JP4121688B2 - アレルギー原因物質の特定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、アレルギー原因物質を特定する方法と該方法を用いて、アレルギー原因物質を診断するためのキットに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、即時型アレルギーの原因物質をマスト細胞内のカルシウムイオン濃度の変化より診断する方法と該方法を用いたアレルギー原因物質診断キットに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
免疫グロブリンE(IgE)は、血清中に微量に存在する抗体であるが、細胞表面のFc受容体と結合することにより、その影響力は多大なものとなる。例えば、マスト細胞や好塩基細胞、あるいは好酸細胞上に存在する高親和性Fc(FcεRI)(Ka=1010-1)は、IgEとの結合により細胞を感作し、そのIgE−FcεRI複合体への抗原の結合、刺激により、抗原即時型アレルギー性疾患を誘発することが知られている。
【0003】
IgEは、哺乳類の血液中で様々な抗原(アレルゲン)に対して産生される物質であり、その中には、喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー等の過敏症を引き起こすものがある。代表的なアレルゲンとしては、喘息を引き起こすハウスダスト(ダニ)、カビ、樹木の花粉、食物アレルギーの原因となる卵、牛乳、大豆などが挙げられる。また、ペニシリン等の低分子量化合物も、即時型過敏症を引き起こすIgEを産生することが知られている。
【0004】
このような即時型アレルギーの治療や予防においては、アレルギー原因物質を正確に、かつ短時間で診断することが必要である。
【0005】
アレルギー原因物質の特定方法としては、原因物質と予想される抗体を皮内投与し、抗原で感作する方法(PCA)や、抗体に標識した酵素活性を測定する方法(ELISA)等が知られており、いずれもアレルギーの診断方法として一般的に使用されている。しかし、これらの従来法は、いずれも様々な問題点を有するのが実情である。
【0006】
例えばPCAでは、煩雑な操作を要する上、測定結果の個体差が大きいために測定精度が低く、精度を上げるためには多検体のデータが必要となり、長い時間と費用がかかるという問題がある。また、ELISAは、比較的簡便で低コストな測定法として、アレルギー診断法やIgEの定量法として、近年広く用いられているが、血清中にはIgE抗体よりも多く免疫グロブリンG(IgG)抗体が存在するため、抗原と抗体との結合に基づくELISAでは、同じ抗原に対して特異的に反応するIgGの反応の影響を受けやすく、測定値が必ずしも正確ではない。
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、多様な物質の中から、短時間で、しかも極めて正確にアレルギー原因物質を特定するための、汎用性のある診断方法、および診断キットを提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、アレルギー原因物質の抗体イムノグロブリンE(IgE)を含有する血清を、細胞培養環境下に置かれたマスト細胞に接触させた後、アレルギー誘発物質を1種ずつ添加し、マスト細胞内のカルシウムイオン濃度の変化を測定することを特徴とするアレルギー原因物質の特定方法を提供する。
【0009】
第2には、この出願の発明は、上記のアレルギー原因物質の特定方法において、カルシウムイオン濃度の変化を、直接カルシウムイオン蛍光指示薬により可視化して測定することを提供する。
【0010】
また、第3には、この出願の発明は、上記のいずれかのアレルギー原因物質の特定方法を用いて、アレルギー原因物質を診断するためのアレルギー原因物質診断キットであって、少なくとも:
<1> アレルギー原因抗体の免疫グロブリンE(IgE)と結合する高親和性Fc受容体(FcεRI)を有する細胞;および
<2> アレルギー誘発物質
とを備えていることを特徴とするアレルギー原因物質診断キットを提供し、さらに、第4には、この出願の発明は、上記のアレルギー原因物質診断キットにおいて、高親和性Fc受容体(FcεRI)を有する細胞は、ラット好塩基性白血病(RBL)細胞、骨髄由来マスト細胞(BMMC)およびヒトマスト細胞(臍帯血前駆細胞)の少なくともいずれかであることを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この出願の発明のアレルギー原因物質の診断方法の原理について、以下に詳しく説明する。
【0012】
ラット好塩基性白血病(RBL)細胞や骨髄由来のマスト細胞(BMMC)及びヒトのマスト細胞(臍帯血前駆細胞)は、その表面に、高親和性Fc受容体(FcεRI)を有し、アレルギー原因抗体イムノグロブリンE(IgE)を含む種々のIgEのFc部位はこの受容体に特異的に捕捉される。FcεRIは、主にマスト細胞と好塩基細胞に存在するものであり、即時型過敏症の発生において、重要な役割を果たす。
【0013】
図1は、マスト細胞におけるシグナル導入機構を表す概略摸式図である。図1に従って、即時型アレルギーが誘発される際にマスト細胞内で起こる一連の反応を説明する。
【0014】
特定のアレルギー原因抗原(5)が隣接する二つのアレルギー原因抗原特異的IgE−FcεRI複合体(31)に近づくと、細胞表面(4)でこれらが架橋(6)される(a)。このアレルギー原因抗原特異的IgE−FcεRI複合体(31)の架橋(6)は、細胞内のシグナル導入における第1ステップとして知られている(Cell 1995, 80, 213-23)。つまり、このような架橋(6)により、高親和性Fc受容体(FcεRI)(2)のリン酸化が起こり、リン酸スフィンゴシン(sphingosine-1-phosphate)およびIP3の濃度が上昇して、カルシウムシグナルが誘発されるのである(b)。
【0015】
Ca2+は、小胞体などの細胞内カルシウム貯蔵サイト(7)から放出され(c−1)、カルシウム遊離活性化カルシウム(CRAC)チャンネル(8)を通じたCa2+流入が誘発される(c−2)。Ca2+濃度の持続的な上昇(c)は、分泌細胞質顆粒(9)からの脱顆粒の際に、細胞外領域へ即時型過敏症誘発媒介物質の遊離を促進する(d、e)。このような媒介物質の中でも、特に、分泌顆粒中のヒスタミン、β−ヘキソサミニダーゼ、およびセロトニン等がアレルギーに関連した症状を誘発するものとして知られている。
【0016】
この出願の発明のアレルギー原因物質の診断方法は、マスト細胞での細胞内Ca2+のシグナル導入に基づいて、血清中に存在するアレルギー原因抗体IgEを、簡便に、短時間で特定する新しい方法である。
【0017】
図2は、この出願の発明の方法によるアレルギー原因物質の診断方法の概念を示す概略摸式図である。図2に従って、この出願の発明のアレルギー原因物質の診断方法を詳しく説明する。
【0018】
この出願の発明のアレルギー原因物質の診断方法では、まず、アレルギー原因抗体IgE(11)を含有する血清をマスト細胞に接触させる(f)。このとき、これらのIgE(1、11)は、それぞれ細胞表面の対応するFcεRI(2)に捕捉される(g)。ここにアレルギー原因抗体IgE(11)にアレルギー原因抗原(5)が添加されると、隣接する二つのアレルギー原因抗原特異的IgE−FcεRI複合体(31)が細胞表面(4)で架橋(6)される(h)。これにより細胞内Ca2+情報伝達系が刺激され(i)、マスト細胞内におけるCa2+濃度が上昇することから、分析(j)により、Ca2+濃度の変化を測定すれば、アレルギー原因物質が特定できる。
【0019】
したがって、この方法を用いることにより、血清試料から、アレルギー原因抗体IgEを特定することが可能となる。
【0020】
従来よりアレルギー原因物質の診断方法として使用されてきたELISAは、酵素活性を利用して抗原あるいは抗体の存在を検出するため、抗原が単価性(IgE−FcεRI複合体の架橋が起こらない)の場合でも抗原、あるいは抗体が検出されてしまうため、正確な診断が難しかった。しかし、Ca2+シグナルの導入に基づく本出願の方法は、抗原による架橋がなされない単価性の受容体では細胞内にCa2+シグナル導入が起こらないため、精度良い測定が可能となるのである。したがって、アレルギーを誘発する抗体IgEのみを検出でき、アレルギー原因物質を特定することができるのである。また、同様の理由で、この出願の発明の診断方法は、血清中において濃度高く存在するIgGの影響を受けない。以上の点において、この出願の発明の方法は、従来法であるELISAよりも優れているといえる。
【0021】
この出願の発明のアレルギー原因物質の診断方法は、以上のとおりの原理に基づき、以上の手順で行われるものである。
【0022】
より具体的には、例えばアレルギー性疾患の患者から血清を採取し、一次培養されたヒトマスト細胞等に接触させた試料を調製した後、各種のアレルギー誘発物質を1種ずつ該試料に添加し、マスト細胞におけるカルシウムイオン濃度の変化を公知の方法で測定するものである。アレルギー原因物質が添加された試料においては、前述の機構により細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇することから、アレルギー原因物質を特定することができる。
【0023】
また、この出願の発明のアレルギー原因物質の診断方法は、患者のアレルギー症状の原因特定だけでなく、アレルギー症状の解明、治療法や医薬品の開発などの様々な研究のために適用することができる。
【0024】
この出願の発明のアレルギー原因物質の診断方法では、細胞は、マスト細胞、あるいは、好塩基細胞であれば、どのようなものであってもよく、公知の方法で一次培養されたものや前駆細胞から分化されたもの、あるいは、種々の方法により摘出されたものであってもよい。
【0025】
患者のアレルギー症状の原因を特定する場合には、ヒトマスト細胞を用いることが好ましい。例えば、ヒトマスト細胞としては、臍帯血前駆細胞から分化されるもの(Biochem.Biophys.Res.Commun. 1999, 27, 895-900、J.Immunol. 1996, 157, 343-350)が知られており、好ましく適用できる。さらに、患者自身から摘出されたマスト細胞を用いた場合には、該細胞内において、すでにアレルギー原因抗原特異的IgE−FcεRI複合体が存在するため、患者の血清を採取して細胞と接触させる必要がなくなる。したがって、直接、種々のアレルギー誘発物質を細胞試料に添加し、Ca2+濃度の測定を行えばよい。しかし、患者の苦痛や診断の簡便さを考慮すれば、前述のとおり、血清のみを患者から採取し、あらかじめプレート等に準備された一次培養ヒトマスト細胞に接触させることが好ましい。
【0026】
一方、研究目的の診断の場合には、ラット、マウス、ウサギなどのマスト細胞が好ましく用いられる。
【0027】
この出願の発明のアレルギー原因物質の診断方法においては、上記のようなマスト細胞は、例えばウェルやプレート上で公知の種々の培地に固定化されたものや、溶液中に存在しているものが使用される。いずれの場合においても、マスト細胞は、培養液や血清などを含む環境下に置かれていることが好ましい。このような培養液や血清はどのようなものであってもよく、例えばDulbecco's modified Eagles's Medium (DMEM)、ウシ胎児血清などが例示される。このとき、マスト細胞の濃度は、とくに限定されないが、好ましくは5×105〜1×106(細胞/ml)である。さらに、このようなマスト細胞には、アミノ酸類、ペニシリンやストレプトマイシン等の抗生物質、培養液などを添加してもよい。これらの物質の濃度は、アレルギー原因物質の反応を阻害しない範囲であればとくに限定されず、一般的な細胞培養条件を適用することができる。その他にも、必要に応じて種々のインターロイキンなどを添加し、マスト細胞に適した環境を調製してもよい。
【0028】
アレルギー原因抗体IgEは、例えば、食物アレルギーと考えられる症状を表す患者の血清中に存在する。また、特定の抗原に免疫化された動物においても、血清中に該抗原に特異的なIgEが生成され、存在する。
【0029】
このようなIgE含有血清(12)を前述のマスト細胞に接触させた後、種々のアレルギー誘発物質を1種ずつ加える。患者のアレルギー性疾患の原因となっているアレルギー原因物質が添加された試料では、マスト細胞内において、前述のとおりの機構によって、Ca2+濃度が上昇する。このCa2+濃度の上昇を測定することにより、アレルギー原因物質を特定できる。また、任意の抗原に対して免疫された免疫動物での抗原特異的IgEの生成を確認することもできる。
【0030】
Ca2+濃度の測定方法としては、化学、生物学、生物化学等の実験で一般的に実施される様々な方法が適用できる。好ましくは、分光学的方法であり、より好ましくは、蛍光分析であり、とくに、カルシウムイオンに特異的に結合するカルシウムイオン蛍光指示薬により、Ca2+を可視化し、直接測定する方法が好ましい。もちろん、これ以外の方法を用いてもよい。
【0031】
この出願の発明のアレルギー原因物質の診断方法では、他にも、緩衝液やpH調製剤、水、生理食塩水などを添加し、診断に適した条件を調製してもよい。また、以上の一連の操作を実施する温度は、とくに限定されず、好ましくは、生体内の温度に近い35〜38℃、より好ましくは、37℃とすることができる。もちろん、目的に応じて、低温や高温に設定して診断を行なってもよい。
【0032】
この出願の発明は、さらには、以上のようなアレルギー原因物質の診断方法を用いてアレルギー原因物質を診断するために用いられる診断キットに関するものである。
【0033】
このようなアレルギー原因物質診断キットは、上記の方法でのアレルギー原因物質の診断を実施するために、例えば、一次培養ヒトマスト細胞などの同一の細胞を有する複数のセルから成るものが例示される。このような細胞含有セルに、患者から採取した血清を滴下し、アレルギーを誘発していると考えられる物質を、各セルに各々1種ずつ添加した後、各セルにおけるカルシウムイオン濃度の変化を測定できるような構造であることが好ましい。
【0034】
したがって、この出願の発明のアレルギー原因物質診断キットとしては、複数の同一マスト細胞と、種々のアレルギー誘発物質から成るものが好ましく例示される。さらには、カルシウムイオン蛍光指示薬や、必要に応じて、アミノ酸類、抗生物質、インターロイキン、緩衝液、洗浄液などを含むものであってよい。
【0035】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0036】
【実施例】
<試薬>
以下の実施例において、カルシウムイオン蛍光指示薬としては、Fura−2/AM(Dojindo社製)を用いた。
【0037】
ジニトロフェニル化ヒト血清アルブミン(DNP35−HSA)およびアルブミン鶏卵(OVA)は、Sigma社より購入した。
【0038】
Dulbecco's modified Eagle's medium(DMEM)は、ニッスイ社より購入した。
【0039】
ウシ胎児血清は、大日本製薬社より購入した。
【0040】
PIPESは和光純薬社より購入した。
<細胞>
RBL−2H3(Eur.J.Immunol. 1981, 11, 317-23)細胞は、10重量%のウシ胎児血清を加え、DMEM上で保存した。
【0041】
BMMCは、生後10週間のメスのBALB/cマウス(SLC社より入手)の骨髄から得て、10%(v/v)のウシ胎児血清、0.1mMのアミノ酸、抗生物質(100U/mlペニシリン、および100μg/ml ストレプトマイシン)、インターロイキン(IL)−3(50μL)、および50%WEHI培養上澄を含むDMEM上で保存した。
<抗体>
マウスanti−ジニトロフェニル(DNP)IgEモノクローナル抗体を、公知の方法(J. Inflamm. Res., 1995, 44, 335-39)に基づいて、準備した。川端らの方法(J.Immunol.Methods 1993, 162, 9-15)に従い、メスBALB/cマウスからオバルブミン(OVA)特異的IgEを得た。
実施例1 カルシウムイオン(Ca2+)濃度の測定
緩衝液:140mM NaCl、5mM KCl、 0.6mM MgCl2、1.0mM CaCl2、5.5mMグルコース、および10mM PIPES、pH7.4。
【0042】
ラット好塩基性白血病細胞(RBL−2H3)(6×105 cells/ml)または、マウス骨髄マスト細胞(BMMC)(4×105 cells/ml)に様々な濃度のDNP−特異的IgE(RBL−2H3細胞のとき:0.5ng/ml〜5000ng/ml;BMMC細胞のとき:1ng/ml〜10μg/ml)または、OVA−特異的IgE(RBL−2H3細胞のとき:5ng/ml〜50ng/ml;BMMC細胞のとき:5ng/ml〜50ng/ml)を添加し、6μMのfura−2/AMを加えた。
【0043】
また、OVA−特異的IgEの場合、0.05%のPluronic F−127(ノニオン系の分散助剤であり、色素分子を生理媒体中に溶解させる効果がある)をFura−2/AMとともに添加した。
【0044】
遠心分離により、過剰の色素と非結合のIgEを除去した後、細胞を2mlのPIPES緩衝液に再分散し、DNP−HSA(RBL−2H3細胞のとき:10-2ng/ml〜100ng/ml;BMMC細胞のとき:1ng/ml〜100μg/ml)またはOVA(RBL−2H3細胞のとき:1ng/ml〜10μg/ml;BMMC細胞のとき:100ng/ml〜10μg/ml)によって刺激させた。
【0045】
幅1cm-1の石英セルに各溶液を入れ、Shimadzu RF−5300PC蛍光光度計を用いて、37℃にて蛍光測定を行なった。Fura−2を添加したセルは、335および362nmで励起し、特定の抗原で刺激され、IgE受容体の架橋が起こった後は、各々の励起波長に対する495nmの蛍光強度が変化した。細胞内のカルシウムイオン濃度は、蛍光測定の結果より、既知の方法(J.Biol.Chem.1985, 260, 3440-50)を用いて算出した。
<A> RBL−2H3細胞におけるCa2+濃度の変化
様々な濃度のIgEで感作された細胞を様々な濃度の抗原で刺激した。この系における静止細胞のCa2+濃度は、64〜86nMであった。
【0046】
DNP特異的IgEおよび抗原(DNP−HSA)濃度とRBL−2H3細胞におけるCa2+濃度の関係を図3に示した。
【0047】
RBL−2H3細胞におけるCa2+濃度の上昇は、5μg/mlのDNP特異的IgEで感作し、10ng/mlの抗原で刺激されたときに最も大きかった。また、RBL−2H3細胞における測定限界は、DNP特異的IgE濃度<25ng/mlであることが分かった。さらに、10ng/mlのDNP−HSAによって誘発されたCa2+濃度の増大は、細胞を感作するために用いられたDNP特異的IgEの濃度にしたがって大きくなった。一方、Ca2+濃度は、IgE濃度が25ng/mlから5μg/mlに増大するに従って、150nMから300nMへと増大した。
【0048】
次に、様々な濃度のOVA特異的IgEで感作された細胞を様々な濃度の抗原(OVA)で刺激した。この系における静止細胞のCa2+濃度は、70〜80nMであった。
【0049】
OVA特異的IgEおよび抗原(OVA)濃度とRBL−2H3細胞におけるCa2+濃度の関係を図4に示した。
【0050】
RBL−2H3細胞におけるCa2+濃度の上昇は、0.1μg/mlまたは1μg/mlのOVA特異的IgEで感作し、0.1μg/mlまたは1μg/mlの抗原で刺激されたときに最も大きかった。また、RBL−2H3細胞における測定限界は、1μg/mlのOVAで刺激されるとき、OVA特異的IgE濃度<25ng/mlであることが分かった。
【0051】
この出願の発明の方法では、RBL−2H3細胞を用いたとき、DNP特異的IgEにおいても、OVA特異的IgEにおいても、25ng/mlまで検出することが可能であることが明らかになった。これは、ELISAの測定限界とほぼ同等である。
<B> BMMC細胞におけるCa2+濃度の変化
様々な濃度のDNP特異的IgEで感作されたBMMC細胞を様々な濃度の抗原(DNP−HSA)で刺激した。この系における静止細胞のCa2+濃度は、40〜45nMであった。
【0052】
図5に示すように、BMMC細胞におけるCa2+濃度の上昇は、10ng/mlの抗原で刺激されたときに最も大きかった。したがって、IgE濃度を測定する上でのDNP−HSAの最適濃度は、10ng/mlであることが分かった。
【0053】
また、BMMC細胞における測定限界は、10ng/mlのDNP−HSAによって感作されたとき、DNP特異的IgE濃度<50ng/mlであることが分かった。
【0054】
さらに、10ng/mlのDNP−HSAによって刺激されたCa2+濃度の増大は、細胞を感作するために用いられたDNP特異的IgEの濃度にしたがって大きくなった。また、Ca2+濃度は、IgE濃度が5ng/mlから1μg/mlに増大するに従って、50nMから250nMへと増大した。
【0055】
次に、様々な濃度のOVA特異的IgEで感作された細胞を様々な濃度の抗原(OVA)で刺激した。
【0056】
OVA特異的IgEおよび抗原(OVA)濃度とBMMC細胞におけるCa2+濃度の関係を図6に示した。
【0057】
結果より、IgE測定における抗原の最適濃度が1μg/mlであることが分かった。また、BMMC細胞における測定限界は、1μg/mlのOVAで刺激されるとき、OVA特異的IgE濃度10ng/mlであることが分かった。
【0058】
さらに、IgE濃度が5ng/mlから50ng/mlに増大するとき、Ca2+濃度は、50nMから110nMに増加した。
【0059】
以上の結果より、Ca2+濃度を測定することにより、アレルギー原因抗体の存在を確認することができ、アレルギー原因物質を特定することができることが示された。また、この出願の発明のアレルギー原因物質の診断方法は、アレルギー原因物質(抗原)が隣接する二つのIgE−FcεRI複合体を架橋することのみを必須とし、あらゆる抗原特異的IgEに適用できるものであることが示された。
【0060】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、多様な物質の中から、短時間で、精度良く、アレルギー原因物質を特定できる汎用性のある診断方法と診断キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】マスト細胞におけるシグナル導入機構を表す概略摸式図である。
【図2】この出願の発明の方法によるアレルギー原因物質の診断方法の概念を示す概略摸式図である。
【図3】この発明の実施例におけるDNP特異的IgEおよび抗原(DNP−HSA)濃度とRBL−2H3細胞におけるCa2+濃度の関係を示した図である。
【図4】この発明の実施例におけるOVA特異的IgEおよび抗原(OVA)濃度とRBL−2H3細胞におけるCa2+濃度の関係を示した図である。
【図5】この発明の実施例におけるDNP特異的IgEおよび抗原(DNP−HSA)濃度とBMMC細胞におけるCa2+濃度の関係を示した図である。
【図6】この発明の実施例におけるOVA特異的IgEおよび抗原(OVA)濃度とBMMC細胞におけるCa2+濃度の関係を示した図である。
【符号の説明】
1 抗体イムノグロブリンE(IgE)
11 アレルギー原因抗体IgE
12 IgE含有血清
2 高親和性Fc受容体(FcεRI)
3 IgE−FcεRI複合体
31 アレルギー原因抗原特異的IgE−FcεRI複合体
4 細胞表面
5 アレルギー原因抗原
6 架橋
7 カルシウム貯蔵サイト
8 CRACチャンネル
9 分泌細胞質顆粒

Claims (4)

  1. アレルギー原因物質の抗体イムノグロブリンE(IgE)を含有する血清を、マスト細胞または好塩基細胞に接触させた後、アレルギー誘発物質を1種ずつ添加し、細胞内のカルシウムイオン濃度の変化を測定することを特徴とするアレルギー原因物質の特定方法。
  2. カルシウムイオン濃度の変化を、直接カルシウムイオン蛍光指示薬によって可視化して測定する、請求項1のアレルギー原因物質の特定方法。
  3. 請求項1ないし2いずれかの方法を用いてアレルギー原因物質を特定するためのアレルギー原因物質特定キットであって、少なくとも:
    <1> マスト細胞または好塩基細胞;および
    <2> アレルギー誘発物質
    を備えていることを特徴とするアレルギー原因物質特定キット。
  4. マスト細胞が、マウス骨髄由来のマスト細胞(BMMC)またはヒト臍帯血前駆細胞から分化させたマスト細胞であり、好塩基細胞がラット好塩基性白血病細胞である請求項3のアレルギー原因物質特定キット。
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