JP4165251B2 - 燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部から種類の異なる反応ガスをそれぞれの電極に供給し、供給された反応ガスに基づく反応により発電する燃料電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電解質膜とこの電解質膜の一面に配置された電極(アノード)、及び電解質膜の他面に配置された電極(カソード)等から構成される燃料電池が存在する。例えば、電解質膜が固体高分子電解質膜である固体高分子電解質型燃料電池では、アノード側では水素を水素イオンと電子にする反応が行われ、電子がカソード側に流れ、水素イオンはカソード側に電解質膜中を移動し、カソード側では、酸素ガス、水素イオン及び電子から水を生成する反応が行われる。
【0003】
このような固体電解質型燃料電池においては、各電極は、通常、反応ガスの反応触媒である金属微粒子からなる反応層と、反応層の基板側に炭素微粒子からなるガス拡散層と、及びガス拡散層の基板側に導電性物質からなる集電層とから形成されてなる。一方の基板において、ガス拡散層を構成する炭素微粒子の隙間を通過して均一に拡散された水素ガスは、反応層において反応して電子と水素イオンとなる。発生した電子は集電層に集められ、他方の基板の集電層に電子が流れる。水素イオンは高分子電解質膜を介して第2の基板の反応層へ移動し、集電層から流れてきた電子及び酸素ガスとから水を生成する反応が行われる。
【0004】
このような燃料電池において、反応層を形成する方法としては、例えば、(a)触媒担持カーボンを高分子電解質溶液と有機溶媒に混合して調製した電極触媒層形成用材料を塗布又はスプレーして反応層を形成する方法(例えば、特許文献1、2)、(b)白金化合物の塩等の水溶液に、金属錯体を溶解又は分散させるとともに、カーボンブラック等のカーボン担体を分散させた液をpHをアルカリ側として添加元素の水酸化物等としてカーボン担体に沈析させ、次いで、水素還元処理を行い、熱処理を行うことにより反応層を形成する方法(例えば、特許文献3)等が知られている。また、これらの方法においては、形成した反応層の白金微粒子等が空気中で酸化されないように、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で作業が行われている。
【0005】
しかしながら、この不活性ガス雰囲気下で反応層を形成する工程は、処理基板全体を不活性ガス雰囲気下に置いて行っていたため、不活性ガスの充填作業に長時間を要し、作業効率が悪いという問題があった。また、不活性ガスの使用量が多く、作業従事者が酸素欠乏になる危険性も問題となっていた。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−88008号公報
【特許文献2】
特開2002−298860号公報
【特許文献3】
特開2002−15744号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の問題を解決すべくなされたものであって、反応層をより効率よく、かつ、作業従事者にとって安全に形成できる燃料電池の製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ガス流路が形成された基板に集電層及びガス拡散層を形成した後、反応層形成用材料を塗布、加熱処理して反応層を形成する際に、ガス流路の中を窒素ガス等の不活性ガスを通過させると、(i)処理基板全体を不活性ガス雰囲気中に置いて作業を行う必要がなくなる(すなわち、ガス流路中に不活性ガスを充填するだけでよい)ので、作業効率が向上すること、(ii)使用する不活性ガスの使用量が少なくなること、(iii)ガス流路中のみに不活性ガスが注入されるので、作業従事者が酸素欠乏症になる危険性がなくなること、(iv)ガス流路からガス拡散層へも不活性ガスが流れるため、集電層等の反応層以外の他の層の導電性金属も空気酸化されるのを防止することができること、及び(v)このような方法により、反応層を形成する場合には、インクジェット式吐出装置(以下、「吐出装置」という)を使用して、反応層形成用材料を塗布して反応層を形成するのが好ましいことを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
かくして本発明の第1によれば、第1のガス流路が形成された第1の基板と、前記第1の基板上に形成された第1の集電層と、前記第1の集電層上に形成された第1のガス拡散層と、前記第1のガス拡散層上に形成された第1の反応層と、前記第1の反応層上に形成された電解質膜と、前記電解質膜上に形成された第2の反応層と、前記第2の反応層上に形成された第2のガス拡散層と、前記第2のガス拡散層上に形成された第2の集電層と、第2のガス流路が形成された第2の基板とを備える燃料電池の製造方法であって、前記第1の反応層及び第2の反応層の少なくとも一方を、不活性ガスを前記ガス流路中に流しながら、ガス流路および集電層およびガス拡散層が形成された基板上に反応層形成用材料を塗布して形成することを特徴とする燃料電池の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の製造方法においては、前記第1の反応層及び第2の反応層の少なくとも一方を、前記ガス流路および集電層およびガス拡散層が形成された矩形状の基板の一辺の前記不活性ガスの流れ方向と平行な側壁部及び該側壁部に対向する他の一辺の前記不活性ガスの流れ方向と平行な側壁部を封鎖して、不活性ガスを前記ガス流路中を流しながら、ガス流路および集電層およびガス拡散層が形成された基板上に反応層形成用材料を塗布して形成することが好ましい。
本発明の製造方法においては、前記第1の反応層及び第2の反応層の少なくとも一方を、反応層形成用材料を吐出装置を用いて塗布して形成するのが好ましい。
また、本発明の製造方法においては、前記反応層形成用材料として、金属の微粒子及び分散液剤を含む金属の微粒子の分散液又は金属塩溶液を用いるのが好ましい。
【0012】
本発明の製造方法によれば、処理基板全体を不活性ガス雰囲気中に置いて作業を行う必要がなくなる。すなわち、ガス流路中に不活性ガスを充填するだけでよいので、作業効率が大幅に向上し、生産性の高い燃料電池の生産性に優れた製造方法である。
本発明の製造方法によれば、ガス流路からガス拡散層へも不活性ガスが流れ、反応層が形成される付近では高濃度で不活性ガスが存在する状態となる。従って、金属微粒子が空気により酸化されるのを防止することができる。
本発明の製造方法によれば、使用する不活性ガスの使用量が、従来の処理基板全体を不活性ガス雰囲気下に置く方法に比して大幅に少なくなる。従って、製造コストが低廉化され、また、窒素ガス以外の希ガス等の高価な不活性ガスを使用可能となる。
本発明の製造方法によれば、ガス流路中のみに不活性ガスが注入されるので、作業従事者が酸素欠乏症になる危険性が少ない。
本発明の製造方法によれば、ガス流路からガス拡散層へも不活性ガスが流れるため、集電層等の反応層以外の他の層を構成する導電性金属が空気酸化されるのも防止することができる。
【0013】
また、本発明の燃料電池の製造方法において、反応層形成用材料の塗布を吐出装置を用いて行う場合には、簡便な操作により、所定量を所定の位置に正確に塗布することができるので、反応層形成用材料の使用量を大幅に節約でき、かつ、所望のパターン(形状)の反応層を効率よく形成することができる。また、反応層形成用材料を塗布する間隔を場所によって変化させたり、用いる反応層形成用材料の種類を塗布位置によって変更することも自由に行うことができる。
【0014】
本発明の製造方法により製造された燃料電池を電力供給源として備える電子機器によれば、地球環境に適切に配慮したクリーンエネルギーを電力供給源として備えることができる。
また、本発明の製造方法により製造された燃料電池を電極供給源として備える自動車によれば、地球環境に適切に配慮したクリーンエネルギーを電力供給源として備えることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の燃料電池の製造方法、並びに本発明の製造方法により製造された燃料電池を備える電子機器及び自動車について詳細に説明する。
本発明は、第1のガス流路が形成された第1の基板と、前記第1の基板上に形成された第1の集電層と、前記第1の集電層上に形成された第1のガス拡散層と、前記第1のガス拡散層上に形成された第1の反応層と、前記第1の反応層上に形成された電解質膜と、前記電解質膜上に形成された第2の反応層と、前記第2の反応層上に形成された第2のガス拡散層と、前記第2のガス拡散層上に形成された第2の集電層と、第2のガス流路が形成された第2の基板とを備える燃料電池の製造方法であって、前記第1の反応層及び第2の反応層の少なくとも一方を、不活性ガスを前記ガス流路中に流しながら、ガス流路および集電層およびガス拡散層が形成された基板上に反応層形成用材料を塗布して形成することを特徴とする燃料電池の製造方法である。
【0016】
本発明の燃料電池の製造方法は、図1に示す燃料電池の製造装置(燃料電池製造ライン)を使用して実施することができる。図1に示す燃料電池製造ラインにおいては、各工程においてそれぞれ用いられる吐出装置20a〜20m、吐出装置20a〜20kを接続するベルトコンベアBC1、吐出装置20l、20mを接続するベルトコンベアBC2、ベルトコンベアBC1、BC2を駆動させる駆動装置58、燃料電池の組み立てを行なう組立装置60及び燃料電池製造ライン全体の制御を行なう制御装置56により構成されている。
【0017】
吐出装置20a〜20kは、ベルトコンベアBC1に沿って所定の間隔で一列に配置されており、吐出装置20l、20mはベルトコンベアBC2に沿って所定の間隔で一列に配置されている。また、制御装置56は、吐出装置20a〜20k、駆動装置58及び組立装置60と接続されている。
【0018】
この燃料電池製造ラインにおいては、駆動装置58により駆動されたベルトコンベアBC1を駆動させ、燃料電池の基板(以下、単に「基板」という。)を各吐出装置20a〜20kに搬送して各吐出装置20a〜20kにおける処理が行なわれる。同様に、制御装置56からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC2を駆動させ、基板を吐出装置29l、20mに搬送して、吐出装置20l、20mにおける処理が行なわれる。また、組立装置60においては、制御装置56からの制御信号に基づいてベルトコンベアBC1及びBC2によって搬送されてきた基板を用いて燃料電池が組み立て作業が行なわれる。
【0019】
吐出装置20a〜20mとしては、インクジェット方式の吐出装置であれば特に制約されない。例えば、加熱発泡により気泡を発生し、液滴の吐出を行なうサーマル方式の吐出装置、ピエゾ素子を利用する圧縮により、液滴の吐出を行なうピエゾ方式の吐出装置等が挙げられる。
【0020】
本実施形態では、吐出装置20aとして、図2に示すものを用いる。吐出装置20aは、吐出物34を収容するタンク30と、タンク30と吐出物搬送管32を介して接続されたインクジェットヘッド22、被吐出物を搭載、搬送するテーブル28、インクジェットヘッド22内に滞留する余剰の吐出物34を吸引して、インクジェットヘッド22内から過剰の吐出物を除去する吸引キャップ40、及び吸引キャップ40で吸引された余剰の吐出物を収容する廃液タンク48から構成されている。
【0021】
タンク30は、レジスト溶液等の吐出物34を収容するものであり、タンク30内に収容されている吐出物の液面34aの高さを制御するための液面制御センサ36を備える。液面制御センサ36は、インクジェットヘッド22が備えるノズル形成面26の先端部26aと、タンク30内の液面34aとの高さの差h(以下、水頭値という)を所定の範囲内に保つ制御を行う。例えば、この水頭値が25m±0.5mm内となるように液面34aの高さを制御することで、タンク30内の吐出物34が所定の範囲内の圧力でインクジェットヘッド22に送ることができる。所定の範囲内の圧力で吐出物34を送ることで、インクジェットヘッド22から必要量の吐出物34を安定して吐出することができる。
【0022】
吐出物搬送管32は、吐出物搬送管32の流路内の帯電を防止するための吐出物流路部アース継手32aとヘッド部気泡排気弁32bとを備える。ヘッド部気泡排除弁32bは、後述する吸引キャップ40により、インクジェットヘッド22内の吐出物を吸引する場合に用いられる。
【0023】
インクジェットヘッド22は、ヘッド体24及び吐出物を吐出する多数のノズルが形成されているノズル形成面26を備え、ノズル形成面26のノズルから吐出物、例えば、反応ガスを供するためのガス流路を基板上に形成する際に基板に塗布されるレジスト溶液等が吐出される。
テーブル28は、所定の方向に移動可能に設置されている。テーブル28は、図中矢印で示す方向に移動することにより、ベルトコンベアBC1により搬送される基板を載置して、吐出装置20a内に取り込む。
【0024】
吸引キャップ40は、図2に示す矢印方向に移動可能となっており、ノズル形成面26に形成された複数のノズルを囲むようにノズル形成面26に密着し、ノズル形成面26との間に密閉空間を形成してノズルを外気から遮断できる構成となっている。即ち、吸引キャップ40によりインクジェットヘッド22内の吐出物を吸引するときは、このヘッド部気泡排除弁32bを閉状態にして、タンク30側から吐出物が流入しない状態とし、吸引キャップ40で吸引することにより、吸引される吐出物の流速を上昇させ、インクジェットヘッド22内の気泡を速やかに排出することができる。
【0025】
吸引キャップ40の下方には流路が設けられており、この流路には、吸引バルブ42が配置されている。吸引バルブ42は、吸引バルブ42の下方の吸引側と、上方のインクジェットヘッド22側との圧力バランス(大気圧)を取るための時間を短縮する目的で流路を閉状態にする役割を果す。この流路には、吸引異常を検出する吸引圧検出センサ44やチューブポンプ等からなる吸引ポンプ46が配置されている。
また、吸引ポンプ46で吸引、搬送された吐出物34は、廃液タンク48内に一時的に収容される。
【0026】
本実施形態においては、吐出装置20b〜20mは、吐出物34の種類が異なることを除き、吐出装置20aと同様の構成のものである。したがって、以下においては、各吐出装置の同一構成については同一の符号を用いる。
【0027】
次に、図1に示す燃料電池製造ラインを用いて、燃料電池を製造する各工程を説明する。図1に示す燃料電池製造ラインを用いる燃料電池の製造方法のフローチャートを図3に示す。
【0028】
図3に示すように、本実施形態に係る燃料電池は、第1の基板にガス流路を形成する工程(S10,第1のガス流路形成工程)、ガス流路内に第1の支持部材を塗布する工程(S11,第1の支持部材塗布工程)、第1の集電層をを形成する工程(S12,第1の集電層形成工程)、第1のガス拡散層を形成する工程(S13,第1のガス拡散層形成工程)、第1の反応層形成工程(S14,第1の反応層形成工程)、電解質膜を形成する工程(S15,電解質膜形成工程)、第2の反応層を形成する工程(S16,第2の反応層形成工程)、第2のガス拡散層を形成する工程(S17,第2のガス拡散層形成工程)、第2の集電層を形成する工程(S18,第2の集電層形成工程)、第2の支持部材を第2のガス流路内に塗布する工程(S19,第2の支持部材塗布工程)、及び第2のガス流路が形成された第2の基板を積層する工程(S20,積層工程)により製造される。
【0029】
(1)第1のガス流路形成工程(S10)
まず、図4(a)に示すように、矩形状の第1の基板2を用意し、基板2をベルトコンベアBC1により吐出装置20aまで搬送する。基板2としては特に制限されず、シリコン基板等の通常の燃料電池に用いられるものを使用できる。本実施形態では、シリコン基板を用いている。
【0030】
ベルトコンベアBC1により搬送された基板2は、吐出装置20aのテーブル28上に載置され、吐出装置20a内に取り込まれる。吐出装置20a内においては、吐出装置20aのタンク30内に収容されているレジスト液が、ノズル形成面26のノズルを介してテーブル28に搭載された基板2上の所定位置に塗布され、基板2の表面にレジストパターン(図中、斜線部分)が形成される。レジストパターンは、図4(b)に示すように、基板2表面の第1の反応ガスを供給するための第1のガス流路を形成する部分以外の部分に形成される。
【0031】
所定の位置にレジストパターンが形成された基板2は、ベルトコンベアBC1により吐出装置20bに搬送され、吐出装置20bのテーブル28上に載置され、吐出装置20b内に取り込まれる。吐出装置20b内においては、タンク30内に収容されているフッ化水素酸水溶液等のエッチング液が、ノズル形成面26のノズルを介して基板2表面に塗布される。エッチング液により、レジストパターンが形成されている部分以外の基板2表面部がエッチングされて、図5(a)に示すように、基板2の一方の側面から他方の側面に延びる断面コ字形状の第1のガス流路が形成される。また、図5(b)に示すように、ガス流路が形成された基板2は、図示しない洗浄装置によって表面が洗浄され、レジストパターンが除去される。次いで、ガス流路が形成された基板2は、テーブル28からベルトコンベアBC1へ移され、ベルトコンベアBC1により吐出装置20cまで搬送される。
【0032】
(2)第1の支持部材塗布工程(S11)
次に、第1のガス流路が形成された基板2上に、第1の集電層を支持するための第1の支持部材をガス流路内に塗布する。第1の支持部材の塗布は、基板2をテーブル28に載置して吐出装置20c内に取り込み、次いで、吐出装置20cにより、タンク30内に収容されている第1の支持部材4をノズル形成面26のノズルを介して、基板2に形成されている第1のガス流路内に吐出することにより行われる。
【0033】
用いる第1の支持部材としては、第1の反応ガスに対して不活性であり、第1の集電層が第1のガス流路に落下するのを防止し、かつ、第1の反応層へ第1の反応ガスが拡散するのを妨げないものであれば特に制限されない。例えば、炭素粒子、ガラス粒子等が挙げられる。本実施形態では、直径1〜5ミクロン程度の粒子径の多孔質カーボンを使用している。所定の粒径をもつ多孔質カーボンを支持部材として使用することにより、ガス流路を介して供給される反応ガスが多孔質カーボンの隙間から上へ拡散するため、反応ガスの流れが妨げられることがなくなる。
【0034】
第1の支持部材4が塗布された基板2の端面図を図6に示す。第1の支持部材4が塗布された基板2は、テーブル28からベルトコンベアBC1へ移され、ベルトコンベアBC1により吐出装置20dまで搬送される。
【0035】
(3)第1の集電層形成工程(S12)
次に、基板2上に、第1の反応ガスが反応することにより発生した電子を集めるための第1の集電層を形成する。まず、ベルトコンベアBC1により吐出装置20dまで搬送された基板2を、テーブル28上に載置して吐出装置20d内に取り込む。吐出装置20dにおいては、タンク30内に収容されている集電層形成用材料の一定量を、ノズルの形成面26のノズルを介して基板2上に吐出することにより、所定のパターンを有する第1の集電層が形成される。
【0036】
用いる集電層形成用材料としては、導電性物質を含む材料であれば特に制限されない。導電性物質としては、例えば、銅、銀、金、白金、アルミニウム等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。集電層形成用材料は、これらの導電性物質の少なくとも1種を適当な溶媒に分散させ、所望により分散剤を添加して調製することができる。
【0037】
本実施形態では、集電層形成用材料の塗布を吐出装置20dを用いて行っているので、簡便な操作により、所定量を所定の位置に正確に塗布することができる。したがって、集電層形成用材料の使用量を大幅に節約でき、所望のパターン(形状)の集電層を効率よく形成することができ、集電層形成用材料の塗布間隔を場所により変化させることにより、反応ガスの通気性を制御することも容易にでき、用いる集電層形成用材料の種類を塗布位置により変更することも自由に行うことができる。
【0038】
第1の集電層6が形成された基板2の端面図を図7に示す。図7に示すように、第1の集電層6は、基板2に形成されている第1のガス流路内の第1の支持部材4により支持され、第1のガス流路内に落下しないようになっている。第1の集電層6が形成された基板2は、テーブル28からベルトコンベアBC1へ移され、ベルトコンベアBC1により吐出装置20eまで搬送される。
【0039】
(4)第1のガス拡散層形成工程(S13)
次に、基板2の集電層上に第1のガス拡散層を形成する。先ず、ベルトコンベアBC1により吐出装置20eまで搬送された基板2をテーブル28上に載置して、吐出装置20e内に取り込む。吐出装置20e内においては、吐出装置20eのタンク30内に収容されているガス拡散層形成用材料を、ノズル形成面26のノズルを介してテーブル28に載置されている基板2表面の所定位置に吐出して、第1のガス拡散層が形成される。
【0040】
用いるガス拡散層形成用材料としては、炭素微粒子が一般的であるが、カーボンナノチューブ、カーボンナノフォーン、フラーレン等も使用できる。本実施形態では、ガス拡散層を塗布装置20eを用いて形成するため、例えば、集電層側には塗布間隔を大きく(数十μm)し、表面側には塗布間隔を小さく(数十nm)することで、基板付近は流路幅を大きくして反応ガスの拡散抵抗をできるだけ小さくしつつ、反応層付近(ガス拡散層の表面側)においては、均一で細かい流路となっているガス拡散層を容易に形成できる。また、ガス拡散層の基板側は炭素微粒子を用い、表面側は、ガス拡散能力は低いが触媒担持能力に優れる材料を用いることもできる。
【0041】
第1のガス拡散層8が形成された基板2の端面図を図8に示す。図8に示すように、第1のガス拡散層8は、基板2に形成されている第1の集電層を覆うように基板2の全面に形成されている。第1のガス拡散層8が形成された基板2は、テーブル28からベルトコンベアBC1へ移され、ベルトコンベアBC1により吐出装置20fまで搬送される。
【0042】
(5)第1の反応層形成工程(S14)
次に、基板2上に第1の反応層を形成する。第1の反応層は、第1の集電層とガス拡散層8を介して電気的に接続されるように形成する。
まず、ベルトコンベアBC1により吐出装置20fまで搬送された基板2をテーブル28上に載置して、吐出装置20f内に取り込む。吐出装置20f内においては、不活性ガスを前記ガス流路中を流しながら、反応層形成用材料を第1のガス拡散層上に塗布して第1の反応層が形成される。すなわち、吐出装置20fのタンク30内に収容されている反応層形成用材料を、ノズル形成面26のノズルを介してテーブル28に載置されている基板2表面の所定位置に吐出し、所定温度に加熱することにより反応層が形成される。
【0043】
第1のガス流路に不活性ガスを流しながら、吐出装置20fを用いて反応層形成用材料を塗布する状態を図9に示す。図9は、第1の基板2のガス流路のガス送付口(図示を省略)から、不活性ガスを第1のガス流路の上流側から下流側に流す様子を基板上側から見た図である。図9においては、第1のガス流路及びガス拡散層が形成された矩形状の基板の一辺の側壁部及び該側壁部に対向する他の一辺の側壁部を押し板61により封鎖し、不活性ガスを前記ガス流路中を流しながら、不活性ガスが第1の基板のガスの流れ方向と平行な両側面部から漏れ出すのを防止し、かつ、第1の基板2をしかっりと固定して、作業を容易にしている。なお、図9において、第1の基板上部は開放されており、不活性ガスの一部は、第1のガス流路から第1の集電層及び第1のガス拡散層を介して、第1の基板にも流れている。
【0044】
図10は、吐出装置20fを用いて、第1のガス流路に不活性ガスを流しながら、第1のガス拡散層8上に反応層形成用材料を塗布する状態を模式的に示す。図10においては、第1のガス流路3を上流側から下流側に流れる不活性ガスの一部が第1の基板上にも流れ(図中、矢印)、第1の反応層を形成する部位は、全体的に不活性ガス雰囲気下に置かれている。
【0045】
ここで用いる不活性ガスとしては、窒素ガスが一般的であるが、本発明の製造方法においては、不活性ガスの使用量が少なくて済むので、アルゴンガス、ヘリウムガス等の比較的高価な希ガスを使用することもできる。
なお、不活性ガスを流す量は、第1の基板上の反応層を形成する部位が不活性ガス雰囲気となる量であれば、特に制限されず、製造する燃料電池の大きさ等にも依存する。また、不活性ガスを流すときの温度は特に制限されない。通常は室温である。
【0046】
用いる反応層形成用材料としては、例えば、(a)金属化合物又は金属水酸化物をカーボン担体に吸着させた金属担持カーボンの分散液や、(b)金属微粒子をカーボン担体に吸着させた分散液等が挙げられる。
【0047】
(a)の分散液は、次のようにして調製することができる。先ず、金属化合物の水溶液又は水/アルコール混合溶媒溶液に所望によりアルカリを添加して金属水酸化物とし、そこへ、カーボンブラック等のカーボン担体を添加し、加熱撹拌することにより、金属化合物又は金属水酸化物をカーボン担体に吸着(沈析)させて、金属担持カーボンの粗生物を得る。次いで、このものを濾過、洗浄、乾燥を適宜繰り返すことにより精製した後、水又は水/アルコール混合溶媒に分散して分散液を得ることができる。ここで用いる金属化合物としては、例えば、白金、金等の貴金属の塩等が挙げられる。
【0048】
また、(b)の分散液は、金属微粒子を有機分散剤に分散させた後、カーボン担体を添加して調製することもできる。用いる金属微粒子としては、第1の反応ガス及び第2の反応ガスの反応触媒としての機能を有するものであれば特に制限されない。例えば、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、オスミウム及びこれらの2種以上からなる合金からなる群から選ばれる1種若しくは2種以上の金属の微粒子が挙げられ、白金が特に好ましい。金属微粒子の粒子径は制限されないが、通常1nm〜100nm、好ましくは数nm〜数十nmである。また有機分散剤としては、分散液中に金属微粒子を均一に分散させることができるものであれば特に制限されない。例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素類、芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0049】
吐出装置20fにより反応層形成用材料を塗布して反応層形成用材料の塗膜を形成した後は、(a)の分散液を用いる場合には、塗膜を乾燥し、水素ガス等により還元処理を施し、更に加熱処理を施すことにより反応層を形成することができる。また、(b)の分散液を用いる場合には、塗膜を加熱して、有機分散剤及び溶媒を除去することで反応層を得ることができる。該塗膜を窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、200〜300℃で焼成することによっても形成することができる。この場合には、金属微粒子に有機分散剤が焼成してできた炭素微粒子が付着した構造の反応層が得られる。
【0050】
本実施形態の反応層を形成する方法によれば、次の(a)〜(f)の効果が得られる。
(a)処理基板全体を不活性ガス雰囲気中に置いて作業を行う必要がなくなる。すなわち、ガス流路中に不活性ガスを充填するだけでよいので、作業効率が大幅に向上し、生産性の高い燃料電池の生産性に優れた製造方法である。
(b)第1のガス流路から第1のガス拡散層へも不活性ガスが流れ、第1の反応層が形成される付近では高濃度で不活性ガスが存在する状態となる。従って、金属微粒子が空気により酸化されるのを防止することができる。
(c)使用する不活性ガスの使用量が、従来の処理基板全体を不活性ガス雰囲気下に置く方法に比して大幅に少なくなり、製造コストを低廉化することができる。
(d)ガス流路中のみに不活性ガスが注入されるので、作業従事者が酸素欠乏症になる危険性が少なくなる。
(e)ガス流路からガス拡散層へも不活性ガスが流れるため、集電層等の反応層以外の他の層を構成する導電性金属が空気酸化されるのも防止することができる。
(f)反応層を形成する方法として、反応層形成用材料の一定量を、吐出装置20fを用いて、所定間隔をおいて塗布して形成しているので、簡便な操作により、所定量を所定の位置に正確に塗布することができる。
【0051】
このようにして、第1の反応層が形成された基板2の端面図を図11に示す。第1の反応層が形成された基板2は、テーブル28からベルトコンベアBC1へ移され、ベルトコンベアBC1により吐出装置20gまで搬送される。
【0052】
(6)電解質膜形成工程(S15)
次に、第1の反応層10が形成された基板2上に電解質膜を形成する。まず、ベルトコンベアBC1により吐出装置20gまで搬送された基板2を、テーブル28上に載置して吐出装置20g内に取り込む。吐出装置20gにおいては、タンク30内に収容されている電解質膜の形成材料をノズル形成面26のノズルを介して第1の反応層10上に吐出して電解質膜12が形成される。
【0053】
用いる電解質膜の形成材料としては、例えば、ナフィオン(デュポン社製)等のパーフルオロスルホン酸を、水とメタノールの重量比が1:1の混合溶液中でミセル化して得られる高分子電解質材料ヤ、タングスト燐酸、モリブド燐酸等のセラミックス系固体電解質を所定の粘度(例えば、20cP以下)に調整した材料や等が挙げられる。
【0054】
電解質膜が形成された基板2の端面図を図12に示す。図12に示すように、第1の反応層10上に所定の厚さを有する電解質膜12が形成されている。電解質膜12が形成された基板2は、テーブル28から ベルトコンベアBC1へ移され、ベルトコンベアBC1により吐出装置20hまで搬送される。
【0055】
(7)第2の反応層形成工程(S16)
次に、電解質膜12が形成された基板2上に第2の反応層を形成する。第2の反応層は、ガス流路及びガス拡散層が形成された基板上に、不活性ガスを前記ガス流路中を流しながら、反応層形成用材料を塗布して形成する。
まず、ベルトコンベアBC1により吐出装置20hまで搬送された基板2を、テーブル28上に載置して吐出装置20h内に取り込む。吐出装置20hにおいては、吐出装置20fにおいて行われた処理と同様の処理により、第2の反応層10’が形成される。第2の反応層10’を形成する材料としては、第1の反応層と同様のものを使用することができる。
【0056】
電解質膜12上に第2の反応層10’が形成された基板2の端面図を図13に示す。図13に示すように、電解質膜12上に第2の反応層10’が形成されている。第2の反応層10’においては、第2の反応ガスの反応が行われる。第2の反応層10’が形成された基板2は、テーブル28からベルトコンベアBC1へ移され、ベルトコンベアBC1により吐出装置20iまで搬送される。
【0057】
(8)第2のガス拡散層形成工程(S17)
次に、第2の反応層10’が形成された基板2上に第2のガス拡散層を形成する。まず、ベルトコンベアBC1により吐出装置20iまで搬送された基板2を、テーブル28上に載置して吐出装置20i内に取り込む。吐出装置20iにおいては、吐出装置20eにおいて行われた処理と同様の処理により、第2のガス拡散層8’が形成される。第2の拡散層形成用材料としては、第1のガス拡散層8と同様のものが使用できる。
【0058】
第2のガス拡散層8’が形成された基板2の端面図を図14に示す。第2のガス拡散層8’が形成された基板2は、テーブル28からベルトコンベアBC1へ移され、ベルトコンベアBC1により吐出装置20jまで搬送される。
【0059】
(9)第2の集電層形成工程(S18)
次に、第2のガス拡散層8’が形成された基板2上に第2の集電層を形成する。先ず、ベルトコンベアBC1により吐出装置20jまで搬送された基板2を、テーブル28上に載置して吐出装置20j内に取り込み、吐出装置20dにおいて行われた処理と同様の処理により、第2の集電層6’が第2のガス拡散層8’上に形成される。第2の集電層形成用材料としては、第1の集電層形成用材料と同様のものが使用できる。第2の集電層6’が形成された基板2は、テーブル28からベルトコンベアBC1へ移され、ベルトコンベアBC1により吐出装置20kまで搬送される。
【0060】
(8)第2の支持部材塗布工程(S19)
次に、ベルトコンベアBC1により吐出装置20kまで搬送された基板2を、テーブル28上に載置して吐出装置20k内に取り込み、吐出装置20cにおいて行われた処理と同様処理により、第2の支持部材が塗布される。第2の支持部材としては、第1の支持部材と同様のものが使用できる。
【0061】
第2の集電層6’及び第2の支持部材4’が塗布された基板2の端面図を図15に示す。第2の支持部材4’は、第2の集電層8’上に形成され、基板2上に積層する第2の基板に形成されている第2のガス流路内に収容される位置に塗布されている。
【0062】
(9)第2の基板積層工程(S20)
次に、第2の支持部材4’が塗布された基板2と、別途用意した第2のガス流路が形成された第2の基板とを積層する。基板2(第1の基板)と第2の基板との積層は、基板2上に形成された第2の支持部材4’が、第2の基板に形成された第2のガス流路内に収容されるように接合することにより行われる。ここで、第2の基板としては、第1の基板と同じものを使用できる。また、第2のガス流路形成は、吐出装置20l及び20mにおいて、吐出装置20a及び20bにより行なわれる処理と同様の処理により行なわれる。
【0063】
以上のようにして、図16に示す構造の燃料電池を製造することができる。図16に示す燃料電池は、図中、下側から、第1の基板2と、第1の基板2に形成された第1のガス流路3と、第1のガス流路3内に収容された第1の支持部材4と、第1の基板2及び第1の支持部材4上に形成された第1の集電層6と、第1のガス拡散層8と、第1のガス拡散層8上に形成された第1の反応層10と、電解質膜12と、第2の反応層10’と、第2のガス拡散層8’と、第2の集電層6’と、第2のガス流路3’と、第2のガス流路3’内に収容された第2の支持部材4’と、第2の基板2’とから構成されている。また、図16に示す燃料電池においては、基板2に形成されている一方の側面から他方の側面へと延びるコ字状の第1のガス流路と基板2’に形成されている第2のガス流路とが平行になるように基板2’が配置されている。
【0064】
本実施形態により製造される燃料電池の種類は特に制約されない。例えば、高分子電解質型燃料電池、リン酸型燃料電池、ダイレクトメタノールタイプの燃料電池等が挙げられる。
【0065】
本実施形態により製造される燃料電池は、次のように動作する。すなわち、第1の基板2の第1のガス流路3から第1の反応ガスが導入され、ガス拡散層8により均一に拡散され、拡散された第1の反応ガスが第1の反応層10で反応してイオンと電子が生じ、生じた電子は集電層8で集められ、第2の基板2’の第2の集電層6’に流れ、第1の反応ガスにより生じたイオンは電解質膜12の中を第2の反応層8’へ移動する。一方、第2の基板2’のガス流路3’から第2の反応ガスが導入され、第2のガス拡散層8’により均一に拡散され、拡散された第2の反応ガスが第2の反応層10’において、電解質膜12中を移動してきたイオン及び第2の集電層6’から送り込まれた電子と反応する。例えば、第1の反応ガスが水素ガスであり、第2の反応ガスが酸素ガスである場合には、第1の反応層10においては、H2→2H++2e−の反応が進行し、第2の反応層10’においては、1/2O2+2H++2e−→H2Oの反応が進行する。
【0066】
上述した実施形態に係る燃料電池の製造方法においては、全ての工程において吐出装置を用いているが、燃料電池を製造する何れかの工程において吐出装置を用いて燃料電池を製造することもできる。例えば、吐出装置を用いて集電層形成用材料を塗布して、第1の集電層及び/又は第2の集電層を形成し、その他の工程においては従来と同様の工程により燃料電池を製造するようにしてもよい。この場合であっても、MEMS(Micro Electro Mechanical System)を用いることなく集電層を形成できるため、燃料電池の製造コストを低く抑えることができる。
【0067】
上述の実施形態の製造方法においては、基板上にレジストパターンを形成し、フッ化水素酸水溶液を塗布してエッチングを行うことによりガス流路を形成しているが、レジストパターンを形成することなくガス流路を形成することもできる。また、フッ素ガス雰囲気中に基板を載置し、基板上の所定の位置に水を吐出することによりガス流路を形成するようにしてもよい。
【0068】
上述の実施形態の製造方法においては、第1の反応ガスが供給される第1の基板側から燃料電池の構成部分を形成し、最後に第2の基板を積層することで燃料電池の製造を行っているが、第2の反応ガスが供給される側の基板から燃料電池の製造を開始するようにしてもよい。
【0069】
上述の実施形態の製造方法においては、第2の支持部材を第1の基板に形成されている第1のガス流路に沿って塗布しているが、第1のガス流路と交差するような方向に塗布してもよい。即ち、第2の支持部材を、例えば、第1の基板に形成されているガス流路と直角に交差するように、例えば、図7(b)において図中右側面から左側面へと延びる方向に塗布するようにしてもよい。この場合には、第2の基板に形成されている第2のガス流路と、第1の基板に形成されている第1のガス流路とが、直角に交差するように第2の基板が配置された構造の燃料電池が得られる。
【0070】
上述の実施形態の製造方法においては、第1のガス流路が形成された第1の基板上に、第1の集電層、第1の反応層、電解質膜、第2の反応層及び第2の集電層を順次形成しているが、第1の基板と第2の基板のそれぞれに集電層、反応層及び電解質膜を形成し、最後に第1の基板と第2の基板とを接合することにより、燃料電池を製造することもできる。
【0071】
また、本実施形態の燃料電池製造ラインの別の態様として、第1の基板に処理を施す第1製造ラインと第2の基板に処理を施す第2製造ラインとを設け、それぞれの製造ラインにおける処理を平行して行う製造ラインを用いることもできる。この場合には、第1の基板への処理と第2の基板への処理を平行して行うことができるため、迅速に燃料電池を製造することができる。
【0072】
本発明の製造方法により製造された燃料電池は、電子機器の電力供給源として用いることができる。このような電子機器としては、携帯電話機、PHS、モバイル、ノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯テレビ電話機などが挙げられる。また、このような電子機器は、例えば、ゲーム機能、データ通信機能、録音再生機能、辞書機能などの他の機能を有していてもよい。
本発明の製造方法により製造された燃料電池を電力供給源として備える電子機器によれば、地球環境に適切に配慮したクリーンエネルギーを電力供給源として備えることができる。
【0073】
本発明の製造方法により製造された燃料電池は、自動車の電力供給源として用いることができる。本発明の製造方法によれば、複数の燃料電池を積層することによって大型の燃料電池を製造することもできる。すなわち、図17に示すように、製造した燃料電池の基板2’の裏面に更にガス流路を形成し、ガス流路が形成された基板2’の裏面上に、上述の燃料電池の製造方法と同様にしてガス拡散層、反応層、電解質膜などを形成して燃料電池を積層することによって大型の燃料電池を製造することができる。
本発明の製造方法により製造された燃料電池を電極供給源として備える自動車によれば、地球環境に適切に配慮したクリーンエネルギーを電力供給源として備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態に係る燃料電池の製造ラインの一例を示す図である。
【図2】 実施の形態に係るインクジェット式吐出装置の概略図である。
【図3】 実施の形態に係る燃料電池の製造方法のフローチャートである。
【図4】 実施の形態に係るガス流路を形成する処理を説明する図である。
【図5】 実施の形態に係るガス流路を形成する処理を説明する図である。
【図6】 実施の形態に係る燃料電池の製造過程の基板の端面図である。
【図7】 実施の形態に係る燃料電池の製造過程の基板の端面図である。
【図8】 実施の形態に係る燃料電池の製造過程の基板の端面図である。
【図9】 実施の形態に係る反応層を形成する処理を説明する図である。
【図10】 実施の形態に係る反応層を形成する処理を説明する図である。
【図11】 実施の形態に係る燃料電池の製造過程の基板の端面図である。
【図12】 実施の形態に係る燃料電池の製造過程の基板の端面図である。
【図13】 実施の形態に係る燃料電池の製造過程の基板の端面図である。
【図14】 実施の形態に係る燃料電池の製造過程の基板の端面図である。
【図15】 実施の形態に係る燃料電池の製造過程の基板の端面図である。
【図16】 実施の形態に係る燃料電池の端面図である。
【図17】 実施の形態に係る燃料電池を積層した大型燃料電池の図である。
【符号の説明】
2…第1の基板、2’…第2の基板、3…第1のガス流路、3’…第2のガス流路、4…第1の支持部材、4’…第2の支持部材、6…第1の集電層、6’…第2の集電層、8…第1のガス拡散層、8’…第2のガス拡散層、10…第1の反応層、10’…第2の反応層、12…電解質膜、20a〜20m…吐出装置、61…押し板、BC1,2…ベルトコンベア
Claims (4)
- 第1のガス流路が形成された第1の基板と、前記第1の基板上に形成された第1の集電層と、前記第1の集電層上に形成された第1のガス拡散層と、前記第1のガス拡散層上に形成された第1の反応層と、前記第1の反応層上に形成された電解質膜と、前記電解質膜上に形成された第2の反応層と、前記第2の反応層上に形成された第2のガス拡散層と、前記第2のガス拡散層上に形成された第2の集電層と、第2のガス流路が形成された第2の基板とを備える燃料電池の製造方法であって、
前記第1の反応層及び第2の反応層の少なくとも一方を、不活性ガスを前記ガス流路中に流しながら、ガス流路および集電層およびガス拡散層が形成された基板上に反応層形成用材料を塗布して形成することを特徴とする燃料電池の製造方法。 - 前記第1の反応層及び第2の反応層の少なくとも一方を、前記ガス流路および集電層およびガス拡散層が形成された矩形状の基板の一辺の前記不活性ガスの流れ方向と平行な側壁部および該側壁部に対向する他の一辺の前記不活性ガスの流れ方向と平行な側壁部を封鎖して、不活性ガスを前記ガス流路中を流しながら、ガス流路および集電層およびガス拡散層が形成された基板上に反応層形成用材料を塗布して形成することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の製造方法。
- 前記第1の反応層及び第2の反応層の少なくとも一方を、反応層形成用材料をインクジェット式吐出装置を用いて塗布して形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池の製造方法。
- 前記反応層形成用材料として、金属の微粒子及び分散液剤を含む金属の微粒子の分散液又は金属塩溶液を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池の製造方法。
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