JP4108464B2 - 樹脂製品とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた接着性を有し、かつ、耐候性、耐薬品性、耐衝撃性などの物性も良好な被接着部材用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム強化スチレン系樹脂の代表として知られるABS樹脂は、耐衝撃性と剛性が良好で、そのバランスも優れていることから、サニタリー、浴室などの住宅・家庭製品や、車両、建材などに使用される各種部品に幅広く用いられている。このようなABS樹脂からなる各種部品にあっては、その接合部などに気密性や防水性が要求される際には、シリコーン系シーリング材を使用することが一般に行われている。
【0003】
シリコーン系シーリング材としては、大別して、縮合型の硬化機構を利用し、チューブやカートリッジ等の密封容器に入れられ、使用時に容器から出すことにより大気中の水分と反応して硬化が始まる1成分型シーリング材と、主剤と硬化剤を使用前に混合し硬化反応を発生させる2成分型シーリング材とがあるが、ハンドリング性、コスト面などの理由から、市場では1成分型のシーリング材が多く使用されている。
【0004】
ところが、シリコーン系シーリング材によって水密・気密処理がなされる必要のある樹脂部品は、薬品などに晒される状況下で使用される場合や、さらには屋外で使用される場合が多く、耐薬品性、耐候性が不十分なABS樹脂では部品が割れたり、変色したりするという問題があった。
そのため、ABS樹脂のかわりに、アクリル酸エステル系ゴムにアクリロニトリル、スチレンをグラフト共重合してなるAAS樹脂や、エチレン−プロピレン系ゴムにアクリロニトリル、スチレンをグラフト共重合してなるAES樹脂を使用する方法が検討されている(例えば特許文献1および2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平50−33246号公報
【特許文献2】
特公平52−33656号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、AAS樹脂やAES樹脂にシリコーン系シーリング材を使用する場合、シリコーン系シーリング材の種類によって、AAS樹脂やAES樹脂とシーリング材との接着性が大きく異なることがこれまでの検討から明らかになっている。
1成分型シーリング材は、上記したように、大気中の水分と反応することで硬化し、シーリング材中の加水分解性官能基が水分と接触することによって、加水分解縮合反応を起こして架橋する。加水分解官能基としては、メチルエチルケトオキシム基(脱オキシム型)、アセトキシ基(脱酢酸型)、アルコキシ基(脱アルコール型)、イソプロペノキシ基(脱アセトン型)などがあり、この加水分解官能基の違いによって硬化形式が異なっているが、これらのなかでは、脱アルコール型のシーリング材とAAS樹脂およびAES樹脂との接着性は良好であり、一方、脱オキシム型のシリコーンシーリング材(以下、脱オキシム型シーリング材という。)とAAS樹脂およびAES樹脂との接着性は不良であることがわかっている。
【0007】
ところが、国内においては、これらシーリング材のなかでは、低コスト、低臭気性であることから、脱オキシム型シーリング材が多く流通していて、このような脱オキシム型シーリング材と良好に接着可能な樹脂の開発が求められている。
【0008】
AAS樹脂やAES樹脂と、脱オキシム型シーリング材との接着性を改良するためには、AAS樹脂やAES樹脂中のゴム量の増加、ゴム粒子の肥大化、グラフト成分がグラフトせずに単なる共重合体となったビニル系共重合体中のシアン化ビニル単量体の含有量を下げる、吸水ポリマーを添加する、滑材の添加量を削減するなどの手段が考えられる。ところが、このような手段を単に講じただけでは、剛性、耐衝撃性、耐薬品性のバランス低下や成形品とした際にその表面の外観が低下するという問題があった。また、成形品の表面をイソプロピルアルコールやエタノールなどの溶剤で脱脂処理する方法もあるが、作業が煩雑であり、工程数も増えるという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、剛性、耐衝撃性、耐薬品性、耐候性、成形加工性およびこれらの物性バランスが優れ、かつ、脱オキシム型シーリング材との接着性が良好な被接着部材用熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の粒径であって特定の構造を有するグラフト共重合体と、特定のビニル系共重合体とを樹脂成分として含有する熱可塑性樹脂組成物であって、特に、樹脂成分のアセトン可溶分中におけるシアン化ビニル化合物量と、樹脂成分のアセトン不溶分中のシアン化ビニル化合物量とが特定の関係にあり、しかも、アセトン可溶分におけるシアン化ビニル化合物量が特定量である熱可塑性樹脂組成物が、剛性、衝撃性、耐薬品性、耐候性、成形加工性およびこれらの物性バランスが優れ、従来にはない優れた脱オキシム型シーリング材との接着性を発現することを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明の樹脂製品は、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムに、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物とからなる混合物をグラフト重合して得られた質量平均粒子径が0.08〜0.2μmのグラフト共重合体(I)と、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を構成単位とするビニル系共重合体(II)とからなる樹脂成分を含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記樹脂成分を100質量部としたときに、該樹脂成分中における前記グラフト共重合体(I)の含有量が35〜50質量部で、前記樹脂成分は、アセトン可溶分とアセトン不溶分からなり、下記式(1)および(2)で示されるF値およびG値が、下記式(3)および(4)を満足する被接着部材用熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に、シーリング材が接着したものである。
F値(質量%)=アセトン可溶分中のシアン化ビニル化合物質量/アセトン可溶分質量×100・・・(1)
G値(質量%)=アセトン不溶分中のシアン化ビニル化合物質量/[アセトン不溶分質量−(アセトン不溶分中のポリオルガノシロキサン質量+アセトン不溶分中のアルキル(メタ)アクリレートゴム質量)]・・・(2)
5≦F値−G値≦25・・・(3)
30≦F値≦50・・・(4)
本発明の樹脂製品の製造方法は、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムに、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物とからなる混合物をグラフト重合して得られた質量平均粒子径が0.08〜0.2μmのグラフト共重合体(I)と、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を構成単位とするビニル系共重合体(II)とからなる樹脂成分を含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記樹脂成分を100質量部としたときに、該樹脂成分中における前記グラフト共重合体(I)の含有量が35〜50質量部で、前記樹脂成分は、アセトン可溶分とアセトン不溶分からなり、上記式(1)および(2)で示されるF値およびG値が、上記式(3)および(4)を満足する被接着部材用熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に、シーリング材を接着する方法である。
前記シーリング材が脱オキシム型シーリング材であることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の被接着部材用熱可塑性樹脂組成物(以下、熱可塑性樹脂組成物という。)は、グラフト共重合体(I)とビニル系共重合体(II)とからなる樹脂成分を含有し、例えば脱オキシム型シーリング材などの接着性材料が接着される用途、すなわち、被接着部材に使用されるものである。
[グラフト共重合体(I)]
グラフト共重合体(I)は、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムに、芳香族ビニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体をグラフト重合することにより得られるものである。
【0013】
ここで、複合ゴムを構成するポリオルガノシロキサンは特に限定されるものではないが、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンであることが好ましい。より好ましくは、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%と、ジメチルシロキサン単位97〜99.7モル%とからなり、かつ、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子に対し、1モル%以下であるポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0014】
ジメチルシロキサンとしては、3員環以上の環状ジメチルシロキサンが挙げられ、3〜6員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、これは単独で、または2種以上混合して使用できる。
【0015】
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつジメチルシロキサン化合物とシロキサン結合を介して結合し得るものであり、ジメチルシロキサン化合物との反応性を考慮するとビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン及びδ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシランなどのメタクリロイルオキシシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどのビニルシロキサン、p−ビニルフエニルジメトキシメチルシラン、さらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシロキサンが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、単独で、または2種以上混合して使用できる。
【0016】
ここでビニル重合性官能基含有シロキサン単位が0.3モル%未満では、アルキル(メタ)アクリレートゴムとの複合化が不十分となりやすく、熱可塑性樹脂組成物の成形品表面にポリオルガノシロキサンのブリードアウトによると思われる外観不良が発生する場合があり、3モル%を超えるか、あるいは3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子に対し、1モル%を超えると、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する場合がある。
さらに、グラフト共重合体(I)を含む熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と外観のバランスを考えると、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位は0.5〜2モル%であることが好ましく、0.5〜1モル%であることがより好ましい。
【0017】
また、ここで複合ゴム中のポリオルガノシロキサンの量は1〜20質量%であることが好ましい。1質量%未満ではポリオルガノシロキサンの量が少ないために複合ゴム自体の耐衝撃性が低くなりやすく、20質量%を超えるとグラフト共重合体(I)を含む熱可塑性樹脂組成物の顔料着色性が低下する傾向を示す。グラフト共重合体(I)を含む熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、複合ゴム中のポリオルガノシロキサンの量は好ましくは6〜20質量%、より好ましくは10〜20質量%である。
【0018】
このようなポリオルガノシロキサンの製法としては、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物、または、さらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含む混合物を乳化剤と水によって乳化させたラテックスを、高速回転によるせん断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザーなどを使用して微粒子化した後、酸触媒を用いて高温化で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和する方法が挙げられる。重合時に用いられる酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水とともに浸合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法などがあるが、ポリオルガノシロキサンの粒子径の制御のしやすさを考慮すると、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
【0019】
ここで使用されるシロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフエニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシランなどが用いられる。
また、乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれた乳化剤が使用される。特にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これらの乳化剤は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜5質量部程度の範囲で使用される。使用量が0.05質量部未満であると分散状態が不安定となる傾向があり、一方、使用量が5質量部を超えると、乳化剤に起因する熱可塑性樹脂組成物成形品の着色が増加する傾向がある。
【0020】
ポリオルガノシロキサンの粒子の大きさは特に限定されないが、グラフト共重合体(I)を含む熱可塑性樹脂組成物の顔料着色性を考慮すると、質量平均粒子径が0.2μm以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。
【0021】
上述したポリオルガノシロキサンとともに複合ゴムを構成するアルキル(メタ)アクリレートゴムは、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとからなるものであって、複合ゴムは、ポリオルガノシロキサンラテックスに、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとからなるアルキル(メタ)アクリレート成分を添加、含浸させた後、重合させることによって製造できる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレート;ヘキシルメタアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ラウリルメタアクリレートなどのアクリルメタアクリレートが挙げられ、特にn−ブチルアクリレートの使用が好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、1種単独で、または2種以上混合して用いられる。
【0022】
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。また、多官能性アルキル(メタ)アクリレートの使用量は、アルキル(メタ)アクリレート成分中0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜5質量%、より好ましくは0.2〜1質量%である。多官能性アルキル(メタ)アクリレートは1種単独で、または2種以上混合して用いられる。
【0023】
複合ゴムは、上述したように、ポリオルガノシロキサンラテックスに、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとからなるアルキル(メタ)アクリレート成分を添加、含浸させた後、重合させることによって製造でき、具体的には、ポリオルガノシロキサンラテックス中へアルキル(メタ)アクリレート成分を添加し、通常のラジカル重合開始剤を作用させ重合させることによって製造できる。
アルキル(メタ)アクリレート成分を添加する方法としては、ポリオルガノシロキサンラテックスと一括で混合する方法と、ポリオルガノシロキサンラテックス中に一定速度で滴下する方法があるが、得られるグラフト共重合体(I)を含む熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を考慮すると、ポリオルガノシロキサンラテックスと一括で混合する方法が好ましい。また、重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤、還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩、ロンガリット・ヒドロパーオキサイトを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0024】
このようにして得られた複合ゴムにグラフト重合するグラフト成分は、芳香族ビニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体である。グラフト成分の量は特に限定されるものではないが、グラフト共重合体(I)全体を100質量%とした場合、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%、さらに好ましくは50〜60質量%である。50質量%未満ではグラフト共重合体(I)を含む熱可塑性樹脂組成物の成形品の顔料着色性が低下する傾向を示し、一方、80質量%を超えると複合ゴムの量が低くなるため耐衝撃性が低くなり、また、脱オキシム型シーリング材との接着性も低下しやすくなる。
【0025】
グラフト成分に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられ、メタクリル酸エステルとしては、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどが挙げられ、アクリル酸エステルとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどが挙げられ、シアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。これらのうち、後述するビニル系共重合体(II)との相溶性を考慮すると、グラフト成分として、スチレンとアクリロニトリルの混合物を使用することが好ましい。
【0026】
グラフト共重合体(I)は、複合ゴムのラテックスにグラフト成分、すなわち、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた1種以上を加え、ラジカル重合技術によりグラフト重合を行った後、この重合ラテックスを、カルシウム塩の水溶液中に投入し、塩析させることでグラフト共重合体(I)を回収できる。ここで使用されるカルシウム塩としては、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウムなどの水溶性のカルシウム塩が挙げられ、これらのうちでは凝固性および経済性から、塩化カルシウム、酢酸カルシウムが好ましい。
【0027】
こうして製造されるグラフト共重合体(I)の質量平均粒子径は、これを含有する熱可塑性樹脂組成物と脱オキシム型シーリング材との接着性に大きく影響し、特に0.08〜0.2μmの範囲であると優れた接着性が発現する。さらに、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性とを考慮すると、質量平均粒子径が0.10〜0.15μmであることが好ましい。平均粒子径が0.08μm未満では耐衝撃性が不十分であり、0.2μmを超えると脱オキシム型シーリング材との接着性が低下する。
グラフト共重合体(I)の質量平均粒子径をこのような範囲に制御する方法としては、ポリオルガノシロキサンの粒子径の制御、ポリオルガノシロキサンとアクリル(メタ)アクリレートとからなる複合ゴムの粒子径の制御、ポリオルガノシロキサンとアクリル(メタ)アクリレートからなる複合ゴムに対するグラフト成分の比率を変更する、乳化剤や触媒の種類、量を変更するなどが挙げられる。
【0028】
[ビニル系共重合体(II)]
熱可塑性樹脂組成物が樹脂成分として含有するビニル系共重合体(II)は、芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物とを構成単位として少なくとも含有し、必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体をも構成単位として有するものであって、これらの化合物を、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、これらを組み合わせた公知の重合方法で共重合して得られる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、N−フェニルマレイミドなどが挙げられ、これらを単独で、または2種以上混合して使用できる。シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、これらを単独で、または2種以上混合して使用できる。
また、これらと共重合可能な他の単量体としては、先にグラフト成分として例示したものなどを適宜使用できる。
ビニル系共重合体(II)の質量平均分子量は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂組成物の衝撃性と流動性のバランスを考慮すると、50000〜200000が好ましくであり、より好ましくは60000〜110000である。
【0029】
[熱可塑性樹脂組成物]
以上説明したグラフト共重合体(I)とビニル系共重合体(II)とからなる樹脂成分と、必要に応じて添加される後述の添加剤とを、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸またはニ軸押出し機の溶融混練機などを用いて混合することにより、均一な熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
熱可塑性樹脂組成物中における、グラフト共重合体(I)とビニル系共重合体(II)の配合比は、これらの合計、すなわち樹脂成分を100質量部とした場合、グラフト共重合体(I)が30〜70質量部で、ビニル系共重合体(II)が70〜30質量部である。また、好ましくは、グラフト共重合体(I)が35〜50質量部で、ビニル系共重合体(II)が65〜50質量部である。グラフト共重合体(I)とビニル系共重合体(II)の配合比がこのような範囲であると、耐衝撃性、剛性、耐薬品性、耐候性、成形加工性およびこれらの物性バランスと、脱オキシム型シーリング材との接着性とがともに優れる。グラフト共重合体(I)が30質量部未満では、耐衝撃性、耐薬品性が低下するとともに、脱オキシム系シーリング材との接着性が低下する。一方、70質量部を超えると、剛性、溶融時の流動性が悪化し成形加工性が低下する。
【0031】
さらに、この熱可塑性樹脂組成物の樹脂成分は、アセトンと混合した場合にアセトンに溶解するアセトン可溶分と、アセトンに溶解しないアセトン不溶分とからなり、下記式(1)および(2)により定義されるF値およびG値が、下記式(3)および(4)を満足する。
すなわち、F値とは、樹脂成分のアセトン可溶分全体を100質量%とした際、これに占めるシアン化ビニル化合物の質量であって、単位は質量%である。G値とは、樹脂成分のアセトン不溶分全体の質量からこれに占めるポリオルガノシロキサン質量とアルキル(メタ)アクリレートゴム質量と引いて得られた質量を100質量%とした際、これに占めるシアン化ビニル化合物の質量であって、単位は質量%である。
【0032】
F値(質量%)=アセトン可溶分中のシアン化ビニル化合物質量/アセトン可溶分質量×100・・・(1)
G値(質量%)=アセトン不溶分中のシアン化ビニル化合物質量/[アセトン不溶分質量−(アセトン不溶分中のポリオルガノシロキサン質量+アセトン不溶分中のアルキル(メタ)アクリレートゴム質量)]・・・(2)
5≦F値−G値≦25・・・(3)
30≦F値≦50・・・(4)
【0033】
なお、ここでアセトン可溶分とは主にビニル系共重合体(II)であり、アセトン不溶分とは主にグラフト共重合体(I)である。
また、ここでF値およびG値を求める方法としては、ガスクロマトグラフィ(島津製作所等)等による組成分析や、C.H.N.Oコーダ(Yanaco製等)等による各元素の定量分析を行い、得られた分析値を上記式(1)および(2)に代入することにより算出できる。
具体的には、例えば、熱可塑性樹脂組成物の樹脂成分をアセトンに溶解させ、室温で24時間放置後、遠心分離機を用いてアセトン可溶分(溶液)とアセトン不溶分(固形分)とに分離する。ついで、アセトン可溶分の溶液に、メタノールを加えることによって、アセトン可溶分を固形分として得る。そして、アセトン不溶分とアセトン可溶分とをそれぞれ真空乾燥機で乾燥するなどして、秤量することにより、アセトン可溶分質量とアセトン不溶分質量とを求めることができる。
【0034】
F値については、まず、アセトン可溶分をC.H.N.Oコーダなどで分析して窒素含有量(N値)を求める。ついで、N値を換算することによりシアン化ビニル化合物量を算出してアセトン可溶分中のシアン化ビニル化合物質量を求め、式(1)にこの値を代入することにより求められる。
G値については、まず、アセトン不溶分をルツボなどに入れて600℃程度まで加熱し、その際の残さ(灰分)をシリカとすることにより、アセトン不溶分中のケイ素量を求める。そして、これを換算することによりアセトン不溶分中のポリオルガノシロキサン質量を求める。なお、残さ(灰分)についてはX線分析などを行って、残さがシリカであることを確認しておく。一方、アセトン不溶分を熱分解ガスクロマトグラフィなどで分析して、アセトン不溶分中の単量体単位分析を行い、その中のアルキル(メタ)アクリレートゴム質量を求める。また、アセトン不溶分をC.H.N.Oコーダで分析して得られた窒素含有量(N値)を換算して、シアン化ビニル化合物量を求める。以上、得られたアセトン不溶分中のポリオルガノシロキサン質量、アセトン不溶分中のアルキル(メタ)アクリレートゴム質量、アセトン不溶分中のシアン化ビニル化合物量をそれぞれ式(2)に代入することによりG値が得られる。
【0035】
F値とG値とが式(3)を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、耐薬品性および脱オキシム型シーリング材との接着性が非常にバランス良く優れる。さらには、式(5)を満足することが好ましい。
5≦F値−G値≦15・・・(5)
F値−G値が5(質量%)未満では、熱可塑性樹脂組成物の耐薬品性、耐候性が低下する傾向があり、25(質量%)を超えると、耐衝撃性、流動性、熱安定性が低下したり、脱オキシム型シーリング材との接着性が低下したりする傾向がある。
【0036】
また、F値が式(4)を満足すると、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、耐薬品性、脱オキシム型シーリング材との接着性がいずれもバランスよく優れ、熱安定性などの成形加工性も良好となる。さらには、式(6)を満足することが好ましい。
30≦F値≦40・・・(6)
F値が30(質量%)未満では、熱可塑性樹脂組成物の耐薬品性、耐候性が低下する傾向があり、40(質量%)を超えると、耐衝撃性や熱安定性が低下し、かつ、脱オキシム型シーリング材との接着性が低下する傾向がある。
【0037】
また、熱可塑性樹脂組成物は、脱オキシム型シーリング材との接着性に影響を与えない限りは、グラフト共重合体(I)およびビニル系共重合体(II)からなる樹脂成分以外に、必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、無機系または有機系着色剤などの各種添加剤を含有してもよい。また、特に滑剤としては、成形時に加熱した場合であってもブリードしにくいものが好ましく、例えばポリエチレンWAXなどが挙げられる。
【0038】
以上説明したように、このような熱可塑性樹脂組成物は、特定の粒径であって特定の構造を有するグラフト共重合体と、特定のビニル系共重合体とからなる樹脂成分を含有し、さらに、樹脂成分のアセトン可溶分中におけるシアン化ビニル化合物量と、樹脂成分のアセトン不溶分中のシアン化ビニル化合物量とが特定の関係にあり、かつ、アセトン可溶分におけるシアン化ビニル化合物量が特定量であるので、剛性、耐衝撃性、耐薬品性、耐候性、成形加工性およびこれらの物性バランスが非常に優れるとともに、従来にはない優れた脱オキシム型シーリング材との接着性をも発現する。
よって、このような熱可塑性樹脂組成物は、脱オキシム型シーリング材が接着され、水密、気密処理がなされ、しかも屋外で使用される成形品への使用に適している。このような成形品としては、住宅用サッシやドア等の窓枠カバーや門扉、フェンス、カーポートの樹脂部品のジョイントあるいは洗剤などの接触が極めて高いバスルームや洗面所まわりの収納キャビネット、化粧棚、カウンター製品などの各種成形品が挙げられる。このような成形品はそのままで、またはこの成形品に脱オキシム型などのシーリング材が接着した樹脂製品として、流通し、使用される。
【0039】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は質量部を示し、「%」は質量%を示す。
【0040】
(参考例1) ポリオルガノシロキサン(L−1)ラテックスの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリオイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間攪拌した後、ホモジナイザーに300kg/cm2の圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
【0041】
一方、試薬注入器、冷却菅、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、先に得られた予備混合オルガノシロキサンラテックスの全量を4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を苛性ソーダ水溶液で中和した。
【0042】
このようにして得られたラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は0.05μmであった。
【0043】
(参考例2) ポリオルガノシロキサン(L−2)ラテックスの製造
オクタメチルテトラシクロシロキサン97.5部、γ−メタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部およびエチルオルソシリケート2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部およびドデシルベンゼンスルホン酸1部を溶解した蒸留水200部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間攪拌した後にホモジナイザー300kg/cm2の圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
この混合液を冷却管、ジャケット加熱器および攪拌装置を備えた反応器内に移し、攪拌混合しながら85℃で5時間過熱した後に水酸化ナトリウム水溶液でこのラテックスをpH7に中和した。
【0044】
このようにして得られたラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、29.0%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの平均粒子径は0.09μmであった。
【0045】
(製造例1) グラフト共重合体(A−1)の製造
試薬注入器、冷却菅、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に参考例1で製造したポリオルガノシロキサンラテックス56.5部、エマールNC−35(ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテルサルフエート:花王製)0.2部を採取し、蒸留水148.5部を添加混合した後、ブチルアクリレート40部、アリルメタクリレート0.3部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.1部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.18部の混合物を添加した。
【0046】
この反応器に窒素気流を通じることによって、窒素置換を行ない、60℃まで昇温し、液温が安定した後に硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.0003部及びロンガリット0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴムのラテックスを得た後に、ロンガリット0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加した。
次いでアクリロニトリル7.5部、スチレン22.5部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.14部の混合液を2時間滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後に、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム塩0.0006部およびロンガリット0.23部およびエマールNC−35 0.2部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル5.0部、スチレン15.0部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.10部の混合液を2時間滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後に、ラテムルASK(アルケニルコハク酸ジカリウム塩:花王製)を0.3部添加し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとからなる複合ゴムにアクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させた重合ラテックスを得た。このラテックスを凝固塩析した後に、洗浄、脱水、乾燥を行ないグラフト共重合体(A−1)を得た。
動的光散乱法によるラテックス中のグラフト共重合体の質量平均粒子径は0.12μmであった。
【0047】
(製造例2) グラフト共重合体(A−2)の製造
製造例1のグラフト共重合体(A−1)の製造手順において、用いるポリオルガノシロキサンラテックスをL−2に変更するとともに、その仕込み量を34.5部に変更し、さらに反応器に仕込む蒸留水の量を170.5部に変更した以外は、同様の方法でグラフト共重合体(A−2)を得た。動的光散乱法によるラテックス中のグラフト共重合体の質量平均粒子径は0.31μmであった。
【0048】
(製造例3) ビニル系共重合体(B−1)の製造
窒素置換した反応器に、水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.002部、ポリビニルアルコール0.5部、アゾイソブチロニトリル0.3部、ターシャリ−ドデシルメルカプタン(t−DM)0.5部と、アクリロニトリル15部、スチレン85部からなる単量体混合物を加え、開始温度60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、4時間反応後、重合物を取り出した。転化率は96%で、得られたビニル共重合体(B−1)の質量平均分子量は120000であった。
【0049】
(製造例4) ビニル系共重合体(B−2)の製造
アクリロニトリル23部、スチレン77部からなる単量体混合物を使用したこと以外は、製造例3と同様にして重合を行った。転化率は98%で、得られたビニル系共重合体(B−2)の質量平均分子量は98000であった。
【0050】
(製造例5) ビニル系共重合体(B−3)の製造
窒素置換した反応器に水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.002部、ポリビニルアルコール0.5部、アゾイソブチロニトリル0.3部、t−DM0.75部と、アクリロニトリル32部、スチレン68部からなる単量体混合物を加え、開始温度60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、4時間反応後、重合物を取り出した。転化率は96%で、得られたビニル系共重合体(B−3)の質量平均分子量は75000であった。
【0051】
(製造例6) ビニル系共重合体(B−4)の製造
アクリロニトリル35部、スチレン65部からなる単量体混合物を使用したこと以外は、製造例5と同様にして重合を行った。転化率は98%で、得られたビニル系共重合体(B−4)の質量平均分子量は85000であった。
【0052】
(製造例7) ビニル系共重合体(B−5)の製造
アクリロニトリル55部、スチレン45部からなる単量体混合物を使用したこと以外は、製造例−5と同様にして重合を行った。転化率は95%で、得られたビニル系共重合体(B−5)の質量平均分子量は150000であった。
【0053】
なお、上記各例における各種測定方法を以下に示す。
1) ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径およびグラフト共重合体の質量平均粒子径は、大塚電子(株)製DLS−700型を用いた動的光散乱法にて求めた。
2) ビニル系共重合体(II)の質量平均分子量は、東ソー(株)製G.P.G(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)を用いた標準ポリスチレン換算法にて求めた。
【0054】
(実施例1〜5)
表1に示す部数のグラフト共重合体およびビニル系共重合体に、滑剤を0.5部(ポリエチレンWAX)、光安定剤を0.4部、紫外線吸収剤を0.1部添加し、バンバリーミキサーにて均一に混練した後、ペレタイザーによりペレットを得た。得られたペレットを2oz射出成形機(東芝製)を用い250℃で成形し、必要なテストピースを作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1〜7)
グラフト共重合体およびビニル系共重合体の部数を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてテストピースを作製し同様に評価した。結果を表1に示す。
【0056】
[各種評価方法]
1)シアン化ビニル含有量(F値(質量%)およびG値(質量%))の測定方法各実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物をクロロホルムと混合し、メタノールにて再沈・濾過(添加剤の除去)し、得られた不溶分をアセトンに溶解させ、室温で24時間放置後、30000回転/分の条件の遠心分離機でアセトン可溶分とアセトン不溶分とに分離した。ついで、アセトン可溶分が溶解したアセトン溶液にはメタノールを加えて再沈、濾過し、アセトン可溶分を固形分として得た。そして、アセトン可溶分とアセトン不溶分とを真空乾燥機で乾燥し、秤量することにより、アセトン可溶分質量とアセトン不溶分質量とを求めた。その後、アセトン可溶分をC.H.N.Oコーダ(Yanako社製:CHN CORDER MT−3)を用いて元素分析して窒素含有量(N値)を求める。ついで、N値を換算することによりシアン化ビニル量を算出して、アセトン可溶物中のシアン化ビニル化合物質量を求め、式(1)にこの値を代入することによりF値(質量%)を算出した。
G値については、まず、アセトン不溶分約1gをルツボに入れて、約600℃の温度雰囲気下に晒して灰分量からケイ素含有量を求めた。ここで、この灰分をX線分析で分析することによってアセトン不溶分中のケイ素の含有を確認した。求めたケイ素含有量をジメチルシロキサン構造に換算することによりアセトン不溶分中のポリオルガノシロキサン質量を求めた。
一方、アセトン不溶分を熱分解ガスクロマトグラフィ(島津製作所製:分解温度590℃)で分析して、アセトン不溶分中の単量体単位分析を行い、その中のアルキル(メタ)アクリレートゴム質量を求めた。また、アセトン不溶分をC.H.N.Oコーダ(Yanako社製:CHN CORDER MT−3)で分析して得られた窒素含有量(N値)から換算してシアン化ビニル化合物量を求めた。以上、得られたアセトン不溶分中のポリオルガノシロキサン質量、アセトン不溶分中のアルキル(メタ)アクリレートゴム質量、アセトン不溶分中のシアン化ビニル化合物量をそれぞれ式(2)に代入することによりG値を求めた。
【0057】
2) シャルピー衝撃強度:ISO 179、厚み4mm(常温)、単位(kJ/m2)
3) 曲げ弾性率:ISO 178、厚み4mm、単位(MPa)
4) メルトボリュームレート:ISO 1133(220℃/98N荷重)、単位(cm3/10min.)
5) 耐候変色
促進試験機としてサンシャインウェザオメーター(スガ試験器(株)製:サンシャイン・スーパーロングライフ・ウェザオメーターWEL−6XS−HCH−B)を用いて、63±3℃、スプレー有りで耐候試験を1000時間行ない、照射後の色調変化(△E)を測定した。
6) 耐薬品性(ベンディングフォーム法)
0.2〜1.6%歪率の定歪治具にテストピースをセットし、その上にマジックリン(花王製)を滴下する。23℃―50%R.H.の雰囲気中に48時間放置した後に下記の判定基準に従い、マジックリンによる材料の限界歪値(%)を割り出した。
7) シーリング材との接着性試験
各熱可塑性樹脂組成物を射出成形して得られた2.5mm厚平板成形品表面に、脱オキシム型シーリング材(シーラント45 D−ブラウン 信越化学製)を塗布し、23℃−50%R.H.の雰囲気中に14日間養生し硬化した後に、該表面に対して180°の方向にシーリング材を手で引張った。この際、接着(凝集破壊)した状態であるものを4点、僅かに剥離するものを3点、50%ほど剥離するものを2点、僅かに接着するものを1点、剥離するものを0点と評価した。これを各熱可塑性樹脂組成物に対してそれぞれ5回ずつ行った結果と、5回の合計点を表にした。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1および2から明らかなように、各実施例で得られた熱可塑性樹脂組成物は、脱オキシム型シーリング材との接着性が優れるとともに、耐衝撃性、流動性、剛性、耐薬品性、耐候性がいずれもバランスよく優れていた。一方、比較例のものは、これらのうち少なくとも1つが不良であった。例えば、比較例4は、接着性は良好であったが、曲げ弾性率が低く、また、流動性も悪いため、成形品として使用できるようなものを形成できなかった。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、このような熱可塑性樹脂組成物は、特定の粒径であって特定の構造を有するグラフト共重合体と、特定のビニル系共重合体とからなる樹脂成分を含有し、また、樹脂成分のアセトン可溶分中におけるシアン化ビニル化合物量と、アセトン不溶分中のシアン化ビニル化合物量とが特定の関係にあり、さらに、アセトン可溶分におけるシアン化ビニル化合物量が特定量であるので、剛性、衝撃性、耐薬品性、耐候性、成形加工性およびこれらの物性バランスが優れ、従来にはない優れた脱オキシム型シーリング材との接着性を発現する。よって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、脱オキシム型シーリング材で水密、気密処理される必要があり、かつ、耐薬品性、耐候性などを要求される樹脂製品用の材料として好適である。
Claims (2)
- ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムに、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物とからなる混合物をグラフト重合して得られた質量平均粒子径が0.08〜0.2μmのグラフト共重合体(I)と、
芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を構成単位とするビニル系共重合体(II)とからなる樹脂成分を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記樹脂成分を100質量部としたときに、該樹脂成分中における前記グラフト共重合体(I)の含有量が35〜50質量部で、
前記樹脂成分は、アセトン可溶分とアセトン不溶分からなり、下記式(1)および(2)で示されるF値およびG値が、下記式(3)および(4)を満足する被接着部材用熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に、脱オキシム型シリコーン系シーリング材が接着した樹脂製品。
F値(質量%)=アセトン可溶分中のシアン化ビニル化合物質量/アセトン可溶分質量×100・・・(1)
G値(質量%)=アセトン不溶分中のシアン化ビニル化合物質量/[アセトン不溶分質量−(アセトン不溶分中のポリオルガノシロキサン質量+アセトン不溶分中のアルキル(メタ)アクリレートゴム質量)]・・・(2)
5≦F値−G値≦25・・・(3)
30≦F値≦50・・・(4) - ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムに、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物とからなる混合物をグラフト重合して得られた質量平均粒子径が0.08〜0.2μmのグラフト共重合体(I)と、
芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を構成単位とするビニル系共重合体(II)とからなる樹脂成分を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記樹脂成分を100質量部としたときに、該樹脂成分中における前記グラフト共重合体(I)の含有量が35〜50質量部で、
前記樹脂成分は、アセトン可溶分とアセトン不溶分からなり、下記式(1)および(2)で示されるF値およびG値が、下記式(3)および(4)を満足する被接着部材用熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に、脱オキシム型シリコーン系シーリング材を接着する樹脂製品の製造方法。
F値(質量%)=アセトン可溶分中のシアン化ビニル化合物質量/アセトン可溶分質量×100・・・(1)
G値(質量%)=アセトン不溶分中のシアン化ビニル化合物質量/[アセトン不溶分質量−(アセトン不溶分中のポリオルガノシロキサン質量+アセトン不溶分中のアルキル(メタ)アクリレートゴム質量)]・・・(2)
5≦F値−G値≦25・・・(3)
30≦F値≦50・・・(4)
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