JP4112704B2 - 合成樹脂成型品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも一方の表面が耐擦傷性を有する合成樹脂成型品の製造方法に係り、特に、耐擦傷性被膜と基材原料との一体化を良好に行うようにした合成樹脂成型品の製造方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、LCD、PDP、EL、CRT、LED、VFDなどの画像表示装置に使用されるフィルタ、電子表示板、OA、AV、大型ディスプレイパネルなどに使用される防眩保護フィルタ、計測機器類の表示部に使用されるカバー、あるいは、ペン入力コンピュータ用フィルタ、ナビゲーション用フィルタ、干渉縞防止など各種の用途に合成樹脂成型品が用いられている。そして、この種の合成樹脂成型品は、光透過性を備えるとともに、画像表示部の前面における外光の反射による不快感あるいは作業能率の低下という問題点に対処するために、ノングレア性と称される反射光による眩しさを抑制することのできるものが用いられている。また、合成樹脂は金属と比較して硬度が低いため、合成樹脂成型品の表面を擦ると傷がつきやすく、このため、この種の合成樹脂成型品としては耐擦傷性を有するものが望まれていた。
【0003】
このような点に関連するものとして、ノングレア性と耐擦傷性を共有する合成樹脂成型品を製造する方法が特公平1−20969号公報に記載されている。
【0004】
この公報記載の合成樹脂成型品の製造方法は、あらかじめ微小な凹凸が形成された鋳型成形面に耐擦傷性被膜原料を塗布し、後から注入される基材樹脂原料によって膨潤もしくは溶解しない程度にこの被膜原料を十分に重合硬化せしめて鋳型成形面に被膜をあらかじめ形成し、ついで、鋳型内に基材樹脂原料を注入して重合し、前記被膜を基材樹脂側に転移するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この公報記載の合成樹脂成型品の製造方法は、鋳型成形面に塗布した耐擦傷性被膜原料を十分に重合硬化せしめて鋳型成形面に被膜をあらかじめ形成するようになっているため、重合硬化に大きなエネルギが必要とされるし、また、全体の工程が煩雑で生産性が悪く、合成樹脂成型品が高価になるおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような従来のものにおける問題点を克服し、少なくとも一方の表面が耐擦傷性を有し、しかも耐擦傷性被膜と基材樹脂とを強固に一体化することのできる合成樹脂成型品を生産性よく安価に製造することのできる合成樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、少なくとも一方の表面に模様が形成され、かつ、この表面が耐擦傷性を有し、しかも耐擦傷性被膜と基材樹脂とを強固に一体化することのできる合成樹脂成型品の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するため請求項1に係る本発明の合成樹脂成型品の製造方法の特徴は、メタクリル酸メチルからなる耐擦傷性被膜原料を第1鋳型形成材の表面に塗布し、前記耐擦傷性被膜原料の表面を空気に露出した状態でこの耐擦傷性被膜原料を前記第1鋳型形成材との接合面側から前記耐擦傷性被膜原料の上部の反応度が60%〜90%未満となるように一部重合させて耐擦傷性被膜を形成し、前記耐擦傷性被膜が鋳型の内側に位置するように前記第1鋳型形成材と第2鋳型形成材とをガスケットにより間隔を有するように配設し、前記耐擦傷性被膜、第2鋳型形成材およびガスケットからなる鋳型の内側にメタクリル酸メチルからなる基材樹脂原料を充填し、前記基材樹脂原料および前記耐擦傷性被膜をラジカル重合により重合して一体化することにより合成樹脂成型品を形成する点にある。そして、このような構成を採用したことにより、空気の重合禁止効果を利用して耐擦傷性被膜原料を第1鋳型形成材との接合面側から一部重合させ、その後、基材樹脂原料および前記耐擦傷性被膜を重合させて強固に一体化して、片面が耐擦傷性を有する合成樹脂成型品を製造することができるし、いずれもメタクリル酸メチルからなる耐擦傷性被膜原料および基材樹脂原料を使用しているので、耐擦傷性被膜原料の部分的な重合時に残留してつぎの基材樹脂原料と耐擦傷性被膜原料の重合時に寄与し、強固に一体化できる。
【0009】
請求項2に係る本発明の合成樹脂成型品の製造方法の特徴は、第1鋳型形成材の耐擦傷性被膜原料が塗布される表面に凹凸からなる模様をあらかじめ形成した点にある。そして、このような構成を採用したことにより、一方の表面に模様の形成された合成樹脂成型品を製造することができる。
【0010】
請求項3に係る本発明の合成樹脂成型品の製造方法の特徴は、模様を微細な多数の凹凸からなる梨地模様とした点にある。そして、このような構成を採用したことにより、ノングレア性を有する合成樹脂成型品を製造することができる。
【0011】
請求項4に係る本発明の合成樹脂成型品の製造方法の特徴は、メタクリル酸メチルからなる第1耐擦傷性被膜原料を第1鋳型形成材の表面に塗布し、前記第1耐擦傷性被膜原料の表面を空気に露出した状態でこの第1耐擦傷性被膜原料を前記第1鋳型形成材との接合面側から前記耐擦傷性被膜原料の上部の反応度が60%〜90%未満となるように一部重合させて第1耐擦傷性被膜を形成し、メタクリル酸メチルからなる第2耐擦傷性被膜原料を第2鋳型形成材の表面に塗布し、前記第2耐擦傷性被膜原料の表面を空気に露出した状態でこの第2耐擦傷性被膜原料を前記第2鋳型形成材との接合面側から前記耐擦傷性被膜原料の上部の反応度が60%〜90%未満となるように一部重合させて第2耐擦傷性被膜を形成し、前記各耐擦傷性被膜が鋳型の内側に位置するように前記第1鋳型形成材と第2鋳型形成材とをガスケットにより間隔を有するように配設し、前記両耐擦傷性被膜およびガスケットからなる鋳型の内側にメタクリル酸メチルからなる基材樹脂原料を充填し、前記基材樹脂原料および前記両耐擦傷性被膜をラジカル重合により重合して一体化することにより合成樹脂成型品を製造する点にある。そして、このような構成を採用したことにより、両面が耐擦傷性を有する合成樹脂成型品を製造することができるし、いずれもメタクリル酸メチルからなる耐擦傷性被膜原料および基材樹脂原料を使用しているので、耐擦傷性被膜原料の部分的な重合時に残留してつぎの基材樹脂原料と耐擦傷性被膜原料の重合時に寄与し、強固に一体化できる。
【0012】
請求項5に係る本発明の合成樹脂成型品の製造方法の特徴は、両鋳型形成材の耐擦傷性被膜原料が塗布される表面の少なくとも一方に凹凸からなる模様をあらかじめ形成した点にある。そして、このような構成を採用したことにより、一方または両方の表面に模様の形成された合成樹脂成型品を製造することができる。
【0013】
請求項6に係る本発明の合成樹脂成型品の製造方法の特徴は、模様を微細な多数の凹凸からなる梨地模様とした点にある。そして、このような構成を採用したことにより、少なくとも片面にノングレア性を有する合成樹脂成型品を製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1ないし図5は本発明の実施形態を示すものであり、本実施形態の製造方法により製造される合成樹脂成型品は片面のみが耐擦傷性を有するものである。
【0017】
図1において、第1鋳型形成材をなすガラス板1の上面1aには、微細な凹凸からなる模様2があらかじめ形成されている。そこで、このガラス板1の上面1Aに、図2に示すように、一例としてポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂の混合物を含む耐擦傷性被膜原料3を塗布する。なお、前記模様2としては、合成樹脂成型品にノングレア性を得るためには、前述した微細な凹凸からなる模様が必要であるが、罫線、柄、その他の各種模様とすることが可能である。また、ガラス板1の上面1Aを平面として、無模様で平滑面からなる耐擦傷性被膜を形成することも可能である。
【0018】
ついで、図3に示すように、上面1Aに耐擦傷性被覆原料3を塗布したガラス板1の上方に紫外線(UV)を照射するための複数のメタハライドランプ4,4を配設し、各メタハライドランプ4からの光を前記耐擦傷性被膜原料3に向けて照射する。このとき、耐擦傷性被膜原料3の上面を被覆する透明フィルムは配置せず、耐擦傷性被膜原料3の上面を空気に露出しておく。これは、空気による重合禁止効果を得るためであり、これが本発明の特徴である。
【0019】
前述したようにして各メタハライドランプ4からの光を前記耐擦傷性被膜原料3に向けて照射すると、前記耐擦傷性被膜原料3の上部は、空気による重合禁止効果により重合がそれほど進まず、被膜原料3の成分の蒸発が生じるのに対し、ガラス板1の近傍となる前記耐擦傷性被膜原料3の下部は空気の影響を受けないので、重合が十分進行して硬化する。
【0020】
そこで、前記各メタハライドランプ4からの光の照射は、前記耐擦傷性被膜原料3の重合により形成される耐擦傷性被膜3Aの上面が爪で傷がつく程度の硬度に達するまで行われる。このとき、重合の進まない前記耐擦傷性被膜原料3の上部の反応度は、60%〜90%未満が好ましく、この範囲内でも、特に65%〜80%が好ましい。
【0021】
そして、形成された耐擦傷性被膜3Aの膜厚は、ガラス板1上に塗布された耐擦傷性被膜原料3の膜厚よりはるかに薄い膜厚とされている。これは、耐擦傷性被膜原料3の成分がメタハライドランプ4からの光の照射により前述したように一部蒸発するからである。
【0022】
つぎに、図4に示すように、第2鋳型形成材をなす上面5aが平滑面とされている他のガラス板5を用意し、このガラス板5の上面5aの外周縁に弾性変形しうる軟質塩化ビニール製のガスケット6を環状となるように周設し、このガスケット6上に、前記耐擦傷性被膜3Aを前記ガラス板1とともに耐擦傷性被膜3Aが下向きとなるように載置する。
【0023】
そして、鋳型を構成する前記耐擦傷性被膜3A、ガラス板5およびガスケット6により閉鎖された密閉空間7に基材樹脂原料としてのアクリル樹脂モノマ8を充填する。なお、アクリル樹脂モノマに代えてアクリル樹脂部分重合物を用いてもよい。そして、これらの全体を約65℃の温度の水中に約5時間浸漬するか、あるいは、約65℃の温度の空気中に約2〜5時間放置し、その後、約120℃の温度の熱風循環炉(図示せず)内で約2時間加熱し、充填されたアクリル樹脂モノマ8により未重合の耐擦傷性被膜原料3を膨潤してアクリル樹脂モノマ8および耐擦傷性被膜原料3をラジカル重合により十分に重合する。
【0024】
すると、前記アクリル樹脂モノマ8が十分な硬度を有する基材8Aとなり、この基材8A上には、十分な強度を有する耐擦傷性被膜3Aが一体的に積層されることになる。しかも、耐擦傷性被膜3Aの表面には微細な凹凸模様9が形成されて全体として梨地模様を構成しているので、完成した合成樹脂成型品10は、耐擦傷性のほかノングレア性をも有している。
【0025】
なお、十分硬化した耐擦傷性被膜3Aおよび基材8Aは、両ガラス板1,5から簡単に剥離される。
【0026】
このようにして製造された合成樹脂成型品10は、耐擦傷性被膜3Aの表面が耐擦傷性を有し、しかもノングレア性を有しているので、各種OA機器のフィルタやカバーとして最適である。
【0027】
また、本実施形態の合成樹脂成型品の製造方法は、空気による重合禁止効果を利用して耐擦傷性被膜3Aを完全に重合しない状態、すなわち膨潤しうる状態にとどめておき、その上で、隣接配置した基材樹脂原料であるアクリル樹脂モノマ8とともに完全に重合させて一体化するので、耐擦傷性被膜3Aと基材8Aとが剥離しない強固な一体化状態となる。
【0028】
なお、前述した実施形態は、合成樹脂成型品10の片面のみに耐擦傷性をもたせる場合の実施形態であったが、つぎに、合成樹脂成型品10の両面に耐擦傷性をもたせる場合の実施形態について説明する。本実施形態の説明は、便宜上、前述した実施形態の説明に使用した図1ないし図5を再度使用して説明する。
【0029】
両面に耐擦傷性を有する合成樹脂成型品を製造するには、前述した図1ないし図3の工程を異なる2枚のガラス板1,1について2回繰り返して行う。
【0030】
ついで、図4および図5の工程を行うのであるが、このとき、第2鋳型形成材をなす上面5aが平滑面とされている他のガラス板5に代えて、図6に示すように、耐擦傷性被膜3Aの形成されたガラス板1を耐擦傷性被膜3Aが上向きとなるように用いる。
【0031】
すなわち、各ガラス板1,1の耐擦傷性被膜3Aと、これらの両耐擦傷性被膜3Aの外周縁に環状となるように周設された軟質塩化ビニール製のガスケット6により閉鎖された密閉空間7に基材樹脂原料としてのアクリル樹脂モノマ8を充填する。そして、これらの全体を約65℃の温度の水中に約5時間浸漬し、その後、約120℃の温度の熱風循環炉(図示せず)内で約2時間加熱し、アクリル樹脂モノマ8および未重合の耐擦傷性被膜原料3を十分に重合する。
【0032】
すると、前記アクリル樹脂モノマ8が十分な硬度を有する基材8Aとなり、この基材8Aの上下には、それぞれ十分な強度を有する耐擦傷性被膜3A,3Aが一体的に積層されることになる。しかも、各耐擦傷性被膜3Aの表面には微細な凹凸模様9が形成されて全体として梨地模様を構成しているので、図7に示す完成した合成樹脂成型品10は、耐擦傷性のほかノングレア性をもそれぞれ両面において有している。
【0033】
【実施例】
つぎに、前述した図1ないし図5に工程を示した合成樹脂成型品10の製造方法の具体的な実施例について説明する。
【0034】
実施例1
配合
ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂
およびアクリル系樹脂の混合物 40部
メタクリル酸メチル 60部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.2部
よりなる耐擦傷性被膜原料3を、表面が平均30μm程度の外径で、0.1μm程度の深さとなるように微細な凹凸模様2を形成された面積460mm×610mm、厚さ5mmのガラス板1の表面に約100μmの厚さに塗布した。
【0035】
ついで、このガラス板1に対し大気中において40cm間隔で2本配列されたメタハライドランプ4により120W/cmで照射距離150mmとして15秒間照射し、耐擦傷性被膜3Aの形成を行った。このとき形成された耐擦傷性被膜3Aは、約20μmの膜厚で、爪により傷がつく程度の硬度であった。
【0036】
このようにして処理したガラス板1を耐擦傷性被膜3Aが形成された面が内側に位置するようにして表面が平滑な未処理の他のガラス板5と対向させ、2mmの厚みになるように調整された軟質塩化ビニール製のガスケツト6を周設して鋳型とした。
【0037】
この鋳型に、
メタクリル酸メチル部分重合物 100部
紫外線吸収剤(2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール) 0.05%
2,2アゾビスイソブチルニトリル 0.05%
からなる基材樹脂原料8を注入した後、65℃の浴槽に5時間浸漬し、ついで、120℃の熱風循環炉中で2時間加熱して基材樹脂原料8の全体および耐擦傷性被膜3Aの未重合部分を重合させた。冷却して両ガラス板1,5を離型後、合成樹脂成型品10の表面の硬度を確認したところ、鉛筆硬度6Hの耐擦傷性を示した。
【0038】
実施例2
配合
ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂
およびアクリル系樹脂の混合物 45部
メタクリル酸メチル 55部
ペンジルジメチルケターノレ 1.2部
よりなる耐擦傷性被膜原料3を、表面が平均30μm程度の外径の凹凸模様2を形成された面積460mm×610mm、厚さ6mmのガラス板1の表面に約100μmの厚さに塗布した。
【0039】
ついで、このガラス板1に対し大気中において40cm間隔で2本配列されたメタハライドランプ4により120W/cmで照射距離150mmとして25秒間照射し、耐擦傷性被膜3Aの形成を行った。このとき形成された耐擦傷性被膜3Aは、約30μmの膜厚で、スチールウール#0000により傷がつく程度の硬度であった。
【0040】
このようにして処理したガラス板1を耐擦傷性被膜3Aが形成された面が内側に位置するようにして表面が平滑な未処理の他のガラス板5と対向させ、2mmの厚みになるように調整された軟質塩化ビニール製のガスケツト6を周設して鋳型とした。
【0041】
この鋳型に、
メタクリル酸メチル部分重合物 100部
紫外線吸収剤(2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール) 0.05%
着色染料 0.02%
ラウリルペルオキサイド 0.05%
からなる基材樹脂原料8を注入した後、65℃の浴槽に5時間浸漬し、ついで、120℃の熱風循環炉中で2時間加熱して基材樹脂原料8の全体および耐擦傷性被膜3Aの未重合部分を重合させた。冷却して両ガラス板1,5を離型後、合成樹脂成型品10の表面の硬度を確認したところ、鉛筆硬度6Hの耐擦傷性を示した。
【0042】
実施例3
配合
ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂
およびアクリル系樹脂の混合物 30部
メタクリル酸メチル 70部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.2部
よりなる耐擦傷性被膜原料3を、表面が平均30μm程度の外径の凹凸模様2を形成された面積460mm×610mm、厚さ6mmのガラス板1の表面に約100μmの厚さに塗布した。
【0043】
ついで、このガラス板1に対し大気中において40cm間隔で2本配列されたメタハライドランプ4により120W/cmで照射距離150mmとして10秒間照射し、耐擦傷性被膜3Aの形成を行った。このとき形成された耐擦傷性被膜3Aは、約25μmの膜厚で、スチールウール#0000により傷がつく程度の硬度であった。
【0044】
このようにして処理したガラス板1を耐擦傷性被膜3Aが形成された面が内側に位置するようにして表面が平滑な未処理の他のガラス板5と対向させ、2mmの厚みになるように調整された軟質塩化ビニール製のガスケツト6を周設して鋳型とした。
【0045】
この鋳型に、
メタクリル酸メチル部分重合物 90部
アクリル酸メチル 10部
紫外線吸収剤(2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール) 0.05%
2,2-アゾビス-(2.4-ジメチルバレロニトリル) 0.02%
からなる基材樹脂原料8を注入した後、65℃の浴槽に5時間浸漬し、ついで、120℃の熱風循環炉中で2時間加熱して基材樹脂原料8の全体および耐擦傷性被膜3Aの未重合部分を重合させた。冷却して両ガラス板1,5を離型後、合成樹脂成型品10の表面の硬度を確認したところ、鉛筆硬度6Hの耐擦傷性を示した。
【0046】
つぎに、耐光性試験結果について説明する。
【0047】
実施例3の方法で
配合
ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂
およびアクリル系樹脂の混合物 30部
メタクリル酸メチル 70部
1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.2部
の耐擦傷性被膜3Aを照射時間を変えて形成し、下記の配合により基材樹脂原料8を形成し、重合させたうえで評価試験を行った。この評価試験のうち、紫外線劣化試験、加湿試験および加熱試験は、それぞれ耐擦傷性被膜3Aの剥離状態を観察するための試験であり、このうち紫外線劣化試験は紫外線を完成後の合成樹脂成型品10に照射し続けたもの、加湿試験は温度65℃で95%湿度の環境下に合成樹脂成型品10を設置したもの、加熱試験は温度80℃の環境下に合成樹脂成型品10を設置したものである。なお、この耐光性試験は、加速暴露試験機としてカーボンアーク(スガ試験機FAL−5H)を使用した。
【0048】
配合
メタクリル酸メチル部分重合物 100部
紫外線吸収剤(2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール) 0.05%
2,2-アゾビス-(2.4-ジメチルバレロニトリル) 0.02%
からなる基材樹脂原料8を注入した後、65℃の浴槽に5時間浸漬し、ついで、120℃の熱風循環炉中で2時間加熱して基材樹脂原料8の全体および耐擦傷性被膜3Aの未重合部分を重合させた。
【0049】
前記表によれば、紫外線の照射時間が長くなるほど、表面硬度すなわち耐擦傷性被膜3Aの硬度が増し、本発明としてのその後の工程に支障がでることになるので、表面硬度が爪で傷つく程度となる10〜20秒の紫外線照射時間が好ましい。
【0050】
また、合成樹脂成型品10の外観は、紫外線の照射時間が10〜60秒のいずれでも濁りは生じなかった。
【0051】
つぎに、紫外線劣化試験によれば、紫外線照射時間が10〜20秒のものにおいては、紫外線を1000時間照射した劣化試験においても耐擦傷性被膜3Aと基材8Aとの膜剥離は生じなかったが、紫外線照射時間が30秒のものにおいては、紫外線を1000時間照射した劣化試験において耐擦傷性被膜3Aと基材8Aとが一部膜剥離を生じてしまった。さらに、紫外線の照射時間が45〜60秒のものにおいては、劣化試験においてかなり剥離が生じてしまった。
【0052】
さらに、加湿試験と加熱試験においては、紫外線照射時間がいずれのものにも膜剥離の異常は生じなかった。
【0053】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも一方の表面に模様が形成され、かつ、この表面が耐擦傷性を有し、しかも耐擦傷性被膜と基材樹脂とを強固に一体化することができる合成樹脂成型品を生産性よく安価に製造することができる。
【0055】
すなわち、メタクリル酸メチルからなる耐擦傷性被膜原料を第1鋳型形成材の表面に塗布し、前記耐擦傷性被膜原料の表面を空気に露出した状態でこの耐擦傷性被膜原料を前記第1鋳型形成材との接合面側から前記耐擦傷性被膜原料の上部の反応度が60%〜90%未満となるように一部重合させて耐擦傷性被膜を形成し、前記耐擦傷性被膜が鋳型の内側に位置するように前記第1鋳型形成材と第2鋳型形成材とをガスケットにより間隔を有するように配設し、前記耐擦傷性被膜、第2鋳型形成材およびガスケットからなる鋳型の内側にメタクリル酸メチルからなる基材樹脂原料を充填し、前記基材樹脂原料および前記耐擦傷性被膜をラジカル重合により重合して一体化することにより合成樹脂成型品を形成するので、空気の重合禁止効果を利用して耐擦傷性被膜原料を第1鋳型形成材との接合面側から一部重合させ、その後、基材樹脂原料および前記耐擦傷性被膜を重合させて強固に一体化して、片面が耐擦傷性を有する合成樹脂成型品を製造することができるし、いずれもメタクリル酸メチルからなる耐擦傷性被膜原料および基材樹脂原料を使用しているので、耐擦傷性被膜原料の部分的な重合時に残留してつぎの基材樹脂原料と耐擦傷性被膜原料の重合時に寄与し、強固に一体化できる。
【0056】
また、第1鋳型形成材の耐擦傷性被膜原料が塗布される表面に凹凸からなる模様をあらかじめ形成することにより、一方の表面に模様の形成された合成樹脂成型品を製造することができる。
【0057】
さらに、模様を微細な多数の凹凸からなる梨地模様とすることにより、ノングレア性を有する合成樹脂成型品を製造することができる。
【0058】
一方、メタクリル酸メチルからなる第1耐擦傷性被膜原料を第1鋳型形成材の表面に塗布し、前記第1耐擦傷性被膜原料の表面を空気に露出した状態でこの第1耐擦傷性被膜原料を前記第1鋳型形成材との接合面側から前記耐擦傷性被膜原料の上部の反応度が60%〜90%未満となるように一部重合させて第1耐擦傷性被膜を形成し、メタクリル酸メチルからなる第2耐擦傷性被膜原料を第2鋳型形成材の表面に塗布し、前記第2耐擦傷性被膜原料の表面を空気に露出した状態でこの第2耐擦傷性被膜原料を前記第2鋳型形成材との接合面側から前記耐擦傷性被膜原料の上部の反応度が60%〜90%未満となるように一部重合させて第2耐擦傷性被膜を形成し、前記各耐擦傷性被膜が鋳型の内側に位置するように前記第1鋳型形成材と第2鋳型形成材とをガスケットにより間隔を有するように配設し、前記両耐擦傷性被膜およびガスケットからなる鋳型の内側にメタクリル酸メチルからなる基材樹脂原料を充填し、前記基材樹脂原料および前記両耐擦傷性被膜をラジカル重合により重合して一体化することにより合成樹脂成型品を製造するので、両面が耐擦傷性を有する合成樹脂成型品を製造することができるし、いずれもメタクリル酸メチルからなる耐擦傷性被膜原料および基材樹脂原料を使用しているので、耐擦傷性被膜原料の部分的な重合時に残留してつぎの基材樹脂原料と耐擦傷性被膜原料の重合時に寄与し、強固に一体化できる。
【0059】
また、両鋳型形成材の耐擦傷性被膜原料が塗布される表面の少なくとも一方に凹凸からなる模様をあらかじめ形成することにより、一方または両方の表面に模様の形成された合成樹脂成型品を製造することができる。
【0060】
さらに、模様を微細な多数の凹凸からなる梨地模様としたことにより、少なくとも片面にノングレア性を有する合成樹脂成型品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る合成樹脂成型品の製造方法の第1実施形態の第1工程を示す縦断面図
【図2】 本発明に係る合成樹脂成型品の製造方法の第1実施形態の第2工程を示す縦断面図
【図3】 本発明に係る合成樹脂成型品の製造方法の第1実施形態の第3工程を示す縦断面図
【図4】 本発明に係る合成樹脂成型品の製造方法の第1実施形態の第4工程を示す縦断面図
【図5】 本発明に係る合成樹脂成型品の製造方法の第1実施形態における完成した合成樹脂成型品を示す縦断面図
【図6】 本発明に係る合成樹脂成型品の製造方法の第2実施形態の最終工程を示す縦断面図
【図7】 本発明に係る合成樹脂成型品の製造方法の第2実施形態における完成した合成樹脂成型品を示す縦断面図
【符号の説明】
1 ガラス板
2 模様
3 耐擦傷性被膜原料
3A 耐擦傷性被膜
4 メタハライドランプ
5 ガラス板
6 ガスケット
7 密閉空間
8 アクリル樹脂モノマ
8A 基材
9 凹凸模様
10 合成樹脂成型品
Claims (6)
- メタクリル酸メチルからなる耐擦傷性被膜原料を第1鋳型形成材の表面に塗布し、
前記耐擦傷性被膜原料の表面を空気に露出した状態でこの耐擦傷性被膜原料を前記第1鋳型形成材との接合面側から前記耐擦傷性被膜原料の上部の反応度が60%〜90%未満となるように一部重合させて耐擦傷性被膜を形成し、
前記耐擦傷性被膜が鋳型の内側に位置するように前記第1鋳型形成材と第2鋳型形成材とをガスケットにより間隔を有するように配設し、
前記耐擦傷性被膜、第2鋳型形成材およびガスケットからなる鋳型の内側にメタクリル酸メチルからなる基材樹脂原料を充填し、
前記基材樹脂原料および前記耐擦傷性被膜をラジカル重合により重合して一体化することにより合成樹脂成型品を形成すること
を特徴とする合成樹脂成型品の製造方法。 - 前記第1鋳型形成材の前記耐擦傷性被膜原料が塗布される表面に凹凸からなる模様をあらかじめ形成したことを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂成型品の製造方法。
- 前記模様を微細な多数の凹凸からなる梨地模様としたことを特徴とする請求項2に記載の合成樹脂成型品の製造方法。
- メタクリル酸メチルからなる第1耐擦傷性被膜原料を第1鋳型形成材の表面に塗布し、
前記第1耐擦傷性被膜原料の表面を空気に露出した状態でこの第1耐擦傷性被膜原料を前記第1鋳型形成材との接合面側から前記耐擦傷性被膜原料の上部の反応度が60%〜90%未満となるように一部重合させて第1耐擦傷性被膜を形成し、
メタクリル酸メチルからなる第2耐擦傷性被膜原料を第2鋳型形成材の表面に塗布し、
前記第2耐擦傷性被膜原料の表面を空気に露出した状態でこの第2耐擦傷性被膜原料を前記第2鋳型形成材との接合面側から前記耐擦傷性被膜原料の上部の反応度が60%〜90%未満となるように一部重合させて第2耐擦傷性被膜を形成し、
前記各耐擦傷性被膜が鋳型の内側に位置するように前記第1鋳型形成材と第2鋳型形成材とをガスケットにより間隔を有するように配設し、
前記両耐擦傷性被膜およびガスケットからなる鋳型の内側にメタクリル酸メチルからなる基材樹脂原料を充填し、
前記基材樹脂原料および前記両耐擦傷性被膜をラジカル重合により重合して一体化することにより合成樹脂成型品を形成すること
を特徴とする合成樹脂成型品の製造方法。 - 前記両鋳型形成材の前記耐擦傷性被膜原料が塗布される表面の少なくとも一方に凹凸からなる模様をあらかじめ形成したことを特徴とする請求項4に記載の合成樹脂成型品の製造方法。
- 前記模様を微細な多数の凹凸からなる梨地模様としたことを特徴とする請求項5に記載の合成樹脂成型品の製造方法。
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