以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る加振装置について説明する。本実施形態の図1に示す加振装置1は、車両V(図16参照)を検査するための車両検査装置に適用されたものであり、この加振装置1には、4つの加振機10が設けられている。
この加振装置1では、後述するように、4つの加振機10によって、検査対象の車両Vにおける4つの車輪W(図8,16参照)がそれぞれ加振され、それにより、車両Vにおける異音の発生の有無などが検査される。なお、以下の説明では、便宜上、図1の矢印Ax−AyのAx側を「前」、Ay側を「後」といい、矢印Bx−ByのBx側を「右」、By側を「左」といい、上側を「上」、下側を「下」という。
加振装置1は、検査時に車両Vを載置するための載置台2を備えている。この載置台2は、床F(図8参照)上に設置されており、検査時に車両Vの最低地上高の部位よりも下方に位置する。この載置台2は、図1〜3に示すように、左半部と右半部が面対称に構成されているので、以下、左半部を例にとって説明する。
この載置台2の左半部は、平面視矩形で前後方向に延びる載置部4と、この載置部4の前後に設けられた前後のスロープ部3,3とを備えている。前スロープ部3は、その表面が載置部4の前端に連続する平面部3aと、この平面部3aに連続して前方に斜め下がりに延びる傾斜面3bになっている。
この平面部3aには、長孔3cが形成されている。この長孔3cは、前後方向に所定幅を有し、天板部7の後述する開口7aの縁部との間に所定間隔を存する状態で、左右方向に所定長さで延びているとともに、その両端が平面視半円形に形成されている。
前スロープ部3の内部には、多数の支柱が設けられている(図示せず)。これらの支柱の上端部は、平面部3a及び傾斜面3bに固定され、その下端部は、スロープ部3の底面部3dに固定されている。それにより、前スロープ部3に上方から作用する力は、これらの支柱によって支持される。
また、後スロープ部3は、その表面が載置部4の後端に連続する平面部3aと、この平面部3aに連続して後方に斜め下がりに延びる傾斜面3bになっている。この平面部3aにも、長孔3cが形成されており、この長孔3cは、前スロープ部3の長孔3cと同様に構成されている。また、後スロープ部3の内部には、前スロープ部3と同様の多数の支柱が設けられている(図示せず)。
また、後スロープ部3は、その表面が載置部4の後端に連続して後方に斜め下がりに延びる傾斜面になっている。車両Vは、検査を開始する際、床面から後スロープ部3を介して載置部4上に移動するとともに、検査の終了後、載置部4から前スロープ部3を介して床面に移動する。
一方、載置部4は、上方から下方に向かって順に、前後の載置板部5,6、天板部7及びベース板部8などを備えている。
ベース板部8は、平面視矩形の前後方向に延びる平板状のものであり、その前後端部が前後のスロープ部3,3に一体に固定されている。ベース板部8は、床面上に載置され、図示しない固定具(例えばアンカーボルト)を介して、床Fに堅固に固定されている。
天板部7は、平面視矩形で前後方向に延びており、ベース板部8と平行に配置されている。天板部7には、開口7aが設けられている。この開口7aは、天板部7の中央部に配置され、平面視横長の矩形に形成されているとともに、天板部7を上下方向に貫通している。
また、前載置板部5は、平面視横長の矩形で前後方向に延びており、その表面には、4つのリブ5aが設けられている。これら4つのリブ5aは、前後方向に延びており、内側の2つのリブ5a,5aは、走行路を規定し、車両Vの車輪Wを案内するための機能を備えている。それにより、検査時、車両Vが載置台2に乗り上げて検査位置(図16参照)まで移動する際、車輪Wが前載置板部5によって案内される。
前載置板部5の前端部は、前スロープ部3の平面部3aに載置されており、その左右両端の2つのリブ5a,5aの間には、一対の長孔5b,5bが形成されている。これらの長孔5b,5bは、互いに平行に前後方向に延びている。前載置板部5の前端部は、この長孔5b,5bの縁部において、油圧クランプ装置9を介して前スロープ部3に固定されている。
図4に示すように、油圧クランプ装置9は、連結板9a及び2つの油圧シリンダ9b,9bを備えており、油圧シリンダ9b,9bは、連結板9aの上面にネジ止めされている。
各油圧シリンダ9bには、ピストンロッド9cが設けられており、ピストンロッド9cの上端部には、フランジ9dが一体に設けられている。この油圧クランプ装置9では、図示しない制御装置によって、油圧回路(図示せず)からの油圧シリンダ9bへの供給油圧が制御され、それにより、ピストンロッド9cが油圧シリンダ9bから上下方向に伸縮する。
この油圧クランプ装置9の場合、各ピストンロッド9cが、前載置板部5の長孔5bと、前スロープ部3の前述した長孔3cに嵌合した状態で、フランジ9dの下面と油圧シリンダ9bの上端面との間に、前載置板部5及び前スロープ部3の平面部3aが挟持されている。それにより、前載置板部5は、前スロープ部3に固定されている。
また、その状態において、ピストンロッド9cが油圧シリンダ9bから相対的に上方に延びることにより、前載置板部5の前スロープ部3への固定が解除される。そのように前載置板部5の前スロープ部3への固定が解除された状態では、ピストンロッド9cが前スロープ部3の長孔3cに案内されながら左右方向に移動可能になることにより、前載置板部5は、長孔3cの長さ分、左右方向に移動可能になる。具体的には、前載置板部5は、図2に示す最大幅位置と、図3に示す最小幅位置との間で左右方向に移動可能に構成されている。
さらに、前載置板部5の後端部は、後載置板部6の前端部の上面に載置されており、その左右両端部には、一対の長孔5e,5eが形成されている。長孔5e,5eの各々は、長孔5b,5bの各々と前後方向に同じ長さを有し、その前後方向に延びる中心線が各長孔5bの中心線と同一の直線上に配置されている。
各長孔5eには、油圧クランプ装置9Aのピストンロッド(図示せず)が嵌合しており、このピストンロッドは、後述する後載置板部6の長孔6eにも嵌合している。この油圧クランプ装置9Aは、前述した油圧クランプ装置9と比べて、若干、サイズが小さい点以外は同様に構成されているので、その説明を省略する。
以上の構成により、油圧クランプ装置9,9Aによる固定が解除されている状態では、前載置板部5は、長孔5bの縁部が油圧クランプ装置9のピストンロッド9cに、長孔5eの縁部が油圧クランプ装置9Aのピストンロッドに沿ってそれぞれ移動可能になる。
それにより、前載置板部5は、長孔5b,5eの前後方向の長さ分だけ、前スロープ部3に対して相対的に前後方向に移動可能になっている。具体的には、前載置板部5は、図2に示す最大長さ位置と、図3に示す最小長さ位置との間で前後方向に移動可能に構成されている。
一方、前載置板部5の前端部の裏面には、一対の支柱5d,5dが設けられている(図5参照)。これらの支柱5d,5dは、互いに左右方向に間隔を存する状態で長孔5bの後端よりも若干、後ろ側の部位から下方に延びている。
各支柱5dは、前載置板部5が前スロープ部3に固定されている状態では、その下端部がベース板部8の上面に当接している。それにより、前載置板部5に上方から作用する力は、支柱5d,5dによって支持される。
また、前載置板部5の後端部は、油圧クランプ装置9Aによって、後載置板部6の前端部に押しつけられながら、後載置板部6に固定される。
前載置板部5の中央部の後ろ側には、開口5gが設けられている。この開口5gは、平面視矩形に形成され、前載置板部5を上下方向に貫通している。この開口5gの下方には、加振機10が配置されており、この加振機10の詳細については後述する。
この開口5gは、後述するように、車両Vの検査時、車両Vの車輪Wの下側が、この開口5gを介して加振機10の第1ローラ17及び第2ローラ16に挟持されるようにするためのものである。
そのため、この開口5gでは、左右方向の幅は、車輪Wの設置面の幅よりもかなり大きく設定され、前後方向の長さは、車輪Wの設置面の前後方向の長さよりもかなり大きく設定されている。それにより、車輪Wの下側が第1ローラ17及び第2ローラ16に挟持された状態で加振されているときに、車輪Wが開口5gの縁部に干渉しないように構成されている。
次に、後載置板部6について説明する。後載置板部6は、平面視横長の矩形で前後方向に延びており、その表面には、4つのリブ6aが設けられている。これら4つのリブ6aの各々は、前述した4つのリブ5aの各々と同じ機能を備えており、その前後方向に延びる中心線が前述した4つのリブ5aの各々の中心線と同一の直線上に配置されている。
これらのリブ6aは、リブ5aと同様に、走行路を規定し、車両Vの車輪Wを案内するための機能を備えている。それにより、検査時、車両Vが載置台2に乗り上げて検査位置まで移動する際、車輪Wが後載置板部6によって案内される。また、この載置台2では、リブ5a,6aの上端が、同じ高さに設定され、載置台2における最も高さの高い部位になっている。
後載置板部6の後端部は、その上面が前述した前載置板部5の前端部の上面と同じ高さに配置され、前載置板部5の前端部と面対称に構成されている。すなわち、後載置板部6の後端部は、後スロープ部3の平面部3aに載置されており、その左右両端の2つのリブ6a,6aの間には、一対の長孔6b,6bが形成されている。
各長孔6bには、油圧クランプ装置9のピストンロッド9cが嵌合しており、このピストンロッド9cは、後スロープ部3の長孔3cにも嵌合している。
また、後載置板部6の前端部の上面には、前載置板部5の後端部が載置されており、その左右両端部には、一対の長孔6e,6eが形成されている。長孔6e,6eの各々は、長孔6b,6bの各々と前後方向に同じ長さを有し、各長孔6bと前後方向に同心に配置されている。各長孔6eには、前述したように、油圧クランプ装置9Aのピストンロッドが嵌合している。
以上の構成により、油圧クランプ装置9,9Aによる固定が解除されている状態では、後載置板部6は、長孔6bの縁部が油圧クランプ装置9のピストンロッド9cに、長孔6eの縁部が油圧クランプ装置9Aのピストンロッドにそってそれぞれ移動可能になる。
それにより、後載置板部6は、長孔6b,6eの前後方向の長さ分だけ、後スロープ部3に対して相対的に前後方向に移動可能になっている。具体的には、後載置板部6は、図2に示す最大長さ位置と、図3に示す最小長さ位置との間で、前後方向に移動可能に構成されている。
さらに、後載置板部6は、油圧クランプ装置9による固定が解除されている状態では、ピストンロッド9cが後スロープ部3の長孔3cに案内されながら、長孔3cの長さ分、左右方向に移動可能になる。それにより、後載置板部6は、前載置板部5と一体の状態で、図2に示す最大幅位置と図3に示す最小幅位置との間で左右方向に移動可能に構成されている。
さらに、後載置板部6の後端部の裏面には、一対の支柱6d,6dが設けられている。これらの支柱6d,6dは、互いに左右方向に間隔を存する状態で長孔6bの後端よりも若干、後ろ側の部位から下方に延びている。
支柱6d,6dは、後載置板部6が後スロープ部3に固定されている状態では、その下端部がベース板部8の上面に当接している。それにより、後載置板部6に上方から作用する力は、支柱6d,6dによって支持される。
また、後載置板部6の前端部の裏面には、3つの支柱6h,6h,6hが設けられている。3つの支柱6h,6h,6hは、互いに左右方向に間隔を存する状態で、後載置板部6の2つの長孔6e,6e間の部位から下方に延びている。
後載置板部6の後端部が油圧クランプ装置9によって後スロープ部3に固定され、後載置板部6の前端部が前載置板部5に油圧クランプ装置9Aを介して固定されている状態では、支柱6h,6h,6hの各々は、その下端部がベース板部8の上面に当接している。それにより、後載置板部6に上方から作用する力は、支柱6h,6h,6hによって支持される。
さらに、後載置板部6の中央部には、開口6gが設けられている。この開口6gは、平面視矩形に形成され、後載置板部6を上下方向に貫通しているとともに、前載置板部5の前述した開口5gと同じサイズに構成されている。また、この開口6gの下方には、加振機10が配置されている。
次に、図5〜図10を参照しながら、加振機10について説明する。なお、図5は、理解の容易化のために、天板部7を省略した構成を示している。本実施形態の加振装置1では、前載置板部5の開口5gの下方に配置された加振機10と、後載置板部6の開口6gの下方に配置された加振機10は同様に構成されているので、以下、前載置板部5の開口5gの下方に配置された加振機10を例にとって説明する。
加振機10は、平面視矩形の可動ベース板11上に設けられており、この可動ベース板11は、その底面がベース板部8の上面に面接触した状態で、図示しないマグネットクランプを介して、ベース板部8に固定されている。
また、ベース板部8の上面には、4つの位置変更装置30及び多数のフリーベアリング(図示せず)が設けられている。4つの位置変更装置30は、平面視矩形に配置されており、可動ベース板11は、これらの位置変更装置30に取り囲まれるように設けられている。
各位置変更装置30は、複数の歯付きプーリと、これらのプーリに巻き掛けられた歯付きベルトと、1つの歯付きプーリを駆動するモータ機構などを備えている(いずれも図示せず)。各位置変更装置30の歯付きベルトの両端部は、可動ベース板11の4つの所定部位に連結されている。また、多数のフリーベアリングは、可動ベース板11の下方の位置に配置されている。
以上の構成により、マグネットクランプによる固定が解除された状態では、可動ベース板11は、4つの位置変更装置30におけるプーリの回転動作に伴って、多数のフリーベアリングを転動させながら、ベース板部8上を移動する。すなわち、可動ベース板11は、ベース板部8に対する相対的な位置が変更可能に構成されている。そして、可動ベース板11は、そのように変更された位置において、マグネットクランプを介してベース板部8に固定される。
加振機10は、図6〜10に示すように、加振用アクチュエータ12、加振アーム13、2つの加振シャフト14,14、2つの軸受部15,15、第2ローラ16、第1ローラ17、接地台18及び通路台19などを備えている。
なお、図8,10などでは、理解の容易化のために、第2ローラ16及び第1ローラ17の断面部分のハッチングが省略されている。
加振用アクチュエータ12は、油圧シリンダ12a、ピストンロッド12b及びブラケット12cなどを備えている。このブラケット12cは、油圧シリンダ12aを支持するためのものであり、その下端部が可動ベース板11にボルト止めされている。さらに、ブラケット12cは、その上端部が前載置板部5の下面に当接した状態で前載置板部5にボルト止めされている。この油圧シリンダ12aは、油圧回路(図示せず)に接続されており、この油圧回路からの油圧が供給される。
加振用アクチュエータ12のピストンロッド12bの先端部には、加振アーム13が連結されている。この加振用アクチュエータ12では、前述した制御装置によって、前述した油圧回路から油圧シリンダ12aに供給される油圧が制御され、それにより、ピストンロッド12bが駆動される。それに伴い、ピストンロッド12bは、加振アーム13を前後方向に駆動したり、加振したりするように構成されている。
加振アーム13の左右両端部は、ボールジョイント14a,14aを介して、加振シャフト14,14の前端部にそれぞれ連結されている。これらの加振シャフト14,14は、左右方向に間隔を存して配置され、互いに平行に前後方向に延びているとともに、軸受部15,15によって前後方向に摺動自在に支持されている。
各軸受部15内には、2つの静圧軸受15a,15aが所定間隔で前後方向に並べて配置されており、これらの静圧軸受15a,15aによって、加振シャフト14が前後方向に振動する際、前後方向に直交する方向(例えば、左右前後方向)の振動が抑制されるように、加振シャフト14が支持されている。
図5に示すように、前載置板部5の開口5gの前側の縁部は、取付部5cになっている。この取付部5cは、前後方向に所定長さで延びており、その左右端部は、図示しないネジを介して、軸受部15,15の上面にそれぞれ固定されている。さらに、前載置板部5の取付部5cの左右方向に位置する開口5gの縁部5h,5hも、図示しないネジを介して、軸受部15,15の上面にそれぞれ固定されている。
以上のように、軸受部15,15は、その上面が前載置板部5に、下面が可動ベース板11にそれぞれ固定されており、それにより、載置台2の剛性を高める機能を有している。
また、加振シャフト14,14は、それらの後端部が2つの軸取付部20,20にそれぞれなっており、これらの軸取付部20,20の間には、第2ローラ16が設けられている。この第2ローラ16は、図11及び図12に示すように、回転部160、固定軸161、2つの軸受169,169及び回転用アクチュエータ40などを備えている。なお、以下の第2ローラ16の説明では、図11の左側を「左」といい、右側を「右」という。
この回転部160は、中空の円筒状の部材で構成され、所定長さで左右方向に延びている。また、固定軸161は、回転部160よりも小径の中空の円筒状の部材で構成され、回転部160よりも長く左右方向に延びている。
回転部160の内壁面と固定軸161の外周面との間には、2つの軸受169,169が設けられており、これらの軸受169,169は、転がり軸受で構成されている。これらの軸受169,169によって、回転部160は、固定軸161の軸線周りに回転可能に支持されている。
一方、固定軸161の左右両端部には、取付部162,162がカシメによって取り付けられている。これらの取付部162,162は、上述した取付部20,20にそれぞれ固定されており、それにより、固定軸161の左右両端部は、取付部20,20に固定されている。
また、固定軸161の内孔163の中央寄りの部位には、封止部材164,164が所定間隔を存して設けられている。この固定軸161では、これらの封止部材164,164により、内孔163における封止部材164,164の間が閉鎖されている。
さらに、固定軸161には、連通孔165,165が封止部材164,164よりも若干、軸線方向の外側の位置に形成されており、これらの連通孔165,165は、固定軸161の壁を貫通している。以上の内孔163、封止部材164,164及び連通孔165,165によって、油路が形成されており、この油路には、図示しない油圧回路からの作動油が供給されるように構成されている。
さらに、固定軸161には、左右一対のシール壁166,166が連通孔165,165よりも若干、軸線方向の外側の位置に固定され、左右一対の隔壁167,167が連通孔165,165よりも若干、軸線方向の内側の位置に固定されている。各シール壁166は、固定軸161から一体に径方向の外側に延びる円板状の部材であり、その外周面は、回転部160の内周面とほぼ同一径に設定されている。
この外周面には、凹部が全周に渡って周方向に延びており、この凹部には、Oリング166aが設けられている。このOリング166aにより、各シール壁166と回転部160との間が液密に封止されている。
また、左隔壁167は、シール壁166と同様に、固定軸161から一体に径方向の外側に延びる円板状の部材であり、その外周面は、回転部160の内周面とほぼ同一径に設定されている。
この外周面には、凹部が全周に渡って周方向に延びており、この凹部には、Oリング167aが設けられている。このOリング167aにより、左隔壁壁167と回転部160との間が液密に封止されている。
図13に示すように、左隔壁167の所定部位には、三日月形の油孔167bが形成されており、この油孔167bは、左隔壁167を左右方向に貫通している。
また、右隔壁167は、左隔壁167と同様に、Oリング167aにより、右隔壁壁167と回転部160との間が液密に封止されている。さらに、図14に示すように、右隔壁167には、三日月形の油孔167bが、左隔壁167の油孔167bと比べて、周方向の異なる所定部位に形成されている。
一方、回転用アクチュエータ170は、左右の隔壁167,167の間に配置されており、図12及び図15に示すように、径方向の内側から外側に向かって順に、軸受171、偏心スペーサ172、トロコイド内歯ギヤ173及びトロコイド外歯ギヤ174を備えている。この軸受171は、転がり軸受固定軸161の軸線周りに回転可能に設けられている。
偏心スペーサ172は、肉厚が周方向に変化するように形成された円環状の部材であり、その内周面で軸受171に当接している。また、トロコイド内歯ギヤ173は、内孔を備えており、この内孔には、偏心スペーサ172の外周面が隙間の無い状態で固定されている。以上の構成により、回転用アクチュエータ170の作動中、トロコイド内歯ギヤ173は、軸受171を介して、固定軸161の軸線周りに回転する。
その際、固定軸161の中心軸は、偏心スペーサ172の形状により、トロコイド内歯ギヤ173の中心に対して偏心していることにより、トロコイド内歯ギヤ173は、トロコイド外歯ギヤ174に対して偏心しながら回転することになる。
また、トロコイド外歯ギヤ174は、回転部160の内周面から突出する状態で、回転部160と一体に設けられている。このトロコイド外歯ギヤ174は、その歯数がトロコイド内歯ギヤ173よりも1個多くなるように設定されている。
以上の構成により、上記のように、トロコイド内歯ギヤ173が偏心しながら回転した際、トロコイド内歯ギヤ173では、1つのギヤ歯がトロコイド外歯ギヤ174のギヤ歯との噛合が外れた状態になるとともに、固定軸161の中心を間にして、この1つのギヤ歯と反対側のギヤ歯がトロコイド外歯ギヤ174のギヤ歯と噛み合う状態となる(図15参照)。さらに、トロコイド内歯ギヤ173の回転に伴い、トロコイド外歯ギヤ174との噛合が外れたギヤ歯及びトロコイド外歯ギヤ174と噛み合うギヤ歯がそれぞれ、隣接するギヤ歯に移行する。
以上のように構成された回転用アクチュエータ170は、油圧回路からの作動油が供給されることにより、以下に述べるように、第2ローラ16を回転駆動する。すなわち、作動油は、固定軸161の内孔163、連通孔165及び隔壁167の油孔167bを介して、回転用アクチュエータ170内に流れ込んだ後、トロコイド内歯ギヤ173とトロコイド外歯ギヤ174の間を流れる。
このように作動油が流れた際、トロコイド内歯ギヤ173は、固定軸161の軸線周りに偏心しながら回転し、それに伴って、トロコイド外歯ギヤ174は、トロコイド内歯ギヤ173よりも遅い回転数で回転する。その結果、回転部160が固定軸161の軸線周りに回転駆動される。すなわち、第2ローラ16が回転駆動される状態となる。
そして、トロコイド内歯ギヤ173とトロコイド外歯ギヤ174の間を流れた作動油は、隔壁167の油孔167b、固定軸161の連通孔165及び内孔163を介して、油圧回路に戻るように流れる。
以上のように、第2ローラ16は、回転用アクチュエータ170によって、中心軸線周りに回転駆動可能に構成されている。加振装置1の動作中、加振する車輪Wが駆動輪Wである場合において、駆動輪Wがクリープ状態にあるときには、第2ローラ16は、回転用アクチュエータ170によって、以下に述べるように駆動される。すなわち、第2ローラ16は、駆動輪Wの回転方向と逆向きに回転するとともに、駆動輪Wと第2ローラ16の回転速度比が駆動輪Wと第2ローラ16の半径比の逆数値を含む所定範囲(例えば、逆数値の±数%の範囲)内の値になるように、駆動される。
これは、第2ローラ16が駆動輪Wの回転抵抗になるのを可能な限り抑制しながら、第2ローラ16の加振力を効率よく駆動輪Wに伝達することによって、車両走行中、駆動輪Wが路面の凸部を乗り越えるときの振動状態をより適切に再現するためである。
また、加振装置1の動作中、第2ローラ16は、加振用アクチュエータ12によって、加振位置(例えば、図7,8に示す位置)と押出位置(例えば、図9,10に示す位置)との間で少なくも駆動されるようになっている。さらに、加振用アクチュエータ12が発生した前後方向の振動は、加振アーム13及び加振シャフト14,14を介して、第2ローラ16に入力される。
一方、第2ローラ16の後方には、一対の軸取付部21,21が設けられている。これらの軸取付部21,21の間には、円柱状の支軸21a(図17参照)が可動ベース板11の上面から所定高さの位置で左右方向に延びており、その両端部が軸取付部21,21に固定されている。第1ローラ17は、中空の円筒状に形成され、その内周面で支軸21aに嵌合している。
以上の構成により、第1ローラ17は、中心軸線周りに正逆回転自在になっている。さらに、第1ローラ17は、その上端が第2ローラ16の上端よりも若干高い位置になるように配置されている。なお、第1ローラ17を、その上端が第2ローラ16の上端と同じ位置になるように配置してもよい。
車両Vの検査時、車両Vの車輪Wの下側が、以上の第1ローラ17及び第2ローラ16によって挟持される関係上、これらの第1ローラ17及び第2ローラ16の左右方向のサイズは、車輪Wの幅よりも十分に大きい値に設定されている。
さらに、前述した接地台18は、可動ベース板11上の第1ローラ17と第2ローラ16の間に固定されている。この接地台18は、左右方向に長い直方体状のものであり、第1ローラ17及び第2ローラ16に対して平行に配置され、その両端が一対の軸受17a、17aの端面と同じ位置まで延びている。
この接地台18の場合、その上面と前載置板部5のリブ5aの上端面との間隔が、車両Vの地上最低高よりも小さい値になるように設定されている。これは、加振時などにおいて、何らかの理由により第1ローラ17と第2ローラ16との間隔が広くなり、車輪Wが下方に移動した場合でも、車両Vの車体底面における最低地上高の部位が載置板部5のリブ5aの上端面に当接するのを回避するためである。
さらに、前述した通路台19は、可動ベース板11上の軸受部15,15の間に配置されている。通路台19は、前後方向に長い直方体状のものであり、油圧アクチュエータ(図示せず)が内蔵されている。通路台19は、この油圧アクチュエータによって、待避位置(例えば、図7,8に示す位置)と、押出位置にある状態の第2ローラ16に当接する当接位置(例えば、図9,10に示す位置)との間で少なくとも前後方向に駆動される。
通路台19が当接位置まで移動し、押出位置にある第2ローラ16に当接した場合、通路台19によって第2ローラ16が回転不能に保持される。これは、加振動作の終了後、車両Vの車輪Wが第2ローラ16を乗り越えながら前方に移動する際、第2ローラ16を回転停止状態に保持することで、車輪Wの駆動力が第2ローラ16に伝達され、車輪Wが前方に移動しやすくするためである。
また、通路台19の上面は、そのように車輪Wが前方に移動する際、車輪Wの通路として機能するものであり、そのため、通路台19の上面の高さは、第2ローラ16の上面と同じ高さに設定されている。
以上のように、載置台2の左半部は構成されており、載置台2の右半部も同様に構成されている。
次に、以上のように構成された加振装置1において、車両Vを検査する際の動作について説明する。なお、以下の説明では、車両Vを前輪駆動車両タイプのものとし、加振機10の動作に関しては、主として前側の駆動輪Wを加振する場合の例について説明する。この点は、後述する第2実施形態の加振機50の説明でも同様である。
まず、油圧クランプ装置9,9Aを緩め、2枚の前載置板部5及び2枚の後載置板部6が前後方向及び左右方向に移動可能な状態に設定する。これに加えて、マグネットクランプを緩め、4つの可動ベース板11をベース板部8に対して移動可能な状態に設定する。
そして、以上の状態で、4つの可動ベース板11を、4つの位置変更装置30によって検査対象の車両Vのホイールベース及びトレッドに対応する位置にそれぞれ移動させた後、マグネットクランプによってベース板部8に固定する。可動ベース板11の移動に伴い、可動ベース板11と同時に、2枚の前載置板部5及び2枚の後載置板部6がホイールベース及びトレッドに対応する位置に移動する。そして、その位置で、これらの前載置板部5及び後載置板部6を、油圧クランプ装置9Aを介して互いに固定すると同時に、油圧クランプ装置9,9を介して前後のスロープ部3,3に固定する。
次いで、各加振機10における加振用アクチュエータ12を駆動し、第1ローラ17及び第2ローラ16の間隔を、検査対象の車両Vの車輪Wのサイズに合わせた値に設定する。以上により、検査のための準備動作が終了する。
次に、車両Vを後スロープ部3から載置台2に乗り上げるように移動させ、図16に示すように、4つの車輪Wが、前載置板部5の開口5g及び後載置板部6の開口6gに嵌まり込んで下方に移動し、第1ローラ17及び第2ローラ16によって前後方向から挟持された状態にする。そして、車両Vのエンジンをアイドル運転しながら、車両Vの駆動系をエンジンと駆動輪Wとの間を動力伝達可能な状態(インギヤ状態)に保持する。
この時点までは、第2ローラ16の回転用アクチュエータ170に対して作動油が流れていない状態に保持される。そして、車両Vのクリープトルクにより、駆動輪Wが図17の矢印Y4で示す方向に回転した際、それに伴って第2ローラ16の回転部160が図17の矢印Y1で示す方向に回転駆動される。このように第2ローラ16の回転部160が回転を開始した後、回転部160をその回転方向に駆動するように、油圧回路から作動油が回転用アクチュエータ170に供給される。
このようなタイミングで作動油が回転用アクチュエータ170に供給される理由は、本実施形態の回転用アクチュエータ170の場合、その構造上の理由から、作動油が供給された際、停止状態にある回転部160が正転及び逆転のいずれの方向に回転し始めるかが定まらないことによる。
以上のように、回転用アクチュエータ170によって、第2ローラ16が回転駆動されながら、加振用アクチュエータ12によって、第2ローラ16が前後方向に駆動されることにおり、駆動輪Wが加振される。この加振動作中、第2ローラ16及び第1ローラ17の回転状態は、図17及び図18に示す状態になる。すなわち、第2ローラ16は、第1ローラ17に近づくように、図17の矢印Y3で示す方向(後方)に移動する際、図17の矢印Y1方向に回転しながら、駆動輪Wを第1ローラ17側に押圧する。
すなわち、第2ローラ16は、駆動輪Wが図17の矢印Y4で示す方向に回転する際、その回転抵抗となるのを抑制するために、駆動輪Wとは逆方向に回転しながら、駆動輪Wを押圧する。
この場合、第2ローラ16の押圧力Foが駆動輪Wに作用した際、図19に示すように、押圧力Foの2つの分力成分Fx,Fyが駆動輪Wに作用することになる。すなわち、第2ローラ16を前後方向に加振することによって、駆動輪Wは、前後方向及び上下方向に同時に加振されることになる。
その際、第2ローラ16は、駆動輪Wから矢印Y1の逆方向に回転するような反力を受けるものの、回転用アクチュエータ170のトルクによって、その反力に抗しながら押圧力Foすなわち加振力を駆動輪Wに効率よく伝達することができる。
また、第2ローラ16が駆動輪Wを第1ローラ17側に押圧する際、第1ローラ17も、図17中の矢印Y2で示す方向に回転する。それにより、第1ローラ17が駆動輪Wの回転抵抗となるのを抑制することができる。
この状態から、第2ローラ16が、第1ローラ17から遠ざかるように図18の矢印Y5で示す方向(前方)に移動する際にも、第2ローラ16は、駆動輪Wの回転抵抗となるのを抑制するために、矢印Y1方向に回転する。これと同時に、第1ローラ17は、駆動輪Wに当接しながら、図18中の矢印Y2で示す方向に回転する。それにより、第1ローラ17が駆動輪Wの回転抵抗となるのを抑制することができる。
以上のように、加振機10により、クリープ状態で回転中の駆動輪Wが加振されることによって、駆動輪Wを介して車両Vが加振されることになる。それにより、車両走行中、前側の駆動輪Wが路面の凸部を乗り越えるときの車両Vの振動状態を適切に再現することができる。
また、加振機10によって加振される車輪Wが遊動輪Wである場合には、回転用アクチュエータ170への作動油の供給を停止し、第2ローラ16が回転用アクチュエータ170によって駆動されていない状態に保持される。それにより、遊動輪Wの自由回転に従って第2ローラ16及び第1ローラ17が回転する状態となる。
以上のような加振動作を所定時間、実行し、車両Vの検査が終了した場合、加振用アクチュエータ12によって、第2ローラ16を図7,8に示す加振位置から図9,10に示す押出位置まで移動させる。これと同時に、油圧アクチュエータによって、通路台19を図7,8に示す待避位置から図9,10に示す当接位置まで移動させる。それにより、通路台19の後端部が押出位置にある第2ローラ16に当接することで、第2ローラ16は回転停止状態に保持される。
その状態で、車両Vが前方に移動を開始することにより、駆動輪Wは、回転停止状態の第2ローラ16を乗り越えながら、2つのローラ16,17間から容易に抜け出すことができる。それにより、車両Vは、前方に移動し、前スロープ部3を介して載置台2から降りることができる。
以上のように、第1実施形態の加振装置1によれば、加振動作時、車両Vの車輪Wが前後方向から第1ローラ17及び第2ローラ16によって挟持される。その状態で、加振用アクチュエータ12によって、第2ローラ16が車輪Wの前後方向に駆動されることにより、第2ローラ16を介して車輪Wが加振される。それにより、車輪Wは、その下側部が第1ローラ17及び第2ローラ16の間に挟持された状態で、第2ローラ16によって加振される状態となる。
そして、加振装置1によって加振される車輪Wが駆動輪Wである場合、例えば車両Vにおけるクリープ現象が発生するような条件下では、若干のトルクが駆動輪Wに伝達され、駆動輪Wが回転する状態となる。その際、回転用アクチュエータ170によって、第2ローラ16の回転方向が駆動輪Wと逆向きになり、駆動輪Wと第2ローラ16の回転速度比が駆動輪Wと第2ローラ16の半径比の逆数値を含む所定範囲内の値になるように、第2ローラ16を駆動することによって、第2ローラ16が駆動輪Wに対して回転抵抗となるのを可能な限り抑制することができる。
これに加えて、前述したように、第2ローラ16によって駆動輪Wを第1ローラ17側に押圧する際、回転用アクチュエータ170のトルクによって、駆動輪Wからの反力に抗しながら、第2ローラ16の押圧力Foすなわち加振力を駆動輪Wに効率よく伝達することができる。
一方、加振装置1によって加振される車輪Wが遊動輪Wである場合には、回転用アクチュエータ170への作動油の供給を停止し、第2ローラ16が回転用アクチュエータ170によって駆動されていない状態にされる。それにより、遊動輪Wの自由回転に従って第2ローラ16が回転する状態となることで、第2ローラ16が遊動輪Wの自由回転を阻害するのを抑制できる。以上のように、車輪Wが遊動輪W及び駆動輪Wのいずれである場合においても、車輪Wが車両走行中に路面の凸部を乗り越えるときの振動状態を適切に再現することができる。
なお、第1実施形態は、第1ローラ17として、円柱状の支軸21aの中心軸線周りに回転するものを用いた例であるが、本発明の第1ローラは、これに限らず、車両の車輪の前後方向の一方から車輪に当接することにより、車輪の前後方向の一方への移動を規制するように配置され、車輪の回転軸に沿う軸線周りに回転可能なものであればよい。例えば、第1ローラとして、中実の円柱部材の両端部が2つの軸受によって回転自在に支持されたものを用いてもよい。
また、第1実施形態は、第2ローラ16として、回転部160が固定軸161の中心軸線周りに回転するものを用いた例であるが、本発明の第2ローラは、これに限らず、車輪の前後方向に移動可能に配置され、車輪の前後方向の他方から車輪に当接することにより、第1ローラとの間に車輪の下側部を挟持可能であるとともに、車輪の回転軸に沿う軸線周りに回転可能なものであればよい。例えば、第2ローラとして、第1ローラ17と同じ構成のものを用いてもよく、その場合でも、回転用アクチュエータによって第2ローラが所定方向に回転駆動されるように構成すればよい。
さらに、第1実施形態は、加振用アクチュエータとして、油圧駆動式の加振用アクチュエータ12を用いた例であるが、本発明の加振用アクチュエータは、これに限らず、第2ローラを車輪の前後方向に駆動することにより、第2ローラを介して車輪を加振するものであればよい。例えば、加振用アクチュエータとして、電動式アクチュエータを用いてもよい。
一方、第1実施形態は、回転用アクチュエータとして、油圧駆動式の回転用アクチュエータ170を用いた例であるが、本発明の回転用アクチュエータは、これに限らず、第2ローラを所定回転方向に駆動可能なものであればよい。例えば、回転用アクチュエータとして、電動機とギヤ機構を組み合わせたものを用いてもよい。
また、第1実施形態は、回転用アクチュエータ170を第2ローラ16に内蔵した例であるが、これに代えて、回転用アクチュエータを第2ローラ16の外部に設けてもよい。
さらに、第1実施形態は、車両Vを図16に示す状態で加振装置1に載置し、車両Vを加振した例であるが、車両Vの前後方向を図16とは逆にした状態で加振装置1に載置し、車両Vを加振するように構成してもよい。
なお、第1実施形態の加振機10に代えて、図20,21に示す加振機10Aを用いてもよい。この加振機10Aの場合、第1実施形態の加振機10と比較して、第2ローラ16に代えて、図20,21に示す第2ローラ16Aを備えている点のみが異なっている。
この第2ローラ16Aは、前述した第2ローラ16と比較して、以下の点のみが異なっている。すなわち、第2ローラ16の場合、その回転中心が、加振シャフト14の中心軸線よりも若干、上方に位置しているのに対して、この第2ローラ16Aの場合、その回転中心が加振シャフト14の中心軸線と同一平面上に位置するように構成されている。
このような加振機10Aを用いた場合でも、図20,21に示すように、加振動作中、第2ローラ16Aは、第2ローラ16と同じように回転する。それにより、第1実施形態の加振機10を用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。