JP4110371B2 - ホスホン酸ジエステル誘導体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なホスホン酸ジエステル誘導体およびこれを含有するACAT-1 (acyl-coenzyme A: cholesterol acyltransferase-1)阻害剤などの医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明誘導体は文献未載の新規化合物である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は医薬品として有用な化合物およびこれを利用する医薬品を提供することを目的とする。
【0004】
本発明者らは、医薬品分野で利用できる有効成分化合物につき研究、開発を続ける過程において、下記一般式(1)で表される一連の新規化合物が、ACAT-1阻害活性を有しており、例えば動脈硬化症の予防および治療などに有効であることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記一般式(1)で表されるホスホン酸ジエステル誘導体を提供する。
一般式(1):
【0006】
【化2】
Figure 0004110371
【0007】
[式中、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なって水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を示す。
R5はフェニル環上に低級アルキル基、ハロゲン置換低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン置換低級アルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、低級アルキルチオ基、ジ低級アルキルアミノ基、低級アルカノイルアミノ基、ピロリジニル基およびフェニル基からなる群から選ばれる置換基の1-3個を有するフェニル基;ベンゾジオキソラニル基;ナフチル基;ヒドロキシナフチル基;1-オキシピリジル基;低級アルキル置換ピリジル基;置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子およびニトロ基からなる群から選ばれる基を有することのあるチエニル基;置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基およびハロフェニル基からなる群から選ばれる基を有することのあるフリル基;ベンゾフラニル基;置換基として低級アルキル基を有することのあるピロリル基;置換基として低級アルキル基を有することのあるイミダゾリル基またはインドリル基を示す。但し、R5はモノ低級アルコキシフェニル基であってはならない。
また、R6は低級アルキル基を示す。]
特に、本発明は、(a)R5が置換基として低級アルキル基を有することのあるイミダゾリル基である上記ホスホン酸ジエステル誘導体;(b)R5がベンゾジオキソラニル基である上記ホスホン酸ジエステル誘導体;(c)R5が置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子およびニトロ基からなる群から選ばれる基を有することのあるチエニル基である上記ホスホン酸ジエステル誘導体;および(d)R5が置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基およびハロフェニル基からなる群から選ばれる基を有することのあるフリル基である上記ホスホン酸ジエステル誘導体を提供する。
【0008】
また、本発明は、一般式(1)で表されるホスホン酸ジエステル誘導体を有効成分として含有するACAT-1阻害剤を提供する。
【0009】
本発明のホスホン酸ジエステル誘導体は、動脈硬化症予防剤、動脈硬化症治療剤、LDL-コレステロール低下剤およびコレステロール吸収阻害剤として有用である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明誘導体を表す前記一般式(1)およびその他の本明細書中に用いられている各基は、それらが各式に示される基として用いられる場合および該基の置換基として用いられる場合のいずれの場合も、具体的にはそれぞれ次の通りである。本明細書において炭素を含む各基につき用いられる「低級」なる語は、「炭素数1-6の」なる意味で用いられるものとする。
【0011】
ハロゲン原子としては、弗素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示することができる。
【0012】
低級アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル基などの炭素数1-6の直鎖または分枝鎖状のアルキル基を例示することができる。
【0013】
低級アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1-6の直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基を例示することができる。
【0014】
フェニル環上に低級アルキル基、ハロゲン置換低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン置換低級アルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、低級アルキルチオ基、ジ低級アルキルアミノ基、低級アルカノイルアミノ基、ピロリジニル基およびフェニル基からなる群から選ばれる置換基の1-3個を有するフェニル基としては、以下の各基を例示することができる。
・2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、4-エチルフェニル、4-プロピルフェニル、4-イソプロピルフェニル、4-ブチルフェニル、4-tert-ブチルフェニル、4-ペンチルフェニル、4-ヘキシルフェニル基などの、低級アルキル基で置換されたフェニル基;
・2-トリフルオロメチルフェニル、3-トリフルオロメチルフェニル、4-トリフルオロメチルフェニル、2-トリクロロメチルフェニル、3-トリクロロメチルフェニル、4-トリクロロメチルフェニル、2-トリクロロメチルフェニル、3-トリクロロメチルフェニル、4-トリクロロメチルフェニル、2-トリブロモメチルフェニル、3-トリブロモメチルフェニル、4-トリブロモメチルフェニル、2-トリヨードメチルフェニル、3-トリヨードメチルフェニル、4-トリヨードメチルフェニル基などの、ハロゲン置換低級アルキル基で置換されたフェニル基;
・2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、4-エトキシフェニル、4-プロポキシフェニル、4-イソプロポキシフェニル、4-ブトキシフェニル、4-イソブトキシフェニル、4-tert-ブトキシフェニル、4-ペンチルオキシフェニル、4-ヘキシルオキシフェニル基などの、低級アルコキシ基で置換されたフェニル基;
・2-トリフルオロメトキシフェニル、3-トリフルオロメトキシフェニル、4-トリフルオロメトキシフェニル、2-トリクロロメトキシフェニル、3-トリクロロメトキシフェニル、4-トリクロロメトキシフェニル、2-トリクロロメトキシフェニル、3-トリクロロメトキシフェニル、4-トリクロロメトキシフェニル、2-トリブロモメトキシフェニル、3-トリブロモメトキシフェニル、4-トリブロモメトキシフェニル、2-トリヨードメトキシフェニル、3-トリヨードメトキシフェニル、4-トリヨードメトキシフェニル基などの、ハロゲン置換低級アルコキシ基で置換されたフェニル基;
・2-フェノキシフェニル、3-フェノキシフェニル、4-フェノキシフェニル基などのフェノキシフェニル基;
・2-ベンジルフェニル、3-ベンジルフェニル、4-ベンジルフェニル基などのベンジルフェニル基;
・2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル基などの水酸基で置換されたフェニル基;
・2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、4-クロロフェニル、2-フルオロフェニル、2-ブロモフェニル、2-ヨードフェニル基などのハロゲン原子で置換されたフェニル基;
・2-ニトロフェニル、3-ニトロフェニル、4-ニトロフェニル基などのニトロ基で置換されたフェニル基;
・2-メチルチオフェニル、3-メチルチオフェニル、4-メチルチオフェニル、4-エチルチオフェニル、4-プロピルチオフェニル、4-ブチルチオフェニル、4-ペンチルチオフェニル、4-ヘキシルチオフェニル基などの低級アルキルチオ基で置換されたフェニル基;
・2-ジメチルアミノフェニル、3-ジメチルアミノフェニル、4-ジメチルアミノフェニル、4-ジエチルアミノフェニル、4-ジプロピルアミノフェニル、4-ジブチルアミノフェニル、4-ジペンチルアミノフェニル、4-ジヘキシルアミノフェニル基などのジ低級アルキルアミノ基を有するフェニル基;
・2-アセチルアミノフェニル、3-アセチルアミノフェニル、4-アセチルアミノフェニル、4-プロパノイルアミノフェニル、4-ブタノイルアミノフェニル、4-ペンタノイルアミノフェニル、4-ヘキサノイルアミノフェニル基などの低級アルカノイルアミノ基を有するフェニル基;
・2-ピロリジニルフェニル、3-ピロリジニルフェニル、4-ピロリジニルフェニル基などのピロリジニル基を有するフェニル基;
・2-ビフェニル、3-ビフェニル、4-ビフェニル基などのフェニル基で置換されたフェニル基;
・2,3-ジメトキシフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、2,5-ジメトキシフェニル、2,6-ジメトキシフェニル、3,4-ジメトキシフェニル、3,5-ジメトキシフェニル、3,4,5-トリメトキシフェニル、2,3,4-トリメトキシフェニル、2,3-ジクロロフェニル、2,4-ジクロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、2-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル、2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル、2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル、2-ヒドロキシ-6-トキシフェニル、3-ベンジルオキシ-4-メトキシフェニル基などの2-3個の置換基を有するフェニル基。
【0015】
低級アルキル置換ピリジル基としては、3-メチル-2-ピリジル、4-メチル-2-ピリジル、5-メチル-2-ピリジル、6-メチル-2-ピリジル、2-メチル-3-ピリジル、4-メチル-3-ピリジル、5-メチル-3-ピリジル、6-メチル-3-ピリジル、2-メチル-4-ピリジル、3-メチル-4-ピリジル基などを例示することができる。
【0016】
置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子およびニトロ基からなる群から選ばれる基を有することのあるチエニル基としては、2-チエニル、3-チエニル、3-メチル-2-チエニル、4-メチル-2-チエニル、5-メチル-2-チエニル、3-クロロ-2-チエニル、4-ブロモ-2-チエニル、5-ヨード-2-チエニル、3-ニトロ-2-チエニル、4-ニトロ-2-チエニル、5-ニトロ-2-チエニル、2-メチル-3-チエニル、5-メチル-3-チエニル、2-クロロ-3-チエニル、4-ブロモ-3-チエニル、5-ヨード-3-チエニル、2-ニトロ-3-チエニル、4-ニトロ-3-チエニル、5-ニトロ-3-チエニル基などを例示することができる。
【0017】
置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基およびハロフェニル基からなる群から選ばれる基を有することのあるフリル基としては、2-フリル、3-フリル、3-メチル-2-フリル、4-メチル-2-フリル、5-メチル-2-フリル、3-クロロ-2-フリル、4-ブロモ-2-フリル、5-ヨード-2-フリル、3-ニトロ-2-フリル、4-ニトロ-2-フリル、5-ニトロ-2-フリル、2-メチル-3-フリル、5-メチル-3-フリル、2-クロロ-3-フリル、4-ブロモ-3-フリル、5-ヨード-3-フリル、2-ニトロ-3-フリル、4-ニトロ-3-フリル、5-ニトロ-3-フリル、3-(2-クロロフェニル)-2-フリル、4-(3-クロロフェニル)-2-フリル、5-(4-クロロフェニル)-2-フリル、2-(4-クロロフェニル)-3-フリル、4-(2-ブロモフェニル)-3-フリル、5-(3-ヨードフェニル)-3-フリル基などを例示することができる。
【0018】
置換基として低級アルキル基を有することのあるピロリル基としては、2-ピロリル、3-ピロリル、1-メチル-2-ピロリル、1-メチル-3-ピロリル、1-エチル-2-ピロリル、1-エチル-3-ピロリル、1-プロピル-2-ピロリル、1-プロピル-3-ピロリル基などを例示することができる。
【0019】
置換基として低級アルキル基を有することのあるイミダゾリル基としては、2-イミダゾリル基、4(5)-イミダゾリル、4-メチル-5-イミダゾリル基などを例示することができる。
【0020】
一般式(1)で表される本発明誘導体は、優れたACAT-1阻害活性を有しており、ACAT-1阻害剤として有用である。また、この活性に基づいて、動脈硬化症予防剤、動脈硬化症治療剤、LDL-コレステロール低下剤、コレステロール吸収阻害剤などとして医薬品分野で有用である。
【0021】
医薬品分野で好適な本発明誘導体としては、(a)R3がハロゲン原子である一般式(1)のホスホン酸ジエステル誘導体を挙げることができる。このものは特に経口投与によって血中濃度を高く維持することができる利点がある。上記(a)の内では、(b)R5が置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子およびニトロ基からなる群から選ばれる基を有することのあるチエニル基であるホスホン酸ジエステル誘導体、(c)R5が置換基として低級アルキル基を有することのあるイミダゾリル基であるホスホン酸ジエステル誘導体および(d)R5がベンゾジオキソラニル基であるホスホン酸ジエステル誘導体が、この順序でACAT-1阻害活性が強くなっており、従って、上記(b)が最もACAT-1阻害活性の強いものとして例示される。
【0022】
以下、本発明誘導体の製造法を詳述する。
【0023】
本発明誘導体は、例えば下記反応工程式-1に示す方法に従って製造することができる。
【0024】
【化3】
Figure 0004110371
【0025】
〔各式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は一般式(1)におけるそれらに同じ。〕反応工程式-1に示す方法によれば、公知の化合物(2)に公知のアルデヒド類(3)を反応させることにより、本発明化合物(1)を得ることができる。
【0026】
上記反応は無溶媒または例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの適当な不活性溶媒中で、濃塩酸、濃硫酸、p-トルエンスルホン酸などの酸触媒の触媒量の存在下に、等モル量〜1.2倍モル量程度のアルデヒド類(3)を用いて実施される。反応温度は室温〜溶媒の還流温度付近とすることができ、反応は一般に約2-30時間で終了する。
【0027】
なお、上記反応工程式-1において原料とする化合物(2)は、例えば前述した特開平8-143586号公報に記載の方法に従い得ることができる。
【0028】
本発明化合物は、通常の分離、精製手段により容易に単離、精製できる。該手段としては、一般に用いられる各種の手段、例えば、吸着クロマトグラフィー、プレパラティブ薄層クロマトグラフィー、再結晶、溶媒抽出などが挙げられる。
【0029】
本発明は、上記一般式(1)で表される本発明化合物を有効成分として含有する医薬組成物をも提供する。該医薬組成物は、本発明化合物と製剤学的に許容される担体とを用いて、一般的な医薬製剤の形態に調整されて実用される。
【0030】
本発明医薬組成物に利用される製剤学的に許容される担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される希釈剤または賦形剤、例えば充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などを例示できる。これらは調整される医薬製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
【0031】
医薬製剤の投与単位形態としては、各種の形態が治療目的に応じて適宜選択できる。その代表的なものとしては、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤など)、軟膏剤などが挙げられる。
【0032】
錠剤の形態に成形するに際しては、製剤学的に許容される担体として、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウムなどの賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ナミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどの崩壊剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリドなどの界面活性剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;グリセリン、デンプンなどの保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベンナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などを使用できる。更に、錠剤は、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠または二重錠、多層錠とすることができる。
【0033】
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤学的に許容される担体として、例えば、ブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤;ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などを使用できる。
【0034】
坐剤の形態に形成するに際しては、製剤学的に許容される担体として、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライドなどを使用できる。
【0035】
カプセル剤は、常法に従い、通常本発明化合物を上記で例示した各種の製剤学的に許容される担体と混合して、硬質ゼラチンカプセル、軟質ゼラチンカプセルなどの充填して調製される。
【0036】
液剤、乳剤、懸濁剤などの注射剤として調製される場合、これらは殺菌され且つ血液と等張であるのが好ましい。これらの形態にするに際しては、希釈剤として、例えば、水、エタノール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを使用できる。尚、この場合、等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖またはグリセリンを医薬製剤中に含有させてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤などを添加してもよい。
【0037】
ペースト、クリーム、ゲルなどの軟膏剤の形態に調製するに際しては、希釈剤として、例えば、白色ワセリン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベンナイトなどを使用できる。
【0038】
更に、本発明医薬組成物中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などや他の医薬品を含有させることもできる。
【0039】
本発明医薬組成物中に配合される本発明化合物(有効成分化合物)の量は、特に限定されず広範囲より適宜選択される。通常医薬組成物中に、約0.5-90重量%、好ましくは約1-85重量%程度配合されるのがよい。
【0040】
本発明医薬製剤の投与方法は特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じて決定される。例えば、錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤およびカプセル剤は経口投与され、注射剤は単独でまたはブドウ糖、アミノ酸などの通常の補液と混合して静脈内に、或いは筋肉内、皮内、皮下または腹腔内に投与され、坐剤は直腸内投与される。
【0041】
本発明医薬製剤の投与量は、その用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などにより適宜選択される。通常有効成分である本発明化合物の量が1日成人1人当たり体重1kg当たり約0.5-20mg程度、好ましくは1-10mg程度とするのがよい。該製剤は1日に1回または2-4回に分けて投与することができる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、本発明化合物の製造例を挙げ、次いで本発明化合物につき行われた薬理試験例および本発明化合物を有効成分とする医薬の製剤例を挙げる。
【0043】
各例において、1H-NMRは、特に明示しない限りクロロホルム-d1(CDCl3)溶媒中、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。
【0044】
【実施例1】
ジエチル 4-(7-クロロ-3-N-(4-メチルベンジリデンアミノ)-4(3H)-キナゾリノン-2-イル) ベンジルホスホナート(化合物番号:1)の製造
ジエチル 4-(3-アミノ-7-クロロ-4(3H)-キナゾリノン-2-イル) ベンジルホスホナート0.5g、p-トルアルデヒド0.28mLおよび触媒量のp-トルエンスルホン酸をN,N-ジメチルホルムアミド5mL中に懸濁させ、室温で2時間撹拌した。反応終了後、反応液に氷水を加え析出した沈殿を濾取し、得られた粗生成物をクロロホルム-ジエチルエーテルより再結晶して、目的化合物の白色粉末0.51gを得た。
【0045】
得られた化合物の構造および物性を表1に示す。
【0046】
また上記において、p-トルアルデヒドに代えて適当なアルデヒド類を用いて、同様にして、表1-表31に示す各化合物(実施例番号:2-152)を合成した。得られた各化合物の構造(一般式(1)におけるR1、R2、R3、R4およびR5にて表示、2つのR6は共にエチル基を示す)および物性を表1-表31に並記する。
【0047】
なお、各表における基の略号による表示は、それぞれ以下のことを示す。
Me:メチル基、Et:エチル基、Ph:フェニル基、Bn:ベンジル基、Me2:ジメチル基、Ac:アセチル基、OMeおよびMeO:メトキシ基、OBn:ベンジルオキシ基、SMe:メチルチオ基。
【0048】
【表1】
Figure 0004110371
【0049】
【表2】
Figure 0004110371
【0050】
【表3】
Figure 0004110371
【0051】
【表4】
Figure 0004110371
【0052】
【表5】
Figure 0004110371
【0053】
【表6】
Figure 0004110371
【0054】
【表7】
Figure 0004110371
【0055】
【表8】
Figure 0004110371
【0056】
【表9】
Figure 0004110371
【0057】
【表10】
Figure 0004110371
【0058】
【表11】
Figure 0004110371
【0059】
【表12】
Figure 0004110371
【0060】
【表13】
Figure 0004110371
【0061】
【表14】
Figure 0004110371
【0062】
【表15】
Figure 0004110371
【0063】
【表16】
Figure 0004110371
【0064】
【表17】
Figure 0004110371
【0065】
【表18】
Figure 0004110371
【0066】
【表19】
Figure 0004110371
【0067】
【表20】
Figure 0004110371
【0068】
【表21】
Figure 0004110371
【0069】
【表22】
Figure 0004110371
【0070】
【表23】
Figure 0004110371
【0071】
【表24】
Figure 0004110371
【0072】
【表25】
Figure 0004110371
【0073】
【表26】
Figure 0004110371
【0074】
【表27】
Figure 0004110371
【0075】
【表28】
Figure 0004110371
【0076】
【表29】
Figure 0004110371
【0077】
【表30】
Figure 0004110371
【0078】
【表31】
Figure 0004110371
【0079】
【薬理試験例1】
表1-31に記載の各化合物を被験物質として利用して、これら各化合物の有するACAT-1阻害作用を以下の通り試験した。
【0080】
ACAT-1酵素活性の測定は、再構成法(reconstituted vesicle assay) [J. Lipid Res., 29, 1683-1692 (1988)、Biochem. Biophys. Acta, 982, 187-195 (1989)、J. Biol. Chem., 270, 29532-29540 (1995)]に従った。
【0081】
I. Broken Homoginate の作製
SW-13細胞(ヒト副腎皮質癌由来細胞)を、10%ウシ胎児血清(FBS)含有L-15培地中、炭酸ガスインキュベーター内で、培養プレートにコンフレントになるまで培養した。
【0082】
文献記載の方法[hypotonic shock and scrapping method, Anal. Biochem., 116, 298-302 (1981)]に従い、Broken Homoginateを採取した。蛋白定量(Bradford 法)を行い、使用するまで、-80℃で保存した。
【0083】
II. Cholesterol/Phosphatidylcholine (Chol/PC) vesicle の作製
チャンらの方法[Chang, T.Y., et al., Anal. Biochem., 157, 323-330 (1986)]に従い、Chol/PC vesicle (Chol/PC=3.9 mM/12.8mM)を作製した。
【0084】
III. 5 × DOC/PC の作製
ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)50mgを50mg/mL sodium deoxycholate-Buffer A (50mM Tris-HCl, 5mM EDTA, 0.05mM PMSF(phenylmethyl sulfonyl fluoride, 和光純薬株式会社), pH 7.8) 5 mL に溶解した。
【0085】
IV. 酵素液の作製
蛋白濃度2.5mg/mLのBroken Homoginate 2.6mLに、5×DOC/PC 0.65mLを加え、攪拌後、氷中で20分放置した。これに、Chol/PC vesicle 22mLを加え、攪拌し、さらに氷中で20分放置した。遠心後、浮遊物を除去し、これを酵素液とした。
【0086】
V. アッセイ
被験物質は、1×10-3mol/Lの濃度となるようにDMSOに溶解した。
【0087】
ネジ口ガラス試験管に、被験物質またはDMSO(コントロールとして)2.5μL、酵素液200μLおよび基質溶液(150 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、15mg/mL BSA (FFA free)、2mM DTTおよび0.1mM [1-14C]oleoyl coenzyme A (8.0Ci/mol))50μLを加え、37℃で30分間反応させた。ヘキサン4mL、2M NaCl 1mLおよび[3H]-cholesteryl oleate添加エタノール1mL(約10000 dpm)を加えて反応を停止させた。5分間振盪後、遠心し、上層のヘキサン相のうちの2mLをガラス試験管に移し、また1mLをシンチレションバイアルに移した。
【0088】
ガラス試験管中のヘキサン相は、窒素ガス気流下で溶媒を除去し、得られた脂質抽出物をクロロホルム/メタノール(2:1)混合液100μLに再溶解後、TLCプレートへスポットした。TLCプレートを、ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(73:25:2)で展開し、バイオイメージアナライザー(BAS2000II, 富士フィルム社製)で、コレステロールエステル画分の14Cを定量した。
【0089】
また、シンチレーションバイアル中のヘキサン相は、シンチレーションカクテルを加え、3Hをカウントし、加えた[3H]-cholesteryl oleate添加エタノールの3H量より抽出効率を計算した。抽出効率より生成した全コレステロールエステル量を計算した。コントロールの場合と比べ、被験物質添加時に減少する生成全コレステロールエステル量を、パーセント表示したものを、ACAT-1酵素阻害率とした。
【0090】
VI. 結果
結果を、下記表32および表33に示す。
【0091】
【表32】
Figure 0004110371
【0092】
【表33】
Figure 0004110371
【0093】
VII. 考察
表32および表33に示される結果より、本発明化合物は優れたACAT-1阻害活性を有することが明らかである。
【0094】
【薬理試験例2】
ACAT-1阻害作用試験2(THP-1細胞泡沫化抑制作用試験)
表1-31に示される被験物質のTHP-1細胞泡沫化抑制作用(ACAT-1阻害作用)を以下のとおり試験した。
【0095】
I. 試験方法
24ウェルプレートに、1ウェルあたり7.5×105細胞となるように200 nM フォルボール 12-ミリステート 13-アセテート(phorbol 12-myristate 13-acetate, PMA)添加10% FBS-RPMI1640培養液で調整したTHP-1細胞を播種し、炭酸ガスインキュベーター内で3日間培養して、マクロファージ様細胞へと分化させた。RPMI1640培養液で1回洗浄した後、培養液を5% Lipoprotein Deficient Serum (LPDS; R. J. Mayer, et al., J. Biol. Chem., 266, 20070 (1991): D. E. Vance, et al., Biochem. Biophys. Acta, 792, 39 (1984))-RPMI1640 1mL/ウェルに変更して、更に8時間培養した。8時間後、蛋白濃度50μg/mLのアセチルLDL (Ac LDL; 袴田秀樹ら、「動脈硬化+高脂血症研究ストラテジー」、pp36-41(1996)秀潤社)、BSA-[14C] oleate complex(J. L. Goldstein, et al, Method. Enzymol., 98, 241 (1983))2.5μLおよび被験物質(最終濃度1×10-5mol/L)を加えた5% LPDS-RPMI1640培養液500μLに培養液を交換した。16時間培養した後、細胞を0.3% BSA-PBS(-)で1回、PBS(-)で2回洗浄した。細胞内の脂質成分を抽出するために、1ウェルあたりヘキサン/2-プロパノール(3:2) 0.5mLを加えて静置した。30分後、抽出液をガラス試験管にプールした。同じ抽出操作をもう一度繰り返し、先の抽出液と合わせ、窒素ガス気流下で溶媒を除去した。得られた脂質抽出物をクロロホルム/メタノール(2:1)100μLで再溶解し、TLCプレートにスポットした。TLCプレートは、ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(73:25:2)で展開し、オートラジオグラフィーにより、コレステロールエステル画分の14Cを定量した。定量には、バイオイメージアナライザーBAS2000II(富士フィルム株式会社製) を用いた。また、脂質抽出の終わった各ウェルに0.1N NaOH-0.1% SDS 0.3mLを加え、ラバーポリスマンでプレートに付着している細胞を剥がし回収した。この細胞可溶化液中の蛋白量をBCA Protein Assayキット(PIERCE社)にて定量した。
【0096】
定量したコレステロールエステル量(pmol)を蛋白量(mg)で割った値と、被験物質を加えなかった場合のそれとを比較して減少率(%)を算出し、これを被験物質のTHP-1細胞泡沫化抑制率(%)として、被験物質のACAT-1活性の指標とした。
【0097】
II. 結果
試験の結果を、下記表34-36に示す。
【0098】
【表34】
Figure 0004110371
【0099】
【表35】
Figure 0004110371
【0100】
【表36】
Figure 0004110371
【0101】
III. 考察
表34-36に示される結果からも、表32-33と同様に、一般式(1)に示される本発明化合物は、優れたACAT-1阻害活性を有することが明らかである。
【0102】
このようなACAT-1阻害活性を有する化合物が、動脈硬化予防剤およびコレステロール吸収阻害剤として有効であることは、例えばThe Journal of Biological Chemistry, Vol.276, No.28, July 14, pp.21324-21330, 2000およびThe Journal of Biological Chemistry, Vol.275, No.36, September 8, pp.28083-28092, 2000の記載から明らかである。
【0103】
また、ACAT-1阻害活性を有する化合物が、動脈硬化症の治療およびLDL-コレステロールの低下に有効であることは、「日本臨床」59巻増刊号3 (2001)、第675-680頁の記載から明らかである。
【0104】
【製剤例1】
有効成分として、実施例1で得た本発明化合物を用いて、1錠当りその300mgを含有する錠剤(2000錠)を、次の処方により調製した。
実施例1で得た本発明化合物 600g
乳糖(日本薬局方品) 67g
コーンスターチ(日本薬局方品) 33g
カルボキシメチルセルロースカルシウム(日本薬局方品) 25g
メチルセルロース(日本薬局方品) 12g
ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方品) 3g
即ち、上記処方に従い、実施例1で得た本発明化合物、乳糖、コーンスターチおよびカルボキシメチルセルロースカルシウムを充分混合し、メチルセルロース水溶液を用いて混合物を顆粒化し、24メッシュの篩を通し、これをステアリン酸マグネシウムと混合して、錠剤にプレスして、目的の錠剤を得た。
【0105】
【製剤例2】
有効成分として、実施例1で得た本発明化合物を用いて、1カプセル当りその200mgを含有する硬質ゼラチンカプセル剤(2000カプセル)を、次の処方により調製した。
実施例1で得た本発明化合物 400g
結晶セルロース(日本薬局方品) 60g
コーンスターチ(日本薬局方品) 34g
タルク(日本薬局方品) 4g
ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方品) 2g
即ち、上記処方に従い、各成分を細かく粉末にし、均一な混合物となるように混和した後、所望の寸法を有する経口投与用ゼラチンカプセルに充填して、目的のカプセル剤を得た。

Claims (6)

  1. 一般式
    Figure 0004110371
    [式中、R、R、RおよびRは、同一または異なって水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を示す。
    はベンゾジオキソラニル基;ナフチル基;ヒドロキシナフチル基;1−オキシピリジル基;置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子およびニトロ基からなる群から選ばれる基を有することのあるチエニル基;置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基およびハロフェニル基からなる群から選ばれる基を有することのあるフリル基;ベンゾフラニル基;置換基として低級アルキル基を有することのあるピロリル基;置換基として低級アルキル基を有することのあるイミダゾリル基またはインドリル基を示す
    た、Rは低級アルキル基を示す。]
    で表されるホスホン酸ジエステル誘導体。
  2. が置換基として低級アルキル基を有することのあるイミダゾリル基である請求項1に記載のホスホン酸ジエステル誘導体。
  3. がベンゾジオキソラニル基である請求項1に記載のホスホン酸ジエステル誘導体。
  4. が置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子およびニトロ基からなる群から選ばれる基を有することのあるチエニル基である請求項1に記載のホスホン酸ジエステル誘導体。
  5. が置換基として低級アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基およびハロフェニル基からなる群から選ばれる基を有することのあるフリル基である請求項1に記載のホスホン酸ジエステル誘導体。
  6. 請求項1に記載のホスホン酸ジエステル誘導体を有効成分として含有するACAT−1阻害剤。
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