のレバーブーツと、
を有するパーキングブレーキにおいて、
前記アンカブロックと前記バッキングプレートとの間には、前記挿通穴よりも大きい抜き穴が設けられた所定の板厚の金属プレートが介在させられ、該抜き穴の内側において該バッキングプレートと該アンカブロックとの間で前記レバーブーツの一端開口部が挟まれて固定されている
ことを特徴とするパーキングブレーキのレバーブーツ取付構造。 - 前記拡開機構は、前記バッキングプレートと略平行な連結ピンまわりに相対回動可能に前記ブレーキレバーに連結されたストラットを有するとともに、該ブレーキレバーおよび該ストラットは前記アンカブロックの近傍において前記一対のブレーキシューの一方および他方に係合させられ、該ブレーキレバーが該連結ピンまわりの一方向へ回動させられることにより該一対のブレーキシューを離間させるものである
ことを特徴とする請求項1に記載のパーキングブレーキのレバーブーツ取付構造。
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