JP4120294B2 - 液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板および液晶プロジェクター用偏光変換素子 - Google Patents

液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板および液晶プロジェクター用偏光変換素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板および液晶プロジェクター用偏光変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶プロジェクターに用いられる偏光変換素子は、当該偏光変換素子に入射される自然光を、偏光面が互いに直交するP偏光光およびS偏光光に分離し、分離されたP偏光光およびS偏光光のいずれか一方の偏光面を実質的に90度回転させることにより、当該偏光光における偏光面の角度を他方の偏光光における偏光面と一致させる機能を有するものである。このような偏光変換素子によれば、得られる偏光光の大部分が実質的に単一の偏光面を有するものとなるので、液晶プロジェクターにおいて高い光の利用効率を得られる。
このような偏光変換素子において、入射される偏光光における偏光面を実質的に90度回転させる手段としては、1/2波長板と称される波長板が用いられている。この波長板は、光の波長λに対し(X+1/2)λ(Xは0または1以上の整数を表す。)またはこれに近似した値の位相差(以下、「特定の位相差」という。)を与えるものであり、このような波長板としては、従来、水晶製のものが使用されていた。
しかしながら、水晶製の波長板は加工コストなどの関係で価格が高いという問題がある。そこで、最近においては、水晶製の波長板に代わって、ポリカーボネートなどの透明樹脂よりなるフィルムに延伸加工などを施した位相差フィルムを波長板として使用することが試みられている。
【0003】
而して、輝度が高く、コントラストが高い画像が形成される液晶プロジェクターを得るためには、波長板として用いられる位相差フィルムは、全可視光領域の光に対して特定の位相差を与えるものであることが必要である。然るに、従来の位相差フィルムにおいては、ある波長の光に対しては目的とする特定の位相差を与えることができ、これにより偏光光の偏光面を高効率で実質的に90度回転させることができるものの、それ以外の波長の光に対して与えられる位相差の値が特定の位相差の値から大きく逸脱するため、入射される偏光光における偏光面に対する出射される偏光光における偏光面の角度が、90度から大きくずれてしまう、という問題がある。
そこで、斯かる問題を解決し、広範囲にわたる波長の光に対して、特定の位相差を与えることができ、これにより、偏光光における偏光面を実質的に90度回転させることが可能な波長板として、複数の位相差フィルムが、それぞれの光軸が交差するよう一体的に積層された積層体よりなるものが提案されている。
【0004】
しかしながら、このような積層体よりなる波長板においては、以下のような問題があることが判明した。
すなわち、上記の波長板においては、当該波長板を構成する積層体における位相差フィルムに、その表面に対して垂直な方向から偏光光が入射する場合には、広範囲にわたる波長の光に対して特定の位相差を与えることができる。
然るに、当該波長板を構成する積層体における位相差フィルムに、その表面に対して斜めの方向から偏光光が入射する場合には、当該偏光光に対して特定の位相差を与えることが困難となる。そのため、入射される偏光光における偏光面に対する出射される偏光光における偏光面の角度が、90度から大きくずれてしまい、その結果、液晶プロジェクターにおいて、高い光の利用効率が得られず、従って、高い輝度が得られず、コントラストが高い画像を形成することが困難となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、位相差フィルムによって形成された複数の透明層が積層されてなる液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板において、当該透明層に対して斜め方向から偏光光が入射するよう使用された場合に、全可視光領域について、当該偏光光の偏光面を所期の角度に回転させることができ、従って、輝度が高く、コントラストが高い画像が形成される液晶プロジェクターを得ることができる液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板を具えた液晶プロジェクター用偏光変換素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板は、複数の透明層が一体的に積層されてなる積層体により構成され、当該積層体における少なくとも二つの透明層が、ポリカーボネート系樹脂よりなる樹脂フィルムに延伸加工を施すことによって得られる位相差フィルムにより形成されており、当該位相差フィルムによって形成された透明層に入射される偏光光の入射角をθ〔度〕としたとき、θの値が45〔度〕の条件下で使用される液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板であって、
前記位相差フィルムによって形成された透明層の面上において、当該透明層に入射される偏光光における偏光面と当該透明層の光軸とのなす角をα〔度〕としたとき、下記式(a)で算出される値をβとすると、最初に透過する位相差フィルムよりなる透明層における角度αの値が7.1〜40.1〔度〕で角度βの値が10〜70〔度〕であり、2番目に透過する位相差フィルムよりなる透明層における角度αの値が14.4〜62.8〔度〕で角度βの値が20〜70〔度〕であることを特徴とする。
【0007】
【数2】
式(a)
β=tan-1(tanα/cosθ)
【0008】
本発明の液晶プロジェクター用偏光変換素子は、上記の液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板を具えてなることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板(以下、単に「波長板」ともいう。)は、複数の透明層が一体的に積層されてなる積層体により構成され、当該積層体における少なくとも二つの透明層が、ポリカーボネート系樹脂よりなる位相差フィルムにより形成されてなるものである。
【0010】
位相差フィルムは、ポリカーボネート系樹脂よりなる樹脂フィルム(以下、「成形フィルム」という。)に延伸加工を施すことによって、得られる。
位相差フィルムを構成するポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されるものではないが、光学フィルム用として利用されているものを用いることが、必要な強度を有すると共に、異物等の含有量が少ない点で好ましい。また、光学用ポリカーボネート系樹脂フィルムとして市販されているものを、成形フィルムとしてそのまま利用することもできる。
【0011】
成形フィルムは、ポリカーボネート系樹脂を溶融成形法あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)などの方法により成形することによって、得られる。上記の成形法のうち、膜厚の均一性および表面平滑性が良好な成形フィルムが得られる点で、溶剤キャスト法が好ましい。
溶剤キャスト法により成形フィルムを得るための具体的な方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を適用すればよいが、例えば、ポリカーボネート系樹脂を溶媒に溶解または分散させることにより、ポリカーボネート系樹脂が適度の濃度で含有されてなるフィルム形成液を調製し、このフィルム形成液を適当なキャリア上に注ぐかまたは塗布することにより、当該キャリア上に液層を形成し、この液層を乾燥することによって当該液層から溶媒を除去し、その後、キャリアから剥離させることにより、成形フィルムを得る方法が挙げられる。
以下に、溶剤キャスト法により成形フィルムを得る方法の具体的な条件を示すが、本発明においてはこれらの条件に限定されるものではない。
【0012】
フィルム形成液の調製において、ポリカーボネート系樹脂を溶媒に溶解または分散させる際に、樹脂の濃度は、通常0.1〜90重量%、好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは10〜35重量%とされる。樹脂の濃度が過小である場合には、十分な厚みを有するフィルムを得ることが困難になり、また、溶媒の蒸発に伴う発泡等により表面平滑性が良好なフィルムを得ることが困難となる、という問題が生じる。一方、樹脂の濃度が過大である場合には、フィルム形成液の粘度が高くなりすぎて、厚みや表面状態が均一な成形フィルムを得ることが困難となるため好ましくない。
【0013】
室温におけるフィルム形成液の粘度は、通常1〜1,000,000mPa・s、好ましくは10〜100,000mPa・s、さらに好ましくは100〜50,000mPa・s、特に好ましくは1,000〜40,000mPa・sである。
【0014】
フィルム形成液の調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノールなどのグリコールモノエーテル系溶媒、ジアセトンアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、シクロヘキサノン、エチルシクロヘキサノン、1,2−ジメチルシクロヘキサン等のシクロオレフィン系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン含有溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、1−ペンタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。
【0015】
成形フィルムを溶剤キャスト法により製造する方法としては、ダイスやコーターを用い、上記のフィルム形成液を、金属ドラム、スチールベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、テフロン(登録商標)ベルトなどの基材の表面上に塗布することによって液層を形成し、次いで、得られた液層を乾燥処理することにより、当該液層から溶剤を除去し、その後、基材からフィルムを剥離する方法が挙げられる。
以上において、フィルム形成液の塗布方法としては、ダイスやコーターを用いる方法の他に、スプレー法、刷毛塗り法、ロールコート法、スピンコート法、ディッピング法などによる方法を利用することができる。また、フィルム形成液の液層は、フィルム形成液を1回塗布することにより形成しても、複数回繰り返し塗布することによって形成してもよく、複数回繰り返して塗布する場合には、得られる成形フィルムの厚みや表面平滑性などを制御することができる。
【0016】
上記溶剤キャスト法の乾燥工程を行う具体的な方法については、特に制限はなく一般的に用いられる方法、例えば多数のローラを介して乾燥炉中を通過させる方法などを利用することができるが、乾燥工程において溶媒の蒸発に伴って気泡が発生すると、得られる成形フィルムの特性が著しく低下するので、これを回避するため、乾燥工程を2段階以上の複数工程とし、各工程における温度あるいは風量を適宜制御することが好ましい。
【0017】
このようにして得られる成形フィルム中の残留溶媒量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。ここで、成形フィルム中の残留溶媒量が10重量%を超える場合には、実際に使用したときに経時による寸法変化が大きくなり好ましくない。また、残留溶媒によりガラス転移温度が低くなり、耐熱性も低下するため好ましくない。
【0018】
また、後述する延伸工程を好適に行うためには、成形フィルム中の残留溶媒量を上記範囲内で適宜調節することが必要となる場合がある。具体的には、延伸加工によってフィルムに位相差を安定して均一に発現させるために、成形フィルム中の残留溶媒量を通常10〜0.1重量%、好ましくは5〜0.1重量%、さらに好ましくは1〜0.1重量%に調節することがある。成形フィルム中に残留溶媒が微量存在することによって、延伸加工が容易になる、あるいは位相差の制御が容易になる場合がある。
【0019】
本発明において、成形フィルムの厚みは、通常0.1〜3000μm、好ましくは0.1〜1000μm、さらに好ましくは1〜500μm、最も好ましくは5〜300μmである。この厚みが0.1μm未満である場合には、当該成形フィルムを実際に取り扱うことが困難となる。一方、この厚みが3000μmを超える場合には、当該成形フィルムをロール状に巻き取ることが困難となり、延伸加工における取り扱いが不便となると共に、得られる位相差フィルムの厚みが過大のものとなって、波長板として要求される光線透過率を得ることが困難となるため好ましくない。
【0020】
成形フィルムの厚み分布は、平均値に対して、通常±20%以内、好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。また、1cmあたりの厚みの変動率は、通常は10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下であることが望ましい。成形フィルムの厚み分布を上記の範囲内に制御することにより、成形フィルムを延伸加工した際に、位相差ムラの発生を防止することができる。
【0021】
本発明に用いられる位相差フィルムは、上記方法によって得られた成形フィルムを延伸加工することによって得られる。具体的には、成形フィルムを、公知の一軸延伸法あるいは二軸延伸法を用いて延伸加工することによって、位相差フィルムを得ることができる。
延伸法としては、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、周縁の異なるロールを利用する縦一軸延伸法、あるいは横一軸延伸と縦一軸延伸とを組合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法などを用いることができる。
【0022】
一軸延伸法を利用する場合には、延伸速度は通常1〜5000%/minであり、好ましくは50〜1000%/minであり、さらに好ましくは100〜1000%/minであり、特に好ましくは100〜500%/minである。
二軸延伸法としては、同時に互いに交わる2方向に延伸を行う方法や一軸延伸をした後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸を行う方法を利用することができる。これらの方法において、2つの延伸軸が交わる角度は、通常120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであっても、異なっていてもよく、通常1〜5000%/minであり、好ましくは50〜1000%/minであり、さらに好ましくは100〜1000%/minであり、特に好ましくは100〜500%/minである。
【0023】
延伸加工における加工温度は、特に限定されるものではないが、用いられるポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度をTg℃としたとき、Tg±30℃、好ましくはTg±10℃、さらに好ましくはTg−5〜Tg+10℃の範囲である。加工温度を上記範囲内とすることにより、位相差のムラの発生を抑制することが可能となり、また、屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
【0024】
延伸倍率は、所望する特性に応じて決定されるため特に限定されないが、通常1.01〜10倍、好ましくは1.1〜5倍、さらに好ましくは1.1〜3倍である。延伸倍率が10倍を超える場合には、得られる位相差フィルムの位相差を制御することが困難となることがある。
【0025】
延伸したフィルムは、そのまま室温まで冷却されてもよいが、Tg−20〜Tg℃の温度雰囲気下に少なくとも10秒間以上、好ましくは30秒間〜60分間、さらに好ましくは1分間〜60分間静置した後、室温まで冷却されることが好ましく、これにより、位相差特性の経時変化が少なく安定した位相差フィルムが得られる。
【0026】
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向する結果、透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、延伸前のフィルムの位相差値、延伸倍率、延伸温度および延伸配向後のフィルムの厚みとを調整することにより制御することができる。例えば、延伸前のフィルムの厚みが一定である場合には、延伸倍率が大きいフィルムほど位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差値の位相差フィルムを得ることができる。
【0027】
本発明に用いられる位相差フィルムは、光線波長550nmにおいて、位相差フィルムが使用される状態における位相差値が、190〜900nmであることが好ましく、より好ましくは240〜320nm、さらに好ましくは250〜300nmである。この位相差値が190nm未満である場合または900nmを超える場合には、広範囲にわたる波長の光に対して特定の位相差を得ることが困難になる。
ここで、「位相差フィルムが使用される状態における位相差値」とは、本発明の波長板が使用される光学系において、当該波長板における位相差フィルムによって形成された透明層に対して偏光光が入射される角度と同じ角度で入射された状態において測定された位相差値のことをいう。
例えば、波長板を実際に使用するときに、当該波長板における位相差フィルムによって形成された透明層に対して偏光光が入射される角度が45度である場合には、入射角度が45度で入射された状態において測定された位相差値をいう。また、偏光光が入射される前後にガラスなどの透明媒体が設けられている場合には、透明媒体の屈折率を考慮する必要があるため、同じ透明媒体を設けた状態において測定された位相差値をいう。
【0028】
本発明の波長板は、複数の透明層が一体的に積層された積層体により構成され、当該積層体における少なくとも二つの透明層が上記の位相差フィルムにより形成されている。各位相差フィルムの位相差値の組み合わせとしては、互いの位相差値が大きく異なる位相差フィルムを積層してもよいが、位相差フィルムが使用される状態において同一もしくは近似した位相差を有する位相差フィルムを積層することにより、広範囲にわたる波長の光に対して特定の位相差を得ることができるので好ましい。位相差フィルムが使用される状態における各々の位相差フィルムの位相差値の差の範囲については、通常0nm〜100nm、好ましくは0nm〜70nm、さらに好ましくは0nm〜30nm、特に好ましくは0〜10nmである。この差が大きい程、各々の位相差フィルムが有する、光に対する位相差の波長分散性の影響が大きくなり、広範囲にわたる波長の光に対して特定の位相差を与える波長板を得ることが困難となる。
【0029】
位相差フィルムによって形成される透明層の数は、2層以上であれば特に限定されないが、積層すべき位相差フィルムの数が多くなると各位相差フィルムの光軸が交差する角度を調整して積層することが難しくなり、また、得られる波長板における光線透過率が低下することがあるので、通常2〜10枚、好ましくは2〜5枚、さらに好ましくは2〜3枚である。
【0030】
また、各位相差フィルムは、それぞれの光軸が互いに交差するように積層され、これにより、波長板の複屈折率(Δn)と厚さ(d)との積(Δnd)で定義される位相差における波長分散性(波長依存性)を、任意に制御することができ、広範囲にわたる波長の光に対して特定の位相差を得ることができる。
ここで、位相差フィルムの光軸は、進相軸でも遅相軸でもよいが、通常は遅相軸を用いることが多い。
また、位相差フィルムを積層する際において、各々の位相差フィルムの光軸が交差する角度は、使用する位相差フィルムの位相差値により適宜調整されるが、通常10〜70度、好ましくは30〜60度、さらに好ましくは40〜50度である。
【0031】
そして、本発明の波長板においては、位相差フィルムによって形成された透明層に入射される偏光光の入射角をθ〔度〕としたとき、θの値が45〔度〕の条件下で使用され、位相差フィルムによって形成された透明層の面上において、当該透明層に入射される偏光光における偏光面と当該透明層の光軸とのなす角をα〔度〕としたとき(以下、このなす角を「角度α」ともいう。)、下記式(a)で算出されるβ(以下、「角度β」ともいう。)の値が10〜70〔度〕とされる。
【0032】
【数3】
式(a)
β=tan-1(tanα/cosθ)
【0033】
ここで、上記式(a)について説明する。
図1は、位相差フィルムによって形成された透明層が透明支持体によって傾斜して配置された状態を示す説明図であり、図2(a)は、図1においてA方向(偏光光の進行方向)から見たときの光軸と偏光面との関係を示す説明図であり、図2(b)は、図1において、B方向(偏光光における偏光面に対して垂直な方向)から見たときの透明層と偏光光との関係を示す説明図である。図1および図2において、30は位相差フィルムによって形成された透明層、31および32は三角柱状の透明支持体、33は透明層30の光軸、34は透明層33に入射される偏光光、35は偏光光34における偏光面、Mは偏光光34の進行方向に対して垂直な面である。
図1および図2に示すように、上記式(a)により算出されるβは、位相差フィルムによって形成された透明層30の光軸33が、当該透明層33に入射される偏光光34の進行方向に対して垂直な面Mに投影されたときに、この投影された軸と当該偏光光34における偏光面35とのなす角を表すものである。
【0034】
角度βの値について具体的な例を挙げて説明すると、波長板が位相差フィルムによって形成された透明層を2層有するものである場合には、最初に透過する位相差フィルムよりなる透明層における角度βの値は、10〜70度、好ましくは10〜50度、さらに好ましくは10〜30度であり、2番目に透過する位相差フィルムよりなる透明層における角度βの値は、好ましくは20〜70度、より好ましくは40〜70度、さらに好ましくは50〜70度である。
そして、位相差フィルムよりなる透明層の各々における角度αの値は、角度βの値が上記の範囲を満足するよう設定される。具体的に説明すると、位相差フィルムよりなる透明層の各々に対する偏光光の入射角θの値が45度である構成において、各透明層における角度βの値が上記の範囲を満足するためには、最初に透過する位相差フィルムよりなる透明層における角度αの値を、7.1〜62.8度、好ましくは7.1〜40.1度、さらに好ましくは7.1〜22.2度に設定し、二番目に透過する位相差フィルムよりなる透明層における角度αの値を、通常14.4〜62.8度、好ましくは30.7〜62.8度、さらに好ましくは40.1〜62.8度に設定すればよい。
【0035】
以上のように、位相差フィルムによって形成される透明層の各々における角度αおよび角度β、並びに位相差フィルムによって形成される透明層の各々の光軸が交差する角度を上記の範囲内とすることにより、広範囲にわたる波長の光に対して特定の位相差を与える波長板が確実に得られる。
【0036】
本発明の波長板は、全可視光領域において、下記式(b)で表される値が(0.40〜0.55)+Xであることが好ましく、さらに好ましくは(0.43〜0.55)+X、特に好ましくは(0.45〜0.55)+Xである。ここでXは0または1以上の整数を表すが、Xが0である場合には、当該波長板の製造が容易となるので好ましい。
【0037】
【数4】
式(b): Re(λ)/λ
(式中、λは光線波長、Re(λ)は当該光線波長におけるnmで表された位相差値である。)
【0038】
上記式(b)の値を表す式(0.40〜0.55)+Xにおける括弧内の値が、0.5あるいは0.5に近いものは、入射される偏光光における偏光面を目的とする角度に高い効率で回転させることができるために好ましく、従って、括弧内の値は、好ましくは0.45〜0.55、さらに好ましくは0.47〜0.53、特に好ましくは0.48〜0.52である。
上記式(b)の好ましい値を表す式において、括弧内の値が0.4未満である場合または0.55を超える場合には、当該波長板は、入射される偏光光における偏光面を目的とする角度に高い効率で回転させることが困難になると共に、出射光の直線偏光からの逸脱が大きくなり、そのため、液晶プロジェクターにおいて、高い光の利用効率が得られず、その結果、高い輝度を得ることが困難となる。
【0039】
本発明の波長板においては、入射される偏光光における偏光面に対する出射される偏光光における偏光面の角度は、全可視光領域において、90度±10度の範囲であることが好ましく、より好ましくは90度±7度の範囲であり、さらに好ましくは90度±5度の範囲である。この角度が90度±5度の範囲であれば、偏光板の透過軸に入射され得る偏光光の量が多くなる点で特に好ましい。上記の角度が90度±10度の範囲を逸脱すると偏光板を透過する偏光光の量が少なくなり、その結果、輝度の高い液晶プロジェクターを得ることができない場合がある。
ここで、入射される偏光光における偏光面に対する出射される偏光光における偏光面の角度については、各々の位相差フィルムに与えられる位相差と各々の位相差フィルムの光軸が交差する角度を調整することにより、上記の範囲内に設定することができる。
【0040】
本発明の波長板は、積層されたすべての透明層が位相差フィルムにより形成されたものでもよく、一部の透明層が位相差フィルムにより形成されたものでもよい。位相差フィルムの積層方法としては、公知の接着剤、例えば感圧型接着剤やUV硬化型接着剤などを用い、位相差フィルム同士を一体的に積層する方法、ガラスなどよりなる透明基板の両面の各々に位相差フィルムを一体的に積層する方法などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の波長板によれば、位相差フィルムよりなる二層以上の透明層が積層されており、しかも、各透明層について、上記式(a)で算出されるβの値が特定の範囲にあるため、当該透明層に対して斜め方向から偏光光が入射するよう使用された場合において、全可視光領域の光に対して、安定して特定の位相差を与えることができ、これにより、入射される偏光光における偏光面を所期の角度に確実に回転させることができるので、輝度が高く、コントラストが高い画像が形成される液晶プロジェクターを得ることができる。
【0042】
図3は、本発明に係る液晶プロジェクター用偏光変換素子の一例における構成を示す説明用断面図である。
この液晶プロジェクター用偏光変換素子(以下、単に「偏光変換素子」ともいう。)においては、複数の偏光分離膜52および複数の反射膜53が、それぞれ入射光Lの方向に対して45度に傾斜した状態で、入射光Lの方向に対して垂直な方向に交互に離間して並ぶよう配置され、偏光分離膜52における出射側の面(図3において右斜め下側を向いた面)には、上述の本発明に係る波長板50が入射光Lの方向に対して45度に傾斜した状態で当該偏光分離膜52に密着して配置されている。波長板50における出射側の面(図3において右斜め下側を向いた面)と反射膜53との間には、断面形状が平行四辺形の透明材料よりなる下地基材51Aが配置され、偏光分離膜52における入射側の面(図4において左斜め上側を向いた面)と反射膜53との間には、断面形状が平行四辺形の透明材料よりなる下地基材51Bが配置されている。
下地基材51A、51Bを構成する材料としては有機材料および無機材料のいずれも用いることができるが、無機材料を用いることが好ましく、無機材料としてはガラス材料が特に好ましい。
波長板50における出射側の表面には、当該表面における反射による光の損失を防止するために、有機化合物および無機化合物のいずれか一方または両方からなる材料によって表面反射防止処理が施されていてもよい。
【0043】
上記の偏光変換素子においては、入射される自然光Lは、偏光分離膜52によりP偏光光とS偏光光に分離される。具体的には、P偏光光は当該偏光分離膜52を透過し、一方、S偏光光は偏光分離膜52を90度の角度に反射する。そして、P偏光光は、波長板50によりS偏光光に変換され、下地基材51Aを介して出射される。一方、S偏光光は下地基材51Bを介して反射膜53に到達し、当該反射膜53により90度の角度に反射され、さらに下地基材51Bを介して出射される。
このような偏光変換素子によれば、前述の波長板50が設けられているため、全可視光領域の光について、波長板50に入射されるP偏光光における偏光面を所期の角度に確実に回転させることができ、これにより、P偏光光を高い効率でS偏光光に変換することができるので、輝度が高く、コントラストが高い画像が形成される液晶プロジェクターを得ることができる。
【0044】
図4は、本発明に係る偏光変換素子が設けられた液晶プロジェクターの一例における構成を示す説明図である。この図において、12は可視領域の自然光を照射する光源装置であって、例えばメタルハライドランプよりなる光源ランプ12Aと、放物面鏡12Bとを有する。16Aおよび16Bは、インテグレーターレンズであり、多数のレンズ素子が面方向に沿って配列されて構成されている。15は、図3に示す構成の偏光変換素子である。17A、17B、17C、17Dは、コンデンサーレンズであり、18A、18B、18Cおよび18Dは全反射ミラー、19Aおよび19Bは、ダイクロイックミラーである。また、20A、20Bおよび20Cは液晶板、14はクロスプリズム、13は投写レンズである。
【0045】
このような液晶プロジェクターにおいては、光源装置12からの自然光が、インテグレーターレンズ16A、16Bを介して偏光変換素子15に入射され、この偏光変換素子15により偏光光に変換されて当該偏光変換素子15から出射される。
具体的には、偏光変換素子15における偏光分離素子によって、自然光がP偏光光およびS偏光光に分離され、これらの偏光光のうち例えばP偏光光の偏光面が、当該偏光変換素子15における波長板によって実質的に90度回転することにより、実質的に一の偏光面を有する偏光光として、当該偏光変換素子15から出射される。
この偏光光は、コンデンサーレンズ17Aを通過して全反射ミラー18Aにより反射された後、ダイクロイックミラー19Aによって、例えば赤色成分の光と、緑色成分および青色成分の光に分離される。分離された赤色成分の光は、全反射ミラー18A、コンデンサーレンズ17Bおよび液晶板20Aを介してクロスプリズム14に入射される。一方、緑色成分および青色成分の光は、ダイクロイックミラー19Bにより分離され、緑色成分の光は、全反射ミラー18C、18D、コンデンサーレンズ17C及び液晶板20Bを介してクロスプリズム14に入射され、青色成分の光は、コンデンサーレンズ17Dおよび液晶板20Cを介してクロスプリズム14に入射される。
そして、クロスプリズム14によって赤色成分、緑色成分および青色成分の光が合成され、この合成された光が投写レンズ13によって適宜のスクリーンに照射され、これにより、スクリーン上にはカラー画像が投写される。
【0046】
このような液晶プロジェクターによれば、本発明に係る偏光変換素子15が設けられているため、光源装置12からの光を高い効率で利用することができ、その結果、高い輝度を得ることができると共にコントラストが高い画像を得ることができる。
【0047】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例において、位相差値および液晶プロジェクターの照度は、下記の方法によって測定した。
【0048】
[位相差値測定方法]
王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」を用い、波長480nm、550nm、630nm、750nmの光に与える位相差を測定し、これらの波長以外の波長の光に与える位相差については、上記波長の光に与える位相差値を用いてコーシー(Cauchy)の分散式を用いて算出した。ここで、特に断りのない限り、測定対象物の両面(光の入射面および出射面)は空気に接しており、測定対象物における光の入射面に対して垂直に光を入射して測定した。
【0049】
[照度測定方法]
液晶プロジェクター「ELP−7250」(セイコーエプソン社製)に内蔵されている偏光変換素子における直線偏光出射面側に取り付けられている波長板を取り外し、投写レンズから1m離れた位置に縦850mm、横120mm、厚さ8mmの単板ガラス(旭硝子社製,「サンカットΣグレー」)を配置し、当該単板ガラスの表面に白色画像を投射した。そして、単板ガラスの裏面側からデジタル照度計「T−1H」(ミノルタ社製)を用いて照度測定を行った。得られた照度の値をXとする。次に、取り外した波長板の代わりに測定対象である波長板を配置し、上記と同様にして照度測定を行い、波長板を取り外した状態における照度の値Xを100としたときの相対照度を求めた。
【0050】
〈実施例1〉
(1)成形フィルムの製造:
ポリカーボネート系樹脂「A2700」(出光石油化学製,ガラス転移温度:155℃)を、塩化メチレンに樹脂濃度が20重量%となるよう溶解することにより、フィルム形成液を調製した。このフィルム形成液を、「INVEXラボコーター」(井上金属工業製)を用い、厚みが100μmのPETフィルム「ルミラーU94」(東レ(株)製)に、乾燥後のフィルムの厚みが100μmとなるよう塗布した。次いで、得られた液層に対して50℃で一次乾燥を行い、更に、90℃で二次乾燥を行った後、PETフィルムから剥離することにより、厚みが100μmのポリカーボネート系樹脂よりなる成形フィルムを得た。得られた成形フィルムを「成形フィルムA」とする。
成形フィルムAの残留溶媒量は0.5重量%であった。この樹脂フィルムAの全光線透過率および波長550nmにおける位相差を測定したところ、全光線透過率は90%であり、波長550nmにおける位相差は20nmであった。
【0051】
(2)位相差フィルムの製造:
成形フィルムAを、テンター内で160℃(Tg+5℃)に加熱し、延伸速度が300%/min、延伸倍率が1.1倍の条件で延伸加工した後、110℃の雰囲気下で約2分間この状態を保持しながら冷却し、さらに室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルムを製造した。得られた位相差フィルムを「位相差フィルムA1」とする。
また、延伸倍率を1.3倍に変更したこと以外は、上記と同様にして位相差フィルムを製造した。得られた位相差フィルムを「位相差フィルムA2」とする。
位相差フィルムA1および位相差フィルムA2の各々の厚みおよび波長550nmにおける位相差を測定したところ、位相差フィルムA1の厚みが95μm、波長550nmにおける位相差が230nmであり、位相差フィルムA2の厚みが90μm、波長550nmにおける位相差が400nmであった。
【0052】
(3)波長板の製造:
図5に示すように、それぞれ断面が二等辺直角三角形(二つの内角が45度でもう一つの内角が90度である三角形)である屈折率が1.52のガラスよりなる2個のプリズム40,45を用意し、一方のプリズム40のテーパ面41上に、位相差フィルムA1(図5において符号「A1」で記す。)および位相差フィルムA2(図5において符号「A2」で記す。)を、この順でかつ位相差フィルムA1における角度αの値が14度および位相差フィルムA2における角度αの値が57度となる条件で接着剤により一体的に積層し、位相差フィルムA2上に、他方のプリズム45をそのテーパ面46が位相差フィルムA2に接するよう、UV硬化型接着剤により一体的に積層することにより、本発明に係る波長板を製造した。得られた波長板を「波長板A」とする。
この波長板Aにおける一方のプリズム40側を入射側とし、他方のプリズム45側を出射側として、当該波長板Aに対して偏光光を垂直に入射したときに(位相差フィルムA1および位相差フィルムA2に対する偏光光の入射角θが45度)、位相差フィルムA1および位相差フィルムA2における角度βの値は、それぞれ20度および65度である。
【0053】
(4)波長板の評価:
波長板Aについて、一方のプリズム40側を入射側とし、波長480nm、550nm、630nmおよび720nmにおける位相差を測定し、Re(λ)/λを算出したところ、波長400〜800nmの全領域において、Re(λ)/λの値が0.49〜0.50の範囲にあることが確認された。
また、波長板Aについて、入射される偏光光における偏光面に対する出射される偏光光の偏光面の角度を測定したところ、波長400〜800nmの全領域において91〜88度の範囲にあった。
また、波長板Aを使用して液晶プロジェクターの照度を測定したところ、190であった。
【0054】
また、位相差フィルムA1を、波長板の製造に使用した一方のプリズムのテーパ面と他方のプリズムのテーパ面との間に角度αの値が14度(角度βの値が20度)となるよう貼り合わせることにより、板状体を作製し、この板状体について、波長550nmにおける位相差を測定したところ、275nmであった。
また、位相差フィルムA2を、波長板の製造に使用した一方のプリズムのテーパ面と他方のプリズムのテーパ面との間に角度αの値が57度(角度βの値が65度)となるよう貼り合わせることにより、板状体を作製し、この板状体について、波長550nmにおける位相差を測定したところ、275nmであった。
【0055】
〈比較例1〉
実施例1において、位相差フィルムA1における角度αの値を4度および位相差フィルムA2における角度αの値を69度に変更したこと以外は同様にして、比較用の波長板を製造した。得られた波長板を「波長板B」とする。
この波長板Bにおける一方のプリズム側を入射側とし、他方のプリズム側を出射側として、当該波長板Bに対して偏光光を垂直に入射したときに(位相差フィルムA1および位相差フィルムA2に対する偏光光の入射角θが45度)、位相差フィルムA1および位相差フィルムA2における角度βの値は、それぞれ5度および75度である。
【0056】
波長板Bについて、一方のプリズム側を入射側とし、波長480nm、550nm、630nmおよび720nmにおける位相差を測定し、Re(λ)/λを算出したところ、波長400〜800nmの領域における大部分の波長領域について、Re(λ)/λの値が0.45〜0.55の範囲から大きく外れていることが確認された。
また、波長板Bについて、入射される偏光光における偏光面に対する出射される偏光光の偏光面の角度を測定したところ、波長400〜800nmの領域における大部分の波長領域について、90±10度の範囲から大きく外れていることが確認された。
また、波長板Bを使用して液晶プロジェクターの照度を測定したところ、140であった。
【0057】
また、位相差フィルムA1を、波長板の製造に使用した一方のプリズムのテーパ面と他方のプリズムのテーパ面との間に角度αの値が4度(角度βの値が5度)となるよう貼り合わせることにより、板状体を作製し、この板状体について、波長550nmにおける位相差を測定したところ、150nmであった。
また、位相差フィルムA2を、波長板の製造に使用した一方のプリズムのテーパ面と他方のプリズムのテーパ面との間に角度αの値が69度(角度βの値が75度)となるよう貼り合わせることにより、板状体を作製し、この板状体について、波長550nmにおける位相差を測定したところ、600nmであった。
【0058】
〈比較例2〉
実施例1の位相差フィルムの製造において、延伸倍率を1.05倍に変更したこと以外は同様にして位相差フィルムを製造した。得られた位相差フィルムを「位相差フィルムA3」とする。この位相差フィルムA3の厚みおよび波長550nmにおける位相差を測定したところ、厚みが98μmで、波長550nmにおける位相差が200nmであった。
また、実施例1の位相差フィルムの製造において、延伸倍率を1.35倍に変更したこと以外は同様にして位相差フィルムを製造した。得られた位相差フィルムを「位相差フィルムA4」とする。この位相差フィルムA4の厚みおよび波長550nmにおける位相差を測定したところ、厚みが88μmで、波長550nmにおける位相差が420nmであった。
【0059】
実施例1の波長板の製造において、位相差フィルムA1の代わりに位相差フィルムA3を用い、位相差フィルムA2の代わりに位相差フィルムA4を用い、位相差フィルムA3における角度αの値を4度および位相差フィルムA4における角度αの値を69度としたこと以外は同様にして、比較用の波長板を製造した。得られた波長板を「波長板C」とする。
この波長板Cにおける一方のプリズム側を入射側とし、他方のプリズム側を出射側として、当該波長板Cに対して偏光光を垂直に入射したときに(位相差フィルムA3および位相差フィルムA4に対する偏光光の入射角θが45度)、位相差フィルムA3および位相差フィルムA4における角度βの値は、それぞれ5度および75度である。
【0060】
波長板Cについて、一方のプリズム側を入射側とし、波長480nm、550nm、630nmおよび720nmにおける位相差を測定し、Re(λ)/λを算出したところ、波長400〜800nmの領域における大部分の波長領域について、Re(λ)/λの値が0.45〜0.55の範囲から大きく外れていることが確認された。
また、波長板Cについて、入射される偏光光における偏光面に対する出射される偏光光の偏光面の角度を測定したところ、波長400〜800nmの領域における大部分の波長領域について、90±10度の範囲から大きく外れていることが確認された。
また、波長板Cを使用して液晶プロジェクターの照度を測定したところ、150であった。
【0061】
また、位相差フィルムA3を、波長板の製造に使用した一方のプリズムのテーパ面と他方のプリズムのテーパ面との間に角度αの値が4度(角度βの値が5度)となるよう貼り合わせることにより、板状体を作製し、この板状体について、波長550nmにおける位相差を測定したところ、275nmであった。
また、位相差フィルムA4を、波長板の製造に使用した一方のプリズムのテーパ面と他方のプリズムのテーパ面との間に角度αの値が69度(角度βの値が75度)となるよう貼り合わせることにより、板状体を作製し、この板状体について、波長550nmにおける位相差を測定したところ、275nmであった。
【0062】
【発明の効果】
本発明の液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板によれば、位相差フィルムよりなる二層以上の透明層が積層されており、しかも、各透明層について、上記式(a)で算出されるβの値が特定の範囲にあるため、当該透明層に対して斜め方向から偏光光が入射するよう使用された場合において、全可視光領域の光に対して、安定して特定の位相差を与えることができ、これにより、入射される偏光光における偏光面を所期の角度に確実に回転させることができるので、輝度が高く、コントラストが高い画像が形成される液晶プロジェクターを得ることができる。
本発明の液晶プロジェクター用偏光変換素子によれば、上記の液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板が設けられているため、全可視光領域の光について、当該液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板に入射される偏光光における偏光面を所期の角度に確実に回転させることができ、これにより、所期の偏光光を高い効率で得ることができるので、輝度が高く、コントラストが高い画像が形成される液晶プロジェクターを得ることができる。
このような液晶プロジェクター用偏光変換素子を具えた液晶プロジェクターによれば、光源装置からの光を高い効率で利用することができ、その結果、高い輝度を得ることができると共にコントラストが高い画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】位相差フィルムによって形成された透明層が透明支持体によって傾斜して配置された状態を示す説明図である。
【図2】(a)は、図1においてA方向(偏光光の進行方向)から見たときの光軸と偏光面との関係を示す説明図であり、(b)は、図1において、B方向(偏光光における偏光面に対して垂直な方向)から見たときの透明層と偏光光との関係を示す説明図である。
【図3】本発明に係る液晶プロジェクター用偏光変換素子の一例における構成を示す説明用断面図である。
【図4】本発明に係る偏光変換素子が設けられた液晶プロジェクターの一例における構成を示す説明図である。
【図5】実施例1に係る液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板の構成を示す説明用断面図である。
【符号の説明】
12 光源装置
12A 光源ランプ
12B 放物面鏡
13 投写レンズ
14 クロスプリズム
15 偏光変換素子
16A、16B インテグレーターレンズ
17A、17B、17C、17D コンデンサーレンズ
18A、18B、18C、18D 全反射ミラー
19A、19B、 ダイクロイックミラー
20A、20B、20C 液晶板
30 透明層
31 透明支持体
32 透明支持体
33 光軸
34 偏光光
35 偏光面
40,45 プリズム
41,42 テーパ面
50 波長板
51A、51B 下地基材
52 偏光分離膜
53 反射膜
A1,A2 位相差フィルム
M 偏光光の進行方向に対して垂直な面

Claims (2)

  1. 複数の透明層が一体的に積層されてなる積層体により構成され、当該積層体における少なくとも二つの透明層が、ポリカーボネート系樹脂よりなる樹脂フィルムに延伸加工を施すことによって得られる位相差フィルムにより形成されており、当該位相差フィルムによって形成された透明層に入射される偏光光の入射角をθ〔度〕としたとき、θの値が45〔度〕の条件下で使用される液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板であって、
    前記位相差フィルムによって形成された透明層の面上において、当該透明層に入射される偏光光における偏光面と当該透明層の光軸とのなす角をα〔度〕としたとき、下記式(a)で算出される値をβとすると、最初に透過する位相差フィルムよりなる透明層における角度αの値が7.1〜40.1〔度〕で角度βの値が10〜70〔度〕であり、2番目に透過する位相差フィルムよりなる透明層における角度αの値が14.4〜62.8〔度〕で角度βの値が20〜70〔度〕であることを特徴とする液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板。
    Figure 0004120294
  2. 請求項1に記載の液晶プロジェクター用偏光変換素子用波長板を具えてなることを特徴とする液晶プロジェクター用偏光変換素子。
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