JP4038661B2 - ホスホン酸ジエステル誘導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なホスホン酸ジエステル誘導体およびこれを含有するACAT-1阻害剤(acyl-coenzyme A: cholesterol acyltransferase-1阻害剤)などの医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明誘導体は文献未載の新規化合物である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は医薬品として有用な化合物およびこれを利用する医薬品を提供することを目的とする。
【0004】
本発明者らは、医薬品分野で利用できる有効成分化合物につき研究、開発を続ける過程において、下記一般式(1)で表される一連の新規化合物が、ACAT-1阻害活性を有しており、例えば動脈硬化症の予防および治療に有効であることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記一般式(1)で表されるホスホン酸ジエステル誘導体を提供する。
一般式(1):
【0006】
【化2】
【0007】
[式中、AはC-R1またはNを示す。R1はフェニル環上にハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルキルスルホニル基を有することのあるフェニル基またはピリジル基を示す。BはAがC-R1のときNを示し、AがNのときC-COR2を示す。R2は低級アルコキシ基または低級アルキルアミノ基を示す。R3はAがC-R1のとき低級アルキル基、シアノ基、フェニル環上にハロゲン原子を有するフェニル基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、フェニルカルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基、N,N-ジ低級アルキルカルバモイル基、フェニル低級アルキルカルバモイル基、ピロリジノカルボニル基、N-低級アルキルピペラジノカルボニル基またはモルホリノカルボニル基を示し、AがNのときフェニルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基またはベンゾイルアミノ基を示す。R4は低級アルキル基を示す。]
本発明ホスホン酸ジエステル誘導体中には、AがC-R1である一般式(1)に記載の誘導体およびAがNである一般式(1)に記載の誘導体が含まれる。これらはいずれもACAT-1阻害作用を有しており、例えば動脈硬化症予防剤、動脈硬化症治療剤、LDL-コレステロール低下剤、コレステロール吸収阻害剤などとして有用である。
【0008】
従って、本発明は、一般式(1)で表されるホスホン酸ジエステル誘導体を有効成分とするACAT-1阻害剤を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明誘導体を表す前記一般式(1)およびその他の本明細書中に用いられている各基は、それらが各式に示される基として用いられる場合および該基の置換基として用いられる場合のいずれの場合も、具体的にはそれぞれ次の通りである。本明細書において炭素を含む各基につき用いられる「低級」なる語は、「炭素数1-6の」なる意味で用いられるものとする。
【0010】
フェニル環上にハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルキルスルホニル基を有することのあるフェニル基としては、無置換のフェニル基に加えて、フェニル環上にハロゲン原子、炭素数1-6の直鎖状または分枝鎖錠アルキル基および炭素数1-6の直鎖状または分枝鎖状アルキルスルホニル基から選ばれる基の1-3個を有するフェニル基を挙げることができる。該置換フェニル基の具体例を以下に示す。
【0011】
2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、4-クロロフェニル、4-フルオロフェニル、4-ブロモフェニル、4-ヨードフェニル、2,3-ジクロロフェニル、2,4-ジクロロフェニル、2,5-ジクロロフェニル、2,6-ジクロロフェニル、3,4-ジクロロフェニル、3,5-ジクロロフェニル、2,4,6-トリクロロフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、4-エチルフェニル、4-プルピルフェニル、4-イソプルピルフェニル、4-ブチルフェニル、4-tert-ブチルフェニル、2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、3,4-ジメチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2,3,4-トリメチルフェニル、2,3,5-トリメチルフェニル、2,4,5-トリメチルフェニル、3,4,5-トリメチルフェニル、2-メチルスルホニルフェニル、3-メチルスルホニルフェニル、4-メチルスルホニルフェニル、4-エチルスルホニルフェニル、4-プロピルスルホニルフェニル、4-イソプロピルスルホニルフェニル、2,3-ジメチルスルホニルフェニル、2,4-ジメチルスルホニルフェニル、2,5-ジメチルスルホニルフェニル、2,6-ジメチルスルホニルフェニル、3,4-ジメチルスルホニルフェニル、3,5-ジメチルスルホニルフェニル、2,4,6-トリメチルスルホニルフェニルなど。
【0012】
ハロゲン原子としては、弗素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示することができる。
【0013】
低級アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル基などの炭素数1-6の直鎖または分枝鎖状のアルキル基を例示することができる。
【0014】
低級アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチスルホニルル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル基などの炭素数1-6の直鎖または分枝鎖状アルキル基を有するスルホニル基を例示することができる。
【0015】
低級アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1-6の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基を例示することができる。
【0016】
低級アルキルアミノ基としては、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、tert-ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ基などの炭素数1-6の直鎖または分枝鎖状アルキル基を有するアミノ基を例示することができる。
【0017】
フェニル環上にハロゲン原子を有するフェニル基としては、フェニル環上にハロゲン原子の1-3個を有するフェニル基を挙げることができる。該ハロゲン置換フェニル基の具体例は、上述した通りである。
【0018】
低級アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などの炭素数1-6の直鎖または分枝鎖状のアルコキシ基を有するカルボニル基を例示することができる。
【0019】
低級アルキルカルバモイル基としては、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、ブチルカルバモイル、イソブチカルバモイルル、tert-ブチルカルバモイル、ペンチルカルバモイル、ヘキシルカルバモイル基などの炭素数1-6の直鎖または分枝鎖状のアルキル基を有するカルバモイル基を例示することができる。
【0020】
N,N-ジ低級アルキルカルバモイル基としては、N,N-ジメチルカルバモイル、N,N-ジエチルカルバモイル、N,N-ジプロピルカルバモイル、N,N-ジブチルカルバモイル、N,N-ジペンチルカルバモイル、N,N-ジヘキシルカルバモイル基などの炭素数1-6の直鎖または分枝鎖状のアルキル基の2個を有するカルバモイル基を例示することができる。
【0021】
フェニル低級アルキルカルバモイル基としては、ベンジルカルバモイル、1-フェニルエチルカルバモイル、2-フェニルエチルカルバモイル、3-フェニルプロピルカルバモイル、4-フェニルブチルカルバモイル、5-フェニルペンチルカルバモイル、6-フェニルヘキシルカルバモイル基などのフェニル基を有する炭素数1-6の直鎖または分枝鎖状のアルキル基を有するカルバモイル基を例示することができる。
【0022】
N-低級アルキルピペラジノカルボニル基としては、N-メチルピペラジノカルボニル、N-エチルピペラジノカルボニル、N-プロピルピペラジノカルボニル、N-イソプロピルピペラジノカルボニル、N-ブチルピペラジノカルボニル、N-イソブチルピペラジノカルボニル、N-tert-ブチルピペラジノカルボニル、N-ペンチルピペラジノカルボニル、N-ヘキシルピペラジノカルボニル基などの、窒素原子上に炭素数1-6の直鎖または分枝鎖状のアルキル基を有するピペラジノカルボニル基を例示することができる。
【0023】
フェニル低級アルキルアミノ基としては、ベンジルアミノ、1-フェニルエチルアミノ、2-フェニルエチルアミノ、3-フェニルプロピルアミノ、4-フェニルブチルアミノ、5-フェニルペンチルアミノ、6-フェニルヘキシルアミノ基などのフェニル基を有する炭素数1-6の直鎖または分枝鎖状アルキルアミノ基を例示することができる。
【0024】
本発明誘導体は、(1) 前記一般式(1)中、AがC-R1である(従ってBはNである)ホスホン酸ジエステル誘導体および(2)前記一般式(1)中、AがNである(従ってBはC-COR2である)ホスホン酸ジエステル誘導体に分類できる。これらの本発明誘導体は、優れたACAT-1阻害活性作用を有しており、ACAT-1阻害剤として有用である。また、この活性に基づいて、動脈硬化症予防剤、コレステロールの吸収阻害剤などとして医薬品分野で有用である。
【0025】
医薬品分野で好適な本発明誘導体としては、(a)AがN、BがC-COR2(R2=低級アルコキシ基)およびR3がフェニル低級アルキルアミノ基である化合物、および(b)AがC-R1、BがNおよびR3がN,N-ジ低級アルキルカルバモイル基、N-低級アルキルピペラジノカルボニル基および低級アルキルカルバモイル基から選ばれる基である化合物を挙げることができる。これらはいずれもACAT-1阻害作用が強い特徴を有している。また、(b)群に属する化合物は、R3の種類に応じて上記記載の順序で強いACAT-1阻害作用を有している。従って、これらの内ではR3がN,N-ジ低級アルキルカルバモイル基である化合物が最も強いACAT-1阻害作用を有している。
【0026】
以下、本発明誘導体について、その製造法を詳述する。
【0027】
AがC-R1である本発明誘導体は、例えば下記反応工程式-1に示す方法に従って製造することができる。
【0028】
【化3】
【0029】
〔各式中、R1およびR4は一般式(1)に同じ。R5は低級アルキル基、低級アルコキシカルボニル基、シアノ基またはフェニル環上にハロゲン原子を有するフェニル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。〕
反応工程式-1に示す方法によれば、公知のカルボン酸ハロゲン化物誘導体(2)と一部新規化合物を含むアミン類(3)とを反応させることにより、本発明化合物(1a)を得ることができる。尚、アミン類(3)に含まれる一部の新規化合物は、公知の方法に従って製造することができる。その製法の具体例は、後記参考例に詳述する。
【0030】
上記反応は一般に脱酸剤の存在下に、適当な溶媒中で実施される。ここで脱酸剤としては、反応に悪影響を与えない公知の各種のものをいずれも使用できる。その具体例としては、例えばトリエチルアミン、N,N-ジエチルアニリン、N-メチルモルホリン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジンなどの第三級アミン類を好ましく例示できる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテルなどの芳香族ないし脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの鎖状ないし環状エーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類など;及びこれらの組合せを例示できる。上記反応におけるカルボン酸ハロゲン化物誘導体(2)とアミン類(3)との使用割合は、特に限定されないが、通常後者に対して前者を等モル量-過剰量用いるのがよい。また、脱酸剤は、通常カルボン酸ハロゲン化物誘導体(2)に対して等モル-過剰量用いられるのが好適である。反応は、冷却下、室温下および加熱下のいずれでも進行するが、通常室温付近-溶媒の還流温度範囲の温度条件を採用して行われるのがよく、一般に約0.5-24時間程度で終了する。
【0031】
【化4】
【0032】
〔各式中、R1およびR4は一般式(1)に同じ。R6は低級アルキル基を示す。〕
反応工程式-2に示す方法によれば、前記反応工程式-1で得られる、R5が低級アルコキシカルボニル基である本発明ホスホン酸ジエステル誘導体(1a')をアルカリ加水分解することにより、対応する基としてカルボキシル基を有する本発明化合物(1b)を得ることができる。
【0033】
上記反応は、一般に塩基の存在下に、適当な溶媒中で実施される。ここで塩基としては、好ましくは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。溶媒としては、水、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの鎖状ないし環状エーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;これらの組合せなどを例示できる。上記反応におけるエステル誘導体(4)と塩基との使用割合は、特に限定されないが、通常前者に対して後者を等モル-3倍モル量用いるのがよい。反応は、冷却下、室温下および加熱下のいずれでも進行するが、通常氷冷下-室温付近の温度条件を採用して行われるのがよく、一般に約12-24時間程度で終了する。
【0034】
【化5】
【0035】
〔各式中、R1およびR4は一般式(1)に同じ。R7およびR8は同一または異なって水素原子、低級アルキル基、フェニル低級アルキル基またはフェニル基を示すかあるいは両者が結合して基-CH2CH2CH2CH2-、基-CH2CH2-N(CH3)-CH2CH2-または基-CH2CH2-O-CH2CH2-を示す。〕
反応工程式-3に示す方法によれば、本発明化合物(1b)と公知のアミン類(5)とを縮合させることにより、本発明化合物(1c)を得ることができる。上記縮合反応は、一般に縮合剤の存在下に、適当な溶媒中で実施される。縮合剤としては、従来公知の各種のものをいずれも使用できる。その具体例としては、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-ヒドロキシコハク酸イミド、ジエチルリン酸シアニド、ジフェニルリン酸アジドなどを例示できる。これらは一種単独で用いることもでき、2種以上を併用することもできる。特に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドと1-ヒドロキシベンゾトリアゾールとの併用が有利である。溶媒としては、公知の非プロトン性溶媒をいずれも用い得る。特に好ましい溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を例示できる。上記反応における本発明化合物(1b)とアミン類(5)との使用割合は、特に限定されないが、通常前者に対して後者を等モル-3倍モル量用いるのがよい。縮合剤は本発明化合物(1b)に対して等モル量-過剰量、好ましくは少過剰量用いるのが望ましい。反応温度としては、氷冷下-室温付近の温度条件を採用でき、通常約12-24時間程度で反応は終了する。
【0036】
【化6】
【0037】
〔各式中、R4は前記に同じ。R9はフェニルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基またはベンゾイルアミノ基を示す。R10は低級アルキル基およびXはハロゲン原子を示す。〕
反応工程式-4に示す方法によれば、カルボン酸ハロゲン化物誘導体(2)と公知のアミン類(6)とを反応させることにより、本発明化合物(1d)を得ることができる。この反応は、一般に脱酸剤の存在下、適当な溶媒中で実施される。ここで脱酸剤としては、反応に悪影響を与えない公知の各種のものをいずれも使用できる。その具体例としては、例えばトリエチルアミン、N,N-ジエチルアニリン、N-メチルモルホリン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジンなどの第三級アミン類を好ましく例示できる。これらは1種単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。また溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテルなどの芳香族ないし脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの鎖状ないし環状エーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類など;およびこれらの組合せを例示できる。上記反応におけるカルボン酸ハロゲン化物誘導体(2)とアミン類(6)との使用割合は、特に限定されないが、通常後者に対して前者を等モル量-過剰量用いるのがよい。また、脱酸剤は、通常カルボン酸ハロゲン化物誘導体(2)に対して等モル-過剰量用いられるのが好適である。反応は、冷却下、室温下および加熱下のいずれでも進行するが、通常室温付近-溶媒の還流温度範囲の温度条件を採用して行われるのがよく、一般に約0.5-24時間程度で終了する。
【0038】
【化7】
【0039】
〔各式中、R4、R9およびR10は前記に同じ。R11は、低級アルキル基を示す。〕
反応工程式-5に示す方法によれば、適当な溶媒中、本発明化合物(1d)とアミン類(7)とを反応させることにより、本発明化合物(1e)を得ることができる。該反応における溶媒としては、公知の非プロトン性溶媒;ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの鎖状ないし環状エーテル類;これらの混合溶媒が使用できる。上記反応における(1d)とアミン類(7)との使用割合は、特に限定されないが、通常前者に対して後者を等モル-過剰量用いるのがよい。反応は、冷却下、室温下および加熱下のいずれでも進行するが、通常室温-溶媒の還流温度範囲の温度条件を採用して行われるのがよく、一般に約1-2日程度で終了する。
【0040】
本発明化合物は、通常の分離、精製手段により容易に単離、精製できる。該手段としては、一般に用いられる各種の手段、例えば、吸着クロマトグラフィー、プレパラティブ薄層クロマトグラフィー、再結晶、溶媒抽出などが挙げられる。
【0041】
一般式(1)で表される本発明化合物は、優れたACAT-1阻害作用を有しており、医薬、特に動脈硬化症の予防剤、コレステロール吸収阻害剤などとして有用である。
【0042】
従って、本発明は、上記一般式(1)で表される本発明化合物を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、本発明化合物と製剤学的に許容される担体とを用いて、一般的な医薬製剤の形態に調整されて実用される。
【0043】
本発明医薬組成物に利用される製剤学的に許容される担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される希釈剤または賦形剤、例えば充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などを例示できる。これらは調整される医薬製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
【0044】
医薬製剤の投与単位形態としては、各種の形態が治療目的に応じて適宜選択できる。その代表的なものとしては、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤など)、軟膏剤などが挙げられる。
【0045】
錠剤の形態に成形するに際しては、製剤学的に許容される担体として、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウムなどの賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ナミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどの崩壊剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリドなどの界面活性剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;グリセリン、デンプンなどの保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベンナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などを使用できる。更に、錠剤は、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠または二重錠、多層錠とすることができる。
【0046】
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤学的に許容される担体として、例えば、ブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤;ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などを使用できる。
【0047】
坐剤の形態に形成するに際しては、製剤学的に許容される担体として、例えば、ポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライドなどを使用できる。
【0048】
カプセル剤は、常法に従い、通常本発明化合物を上記で例示した各種の製剤学的に許容される担体と混合して、硬質ゼラチンカプセル、軟質ゼラチンカプセルなどの充填して調製される。
【0049】
液剤、乳剤、懸濁剤などの注射剤として調製される場合、これらは殺菌され且つ血液と等張であるのが好ましい。これらの形態にするに際しては、希釈剤として、例えば、水、エタノール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを使用できる。尚、この場合、等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖またはグリセリンを医薬製剤中に含有させてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤などを添加してもよい。
【0050】
ペースト、クリーム、ゲルなどの軟膏剤の形態に調製するに際しては、希釈剤として、例えば、白色ワセリン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベンナイトなどを使用できる。
【0051】
更に、本発明医薬組成物中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などや他の医薬品を含有させることもできる。
【0052】
本発明医薬組成物中に配合される本発明化合物(有効成分化合物)の量は、特に限定されず広範囲より適宜選択される。通常医薬組成物中に、約0.5-90重量%、好ましくは約1-85重量%程度配合されるのがよい。
【0053】
本発明医薬製剤の投与方法は特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じて決定される。例えば、錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤およびカプセル剤は経口投与され、注射剤は単独でまたはブドウ糖、アミノ酸などの通常の補液と混合して静脈内に、或いは筋肉内、皮内、皮下または腹腔内に投与され、坐剤は直腸内投与される。
【0054】
本発明医薬製剤の投与量は、その用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などにより適宜選択される。通常有効成分である本発明化合物の量が1日成人1人当たり体重1kg当たり約0.5-20mg程度、好ましくは1-10mg程度とするのがよい。該製剤は1日に1回または2-4回に分けて投与することができる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を更に詳しく説明するため、本発明化合物の製造のための原料化合物(アミン類(3))の製造例を参考例として挙げ、次いで本発明化合物の製造例を実施例として挙げる。次いで、本発明化合物につき行われた薬理試験例および本発明化合物を有効成分とする医薬の製剤例を挙げる。
【0056】
【参考例1】
2-アミノ-5-メチル-4-(4-メチルスルホニルフェニル)チアゾール(実施例1および2に記載の化合物の製造のための原料化合物)の製造
4-(メチルスルホニル)プロピオフェノン10gと塩化アルミニウム(III)1gとをクロロホルム50mLに溶解させ、これに氷冷撹拌下に臭素7.9gをゆっくりと滴下した。氷冷下で更に1時間撹拌後、反応混合物を氷水100mL中に注ぎ込んだ。クロロホルム層を分液し、飽和重曹水50mLおよび飽和食塩水50mLで順次洗浄した後、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を減圧留去して、2-ブロモ-4'-メチルスルホニルプロピオフェノンを得た。
【0057】
このものを精製することなく、エタノール50mLとチオ尿素3.5gとを加え、70℃で12時間撹拌した。溶媒を減圧留去後、酢酸エチル100mLと2N水酸化ナトリウム水溶液50mLとを加えて分液した。酢酸エチル層を硫酸マグネシウム上で乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた粗結晶をエタノール-水より再結晶して、2-アミノ-5-メチル-4-[4-(メチルスルホニル)フェニル]チアゾール6gを得た。
【0058】
上記と同様にして、実施例3に記載の化合物の製造のための原料化合物を製造した。
【0059】
【参考例2】
2-アミノ-5-シアノ-4-フェニルチアゾール(実施例4に記載の化合物の製造のための原料化合物)の製造
ベンゾイルアセトニトリル10gをTHF 50mLに溶解させ、室温撹拌下にフェニルトリメチルアンモニウム トリブロミド28.5gのTHF溶液100mLをゆっくりと滴下した。室温で更に24時間撹拌後、不溶物を濾別し、濾液を減圧下に濃縮した。残渣を塩化メチレン50mLに溶かし、飽和食塩水50mLで洗浄した後、硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶媒を減圧留去して、2-ブロモ-ベンゾイルアセトニトリルを得た。
【0060】
このものを精製することなく、エタノール50mLとチオ尿素5.0gとを加え、70℃で12時間撹拌した。溶媒を減圧留去後、得られた粗結晶をエタノール-ジエチルエーテルより再結晶して、2-アミノ-5-シアノ-4-フェニルチアゾールの臭化水素塩14.2gを得た。
【0061】
上記と同様にして、実施例5-10に記載の化合物の製造のための原料化合物を製造した。
【0062】
【参考例3】
5-アミノ-4-エトキシカルボニル-2-フェニルアミノチアゾール(実施例39に記載の化合物の製造のための原料化合物)の製造
α-アミノシアノ酢酸エチル2.1gのエタノール20mL溶液に、イソチオシアン酸フェニル1.8gを加えて、70℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、析出した結晶を濾取した。エタノールで洗浄して、5-アミノ-4-エトキシカルボニル-2-フェニルアミノチアゾール2.15gを得た。
【0063】
上記と同様にして、実施例40および41に記載の化合物の製造のための原料化合物を製造した。
【0064】
【実施例1】
ジイソプロピル 4-([5-メチル-4-(4-メチルスルホニルフェニル)チアゾール-2-イル]カルバモイル)ベンジルホスホナートの製造
2-アミノ-5-メチル-4-(4-メチルスルホニルフェニル)チアゾールの臭化水素塩3gをピリジン20mLに懸濁させ氷冷撹拌下、この混合物中に4-((ジイソプロポキシホスホリル)メチル)ベンゾイル クロリド2.5gのジクロロメタン20mL溶液をゆっくりと滴下した。室温で16時間撹拌後、水50mLを加え酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を10%塩酸水溶液30mLで洗浄後、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた粗結晶をエタノール-n-ヘキサンより再結晶し標記化合物の無色結晶2.2gを得た。得られた化合物の構造および物性を表1に示す。
【0065】
【実施例2−10】
実施例1と同様にして、表1に示す化合物を合成した。得られた化合物の構造および物性を表1に並記する。
【0066】
尚、表における基の略号による表示は、それぞれ以下のことを示す。後記する各表においても同様である。
OMe:メトキシ基、OEt:エトキシ基、Me:メチル基、Et:エチル基、i-Pr:イソプロピル基
【0067】
【表1】
【0068】
【実施例11】
ジイソプロピル 4-[(5-カルボキシ-4-フェニルチアゾール-2-イル)カルバモイル]ベンジルホスホナートの製造
実施例1と同様にして得られたジイソプロピル 4-[(5-エトキシカルボニル-4-フェニルチアゾール-2-イル)カルバモイル]ベンジルホスホナート3.18g をエタノール 25mLに溶解させ、氷冷撹拌下、2N 水酸化ナトリウム水溶液 6mL をゆっくりと滴下した。室温で12時間撹拌後、10%塩酸水溶液を加えpH2とし析出した結晶を濾取し、標記化合物の無色結晶2.0g を得た。得られた化合物の構造および物性(1H-NMR分析結果)を表2に示す。
【0069】
【実施例12−16】
実施例11と同様にして、表2に示す各化合物を合成した。得られた化合物の構造および物性を表2に併記する。
【0070】
【表2】
【0071】
表2中、1H-NMR分析結果は次の通りである。
NMR(1):(δ:ppm, DMSO-d6, 内部標準=TMS)
1.14(d, J=6.2Hz, 6H), 1.22(d, J=6.2Hz, 6H), 3.30(d, J=22.0Hz, 2H), 4.4-4.6(m, 2H), 7.45(m, 5H), 7.75(m, 2H), 8.08(d, J=7.9Hz, 2H), 13.02(brs, 1H)
NMR(2):(δ:ppm, DMSO-d6, 内部標準=TMS)
1.14(d, J=6.2Hz, 6H), 1.22(d, J=6.2Hz, 6H), 3.29(d, J=22.0Hz, 2H), 4.4-4.6(m, 2H), 7.26(m, 2H), 7.46(m, 2H), 7.82(m, 2H), 8.07(d, J=7.9Hz, 2H), 13.02(brs, 1H)
NMR(3):(δ:ppm, DMSO-d6, 内部標準=TMS)
1.19(t, J=7.1Hz, 6H), 3.37(d, J=22.4Hz, 2H), 3.9-4.0(m, 4H), 7.27(m, 2H), 7.46(dd, J=2.5, 8.3Hz, 2H), 7.8-7.9(m, 2H), 8.08(d, J=8.3Hz, 2H), 13.04(brs, 1H)
NMR(4):(δ:ppm, DMSO-d6, 内部標準=TMS)
1.14(d, J=6.2Hz, 6H), 1.22(d, J=6.2Hz, 6H), 3.30(d, J=22.0Hz, 2H), 4.4-4.6(m, 2H), 7.44(m, 4H), 7.75(m, 2H), 8.08(d, J=7.9Hz, 2H), 13.02(brs, 1H)
NMR(5):(δ:ppm, DMSO-d6, 内部標準=TMS)
1.14(d, J=6.2Hz, 6H), 1.22(d, J=6.2Hz, 6H), 2.36(s, 3H), 3.24(d, J=22.0Hz, 2H), 4.4-4.6(m, 2H), 7.24(d, J=8.3Hz, 2H), 7.46(dd, J=2.1, 8.3Hz, 2H), 7.66(d, J=8.3Hz, 2H), 8.08(d, J=8.3Hz, 2H), 13.01(brs, 1H)
NMR(6):(δ:ppm, DMSO-d6, 内部標準=TMS)
1.14(d, J=6.2Hz, 6H), 1.22(d, J=6.2Hz, 6H), 2.36(s, 3H), 3.24(d, J=22.0Hz, 2H), 4.4-4.6(m, 2H), 7.24(d, J=8.3Hz, 2H), 7.46(dd, J=2.1, 8.3Hz, 2H), 7.66(d, J=8.3Hz, 2H), 8.07(d, J=8.3Hz, 2H), 13.01(brs, 1H)
【0072】
【実施例17】
ジイソプロピル 4-[(5-イソプロピルカルバモイル-4-フェニルチアゾール-2-イル)カルバモイル]ベンジルホスホナートの製造
実施例11で得られたジイソプロピル 4-[(5-カルボキシ-4-フェニルチアゾール-2-イル)カルバモイル]ベンジルホスホナート2.0gと1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドの塩酸塩0.92gと1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)0.65gをDMF10mLに懸濁させ、室温で1時間撹拌した。続いてイソプロピルアミン0.47g を加え更に室温で20時間撹拌した。水 20mLを加え析出した結晶を濾取し得られた粗結晶を酢酸エチル-n-ヘキサンより再結晶し標記化合物の無色結晶1.0gを得た。得られた化合物の構造および物性を表3に示す。
【0073】
【実施例18−38】
実施例17と同様にして、表3に示す各化合物を合成した。得られた化合物の構造および物性を表3および表4に並記する。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
尚、表3中、実施例25の化合物の物性における1H-NMR分析結果は、次の通りである。
NMR(7):(δ:ppm, CDCl3, 内部標準=TMS)
1.18(d, J=6.2Hz, 6H), 1.27(d, J=6.2Hz, 6H), 3.18(d, J=22.4Hz, 2H), 4.46(d, J=5.4Hz, 2H), 4.5-4.7(m, 2H), 5.94(brt, J=5.4Hz, 2H), 7.1-7.2(m, 2H), 7.2-7.3(m, 3H), 7.3-7.4(m, 3H), 7.55(dd, J=2.1, 7.9Hz, 2H), 7.5-7.6(m, 2H), 7.90(d, J=7.9Hz, 2H), 9.66(brs, 1H)
【0077】
【実施例39−41】
実施例1と同様にして、表5に示す各化合物を合成した。得られた化合物の構造および物性を表5に並記する。
【0078】
【実施例42】
ジエチル 4-[(4-メチルカルバモイル-2-フェニルアミノチアゾール-5-イル)カルバモイル]ベンジルホスホナートの製造
実施例39で得られたジエチル 4-[(4-エトキシカルボニル-2-フェニルアミノチアゾール-5-イル)カルバモイル]ベンジルホスホナート6.2gをTHF100mLに懸濁させ室温撹拌下、40%メチルアミン水溶液10mLをゆっくりと滴下した。さらに室温で2日間撹拌し、減圧下に溶媒および過剰のメチルアミンを留去した。水50mLを加え析出した結晶を濾取、水洗し、得られた粗結晶をクロロホルム-n-ヘキサンより再結晶し標記化合物の無色結晶 4.0g を得た。得られた化合物の構造および物性を表5に示す。
【0079】
【実施例43および44】
実施例42と同様にして、表5に示す各化合物を合成した。得られた化合物の構造および物性を表5に並記する。
【0080】
【表5】
【0081】
【薬理試験例1】
ACAT-1阻害作用試験1
実施例で得た本発明化合物のACAT-1阻害活性を以下の通り試験した。ACAT-1酵素活性の測定は、再構成法(reconstituted vesicle assay) [J. Lipid Res., 29, 1683-1692 (1988)、Biochem. Biophys. Acta, 982, 187-195 (1989)、J. Biol. Chem., 270, 29532-29540 (1995)]に従った。
【0082】
I. Broken Homoginate の作製
SW-13細胞(ヒト副腎皮質癌由来細胞)を、10%ウシ胎児血清(FBS)含有L-15培地中、炭酸ガスインキュベーター内で、培養プレートにコンフレントになるまで培養した。
【0083】
文献記載の方法[hypotonic shock and scrapping method, Anal. Biochem., 116, 298-302 (1981)]に従い、Broken Homoginateを採取した。蛋白定量(Bradford 法)を行い、使用するまで、-80℃で保存した。
【0084】
II. Cholesterol/Phosphatidylcholine(Chol/PC)vesicle の作製
チャンらの方法[Chang, T.Y., et al., Anal. Biochem., 157, 323-330 (1986)]に従い、Chol/PC vesicle (Chol/PC=3.9 mM/12.8mM)を作製した。
【0085】
III. 5 × DOC/PC の作製
ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)50mgを50mg/mL sodium deoxycholate-Buffer A (50mM Tris-HCl, 5mM EDTA, 0.05mM PMSF(phenylmethylsulfonyl fluoride, 和光純薬株式会社、pH 7.8)5 mLに溶解した。
【0086】
IV. 酵素液の作製
蛋白濃度2.5mg/mLのBroken Homoginate 2.6mLに、5×DOC/PC 0.65 mLを加え、攪拌後、氷中で20分放置した。これに、Chol/PC vesicle 22 mLを加え、攪拌し、さらに氷中で20分放置した。遠心後、浮遊物を除去し、これを酵素液とした。
【0087】
V. アッセイ
被験物質は、1×10-2mol/Lの濃度となるようにDMSOに溶解した。
【0088】
ネジ口ガラス試験管に、被験物質あるいはDMSO(コントロールとして)2.5μL、酵素液200μL、基質溶液(150 mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、15mg/mL BSA (FFA free)、2mM DTTおよび0.1mM [1-14C]oleoyl coenzyme A (8.0Ci/mol))50μLを加えた。37℃で30分間反応させた。ヘキサン4mL、2M NaCl 1 mLおよび[3H]-cholesteryl oleate添加エタノール1mL(約10000 dpm)を加え、反応を停止させた。5分間振盪後、遠心し、上層のhexane相のうち2mLをガラス試験管に移し、また1mLをシンチレションバイアルに移した。
【0089】
ガラス試験管中のヘキサン相は、窒素ガス気流下で溶媒を除去し、得られた脂質抽出物をクロロホルム/メタノール(2:1)混合液100μLに再溶解後、TLCプレートへスポットした。TLCプレートを、ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(73:25:2)で展開し、バイオイメージアナライザーBSA2000II(富士フィルム株式会社製)で、コレステロールエステル画分の14Cを定量した。
【0090】
また、シンチレーションバイアル中のヘキサン相は、シンチレーションカクテルを加え、3Hをカウントし、加えた[3H]-cholesteryl oleate添加エタノールの3H量より抽出効率を計算した。抽出効率より生成した全コレステロールエステル量を計算した。コントロールの場合と比べ、被験物質添加時に減少する生成全コレステロールエステル量を、パーセント表示したものを、ACAT-1酵素阻害率とした。
【0091】
VI. 結果
被験物質として前記各実施例で得た本発明化合物を用いて得られた上記試験の結果を下記表6に示す。
【0092】
【表6】
【0093】
VII. 考察
表6に示される結果より、本発明化合物は優れたACAT-1阻害活性を有することが明らかである。
【0094】
このようなACAT-1阻害活性を有する化合物が、動脈硬化予防剤およびコレステロール吸収阻害剤として有効であることは、例えばThe Journal of Biological Chemistry, Vol.276, No.28, July 14, pp.21324-21330, 2000およびThe Journal of Biological Chemistry, Vol.275, No.36, September 8, pp.28083-28092, 2000の記載から明らかである。
【0095】
また、ACAT-1阻害活性を有する化合物が、動脈硬化症の治療およびLDL-コレステロールの低下に有効であることは、「日本臨床」59巻増刊号3 (2001)、第675-680頁の記載から明らかである。
【0096】
【薬理試験例2】
ACAT-1阻害作用試験2(THP-1細胞泡沫化抑制作用試験)
実施例で得た化合物を被験物質として、これらのTHP-1細胞泡沫化抑制作用(ACAT-1阻害作用)を以下のとおり試験した。
【0097】
I. 試験方法
24ウェルプレートに、1ウェルあたり7.5×105細胞となるように200 nM フォルボール 12-ミリステート 13-アセテート(phorbol 12-myristate 13-acetate, PMA)添加10% FBS-RPMI1640培養液で調整したTHP-1細胞を播種し、炭酸ガスインキュベーター内で3日間培養して、マクロファージ様細胞へと分化させた。RPMI1640培養液で1回洗浄した後、培養液を5% Lipoprotein Deficient Serum (LPDS; R. J. Mayer, et al., J. Biol. Chem., 266, 20070 (1991): D. E. Vance, et al., Biochem. Biophys. Acta, 792, 39 (1984))-RPMI1640 1mL/ウェルに変更して、更に8時間培養した。8時間後、蛋白濃度50μg/mLのアセチルLDL (Ac LDL; 袴田秀樹ら、「動脈硬化+高脂血症研究ストラテジー」、pp36-41(1996)秀潤社)、BSA-[14C] oleate complex(J. L. Goldstein, et al, Method. Enzymol., 98, 241 (1983))2.5μLおよび被験物質(最終濃度:1×10-5mol/L)を加えた5% LPDS-RPMI1640培養液500μLに培養液を交換した。16時間培養した後、細胞を0.3% BSA-PBS(-)で1回、PBS(-)で2回洗浄した。細胞内の脂質成分を抽出するために、1ウェルあたりヘキサン/2-プロパノール(3:2) 0.5mLを加えて静置した。30分後、抽出液をガラス試験管にプールした。同じ抽出操作をもう一度繰り返し、先の抽出液と合わせ、窒素ガス気流下で溶媒を除去した。得られた脂質抽出物をクロロホルム/メタノール(2:1)100μLで再溶解し、TLCプレートにスポットした。TLCプレートは、ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(73:25:2)で展開し、オートラジオグラフィーにより、コレステロールエステル画分の14Cを定量した。定量には、バイオイメージアナライザーBAS2000II(富士フィルム株式会社製) を用いた。また、脂質抽出の終わった各ウェルに0.1N NaOH-0.1% SDS 0.3mLを加え、ラバーポリスマンでプレートに付着している細胞を剥がし回収した。この細胞可溶化液中の蛋白量をBCA Protein Assayキット(PIERCE社)にて定量した。
【0098】
定量したコレステロールエステル量(pmol)を蛋白量(mg)で割った値と、被験物質を加えなかった場合のそれとを比較して減少率(%)を算出し、これを被験物質のTHP-1細胞泡沫化抑制率(%)として、被験物質のACAT-1活性の指標とした。
【0099】
II. 結果
試験の結果を、下記表7に示す。
【0100】
【表7】
【0101】
III. 考察
表7に示される結果からも、表6に示される結果からと同様に、一般式(1)に示される本発明化合物が優れたACAT-1阻害活性を有することが判る。
【0102】
このようなACAT-1阻害活性を有する化合物が、動脈硬化予防剤およびコレステロール吸収阻害剤として有効であることは、例えばThe Journal of Biological Chemistry, Vol.276, No.28, July 14, pp.21324-21330, 2000およびThe Journal of Biological Chemistry, Vol.275, No.36, September 8, pp.28083-28092, 2000の記載から明らかである。
【0103】
また、ACAT-1阻害活性を有する化合物が、動脈硬化症の治療およびLDL-コレステロールの低下に有効であることは、「日本臨床」59巻増刊号3 (2001)、第675-680頁の記載から明らかである。
【0104】
【製剤例1】
有効成分として、実施例1で得た本発明化合物を用いて、1錠当りその300mgを含有する錠剤(2000錠)を、次の処方により調製した。
実施例1で得た本発明化合物 600g
乳糖(日本薬局方品) 67g
コーンスターチ(日本薬局方品) 33g
カルボキシメチルセルロースカルシウム(日本薬局方品) 25g
メチルセルロース(日本薬局方品) 12g
ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方品) 3g
即ち、上記処方に従い、実施例1で得た本発明化合物、乳糖、コーンスターチおよびカルボキシメチルセルロースカルシウムを充分混合し、メチルセルロース水溶液を用いて混合物を顆粒化し、24メッシュの篩を通し、これをステアリン酸マグネシウムと混合して、錠剤にプレスして、目的の錠剤を得た。
【0105】
【製剤例2】
有効成分として、実施例1で得た本発明化合物を用いて、1カプセル当りその200mgを含有する硬質ゼラチンカプセル剤(2000カプセル)を、次の処方により調製した。
実施例1で得た本発明化合物 400g
結晶セルロース(日本薬局方品) 60g
コーンスターチ(日本薬局方品) 34g
タルク(日本薬局方品) 4g
ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方品) 2g
即ち、上記処方に従い、各成分を細かく粉末にし、均一な混合物となるように混和した後、所望の寸法を有する経口投与用ゼラチンカプセルに充填して、目的のカプセル剤を得た。
Claims (4)
- 一般式
AはC-R1またはNを示す。R1はフェニル環上にハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルキルスルホニル基を有することのあるフェニル基またはピリジル基を示す。
BはAがC-R1のときNを示し、AがNのときC-COR2を示す。R2は低級アルコキシ基または低級アルキルアミノ基を示す。
R3はAがC-R1のとき低級アルキル基、シアノ基、フェニル環上にハロゲン原子を有するフェニル基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、フェニルカルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基、N,N-ジ低級アルキルカルバモイル基、フェニル低級アルキルカルバモイル基、ピロリジノカルボニル基、N-低級アルキルピペラジノカルボニル基またはモルホリノカルボニル基を示し、AがNのときフェニルアミノ基、フェニル低級アルキルアミノ基またはベンゾイルアミノ基を示す。
R4は低級アルキル基を示す。
但し、R3が低級アルキル基およびフェニル環上にハロゲン原子を有することのあるフェニル基の時、R1はフェニル環上にハロゲン原子または低級アルキル基を有することのあるフェニル基であってはならない。]
で表されるホスホン酸ジエステル誘導体。 - AがC-R1である請求項1に記載のホスホン酸ジエステル誘導体。
- AがNである請求項1に記載のホスホン酸ジエステル誘導体。
- 請求項1に記載のホスホン酸ジエステル誘導体を有効成分として含有するACAT-1阻害剤。
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