本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1(a),(b),(c)はそれぞれ振動タイヤローラの正面図、側面図、後正面図である。本図において、振動タイヤローラRは、前部車体1と後部車体2とが連結部3によりアーティキュレート式に接続されており、操舵用シリンダ4の伸縮によりセンターピン3aを中心に前部車体1が後部車体2に対し旋回するようになっている。走行用のエンジン(図示せず)は、後部車体2の上部前寄りに設けられたボンネット5内に収装されている。ボンネット5の後方には運転席6が形成される。タイヤTは両車体においてそれぞれ複数(図に示す機種は前輪3本、後輪4本)、車幅方向に等間隔で同軸状に配置される。図1(c)から判るように、後輪側において、両端のタイヤTの外側面は後部車体2の側面よりも外方に位置している。
次いで、図2は後記する防振ゴム7及びタイヤ支持部材8(共に仮想線にて示す)の配設位置を側面から見た場合を示す側面説明図、図3は後輪側における平断面説明図、図4は後輪側を正面寄りから見た場合を示す断面説明図である。なお、図3では紙面下側が車両前方側である。また、図4において、図3に記載された部材と共通する部材については一部省略して、或いは符号を省略するものとする。
「第1実施例」
第1実施例は後輪側において本発明を適用した例を示す。以下、主に図3を参照して説明すると、本発明に係る振動タイヤローラは、防振手段を構成する防振ゴム7を介して車体(図2に示す後部車体2)側に取り付けられ、隣接するタイヤT間において配設されるタイヤ支持部材8と、タイヤ支持部材8に取り付けられるタイヤ駆動用の走行用モータ9と、走行用モータ9を挟んで隣接するタイヤT同士を同期回転可能とする同期回転手段10と、振動用モータ11により作動し、タイヤTに振動を与える振動機構12と、を備える。
符号13,14は後部車体2(図2)に前後一対として固設されるブラケットを示す。また、このブラケット13,14は左右一対として後部車体2に固設されている。前後に対応したブラケット13,14にはそれぞれ、防振手段をなす防振ゴム7を介して、車両の前後方向に延設されるようにタイヤ支持部材8が取り付けられている。
タイヤ支持部材8は図2から判るように、横長の略矩形状を呈した板部材からなり、その板面が鉛直状となるように配設され、前端側及び後端側が、上下一対の防振ゴム7を介して、それぞれブラケット13(図2では図示せず)及びブラケット14に取り付けられるものである。ブラケット13及び14はそれぞれタイヤTよりも前寄り及び後寄りに位置しており、したがって、各防振ゴム7もタイヤTの前後、且つ、タイヤTの外径の外側において配設されている。
図2、図3に示すように、防振ゴム7は略円柱形状を呈した部材であり、両側面の部位にてブラケット13(或いはブラケット14)、タイヤ支持部材8に対しボルト等により取り付けられる。以上のように、防振ゴム7をタイヤTの前後、且つ、タイヤTの外径の外側において配設する構成とすれば、タイヤ支持部材8を挟んで隣接し合うタイヤT間の間隔寸法を小さく設定できることとなる。
図3において、紙面右端側に位置するタイヤから順にT1,T2,T3,T4と符号を付すと、一方の前記タイヤ支持部材8(符号8Aにて示す)は隣接し合うタイヤT1,T2の間に位置し、他方のタイヤ支持部材8(符号8Bにて示す)は隣接し合うタイヤT3,T4の間に位置するように配設される。
各タイヤ支持部材8A,8Bには、軸受ユニット15を介して走行用モータ9が取り付けられる。詳細に説明すると、軸受ユニット15は、軸受(図ではテーパ軸受として示す)15aと、環状のアウタケース15b及びインナケース15cとから構成される。タイヤ支持部材8A,8Bの略中央部には貫通孔が穿設されており、該貫通孔にアウタケース15bを挿嵌させ、アウタケース15bのフランジ部においてボルトにより締結固定することで、軸受ユニット15はタイヤ支持部材8A,8Bに取り付けられる。
図3に仮想線で示した走行用モータ9の概略側断面図を図5(a)に示す。また、走行用モータ9のピストン部を正面側から見た概略構造断面図を図5(b)に示す。なお図5(a)では一方のタイヤ支持部材8A側に取り付けられる走行用モータ9を示しているが、タイヤ支持部材8B側に取り付けられる走行用モータ9においても、左右対称としてタイヤ支持部材8Bに取り付けられる点を除き、同一構造のモータである。
本実施形態における走行用モータ9は、貫通孔16を有した中空で無軸の構造からなるモータであり、その一例として多行程型のラジアルピストンモータ17としている。このラジアルピストンモータ17は薄型でかつ低速高トルクを発生する公知の油圧モータであり、図5(a)に示すように、筐体を形成する固定部18内に、軸受19を介して出力部20が回転可能に支持されている。
出力部20には、図5(b)に示すように、断面円形の薄型のシリンダブロック21が固定されており、このシリンダブロック21の外周部には、周方向に等間隔で複数のシリンダ22が形成され、シリンダ22内には先端部にローラ23を有するピストン24が、シリンダブロック21の径方向に移動自在に挿入されている。ローラ23が当接する固定部18の内面には、カム面25が形成される。なお図5(a)において符号26はディスクブレーキを示し、詳細構造は省略してある。
したがって、圧油ポートを介して各シリンダ22内に圧油が流入することにより、ピストン24がシリンダ22内を移動し、該移動時にローラ23が前記カム面25を押し付けることにより、その反力で出力部20が回転するようになっている。多行程型のラジアルピストンモータ17は以上の構造からなるため、出力部20を無軸とすることができ、すなわち、正面視した断面形状がリング形状を呈する出力部とすることができるため、その中央部に貫通孔16を形成できることとなる。
以上の構成からなる走行用モータ9は、外側のタイヤT1寄りにおいて、図5(a)に示すように、固定部18側が長尺のボルト27により軸受ユニット15のアウタケース15bに締結固定され、これにより、走行用モータ9は軸受ユニット15を介しタイヤ支持部材8に取り付けられることとなる。軸受ユニット15を介在させることなく走行用モータ9をタイヤ支持部材8に直接取り付けることも可能であるが、この場合、走行用モータ9の軸受19のみでは車体重量の荷重に対して強度不足となってモータの損傷をきたすおそれもある。これに対し、軸受15aを介在させる態様とすれば、車体重量の荷重を軸受15aと軸受19の両方で分散させて支持できるため、走行用モータ9の損傷が効果的に防止される。
次に図3において、走行用モータ9を挟んで隣接するタイヤT同士(つまりタイヤT1,T2同士或いはタイヤT3,T4同士をいう)を同期回転可能とする同期回転手段10について説明する。本実施形態における同期回転手段10は、走行用モータ9の出力部20を一方のタイヤ側(タイヤT1或いはタイヤT4)に固定すると共に、走行用モータ9の貫通孔16を介して一方のタイヤ側と他方のタイヤ側(タイヤT2或いはタイヤT3)とを連結部材34により連結し、この連結部材34により一方のタイヤ側の回転力を他方のタイヤ側に伝達する構成としている。
先ずタイヤT1,T2側において、図5に示すように、走行用モータ9の出力部20にはハブ28がそのフランジ部28aの部位にてボルト29により締結固定される。図3において、タイヤT1はそのディスクホイールDW1にてハブ28のフランジ部28aにハブボルト30により締結固定される。一方、前記軸受ユニット15のインナケース15cには、中央部に貫通孔を有したハブ31がボルト32により締結固定され、タイヤT2はそのディスクホイールDW2にてハブ31のフランジ部31aにハブボルト33により締結固定される。
図5において、ハブ28の中央部には走行用モータ9の貫通孔16と略同一径寸法の貫通孔28bが形成されている。また、軸受ユニット15のインナケース15cの貫通孔15dも貫通孔16と略同一径寸法となっている。したがって、走行用モータ9を挟んでハブ28及び軸受ユニット15が取り付けられた状態において、各貫通孔16,28b,15dは左右方向に同軸状に連通する態様となる。貫通孔28b,15dにはそれぞれスプライン溝28c,15eが形成される。そして、走行用モータ9の貫通孔16内を貫通し、両端部にてスプライン溝28c,15eにスプライン結合する連結部材34が配設される。連結部材34は本実施形態においては円筒形状を呈した部材であり、鋼管等からなる。
本実施形態における同期回転手段10は以上の構成からなり、走行用モータ9の出力部20が回転駆動すると、ハブ28を介しタイヤT1が回転すると共に、ハブ28の回転力がスプライン結合する連結部材34を介してインナケース15c側に伝達されることでタイヤT2がタイヤT1と同期して回転する。なお、この同期回転手段10はタイヤT3,T4側においても同一の構成であるので、その説明は省略する。
以上のように走行用モータ9を、貫通孔16を有した中空構造のモータとし、同期回転手段10として、走行用モータ9の出力部20を一方のタイヤ側に固定すると共に、走行用モータ9の貫通孔16を介して一方のタイヤ側と他方のタイヤ側とを連結部材34により連結し、この連結部材34により一方のタイヤ側の回転力を他方のタイヤ側に伝達する構成とすれば、タイヤ支持部材8や走行用モータ9を挟んで隣接し合うタイヤTを簡易でコンパクトな構造にて同期回転させることができる。さらに、タイヤT側と連結部材34との接続部位をスプライン結合から構成することで、より簡易な構造となり、部材点数が少なく、組み付け作業の容易な同期回転手段10となる。
次いで、図3及び図4を参照して振動機構12について説明する。車両中心を挟んで隣接するタイヤT2,T3において、各ディスクホイールDW2,DW3はそれぞれ車幅方向外方に張り出すかたちでタイヤT2,T3に取り付けられており、これによりタイヤT2,T3間にわたるタイヤ内径の範囲内の空間が広くなっている。起振軸35を内蔵する起振機ケース36は、左右の走行用モータ9の間において配設され、特にこのタイヤT2,T3間にわたるタイヤ内径の範囲内の空間において配設されている。
起振機ケース36は中空円筒形状を呈した部材であり、各タイヤTの軸芯と同芯状に配設され、一方の開口部の縁部においては、ディスクホイールDW2にハブボルト33により締結固定されたアクスル37に、ボルト38により締結固定される。つまり、起振機ケース36はタイヤT2とともに回転する。また、他方の開口部の縁部においては、ディスクホイールDW3に締結固定されたハウジング39に対し軸受72を介して取り付けられるアクスル40に、ボルト38により締結固定される。なお、ベアリング72は後に詳述する差動機構71を構成する部材である。
本実施形態の振動機構12は、起振軸35に設けられた偏心錘(可動偏心錘44)の位置をアクチュエータ(油圧シリンダ52)により移動させて起振軸35の偏心量を調節可能な可変振幅機構を備える。図6に示すように、起振軸35は、離間して対向するように配設した一対の板状の支持枠41a,41bと、支持枠41a,41bの両端部同士を連結する支持部材42a,42bと、支持枠41a,41bの各中央部に掛け渡して固設した枢軸43と、枢軸43回りに回転可能に取り付けられる略半月状を呈した可動偏心錘44とから構成される。
支持部材42a,42bの中央部にはそれぞれ貫通孔42cが形成されていて、図3に示すように、一方の支持部材42aの外側面には、円筒形状を呈したガイド部材45が該貫通孔42cに嵌合するかたちで固設され、他方の支持部材42bの外側面には、円柱状の支持軸部材46が同様に貫通孔42cに嵌合するかたちで固設される。起振軸35は、これらガイド部材45,支持軸部材46の部位で、軸受47,48を介して前記アクスル37,40に枢支されることで、起振機ケース36内において各タイヤTと同芯状となるように水平状に延設される。
ガイド部材45内には、起振軸35と同軸芯上において直線移動する摺動部材49が配設される。この摺動部材49には、コネクティングロッド50の一端がピン49aにより接続され、コネクティングロッド50の他端は可動偏心錘44にピン44aにより接続されており、摺動部材49の直線移動の変位を可動偏心錘44の枢軸43回りの回転移動の変位に変換するように構成されている。
摺動部材49は軸受73によりロッド51に対して回転できるように、且つ、ロッド51の縮退により直線移動するように構成され、ロッド51は図5(a)に示すように、軸受ユニット15の貫通孔15d,走行用モータ9の貫通孔16,ハブ28の貫通孔28bを挿通し、また本実施形態においては中空の連結部材34の内部を挿通し、図3に示すように、アクチュエータである油圧シリンダ52に接続している。なお、このロッド51が「軸部材」に相当する。
図3において可動偏心錘44が実線で示された状態は、可動偏心錘44の回動角度が零で起振軸35の偏心量が零の状態を示し、この状態で起振軸35を回転させても振動力は発生しない。可動偏心錘44が仮想線で示された状態は、可動偏心錘44が最大回動角度まで回動された状態、つまり起振軸35の偏心量が最大の状態であり、最大の振幅が得られる。このように振幅は可動偏心錘44の回動角度によって変化する。
タイヤT1において、ディスクホイールDW1が取り付けられるハブ28の胴部には、軸受53aを内嵌した軸受ケース53が取り付けられる。また、図4における符号54は、車体から垂下されてタイヤT1の外側に位置する筐体状のブラケットを示し、その下端部は屈曲形成されていてタイヤT1の内径部の空間に入り込んでいる。ブラケット54の下端部には、防振手段を構成する防振ゴム55及び取り付け板56を介して支持板57が取り付けられ、この支持板57には前記軸受ケース53がボルト58により締結固定されると共に、油圧シリンダ52が図示しないボルトにより締結固定される。
油圧シリンダ52はディスクホイールDW1の車両外方側に位置しており、また、ディスクホイールDW1は車両中心側に張り出すかたちでタイヤT1に取り付けられていることから、油圧シリンダ52はタイヤT1の外側面よりも突出することなくタイヤT1の内径部の空間内に収装されている。なお、前記ブラケット54内には、油圧シリンダ52用の油圧配管やロッド51の縮退を検知するセンサ(油圧シリンダ52内に設けられる)の電気信号線が配設される。
次いで、起振軸35を回転駆動する振動用モータ11について説明する。タイヤT4において、ディスクホイールDW4が取り付けられるハブ28の胴部には、軸受53aを内嵌した軸受ケース53が取り付けられる。図4における符号59は、車体から垂下されてタイヤT4の外側に位置する筐体状のブラケットを示し、その下端部は屈曲形成されていてタイヤT4の内径部の空間に入り込んでいる。ブラケット59の下端部には、防振手段を構成する防振ゴム60を介して取り付け板61が取り付けられ、この取り付け板61に振動用モータ11及び前記軸受ケース53がボルト62により締結固定される。本実施形態における振動用モータ11は油圧モータである。
振動用モータ11はディスクホイールDW4の車両外方側に位置しており、また、ディスクホイールDW4は車両中心側に張り出すかたちでタイヤT4に取り付けられていることから、振動用モータ11はタイヤT4の外側面よりも突出することなくタイヤT4の内径部の空間内に収装されている。なお、前記ブラケット59内には、振動用モータ11用の油圧配管が配設される。
振動用モータ11の出力軸にはカップリング63を介してシャフト64が連結される。シャフト64は軸受ユニット15の貫通孔15d,走行用モータ9の貫通孔16,ハブ28の貫通孔28bを挿通し、本実施形態においては中空の連結部材34の内部を挿通し、カップリング65を介して起振軸35の支持軸部材46側に連結される。なお、このシャフト64が「軸部材」に相当する。
振動機構12は以上の構成からなり、油圧シリンダ52によりロッド51を介し可動偏心錘44を回動させ、起振軸35が所定の偏心量を有した状態で振動用モータ11を駆動することで 起振軸35に所定の振動力が発生する。ここで、特開平10−165893号公報にも記載されているように、起振軸の起動時における回転数の立ち上がり時及び停止時における回転数の下がり時には共振点が存在し、この共振点において振動力が発生している場合には転圧路面に影響を及ぼすおそれのあることが知られている。
したがって実際には、例えば起動時の場合は、振動用モータ11を駆動させ、起振軸35が共振点以上の所定回転数に達した時点で、油圧シリンダ52により可動偏心錘44を回動させて振動力を発生させるようにしている。このように油圧シリンダ52等のアクチュエータを用いた可変振幅機構とすることにより、(1)起振軸の回転を下げることなく、アクチュエータを任意に操作することで振動が切れる、(2)振幅を数段階、或いは無段階に設定可能であり、締固め材料に最適となる振幅を設定できる、等の効果が奏される。
以上のように、防振手段を介して車体(後部車体2)側に取り付けられ、隣接するタイヤT間において配設されるタイヤ支持部材8と、タイヤ支持部材8に取り付けられるタイヤ駆動用の走行用モータ9と、振動用モータ11により作動し、タイヤTに振動を与える振動機構12とを備える振動タイヤローラとすれば、或いは、さらに走行用モータ9を挟んで隣接するタイヤT同士を同期回転可能とする同期回転手段10を備える振動タイヤローラとすれば次のような効果が奏される。
従来にあっては、タイヤ支持部材が車体の側面側に設けられ、この場合、防振ゴムの配設位置の制限によりタイヤ支持部材の下端を少なくとも走行用モータの位置よりも下げざるを得ず、カーブクリアランスが小さくなるという問題、及び防振ゴムの大きさを小さくできず、サイドオーバハングが大きくなるという問題があったことは既述した通りである。これに対し本発明によれば、タイヤ支持部材は車体の側面ではなくタイヤとタイヤの間に配設されるので、このタイヤ支持部材に関するカーブクリアランスの問題、サイドオーバハングの問題が共に解消されることとなる。
なお、図4に示したブラケット54,59は基本的にそれぞれ油圧シリンダ52,振動用モータ11の各本体自身が回転しないように支持する部材であり、介在させる防振ゴム55,60の配設位置の制限をそれ程受けない(図4では防振ゴム55,60はそれぞれ油圧シリンダ52,振動用モータ11の上方側にのみ配設されている)。したがって、ブラケット54,59の下端を、例えば図4に示すように、タイヤTの軸芯よりも上方側に位置させることができ、これらブラケット54,59に関するカーブクリアランスCCLはタイヤ支持部材に関するカーブクリアランスに比して大きくとれる。
さらに、各防振ゴム55,60の大きさも小さくて済むので、図4に示すようにこれら防振ゴム55,60をタイヤT1,T4の内径部の空間に収装させることが可能となり、この場合、タイヤT1,T4の側面から突出するブラケット54,59の部位は油圧配管等を収容するだけで済む。したがって、このブラケット54,59に関するサイドオーバハングSOHはタイヤ支持部材に関するサイドオーバハングに比して小さいものとなる。
また、以上に説明したように、起振軸35を、車幅方向に関し走行用モータ9よりも車両中心側に配設し、振動用モータ11を、車幅方向に関し走行用モータ9の外方側に配設し、走行用モータ9の貫通孔16介して、振動用モータ11側と起振軸35側とを軸部材であるシャフト64により連結する構成とすれば、走行用モータ9や振動機構12、振動用モータ11等の配置構造が簡易になると共にこれらの配置スペースがコンパクトとなり、タイヤ回りの組み付け作業が容易なものとなる。無論、当該構成は、例えば可変振幅機構を有さず、アクチュエータ(油圧シリンダ52)を有さない振動機構とした場合においても効果的である。
また、以上に説明したように、起振軸35を左右の走行用モータ9の間において配設すると共に、起振軸35に設けられた可動偏心錘44の位置を油圧シリンダ52等のアクチュエータにより移動させて起振軸35の偏心量を調節可能な可変振幅機構を備えた振動機構12とし、振動用モータ11及びアクチュエータを、それぞれ車幅方向に関し各走行用モータ9の外方側に配設し、各走行用モータ9の貫通孔16を介して、アクチュエータ側と起振軸35側とをロッド51により連結すると共に、振動用モータ11側と起振軸35側とをシャフト64により連結する構成とすれば、走行用モータ9や振動機構12、振動用モータ11、アクチュエータ等の配置構造が簡易になると共にこれらの配置スペースがコンパクトとなり、タイヤ回りの組み付け作業が容易なものとなる。
さらに、前記した連結部材34を中空構造の部材とし、ロッド51及びシャフト64を連結部材34の内部に挿通させる構成とすることで、起振軸35側と振動用モータ11及びアクチュエータ側との接続構造を簡易でコンパクトなものにできる。
なお、前記した同期回転手段10としては、説明した態様に限られないのは勿論である。例えば、可変振幅機構を有さず、アクチュエータ(油圧シリンダ52)を有さない振動機構とした場合には、タイヤT1,T2側の駆動源となる走行用モータ9を中空構造のモータとする必要がなく、例えば、左右にそれぞれ出力軸(出力部)を有する公知構造のモータをタイヤ支持部材8Aに取り付け、各出力軸(出力部)にそれぞれタイヤT1,T2を直接的に取り付けることも可能である。この場合において同期回転手段10とは、この両出力軸(出力部)を有する構造の走行用モータ自体を指すものとする。
次いで、図3において、差動機構71はタイヤT1,T2側とタイヤT3,T4側とを互いに独立に回転可能とするべく設けられたものであり、タイヤ外径の範囲内(図ではタイヤ内径の範囲内として示されている)において配設されており、本実施形態では軸受72から構成している。軸受72はタイヤT1,T2側に固設されているアクスル40の軸部と、タイヤT3,T4側に固設されている円筒形状のハウジング39との間に介在する。
図7は走行用モータ9に関する概略油圧回路図である。後輪側における左右一対の走行用モータ9は、車体に搭載された油圧ポンプPにパラレルとして配管される。油圧ポンプPの一方のポートPaに接続する流路111には、分岐部112を介してタイヤT1,T2側を駆動する走行用モータ9のポートP1及びタイヤT3,T4側を駆動する走行用モータ9のポートP3、さらに後記する前輪側のタイヤT5,T6,T7を駆動する走行用モータ9のポートP5が接続する。油圧ポンプPの他方のポートPbに接続する流路113には、分岐部114を介してタイヤT1,T2側を駆動する走行用モータ9のポートP2及びタイヤT3,T4側を駆動する走行用モータ9のポートP4、タイヤT5,T6,T7を駆動する走行用モータ9のポートP6が接続する。
以上のように、差動機構71をタイヤ外径の範囲内において設ける構成とすれば、従来にあっては差動機構が車体側に搭載されていたことから、車体内における他の搭載装置のレイアウト設計の自由度が広がることとなる。また、差動機構71をタイヤ外径の範囲内、望ましくはタイヤ内径の範囲内に設けることで、タイヤ回りの他の装置(振動機構12等)に関するレイアウト設計の自由度が広がることになる。さらに、差動機構71を軸受72から構成することで、構造が簡単となり、組み付け作業も容易となる。
「第2実施例」
図8は第2実施例を示す図であり、図1に示した振動タイヤローラRの前輪側の平断面説明図である。この第2実施例は前記第1実施例と共に、「タイヤ駆動用の走行用モータと、振動用モータにより作動し、タイヤに振動を与える振動機構とを備えた振動タイヤローラにおいて、前記走行用モータは、貫通孔を有した中空構造のモータからなり、前記振動機構は、起振軸に設けられた偏心錘の位置をアクチュエータにより移動させて起振軸の偏心量を調節可能な可変振幅機構を備え、走行用モータ及び起振軸を車幅方向において間に挟むようにアクチュエータと振動用モータを配設し、走行用モータの貫通孔を介して、アクチュエータ側或いは振動用モータ側と起振軸側とを軸部材により連結する」構成に関しての例となる。なお、本実施例において第1実施例における構成部材と同一構成の部材に関しては同一の符号を付して、或いは省略して、その説明も省略する。
各タイヤに端から順にT5,T6,T7と符号を付すと、本実施例においてはタイヤT5〜T7は両側からタイヤ支持部材8E,8Fに支承される。符号85,86は前部車体1を構成するヨークに固設されたブラケットを示し、タイヤ支持部材8E,8Fは防振手段を構成する防振ゴム7を介して各ブラケット85,86に取り付けられる。タイヤ支持部材8E,8Fは図2から判るように後輪側のタイヤ支持部材8A,8Bと同一形状を呈している。防振ゴム7はタイヤTの前後、且つ、タイヤTの外径の外側において配設されている。
なお、前輪側は後輪側よりもタイヤ本数が一本少ないため、両側のタイヤ支持部材8E,8Fの位置は、第1実施例で述べた後輪側のタイヤT1,T4の外側面の位置よりもそれぞれ車幅方向に関して車体中央寄りにある。したがって、この場合、これらタイヤ支持部材8E,8Fに関するカーブクリアランスは考慮する必要はない。
一方のタイヤ支持部材8Eには走行用モータ9が取り付けられる。走行用モータ9は第1実施例で説明した貫通孔を有した中空構造のモータである。走行用モータ9の固定部18はボルト87によりタイヤ支持部材8Eに締結固定され、出力部20はボルト88によりハブ89に締結固定されている。ハブ89はボルト90によりタイヤT5のディスクホイールDW5に締結固定される部材である。符号91はタイヤT5側とタイヤT6側とを連結するアダプタを示す。アダプタ91は円筒形状を呈し、その両開口部の縁部に設けられたフランジ部91a,91bの部位でボルト90,92によりそれぞれディスクホイールDW5,DW6に締結固定される。
ディスクホイールDW6はタイヤ5側に向けて張り出すかたちでタイヤ6に取り付けられており、これによりタイヤT6におけるタイヤ内径の範囲内の空間が広く形成されている。起振軸35を内蔵する起振機ケース93はこのタイヤT6のタイヤ内径の範囲内において配設されている。起振機ケース93は中空円筒形状を呈した部材であり、各タイヤTの軸芯と同芯状に配設され、一方の開口部の縁部においては、ディスクホイールDW6に前記ボルト92により締結固定されたアクスル94に、ボルト95により締結固定される。
また、他方の開口部の縁部においては、ディスクホイールDW7にボルト96により締結固定されたアクスル97に、ボルト98により締結固定される。アクスル97の軸胴部には軸受99aを内嵌した軸受ケース99が取り付けられる。軸受ケース99は、タイヤ支持部材8FにおいてタイヤT7のタイヤ内径部に突出するように取り付けられた支持板100にボルト101により取り付けられている。
振動機構12は、第1実施例の場合と同様に、起振軸35に設けられた偏心錘(可動偏心錘44)の位置をアクチュエータ(油圧シリンダ52)により移動させて起振軸35の偏心量を調節可能な可変振幅機構を備える。起振軸35の構成や可動偏心錘44の可動機構の構成は第1実施例の場合と同様であり、その説明は省略する。起振軸35はその両端部のガイド部材45,支持軸部材46の部位で軸受102,103を介してアクスル94,97に枢支される。
本実施例では、タイヤ支持部材8Eにアクチュエータである油圧シリンダ52が取り付けられ、タイヤ支持部材8Fに振動用モータ11が取り付けられる。符号104は油圧シリンダ52や振動用モータ11を外部接触から保護するプロテクタである。油圧シリンダ52と摺動部材49、つまり起振軸35側とを連結するロッド51(軸部材)はアダプタ91,ハブ89の中空内部及び走行用モータ9の貫通孔を挿通する。また、振動用モータ11の出力軸にはカップリングを介してシャフト105が連結され、このシャフト105はアクスル97の中空内部を挿通し、カップリングを介して起振軸35に連結される。
なお、例えば走行用モータ9をタイヤ支持部材8F側に取り付けることも勿論可能であり、この場合には、シャフト105が走行用モータ9の貫通孔を挿通する軸部材を構成する。
以上のように、起振軸35に設けられた偏心錘の位置を油圧シリンダ52等のアクチュエータにより移動させて起振軸35の偏心量を調節可能な可変振幅機構を備えた場合において、走行用モータ9を、貫通孔を有した中空構造のモータとし、走行用モータ9及び起振軸35を車幅方向において間に挟むようにアクチュエータと振動用モータ11を配設し、走行用モータ9の貫通孔を介して、アクチュエータ側或いは振動用モータ11側と起振軸35側とを軸部材により連結する構成とすれば、走行用モータ9や振動機構12、振動用モータ11、アクチュエータ等の配置構造を簡易なものにできると共にこれらの配置スペースがコンパクトとなり、タイヤ回りの組み付け作業が容易なものとなる。
以上、本発明について複数の好適な実施形態を説明した。本発明は説明した形態に限られることなく、各構成要素の形状やレイアウト等についてその趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
また、振動タイヤローラによる転圧の効果は次の通りである。アスファルトフィニッシャは、アスファルト混合物をスクリード(振動板)で敷きならすため、コテの作用が働き、敷きならされたマットの表面は、図9(a)に示すように、平滑な面となっている。この表面を、締固めに適した粘度(温度)を保持している間に振動タイヤローラで転圧することにより、骨材は、タイヤのニーディング作用と、伝播する振動によって、上下、左右に動き、かみ合わせがよくなると同時に、骨材の間にモルタルが押し込められて密着し、温度の降下とともに固着する。弾性を有するゴムタイヤ(タイヤT)に接する表面の骨材は、ゴムへ食い込み、モルタルは、骨材の間へ押し込められるため、骨材の一部が突出した路面となる(図9(b)参照)。このようにして、所定の密度が得られるまで転圧を繰り返すと、モルタルによってグリップ(固着)された骨材が、表面に突出した路面が形成される。
このようにアスファルト舗装の骨材が露出(突出)した路面の効果としては、
(1)タイヤによる滑り抵抗が大きくなる。したがって、自動車の制動距離を短くできる。
(2)雨水などで滞水した路面であっても、タイヤと骨材が接触しているので、ハイドロプレーニング現象(水膜ができるために発生するタイヤのスリップ)が起きにくい。
(3)上記(1)及び(2)の複合効果として、自動車の走行が安全となる。