JP4115171B2 - 乱数発生回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抵抗の熱雑音を利用する乱数発生回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、各種の分野で乱数発生器が利用されている。例えば、各種のシミュレーション、さいころの模擬、ゲームや抽選などにおいて乱数が使用され、さらに通信における暗号化などにおいても広く利用され、その重要性が増してきている。ここで、従来の乱数発生器では、通常所定の演算により、その周期が非常に長いことで擬似的に乱数と見なされるものを発生するものが一般的である。しかし、このような擬似的な乱数は、周期性を持ち、発生パターンを予想することができるという欠点がある。そこで、さらに完全な乱数を発生することが望まれている。
【0003】
特開平11−85472号公報には、各種のノイズから物理乱数を発生する回路についての提案がある。この手法によれば、物理乱数を発生することができ、演算により擬似乱数を発生するものに比べ、より好ましい乱数を得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように、上記公報に記載の手法によって、物理乱数を得ることができる。しかし、ここで利用される各種のノイズレベルは、通常それほど大きなものではない。特に、抵抗の熱雑音などは、集積回路などにおいても発生しているものであるが、かなり小さなものである。そこで、このようなノイズをうまく取り出す回路が必要になる。
【0005】
すなわち、熱雑音が重畳された信号を直接コンパレータなどに2値化しようとしても、DCオフセットの影響でうまく2値化できない。そこで、増幅した後に交流成分を取り出し、これを増幅するなど数多くの増幅器を行うことが必要となり、回路が大規模になってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、簡単な回路で効果的に物理乱数を発生することができる乱数発生回路を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも1つの抵抗と、この抵抗と直列接続されダイオード接続された第1トランジスタを含み、この抵抗とダイオード接続された第1トランジスタの接続点から前記抵抗を流れる電流の影響を受ける基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、前記第1トランジスタとカレントミラー接続され、前記基準電圧を制御端子に受け、基準電圧の変動を増幅して出力する第2トランジスタと、この第2トランジスタの出力が一対の入力端子のうちの一方のみに入力され、入力されてくる前記トランジスタの出力を増幅するオペアンプと、を有し、抵抗の熱雑音を増幅した出力を前記オペアンプの出力に得て、この出力に基づいて乱数を発生することを特徴とする。
【0008】
このように、基準電圧をトランジスタの制御端子に入力することで、トランジスタに流れる電流に応じて出力の直流成分を決定することができ、出力の直流成分の決定が容易になる。さらに、このトランジスタによって入力側の抵抗の熱雑音を増幅することもできる。従って、出力についての増幅が容易であり、増幅器の数を減らして、効果的な回路構成で乱数発生が行える。
【0009】
また、前記オペアンプの出力について、二値化するコンパレータをさらに有することが好適である。
【0010】
また、前記基準電圧発生回路の抵抗の第1トランジスタと接続される端子と反対側の端子は電源に接続され、前記第2トランジスタの出力端は前記基準電圧発生回路の抵抗とは別の抵抗を介し電源に接続されていることが好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る乱数発生回路の構成図であり、電源VCCには、抵抗Rsの一端が接続され、他端はベースコレクタが短絡されたNPNトランジスタQ1のコレクタに接続され、このトランジスタQ1のエミッタがグランドに接続されている。従って、トランジスタQ1はダイオードとして機能する。従って、電源VCCからの電流が、抵抗RsおよびトランジスタQ1を介しグランドに向けて流れる。ここで、コレクタベース間が短絡されたトランジスタQ1の電圧降下は、1VBE(ベースエミッタ間電圧)となる。また、抵抗Rsに流れる電流I1は、抵抗Rsの両端電圧を抵抗Rsの抵抗値Rsでわり算した、(VCC−VBE)/Rsとなる。
【0013】
抵抗RsとトランジスタQ1のコレクタとの接続点は、NPNトランジスタQ2のベースに接続されており、このトランジスタQ2のエミッタはグランドに接続され、コレクタは抵抗RLを介し電源VCCに接続されている。また、抵抗RLとトランジスタQ2の接続点が出力端になっている。
【0014】
この構成においては、トランジスタQ1と、トランジスタQ2はカレントミラーを構成している。従って、抵抗RLに流れる電流I1は、抵抗Rsに流れる電流と同じI1になる。
【0015】
従って、出力端における直流成分VDCは、電源VCCから抵抗RLでの電圧降下を減算した値になる。すなわち、
VDC=VCC−RL・I1=VCC−RL・(VCC−VBE)/Rs
である。
【0016】
例えば、RL=Rsに設定すると、VDC=VBEとなる。従って、本実施形態においては、抵抗RL、Rsの抵抗値の設定によって出力端における直流成分VDCを比較的自由に設定できる。また、この直流成分VDCは、トランジスタの増幅率hfeによらない。そこで、トランジスタのhfeの変動(バラツキ)によらず、直流成分VDCを適切に設定することができる。また、出力の直流成分VDCは電源電圧VCCに追従する。
【0017】
そして、本実施形態において、出力端からの出力には抵抗Rsの熱雑音およびトランジスタ(ダイオード)Q1の熱雑音およびショット雑音が重畳される。
【0018】
例えば、I1=100μAとすると、トランジスタQ1の抵抗RQ1は、RQ1=26mV/100μA=0.26×10-3×106=260Ωとなり、かなり小さな値となる。そこで、トランジスタ(ダイオード)Q1の熱雑音はかなり小さく、無視することができる。
【0019】
また、トランジスタ(ダイオード)Q1のショット雑音は、ショット雑音についての電流iが、i2=2q・I1・Δfであり、q(電子の電荷)=1.6×10-19、I1=100μAから、i2=3×10-23・Δf程度になる。
【0020】
従って、熱雑音の電圧電圧vは、v2=2q・I1・Δf・RQ12は、2×10-18×Δf程度になる。
【0021】
一方、抵抗による熱雑音の電圧vは、v2=4kT・Δf・Rs (k:ボルツマン定数=1.38×10-23)であり、抵抗Rs=20kΩとすると、v2=3.32×10-13Δf程度になる。
【0022】
従って、I1=100μA、抵抗Rs=20kΩという条件では、トランジスタ(ダイオード)Q1のショット雑音に比べ、抵抗Rsの熱雑音が十分大きく、抵抗Rsの熱雑音がトランジスタQ2によって増幅されることになる。なお、Δfは、熱雑音の周波数帯域である。
【0023】
そして、Δf=100kHzとすれば、v2=3.3×10-8となり、v=180μV程度になる。
【0024】
また、図1の回路においては、このようにして抵抗Rsにおいて発生する熱雑音がトランジスタQ2によって増幅され、かつこれにトランジスタQ2および抵抗RLの雑音が重畳されたものになる。
【0025】
すなわち、図1の回路は、ダイオードQ1を無視し、雑音のみに注目すれば、図2(a)に示すような回路と等価になる。この図2(a)の回路における雑音を含む小信号等価回路を図2(b)に示す。この図2(b)の等価回路において、出力電圧v0は、雑音源にのみよることになる。またCμは小さいので無視する。
【0026】
この回路において、入力抵抗Rs、トランジスタQ2におけるベース抵抗rb、エミッタ電流ib、負荷電流il、コレクタ電流icであり、発生する雑音は、下記式で与えられる。
【0027】
【数1】
V012=(gm・RL・Z/(Z+rb+Rs))2・Vs2
V022=(gm・RL・Z/(Z+rb+Rs))2・Vb2
V032=(gm・RL・Z・(Rs+rb)/(Z+rb+Rs))2・ib2
V042=(il・RL)2
V052=(ic・RL)2
全雑音電圧は、V01〜V05の和であり、下記の式で与えられる。
【0028】
【数2】
V02=(gm・RL・Z・(Vs2+Vb2+(Rs+rb)2)・ib2)2
/(Z+rb+Rs))2+RL2(il2+ic2)
となる。
【0029】
ここで、Vs2=4kT・Rs・Δf、il2=4kT・Δf/RLであり、またZ=rπ//(1/Jwc)である。これを代入することによって、
【数3】
V02/Δf=gm2・RL2・rπ2/(rπ+Rs+rb)2
・{4kT・Δf(Rs+rb)+2qIB(Rs+RB)2}
1/(1+f/f1)+RL2(4kT+2qIc)
となる。
【0030】
そして、rx=20kΩ、RL=10kΩ、Ic=100μA、rb=100Ω、gm=Ic・q/kT=100/3.8×10-3、rπ=β/gm=100/3.8×10-3=26×103をそれぞれ代入する。また、雑音の周波数特性は、Δf=100kHz以内では変化しないとして、f/f1=0とする。
【0031】
これによって、V0=145 (μV)が得られる。
【0032】
なお、この回路における出力の雑音の大きさの計算については、「超LSIのためのアナログ集積回路設計技術(下巻)」、P.R.グレイ/R.G.メイヤー共著、永田穣監訳、培風館出版、1990年11月30日発行の213頁〜232頁を参照されたい。
【0033】
このようにして、本実施形態の回路によれば、抵抗Rsの熱雑音をトランジスタQ2のベースに供給することで、出力に所定の直流成分VDCに雑音が重畳されたものを得ることができる。特に、直流成分VDCを安定してVCC/2(電源電圧の中間電圧)に維持することができるため、出力をそのままオペアンプで増幅することができる。
【0034】
すなわち、実際の乱数発生回路は、図3に示されるように、トランジスタQ2のコレクタ側の出力には、オペアンプOP1が接続され、ここで所定の増幅がなされる。特に、オペアンプOP1の入力における直流成分VDCが上述のように適切な値が設定されているため、オペアンプOP1において、適切な増幅が行える。
【0035】
このオペアンプOP1の出力は、直流カットコンデンサCを介し、コンパレータCMPに入力され、ここで基準電圧(この場合はグランド電圧)と比較され、2値化出力が得られる。なお、コンパレータCMPの出力は、プルアップ抵抗によってプルアップされている。
【0036】
コンパレータCMPの出力は、フリップフロップFFのデータ入力端に入力されており、このフリップフロップFFのクロック入力端に所望のクロックCLKが入力されている。そこで、フリップフロップFFには、クロックCLKの立ち上がりのタイミングでそのデータ入力端の信号がサンプリングされ、これがフリップフロップFFの出力に得られることになる。そして、基本的には、抵抗Rsの熱雑音に起因する雑音をフリップフロップFFにおいてサンプリングすることになり、周期性のない乱数であって、クロックCLKをデータクロックとしたものがフリップフロップFFの出力に得られる。
【0037】
図4は、他の実施形態の構成を示すものであり、この実施形態では、抵抗Rsと電源VCCの間に、2つのダイオードQ3、Q4が挿入配置されている。上述の式から明らかなように、出力負荷抵抗である抵抗RLを大きくした方が、熱雑音を大きくすることができる。図4の構成によれば、抵抗RLをRs以上に設定することが可能になる。すなわち、図1の構成では、Rs=RL以上に抵抗RLの値を設定すると、トランジスタQ2が飽和してしまい、電流量をI1に維持できない。図4の構成では、2つのダイオードQ3、Q4により抵抗Rsに加わる電圧を小さくすることができ、これによって電流I1を減少することができる。これによって、抵抗RL大きくすることができ、出力の雑音を大きくすることができる。
【0038】
また、トランジスタQ1とトランジスタQ2のトランジスタサイズを変更することも好適である。トランジスタQ2のトランジスタサイズをトランジスタQ1に比べ大きくすることによって、トランジスタQ2に流れる電流を大きくすることができ、gmを大きくすることができ、出力の雑音を大きくすることができる。さらに、この場合には入力抵抗である抵抗Rsを大きくすることができ、抵抗Rsにおいて発生する熱雑音を大きくすることができ、出力の雑音を大きくすることができる。
【0039】
図5には、さらに他の実施形態の構成が示されており、この構成ではトランジスタQ2へのベース電流供給ラインに抵抗Rs2が挿入配置されている。この構成によれば、抵抗Rs2の熱雑音がさらに重畳されることになり、出力の雑音を大きくすることができる。
【0040】
図6には、さらに他の実施形態の構成が示されている。この構成では、ダイオード接続のトランジスタQ1に代えてトランジスタQ5が採用され、このトランジスタQ5のコレクタベース間をトランジスタQ6によって接続している。すなわち、コレクタが電源VCCに接続されたトランジスタQ6のベースをトランジスタQ5のコレクタに接続し、エミッタをトランジスタQ5のベースに接続している。これによって、図1と同様の作用効果が得られる。さらに、このような通常のトランジスタ回路において、よく知られた変形や追加は数多くあり、これらを適宜採用することができる。
【0041】
図7には、さらに他の実施形態の構成を示されている。この構成では、トランジスタQ1に代えて抵抗Rs3を採用するとともに、トランジスタQ2のベースに至る経路に抵抗Rs2を設けている。この構成によれば、抵抗Rs2によって、ベース電流IBを制御することができ、出力の直流成分VDC=VCC−Ic・RL=IB・hfe・RLとなる。従って、直流成分VDCがQ2のhfeに影響されるという問題があるが、直流成分VDCを設定することができ、また熱雑音についての出力を得ることができる。特に、トランジスタQ2のエミッタ抵抗をreとした場合に、R/reに基づく雑音を出力に得ることができる。
【0042】
図8には、図1の実施形態におけるダイオードQ1およびトランジスタQ2として、PNP型のものを採用した例を示している。すなわち、PNP型のトランジスタQ1のエミッタを電源VCCに接続し、ベースコレクタ間を短絡するとともに、コレクタを抵抗Rsを介しグランドに接続している。そして、トランジスタQ1のベースにベースが接続されたトランジスタQ2のエミッタを電源VCCに接続し、コレクタを抵抗RLを介しグランドに接続している。この例においても、図1と同様の作用効果が得られる。また、上述の例では、トランジスタとしてバイポーラトランジスタを採用したが、MOSFETなども同様にして利用することができる。
【0043】
なお、本実施形態の乱数発生回路は、半導体集積回路として構成することが好適であり、前記熱雑音を発生する抵抗は、ポリシリコン構成することが好適である。ポリシリコンは負の温度特性を持ち、温度が上昇すると抵抗値が減少する。一方、抵抗の熱雑音の大きさ(電圧v0の2乗)は、v02=4kT・R・Δf(k:ボルツマン定数、T:絶対温度、R:抵抗の抵抗値、Δf:雑音の周波数帯域)と表すことができる。従って、抵抗値Rが温度の上昇に従って減少することで、4kTの上昇分を相殺することができ、発生する熱雑音が温度により変動することを防止することができる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、基準電圧をトランジスタの制御端子に入力することで、トランジスタに流れる電流に応じて出力の直流成分を決定することができ、出力の直流成分の決定が容易になる。さらに、このトランジスタによって入力側の抵抗の熱雑音を増幅することもできる。従って、出力についての増幅が容易であり、増幅器の数を減らして、効果的な回路構成で乱数発生が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態の回路構成を示す図である。
【図2】 等価回路の構成を示す図である。
【図3】 乱数発生回路全体の構成を示す図である。
【図4】 他の実施形態の回路構成を示す図である。
【図5】 さらに他の実施形態の構成を示す図である。
【図6】 さらに他の実施形態の構成を示す図である。
【図7】 さらに他の実施形態の構成を示す図である。
【図8】 さらに他の実施形態の構成を示す図である。
【符号の説明】
Rs,RL 抵抗、Q1,Q2 トランジスタ。
Claims (3)
- 少なくとも1つの抵抗と、この抵抗と直列接続されダイオード接続された第1トランジスタを含み、この抵抗とダイオード接続された第1トランジスタの接続点から前記抵抗を流れる電流の影響を受ける基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、
前記第1トランジスタとカレントミラー接続され、前記基準電圧を制御端子に受け、基準電圧の変動を増幅して出力する第2トランジスタと、
この第2トランジスタの出力が一対の入力端子のうちの一方のみに入力され、入力されてくる前記トランジスタの出力を増幅するオペアンプと、
を有し、
抵抗の熱雑音を増幅した出力を前記オペアンプの出力に得て、この出力に基づいて乱数を発生する乱数発生回路。 - 請求項1に記載の回路において、
前記オペアンプの出力について、二値化するコンパレータをさらに有する乱数発生回路。 - 請求項1または2に記載の回路において、
前記基準電圧発生回路の抵抗の第1トランジスタと接続される端子と反対側の端子は電源に接続され、
前記第2トランジスタの出力端は前記基準電圧発生回路の抵抗とは別の抵抗を介し電源に接続されている乱数発生回路。
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