JP4119995B2 - 成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂材料からなる基材の表面、又は表面を樹脂被覆した金属、ガラス、陶器等の無機材料からなる基材の表面に、親水機能を有する無機材料を塗布して防汚染機能とともに乾燥性機能が付与された塗膜を形成した成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、浴槽、浴槽エプロン、浴室壁、洗い場(防水パン)、洗面カウンター、食器、壁材、床材等の幅広い製品分野の樹脂成形体又は表面を樹脂被覆した成形体は、防汚染性、乾燥性などの機能化としてその表面を親水化・撥水化・滑水化する処理がされている。
特に、樹脂成形体又は表面樹脂被覆した成形体はその表面が撥水性であることから、親水機能を付与することによる防汚染性、乾燥性等の機能性の向上を図る場合が多く、その表面処理は有機系塗料と無機系塗料とに大別できるが、有機系塗料は親水化のレベルが低く期待する機能が発揮できない。一方、無機系塗料は、ゾルゲル法による成膜が一般的であるが、基材又は基材表面が樹脂であることや、マイクロクラックの発生から厚膜化ができないことなどから、その密着性や摩耗の耐久性は、上記で例示した種々の住宅設備等日常の過酷な使用環境下で満足できるレベルではない。
【0003】
従来、これら住宅設備の水回り製品に防汚染機能を付加したものとして、表面の親水化は酸化チタン等による光触媒物質を表面に塗布する方法があり、浴槽表面に酸化チタンを塗布して表面を親水化する方法(例えば、特開平10−225393号公報参照)があるが、その耐久性については光触媒の分解作用での表面劣化が問題となり実用レベルのものは報告されていない。
【0004】
また、ハードコートと防汚染性の両立について特開平11−209490号公報記載のものが知られているが、防汚染についての定義がフルオロ基による低表面エネルギー化(撥水作用)であり、水回りの特に金属石鹸、脂汚れの除去性に優れる親水性のものは報告されていない。
【0005】
上記のように、上述の水回り製品は日常頻繁に使用するものであり防汚染性の機能が持続して発揮され、耐久性が求められる。
しかし、従来の技術で述べたような水回り製品としての浴槽の表面に酸化チタン等を塗布する方法では、コート膜自体が光触媒そのものの分解作用で劣化し光沢の低下が見られる。また、光触媒効果のない金属酸化物でも、プラスチック基材との密着性が弱く摩耗性に問題があり、ハードコートの機能も有する樹脂の添加が要求される。
【0006】
また、従来の技術で述べたもののうち後者の防汚染材料であるフッ素系コートやシリコーン系コートの層は、その表面自由エネルギーが汚れ付着に至るほど十分に低いものがなく、水回りの金属石鹸・脂汚れ物質の付着を防止できない問題があり、さらに一般的な樹脂もそのものだけでは親水性には至らず、金属酸化物を添加してもその添加量が少ないと親水性を呈さない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐久性の良い親水機能を有する無機材料を塗布して防汚染性とともに、乾燥性とハードコートを兼ね備えた塗膜が形成された樹脂成形体又は表面を樹脂被覆した成形体を安価に提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次のものに関する。
(1)樹脂基材又は表面を樹脂被覆した基材の表面に、ペルヒドロポリシラザンとシランカップリング剤の混合物からなる被膜を設け、さらに、この被膜の上に親水機能を有する無機材料としてペルヒドロポリシラザンを塗布して、これらの被膜及び塗布層を加熱処理することにより水、酸素との反応によりシリカを主成分とする硬化被膜を形成し防汚染機能及び乾燥性機能が付与された塗膜を形成してなる成形体。
(2)親水機能を有する無機材料を塗布して防汚染機能及び乾燥性機能が付与された塗膜の膜厚は1.0〜2.0μmである上記(1)に記載の成形体。
(3)成形体が、浴槽、浴室用防水パン、浴室用カウンター、浴室用壁、洗面カウンター、洗面ボウル、キッチンカウンター、キッチンキャビネットの構成部材、食器又は食器洗浄器のいずれかである上記(1)または上記(2)に記載の成形体。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における樹脂基材からなる成形体又は表面を樹脂被覆した基材からなる成形体としては、例えば、浴室回りで使用される浴槽、浴槽用エプロン、浴室壁(浴室用壁)、浴室カウンター、洗い場(防水パン)、洗面カウンター、洗面ボウル、キッチン回りで使用されるキッチンカウンター、キッチンキャビネットにおける構成部材としての側板パネル、底板パネル、背板パネル等の各種パネル、食器、壁材及び床材又は食器洗浄器等、広い分野の成形体からなる物品に適用できる。なお、表面を樹脂被覆した基材からなる成形体としては基材が鋼板でこの表面を塩化ビニルフィルムで被覆した塩化ビニル鋼板を成形した成形体からなる物品、例えば浴室の壁パネルや天井パネル、あるいは洗面台等の洗面家具や、流し台、調理台、吊戸棚等のキッチン家具におけるキャビネット構成部材としての成形体や扉などの成形体からなる物品に適用できる。
【0010】
基材の表面に塗布される親水機能を有する無機材料は室温でも硬化可能であるが、本発明における基材自体の樹脂、又は基材の表面被覆樹脂は、後述の基材の表面に塗布される親水機能を有する無機材料の反応促進として加える熱に耐えうる特性を有するものが好ましく、軟化点が100℃以上、好ましくは130℃以上であり、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、フェノール等があり、これらの樹脂中に強化材としてのガラス繊維、充填剤等が含まれていてもよい。
【0011】
一般的に樹脂又は樹脂被覆材料はその表面が撥水性で、親水化するためには無機材料をコートする必要があるが、樹脂のような有機材料とコートする無機材料は組成の違い、物性の違いからその密着耐久性が悪い。
そこで、本発明における樹脂基材又は表面を樹脂被覆した基材の表面に塗布する親水機能を有する無機材料には、耐久性があり、基材表面に直接コートした場合でも成膜時にクラックの発生しにくいペルヒドロポリシラザンからなるシリカの前駆体が用いられる。このペルヒドロポリシラザンは、水・酸素との反応によりシリカを主成分とする親水性の塗膜を樹脂基材又は表面を樹脂被覆した基材の表面に形成する。
撥水性である樹脂基材又は樹脂被覆基材の表面に上記の親水機能を有する無機材料を塗布して緻密な親水性の塗膜を形成することにより、脂系の汚れに対しての防汚染性とともに、表面に付着した水の乾燥性も付与され、シリカを主成分とした塗膜であるためハードコート性も付与される。
【0012】
上記親水機能を有する無機材料としてのポリシラザンは、従来より知られているポリシラザンが使用できるが、好ましくは、化1に示す一般式の繰り返し単位を有する、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定の数平均分子量が100〜50000の環状ポリシラザン、鎖状ポリシラザン、またはこれらの混合物を使用する。
【0013】
【化1】
【0014】
さらに、上記のポリシラザン又はシラザン重合物をトリアルキルアミンのような第3級アミン類、立体障害性の基を有する第2級アミン類、フォスフィン等の塩基性化合物を溶媒とするか、非塩基性溶媒の炭化水素類に添加して脱水素縮合反応を行わせることにより得られるポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定の数平均分子量が200〜500000の高重合体を使用する。
【0015】
あるいは、無機ポリシラザンの改質反応により得られる重合体で、架橋結合−NH−又は−NH−NH−を有し、ケイ素原子に結合する窒素とケイ素との原子比(N/Si)が0.8以上でポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定の数平均分子量200〜50000のものを使用する。
【0016】
さらに、組成式(RSiHNH)X[(RSiH)1.5N]Y(但し、R;アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらの基以外でSiに直結する原子が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表し、Yは1−Xであり、0.4<X<1である>で表されるポリオルガノヒドロシラザンを使用する。
【0017】
さらには、酸素を含有させたポリシロキサザンや金属アルコキシド等を反応させたポリメタロシラザン、有機硼素化合物を反応させたポリボロシラザンも使用し得る。
【0018】
これらの各種ポリシラザンは、その種類に応じて常温で液体〜固体を呈する。また、本発明において使用するポリシラザンは、樹脂との密着性の点では、ケイ素や窒素に直結する活性水素含有割合の高いものの使用が好ましく、一般的にはケイ素原子と窒素原子との合計原子数100に対し90以上、好ましくは100〜150の活性水素原子を有するものの使用が有利である。
【0019】
ポリシラザンを含むコーティング材料には、有機アミンやカルボン酸無水物、イソシアネート、チオール、カルボジイミド、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物等の硬化剤を添加することができ、低温セラミック化するための触媒としては、ニッケル、白金、パラジウム、アルミニウム、アミン系を用いることもできる。また、必要に応じて金属粉末、セラミック粉末、消泡剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、顔料、チキソトロピー性付与剤等を添加してもよい。
【0020】
これらのポリシラザンによる親水性塗膜を有する樹脂成形体又は樹脂被覆成形体を製造するには、前記ポリシラザンあるいはポリシラザンとシランカップリング剤の混合物をコーティング材料として用い、コートした後加熱処理等を施す。ポリシラザンにシランカップリング剤を添加する場合には、シランカップリング剤とポリシラザンが10/90〜90/10の割合の混合液を有機溶剤で0.1〜50%の濃度に希釈したものを用いる。ポリシラザンが液状のものであればコートした後、常温から基材樹脂又は基材被覆樹脂の溶融点あるいは分解点の間の温度、通常20〜200℃の温度に一定時間保持するか、湿度70〜100%の高湿下に一定時間保持する。このとき高湿下での温度は室温以上であれば何℃でもよい。これにより架橋化された固体状ポリシラザンからなる塗膜ができる。できた塗膜は、弱アルカリ性(PH9〜12)の薬品で処理するか、水または温水に一定時間浸漬することにより親水化できる。親水化のレベルは、水の接触角10〜50°で何もコートしていない樹脂の接触角の70〜80°に比べかなりの親水化が図れる。
【0021】
基材へのコート方法としては、従来より知られている塗布方法、例えばスプレーコート、スピンコート、デイップコート、フローコート等がある。
【0022】
以上の製造法により形成される親水性の塗膜は、日常生活、特にキッチン、浴室で発生する金属石鹸、脂汚れ物質に対しての防汚染性(易洗浄性)や表面に付着した水が乾き易いといった乾燥性の機能を有する。
【0023】
さらに形成された塗膜がシリカ膜であることから、本来の樹脂表面に対し摩耗性に優れたハードコート性を付与した効果もあり、スポンジや硬質塩ビでの摩耗による剥離性もゾルゲル法による塗膜に比べて遙に向上する。
【0024】
また、浴室や洗面室あるいはキッチンなどの水回りで使用される成形体に対しては、さらに耐水性・耐熱水性を向上させるために、樹脂基材又は表面を樹脂被覆した基材の表面に予めシランカップリング剤あるいはシランカップリング剤を含む前記のポリシラザンをプライマとして塗布することで、基材との密着性及び耐水性・耐熱水性の向上が達成される。
【0025】
シランカップリング剤は一般にXSiR3で表される化合物である。Xは有機基と反応し得る官能基で、ビニル基、メタクリロキシ基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、ハロゲン等を表し、Rは加水分解可能な官能基で、メトキシ基やエトキシ基のようなアルコキシ基、ハロゲン等を表し、適宜、選択して用いられる。
【0026】
シランカップリング剤を単独でプライマとして用いる方法では、予め基材に、シランカップリング剤をメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコールで0.1〜50%の濃度に希釈したものを従来より知られている塗布方法により塗布した後、常温から200℃の温度範囲で1〜30分の間で加熱し、硬化被膜を形成する。その後前記したポリシラザンを塗布する。
【0027】
シランカップリング剤とポリシラザンの混合物をプライマとして用いる方法では、予め基材に、シランカップリング剤とポリシラザンを10/90〜90/10の割合で混合液物を有機溶剤で0.1〜50%の濃度に希釈したものを、従来より知られている塗布方法により塗布した後、常温から200℃の温度範囲で1〜100分の間で加熱し、硬化被膜を形成する。その後前記した無機材料を塗布する。特にこの方法では、プライマ層のシリカ膜が水をブロックし基材と結合しているシランカップリング剤の有機基の加水分解を抑制することができるため、大幅な耐水性・耐熱水性が達成される。
【0028】
上記シランカップリング剤とポリシラザンの混合物の希釈溶剤としては、脂肪族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、脂環式炭化水素系、芳香族炭化水素系溶剤、エーテル類を単独あるいは複数混合して用いることができるが、水やアルコール等のプロトン性溶剤は好ましくない。
【0029】
本発明の成形体における親水機能を有する無機材料を塗布して防汚染機能及び乾燥性機能が付与される塗膜の膜厚としては、防汚染機能及び乾燥性機能とともに摩耗性をより向上させるためには、1.0〜2.0μmの範囲とするのが好ましい。なお、膜厚が1.0μm未満では摩耗性が少し低下し、2.0μmを超えると塗膜にマイクロクラックが発生する可能性がある。
【0030】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を挙げて詳しく説明する。
(参考例1)
ポリシラザンNL−110 5%(キシレン溶媒)(クラリアントジャパン株式会社製)をスプレーコートで予め脱脂処理した基材(不飽和ポリエステル樹脂+ガラス繊維からなるFRP)に塗布した。塗布後140℃の乾燥炉内で60分乾燥(架橋)させた。その後、0.02%の水酸化ナトリウム水溶液で表面処理し親水化したサンプルを得た。この条件で形成した塗膜(膜厚1.0〜2.0μm)の性能は、表1に示すように良好である。表1に示すように、基材との密着性は摩耗性、テープ密着性から分かるように長期耐久性が有る。表面の機能としての防汚染性、乾燥性も良好で、ハードコート性としての鉛筆硬度、摩耗性も表2に示す参考例4、比較例1〜3に対し優れたものとなっている。コストについては、1コート1ベークの工程で形成できることから、基材が有機、コート材が無機ではあるが、プライマ等の前処理コートが必要ないので、優位性がある。耐熱水性については、80℃の蒸留水に全浸漬で20時間までは膜の剥離は無かった。
【0031】
(参考例2)
シランカップリング剤A−1100 5%(イソプロピルアルコール溶液)(日本ユニカー株式会社製)をスプレーコートで予め脱脂処理した基材(不飽和ポリエステル樹脂+ガラス繊維からなるFRP)に塗布し、100℃の乾燥炉内で10分乾燥させた。次いで、ポリシラザンNL−110 5%(キシレン溶媒)(クラリアントジャパン株式会社製)をスプレーコートで塗布し、140℃の乾燥炉内で60分乾燥(架橋)させた。その後、0.02%の水酸化ナトリウム水溶液で表面処理し親水化したサンプルを得た。この条件で形成した塗膜(膜厚1.0〜2.0μm)の性能は、表1に示すように、基材との密着性、摩耗性、防汚染性、乾燥性も良好であった。コスト的には2コート2ベークという工程から、加工費・生産能力的にみて1コート1べークに比べて劣るものの、耐熱水性については、80℃の蒸留水に全浸漬で100時間までは膜の剥離は無かった。
【0032】
(参考例3)
ポリシラザンNL−110 5%(キシレン溶媒)(クラリアントジャパン株式会社製)に、シランカップリング剤A−1100 2%(日本ユニカー株式会社製)添加したものをコーティング剤とし、これをスプレーコートで予め脱脂処理した基材(不飽和ポリエステル樹脂+ガラス繊維からなるFRP)に塗布し、140℃の乾燥炉内で60分乾燥(架橋)させた。その後、0.02%の水酸化ナトリウム水溶液で表面処理し親水化したサンプルを得た。この条件で形成した塗膜(膜厚1.0〜2.0μm)の性能は、表1に示すように、基材との密着性、摩耗性、防汚染性も良好であった。乾燥性については若干劣るものの、耐熱水性については、80℃の蒸留水に全浸漬で100時間までは膜の剥離はなく、1コート1べークの工程で形成できることから、プライマ等の前処理コートが必要ないので、コスト的に優位性がある。
【0033】
(実施例1)
ポリシラザンNL−110 5%(キシレン溶媒)(クラリアントジャパン株式会社製)に、シランカップリング剤A−1100 3%(日本ユニカー株式会社製)添加したものをプライマとし、これをスプレーコートで予め脱脂処理した基材(不飽和ポリエステル樹脂+ガラス繊維からなるFRP)に塗布し、140℃の乾燥炉内で30分乾燥させた。次いで、ポリシラザンNL−110 5%(キシレン溶媒)(クラリアントジャパン株式会社製)をスプレーコートで塗布し、140℃の乾燥炉内で60分乾燥(架橋)させた。その後、0.02%の水酸化ナトリウム水溶液で表面処理し親水化したサンプルを得た。この条件で形成した塗膜(膜厚1.0〜2.0μm)の性能は、表1に示すように、基材との密着性、摩耗性、防汚染性、乾燥性も良好であった。コスト的には2コート2ベークという工程から、1コート1ベークに劣るものの、耐熱水性については、80℃の蒸留水に全浸漬で300時間までは膜の剥離はなかった。
【0034】
上記のデータは、シランカップリング剤を用いることで、基材との密着性、摩耗性、防汚染性、乾燥性等を損なうことなく耐熱水性を高めることができ、住宅設備等の過酷な使用環境下への適用が可能となったことを示している。
【0035】
(参考例4)
参考例4として、何もコートしない基材のみの表面特性を表2に示す。表2から基材そのものの水の接触角が撥水であることが分かる。
【0036】
(比較例1)
無機系の材料からなる基材表面をコートする場合の比較例として、コート材料にシリカゾルテトラエトキシシランを上記のFRPに直接スプレーコートし、140℃で30分乾燥させた。
このようなゾルゲル法で基材への直接コートは、初期の機能としては良好であるが、表2に示すように摩耗性・テープ密着性に問題があり、長期の使用に耐えうるものではない。
【0037】
(比較例2)
比較例1の摩耗性・密着性を向上させるために、基材とコート材としてのシリカゾルの間にプライマを塗布した。このプライマはシリコーン変性アクリルポリオール樹脂で、基材の有機成分とコート材の無機成分の密着性を良くするためにスプレーでコートした。コート後は、140℃で20分乾燥し、冷却後シリカゾルのコート材を比較例2と同様にコートした。
表2に示すように摩耗性、テープ密着性は改善されたが、住宅設備等の厳しい環境下での耐久性には問題がある。また、コスト的には2コート2ベークという工程から、加工費・生産能力的にみても1コート1ベークに劣る。
【0038】
(比較例3)
コート材としてシリカゾル無機材料を用いゾルゲル法で成膜する方法の密着性、コスト性を改善するものとして、有機無機複合材料(アクリル樹脂にシリカ系セラミック粒子を担持させたもの)を比較例1と同様にコートし、140℃で30分乾燥、硬化させた。その後、熱水(80℃)で4時間浸漬後、接触角が50°になったものを試験した。
有機系(樹脂)を多量に添加した材料系では、表2に示すように水の接触角が40〜50°が限界で、目的とする防汚染、乾燥性の機能を付与できるほどの親水化ができない。
【0039】
評価方法
(試験例1)
プラスチック成形品表面の親水性を評価するために、水の接触角を測定した。接触角は協和界面科学(株)製の接触角計「GA−X150型」を使用した。測定結果は表1、表2に示す。
【0040】
(試験例2)
摩耗性は市販の浴槽用ネット付きスポンジ(ウレタン)を用い、乾いた状態で49Nの荷重を掛けて摩耗し、摩耗後の膜剥離がないかで評価した。
○:剥離なし ×:剥離あり
50、100、200、300、400、500、1000、以降500回ごとに目視確認し、10000回まで行った。
【0041】
(試験例3)
テープ密着性は、JIS−K−5400の付着性で評価した。
【0042】
(試験例4)
プラスチック成形品表面硬度は、JIS−K−5400の鉛筆硬度で評価した。
【0043】
(試験例5)
プラスチック成形品の防汚染性を評価するために、ラウリン酸ナトリウムを温水に溶かし塩化カルシウムを添加すると、石鹸カスに組成の近い脂肪酸カルシウムがスカムとして生成する。そのスカムの浮いたカップにサンプルを10回出し入れし、表面にそのスカムを強制的に付着させる。スカムの付着したサンプルをシャワーで洗い流した後の光沢、汚れ付着状態を目視で判定した。
○:殆ど汚れ除去 △:わずかに汚れ残る ×:汚れが殆ど残っている
【0044】
(試験例6)
乾燥性は実機防水パン(1616サイズ)にコートし、全面水張り後に排水して20℃90%の環境試験室で6時間放置後の水残りで評価した。
○:水残りなし △:わずかに水残りあり ×:水残りあり
【0045】
(試験例7)
耐熱水性試験は、80℃の蒸留水にコートしたサンプルを全浸漬し4時間毎に取り出し、取り出したのち濡れたペーパータオルで約20Nの力で20回こすって外観と接触角をみた。接触角は50°未満を合格として試験を継続する。
外観の劣化、または接触角50°以上となった時間を耐熱水性として評価した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【発明の効果】
本発明の成形体によれば、親水機能を有する無機材料を樹脂基材又は表面を樹脂被覆した基材の表面にコートすることにより、表1に示すように親水性について水の接触角で40°以下にすることができ、脂汚れ・石鹸カスと呼ばれる金属石鹸等が付着しても水で洗い流すだけで殆ど除去でき、また、表面に水が付着しても表面が親水性なので液滴が広がり乾燥性にも優れており、防汚染性とともに乾燥性とハードコートを兼ね備えた塗膜のコートにかかるコストの低減も可能となる。
【0049】
また、基材の表面に予めシランカップリング剤を塗布してシランカップリング剤の被膜を形成することで、耐水、耐熱水性を大幅に向上させることができて、これらの性能を必要とする用途への適用が可能となる。
Claims (3)
- 樹脂基材又は表面を樹脂被覆した基材の表面に、ペルヒドロポリシラザンとシランカップリング剤の混合物からなる被膜を設け、さらに、この被膜の上に親水機能を有する無機材料としてペルヒドロポリシラザンを塗布して、これらの被膜及び塗布層を加熱処理することにより水、酸素との反応によりシリカを主成分とする硬化被膜を形成し防汚染機能及び乾燥性機能が付与された塗膜を形成してなる成形体。
- 親水機能を有する無機材料を塗布して防汚染機能及び乾燥性機能が付与された塗膜の膜厚は1.0〜2.0μmである請求項1に記載の成形体。
- 成形体が、浴槽、浴室用防水パン、浴室用カウンター、浴室用壁、洗面カウンター、洗面ボウル、キッチンカウンター、キッチンキャビネットの構成部材、食器又は食器洗浄器のいずれかである請求項1または請求項2に記載の成形体。
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