JP4109574B2 - 光ファイバ伝送路の損失特性評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光ファイバ伝送路の損失評価方法に関し、より詳細には、複数のシングルモード光ファイバを接続して構成された光ファイバ伝送路のレーリ散乱損失、OH基吸収損失および接続損失の各要因ごとの損失を簡便かつ高精度に評価することを可能とする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、光ファイバは通信用の低損失な伝送媒体として広く使用されているが、光ファイバを用いて実際の光通信システムを設計するためには、伝送光信号波長における損失値を精度良く評価することが求められる。例えば、シングルモード光ファイバ中の広い波長帯域内にある複数の波長の光を伝送信号として用いる経済的な通信技術として知られるCoarse-WDM(CWDM)などの波長多重光伝送システムを、中継系および加入者系光ファイバネットワークヘ導入するに際しては、その光ファイバ伝送路は複数の光ケーブルが比較的短い区間で接続されているため、任意の光ケーブル区間ごとの損失特性を高精度で把握することが重要になる。また、仮に特定の区間で損失の顕著な増大があるような場合に、その場所と原因(損失要因)とを特定することが可能になれば、光ケーブルの張り替えや再接続といった補修工事を効率的に行うことができるようになる。
【0003】
なお、光ファイバ自体の主な損失要因はレーリ散乱損失αR、赤外吸収損失αIR、OH基吸収損失αOHおよび構造不整損失αIMの4つに分類され、外的損失要因としては光ファイバの接続および光ファイバの曲げに起因する損失(接続損失αCおよび曲げ損失αB)があり、布設された光ファイバケーブルの区間ごとの損失特性を評価する従来の方法としては、光パルス試験器(Optical Time Domain Reflectometer:OTDR)による方法がある。
【0004】
【非特許文献1】
“International Wire & Cable Symposium Proceedings 1996”, pp.679-688 (1996).
【0005】
【非特許文献2】
“光ファイバ技術200のポイント” 電気通信協会、pp.292-293、(1990).
【0006】
【非特許文献3】
信学論B−I.,vol.J78-B-I,no.12,pp.724-735,Dec. (1995).
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の損失特性評価方法には以下に説明するような問題があった。
【0008】
図1は、OTDRにより得られた後方散乱光の受光パワーと区間距離との関係を説明するための図で、このOTDR測定波形において、光ファイバ区間での波形の傾きが光ファイバ自体の損失(dB/km)を表し、接続点での波形の段差が接続点での接続損失および曲げ損失(dB)を表す。OTDRによる測定では、通常は測定波長として1.31μm、1.55μm、1.65μmなどのうちの1つの波長が用いられるが、これらの波長における全損失には各損失要因に起因する損失が混在している。このため、OTDR測定波形の傾きから光ファイバ自体の全損失を見積もることは可能でも各損失要因ごとの損失を正確に分離することは困難であった。
【0009】
また、OTDRによってレーリ散乱損失を測定する際には、標準光ファイバを測定対象光ファイバに接続し、その両端側から損失測定を行う必要があり(非特許文献1参照)、さらに、レーリ散乱損失値の算出のためには光ファイバの構造パラメータを用いた複雑な計算も必要とされる。このため、実際に布設されており複数の接続点を有する光ファイバケーブルの損失測定にこのような方法を適用することは事実上不可能である。
【0010】
さらに、接続損失を求める場合には、長波長の光を用いて測定すると接統点におけるOTDR波形の段差に曲げ損失の影響が現れてしまう可能性があるため、1.31μmなどの短波長の光を用いて損失測定を実行する。この場合、OTDRで観測される後方散乱光の強度が光ファイバ毎に異なるため、例えば非特許文献2に記載されているように、光ファイバの両側からの損失測定が必須となり、光ファイバの両側から測定して得られた2つのOTDR波形の段差の平均値をとる必要が生じるという問題がある。
【0011】
このように、従来の評価方法では、光伝送路の任意の光ファイバ区間において光ファイバ自体の損失を各損失要因ごとに評価することは、光ファイバ区間の片側から測定を行なうか両側から測定を行なうかに関わらず困難であることに加え、接続損失を評価する際には伝送路の両側からの測定を行うことが必須となって多大な労力を必要とするという問題があった。
【0012】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数のシングルモード光ファイバを接続して構成された光ファイバ伝送路の任意の区間におけるレーリ散乱損失αR、赤外吸収損失αIR、OH基吸収損失αOHおよび構造不整損失αIMの4つの要因ごとの損失を高精度に評価することを可能とする方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数のシングルモード光ファイバが接続されて構成されている光伝送路のレーリ散乱損失特性の評価方法であって、0.9〜1.2μmの波長範囲内にある1つの波長λxを選択してOTDR測定を実行する第1のステップと、前記第1のステップにより得られたOTDR測定波形の傾きT(λx)と予め定められた補正係数Z1とを基に次式(a)によりレーリ散乱係数k1を求め、次式(b)によりレーリ散乱損失αR(λ)を算出する第2のステップと、を備えていることを特徴とする。
T(λx)−Z1=k1/λx 4 …(a)
αR(λ)=k1/λ4 …(b)
【0014】
請求項2に記載の発明は、複数のシングルモード光ファイバが接続されて構成されている光伝送路のレーリ散乱損失特性およびOH基吸収損失特性の評価方法であって、1.2〜1.4μmの波長範囲内にある2つの異なる波長λyおよびλzを選択して各々の波長の光を用いたOTDR測定を実行する第1のステップと、前記第1のステップにより得られたOTDR測定波形の傾きT(λy)およびT(λz)ならびに予め定められた補正係数Z2とを基に次式(c)および(d)を満足するレーリ散乱係数k1およびレーリ散乱損失αR(λ)ならびにOH基吸収損失αOH(λ)を算出する第2のステップと、を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、複数のシングルモード光ファイバが接続されて構成されている光伝送路のレーリ散乱損失特性およびOH基吸収損失特性の評価方法であって、請求項1に記載の方法によりレーリ散乱係数k1およびレーリ散乱損失αR(λ)を算出する第1のステップと、1.2〜1.4μmの波長範囲内にある1つの波長λyを選択してOTDR測定を実行する第2のステップと、前記第2のステップにより得られたOTDR測定波形の傾きT(λy)と予め定められた補正係数Z2とを基に次式(c)を満足するOH基吸収損失αOH(λ)を算出する第3のステップと、を備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、少なくとも2本のシングルモード光ファイバ(aおよびb)が接続されて構成されている光伝送路の接続損失特性の評価方法であって、0.9〜1.4μmの波長範囲内にある1つの波長λxを選択し、前記光ファイバa側からb側へのOTDR測定を実行する第1のステップと、前記第1のステップにより得られたOTDR測定波形中に現れる2つの傾きTa(λx)およびTb(λx)ならびに予め定められた補正係数Z1を用いて次式(a1)および(a2)により前記光ファイバaおよびb各々のレーリ散乱係数k1aおよびk1bを算出する第2のステップと、前記第2のステップで得られたレーリ散乱係数k1aおよびk1bから次式(e)により後方散乱光変動量△Rを求める第3のステップと、前記第1のステップにより得られたOTDR測定波形中の段差Gと前記第3のステップで得られた後方散乱光変動量△Rとを用いて次式(f)を満足する接続損失αC(λ)を求める第4のステップと、を備えていることを特徴とする。
Ta(λx)−Z1=k1a/λx 4 …(a1)
Tb(λx)−Z1=k1b/λx 4 …(a2)
ΔR=10・log(k1a/k1b) …(e)
G=αC(λ)+ΔR …(f)
【0017】
請求項5に記載の発明は、光ファイバ伝送路の損失特性評価方法であって、請求項2または3に記載の方法によりレーリ散乱係数k1およびレーリ散乱損失αR(λ)ならびにOH基吸収損失αOH(λ)を決定するステップと、請求項4に記載の方法により接続損失αC(λ)を決定するステップと、を備えていることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ここでは、複数の1.3ミクロン零分散シングルモード光ファイバ(SMF)を接続して構成されている光伝送路に対する損失評価例を基に本発明を説明する。
【0019】
損失評価を行なうに際しては、SMFの各損失要因の波長依存性を考慮した測定波長の決定を行なうことが必要となる。石英系のSMFの光ファイバ固有の主損失要因としては、レーリ散乱損失αR、赤外吸収損失αIR、構造不整損失αIM、OH基不純物の吸収による損失αOHがあり、光ファイバの全損失αはこれらの損失の和として与えられ、これら各損失は近似的に以下の式(1)〜(5)により表現される。
αR(λ)=k1/λ4 …(1)
αIR(λ)=k2exp(−k3/λ) …(2)
αIM(λ)=k4 …(3)
αOH(λ)=ΣαOHn (n=1〜4) …(4)
αOH1(λ)=P1exp[−{(1/λ−1/λ1)/σ1}2] (n=1)
αOHn(λ)=Pn/[1+{(1/λ−1/λn)/σn}2] (n=2〜4)
α(λ)=αR(λ)+αIR(λ)+αIM(λ)+k5αOH(λ) …(5)
【0020】
従って、光ファイバの全損失αを与える式(5)には、k1〜k5、P1〜P4、λ1〜λ4およびσ1〜σ4の17個の定数が含まれることとなり、全損失特性を推定するには上記17個全ての定数を決定する必要がある。このため、複数の波長の光を用いて損失測定を行ない、得られた測定値にフィッティングを施してこれらの係数を決定して各損失要因を評価することとなる。
【0021】
図2は、ボビン巻きにしたSMFの損失波長特性を説明するための図で、この図には、式(5)に基づく計算により求めた損失曲線と、白丸により示した実測損失値を比較して示してある。また、損失曲線を光ファイバ自体の主損失要因であるレーリ散乱損失αR、赤外吸収損失αIR、OH基吸収損失αOHおよび構造不整損失αIMの4つの各損失要因をパラメータとしてフィッティングして得られた各損失要因の波長依存性も示した。
【0022】
この図より、SMFの損失測定値は式(5)により極めて高い精度で近似できることが読み取れる。各損失要因の波長依存性に着目すると、先ず、赤外吸収損失αIR(λ)は1.5μmよりも長波長側で急激に増加している。なお、SMFではマイクロベンドなどによる曲げ損失αB(λ)も1.5μm以上の波長領域で増加することが分っている。構造不整損失αIM(λ)は波長に依存しない定数であるが、例えば非特許文献3に記載されているように、SMFでは0〜0.03dB/km程度の値である。式(1)のレーリ散乱損失αR(λ)に関する係数k1はレーリ散乱係数と呼ばれ、αR(λ)は波長の4乗に反比例し、波長が長くなるに従ってなだらかに減衰している。OH基吸収損失αOH(λ)は1.4μm近傍にピークをもつ波長依存性を有しており、この波長依存性曲線をフィッテイングした結果、式(4)中のOH基吸収損失αOH(λ)についての係数であるPn、λnおよびσnは表1のように決定される。
【0023】
【表1】
【0024】
これらの係数値はあくまでも一例ではあるが、コアガラスの組成がほぼ一定の場合にはガラス中のOH基吸収特性の変化は無視できるので、表1に掲げた各係数の値をSMF全般に対する良好な近似値として用いることができる。
【0025】
図2に示した各損失要因ごとの波長依存性の解析結果から、0.9〜1.2μm付近の波長範囲ではαR(λ)のみが支配的であり、1.2〜1.4μm付近の波長範囲ではαR(λ)とαOH(λ)の2つの要因が支配的となることがわかる。
【0026】
以下に、レーリ散乱損失αR(λ)が支配的となる0.9〜1.2μm付近の波長範囲から1つのOTDR測定波長を選択する場合およびレーリ散乱損失αR(λ)およびOH基吸収損失αOH(λ)が支配的となる1.2〜1.4μm付近の波長範囲から2つのOTDR測定波長を選択する場合に場合分けして、本発明の損失評価方法における各損失要因ごとの基本的評価手順について説明する。
【0027】
先ず、レーリ散乱損失αR(λ)が支配的となる0.9〜1.2μm付近の波長範囲から1つのOTDR測定波長を選択する場合は、上記波長範囲から選択したOTDR測定波長をλxとして次式(6)を仮定する。
T(λx)−Z1=αR(λx)=k1/λx 4 …(6)
【0028】
ここで、T(λx)はOTDR測定波形の傾きであり、Z1は構造不整損失などの寄与分を表す補正項で典型的なSMFの場合では0.01〜0.02dB/km程度の定数とすればよい。上式(6)より、実測により求めた測定波形の傾きT(λx)とλxとからレーリ散乱係数k1が得られ、式(1)にこのk1を代入してレーリ散乱損失αR(λ)が決定される。
【0029】
T(λx)の測定に際しては、パルス幅や平均化回数等の測定パラメータを適切に設定し、最小二乗法等を用いて測定波形を解析すれば、光伝送路の片側からの測定のみによって、任意の光ファイバ区間に対してT(λx)を得ることができる。なお、より高精度な評価を行いたい場合には伝送路の両側から測定を行い、その平均値をT(λx)とすることも可能である。測定波長λxとしては、例えば汎用レーザの発振波長である0.98μmや1.06μmを選択することができる。0.9〜1.2μm付近の波長では高次モードの影響がOTDR波形に影響を与える可能性があるが、このような影響を回避するためには、OTDRの入射端に半径数cm程度の適切な曲げを施したSMFを接続することで高次モードの影響を除去するか、あるいは、SMFのカットオフ波長により近い1.2μm付近の波長を測定波長λxとして選択すればよい。
【0030】
SMFのk1の典型的な値は1.0dB/km/μm4程度なので、波長λxにおけるレーリ散乱損失αR(λx)は0.5〜0.8dB/km程度の値をとる。一方、補正項Z1による誤差は0.01〜0.02dB/km程度なので、実用上十分な精度でαR(λx)を評価できることになる。
【0031】
次に、レーリ散乱損失αR(λ)およびOH基吸収損失αOH(λ)が支配的となる1.2〜1.4μm付近の波長範囲から2つのOTDR測定波長を選択する場合について説明する。この場合は上記波長範囲にある2つの波長λyおよびλzを測定波長として選択し、次式(7)および(8)を仮定する。
【0032】
ここで、T(λy)およびT(λz)は波長λyおよびλzでの各々のOTDR測定波形の傾きであり、Z2は構造不整損失やマイクロベンディングなどの寄与分を表す補正項で0.01〜0.04dB/km程度の定数とすればよい。
【0033】
αOH(λy)とαOH(λz)との関係は式(4)により与えられるから、例えば、λyを1.3μm、λzを1.38μmとすると、次式(9)が成立する。
【0034】
αOH(1.38μm)=47.7αOH(1.31μm) …(9)
従って、例えばOTDR測定渡形から得られたT(λy)とT(λz)とがそれぞれ、T(λy)=T(1.31μm)=0.380dB/kmおよびT(λz)=T(1.38μm)=1.50dB/kmのときにZ2=0.02dB/kmとして式(7)〜(9)を解くと、k1=0.985dB/km/μm4となり、式(1)によりレーリ散乱損失αR(λ)を決定することができる。また、波長λzにおけるOH基吸収損失αOH(λz)は1.23dB/kmとなり、式(4)と表1に示した係数値を用いてk5=1.54が得られOH基吸収損失αOH(λ)を決定することができる。なお、OH基吸収損失αOH(λ)の評価精度を向上させるためには、2つの測定波長のうちの一方を可能な限りαOH(λ)のピーク波長である1.383μmに近づけることが好ましい。
【0035】
これまではレーリ散乱損失αR(λ)が支配的となる0.9〜1.2μm付近の波長範囲から1つのOTDR測定波長を選択する場合と、レーリ散乱損失αR(λ)およびOH基吸収損失αOH(λ)が支配的となる1.2〜1.4μm付近の波長範囲から2つのOTDR測定波長を選択する場合と、に場合分けして、レーリ散乱損失αR(λ)または/およびOH基吸収損失αOH(λ)の評価手順を説明してきたが、これら2つの場合で用いた手順を組み合わせて用いることも可能である。具体的には、2つの測定波長のうちの一方をレーリ散乱損失αR(λ)のみが支配的となる0.9〜1.2μm付近の波長範囲から選択して式(6)に基づいて係数k1を決定し、この係数k1の値を式(8)に代入してこれら2つの測定波長に対応するOH基吸収損失αOH(λ)を決定するようにすることも可能である。
【0036】
次に、接続損失αC(λ)の評価方法について説明する。一般に、後方散乱光の反射率Rは次式(10)で与えられる。
なお、Sは後方散乱光のコアヘの補集率、WはOTDRの測定パルス幅、vは光パルスの群速度である。
【0037】
ここで、接続点で2本の光ファイバaと光ファイバbとが接続されている光伝送路を仮定し、SMFでの曲げ損失αB(λ)を無視できる測定波長λおよびパルス幅Wの条件下で、光ファイバa側または光ファイバb側の何れか一方からOTDR測定する場合を想定する。後方散乱光のコアヘの補集率Sと光パルスの群速度vとは何れも光ファイバの屈折率分布に依存するので、光ファイバ特性の違いによる後方散乱光の変動要因となるのは、SとvおよびαR(λ)である。後方散乱光の変動量を△R(dB)、光ファイバaと光ファイバbとを接続した際のOTDR波形の段差をG(dB)、実際の接続損失をαC(λ)(dB)とすると、次式(11)〜(13)が成立する。
Ga→b=αC(λ)+ΔR …(11)
Gb→a=αC(λ)−ΔR …(12)
ΔR=10[log(Sa/Sb)+log(va/vb)+log(k1a/k1b)] …(13)
なお、これらの式中の下付添字aおよびbは光ファイバaおよびbに対応することを意味しており、Ga→bは光ファイバaから光ファイバbへの測定により得られるOTDR波形の段差であり、Gb→aは光ファイバbから光ファイバaへの測定により得られるOTDR波形の段差である。
【0038】
図3は、OTDR測定による接続損失αC(λ)の決定方法を説明するための概念図で、この図に示すように、片側からのOTDR測定によって接続損失αC(λ)の評価を行う場合には、通常は△Rの分だけ見積誤差を含んでいる。そこで、光ファイバa側とb側の両方からもOTDR測定を行い、Ga→bとGb→aの平均値をとることで△Rをキャンセルさせて接続損失αC(λ)を正確に求めることも可能である。
【0039】
しかしながら、光ケーブル区間長が数kmにも渡るような場合には光ファイバの両側からOTDR測定を実行することは作業が煩雑となり実用的ではない。そこで本例では、まず、既に説明した方法により片側からのOTDR測定により接続された2本の光ファイバの各々の係数k1を決定し、次に、これらの値を用いてαC(λ)の値を決定するという手順を採用する。
【0040】
式(13)においてレーリ散乱係数k1はファイバの製造プロセスにも依存するので、SMF同士であっても(k1a/k1b)の値は10%程度の変動幅をもち、これはlog(k1a/k1b)換算で約0.4dBに相当する。一方、Sやvは屈折率分布というファイバの基本構造に依存するパラメータなので、式(13)中の第1項log(Sa/Sb)と第2項log(va/vb)の絶対値は、第3項であるlog(k1a/k1b)と比較すると通常は無視できるほどの小さい値となる。従って、接続された2本のファイバの各々のk1を決定し、△Rを10・1og(k1a/k1b)と近似した式(△R=10・1og(k1a/k1b))に代入することによって、接続損失αC(λ)を得ることができることになる。
【0041】
すなわち、本発明による接続損失αC(λ)の評価においては、少なくとも2本のシングルモード光ファイバ(aおよびb)が接続されて構成されている光伝送路において、先ず、0.9〜1.4μmの波長範囲内にある1つの波長λxを選択し、光ファイバa側からb側へのOTDR測定を実行して得られたOTDR測定波形中に現れる2つの傾きTa(λx)およびTb(λx)ならびに予め定められた補正係数Z1を用いて次式(14)および(15)により光ファイバaおよびb各々のレーリ散乱係数k1aおよびk1bを算出する。そして、得られたレーリ散乱係数k1aおよびk1bを基に次式(16)により後方散乱光変動量△Rを求め、最後に、OTDR測定波形中の段差Gと後方散乱光変動量△Rとを用いて次式(17)を満足する接続損失αC(λ)を求める。
Ta(λx)−Z1=k1a/λx 4 …(14)
Tb(λx)−Z1=k1b/λx 4 …(15)
ΔR=10・log(k1a/k1b) …(16)
G=αC(λ)+ΔR …(17)
【0042】
このような手順によれば、光伝送路の片側からのみのOTDR測定方法により、規格値を超える異常損失が生じている接続点を発見するなどの実用的目的は十分に達成可能である。
【0043】
これまで説明してきたレーリ散乱αR、OH基吸収αOHおよび接続損失αCの3つの各損失要因に関する評価方法を評価目的に応じて組み合わせることとすれば、光伝送路の片側からのOTDR測定のみにより、相互に接続された2本の光ファイバの損失特性を実用上充分な精度で評価することが可能となる。なお、光伝送路の両側からのOTDR測定を実行することとすれば、さらにその評価精度を高めることが可能となることはいうまでもない。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複数のシングルモード光ファイバが接続されて構成されている光伝送路に0.9〜1.2μmの波長範囲内にある1つの波長λxを伝送させ、得られたOTDR測定波形の傾きT(λx)と予め定められた補正係数Z1とを用いてレーリ散乱係数k1とレーリ散乱損失αR(λ)を算出したり、1.2〜1.4μmの波長範囲内にある2つの異なる波長λyおよびλzを伝送させ、得られたOTDR測定波形の傾きT(λy)およびT(λz)ならびに予め定められた補正係数Z2を用いてレーリ散乱係数k1およびレーリ散乱損失αR(λ)ならびにOH基吸収損失αOH(λ)を算出したり、あるいは、1.0〜1.4μmの波長範囲内にある1つの波長λxを選択して互いに接続されている光ファイバa側から光ファイバb側へのOTDR測定により得られたOTDR測定波形中に現れる2つの傾きTa(λx)およびTb(λx)ならびに予め定められた補正係数Z1を用いて光ファイバaおよびb各々のレーリ散乱係数k1aおよびk1bを算出し、これをもとに接続損失αC(λ)を求めることとした。
【0045】
このような手法を採用することにより、複数のシングルモード光ファイバを接続して構成された光ファイバ伝送路の任意の区間におけるレーリ散乱αR、OH基吸収αOHおよび接続損失αCの3つの各損失要因を片側からのOTDR測定のみにより高精度に評価することを可能とする方法を提供することが可能となり、両側からのOTDR測定を実行することによりさらにその精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 OTDRにより得られた後方散乱光の受光パワーと区間距離との関係を説明するための図である。
【図2】シングルモード光ファイバの損失波長特性を説明するための図である。
【図3】 OTDR測定による接続損失αC(λ)の決定方法を説明するための図である。
Claims (5)
- 複数のシングルモード光ファイバが接続されて構成されている光伝送路のレーリ散乱損失特性の評価方法であって、
0.9〜1.2μmの波長範囲内にある1つの波長λxを選択してOTDR測定を実行する第1のステップと、
前記第1のステップにより得られたOTDR測定波形の傾きT(λx)と予め定められた補正係数Z1とを基に次式(a)によりレーリ散乱係数k1を求め、次式(b)によりレーリ散乱損失αR(λ)を算出する第2のステップと、
を備えていることを特徴とする光ファイバ伝送路の損失特性評価方法。
T(λx)−Z1=k1/λx 4 …(a)
αR(λ)=k1/λ4 …(b) - 複数のシングルモード光ファイバが接続されて構成されている光伝送路のレーリ散乱損失特性およびOH基吸収損失特性の評価方法であって、
1.2〜1.4μmの波長範囲内にある2つの異なる波長λyおよびλzを選択して各々の波長の光を用いたOTDR測定を実行する第1のステップと、
前記第1のステップにより得られたOTDR測定波形の傾きT(λy)およびT(λz)ならびに予め定められた補正係数Z2とを基に次式(c)および(d)を満足するレーリ散乱係数k1およびレーリ散乱損失αR(λ)ならびにOH基吸収損失αOH(λ)を算出する第2のステップと、
を備えていることを特徴とする光ファイバ伝送路の損失特性評価方法。
- 少なくとも2本のシングルモード光ファイバ(aおよびb)が接続されて構成されている光伝送路の接続損失特性の評価方法であって、
0.9〜1.4μmの波長範囲内にある1つの波長λxを選択し、前記光ファイバa側からb側へのOTDR測定を実行する第1のステップと、
前記第1のステップにより得られたOTDR測定波形中に現れる2つの傾きTa(λx)およびTb(λx)ならびに予め定められた補正係数Z1を用いて次式(a1)および(a2)により前記光ファイバaおよびb各々のレーリ散乱係数k1aおよびk1bを算出する第2のステップと、
前記第2のステップで得られたレーリ散乱係数k1aおよびk1bから次式(e)により後方散乱光変動量△Rを求める第3のステップと、
前記第1のステップにより得られたOTDR測定波形中の段差Gと前記第3のステップで得られた後方散乱光変動量△Rとを用いて次式(f)を満足する接続損失αC(λ)を求める第4のステップと、
を備えていることを特徴とする光ファイバ伝送路の損失特性評価方法。
Ta(λx)−Z1=k1a/λx 4 …(a1)
Tb(λx)−Z1=k1b/λx 4 …(a2)
ΔR=10・log(k1a/k1b) …(e)
G=αC(λ)+ΔR …(f) - 請求項2または3に記載の方法によりレーリ散乱係数k1およびレーリ散乱損失αR(λ)ならびにOH基吸収損失αOH(λ)を決定するステップと、
請求項4に記載の方法により接続損失αC(λ)を決定するステップと、
を備えていることを特徴とする光ファイバ伝送路の損失特性評価方法。
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