従来、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のLSI(Large-scale Integration)回路装置を構成するトランジスタには、単一膜厚のゲート酸化膜を用いているのが普通である。この場合の利点として、製造工程が単純であり、それゆえにコストを低く維持でき、また歩留まりも高く維持できるという点があげられる。反面、高速動作を追求した最新のトランジスタを採用できないため、性能を犠牲にしなくてはならない面もある。
近年、同一基板上に2種類のゲート絶縁膜やゲート電極を形成することが要求されている。これは、同一半導体基板に形成された回路中に2種類以上の電源電圧が加わるような場合、信頼性上の制約から高電圧回路部分のトランジスタのゲート絶縁膜を厚くするなどの工夫が必要なためである。例えば、DRAMやEEPROM(electrically erasable and programmable read-only memory)のセル内トランジスタのゲート絶縁膜を他の回路部のゲート絶縁膜に比べて厚くすることなどが要求されている。
また、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)回路においては、従来ではn+ ポリシリコンゲートを用いるのが通常であるが、この素子構造では、素子の微細化とともにPMOSトランジスタの短チャネル効果の抑制が難しくなってきており、PMOSトランジスタにはゲート電極材料にp+ ポリシリコンを用い、NMOSトランジスタにはゲート電極材料にn+ ポリシリコンを用いる、いわゆるデュアルゲート構造が好ましいとされている。この場合にも、さらにゲート絶縁膜の厚さをかえることができれば、より高性能な回路動作が期待できる。
通常、同一基板上に2種類のゲート絶縁膜やゲート電極を形成する場合には、リソグラフィ手段を用いて同一基板上の領域を二つのの領域に分けることによって行われる。一例をあげると以下の通りである。
トレンチ素子分離を形成した後、熱酸化により半導体基板上に熱酸化膜を形成する。次に、フォトレジストを全面に塗布し、フォトリソグラフィ工程によってNMOS領域のみにフォトレジストを残し、PMOS領域のフォトレジストを除去する。このようにパターン形成されたフォトレジストをマスクとして、PMOS領域の熱酸化膜をエッチング除去する。次に、フォトレジストを剥離し除去し、再度熱酸化によってPMOS全面に領域に熱酸化膜を形成する。この時、NMOS領域では、先に形成した熱酸化膜が残っているため、この領域の酸化膜の厚さはPMOS領域の酸化膜よりも厚くなる。
しかし、このような工程では、NMOS領域のゲート酸化膜がフォトレジストに直接接触することになる。フォトレジストには、ゲート絶縁膜の膜質を劣化させるNaや重金属が多く含まれており、これらの不純物を次の酸化工程時に取り込んでしまう危険性がある。従って、素子の信頼性や歩留まりが低下するという問題が生じる。
他の従来の半導体装置の製造方法を図1から図7を参照して説明する。
図1は半導体装置の平面構成の概念図であり、参照符号1は素子分離領域を、参照符号2はゲート配線領域を、参照符号3a,3bは拡散領域を示す。ここでは、異なる拡散領域3a,3b上に、それぞれ異なる材料のゲート絶縁膜およびゲート電極を有する第1および第2のトランジスタが形成される。
図2から図4は図1に示される破断線IIa−IIaでの断面を右側に、破断線IIb−IIbの断面を左側に示している。即ち、図2から図4は、右側に第1のトランジスタの製造工程を、左側に第2のトランジスタの製造工程を示している。図5から図7は、図1に示される破断線III −III における断面を示している。
先ず、シリコン基板10にウェル領域(図示せず)やSTI(Shallow Trench Isolation)構造の素子分離領域11が形成される。その後、第1のゲート酸化膜12が熱酸化法により形成され、その上に第1のゲート電極であるポリSi膜13がCVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成される。ポリSi膜13中のドーパント不純物は、成膜中に添加、あるいは成膜後にイオン注入法などで導入される(図2(a)、図5(a))。
次に、ポリSi膜13がリソグラフィ/ドライエッチング技術により第1のトランジスタが形成される領域のみを残すようにパターニングされる。その後、露出した部分の第1のゲート酸化膜12を希フッ酸溶液がエッチング除去されて、その部分のシリコン基板10が露出される(図2(b)、図5(b))。
次に、この露出されたシリコン基板上10に、第2のゲート酸化膜14が熱酸化法で形成される。その際、第1のゲート電極であるポリSi膜13上およびその側壁も酸化されてシリコン酸化膜14が形成される。更に、その上に第2のゲート電極であるポリSi膜15がCVD法で形成される(図3(a)、図6(c))。
この後、この第2のポリSi膜15がリソグラフィ/ドライエッチング技術により第2のトランジスタが形成される領域のみを残すようにパターニングされる。この後、露出された部分のポリSi膜上に形成された熱酸化膜14が希フッ酸溶液でエッチングされ、除去される(図3(d)、図6(d))。
この後、第1のゲート電極と第2のゲート電極を接続するための第3のゲート電極材料としてタングステンシリサイド(WSi2)16が基板10上の全面に形成される(図4(e)、図7(e))。
次に、タングステンシリサイド/ポリSi(第1、および第2ゲート電極)膜がリソグラフィ/ドライエッチング技術により、ゲート配線形状に加工される(図4(f)、図7(e))。
その後、通常の後酸化、側壁残し、ソース/ドレイン形成、メタライゼーションなどの工程を経て、2種類の異なるゲート酸化膜厚の構造を持つトランジスタが完成される。
上述した、従来のトランジスタ製造方法により製造された半導体集積回路は以下に示す問題点を有する。
第1の問題点は、図7(e)から明らかなように、リソグラフィ工程における合わせずれの余裕を含めて考えると、接続部で第1のゲート電極13と第2のゲート電極15との幅Wの重ね合わせ部分を必ず設ける必要があることである。トランジスタの能動領域であるチャネル部は、この重ね合わせ部分から離して形成する必要があり、この重ね合わせ分だけ必ず素子分離領域の幅が広くなる。このため、必然的に半導体装置全体の寸法が大きくなり、一枚のシリコン基板から取れるチップの数が減少し、ひいては製造コストアップに繋がる。
第2の問題点は、同じく図7(e)に示されるように、半導体装置に段差が生じることである。この段差のため、その後の配線加工時のリソグラフィ/ドライエッチング工程が非常に複雑になり、微細寸法の素子で構成された半導体装置を製造することが困難となる。
半導体基板上に第1の領域と第2の領域とを形成する半導体装置の従来例では、シリコン基板上の2つの領域の一方に酸素をイオン打ち込み法により選択的に導入することなしに、半導体基板上の第1の酸化膜上にパターンニングされた第1のマスク材と、第2の酸化膜上にパターンニングされた第2のマスク材とを酸化膜のマスクとして作用させ、同一半導体基板上に厚さの異なる酸化膜を形成する(例えば、特許文献1参照)。
特開平3−184368号公報(図1)
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態に係る半導体装置を図8から図19を参照して説明する。
図8はこの発明の第1実施形態〜第5実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図面であり、同一基板上に膜厚や材料の異なるゲート電極/ゲート絶縁膜が形成される半導体装置の平面構成を示している。図9から図12は第1実施形態の製造方法における各工程を説明するための図面であり、図8に示される破断線XIa−XIaでの断面を右側に、破断線XIb−XIbの断面を左側に示している。図13から図16は図9から図12に示される各工程における半導体装置の上面図である。図17から図18は第1実施形態の製造方法を説明するための図面であり、図8に示される破断線XIII−XIIIでの断面図を示す。図19は第1実施形態の製造方法において図10(c)と図14(c)に示される工程時の半導体装置の斜視図を示す。
図8において、参照符号1は素子分離領域、参照符号2はゲート配線領域、参照符号3a,3bは拡散領域を示している。
先ず、シリコン基板201にウエル領域(図示せず)やSTI構造の素子分離領域202が形成される。その後、ゲート酸化膜203が熱酸化法で形成され、その上にポリSi膜204、シリコン窒化膜205がそれぞれCVD法で積層形成される(図9(a)、図13(a))。ポリSi膜204中のドーパント不純物は、成膜中に添加しても、成膜後にイオン注入法などで導入しても良い。
次に、ポリSi膜204/シリコン窒化膜205の積層膜がリソグラフィー/ドライエッチング技術によりゲート配線に対応した形状にパターニングされる。続いて、パターニングされたゲート配線をマスクとして不純物のイオン注入が行われ、LDD(Lightly Doped Drain)層が形成される。その後、パターニングされたゲート配線側壁にシリコン酸化膜207が形成される。このようにして、ダミーのゲート配線、および側壁絶縁膜207からなるダミーゲート配線構造が形成される。続いて、このダミーゲート配線構造をマスクとして、不純物のイオン注入が行われる。その後、熱処理を行うことによりソース・ドレイン拡散領域206が形成される。続いて、CVD法で全面にシリコン酸化膜208が形成され、ダミーゲート構造を全域が覆われる。その後、シリコン窒化膜205をストッパーとして化学的機械的研磨(CMP)法でシリコン酸化膜208が研磨され、全面が平坦化される(図9(b)、図13(b))。
次に、主として第1のトランジスタが形成される領域(図8の拡散領域3a)をフォトレジスト209で覆い、SiN4膜205およびポリSi膜204が、それぞれ例えば加熱燐酸溶液およびヒドラジン溶液で順次除去され、これにより、溝部210が形成される。続いて、溝部210の底面に露出したゲート酸化膜203を通してチャネルイオン注入が行われた後、この露出領域のゲート酸化膜203が希フッ酸溶液で除去される(図10(c)、図14(c)、図17(a))。
ここで、第2のトランジスタが形成される領域(図8の拡散領域3b)に形成されたダミーゲート構造が取り除かれた状態を、図19に示す。
次に、露出された領域のシリコン基板201の表面に熱酸化法によりゲート酸化膜211が形成され、さらに全面にタングステン膜212が形成される(図10(d)、図14(d)、図17(b))。
次に、CMP法で溝部以外に形成されたタングステン膜212が除去され、溝内にのみタングステン膜212が残置される(図11(e)、図15(e))。
続いて、ポリSi膜204上のSiN膜205を、加熱燐酸溶液により剥離することにより、ポリSi膜204が露出され、溝部213が形成される(図11(f)、図15(f))。
次に、タングステン膜214が全面に堆積される。タングステン膜214を堆積しない場合には、ゲート酸化膜211を形成する際にポリSi膜204の断面も酸化されて酸化シリコン膜211aが形成されるため、ポリSi膜204とタングステン膜212とが絶縁されてしまう。しかし、タングステン膜214が形成されることにより、ポリSi膜204とタングステン膜212とがタングステン膜214を介して接続される(図12(g)、図16(g)、図18(c))。
次に、CMP法でタングステン膜214が研磨され、溝内にのみタングステン膜214が残置される(図12(h)、図16(h)、図18(d))。
以上のようにして主要な工程が終了し、ゲート酸化膜の膜厚が異なる第1および第2のトランジスタを比較的簡単な工程で作製することができる。この後は、通常の配線工程等を行い、半導体集積回路が完成される。
この第1実施形態によれば、最初に形成したゲート絶縁膜203は、直接フォトレジストと接することはない。又、他の工程を挟むことなく、ゲート絶縁膜203とその上に形成されるポリシリコン膜204とを連続的に形成することが可能となる。また、現状用いられている工程と同様に、最も厳しい微細化が要求されるゲート配線レベルのリソグラフィー/ドライエッチング工程が1回しかなく、工程的にも比較的容易なものとなる。
特に、従来の製造方法により製造された半導体装置と比較した場合、本願の効果がより明確に理解できる。従来の製造方法により製造された半導体装置における2つのトランジスタの境界部分の構成は、図7に示されるようになる。一方、前述したように、この発明の製造方法によって製造された半導体装置における2つのトランジスタの境界部分の構成は、図18(d)に示されるようになる。
これらの図面から明らかなように、従来の第1の問題点である、接続部で第1のゲート電極と第2のゲート電極との幅Wの重ね合わせ部分を設ける必要、が無くなる。従って、この重ね合わせ分だけ必ず素子分離領域の幅が広くなり、半導体装置全体の寸法が大きくなり、一枚のシリコン基板から取れるチップの数が減少するという不具合を回避することができる。これにより、半導体装置の製造コストを低減することができる。
更に、従来の第2の問題点である、半導体装置に段差が生じることを回避することができる。従って、この段差のため、その後の配線加工時のリソグラフィ/ドライエッチング工程が非常に複雑になったり、微細寸法の素子で構成された半導体装置を製造することが困難となるような不具合を解消することができる。
第2実施形態
次に、この発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図20(a)から図25(e)を参照して説明する。
この第2実施形態の製造方法により製造される半導体装置の平面構成は、第1実施形態で用いられた図8に示される構成と同様である。更に、第1実施形態と実質的に同一、あるいは対応する構成要素には、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。
図20(a)から図23(i)は、この発明の第2実施形態の製造方法における各工程を説明するための図面であり、図8に示される破断線XIa−XIaを右側に、破断線XIb−XIbの断面を左側に示す。図24(a)から図25(e)は、図8に示される破断線XIII−XIIIでの断面図を示す。
この第2実施形態の製造方法では、図20(a)から図21(c)に示される工程、および図24(a)に示される工程は、前述した第1実施形態における図9(a)から図10(c)に示される工程と、図17(a)に示される工程と基本的に同じ工程である。従って、これらの工程については詳細な説明は省略して以降の工程について説明する。
図21(c)、図24(a)における工程の後、全面にゲート絶縁膜221として例えばSiON膜等が堆積される。この第2実施形態では、このようにゲート絶縁膜221として堆積膜が用いられているため、側壁絶縁膜207の側面およびシリコン酸化膜208上にもゲート絶縁膜221が形成される(図21(d))。
続いて、ゲート絶縁膜221上にタングステン膜212が形成され、このタングステン膜212により溝内が埋め込まれる(図22(e)、図24(b))。
次に、CMP法で溝部以外に形成されたタングステン膜212およびゲート絶縁膜221が除去され、溝内にのみタングステン膜212が残置される(図22(f)、図24(c))。
続いて、ポリSi膜204上のSiN膜205が除去され、ポリSi膜204が露出され、溝部213が形成される(図22(g))。
次に、タングステン膜214が全面に堆積される。ゲート絶縁膜221が堆積される際には、ポリSi膜204の断面にもこのゲート絶縁膜が堆積されるため、ポリSi膜204とタングステン膜212とが絶縁される。しかし、タングステン膜214が形成されることにより(図24(c))、ポリSi膜204とタングステン膜212とがタングステン膜214を介して接続される(図23(h)、図25(d))。
次に、CMP法でタングステン膜214が研磨され、溝内にのみタングステン膜214が残置される(図23(i)、図25(e))。
以上のようにして主要な工程が終了し、ゲート絶縁膜の膜種が異なる第1および第2のトランジスタが比較的簡単な工程で作製される。この後は、通常の配線工程等が行われ、半導体集積回路が完成される。
この第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様に、従来の第1および第2の問題点を解消することが可能となる。
第3実施形態
次に、この発明の第3実施形態に係る、半導体装置の製造方法について図26(a)から図30(e)を参照して説明する。
この第3実施形態の製造方法により製造される半導体装置の平面構成は、第1実施形態で用いられた図8に示される構成と同様である。更に、第1実施形態と実質的に同一、あるいは対応する構成要素には、同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。
図26(a)から図28(g)は、この発明の第3実施形態の製造方法における各工程を説明するための図面であり、図8に示される破断線XIa−XIaを右側に、破断線XIb−XIbの断面を左側に示す。図29(a)から図30(e)は、図8に示される破断線XIII−XIIIでの断面図を示す。
この第3実施形態の製造方法では、図26(a)から図26(c)に示される工程、および図29(a)に示される工程は、前述した第1実施形態における図9(a)から図10(c)に示される工程と、図17(a)に示される工程と基本的に同じ工程である。従って、これらの工程については詳細な説明は省略して以降の工程について説明する。
図26(c)、図29(a)に示される工程の後、溝部において露出されたシリコン基板201の表面に熱酸化法でゲート酸化膜211が形成される(図27(d)、図29(b))。
続いて、SiN膜205が除去されてポリSi膜204が露出され、溝部222が形成される(図27(e)、図29(c))。
次に、タングステン膜223が全面に堆積される。ゲート酸化膜211が形成される際にポリSi膜204の断面も酸化されて酸化膜211aが形成されるため、ポリSi膜204とタングステン膜212とが絶縁される。なお、ゲート絶縁膜211として堆積膜を用いた場合には、シリコン窒化膜205上に形成されたゲート絶縁膜を除去することが困難となる。このため、ゲート絶縁膜211には、熱酸化膜又は熱窒化膜、或いはこれらを併用した熱オキシナイトライド膜を用いることが好ましい(図28(f)、図30(d))。
次に、CMP法によりタングステン膜223が研磨され、溝内にのみタングステン膜223が残置される(図28(g)、図30(e))。
以上のようにして、主要な工程が終了し、ゲート酸化膜の膜厚が異なる第1および第2のトランジスタを比較的簡単な工程で作製される。この後、通常の配線工程等が行われ、半導体集積回路が完成される。
これにより、工程がさらに簡略化される。
次に、前述した第1実施形態〜第3実施形態により製造される第1および第2のトランジスタを適用した例を、図31、図32を参照して説明する。
第1実施形態〜第3実施形態と実質的に同一、あるいは対応する構成要素には、同一の参照符号を付している。
図31(a)は、この発明をDRAM(Dynamic Random Access Memory)混載デバイスに適用したものを示す。この半導体装置では、第1のトランジスタ(右側断面図)をDRAMのメモリセル部に、第2のトランジスタ(左側断面図)をロジック部に適用している。すなわち、メモリセル部には比較的厚いシリコン酸化膜203を用いることにより信頼性を確保し、ロジック部には薄いシリコン酸化膜231を用いることにより高速動作を確保している。
図31(b)は、この発明をFeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)混載デバイスに適用したものを示す。この半導体装置では、第1のトランジスタ(右側断面図)をロジック部に、第2のトランジスタ(左側断面図)をメモリセル部に適用している。すなわち、ロジック部にシリコン酸化膜203が適用され、メモリセル部には強誘電体膜232が適用されている。
図32(a)は、この発明をEEPROM(不揮発性メモリ)に適用したものを示す。この半導体装置では、第1のトランジスタ(右側断面図)をロジック部に、第2のトランジスタ(左側断面図)をメモリセル部に適用している。ロジック部にはシリコン酸化膜203が用いられ、メモリセル部には長期信頼性の要求されるトンネル酸化膜としてオキシナイトライド膜233が用いられている。また、メモリセル部のトランジスタのゲートにはタングステン膜の代わりにポリシリコン膜212aが用いられている。
図32(b)は、この発明をCMOS(complementary metal oxide semiconductor)高速ロジックデバイスに適用したものを示す。この半導体装置では、第1のトランジスタ(右側断面図)をnチャネルトランジスタに、第2のトランジスタ(左側断面図)をpチャネルトランジスタに適用している。すなわち、nチャネルトランジスタにはシリコン酸化膜203を用い、pチャネルトランジスタにはオキシナイトライド膜234を用いている。また、nチャネルトランジスタではゲート電極を構成するポリSi膜204にn型不純物が導入されており、pチャネルトランジスタではゲート電極がp型不純物を導入したポリシリコン膜212bおよびタングステン膜212cによって形成されている。これにより、従来、表面チャネル型p型トランジスタで問題になっていた、p型ポリSiからのゲート酸化膜を通しての基板へのボロンの染み出しを防止することができる。pチャネルトランジスタのゲートはp型不純物を導入したポリシリコン膜のみで形成してもよい。このような構成であっても、nチャネルトランジスタのゲート電極を構成するn型ポリシリコンと、pチャネルトランジスタのゲート電極を構成するp型ポリシリコンとは、タングステン膜214を介して確実に接続される。
このように、前述した第1実施形態〜第3実施形態によれば、ゲート絶縁膜の膜厚や膜種が異なる複数のトランジスタを簡単かつ信頼性の高い工程で作製することができる。これにより、高信頼性および高速性を両立させた集積回路を作製することが可能となる。
第4実施形態
次に、この発明に係る第4実施形態の半導体装置の製造方法を図33(a)から図37(e)を参照して説明する。
この第4実施形態の製造方法により製造される半導体装置の平面構成は、第1実施形態の説明で用いられた図8に示される構成と同様である。
図33(a)から図35(e)は、この発明の第4実施形態の製造方法における各工程を説明するための図面であり、図8に示される破断線XIa−XIaを右側に、破断線XIb−XIbの断面を左側に示す。図36(a)から図37(e)は、図8に示される破断線XIII−XIIIでの断面図を示す。
先ず、シリコン基板301にウェル領域(図示せず)やSTI構造の素子分離領域302が形成される。その後、第1のゲート酸化膜303が熱酸化法により形成され、その上に第1のゲート電極であるポリSi膜304と、窒化タングステン膜305、タングステン膜306が、CVD法あるいはスパッター法により、順次積層形成される。ポリSi膜304中のドーパント不純物は、成膜中に添加、あるいは成膜後にイオン注入法などで導入しても良い(図33(a)、図36(a))。
次に、ポリSi膜304/窒化タングステン膜305/タングステン膜306の積層膜が、リソグラフィ/ドライエッチング技術によりゲート配線に対応した形状にパターニングされる。続いて、パターニングされたゲート配線をマスクとして不純物のイオン注入が行われ、LDD(lightly Doped Drain Structure)層307が形成される。その後、パターニングされたゲート配線側壁にシリコン酸化膜308が形成される。続いて、このゲート配線構造をマスクとして不純物のイオン注入が行われる。その後、短時間で高温熱処理(RTA)を行うことでソース・ドレイン拡散領域309が形成される。続いて、CVD法により全面にシリコン酸化膜310が形成され、これによりゲート構造全域が覆われる。その後、タングステン膜306をストッパーとして化学的機械的研磨(CMP)法でシリコン酸化膜310が研磨され、全面が平坦化される(図33(b)、図36(b))。
次に、主として第1のトランジスタが形成される領域がフォトレジストで覆われ、第1のタングステン306/窒化タングステン305積層膜、およびポリSi膜304が、それぞれ例えば硫酸/過酸化水素水混合溶液およびヒドラジン溶液で順次除去される。これにより、第2のトランジスタのゲート電極が形成される領域に、溝部312が形成される。続いて、溝部312の底面に露出したゲート酸化膜を通してチャネルイオン注入を行った後、この露出領域のゲート酸化膜303が希フッ酸溶液で除去される(図34(c)、図36(c))。
次に、露出した領域(溝部312)のシリコン基板の表面に、水素/水蒸気の混合ガスを含んだ雰囲気中でタングステンを酸化せずにシリコンのみを選択酸化する方法(特願平第8−701716号)により第2のゲート酸化膜313が形成される。例えば、水素/水蒸気/希釈窒素の流量比を2.7:1:13.4とした雰囲気で温度850℃、圧力200torr、1時間の条件で、タングステンを酸化させずに、シリコン基板上に約50オングストロームのゲート酸化膜を形成することができる。その後、全面に第2のタングステン膜314が形成される。第2のゲート酸化膜を形成する際に通常の熱酸化法を用いるとポリSi膜304の断面のみならず、タングステン膜306も酸化されて酸化シリコン膜が形成され、第1のタングステン膜306と第2のタングステン膜314とが絶縁されてしまうが、選択酸化法を用いることで第1のタングステン膜306と第2のタングステン膜314とが接続される(図34(d)、図37(d))。
次に、CMP法で溝部以外に形成されたタングステン膜が除去され、溝部312内にのみタングステン膜が残置される(図35(e)、図37(e))。
以上のようにして主要な工程が終了し、ゲート配線構造が異なる第1および第2のトランジスタを簡単な工程で作成することができる。この後は、通常の配線工程が施され、半導体集積回路が完成される。
この第4実施形態によれば、前述した第1〜第3実施形態と同様に、ゲート絶縁膜やゲート電極の膜厚や膜種が異なる複数のトランジスタを簡単かつ信頼性の高い工程で作製することができる。これにより、高信頼性および高速性を両立させた集積回路を作製することが可能となる。特に、この第4実施形態では、選択酸化法を適用することにより、第1のトランジスタが形成される領域に、フォトレジストを設ける必要が無くなる。
第5実施形態
次に、この発明に係る第5実施形態の半導体装置の製造方法について、図38(a)から図42(e)を参照して説明する。
この第5実施形態の製造方法により製造される半導体装置の平面構成は、第1実施形態で用いられた図8に示される構成と同様である。
図38(a)から図40(e)は、この発明の第5実施形態の製造方法における各工程を説明するための図面であり、図8に示される破断線XIa−XIaを右側に、破断線XIb−XIbの断面を左側に示す。図41(a)から図42(e)は、図8に示される破断線XIII−XIIIでの断面図を示す。
先ず、シリコン基板401にウェル領域(図示せず)やSTI構造の素子分離領域402が形成される。その後、第1のゲート酸化膜403が熱酸化法で形成され、その上に第1のゲート電極であるポリSi膜404と、シリコン窒化膜405とがCVD法で積層形成される。ポリSi膜404中のドーパント不純物は、成膜中に添加、あるいは成膜後にイオン注入法などで導入しても良い(図38(a)、図41(a))。
次に、ポリSi膜404/シリコン窒化膜405の積層膜が、リソグラフィ/ドライエッチング技術によりゲート配線に対応した形状にパターニングされる。続いて、パターニングされたゲート配線をマスクとして不純物のイオン注入が行われ、LDD層407が形成される。その後、パターニングされたゲート配線側壁にシリコン酸化膜408が形成される。続いて、このゲート配線構造をマスクとして不純物のイオン注入が行われる。その後、熱処理を行うことでソース・ドレイン拡散領域409が形成される。この後、CVD法で全面にシリコン酸化膜410が形成され、これによりゲート構造全域が覆われる。その後、シリコン窒化膜405をストッパーとして化学的機械的研磨(CMP)法でシリコン酸化膜410が研磨され、全面が平坦化される(図38(b)、図41(b))。
次に、主として第1のトランジスタが形成される領域がフォトレジストで覆われ、Si3N4膜が、例えば加熱燐酸溶液で除去され、これにより溝部412が形成される(図39(c)、図41(c))。
次に、全面に窒化タングステン膜413およびタングステン膜414が順次形成される(図39(d)、図42(d))。
更に、CMP法で溝部412以外に形成された窒化タングステン膜413とタングステン膜414とを除去し、溝部412内にのみ窒化タングステン膜413とタングステン膜414とが残置される(図40(e)、図42(e))。
以上のようにして主要な工程が終了し、ゲート配線構造が異なる第1および第2のトランジスタを簡単な工程で作成することができる。この後は、通常の配線工程が行われ、半導体集積回路が完成される。
この第5実施形態によれば、ゲート絶縁膜が共通であるが、ゲート電極の膜厚や膜種が異なる複数のトランジスタを簡単かつ信頼性の高い工程で作製することができる。これにより、高信頼性および高速性を両立させた集積回路を作製することが可能となる。
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
1…素子分離領域、2…ゲート配線領域、3a、3b…拡散領域、201…シリコン基板、202…素子分離領域、203…ゲート酸化膜、204…ポリSi膜、205…シリコン窒化膜、207、208…シリコン酸化膜、209…フォトレジスト、210…溝部