以下、この発明の実施の形態に係る燃料電池の製造方法について説明する。図1は、この発明の第1の実施の形態に係る燃料電池の製造工程を実行する燃料電池製造ラインの構成を示す図である。この図1に示すように、燃料電池製造ラインは、各工程においてそれぞれ用いられる吐出装置120a〜120k、吐出装置120a〜120iを接続するベルトコンベアBC11、吐出装置120j、120kを接続するベルトコンベアBC12、ベルトコンベアBC11、BC12を駆動させる駆動装置158、燃料電池の組み立てを行う組立装置160及び燃料電池製造ライン全体の制御を行う制御装置156により構成されている。
吐出装置120a〜120iは、ベルトコンベアBC11に沿って所定の間隔で一列に配置されており、吐出装置120j、120kはベルトコンベアBC12に沿って所定の間隔で一列に配置されている。また、制御装置156は、各吐出装置120a〜120k、駆動装置158及び組立装置160に接続されている。制御装置156からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC11を駆動させ、燃料電池の基板(以下、単に「基板」とする。)を各吐出装置120a〜120iに搬送して各吐出装置120a〜120iにおける処理を行う。同様に、制御装置156からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC12を駆動させ、基板を吐出装置120j、120kに搬送してこの吐出装置120j、120kにおける処理を行う。また、組立装置160においては、制御装置156からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC11及びベルトコンベアBC12を介して搬入された基板により燃料電池の組み立てを行う。
この燃料電池製造ラインにおいては、吐出装置120aにおいて基板に対してガス流路を形成するためのレジスト溶液を塗布する処理が行われ、吐出装置120bにおいて、ガス流路を形成するためのエッチング処理が行われ、吐出装置120cにおいて、集電層を形成する処理が行われる。また、吐出装置120dにおいて、ガス拡散層を形成する処理が行われ、吐出装置120eにおいて、反応層を形成する処理が行われ、吐出装置120fにおいて、電解質膜を形成する処理が行われる。更に、吐出装置120gにおいて、反応層を形成する処理が行われ、吐出装置120hにおいて、ガス拡散層を形成する処理が行われ、吐出装置120iにおいて、集電層を形成する処理が行われる。
また、吐出装置120jにおいて、基板に対してガス流路を形成するためのレジスト溶液を塗布する処理が行われ、吐出装置120kにおいて、ガス流路を形成するためのエッチング処理が行われる。なお、吐出装置120a〜120iにおいて第1の基板に対して処理を施す場合には、吐出装置120j、120kにおいては、第2の基板に対してガス流路を形成する処理が施される。
図2は、この発明の第1の実施の形態に係る燃料電池を製造する際に用いられるインクジェット式の吐出装置120aの構成の概略を示す図である。この吐出装置120aは、基板上に吐出物を吐出するインクジェットヘッド122を備えている。このインクジェットヘッド122は、ヘッド本体124及び吐出物を吐出する多数のノズルが形成されているノズル形成面126を備えている。このノズル形成面126のノズルから吐出物、即ち、反応ガスを供給するためのガス流路を基板上に形成する際に、基板に塗布されるレジスト溶液が吐出される。また、吐出装置120aは、基板を載置するテーブル128を備えている。このテーブル128は、所定の方向、例えば、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能に設置されている。また、テーブル128は、図中矢印で示すようにX軸に沿った方向に移動することにより、ベルトコンベアBC11により搬送される基板をテーブル128上に載置して吐出装置120a内に取り込む。
また、インクジェットヘッド122には、ノズル形成面126に形成されているノズルから吐出される吐出物であるレジスト溶液を収容しているタンク130が接続されている。即ち、タンク130とインクジェットヘッド122とは、吐出物を搬送する吐出物搬送管132によって接続されている。また、この吐出物搬送管132は、吐出物搬送管132の流路内の帯電を防止するための吐出物流路部アース継手132aとヘッド部気泡排除弁132bとを備えている。このヘッド部気泡排除弁132bは、後述する吸引キャップ140により、インクジェットヘッド122内の吐出物を吸引する場合に用いられる。即ち、吸引キャップ140によりインクジェットヘッド122内の吐出物を吸引するときは、このヘッド部気泡排除弁132bを閉状態にし、タンク130側から吐出物が流入しない状態にする。そして、吸引キャップ140で吸引すると、吸引される吐出物の流速が上がり、インクジェットヘッド122内の気泡が速やかに排出されることになる。
また、吐出装置120aは、タンク130内に収容されている吐出物の収容量、即ち、タンク130内に収容されているレジスト溶液の液面134aの高さを制御するための液面制御センサ136を備えている。この液面制御センサ136は、インクジェットヘッド122が備えるノズル形成面126の先端部126aとタンク130内の液面134aとの高さの差h(以下、水頭値という)を所定の範囲内に保つ制御を行う。液面134aの高さを制御することで、タンク130内の吐出物134が所定の範囲内の圧力でインクジェットヘッド122に送られることになる。そして、所定の範囲内の圧力で吐出物134を送ることで、インクジェットヘッド122から安定的に吐出物134を吐出することができる。
また、インクジェットヘッド122のノズル形成面126に対向して一定の距離を隔てて、インクジェットヘッド122のノズル内の吐出物を吸引する吸引キャップ140が配置されている。この吸引キャップ140は、図2中に矢印で示すZ軸に沿った方向に移動可能に構成されており、ノズル形成面126に形成された複数のノズルを囲むようにノズル形成面126に密着し、ノズル形成面126との間に密閉空間を形成してノズルを外気から遮断できる構成となっている。なお、吸引キャップ140によるインクジェットヘッド122のノズル内の吐出物の吸引は、インクジェットヘッド122が吐出物134を吐出をしていない状態、例えば、インクジェットヘッド122が、退避位置等に退避しており、テーブル128が破線で示す位置に退避しているときに行われる。
また、この吸引キャップ140の下方には、流路が設けられており、この流路には、吸引バルブ142、吸引異常を検出する吸引圧検出センサ144及びチューブポンプ等からなる吸引ポンプ146が配置されている。また、この吸引ポンプ146等で吸引され、流路を搬送されてきた吐出物134は、廃液タンク148内に収容される。
なお、吐出装置120b〜120kの構成は、吐出装置120aと同様の構成であるため説明を省略するが、以下の説明において、吐出装置120b〜120kの各構成には、吐出装置120aの説明において各構成に用いたのと同一の符号を用いて説明を行う。なお、吐出装置120b〜120kにそれぞれ備えられているタンク130には、各吐出装置120b〜120kにおいて行われる所定の処理に必要な吐出物が収容されている。例えば、吐出装置120b及び吐出装置120kのタンク130には、ガス流路を形成する際に行われるエッチング用の吐出物が、吐出装置120c及び吐出装置120iのタンク130には、集電層を形成するための吐出物がそれぞれ収容されている。また、吐出装置120d及び吐出装置120hのタンク130には、ガス拡散層を形成するための吐出物が、吐出装置120e及び吐出装置120gのタンク130には、反応層を形成するための吐出物が、吐出装置120fのタンク130には、電解質膜を形成するための吐出物がそれぞれ収容されている。また、吐出装置120jのタンク130には、吐出装置120aのタンク130に収容されている基板に対してガス流路を形成するための吐出物と同様の吐出物が収容されている。
次に、図3のフローチャート及び図面を参照して、この発明の第1の実施の形態に係る吐出装置120a〜120kを用いた燃料電池の製造方法について説明する。
まず、基板に反応ガスを供給するためのガス流路を形成する(ステップS10)。即ち、まず、図4(a)に示すように矩形平板形状であって、例えば、シリコン素材の基板(第1の基板)102をベルトコンベアBC11により吐出装置120aまで搬送する。ベルトコンベアBC11により搬送された基板102は、吐出装置120aのテーブル128上に載置され、吐出装置120a内に取り込まれる。吐出装置120aにおいては、ノズル形成面126のノズルを介してタンク130内に収容されているレジスト溶液を吐出し、テーブル128上に載置されている基板102の上面の所定の位置に塗布する。ここで、レジスト溶液は、図4(b)に示すように、図中、手前方向から奥に向かって所定の間隔をおいて直線状に塗布される。即ち、基板102において、例えば、水素を含有する第1の反応ガスを供給するためのガス流路(第1のガス流路)を形成する部分を残して、それ以外の部分に対してのみレジスト溶液が塗布される。
ここで、レジスト溶液は、ガス拡散層を構成するために用いられる物質、例えば、多孔質のカーボンの粒径に比較して狭い間隔を空けて塗布される。即ち、形成されるガス流路の開口幅が、ガス拡散層を構成するカーボンの粒径に比較して狭くなるようにレジスト溶液が塗布される。
次に、所定の位置にレジスト溶液が塗布された基板102(図4(b)参照)は、ベルトコンベアBC11により吐出装置120bまで搬送され、吐出装置120bのテーブル128上に載置されて吐出装置120b内に取り込まれる。吐出装置120bにおいては、タンク130内に収容されているガス流路を形成するために行われるエッチング用の溶剤、例えば、フッ酸水溶液をノズル形成面126のノズルを介して吐出し、テーブル128上に載置されている基板102の上面の全体に塗布する。
ここで、基板102には、ガス流路を形成する部分以外の部分にレジスト溶液が塗布されているため、レジスト溶液が塗布されていない部分がフッ酸水溶液によりエッチングされ、図5(a)に示すように、ガス流路が形成される。即ち、基板102の一方の側面から他方の側面に延びる断面コ字形状であって、開口幅がガス拡散層用のカーボン粒子の粒径に比較して狭いガス流路が形成される。また、図5(a)に示すようにガス流路が形成された基板102は、図示しない洗浄装置においてレジストの洗浄が行われ、レジストが取り除かれる(図5(b)参照)。そして、ガス流路が形成された基板102は、テーブル128からベルトコンベアBC11へと移され、ベルトコンベアBC11により吐出装置120cへと搬送される。
次に、基板102上に、反応ガスが反応することにより発生した電子を集めるための集電層(第1の集電層)を形成する(ステップS11)。即ち、まず、ベルトコンベアBC11により吐出装置120cまで搬送された基板102を、テーブル128上に載置して吐出装置120c内に取り込む。吐出装置120cにおいては、タンク130内に収容されている集電層106を形成する材料、例えば、銅等の導電性物質をノズル形成面126のノズルを介してテーブル128上に載置されている基板102上に吐出する。この時、導電性物質は、ガス流路に供給された反応ガスの拡散を妨げることがない形状に、例えば、網目形状等になるように吐出され集電層106が形成される。
図6は、集電層106が形成された基板102の端面図である。この図6に示すように、例えば、銅等の導電性物質を網目形状に吐出することにより、集電層106が形成される。なお、集電層106が形成された基板102は、テーブル128からベルトコンベアBC11へと移され、ベルトコンベアBC11により吐出装置120dへと搬送される。
次に、ステップS11において形成された集電層106の上に、基板102に形成されたガス流路を介して供給される反応ガスを拡散させるためのガス拡散層(第1のガス拡散層)を形成する(ステップS12)。即ち、まず、ベルトコンベアBC11により吐出装置120dまで搬送された基板102を、テーブル128上に載置して吐出装置120d内に取り込む。吐出装置120dにおいては、タンク130内に収容されているガス拡散層108を形成するための材料、例えば、カーボン粒子を集電層106上にノズル形成面126のノズルを介して吐出し、ガス流路を介して供給された反応ガス(第1の反応ガス)を拡散させるためのガス拡散層108を形成する。
図7は、ガス拡散層108が形成された基板102の端面図である。この図7に示すように、例えば、電極としての機能も有するカーボン粒子を集電層106上に吐出し、反応ガスを拡散させるためのガス拡散層108が形成される。ここで、ガス拡散層108を構成するカーボン粒子としては、ガス流路を介して供給された反応ガスを十分に拡散させることができる程度の大きさであって、かつ、多孔質のカーボンが用いられる。例えば、直径0.1〜1ミクロン程度の粒子径の多孔質カーボンが用いられる。ここで、ガス流路の開口幅が1ミクロン未満となっている場合には、ガス拡散層を構成するカーボン粒子として粒径が1ミクロン以上のカーボン粒子が用いられる。また、ガス拡散層108が形成された基板102は、テーブル128からベルトコンベアBC11へと移され、ベルトコンベアBC11により吐出装置120eへと搬送される。
次に、ステップS12において形成されたガス拡散層108の上に、基板102に形成されたガス流路を介して供給される反応ガスが反応する反応層(第1の反応層)を形成する(ステップS13)。即ち、ベルトコンベアBC11により吐出装置120eまで搬送された基板102を、テーブル128上に載置して吐出装置120e内に取り込む。吐出装置120eにおいては、タンク130内に収容されている反応層を形成する材料、例えば、粒子径が数nm〜数十nmの触媒用の白金微粒子を担持したカーボン粒子(白金担持カーボン)をガス拡散層108上に吐出して反応層110を形成する。ここで、白金微粒子を担持しているカーボンは、ガス拡散層108を構成するカーボン粒子と同様のカーボン粒子、即ち、同様の粒径であって、かつ、多孔質のカーボンが用いられる。なお、溶媒に分散剤を添加することにより白金微粒子を分散させてガス拡散層108上に塗布した後に、例えば、窒素雰囲気中で200℃に基板102を加熱することにより、分散剤を除去し、反応層110を形成するようにしてもよい。この場合には、ガス拡散層108を構成するカーボン粒子の表面上に触媒として白金微粒子を付着させることによって反応層110が形成される。
図8は、反応層110が形成された基板102の端面図である。この図8に示すように、触媒としての白金微粒子を担持したカーボンがガス拡散層108上に塗布されることにより反応層110が形成される。なお、図8において、反応層110とガス拡散層108とを容易に識別することができるように、反応層110としては白金微粒子のみを示している。また、以下の図においても反応層は、図8と同様に示すものとする。反応層110が形成された基板102は、テーブル128からベルトコンベアBC11へと移され、ベルコトンベアBC11により吐出装置120fへと搬送される。
次に、ステップS13で形成された反応層110上にイオン交換膜等の電解質膜を形成する(ステップS14)。即ち、まず、ベルトコンベアBC11により吐出装置120fまで搬送された基板102を、テーブル128上に載置して吐出装置120f内に取り込む。吐出装置120fにおいては、タンク130内に収容されている電解質膜を形成する材料、例えば、タングスト燐酸、モリブド燐酸等のセラミックス系固体電解質を所定の粘度に調整した材料を、ノズル形成面126のノズルを介して反応層110上に吐出して電解質膜12を形成する。
図9は、電解質膜112が形成された基板102の端面図である。この図9に示すように、反応層110上に所定の厚さを有する電解質膜112が形成される。なお、電解質膜112が形成された基板102は、テーブル128からベルトコンベアBC11へと移され、ベルトコンベアBC11により吐出装置120gへと搬送される。
次に、ステップS14において形成された電解質膜112上に反応層(第2の反応層)を形成する(ステップS15)。即ち、ベルトコンベアBC11により吐出装置120gまで搬送された基板102を、テーブル128上に載置して吐出装置120g内に取り込む。吐出装置120gにおいては、吐出装置120eにおいて行われた処理と同様の処理により触媒としての白金微粒子を担持したカーボンを吐出し、反応層110´を形成する。
図10は、電解質膜112上に反応層110´が形成された基板102の端面図である。この図10に示すように、電解質膜112上に触媒としての白金微粒子を担持したカーボンが塗布されることによって、反応層110´が形成される。ここで、反応層110´は、第2の反応ガス、例えば、酸素を含有する反応ガスに基づいて反応する層である。
次に、ステップS15において形成された反応層110´上に反応ガス(第2の反応ガス)を拡散させるためのガス拡散層(第2のガス拡散層)を形成する(ステップS16)。即ち、反応層110´が形成された基板102は、ベルトコンベアBC11により吐出装置120hまで搬送され、吐出装置120hにおいて、吐出装置120dにおいて行われた処理と同様の処理により所定の粒径の多孔質のカーボンが塗布され、ガス拡散層108´が形成される。
図11は、反応層110´上にガス拡散層108´が形成された基板102の端面図である。この図11に示すように、反応層110´上に多孔質のカーボンが塗布されることによって、ガス拡散層108´が形成される。
次に、ステップS16において形成されたガス拡散層108´上に集電層(第2の集電層)を形成する(ステップS17)。即ち、ベルトコンベアBC11により吐出装置120iまで搬送された基板102を、テーブル128上に載置して吐出装置120i内に取り込み、吐出装置120cにおいて行われた処理と同様の処理により、集電層106´がガス拡散層108´上に形成される。
図12は、ガス拡散層108´上に集電層106´が形成された基板102の端面図である。この図12に示すように、上述のステップS17の処理により集電層106´が形成される。なお、集電層106´が形成された基板102は、テーブル128からベルトコンベアBC11へと移され、組立装置160へと搬送される。
次に、ステップS17において集電層が形成された基板(第1の基板)上にガス流路が形成された基板(第2の基板)を配置することによって燃料電池を組み立てる(ステップS18)。即ち、組立装置160において、ベルトコンベアBC11を介して搬入された基板102(第1の基板)上にベルトコンベアBC12を介して搬入された基板102´(第2の基板)を配置することにより、燃料電池の組立を行う。ここで、基板102´には、上述のステップS10〜ステップS17における処理とは別に、第2のガス流路が形成されている。即ち、吐出装置120j及び吐出装置120kにおいて、吐出装置120a及び吐出装置120bにより行われる処理と同様の処理により、第2のガス流路が形成されている。従って、基板2に形成されている一方の側面から他方の側面へと延びる断面コ字形状のガス流路と、基板102´に形成されている断面コ字形状のガス流路とが平行になるように基板102´を配置して燃料電池の組立を行い、燃料電池の製造を完了する。
図13は、完成した燃料電池の端面図である。この図13に示すように、第2のガス流路が形成された基板102´を基板102の所定の位置に配置することによって第1の基板に形成された第1のガス流路を介して第1の反応ガスを供給し、第2の基板に形成された第2のガス流路を介して第2の反応ガスを供給する燃料電池の製造が完了する。
この第1の実施の形態に係る燃料電池によれば、燃料電池のガス流路の開口幅が、ガス拡散層を形成するために用いられるカーボン粒子の粒径に比較して狭い。従って、ガス流路内において反応ガスが流れる空間を確保するために粒径の大きなカーボン粒子を別途配置することなく、確実に反応ガスを供給するための空間をガス流路内に確保することができる。
また、第1の実施の形態に係る燃料電池の製造方法によれば、インクジェット式の吐出装置を用いて基板上にガス流路を形成し、燃料電池を製造している。従って、カーボン粒子の粒径に比較して開口幅が狭い微細なガス流路を、インクジェット式の吐出装置を用いることにより容易に形成することができる。そのため、MEMSのように高額な半導体プロセス用の機器を用いることなく、微細な開口幅のガス流路を形成することができ、燃料電池の製造コストの低減を図ることができる。
また、第1の実施の形態に係る燃料電池の製造方法によれば、ガス拡散層を形成するために用いられるカーボン粒子と異なる粒径の大きなカーボン粒子を別途用意する必要が無い。従って、燃料電池を製造するために用いられる材料数を減らすことができると共に、余分な作業工程を省いて効率的に燃料電池を製造することができる。
次に、第2の実施の形態に係る燃料電池の製造方法について説明する。なお、この第2の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態と同一の構成には、第1の実施の形態で用いたのと同一の符号を付して、その説明を行う。図14は、この第2の実施の形態に係る燃料電池製造ラインを示す図である。この図14に示すように、この第2の実施の形態に係る燃料電池製造ラインにおいては、第1の実施の形態の吐出装置120a、120bにおいて行われる処理が吐出装置120oにおいて行われ、第1の実施の形態の吐出装置120j、120kにおいて行われる処理が吐出装置120pにおいて行われる。その他の点については、第1の実施の形態に係る燃料電池製造ラインと同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
図15は、第2の実施の形態に係る吐出装置120oが備えるインクジェットヘッド及びタンクを説明するための図である。この図15に示すように、吐出装置120oは、第1の実施の形態に係る吐出装置120aが備えるインクジェットヘッド122及びタンク130と同様のインクジェットヘッド及びタンクをそれぞれ2つずつ備えている。この吐出装置120oにおいては、ポジ型レジストとネガ型レジストをそれぞれ基板表面上の所定の位置に吐出することによりガス流路を形成する処理が行われる。従って、ネガ型レジストを収容している第1のタンク130a及び第1のタンク130aに収容されているネガ型レジストを吐出する第1のインクジェットヘッド122a、ポジ型レジストを収容している第2のタンク130b及び第2のタンク130bに収容されているポジ型レジストを吐出する第2のインクジェットヘッド122bを備えている。なお、第1のタンク130aに収容されているネガ型レジスト及び第2のタンク130bに収容されているポジ型レジストは、所定の粘度、例えば、10cPs程度の粘度に調整されている。
第1のインクジェットヘッド122aは、この第1のインクジェットヘッド122aのヘッド本体124aのノズル形成面127aに形成されているノズル(第1のノズル)から吐出されるネガ型レジストを収容している第1のタンク130aと接続されている。また、第2のインクジェットヘッド122bは、この第2のインクジェットヘッド122bのヘッド本体124bのノズル形成面127bに形成されているノズル(第2のノズル)から吐出されるポジ型レジストを収容している第2のタンク130bと接続されている。なお、吐出装置120pの構成は、吐出装置120oと同一の構成であるため説明を省略する。
この第2の実施の形態に係る燃料電池製造ラインにおいては、第1の実施の形態に係る燃料電池製造ラインにおける処理(図3参照)とガス流路を形成する処理のみが異なる処理が行われるため、以下、ガス流路を形成する処理について説明する。
まず、吐出装置120oにおいては、テーブル128上に載置された基板102の上面に、図16(a)に示すように、第1のノズルを介して第1のタンク130aに収容されているネガ型レジスト104aを所定の位置に吐出する。次に、テーブル128を第2のインクジェットヘッド122bに対向する位置まで移動させ、第2のノズルを介して第2のタンク130bに収容されているポジ型レジスト104bを所定の位置に吐出する。
次に、ネガ型レジスト104aとポジ型レジスト104bとが塗布された基板102を図示しない加熱装置において、所定の温度に加熱することによってネガ型レジスト104a及びポジ型レジスト104bを硬化させる。次に、再び吐出装置120aにおいてネガ型レジスト104a及びポジ型レジスト104bを所定の位置に吐出する。そして、上述の処理を繰り返すことにより、図16(b)に示すようにポジ型レジスト104bの断面が開口幅に比較して底面の幅が広い台形状となるようにネガ型レジスト104aとポジ型レジスト104bを塗布し、ガス流路を形成するために用いられる犠牲層104を形成する。ここで、犠牲層104の表面において、ネガ型レジスト104a間の間隔は、犠牲層104の上に形成されるガス拡散層を構成する物質、例えば、多孔質のカーボンの粒径に比較して狭い。
次に、図示しない洗浄装置において、現像液でポジ型レジスト104bを溶解し、ガス流路を形成する(図16(c)参照)。即ち、現像液によりポジ型レジスト104bのみが溶解されることによって基板102上から除去され、ネガ型レジスト104aのみが基板102上に残る。そのため、硬化したネガ型レジスト104aにより開口幅に比較して底面の幅が広い断面台形状のガス流路が形成される。
次に、ガス流路が形成された基板102は、ベルトコンベアBC11により吐出装置120c〜120i間を搬送され、吐出装置120c〜120iのそれぞれにおいて、第1の実施の形態に係る燃料電池製造ラインにおける処理と同様の処理が施される。
そして、組立装置160において、第2のガス流路が形成された基板102´を図13に示すように基板102上に配置することにより燃料電池の製造を完了する。即ち、吐出装置120pにおいて、吐出装置120oにおける処理と同様の処理により、例えば、酸素を含有する第2の反応ガスを供給するための断面台形状の第2のガス流路が形成された基板(第2の基板)102´を、基板102の所定の位置に配置することにより燃料電池の製造を完了する。
この第2の実施の形態に係る燃料電池の製造方法によれば、インクジェット式の吐出装置を用いて、開口幅がガス拡散層を構成するカーボン粒子の粒径に比較して狭いガス流路を形成している。即ち、ネガ型レジストとポジ型レジストとをそれぞれ基板表面上の所定の位置に吐出することにより犠牲層を形成し、形成された犠牲層において、ポジ型レジストのみを除去することにより断面台形状のガス流路を形成している。従って、ガス拡散層を構成するカーボン粒子がガス流路内に入り込むことによってガス流路が塞がれることを防止することができる。
また、断面台形状のガス流路、即ち、開口幅がガス拡散層を構成するカーボン粒子の粒径に比較して狭く、底面が開口幅よりも広いガス流路が形成される。そのため、ガス流路を介して供給されるガスの量を減少させることなく、供給される反応ガスが流れる空間が十分に確保されたガス流路が形成された燃料電池を製造することができる。
なお、上述の第2の実施の形態に係る燃料電池の製造方法においては、ネガ型レジストを用いてガス流路を形成しているが、例えば、UV硬化樹脂用いてガス流路を形成するようにしてもよい。即ち、UV硬化樹脂を図16(c)に示すネガ型レジストと同様の形状に吐出することによって、断面台形状のガス流路を形成するようにしてもよい。また、例えば、ネガ型レジストに代えて透明樹脂を吐出し、ポジ型レジストに代えて黒インクを吐出するようにしてもよい。この場合には、図16(b)に示すように透明樹脂と黒インクとにより犠牲層が形成された後に、光を照射して黒インクの部分のみを焼いて除去し、残った透明樹脂により断面台形状のガス流路を形成することができる。
また、上述の第2の実施の形態に係る燃料電池の製造方法においては、断面台形状のガス流路を形成しているが、開口幅がガス拡散層を構成するカーボン粒子の粒径より狭く、底面が開口幅より広い他の形状のガス流路を形成してもよい。例えば、断面L字形状のガス流路を形成するようにしてもよい。断面L字形状のガス流路においても、ガス流路内にガス拡散層を構成するカーボン粒子が入りこむことが防止されると共に、十分な量の反応ガスを供給することができる。
次に、この発明の第3の実施の形態に係る燃料電池の製造方法について説明する。図17は、第3の実施の形態に係る燃料電池の製造工程を実行する燃料電池製造ラインの構成を示す図である。この図17に示すように、燃料電池製造ラインは、ガス流路形成装置214a、214b及び吐出装置220a〜220g、ガス流路形成装置214a、吐出装置220a〜220g及び組立装置260を接続するベルトコンベアBC21、ガス流路形成装置214b及び組立装置260を接続するベルトコンベアBC22、ベルトコンベアBC21、BC22を駆動させる駆動装置258及び燃料電池製造ライン全体の制御を行う制御装置256により構成されている。
ガス流路形成装置214a及び吐出装置220a〜220gは、ベルトコンベアBC21に沿って所定の間隔で一列に配置されており、ガス流路形成装置214bはベルトコンベアBC22に沿って配置されている。また、制御装置256は、ガス流路形成装置214a、214b、各吐出装置220a〜220g、駆動装置258及び組立装置260に接続されている。制御装置256からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC21を駆動させ、燃料電池の基板(以下、単に「基板」とする。)をガス流路形成装置214a及び各吐出装置220a〜220gに搬送して、ガス流路形成装置214a及び各吐出装置220a〜220gにおける処理を行う。同様に、制御装置256からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC22を駆動させ、基板をガス流路形成装置214bに搬送してこのガス流路形成装置214bにおける処理を行う。また、組立装置260においては、制御装置256からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC21及びベルトコンベアBC22を介して搬入された基板により燃料電池の組み立てを行う。
この燃料電池製造ラインにおいては、ガス流路形成装置214aにおいてガス流路を形成する処理が行われる。また、吐出装置220aにおいて、集電層を形成する処理が行われ、吐出装置220bにおいて、ガス拡散層を形成する処理が行われ、吐出装置220cにおいて、反応層を形成する処理が行われる。また、吐出装置220dにおいて、電解質膜を形成する処理が行われ、吐出装置220eにおいて、反応層を形成する処理が行われる。更に、吐出装置220fにおいて、ガス拡散層を形成する処理が行われ、吐出装置220gにおいて、集電層を形成する処理が行われる。
また、ガス流路形成装置214bにおいて、基板に対してガス流路を形成するための処理が行われる。なお、ガス流路形成装置214a及び吐出装置220a〜220gにおいて第1の基板に対して処理を施す場合には、ガス流路形成装置214bにおいては、第2の基板に対してガス流路を形成する処理が施される。
また、吐出装置220a〜220gの構成は、第1の実施の形態に係る吐出装置120aと同様の構成(図2参照)であるため説明を省略するが、以下の説明において、吐出装置220a〜220gの各構成には、吐出装置120aの説明において各構成に用いたのと同一の符号を用いて説明を行う。なお、吐出装置220a〜220gにそれぞれ備えられているタンク130には、各吐出装置220a〜220gにおいて行われる所定の処理に必要な吐出物が収容されている。例えば、吐出装置220a及び吐出装置220gのタンク130には、集電層を形成するための吐出物が収容されている。また、吐出装置220b及び吐出装置220fのタンク130には、ガス拡散層を形成するための吐出物が、吐出装置220c及び吐出装置220eのタンク130には、反応層を形成するための吐出物が、吐出装置220dのタンク130には、電解質膜を形成するための吐出物がそれぞれ収容されている。
次に、図18のフローチャート及び図面を参照して、第3の実施の形態に係るガス流路形成装置214a、214b及び吐出装置220a〜220gを用いた燃料電池の製造方法について説明する。
まず、基板に反応ガスを供給するためのガス流路を形成する(ステップS20)。即ち、まず、図19(a)に示すように矩形平板形状であって、例えば、シリコン素材の基板(第1の基板)202をベルトコンベアBC21によりガス流路形成装置214aまで搬送する。ベルトコンベアBC21によりガス流路形成装置214aに搬送された基板202の表面に樹脂204、例えば、光硬化性樹脂又は熱硬化型樹脂が塗布される(図19(b)参照)。なお、基板202の表面には、未硬化状態であって、低粘度の樹脂204、例えば、20mPa・s程度の粘度の樹脂204が塗布される。
次に、予め形成されているガス流路形成型を樹脂204に押し付け、樹脂204にガス流路形成型の形状を転写することによって、ガス流路の上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっているガス流路を形成する。なお、ガス流路形成型は、予め石英ガラス等により形成されている。
次に、ガス流路形成型の背面から光を、例えば、短波長のレーザー光を照射し、照射されたレーザー光により、樹脂204を硬化させることによって、ガス流路形成型の形状を樹脂204に転写させる。即ち、樹脂204が低粘度であるため、ガス流路形成型を押し付けたままの状態で樹脂204を硬化させる。そして、樹脂204が硬化した後にガス流路形成型を取り外してガス流路を形成する。なお、ガス流路形成型には、硬化させた樹脂204から容易に取り外すことができるように剥離剤が塗布されている。
ここで、ガス流路は、吐出装置を用いて形成するようにしてもよい。即ち、基板202上に、上流側から下流側に向かって漸次流路幅が広がる形状にフッ酸水溶液を吐出装置により塗布して所望形状のガス流路を形成するようにしてもよい。また、基板202上に、上流側から下流側に向かって漸次流路幅が広がる形状に樹脂204を吐出装置により塗布して所望形状のガス流路を形成するようにしてもよい。
また、吐出装置を用いてガス流路を形成する場合、例えば、樹脂204を基板202上に直接塗布する場合は、少量の樹脂204を基板202上に直接塗布して硬化させ、硬化させた樹脂204の上に更に樹脂204を塗布して再び硬化させる処理を繰り返して、任意の断面形状を有し、上流側から下流側に向かって漸次流路幅が広がっているガス流路を形成することができる。
図20は、ガス流路が形成された基板を示す図である。図20(a)は、上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっており、かつ、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路を、供給口(図中矢印で示す方向から反応ガスを供給する)が互い違いとなるように形成されている基板202を示す図である。即ち、基板202の一端部に反応ガスを供給するための供給口を有すると共に、供給口を有する一端部に対向する他端部に、供給された反応ガスを排出する排出口を有するガス流路が交互に形成されている。なお、図20(a)に示す基板2には、ガス流路内において反応ガスのガス圧力を適切に調整すべく、上流側から下流側に向けてガス流路の流路幅が供給口の幅より狭くなった後、下流側に向けて漸次広くなり、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路が形成されている。
図20(b)は、上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっており、かつ、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路であって、供給口(図中矢印で示す方向から反応ガスを供給する)が基板202の一端部に位置するように形成された基板202を示す図である。即ち、基板202の一端部に反応ガスを供給するための供給口を有すると共に、他端部に反応ガスを排出するための排出口を有するガス流路が形成されている。なお、図20(b)に示す基板2には、ガス流路の下流側において低下している反応ガスのガス圧力を調整すべく、最下流部において再度流路幅が狭くなるガス流路が形成されている。
図20(c)は、上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっており、かつ、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路であって、半数のガス流路の供給口(図中矢印で示す方向から反応ガスを供給する)が基板202の一端部に位置し、残りの半数の供給口が基板202の他端部に位置するように形成されている基板202を示す図である。即ち、ガス流路の中で、半数のガス流路は基板202の一端部に供給口を有すると共に基板202の他端部に排出口を有しており、残りのガス流路は基板202の一端部に排出口を有すると共に基板202の他端部に供給口を有しているガス流路が形成されている。なお、図20(c)に示す基板には、ガス流路の下流側において低下している反応ガスのガス圧力を調整すべく、最下流部において再度流路幅が狭くなるガス流路が形成されている。また、ステップS20において形成されるガス流路は、図20に示す何れのガス流路であってもよい。また、形成されるガス流路の断面形状は、半円形状、半楕円形状等となっていてもよい。
上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっており、かつ、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路が形成された基板202は、ガス流路形成装置214aからベルトコンベアBC21へと移され、ベルトコンベアBC21により吐出装置220aへと搬送される。
次に、基板202上に、反応ガスが反応することにより発生した電子を集めるための集電層(第1の集電層)を形成する(ステップS21)。即ち、まず、ベルトコンベアBC21により吐出装置220aまで搬送された基板202を、テーブル128上に載置して吐出装置220a内に取り込む。吐出装置220aにおいては、タンク130内に収容されている集電層206を形成する材料、例えば、銅等の導電性物質をノズル形成面126のノズルを介してテーブル128上に載置されている基板202上に吐出する。この時、導電性物質は、ガス流路に供給された反応ガスの拡散を妨げることがない形状に、例えば、網目形状等になるように吐出され集電層206が形成される。
図21は、集電層206が形成された基板202の端面図である。この図21に示すように、例えば、銅等の導電性物質を網目形状に吐出することにより、集電層206が形成される。なお、図21においては、上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっており、かつ、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路を模式的に示している。また、以下の図においてもガス流路は図21と同様に示すものとする。また、集電層206が形成された基板202は、テーブル128からベルトコンベアBC21へと移され、ベルトコンベアBC21により吐出装置220bへと搬送される。
次に、ステップS21において形成された集電層206の上に、基板202に形成されたガス流路を介して供給される反応ガスを拡散させるためのガス拡散層(第1のガス拡散層)を形成する(ステップS22)。即ち、まず、ベルトコンベアBC21により吐出装置220bまで搬送された基板202を、テーブル128上に載置して吐出装置220b内に取り込む。吐出装置220bにおいては、タンク130内に収容されているガス拡散層208を形成するための材料、例えば、カーボン粒子を集電層206上にノズル形成面126のノズルを介して吐出し、ガス流路を介して供給された反応ガス(第1の反応ガス)を拡散させるためのガス拡散層208を形成する。
図22は、ガス拡散層208が形成された基板202の端面図である。この図22に示すように、例えば、電極としての機能も有するカーボン粒子を集電層206上に吐出し、反応ガスを拡散させるためのガス拡散層208が形成される。ここで、ガス拡散層208を構成するカーボン粒子としては、ガス流路を介して供給された反応ガスを十分に拡散させることができる程度の大きさであって、かつ、多孔質のカーボンが用いられる。例えば、直径0.1〜1ミクロン程度の粒子径の多孔質カーボンが用いられる。また、ガス拡散層208が形成された基板202は、テーブル128からベルトコンベアBC21へと移され、ベルトコンベアBC21により吐出装置220cへと搬送される。
次に、ステップS22において形成されたガス拡散層208の上に、基板202に形成されたガス流路を介して供給される反応ガスが反応する反応層(第1の反応層)を形成する(ステップS23)。即ち、ベルトコンベアBC21により吐出装置220cまで搬送された基板202を、テーブル128上に載置して吐出装置220c内に取り込む。吐出装置220cにおいては、タンク130内に収容されている反応層を形成する材料、例えば、粒子径が数nm〜数十nmの触媒用の白金微粒子を担持したカーボン粒子(白金担持カーボン)をガス拡散層208上に吐出して反応層210を形成する。ここで、白金微粒子を担持しているカーボンは、ガス拡散層208を構成するカーボン粒子と同様のカーボン粒子、即ち、同様の粒径であって、かつ、多孔質のカーボンが用いられる。なお、溶媒に分散剤を添加することにより白金微粒子を分散させてガス拡散層208上に塗布した後に、例えば、窒素雰囲気中で200℃に基板2を加熱することにより、分散剤を除去し、反応層210を形成するようにしてもよい。この場合には、ガス拡散層208を構成するカーボン粒子の表面上に触媒として白金微粒子を付着させることによって反応層210が形成される。
図23は、反応層210が形成された基板2の端面図である。この図23に示すように、触媒としての白金微粒子を担持したカーボンがガス拡散層208上に塗布されることにより反応層210が形成される。なお、図23において、反応層210とガス拡散層208とを容易に識別することができるように、反応層210としては白金微粒子のみを示している。また、以下の図においても反応層は、図23と同様に示すものとする。反応層210が形成された基板202は、テーブル128からベルトコンベアBC21へと移され、ベルコトンベアBC21により吐出装置220dへと搬送される。
次に、ステップS23で形成された反応層210上にイオン交換膜等の電解質膜を形成する(ステップS24)。即ち、まず、ベルトコンベアBC21により吐出装置220dまで搬送された基板202を、テーブル128上に載置して吐出装置220d内に取り込む。吐出装置220dにおいては、タンク130内に収容されている電解質膜を形成する材料、例えば、パーフルオロカーボン、スルホン酸ポリマー(例えば、Nafion(登録商標))を含む溶液を、ノズル形成面126のノズルを介して反応層210上に吐出して電解質膜212を形成する。
図24は、電解質膜212が形成された基板202の端面図である。この図24に示すように、反応層210上に所定の厚さを有する電解質膜212が形成される。なお、電解質膜212が形成された基板202は、テーブル128からベルトコンベアBC21へと移され、ベルトコンベアBC21により吐出装置220eへと搬送される。
次に、ステップS24において形成された電解質膜212上に反応層(第2の反応層)を形成する(ステップS25)。即ち、ベルトコンベアBC21により吐出装置220eまで搬送された基板202を、テーブル128上に載置して吐出装置220e内に取り込む。吐出装置220eにおいては、吐出装置220cにおいて行われた処理と同様の処理により触媒としての白金微粒子を担持したカーボンを吐出し、反応層210´を形成する。
図25は、電解質膜212上に反応層210´が形成された基板202の端面図である。この図25に示すように、電解質膜212上に触媒としての白金微粒子を担持したカーボンが塗布されることによって、反応層210´が形成される。ここで、反応層210´は、第2の反応ガス、例えば、酸素を含有する反応ガスに基づいて反応する層である。
次に、ステップS25において形成された反応層210´上に反応ガス(第2の反応ガス)を拡散させるためのガス拡散層(第2のガス拡散層)を形成する(ステップS26)。即ち、反応層210´が形成された基板202は、ベルトコンベアBC21により吐出装置220fまで搬送され、吐出装置220fにおいて、吐出装置220bにおいて行われた処理と同様の処理により所定の粒径の多孔質のカーボンが塗布され、ガス拡散層208´が形成される。
図26は、反応層210´上にガス拡散層208´が形成された基板202の端面図である。この図26に示すように、反応層210´上に多孔質のカーボンが塗布されることによって、ガス拡散層208´が形成される。
次に、ステップS26において形成されたガス拡散層208´上に集電層(第2の集電層)を形成する(ステップS27)。即ち、ベルトコンベアBC21により吐出装置220gまで搬送された基板202を、テーブル128上に載置して吐出装置220g内に取り込み、吐出装置220aにおいて行われた処理と同様の処理により、集電層206´がガス拡散層208´上に形成される。
図27は、ガス拡散層208´上に集電層206´が形成された基板202の端面図である。この図27に示すように、上述のステップS27の処理により集電層206´が形成される。なお、集電層206´が形成された基板202は、テーブル128からベルトコンベアBC21へと移され、組立装置260へと搬送される。
次に、ステップS27において集電層が形成された基板(第1の基板)上にガス流路が形成された基板(第2の基板)を配置することによって燃料電池を組み立てる(ステップS28)。即ち、組立装置260において、ベルトコンベアBC21を介して搬入された基板202(第1の基板)上にベルトコンベアBC22を介して搬入された基板202´(第2の基板)を配置することにより、燃料電池の組立を行う。ここで、基板202´には、上述のステップS20〜ステップS27における処理とは別に、第2のガス流路が形成されている。即ち、ガス流路形成装置214bにおいて、ガス流路形成装置214aにおいて行われた処理と同様の処理により、第2のガス流路が形成されている。従って、基板202に形成されている上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっており、かつ、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路と、基板202´に形成されている上流側から下流側に向かって流路幅漸次広がっており、かつ、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路とが直交するように基板202´を配置する。即ち、図28(a)に示す基板202に、図28(b)に示す基板202´を基板202に形成されているガス流路と基板202´に形成されているガス流路とが直交するように配置して燃料電池の組立を行い、燃料電池の製造を完了する。
図29は、図28(a)に示す基板202に図28(b)に示す基板202´を配置して製造された燃料電池における反応ガスの流れを示す図である。この図29に示すように、基板202において図中縦方向の中心線202aから基板202の右側と左側とで供給される反応ガスの流れの方向が反転している。また、基板202において図中横方向の中心線202bから基板202の上側と下側とで供給される反応ガスの流れの方向が反転している。従って、例えば、中心線202aの右側及び左側のそれぞれにおいて、ガス流路の上流側と下流側とが位置しているために、反応層に供給される反応ガスのガス量を確実に均一に保つことができる。また、例えば、酸素を含有する第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給装置と水素を含有する第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給装置とをそれぞれ適切に配置することができる。
図30は、完成した燃料電池の端面図である。この図30に示すように、第2のガス流路が形成された基板202´を基板202の所定の位置に配置することによって第1の基板に形成された第1のガス流路を介して第1の反応ガスを供給し、第2の基板に形成された第2のガス流路を介して第2の反応ガスを供給する燃料電池の製造が完了する。
なお、上述の第3の実施の形態に係る製造方法により製造された燃料電池は、電子機器、特に携帯用電子機器、例えば、携帯電話等に電力供給源として組み込むことができる。即ち、上述の燃料電池の製造方法によれば、上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっているガス流路を形成することにより、反応ガスの反応効率を向上させた小型の燃料電池を容易に製造することができるため、例えば、携帯電話等の小型電子機器に電力供給源として組み込むことができる。
この第3の実施の形態に係る燃料電池によれば、上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっており、かつ、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路が形成されている。従って、ガス流路の上流側と下流側とで反応層に供給される反応ガスのガス量にバラつきが出来ることを防止し、ガス流路の上流側と下流側とで均一なガス量の反応ガスを反応層に供給することができる。
また、上述の第3の実施の形態に係る燃料電池によれば、反応層に供給される反応ガスのガス量をガス流路の上流側と下流側とで均一に保つことができるため、反応層において触媒として用いられている高価な白金を有効に機能させて反応ガスの反応効率を向上させ、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
また、上述の第3の実施の形態に係る燃料電池の製造方法によれば、上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっており、かつ、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路が形成されている。従って、ガス流路内において反応ガスのガス圧力を適切に調整し、発電効率を向上させた燃料電池を製造することができる。
なお、上述の第3の実施の形態に係る燃料電池においては、上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっており、かつ、最下流部において再度流路幅が狭くなっているガス流路が形成されているが、最下流部まで流路幅が漸次広がっている形状のガス流路を形成するようにしてもよい。
また、上述の第3の実施の形態に係る燃料電池の製造方法においては、ガス流路形成装置においてガス流路形成型を用いてガス流路を形成しているが、ガス流路形成型を用いることなくガス流路を形成するようにしてもよい。例えば、吐出装置を用いてレジスト溶液を基板上において所定形状に塗布した後に、エッチング溶液を吐出することによって上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっているガス流路を形成するようにしてもよい。また、吐出装置を用いて、樹脂を基板上に塗布することにより、上流側から下流側に向かって流路幅が漸次広がっているガス流路を形成するようにしてもよい。
また、上述の第3の実施の形態に係る燃料電池の製造方法においては、小型の燃料電池を製造しているが、複数の燃料電池を積層させることによって大型の燃料電池を製造するようにしてもよい。即ち、図31に示すように、製造された燃料電池の基板202´の裏面に更にガス流路を形成し、ガス流路が形成された基板202´の裏面上に、上述の燃料電池の製造方法における製造工程と同様にしてガス拡散層、反応層、電解質膜等を形成して燃料電池を積層させることによって大型の燃料電池を製造するようにしてもよい。このように、大型の燃料電池が製造された場合には、例えば、電気自動車の電力供給源として用いることができ、地球環境に適切に配慮したクリーンエネルギーの自動車を提供することができる。
次に、この発明の第4の実施の形態に係る燃料電池の製造方法について説明する。図32は、第4の実施の形態に係る燃料電池の製造工程を実行する燃料電池製造ラインの構成を示す図である。この図32に示すように、燃料電池製造ラインは、ガス流路形成装置314a、314b及び吐出装置320a〜320g、ガス流路形成装置314a、吐出装置320a〜320g及び組立装置360を接続するベルトコンベアBC31、ガス流路形成装置314b及び組立装置360を接続するベルトコンベアBC32、ベルトコンベアBC31、BC32を駆動させる駆動装置358及び燃料電池製造ライン全体の制御を行う制御装置356により構成されている。
ガス流路形成装置314a及び吐出装置320a〜320gは、ベルトコンベアBC31に沿って所定の間隔で一列に配置されており、ガス流路形成装置314bはベルトコンベアBC32に沿って配置されている。また、制御装置356は、ガス流路形成装置314a、314b、各吐出装置320a〜320g、駆動装置358及び組立装置360に接続されている。制御装置356からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC31を駆動させ、燃料電池の基板(以下、単に「基板」とする。)をガス流路形成装置314a及び各吐出装置320a〜320gに搬送して、ガス流路形成装置314a及び各吐出装置320a〜320gにおける処理を行う。同様に、制御装置356からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC32を駆動させ、基板をガス流路形成装置314bに搬送してこのガス流路形成装置314bにおける処理を行う。また、組立装置360においては、制御装置356からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC31及びベルトコンベアBC32を介して搬入された基板により燃料電池の組み立てを行う。
この燃料電池製造ラインにおいては、ガス流路形成装置314aにおいてガス流路を形成する処理が行われる。また、吐出装置320aにおいて、集電層を形成する処理が行われ、吐出装置320bにおいて、ガス拡散層を形成する処理が行われ、吐出装置320cにおいて、反応層を形成する処理が行われる。また、吐出装置320dにおいて、電解質膜を形成する処理が行われ、吐出装置320eにおいて、反応層を形成する処理が行われる。更に、吐出装置320fにおいて、ガス拡散層を形成する処理が行われ、吐出装置320gにおいて、集電層を形成する処理が行われる。
また、ガス流路形成装置314bにおいて、基板に対してガス流路を形成するための処理が行われる。なお、ガス流路形成装置314a及び吐出装置320a〜320gにおいて第1の基板に対して処理を施す場合には、ガス流路形成装置314bにおいては、第2の基板に対してガス流路を形成する処理が施される。
また、吐出装置320a〜320gの構成は、第1の実施の形態に係る吐出装置120aと同様の構成(図2参照)であるため説明を省略するが、以下の説明において、吐出装置320a〜320gの各構成には、吐出装置120aの説明において各構成に用いたのと同一の符号を用いて説明を行う。なお、吐出装置320a〜320gにそれぞれ備えられているタンク130には、各吐出装置320a〜320gにおいて行われる所定の処理に必要な吐出物が収容されている。例えば、吐出装置320a及び吐出装置320gのタンク130には、集電層を形成するための吐出物が収容されている。また、吐出装置320b及び吐出装置320fのタンク130には、ガス拡散層を形成するための吐出物が、吐出装置320c及び吐出装置320eのタンク130には、反応層を形成するための吐出物が、吐出装置320dのタンク130には、電解質膜を形成するための吐出物がそれぞれ収容されている。
次に、図33のフローチャート及び図面を参照して、第4の実施の形態に係るガス流路形成装置314a、314b及び吐出装置320a〜320gを用いた燃料電池の製造方法について説明する。
まず、基板に反応ガスを供給するためのガス流路を形成する(ステップS30)。即ち、まず、図34(a)に示すように矩形平板形状であって、例えば、シリコン素材の基板(第1の基板)302をベルトコンベアBC31によりガス流路形成装置314aまで搬送する。ベルトコンベアBC31によりガス流路形成装置314aに搬送された基板302には、基板302の表面に樹脂304、例えば、光硬化性樹脂又は熱硬化型樹脂が塗布される(図34(b)参照)。なお、基板302の表面には、未硬化状態であって、低粘度の樹脂304、例えば、20mPa・s程度の粘度の樹脂304が塗布されている。
次に、予め形成されているガス流路形成型305を樹脂304に押し付け(図35(a)参照)、樹脂304にガス流路形成型5の形状を転写することによって、所定形状のガス流路を形成する。即ち、流路幅がガス流路の上部から底部に向かって漸次減少しているガス流路、例えば、図35(a)に示す曲面を有する断面形状である断面半円形形状のガス流路を形成するためのガス流路形成型305を樹脂304に押し付ける。ここで、ガス流路形成型305は、予め石英ガラス等により形成されている。
次に、ガス流路形成型305の背面から光を、例えば、短波長のレーザー光を照射し、照射されたレーザー光により、樹脂304を硬化させることによって、ガス流路形成型305の形状を樹脂304に転写させる。即ち、樹脂304が低粘度であるため、ガス流路形成型305を押し付けたままの状態で樹脂304を硬化させる。そして、樹脂304が硬化した後にガス流路形成型305を取り外し、図35(b)に示すような断面半円形形状のガス流路を形成する。なお、ガス流路形成型305には、硬化させた樹脂304から容易に取り外すことができるように剥離剤が塗布されている。
流路幅がガス流路の上部から底部に向かって漸次減少しているガス流路が形成された基板302は、ガス流路形成装置314aからベルトコンベアBC31へと移され、ベルトコンベアBC31により吐出装置320aへと搬送される。
次に、基板302上に、反応ガスが反応することにより発生した電子を集めるための集電層(第1の集電層)を形成する(ステップS31)。即ち、まず、ベルトコンベアBC31により吐出装置320aまで搬送された基板302を、テーブル128上に載置して吐出装置320a内に取り込む。吐出装置320aにおいては、タンク130内に収容されている集電層306を形成する材料、例えば、銅等の導電性物質をノズル形成面126のノズルを介してテーブル128上に載置されている基板302上に吐出する。この時、導電性物質は、ガス流路に供給された反応ガスの拡散を妨げることがない形状に、例えば、網目形状等になるように吐出され集電層306が形成される。
図36は、集電層306が形成された基板302の端面図である。この図36に示すように、例えば、銅等の導電性物質を網目形状に吐出することにより、集電層306が形成される。なお、集電層306が形成された基板302は、テーブル128からベルトコンベアBC31へと移され、ベルトコンベアBC31により吐出装置320bへと搬送される。
次に、ステップS31において形成された集電層306の上に、基板302に形成されたガス流路を介して供給される反応ガスを拡散させるためのガス拡散層(第1のガス拡散層)を形成する(ステップS32)。即ち、まず、ベルトコンベアBC31により吐出装置320bまで搬送された基板302を、テーブル128上に載置して吐出装置320b内に取り込む。吐出装置320bにおいては、タンク130内に収容されているガス拡散層308を形成するための材料、例えば、カーボン粒子を集電層306上にノズル形成面126のノズルを介して吐出し、ガス流路を介して供給された反応ガス(第1の反応ガス)を拡散させるためのガス拡散層308を形成する。
図37は、ガス拡散層308が形成された基板302の端面図である。この図37に示すように、例えば、電極としての機能も有するカーボン粒子を集電層306上に吐出し、反応ガスを拡散させるためのガス拡散層308が形成される。ここで、ガス拡散層308を構成するカーボン粒子としては、ガス流路を介して供給された反応ガスを十分に拡散させることができる程度の大きさであって、かつ、多孔質のカーボンが用いられる。例えば、直径0.1〜1ミクロン程度の粒子径の多孔質カーボンが用いられる。また、ガス拡散層308が形成された基板302は、テーブル128からベルトコンベアBC31へと移され、ベルトコンベアBC31により吐出装置320cへと搬送される。
次に、ステップS32において形成されたガス拡散層308の上に、基板302に形成されたガス流路を介して供給される反応ガスが反応する反応層(第1の反応層)を形成する(ステップS33)。即ち、ベルトコンベアBC31により吐出装置320cまで搬送された基板302を、テーブル128上に載置して吐出装置320c内に取り込む。吐出装置320cにおいては、タンク130内に収容されている反応層を形成する材料、例えば、粒子径が数nm〜数十nmの触媒用の白金微粒子を担持したカーボン粒子(白金担持カーボン)をガス拡散層308上に吐出して反応層310を形成する。ここで、白金微粒子を担持しているカーボンは、ガス拡散層308を構成するカーボン粒子と同様のカーボン粒子、即ち、同様の粒径であって、かつ、多孔質のカーボンが用いられる。なお、溶媒に分散剤を添加することにより白金微粒子を分散させてガス拡散層308上に塗布した後に、例えば、窒素雰囲気中で200℃に基板302を加熱することにより、分散剤を除去し、反応層310を形成するようにしてもよい。この場合には、ガス拡散層308を構成するカーボン粒子の表面上に触媒として白金微粒子を付着させることによって反応層310が形成される。
図38は、反応層310が形成された基板302の端面図である。この図38に示すように、触媒としての白金微粒子を担持したカーボンがガス拡散層308上に塗布されることにより反応層310が形成される。なお、図38において、反応層310とガス拡散層308とを容易に識別することができるように、反応層310としては白金微粒子のみを示している。また、以下の図においても反応層は、図38と同様に示すものとする。反応層310が形成された基板302は、テーブル128からベルトコンベアBC31へと移され、ベルコトンベアBC31により吐出装置320dへと搬送される。
次に、ステップS33で形成された反応層310上にイオン交換膜等の電解質膜を形成する(ステップS34)。即ち、まず、ベルトコンベアBC31により吐出装置320dまで搬送された基板302を、テーブル128上に載置して吐出装置320d内に取り込む。吐出装置320dにおいては、タンク130内に収容されている電解質膜を形成する材料、例えば、パーフルオロカーボン、スルホン酸ポリマー(例えば、Nafion(登録商標))を含む溶液を、ノズル形成面126のノズルを介して反応層310上に吐出して電解質膜312を形成する。
図39は、電解質膜312が形成された基板302の端面図である。この図39に示すように、反応層310上に所定の厚さを有する電解質膜312が形成される。なお、電解質膜312が形成された基板302は、テーブル128からベルトコンベアBC31へと移され、ベルトコンベアBC31により吐出装置320eへと搬送される。
次に、ステップS34において形成された電解質膜312上に反応層(第2の反応層)を形成する(ステップS35)。即ち、ベルトコンベアBC31により吐出装置320eまで搬送された基板302を、テーブル128上に載置して吐出装置320e内に取り込む。吐出装置320eにおいては、吐出装置320cにおいて行われた処理と同様の処理により触媒としての白金微粒子を担持したカーボンを吐出し、反応層310´を形成する。
図40は、電解質膜312上に反応層310´が形成された基板302の端面図である。この図40に示すように、電解質膜312上に触媒としての白金微粒子を担持したカーボンが塗布されることによって、反応層310´が形成される。ここで、反応層310´は、第2の反応ガス、例えば、酸素を含有する反応ガスに基づいて反応する層である。
次に、ステップS35において形成された反応層310´上に反応ガス(第2の反応ガス)を拡散させるためのガス拡散層(第2のガス拡散層)を形成する(ステップS36)。即ち、反応層310´が形成された基板302は、ベルトコンベアBC31により吐出装置320fまで搬送され、吐出装置320fにおいて、吐出装置320bにおいて行われた処理と同様の処理により所定の粒径の多孔質のカーボンが塗布され、ガス拡散層308´が形成される。
図41は、反応層310´上にガス拡散層308´が形成された基板302の端面図である。この図41に示すように、反応層310´上に多孔質のカーボンが塗布されることによって、ガス拡散層308´が形成される。
次に、ステップS36において形成されたガス拡散層308´上に集電層(第2の集電層)を形成する(ステップS37)。即ち、ベルトコンベアBC31により吐出装置320gまで搬送された基板302を、テーブル128上に載置して吐出装置320g内に取り込み、吐出装置320aにおいて行われた処理と同様の処理により、集電層306´がガス拡散層308´上に形成される。
図42は、ガス拡散層308´上に集電層306´が形成された基板302の端面図である。この図42に示すように、上述のステップS37の処理により集電層306´が形成される。なお、集電層306´が形成された基板302は、テーブル128からベルトコンベアBC31へと移され、組立装置360へと搬送される。
次に、ステップS37において集電層が形成された基板(第1の基板)上にガス流路が形成された基板(第2の基板)を配置することによって燃料電池を組み立てる(ステップS38)。即ち、組立装置360において、ベルトコンベアBC31を介して搬入された基板302(第1の基板)上にベルトコンベアBC32を介して搬入された基板302´(第2の基板)を配置することにより、燃料電池の組立を行う。ここで、基板302´には、上述のステップS30〜ステップS37における処理とは別に、第2のガス流路が形成されている。即ち、ガス流路形成装置314bにおいて、ガス流路形成装置314aにおいて行われた処理と同様の処理により、第2のガス流路が形成されている。従って、基板302に形成されている一方の側面から他方の側面へと延びる断面半円形状のガス流路と、基板302´に形成されている断面半円形状のガス流路とが平行になるように基板302´を配置して燃料電池の組立を行い、燃料電池の製造を完了する。
図43は、完成した燃料電池の端面図である。この図43に示すように、第2のガス流路が形成された基板302´を基板302の所定の位置に配置することによって第1の基板に形成された第1のガス流路を介して第1の反応ガスを供給し、第2の基板に形成された第2のガス流路を介して第2の反応ガスを供給する燃料電池の製造が完了する。なお、この第4の実施の形態においては、第1のガス流路と第2のガス流路とが平行になるように基板302´を配置しているが、第3の実施の形態における場合と同様に、第1のガス流路と第2のガス流路とが直交するように基板302´を配置してもよい。
また、上述の第4の実施の形態に係る製造方法により製造された燃料電池は、電子機器、特に携帯用電子機器、例えば、携帯電話等に電力供給源として組み込むことができる。即ち、上述の燃料電池の製造方法によれば、流路抵抗を減少させることによって発電効率を向上させた小型の燃料電池を容易に製造することができるため、例えば、携帯電話等の小型電子機器に電力供給源として組み込むことができる。
この第4の実施の形態に係る燃料電池によれば、ガス流路の流路幅がガス流路の上部から底部に向かって漸次減少している断面半円形状のガス流路が形成されている。従って、断面コ字形状のガス流路の場合のように反応ガスのガス圧力による応力が特定の部分に集中せず、ガス流路内で分散されるため、ガス流路間の壁部が折れる等によりガス流路に損傷が発生することを効果的に防止することができる。そのため、ガス流路間の間隔を狭くし、燃料電池内に反応ガスを効率的に供給し、燃料電池の反応効率を向上させることができる。また、断面コ字形状のガス流路に比較してガス流路の内壁面と反応ガスとが接する面積が小さいため、流路抵抗を減少させて反応ガスの圧力損失を軽減させることができる。
また、上述の第4の実施の形態に係る燃料電池の製造方法によれば、予め形成されたガス流路形成型を基板上に塗布された樹脂に押し付けることによって、所望形状のガス流路を形成している。従って、予めガス流路上部から底部へと漸次ガス流路幅が減少する形状、例えば、断面半円形状のガス流路形成型を予め作成することにより、所望形状のガス流路を容易に形成することができる。また、予め作成されたガス流路形成型を用いてガス流路を形成しているため、所望形状のガス流路を大量、かつ、迅速に形成することができ、燃料電池の製造効率を向上させることができる。
なお、上述の第4の実施の形態に係る燃料電池においては、断面半円形状のガス流路を形成しているが、ガス流路の上部から底部に向けてガス流路幅が漸次減少する形状であれば、何れの形状、例えば、断面逆三角形状、断面半楕円形状、ガス流路の内壁面が階段状になっている形状等であってもよい。
また、上述の第4の実施の形態に係る燃料電池の製造方法においては、ガス流路形成型を用いてガス流路を形成しているが、ガス流路形成型を用いることなくガス流路を形成するようにしてもよい。例えば、断面半円形状のガス流路を形成する際には、等方性を持つウェットエッチングによりガス流路を形成するようにしてもよい。
また、上述の第4の実施の形態に係る燃料電池の製造方法においては、低粘度の樹脂を用いてガス流路を形成しているが、高粘度の樹脂を用いてガス流路を形成するようにしてもよい。この場合には、樹脂にガス流路形成型を押し付け、ガス流路形成型を取り外した後に、短波長のレーザー光を照射する等により樹脂を硬化させてガス流路を形成することができる。
また、上述の第4の実施の形態に係る燃料電池の製造方法においては、ガス流路形成装置によりガス流路を形成しているが、吐出装置を用いてガス流路を形成するようにしてもよい。例えば、エッチング用の溶剤を基板表面に塗布する際に、液滴の大きさを漸次小さくすることによって、ガス流路の上部から底部に向けてガス流路幅が漸次減少しているガス流路、即ち、ガス流路の内壁面が階段状になっているガス流路を形成するようにしてもよい。
また、吐出装置により基板上に樹脂を塗布し、基板にガス流路形成装置において予め作成されているガス流路形成型を押し付け、光を照射する等によりガス流路を形成するようにしてもよい。この場合には、吐出装置により基板上に塗布される樹脂の密度をガス流路が形成される部分では低く、ガス流路の壁部が形成される部分では高くして無駄な部分に樹脂を塗布することを防止し、ガス流路を形成するために用いられる樹脂を節約することができる。
また、上述の第4の実施の形態に係る燃料電池の製造方法においては、一度に基板上に形成される全てのガス流路を形成しているが、ガス流路を分割して形成するようにしてもよい。即ち、小型のガス流路形成型を用い、基板上に形成される複数のガス流路を一部づつ、分割して形成するようにしてもよい。この場合には、ガス流路形成型が小型であるため、ガス流路形成型に対する押圧を確実に均等とすることができ、高精度に所望形状のガス流路を形成することができる。また、小型のガス流路形成型を用いることにより、ガス流路形成装置そのものを小型化することができ、低コスト、省スペースで燃料電池製造ラインを構築することができる。
また、上述の第4の実施の形態に係る燃料電池の製造方法においては、小型の燃料電池を製造しているが、複数の燃料電池を積層させることによって大型の燃料電池を製造するようにしてもよい。即ち、図31に示す場合と同様に、製造された燃料電池の基板302´の裏面に更にガス流路を形成し、ガス流路が形成された基板302´の裏面上に、上述の燃料電池の製造方法における製造工程と同様にしてガス拡散層、反応層、電解質膜等を形成して燃料電池を積層させることによって大型の燃料電池を製造するようにしてもよい。このように、大型の燃料電池が製造された場合には、例えば、電気自動車の電力供給源として用いることができ、地球環境に適切に配慮したクリーンエネルギーの自動車を提供することができる。
この発明に係る燃料電池によれば、第1のガス流路及び第2のガス流路の内の少なくとも何れか一方の開口幅が、第1のガス拡散層及び第2のガス拡散層を構成する物質の粒径に比較して狭い。例えば、ガス拡散層を構成する多孔質のカーボン粒子の粒径に比較してガス流路の開口幅が狭いため、多孔質のカーボン粒子がガス流路内に入り込んでガス流路を塞ぐことを確実に防止することができる。
また、この発明に係る燃料電池の製造方法によれば、第1のガス流路形成工程及び第2のガス流路形成工程の内の少なくとも何れか一方は、吐出装置を用いて第1のガス拡散層及び第2のガス拡散層を構成する物質の粒径に比較して開口幅が狭いガス流路を形成している。従って、ガス流路内にガス拡散層を構成する物質、例えば、多孔質のカーボンがガス流路内に入り込んでガス流路が塞がれることを防止した燃料電池を低コストで容易に製造することができる。
また、この発明に係る燃料電池によれば、第1のガス流路及び第2のガス流路の内の少なくとも何れか一方の流路幅が、上流側から下流側に向かって漸次広がっている。従って、反応層に供給される反応ガスのガス量をガス流路の上流側と下流側とで均一に保つことができる。
また、この発明に係る燃料電池の製造方法によれば、第1のガス流路形成工程及び第2のガス流路形成工程の内の少なくとも何れか一方は、上流側から下流側へ向かって流路幅が漸次広がっているガス流路を形成している。従って、ガス流路の上流側と下流側とで均一なガス量の反応ガスを反応層に供給することができ、かつ、発電効率を向上させた燃料電池を容易に製造することができる。
また、この発明に係る燃料電池によれば、第1のガス流路及び第2のガス流路の内の少なくとも何れか一方の流路幅が、第1のガス流路又は第2のガス流路の上部から底部に向かって漸次減少している。即ち、断面コ字形状のガス流路と異なり、第1の反応ガス又は第2の反応ガスのガス圧力により生じる応力が特定の部分に集中することを防止したガス流路が形成されている。従って、ガス圧力により生じる応力によってガス流路が損傷することを適切に防止することができる。また、断面コ字形状のガス流路に比較してガス流路と反応ガスとが接触する面積が小さいため、ガス流路の管路抵抗を低減させて反応ガスの圧力損失を適切に軽減することができる。
また、この発明に係る燃料電池の製造方法によれば、第1のガス流路形成工程及び第2のガス流路形成工程の内の少なくとも何れか一方は、第1のガス流路又は第2のガス流路の上部から底部に向かって、流路幅が漸次減少しているガス流路を形成している。従って、ガス流路内において反応ガスのガス圧力により生じた応力が特定の部分に集中することを防止し、ガス流路が損傷することを適切に防止した燃料電池を形成することができる。また、ガス流路形成型を用いることにより、所望形状のガス流路を容易、かつ、迅速に形成することができる。
102、102´・・・基板、104・・・犠牲層、104a・・・ネガ型レジスト、104b・・・ポジ型レジスト、106、106´・・・集電層、108、108´・・・ガス拡散層、110、110´・・・反応層、112・・・電解質膜、120a〜120k、120o、120p・・・吐出装置、BC11、BC12・・・ベルトコンベア、202、202´・・・基板、204・・・樹脂、206、206´・・・集電層、208、208´・・・ガス拡散層、210、210´・・・反応層、212・・・電解質膜、214a、214b・・・ガス流路形成装置、220a〜220g・・・吐出装置、BC21、BC22・・・ベルトコンベア、302、302´・・・基板、304・・・樹脂、306、306´・・・集電層、308、308´・・・ガス拡散層、310、310´・・・反応層、312・・・電解質膜、314a、314b・・・ガス流路形成装置、320a〜320g・・・吐出装置、BC31、BC32・・・ベルトコンベア。