JP4114334B2 - 転がり軸受 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、たとえば、振動,音,温度等を検出するセンサを有する転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、軸受の温度や軸受から発生する振動などを検出するセンサを備え、このセンサが出力する信号でもって、軸受の異常等を検知できるようにした転がり軸受がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このセンサのための電力供給用ハーネスを外部に接続する必要があることから、ワイヤレス化の障害となっていた。
【0004】
そこで、この発明の目的は、センサのための電力供給用ハーネスを外部に接続する必要がなく、ワイヤレス化を図れる転がり軸受を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の転がり軸受は、転動体と、この転動体が転動する軌道面を有する回転輪および固定輪と、センサとを備え、
転がり軸受の内部と外部との温度差に応じて起電力を発生し、上記センサに電力を供給する熱起電素子を備え、
上記熱起電素子が温度センサを兼ねていて、上記熱起電素子が出力する起電力を上記温度差を表す信号とし、
さらに、上記回転輪と固定輪との間に配置したシール部を備え、
上記熱起電素子は、上記シール部に嵌め込まれて上記シール部と一体化していると共に軸方向外側の面が外気に露出していることを特徴としている。
【0006】
この請求項1の発明の転がり軸受では、転がり軸受の内部と外部との温度差に応じて起電力を発生する熱起電素子が、センサに電力を供給する発電機構となるから、センサのための電力供給用ハーネスを外部に接続する必要がなく、センサが出力する信号を無線送信する回路を設けることで、ワイヤレス化を図れる。
【0007】
また、請求項1の発明の転がり軸受では、上記熱起電素子が出力する起電力を上記温度差を表す信号としたから、上記熱起電素子が温度センサを兼ねることができる。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の転がり軸受において、
上記センサが出力する信号を無線送信する送信回路を有し、上記熱起電素子は上記送信回路に電力を供給することを特徴としている。
【0009】
この請求項2の発明の転がり軸受では、上記センサが出力する信号は、上記熱起電素子によって電力が供給される送信回路から無線送信されるから、ワイヤレス化を促進できる。
【0010】
この請求項2の転がり軸受では、上記熱起電素子が、温度差を表す信号を出力する温度センサとしての役割と、上記送信回路に電力を供給する電力源としての役割とを兼ねることができる。
【0011】
また、請求項3の発明の転がり軸受は、請求項1に記載の転がり軸受において、上記シール部は、一端が上記固定輪の内周面の軸方向一端部に形成された環状溝に固定される芯金およびゴムシールからなり、
上記熱起電素子は、上記ゴムシールの周方向所定位置に形成された開口に断熱部材を介して挟まれていると共に軸方向内側の面が上記芯金に固定されていることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0013】
図1に、この発明の転がり軸受の実施形態の断面を示す。この実施形態の転がり軸受は、回転輪としての内輪1と、固定輪としての外輪2と、内輪1の軌道面1Aと外輪2の軌道面2Aとの間に周方向に所定間隔を隔てて複数配列された玉3と、この玉3を保持する保持器5とを備えている。
【0014】
上記内輪1と外輪2との間には、軸方向の両端にシール部6,7が配置されている。このシール部6は、芯金11とゴムシール12からなり、その基部6Aは、外輪2の内周面の軸方向の一端に形成された環状溝8に固定され、先端部6Bは内輪1の外周面に摺接している。また、シール部7は、芯金13とゴムシール14からなり、その基部7Aは、外輪2の内周面の軸方向の他端に形成された環状溝10に固定され、先端部7Bは内輪1の外周面に摺接している。シール部6と7の間には、潤滑剤として例えばグリースが封入されている。
【0015】
また、シール部7は、ゴムシール14の周方向の所定位置に形成されたゴムシール14の開口16に楔形状の断熱部材28,29が嵌合されている。熱起電素子としてのペルチェ素子15は、この断熱部材28と29に挟まれ、あるいは囲まれた状態で、その内側面15Aが芯金13に、例えば接着により固定されている。
【0016】
このペルチェ素子15の外側面15Bは軸方向外側を向いている。このペルチェ素子15は、内側面15Aと外側面15Bとの温度差に応じて起電力を発生し、その起電力を出力線18に出力する。この出力線18は、コンデンサ20に接続され、このコンデンサ20は電気配線30で振動センサ21に接続されている。
【0017】
このコンデンサ20と振動センサ21は、取り付け板22の径方向部23の内側面23Aに固定されている。この内側面23Aは上記玉3に向いている。また、この取り付け板22の軸方向部24は、外輪2の軸方向の端面2Cに固定されている。また、この取り付け板22の径方向部23の外側面23Bには、カバー部25が固定され、このカバー部25の底部25Aは内輪1の軸方向の端面1Cに対して所定の隙間を隔てており、軸方向に延在している。
【0018】
図3に示すように、このカバー部25は、上記コンデンサ20および振動センサ21を周方向の両側から覆う覆い部25C,25Dを有している。
【0019】
また、上記出力線18は、信号線19に接続されており、ペルチェ素子15から信号線19に出力された電圧は温度信号として外部に取り出される。
【0020】
なお、この信号線19を、図1に一点鎖線で示す信号無線送信部26に接続して、上記温度信号を無線送信するようにすれば、外部に接続される電力供給用ハーネスだけでなく、信号線もなくすることができ、ワイヤレス化を実現できる。
【0021】
この実施形態の転がり軸受によれば、熱起電素子としてのペルチェ素子15が、その内側面15Aの温度と外側面15Bの温度との温度差に応じて、起電力を発生する。この温度差と起電力との関係の一例を、図2に示す。この実施形態によれば、シール部7にペルチェ素子15を配置したことで、シール部7の外側の温度と内側の温度(特に、潤滑剤の温度)を感知し易くなり、発電効率の向上を図れるとともに温度差検出精度の向上を図れる。
【0022】
この実施形態では、このペルチェ素子15が、出力線18からコンデンサ20に電力を供給し、このコンデンサ20から振動センサ21に電力を供給するから、振動センサ21のための電力供給用ハーネスを外部に接続する必要がなく、ワイヤレス化を図れる。なお、この振動センサ21は、外輪2から取り付け板22を経由して伝達される振動を検出して、この振動を表す信号を出力する。この信号は、図示しない信号線から外部へ伝送される。もしくは、上記信号は上記信号無線送信部26から無線信号として外部へ伝送される。
【0023】
また、この実施形態では、上記ペルチェ素子15が温度センサを兼ねていて、上記ペルチェ素子15が出力する起電力を上記温度差を表す信号として、信号線19から外部に伝送する。したがって、上記ペルチェ素子15が温度センサを兼ねることができる。
【0024】
また、上述したように、信号無線送信部26を取り付け板22に固定し、この信号送信部26に信号線19を接続して、この信号無線送信部26から上記温度差を表す信号を外部に無線送信するようにすれば、ワイヤレス化を実現できる。
【0025】
また、図3に示すように、上記実施形態では、シール部7の開口16を周方向に複数個形成して、この複数個の開口16に複数個のペルチェ素子15を配置して配線9でもって直列接続している。これにより、出力電圧を増加させることができる。なお、この実施形態では、カバー部25が1つのペルチェ素子15を覆うようにしたが、このカバー部25を周方向の全周に渡って延長させ、すべてのペルチェ素子を覆うようにしてもよい。もっとも、図3に示すように、カバー部25で図1に示した1つのペルチェ素子15だけを覆い、他のペルチェ素子15の外側面15Bは、外気に露出して触れさせた方が空冷効果により冷えるから、外側面15Bと内側面15Aとの温度差を増すことができ、感度の向上を図れる。
【0026】
また、この実施形態では、シール部7にペルチェ素子15を嵌め込んで一体化したが、固定輪としての外輪2の外周面2Bにペルチェ素子15を固定した場合は参考例となる。この場合、外周面2Bにペルチェ素子15の内側面15Aを固定する。また、図1に破線で示すように、外輪2の外周面2Bに凹部27を形成し、この凹部27にペルチェ素子15を配置して、この凹部27の底面27Aに、ペルチェ素子15の内側面15Aを固定した場合は参考例となる。この場合、ペルチェ素子15の内側面15Aを軌道面2Aに接近させることができ、外側面15Bを空冷できるから、軌道面2Aの温度を感知し易くなるとともに、検出する温度差を増大でき、出力電圧を大きくできるから、出力電力の増大と温度差検知感度の向上を図れる。
【0027】
また、上記実施形態では、内輪1を回転輪とし、外輪2を固定輪としたが、内輪1を固定輪とし外輪2を回転輪としてもよい。この場合には、ペルチェ素子15を内輪1に固定すればよい。また、上記実施形態では、熱起電素子としてペルチェ素子を用いたが、軸受の内部と外部の温度差に応じて起電力を発生する素子であれば、この発明の熱起電素子として採用できる。また、上記実施形態では、振動センサ21を備えたが、熱起電素子から電力を供給するセンサとしては、内輪と外輪の相対回転を検出する回転センサや、軸受から発生する超音波を検出する超音波センサや温度センサであってもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1の発明の転がり軸受は、センサに電力を供給する発電機構となるから、センサのための電力供給用ハーネスを外部に接続する必要がなく、センサが出力する信号を無線送信する回路を設けることで、ワイヤレス化を図れる。
【0029】
また、請求項1の発明の転がり軸受では、上記熱起電素子が出力する起電力を上記温度差を表す信号としたから、上記熱起電素子が温度センサを兼ねることができる。
【0030】
また、請求項2の発明の転がり軸受では、上記センサが出力する信号は、上記熱起電素子によって電力が供給される送信回路から無線送信されるから、ワイヤレス化を促進できる。
【0031】
また、請求項の発明の転がり軸受では、上記熱起電素子が、温度差を表す信号を出力する温度センサとしての役割と、上記送信回路に電力を供給する電力源としての役割とを兼ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の転がり軸受の実施形態の断面図である。
【図2】 上記実施形態が備えるペルチェ素子の特性の一例を示す図である。
【図3】 上記実施形態を軸方向に見た様子を示す部分側面図です。
【符号の説明】
1…内輪、1A…軌道面、2…外輪、2A…軌道面、3…玉、5…保持器、
6,7…シール部、15…ベルチェ素子、16…開口、18…出力線、
19…信号線、20…コンデンサ、21…振動センサ、22…取り付け板、
25…カバー部、26…信号無線送信部。

Claims (3)

  1. 転動体と、この転動体が転動する軌道面を有する回転輪および固定輪と、センサとを備え、
    転がり軸受の内部と外部との温度差に応じて起電力を発生し、上記センサに電力を供給する熱起電素子を備え、
    上記熱起電素子が温度センサを兼ねていて、上記熱起電素子が出力する起電力を上記温度差を表す信号とし、
    さらに、上記回転輪と固定輪との間に配置したシール部を備え、
    上記熱起電素子は、上記シール部に嵌め込まれて上記シール部と一体化していると共に軸方向外側の面が外気に露出していることを特徴とする転がり軸受。
  2. 請求項1に記載の転がり軸受において、
    上記センサが出力する信号を無線送信する送信回路を有し、上記熱起電素子は上記送信回路に電力を供給することを特徴とする転がり軸受。
  3. 請求項1に記載の転がり軸受において、
    上記シール部は、一端が上記固定輪の内周面の軸方向一端部に形成された環状溝に固定される芯金およびゴムシールからなり、
    上記熱起電素子は、上記ゴムシールの周方向所定位置に形成された開口に断熱部材を介して挟まれていると共に軸方向内側の面が上記芯金に固定されていることを特徴とする転がり軸受。
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