JP4118058B2 - 鋳造用浸漬ノズル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳造用浸漬ノズルに関し、より詳細には、タンディッシュ等に取り付けられて、溶鋼をモールド内に注入するための鋳造用浸漬ノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
溶鋼等の排出に使用される鋳造用浸漬ノズルには、溶鋼に対する安定性、耐食性、耐スポーリング性に優れることが要求され、従来、このような特性に比較的優れたアルミナ・グラファイト質の耐火物が多く使用されている。
しかしながら、このアルミナ・グラファイト質の鋳造用浸漬ノズルは、溶鋼の鋳造において鋼中の介在物の析出・付着によって、しばしば閉塞するという問題点を有していた。特に、溶鋼がアルミキルド鋼の場合、アルミナ介在物の析出、付着によってノズルが閉塞しやすかった。
【0003】
前記介在物は、例えば、溶鋼と接する壁面に溶鋼が凝固することにより発生し、また、溶鋼中のアルミナが溶鋼と接する壁面の低温域あるいは低流速域において局所的に析出することにより発生する。これは、溶鋼中のアルミニウム(Al)が、耐火材中の炭素(C)やシリカ(SiO2 )に由来して発生するSiOガスと反応し、アルミナ(Al23 )を局所的に析出することにより発生すると推察されている。
そして、前記介在物が、溶鋼中の酸化物(MnO、SiO2 、CaO、MgO等)等の接着作用により、例えば層状に成長し、該ノズルを閉塞すると考えられている。
【0004】
このように、鋳造用浸漬ノズルの一部が閉塞すると、モールド(鋳型)内の溶鋼流を乱し、その結果、フラックスが溶鋼中に巻き込まれ、鋳造された製品の品質を悪化させる原因となっていた。また、閉塞した鋳造用浸漬ノズルを新規なノズルに交換しなければならず、そのため、連続的に行われる鋳造の回数が減少し、生産効率の低下を招くという問題があった。
【0005】
そのため、従来から、かかる問題を解決するため、種々の回避策が提案され、また、実施されてきた。
それらのうち、主なものとして下記の4方法を挙げることができる。
1)鋳造用浸漬ノズルに断熱スリットを入れ、局所的な温度低下を防止する。
2)鋳造用浸漬ノズルにガス吹込用噴射口、または通気性煉瓦を取り付ける。
このように、Ar等の不活性ガスが噴射口から吹き出ることによって、ガスによる撹拌が生じ、該ノズルの孔内での溶融金属の凝固が防止される。
3)特公平2−23494号公報に示されるように、鋳造用浸漬ノズルの溶鋼と接する壁面にCaO−ZrO2 −C系材料を設置する。
4)特開平8−39214号公報、特開平10−5943号公報に示されるように、カーボンを含まない材料により、該ノズルの内周面を覆う。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の各方法によっても、使用条件によっては、その効果は必ずしも十分に満足すべきものではなかった。
即ち、上記1)に提案された方法では、溶融金属を排出する排出孔の周囲にスリットが設けられているため、鋳造用浸漬ノズルの強度低下を招くという新たな問題が生じた。
また、上記2)の方法では、溶鋼中に気泡が残留しピンホールが発生する等の不具合があり、高品質製品の鋳造には不向きである。
さらに、上記3)に提案された方法では、溶鋼による鋳造用浸漬ノズルの閉塞は防ぐことができるが、該ノズルを構成する耐火材の溶損が大きくなってしまうという問題がある。
さらにまた、上記4)の提案では、材質強度が低くなり、耐火材をノズルに適正に配設できるように成形することが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、ノズルの閉塞が抑制された鋳造用浸漬ノズルを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ノズル本体の少なくとも内周面部分に、化学組成でアルミナが80〜90質量%、マグネシアが5〜10質量%、シリカが1〜10質量%及び炭素成分として3〜10質量%を配合してなる耐火材が配設された鋳造用浸漬ノズルであって、前記アルミナ100質量%に対して、粒度10μm以下のアルミナ微粉末15〜30質量%含み、前記マグネシアは、粒度30μm以下のマグネシア微粉末を配合してなる耐火材が配設されることを特徴とする鋳造用浸漬ノズルが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、鋳造用浸漬ノズルの内周面または外周面に配設した前記耐火材の厚さが、3〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載された鋳造用浸漬ノズルが提供される。
さらに、本発明によれば、前記耐火材に含有される炭素成分が、配合されるバインダー由来の炭素であることを特徴とする鋳造用浸漬ノズルが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、前記鋳造用浸漬ノズルの外表面に、アルミナ・グラファイト質の耐火材が配設されることを特徴とする鋳造用浸漬ノズルが提供される。
さらに、本発明によれば、この鋳造用浸漬ノズルの好適態様として、前記アルミナ・グラファイト質の耐火材の厚さが、1〜5mmであることを特徴とする鋳造用浸漬ノズルが提供される。
【0011】
上記したように、ノズル本体の少なくとも内周面部分に配設される特定耐火材は、材料組成全体に対して80〜90質量%を占めるアルミナ成分のうち、該成分量の15〜30%が粒度10μm以下のアルミナ微粉末として配合される。
【0012】
そして、このアルミナ微粉末は、焼成時、受鋼時等の熱により、材料中において、粒度30μm以下であるマグネシア微粉末成分と反応し、Al23 とMgOとの1:1反応物であるスピネル(Al2 MgO4 )の結晶をアルミナ粒間に生成する。
そして、このアルミナ粒間に生成したスピネル結晶微粒は、その生成時に膨張し、アルミナ粒に密着して粒同士を強固に結合する作用を奏し、該耐火材に強度、靱性、耐食性等を付与する。
【0013】
なお、本発明に係る前記特定耐火材においては、その気孔率が10〜20%の範囲にあることが、優れた耐食性を保持しながら、しかも、前記スピネル生成による膨張を緩和し、割れ発生等の不都合を回避できる観点から特に好ましい。
上記のような組織構造を有する本発明の前記特定耐火材は、前記アルミナ粒間に生成したスピネル結晶の膨張による強力な圧密接着力に起因して、強度が約3倍に増大し、また、耐食性も向上する。
【0014】
また、本発明に係る前記特定耐火材の組成において、マグネシアが5〜10質量%、シリカが1〜10質量%の各範囲にあることも重要であり、これにより、適度な熱膨張性と優れた耐食性、耐スポーリング性を保持する。
さらに、炭素量が3〜10質量%に限定されていることにより、溶鋼中のAlが耐火材中の炭素とSiO2 より発生するSiOと反応して、介在物としてのAl23 が生成することを抑制し、かつ、材料強度を所定強度以上に維持する。
【0015】
さらにまた、本発明において前記特定耐火材の炭素成分は、配合されたバインダーからの炭素のみからなることが好ましく、グラファイトまたは天然黒鉛の粉末に由来する炭素を含まないものであることが好ましい。
グラファイトや天然黒鉛の粉末の配合に由来する炭素成分が多量に含有される場合、耐火材中でのスピネルの生成が阻害される傾向があり、かつ、グラファイトの滑り良さに起因して、配合充填率が密になりすぎ、耐火材の気孔率が低くなってしまうためである。
【0016】
上記のように構成された特定耐火材を、使用時に溶鋼と接触する部分に配設した本発明に係る鋳造用浸漬ノズルは、耐火材各構成要素の個別及び相互作用により耐食性、耐スポーリング性、強度特性等に優れ、かつ、該ノズルの閉塞が抑制される。
【0017】
さらに、本発明においては、アルミナ・グラファイト質の耐火材を前記特定耐火材の外表面に配設することが好ましい。これにより、受鋼初期の溶鋼の流れをアルミナ・グラファイト質の耐火材が接触して受ける間に、溶鋼の熱により、その背面に配設されている前記特定耐火材はスピネル化する。したがって、以後、溶鋼と直接接触しているアルミナ・グラファイト質の耐火材が溶損した場合であっても、スピネル化した前記特定耐火材により、浸漬ノズルの溶損は防止される。
【0018】
また、アルミナ・グラファイト質の耐火材は、厚さが1〜5mmと比較的薄いものであることが好ましく、これにより、非金属介在物等が付着した場合であっても、比較的薄いため付着物とともに剥離しやすく、付着されにくい前記特定耐火材が露出することとなるため、ノズルの閉塞を防止することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る鋳造用浸漬ノズルについて図面を参照して詳細に述べる。図1(a)及び(b)は、それぞれ本発明に係る鋳造用浸漬ノズルの態様を例示した概略断面図であって、(a)は、本発明に係る特定耐火材1が、従来の耐火材2により構成されるノズル内周面に配設された態様のものを示している。また、図1(b)は、本発明に係る特定耐火材1が、従来の耐火材2により構成されるノズル内周面及び外周面に配設された態様のものを示している。
【0020】
本発明において、前記特定耐火材1は、ノズルの内周面だけに設けられていてもよく、また、内外周全面に配設されていてもよい。
また、前記耐火材の厚さは必ずしも限定されるものではないが、通常3mm以上、好ましくは3〜20mmの厚さに設定される。3mm未満では耐食性の効果が不十分であり、20mmより厚いと熱膨張差による割れを生じ易い。
【0021】
前記特定耐火材1の化学組成としては、アルミナが80〜90質量%、マグネシアが5〜10質量%、シリカが1〜10質量%及び炭素成分として3〜10質量%が配合されている。また、前記アルミナは、前記アルミナ100質量%に対して、粒度10μm以下のアルミナ微粉末15〜30質量%を含み、前記マグネシア原料は粒度30μm以下のマグネシア微粉末が配合される。
【0022】
上記配合原料のうち粒度10μm以下のアルミナ微粉末は、焼成時(通常900〜1400℃程度)、あるいは使用時に溶鋼から受ける熱(通常1450〜1600℃程度)により同様に配合されたマグネシア微粉末と反応し、スピネル結晶を耐火材中のアルミナ粒間に生成する。
このスピネルは生成時に膨張し、アルミナ粒に圧着して、アルミナ粒同士をスピネル結合により接合する作用を奏する。
スピネル結合は、例えばグラファイト等による結合に比べて格段に強力であり、これにより、耐火材強度は約3倍に増加し、耐食性も向上する。
【0023】
ここで、本発明に係る前記特定耐火材は、その気孔率が10〜20%の範囲にあることが特に好ましい。
気孔率が低い場合、例えば10%未満である場合には、スピネル生成時の膨張を緩和吸収しきれず、耐火材に割れが発生しやすくなる。一方、気孔率が高い場合、例えば20%を越える場合には、耐火材の耐食性が低下する。
即ち、本発明に係る前記特定耐火材において、気孔率が10〜20%の範囲にあるものは、スピネル結晶微粒が前記アルミナ粒間に適度に分散存在し、これが適度に膨張することにより強力な接合剤としての役割を果たすため、耐火材として強度、耐食性、及び耐スポーリング性に極めて優れたものとなる。
【0024】
本発明に係る前記特定耐火材において、マグネシアが5質量%未満では耐食性が得られず、一方、10質量%を越える場合は耐スポーリング性が低下する。そのため、マグネシアが5〜10質量%の範囲で含有されていることが好ましい。
さらに、マグネシア原料の粒度が30μm以下の微粉を用いることにより、アルミナの微粒とスピネルを生成し、アルミナ粗粒子間の隙間において膨張し、強度を発現することができる。一方、粗粒のマグネシアを用いると、膨張由来の亀裂発生の要因となる。
また、シリカが1質量%未満では熱膨張が大きくなりすぎ、一方、10質量%を越える場合では耐食性が低下する。したがって、シリカが1〜10質量%の範囲で含有されていることが好ましい。
【0025】
本発明に係る前記特定耐火材においては、炭素成分の含有率が3〜10質量%の範囲にあることも重要である。
炭素成分含有率が10質量%以下であることによって、鋼中に含まれるアルミニウム(Al)が、ノズル耐火材の炭素とシリカ(SiO2 )から発生するSiOガスと反応して、ノズル閉塞の発生誘因物となるAl23 の発生を抑制する。
また、炭素成分が3質量%以上であることによって、十分な耐火材強度を保持し、鋳造用浸漬ノズルの成形において、例えば図1(a)、(b)に示す内外周部に設けられる特定耐火材1の部分と本体を構成する従来の耐火材2の部分との同時成形を可能とする。
【0026】
さらに、本発明では、前記特定耐火材中の炭素成分が、配合されたバインダー由来の炭素からなることが好ましく、グラファイト由来または配合された天然黒鉛由来の炭素を含まないものであることが好ましい。
即ち、従来、溶鋼に対する安定性及び耐スポーリング性の点から、アルミナ・カーボン質耐火材が一般的に使用され、このような耐火材において耐スポーリング特性を付与するのは、主として耐火材中に含まれるグラファイト質炭素成分であった。そのため、従来の浸漬ノズル用アルミナ・カーボン質耐火材は、一般に20〜30質量%ものグラファイト質炭素を含有していた。
【0027】
ところで、前記アルミナ・カーボン質耐火材において、前記グラファイト粒子と酸化物であるアルミナ粒子とは、一般的には焼結により結合させることができず、いわゆるバインダーを用いて、これにより焼成時にアルミナ粒子とグラファイト粒子を結合させていた。
しかしながら、この結合は、比較的強度が弱く、このため、従来の耐火材は耐エロージョン性(物理的耐摩耗性)に劣り、ノズル内壁の損耗が激しい等の問題点を有していた。言い換えれば、従来のアルミナ・カーボン質耐火材では、耐スポーリング特性と耐エロージョン特性とは二律背反関係にあり、十分な強度、エロージョン特性が得られる程度まで、グラファイト質炭素の含有量を低下させることは困難であった。
【0028】
本発明に係る前記特定耐火材では、前記スピネル結晶生成により、優れた強度及び耐食性を発現することができるため、多量のグラファイト質炭素の添加を必要としない。さらに、後記比較例に示されているように、10質量%を越えるグラファイト質炭素の添加は、スピネルの生成を阻害し、耐食性や耐エロージョン性を低下させるとともに、グラファイトの滑り良さにより、配合の際の充填密度が高くなりすぎ、得られる耐火材の気孔率が低くなってしまうため、好ましくない。
【0029】
また、本発明に係る鋳造用浸漬ノズルの他の態様としては、前記特定耐火材の外表面に、アルミナ・グラファイト質の耐火材が配設されたものが提供される。図2(a)及び(b)に、この態様の概略断面図を例示する。(a)は、従来の耐火材2により構成されるノズル内周面に特定耐火材1が配設され、さらに前記特定耐火材1の外表面に、アルミナ・グラファイト質の耐火材3が配設された態様のものを示している。また、図1(b)は、従来の耐火材2により構成されるノズル内周面及び外周面に特定耐火材1が配設され、さらに前記特定耐火材1の外表面に、アルミナ・グラファイト質の耐火材3が配設された態様のものを示している。
【0030】
上記のように、アルミナ・グラファイト質の耐火材3を特定耐火材1の外表面に配設することにより、受鋼初期においては、アルミナ・グラファイト質の耐火材3が溶鋼の流れと直接接触する。この間に、溶鋼の熱により、アルミナ・グラファイト質の耐火材3の背面に配設されている特定耐火材1はスピネル化する。したがって、以後、溶鋼と直接接触しているアルミナ・グラファイト質の耐火材3が溶損した場合であっても、スピネル化した前記特定耐火材1により、浸漬ノズルの溶損は防止される。
【0031】
また、前記アルミナ・グラファイト質の耐火材3は、厚さが1〜5mmであることが好ましい。このように、比較的薄く配設することにより、非金属介在物等が付着した場合であっても、この薄層の耐火物は、付着物とともに剥離しやすく、剥離した後は、付着されにくい特定耐火材1が露出することとなるため、ノズルの閉塞を防止することができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
本発明に係る鋳造用浸漬ノズルにおいて内外周面に配設される耐火材を、下記の方法により調製した。
即ち、粒度10μm以下のアルミナ微粉末と粒度が10μmを越えて0.3mm以下のアルミナ粒とを2:8の質量比で混合したアルミナ混合物原料87質量部と粒度30μm以下のマグネシア微粉末原料7質量部、シリカ原料粉末2質量部とをそれぞれ混合し、これにバインダーとしてフェノールレジンを4質量部添加して配合原料を調製し、これを用いて、直径150mm、長さ30cmの有底円筒体形状にCIP成形した。
この成形体を1100℃前後の還元雰囲気で焼成し、肉厚約10mmで、表1の実施例1に記載した化学組成を有する有底円筒体耐火材を得た。
【0033】
次いで、この耐火材の見かけ気孔率(JIS R2205準拠)及び熱膨張率(JIS R2207)をそれぞれ測定した。
これらの結果を表1に示す。
また、この有底円筒体耐火材に1500℃の溶鋼を流し込み、1分後に流し込んだ溶鋼を排出して空冷し、このサイクルを5回繰り返した後、該有底円筒体耐火材を切断して溶鋼と接触した面の状況を目視観察した(耐スポーリング性試験)。また、付着物の厚さを測定した。
また同時に、溶鋼による浸食損失の程度を測定し、耐食性指数として評価した。
これらの結果を表1に示す。
【0034】
[実施例2〜9]
表1の実施例2〜9に示す配合原料を調製し、実施例1と同様の条件で、有底円筒体耐火材を得、実施例1と同様に、試験評価を行った。
これらの結果を表1、表2に示す。
【0035】
【表1】
Figure 0004118058
【0036】
【表2】
Figure 0004118058
【0037】
[比較例1〜10]
粒度が10μm以下のアルミナ微粉末と粒度が10μmを越えて0.3mm以下のアルミナ粒とを2:8の質量比で混合したアルミナ混合物原料と、粒度30μm以下のマグネシア微粉末原料と、シリカ原料粉末とを、表3、4の比較例1〜10に示される配合量をもって混合し、これにバインダーとしてフェノールレジンを表3、4の比較例1〜10に示される量添加して配合原料を調製し、これを用いて、直径150mm、長さ30cmの有底円筒体形状にCIP成形した。この成形体を実施例1と同様の条件で焼成し、肉厚約10mmで、表3、4の比較例1〜10に記載した化学組成を有する有底円筒体耐火材を得た。
次いで、実施例1と同様に、試験評価を行った。
これらの結果を表3、4に示す。
表3、4に示したように、亀裂が生じなかったものでも、耐食性に劣ることが認められた。
【0038】
【表3】
Figure 0004118058
【0039】
【表4】
Figure 0004118058
【0040】
[実施例10、11]
表5の実施例10、11に示すように、粒度10μm以下のアルミナ微粉末と粒度が10μmを越えて0.3mm以下のアルミナ粒との配合量を変えたアルミナ混合物原料を用いて、実施例1と同様な直径150mm、長さ30cmの有底円筒体形状にCIP成形した。
これらの成形体を実施例1と同様の条件で焼成し、肉厚約10mmで、表5の実施例10、11に記載した化学組成を有する有底円筒体耐火材を得た。
次いで、実施例1と同様に、試験評価を行った。
これらの結果を表5に示す。
【0041】
【表5】
Figure 0004118058
【0042】
[比較例10〜14]
表6の比較例10〜14に示すように、粒度10μm以下のアルミナ微粉末と粒度0.3mm以下のアルミナ粒との配合量を変えたアルミナ混合物原料と、粒度の配合量を変えたマグネシア微粉末原料を用いて、実施例1と同様な直径150mm、長さ30cmの有底円筒体形状にCIP成形した。
この成形体を実施例1と同様の条件で焼成し、肉厚約10mmで、表6の比較例10〜14に記載した化学組成を有する有底円筒体耐火材を得た。
次いで、実施例1と同様の試験評価を行った。
これらの結果を表6に示す。
表6に示したように、亀裂が生じなかったものでも、耐食性に劣ることが認められた。
【0043】
【表6】
Figure 0004118058
【0044】
[実施例12]
直径150mm、長さ30cmの浸漬ノズルの内周面に、実施例1と同様に調製した配合原料により構成される特定耐火材を肉厚5mmで配設した。
さらに、前記特定耐火材の外表面に、アルミナ・グラファイト質の耐火材を肉厚3mmで配設した。
同様の鋳造用浸漬ノズルを5本作製した。
そして、実機試験として、これらの鋳造用浸漬ノズルに1500℃の溶鋼を流し込み、1分後に流し込んだ溶鋼を排出して空冷し、このサイクルを5回繰り返した後、該ノズルを切断して溶鋼と接触した面における特定耐火物の残存厚さおよび付着物の厚さを測定した。
これらの結果を表7に示す。
【0045】
[参考例]
直径150mm、長さ30cmの浸漬ノズルの内周面に、実施例1と同様に調製した配合原料により構成される特定耐火材を、肉厚3mmで配設した。同様の鋳造用浸漬ノズルを5本作製した。
これらの鋳造用浸漬ノズルについて、実施例12と同様にして、実機試験を行い、測定を行った。
これらの結果を表8に示す。
【0046】
【表7】
Figure 0004118058
【0047】
【表8】
Figure 0004118058
【0048】
表7、8に示したように、ノズル内周面の特定耐火材の外表面に、さらにアルミナ・グラファイト耐火材を配設した場合(実施例12)は、特定耐火材はまったく溶損せず、しかも、特定耐火材のみを配設した場合(参考例)に比べて、非金属介在物もほとんど付着していないことが認められた。
【0049】
【発明の効果】
上記のように構成された特定耐火材を、使用時に溶鋼と接触するノズル周面に配設した本発明に係る鋳造用浸漬ノズルは、前記耐火材各構成要素の個別及び相互作用により適度な熱膨張率を有するとともに、耐食性、耐スポーリング性、強度特性等に優れ、かつ、ノズル使用時に閉塞を起こさない等、鋳造用浸漬ノズルとして多くの利点を有する。
さらに、上記特定耐火材の外表面にアルミナ・グラファイト材の耐火物を配設することにより、より一層、耐食性や閉塞防止効果に優れた鋳造用浸漬ノズルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鋳造用浸漬ノズルの構造を例示した概略断面図であって、(a)は、本発明に係る特定耐火材がノズル内周面に配設された態様のもの、(b)は、特定耐火材が、内外両周面に配設された態様のものを示す。
【図2】本発明に係る鋳造用浸漬ノズルの他の態様の構造を例示した概略断面図であって、(a)は、特定耐火材及びアルミナ・グラファイト質耐火材がノズル内周面に配設された態様のもの、(b)は、特定耐火材及びアルミナ・グラファイト質耐火材が、内外両周面に配設された態様のものを示す。
【符号の説明】
1 特定耐火材
2 従来の耐火材
3 アルミナ・グラファイト質耐火材

Claims (5)

  1. ノズル本体の少なくとも内周面部分に、
    化学組成でアルミナが80〜90質量%、マグネシアが5〜10質量%、シリカが1〜10質量%及び炭素成分として3〜10質量%を配合してなる耐火材が配設された鋳造用浸漬ノズルであって、
    前記アルミナ100質量%に対して、粒度10μm以下のアルミナ微粉末15〜30質量%を含み、
    前記マグネシアは、粒度30μm以下のマグネシア微粉末を配合してなる耐火材が配設されることを特徴とする鋳造用浸漬ノズル。
  2. 鋳造用浸漬ノズルの内周面または外周面に配設した前記耐火材の厚さが、3〜20mmであることを特徴とする請求項1に記載された鋳造用浸漬ノズル。
  3. 前記耐火材に含有される炭素成分が、配合されるバインダー由来の炭素であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された鋳造用浸漬ノズル。
  4. 鋳造用浸漬ノズルの前記耐火材の外表面に、アルミナ・グラファイト質の耐火材が配設されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の鋳造用浸漬ノズル。
  5. 前記アルミナ・グラファイト質の耐火材の厚さが、1〜5mmであることを特徴とする請求項4に記載された鋳造用浸漬ノズル。
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