JP4111618B2 - 車両用スライドドア構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車体の側壁に沿ってスライドドアをスライドさせてドア用開口を開閉するための車両用スライドドア構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車体の側壁に形成されたドア用開口を開閉するためのスライド式のドアは、例えば実開昭57−187218号公報や特開昭62−227812号公報に記載のように、例えば開位置から前方の閉位置へとスライドされる際、まず、側壁の外面に沿って前後方向に延びる側方移動経路に沿ってスライドされ、そして、閉位置に達する直前で、車体内方に引き込むような引き込み案内経路に沿って移動されて、閉位置では側壁の外面と面一状になって保持される。
【0003】
このような経路に沿わせてドアを移動させるために、車体に、前端側が内方に屈曲されたガイドレールが設けられ、ドアに、このガイドレールに嵌入する垂直軸心回りに回転自在なガイドローラが取付けられている。さらに、ドアにはその自重を支持するために、水平軸心回りに回転自在な支持ローラが設けられ、この支持ローラが車体に設けられた支持面上を転動するようになっている。
【0004】
上記の支持ローラは、通常、その軸心を前記側方移動経路に沿う方向に直交するように取付けられている。したがって、この経路上をドアが移動する際には、支持ローラは後述するような横滑りを生じることなく支持面上を転動する。しかしながら、前記引き込み案内経路では、この支持ローラの回転軸心に対してドアが斜めに移動することになり、このため、支持ローラはいわゆる横滑りを生じながら支持面上を転動する。したがってこの間では、上記のように横滑りを生じさせるようなスライド操作を必要とするため、操作が重くなってスムーズな開閉を行えないという不具合が生じる。
【0005】
そこで、例えば前記した特開昭62−227812号公報に、側方移動経路上と引き込み移動経路上とで、ドアの支持を個別の支持ローラで行わせるようにした構成が開示されている。すなわち、同公報記載のスライドドア構造では、図8(a)に示すように、ドアの前端下部に取付けられるブラケット52の先端上部に、垂直軸心回りに回転自在なガイドローラ53が取付けられ、さらに、ブラケット52の先端下部側に、それぞれ水平軸心回りに回転自在な主支持ローラ54と補助支持ローラ55とが取付けられている。ガイドローラ53は、車体に設けられたガイドレール56の案内溝57内に嵌入して、ドアの移動を前記した経路に沿ってガイドする。主支持ローラ54と補助支持ローラ55とは、ガイドレール56の支持面58上を転動して、ドアの自重を支持するようになっている。
【0006】
同図(b)には、上記ガイドレール56の支持面58を上方から見た図を示し、同図中、一点鎖線は主支持ローラ54の移動軌跡、二点鎖線は補助支持ローラ55の移動軌跡である。主支持ローラ54は、その軸心と直交する方向(以下、ローラの向きという)が、側方移動経路59の領域でその経路方向とほぼ同一となるように、また、補助支持ローラ55は、ローラの向きが引き込み移動経路60の領域で、その経路方向とほぼ同一となるように、互いに取付角を相異させて取付けられている。
【0007】
また、補助支持ローラ55の移動軌跡は、側方移動経路59の領域では支持面58の外方に位置し、引き込み移動経路60の領域において支持面58上に乗り上げるように構成されている。また、補助支持ローラ55は主支持ローラ54よりもわずかに径大に形成されている。
【0008】
この構成においては、側方移動経路59の領域では主支持ローラ54が支持面58上を転動し、引き込み移動経路60の領域では、補助支持ローラ55が支持面58上を転動する。すなわち、いずれの支持ローラ54・55とも、ローラの向きがドアの移動方向と同方向のときにのみ、支持面58に上方から当接して転動し、ローラの向きと移動方向とが互いに交差する領域では、空中に浮いた状態となる。この結果、各支持ローラ54・55に前記した横滑りを生じさせることなく支持面58上を転動させて、ドアを側方移動経路59と引き込み移動経路60との全体にわたってスライドさせることができ、これによって、開閉操作性を向上するようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように2個の支持ローラ54・55が、ドアの前端下部に固定されるブラケット52の先端側に並設される構成では、全体的な形状が大きくなって製作費が高くなるという問題を有している。つまり、上記の主支持ローラ54と補助支持ローラ55とは、各移動軌跡が車体の幅方向内側と外側とに並ぶように取付けられるが、これに伴って支持面58の幅が大きくなり、また、ブラケット52は、両支持ローラ54・55を相互に干渉させずに各々所望の取付角で取付けるために、例えば先端側の幅を大きくし、或いは、ドアへの固定端から車体内方に向かう長さを大きくすることが必要になる。特にこのブラケット52は、ドア内面に片持ち状に固定されるものであるため、その先端側に懸かるドアの自重に対して充分な剛性が確保されることが必要であり、このため、例えば補強リブを追加するなどの構造的な変更も必要となる。このため、全体的な形状が大形化し、また、構造も複雑になって製作費が高くなる。
【0010】
この発明は、上記した問題点に鑑みなされたもので、その目的は、スライドドアの開閉操作性を向上し得ると共に、さらに全体的な構成をより簡素なものにして製作費を安価になし得る車両用スライドドア構造を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段および効果】
そこで請求項1の車両用スライドドア構造は、車体2の側壁2aに形成されたドア用開口2bを開閉するためのスライド式のドア3と、上記側壁2aの外面に沿って前後方向に延びる側方移動経路とその一端から車体2内方に傾斜して延びる引き込み移動経路とに沿って上記ドア3を移動させるガイド機構とを備える車両用スライドドア構造であって、ドア3が側方移動経路上に位置するときにドア3の自重を支持する第1支持機構と、ドア3が引き込み移動経路上に位置するときにドア3の自重を支持する第2支持機構とを設け、上記第1支持機構を、側方移動経路に沿う方向に略直交する水平軸心回りに回転自在な第1支持ローラ33とこの第1支持ローラ33が側方移動経路上で当接して回転する第1支持面36aとの一方36aを車体2に、他方33をドア3に各々設けて形成すると共に、上記第2支持機構を、引き込み移動経路に沿う方向に略直交する水平軸心回りに回転自在な第2支持ローラ13とこの第2支持ローラ13が引き込み移動経路上で当接して回転する第2支持面15との一方15を車体に、他方13をドア3に各々設けて形成し、上記第1支持機構と第2支持機構とを上下に分けて設け、第1支持機構と第2支持機構とのいずれか一方だけをドア3の上部側に、その他方だけをドア3の下部側にそれぞれ設けていることを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、ドア3を開閉する際、側方移動経路ではその経路方向に軸心が略直交する第1支持ローラ33でドア3の自重が支持され、引き込み移動経路ではその経路方向に軸心が略直交する第2支持ローラ13によるドアの支持状態に切換わる。これにより、側方移動経路と引き込み移動経路との全体にわたって支持ローラに横滑りを生じさせることなくドア3をスライドさせることができるので、ドア3をスムーズに開閉できて操作性が向上する。
【0013】
そして上記では、第1支持ローラ33及びその支持面36aと、第2支持ローラ13及びその支持面15とは、ドア3の上部側と下部側とに上下に分けて設けられ、これによって、各支持ローラ33・13の取付位置や移動軌跡について、相互干渉を格別考慮せずにそれぞれ独立に設定することができる。この結果、例えば各支持ローラ13・33が取付けられるブラケットの形状や各支持面36a・15の幅寸法等を極力小さくすることができ、また、支持ローラ13・33の取付構造やブラケットの補強構造等もより簡素なものとし得るので、製作費をより安価なものとすることができる。
【0014】
また、請求項2の車両用スライドドア構造は、上記第1支持ローラ33をドア3の下部側に取付けると共に、この第1支持ローラ33を下側から支持すべく車体2の下部側に第1支持面36aを設け、この第1支持面36aにおける引き込み移動経路に対応する領域を切欠状に形成していることを特徴としている。
【0015】
この場合、車体2の下部側では、第1支持ローラ33が側方移動経路に沿って第1支持面36a上を転動し、そして引き込み移動経路の領域に進入したときには、この第1支持ローラ33は空中に浮いた状態となる。このような構成により、ドア3のスムーズな開閉状態が長期にわたって維持される。
【0016】
すなわち、車体2の下部側に設けられる支持面、この場合、第1支持面36a上には土砂などが侵入し易く、これが堆積すると、ドア3をスムーズには閉位置に位置させることができなくなる。上記では、第1支持面36a上に侵入した土砂は、第1支持ローラ33の移動に伴って、この支持ローラ33により移動方向に押しやられ、その途中で、第1支持面36aの端部から下方に落下することになる。したがって、第1支持面36a上への土砂の堆積が抑えられ、これにより、ドア3のスムーズな開閉状態が長期にわたって維持される。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図2(a)には、本実施形態に係る油圧ショベルのキャブ1を示している。このキャブ1は、略箱形のキャブ本体(車体)2とスライド式のドア3とを備えている。キャブ本体2には、紙面手前側の側壁2aに、その前縁側から前後方向のほぼ中間位置まで広がるドア用開口2bがオペレータの出入口として形成されている。上記ドア3は、このドア用開口2bを閉止する閉位置と、ドア用開口2bを開放する開位置との間を、側壁2aに沿って前後方向(図において左右方向)にスライドし得るように構成され、その前端側に、このドア3の開閉操作を行うための取手3aが設けられている。
【0019】
キャブ本体2の上記側壁2aは、このキャブ本体2が載置される円形の旋回台(図示せず)の外周面に合わせて、同図(b)に示すように、断面が略円弧状に形成されている。これによって、キャブ本体2内の空間容積が極力大きくなるように構成されている。そして上記ドア3は、これが閉位置に位置するときに、同図中実線で示すように、その外面が上記側壁2aと面一状になって保持され、また、この位置から後方にスライドさせるときには、スライド開始当初に、側壁2aと面一状の位置から、図中一点鎖線で示す位置付近まで、外方(図においては下方)へと張り出す方向に移動した後、側壁2aよりも外側の円弧状の移動経路(以下、側方移動経路という)に沿って、図中二点鎖線で示す開位置まで後方にスライドするようになっている。
【0020】
なお、上記とは逆に開位置から閉位置に移動させる際には、まず、上記の側方移動経路に沿って後方から前方に移動し、そして、閉位置に至る直前で、側方移動経路の延長線からキャブ本体2の中心側に向くようなスライド方向の切換わりが生じ、したがって、中心方向に引き込まれる状態となって、前記した側壁2aと面一状の閉位置に達することになる(以下、スライド方向の切換わり位置から閉位置に達するまでの移動経路を引き込み移動経路という)。
【0021】
上記のようなドア3のスライド移動を案内するために、キャブ本体2の側壁2aには、同図(a)に示すように、ドア用開口2bの上方箇所に上部ガイドレール4が、また、ドア用開口2bの下方箇所に下部ガイドレール5が、それぞれ、ドア用開口2bの前後方向の幅と略同じ長さ範囲にわたって水平に設けられている。また、キャブ本体2の側壁2aにおける略中間高さ位置の外面に、ドア用開口2bの後縁部からキャブ本体2の後端まで水平に延びるセンタガイドレール6が設けられている。
【0022】
上部ガイドレール4は、図3(a)に示すように、前記した引き込み移動経路に対応する前端側が略く字状に屈曲し、その後方が側壁2aの外面に沿う円弧状に形成されたガイド溝14aを備えている。このガイド溝14aによって、後述する上ローラ組立体7における上部ガイドローラ12の移動が案内される。
【0023】
下部ガイドレール5は、同図(b)の左側半分に示すように、上記同様に、引き込み移動経路に対応する前端側が略く字状に屈曲されたガイド溝35aを備えており、このガイド溝35aによって、後述する下ローラ組立体8における下部ガイドローラ32の移動が案内される。また、センタガイドレール6も、同図(b)の右側半分に示すように、前端側が略く字状に屈曲されたガイド溝26を備え、このガイド溝26によって、後述するセンタローラ組立体9における一対のセンタガイドローラ23・23の移動が案内される。
【0024】
なお以下では、各ガイドレール4〜6のガイド溝14a・35a・26において、前端側の屈曲部分を引き込み案内部、その後方の側壁2aに沿う円弧部分を側方案内部、これら引き込み案内部と側方案内部とが相互に連なる曲率半径の小さな部分をコーナー部とそれぞれ称して説明する。
【0025】
前記ドア3の内面には、図4(a)〜(c)に示すように、その前端側の上方箇所に上ローラ組立体7が、また、下方箇所に下ローラ組立体8がそれぞれ取付けられ、後端側の中間高さ位置にセンタローラ組立体9が取付けられている。
【0026】
上ローラ組立体7は、図5(a)(b)に示すように、ドア3の内面に外方端が固定されたブラケット11の先端側に、垂直軸心回りに回転自在に軸支された上部ガイドローラ12と、水平軸心回りに回転自在に軸支された上部支持ローラ(第2支持ローラ)13とを設けて構成されている。
【0027】
前記した上部ガイドレール4は、同図(b)に示すように、上方に凹入するガイド溝14aを形成すべく断面逆U字状に成形された上ガイド部14と、この上ガイド部14の下側に位置する平板状の支持プレート15(第2支持面)とを設けて構成されている。例えばドア3が前記閉位置に位置するとき、上部支持ローラ13を支持プレート15で下側から受け、同時に、ガイド溝14aに上部ガイドローラ12を下側から嵌入させた状態となるようにドア3が組付けられている。これによって、ドア3は前端上部側で、その自重が支持プレート15で支持され、また、ドア3の開閉移動時には、同図(a)に示すように、上部支持ローラ13が支持プレート15上を転動しながら、ドア3の前端上部側がガイド溝14aの形状に沿って移動する。
【0028】
上ガイド部14は、前記引き込み案内部から側方案内部の全体にわたって延びる形状で形成され、そして、上記支持プレート15は、同図(a)に示すように、引き込み案内部に対応する領域のみに設けられている。また上部支持ローラ13は、その軸心に直交する方向、すなわち、このローラ13を水平支持面上に置いて軸心回りに回転させたときに回転に伴って移動する方向(以下、この方向をローラの向きという)が、引き込み案内部に沿って上部ガイドローラ12が移動する方向とほぼ平行となるように、前記ブラケット11に取付けられている。
【0029】
センタローラ組立体9は、図6(a)(b)に示すように、ドア3の後端側内面に固定された第1中間ブラケット21と、この第1中間ブラケット21の先端側に、水平方向に揺動自在に軸支された第2中間ブラケット22とを備え、この第2中間ブラケット22の先端側に、それぞれ垂直軸心回りに回転自在な一対のセンタガイドローラ23・23が設けられている。また、これらセンタガイドローラ23・23間に、水平軸心回りに回転自在なセンタ支持ローラ24が設けられている。このセンタ支持ローラ24は、そのローラの向きが、上記センタガイドローラ23・23の各中心を結ぶ直線と平行になるように、第2中間ブラケット22に取付けられている。
【0030】
前記センタガイドレール6は、同図(b)に示すように、センタ支持ローラ24を下側から受ける水平支持面25を底部側に備え、上部側は断面略U字状として、センタガイドローラ23が下側から嵌入するガイド溝26が形成されている。これらが、前記引き込み案内部と側方案内部との全体にわたって延びる形状で形成されている。これにより、ドア3は、その後端側で自重がセンタガイドレール6の水平支持面25で支持され、また、ドア3の開閉移動時には、センタガイドローラ23がセンタガイドレール6のガイド溝26で案内されることにより、ドア3における中間高さ位置の後端側が、同図(a)に示すようにセンタガイドレール6の形状に沿って移動する。
【0031】
前記下ローラ組立体8は、図7(a)(b)に示すように、ドア3の内面に固定された下部ブラケット31を備え、このブラケット31の先端側に、垂直軸心回りに回転自在に軸支された下部ガイドローラ32と、水平軸心回りに回転自在に軸支された下部支持ローラ(第1支持ローラ)33とが設けられている。前記下部ガイドレール5は、同図(b)に示すように、キャブ本体2の床面2cに沿って固定されたガイドプレート35と、このガイドプレート35の下面に上端が溶接された支持プレート36とから成っている。ガイドプレート35の下面に、断面が略逆U字状のガイド溝35aが形成されている。支持プレート36は断面略L字状に形成され、上記ガイド溝35aの下側に水平に位置する水平支持面(第1支持面)36aを備えている。
【0032】
上記ガイド溝35a内に下部ガイドローラ32を下側から嵌入させ、ドア3が前記側方案内部に位置するときに、下部支持ローラ33を水平支持面36aで下側から受ける状態としてドア3の組付けが行われる。これによって、ドア3は、その前端側で自重が支持プレート36で支持されるようにもなっており、ドア3の開閉移動時には、下部ガイドローラ32がガイド溝35aで案内されて、ドア3の下部側がガイド溝35aの形状に沿って移動する。
【0033】
上記ガイド溝35aは、前記引き込み案内部から側方案内部の全体にわたって延びる形状でガイドプレート35に形成される一方、支持プレート36は、引き込み案内部の領域には設けられずに、側方案内部の領域にのみ設けられている。また下部支持ローラ33は、そのローラの向きがガイド溝35aにおける側方案内部に沿う方向となるように、前記下部ブラケット31に取付けられている。
【0034】
上記構成のキャブ1では、ドア3が閉位置に位置するとき、ドア3前端側の上部および下部に各々取付けられている上部ガイドローラ12・下部ガイドローラ32が、それぞれ、上部ガイドレール4・下部ガイドレール5の各ガイド溝14a・35aに嵌入し、また、中間の高さ位置のセンタガイドローラ23がセンタガイドレール6のガイド溝26に嵌入して、このドア3はキャブ本体2の側壁2aに沿う垂直状態で保持される。
【0035】
そして、このときのドア3の自重は、前端上部側と後端中間高さ位置の上部支持ローラ13およびセンタ支持ローラ24とを、それぞれ、上部ガイドレール4の支持プレート15とセンタガイドレール6の水平支持面25とでそれぞれ下側から受ける構成によって支持されている。なおこのとき、下ローラ組立体8の下部支持ローラ33は、図1(b)に実線で示すように、支持プレート36の前端よりも前方に位置しており、したがって、空中に浮いた状態となっている。
【0036】
上記のような閉状態からドア3を開く際には、まず、ドア3側の各ガイドローラ12・23・32が各ガイドレール4・5・6の引き込み案内部に沿って案内されることにより、ドア3はその垂直状態を保持して、キャブ本体2の側壁2aと面一状の閉止位置から、側方へと張り出す方向に移動する。この間、図1(a)に示すように、上部支持ローラ13は、そのローラの向きが上部ガイドレール4のガイド溝14aにほぼ平行であることから、上部ガイドレール4の支持プレート15上を横滑りすることなく回転して移動する。また、前記のセンタ支持ローラ24も、これを挟んで対をなすセンタガイドローラ23・23がセンタガイドレール6のガイド溝26に沿って移動するのに伴って第2中間ブラケット22が揺動し、センタガイドレール6の水平支持面25上を横滑りすることなく回転して移動する。したがって、この間のドア3の移動操作に当たり、過大な操作力を加えることなく、ドア3を前記引き込み移動経路に沿ってスムーズに移動させることができる。
【0037】
そして、この過程でドア3が上記引き込み移動経路の終端部近くに達し、図1(a)中に一点鎖線で示すように、上部支持ローラ13が上部ガイドレール4の支持プレート15の終端部近くに達すると、同時に、図1(b)中に一点鎖線で示すように、下部支持ローラ33が、下部ガイドレール5における支持プレート36の水平支持面36aの前端部に達してこの水平支持面36a上に乗り上げる。そして、その後にドア3が上記引き込み移動経路の終端部を超え、したがって、その移動方向が前記側方移動経路に沿う方向に切換わった時点で、上部支持ローラ13が上部ガイドレール4の支持プレート15の後端を超えて空中に浮いた状態となる。これによって、ドア3の前端側は、上部支持ローラ13による支持状態から下部支持ローラ33による支持状態に切換わる。
【0038】
以降は、上記のような下部支持ローラ33による支持状態でドア3の後方への移動が継続し、この間、下部支持ローラ33は、上記水平支持面36a上を横滑りすることなく回転しながら後方に移動する。なお、このときのセンタ支持ローラ24も、前記同様にセンタガイドレール6の水平支持面25上を横滑りすることなく回転して移動する。したがって、この間も、過大な操作力を加えることなく、ドア3を前記側方移動経路に沿って開位置までスムーズに移動させることができる。
【0039】
なお、開位置から閉位置に移動させてドア3を閉める際には上記とは逆の動作、すなわち、まず、下部支持ローラ33とセンタ支持ローラ24とでドア3の自重を支持した状態で、ドア3が側方移動経路に沿って後方から前方に移動し、そして、側方移動経路から引き込み移動経路に沿う方向に移動方向が切換わる時点で、上部支持ローラ13とセンタ支持ローラ24とによるドア3の支持状態が切換わる。このときも、下部支持ローラ33と上部支持ローラ13とには、それぞれ横滑りを生じることなく、各々、側方移動経路と引き込み移動経路とに順次沿う方向に回転しながら、下部ガイドレール5の水平支持面36a上、および上部ガイドレール4の支持プレート15上を順次移動することになるので、全体にわたって過大な操作力を必要とせずに、スムーズにドア3を移動させることができる。
【0040】
しかも上記では、引き込み案内部と側方案内部とでドア3の支持を分担する支持ローラ13・33を上部ローラ組立体7と下部ローラ組立体8とに上下に分けて設けた構成であり、一つのローラ組立体に並設したものではないので、各支持ローラ13・33が取付けられるブラケット11・31の形状や、上部ガイドレール4の支持プレート15・下部ガイドレール5の支持プレート36の幅等を極力小さくすることができ、また、支持ローラ13・33の取付構造やブラケットの補強構造等もより簡素なものとすることができる。この結果、これらを設ける際の全体的な専有空間もより小さくして全体的にコンパクトに構成することができ、これによって、製作費もより安価なものとすることができる。
【0041】
一方、建設現場等においてドア3を開位置にスライドさせ、オペレータがキャブ1に乗り込む際には、靴に付着した土砂などが靴から剥離し、この土砂が下部ガイドレール5の支持プレート36内に侵入する状態が多々生じる。この場合に、従来は、ドアを閉じる際に前方に移動する下部支持ローラにより、支持プレート内の土砂は下部支持ローラの移動範囲における最前端位置まで押しやられ、その箇所で堆積する結果となっていた。そして、その堆積量が増えてくると次第に前方に押しやられなくなって、下部支持ローラと水平支持面との間に土砂の噛み込みが生じるようになり、これに伴って、ドアをスムーズには閉位置に位置させることができなくなるという不具合を生じていた。
【0042】
これに対し、上記実施形態においては、下部支持ローラ33の移動範囲における前端側では支持プレート36が切欠かれており、下部支持ローラ33は、ドア3が閉位置まで移動する過程で、支持プレート36の水平支持面36aの前端を超えて前方に移動する。したがって、水平支持面36a上で、下部支持ローラ33によって前方へと押しやられてきた土砂は、水平支持面36aの前端を超えたときに下方に落下する。この結果、水平支持面36a上に土砂が堆積するということがなくなり、ドア3のスムーズな開閉状態を長期にわたって維持し得るものともなっている。
【0043】
以上にこの発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更することができる。例えば上記形態では、ドア3が側方移動経路上に位置するときにドア3の自重を支持する第1支持機構を、下部支持ローラ33とその支持面36aで、ドア3が引き込み移動経路上に位置するときにドア3の自重を支持する第2支持機構を、上部支持ローラ13とその支持プレート15とで構成し、したがって、第1支持機構をドア3の下部側に、第2支持機構をドア3の上部側に設けた例を挙げたが、上記とは逆に、側方移動経路上でドア3を支持する第1支持機構をドア3の上部側に、引き込み移動経路上でドア3を支持する第2支持機構をドア3の下部側に設ける構成とすることも可能である。
【0044】
また上記では、例えば下部ガイドレール5の支持プレート36を引き込み移動経路に対応する領域で切欠状に形成したが、このような切欠状とせずに、引き込み移動経路の領域にわたる形状とし、そして、この領域で水平支持面36aの高さを低くし、これによって、下部支持ローラ33をこの領域では空中に浮かせるなどのその他の構成とすることができる。
【0045】
また上記では、側方移動経路と引き込み移動経路とに沿ってドア3を移動させるガイド機構として、上記移動経路に沿うガイド溝14a・26・35aを有するガイドレール4・5・6と、上記各ガイド溝に嵌入するガイドローラ12・23・32とを設けて構成した例を示したが、例えばキャブ本体2とドア3との間にリンク機構を設けて、このリンク機構によりドア3を上記経路に沿って移動させる車両等にも、本発明を適用して構成することが可能である。また上記では、各支持ローラ13・24・33をドア3側に、支持面15・25・36aをキャブ本体2側に設けたが、例えば少なくとも1つの支持ローラをキャブ本体側に設け、その支持面をこの支持ローラに上方から当接するようにドア側に設けるような構成とすることも可能である。
【0046】
さらに上記では、建設機械として油圧ショベルを例に挙げて説明したが、その他の建設機械のキャブや、さらに自動車などの各種車両に設けられるスライド式のドアに本発明を適用して構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態におけるキャブのスライドドアの支持状態の切換わりを説明するもので、同図(a)は上ローラ組立体と上部ガイドレールとの関係を示す平面図、同図(b)は下ローラ組立体と下部ガイドレールとの関係を示す平断面図である。
【図2】上記キャブを示すもので、同図(a)は正面図、同図(b)はスライドドアの開閉時の移動経路を説明するための平面模式図である。
【図3】上記キャブのキャブ本体に設けられたガイドレールを示すもので、同図(a)は上部ガイドレールを示す平面図、同図(b)はセンタガイドレールと下部ガイドレールとを示す平面図である。
【図4】上記スライドドアを示すもので、同図(a)は平面図、同図(b)は正面図、同図(c)は右側面図である。
【図5】上記キャブに設けられた上ローラ組立体と上ガイドレールとを示すもので、同図(a)は平断面図、同図(b)は同図(a)におけるX−X線矢視断面図である。
【図6】上記キャブに設けられたセンタローラ組立体とセンタガイドレールとを示すもので、同図(a)は平断面図、同図(b)は同図(a)におけるY−Y線矢視断面図である。
【図7】上記下ローラ組立体と下部ガイドレールとを示すもので、同図(a)は平断面図、同図(b)は同図(a)におけるZ−Z線矢視断面図である。
【図8】従来のスライドドア構造を示すもので、同図(a)は要部断面図、同図(b)は支持ローラと支持面との関係を示す要部平面模式図である。
【符号の説明】
2 キャブ本体(車体)
2a 側壁
2b ドア用開口
3 ドア
13 上部支持ローラ(第2支持ローラ)
15 支持プレート(第2支持面)
33 下部支持ローラ(第1支持ローラ)
36a 水平支持面(第2支持面)
Claims (2)
- 車体(2)の側壁(2a)に形成されたドア用開口(2b)を開閉するためのスライド式のドア(3)と、上記側壁(2a)の外面に沿って前後方向に延びる側方移動経路とその一端から車体(2)内方に傾斜して延びる引き込み移動経路とに沿って上記ドア(3)を移動させるガイド機構とを備える車両用スライドドア構造であって、ドア(3)が側方移動経路上に位置するときにドア(3)の自重を支持する第1支持機構と、ドア(3)が引き込み移動経路上に位置するときにドア(3)の自重を支持する第2支持機構とを設け、上記第1支持機構を、側方移動経路に沿う方向に略直交する水平軸心回りに回転自在な第1支持ローラ(33)とこの第1支持ローラ(33)が側方移動経路上で当接して回転する第1支持面(36a)との一方(36a)を車体(2)に、他方(33)をドア(3)に各々設けて形成すると共に、上記第2支持機構を、引き込み移動経路に沿う方向に略直交する水平軸心回りに回転自在な第2支持ローラ(13)とこの第2支持ローラ(13)が引き込み移動経路上で当接して回転する第2支持面(15)との一方(15)を車体(2)に、他方(13)をドア(3)に各々設けて形成し、上記第1支持機構と第2支持機構とを上下に分けて設け、第1支持機構と第2支持機構とのいずれか一方だけをドア(3)の上部側に、その他方だけをドア(3)の下部側にそれぞれ設けていることを特徴とする車両用スライドドア構造。
- 上記第1支持ローラ(33)をドア(3)の下部側に取付けると共に、この第1支持ローラ(33)を下側から支持すべく車体(2)の下部側に第1支持面(36a)を設け、この第1支持面(36a)における引き込み移動経路に対応する領域を切欠状に形成していることを特徴とする請求項1の車両用スライドドア構造。
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