JP4108311B2 - 1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体の製造法 - Google Patents

1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体の製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、β−ケトエステル誘導体を出発原料とする1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体の製造法に関する。前記1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体は医薬中間体などとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体を製造する方法として、例えば、特開平11−240867号公報には、アセト酢酸エチルを炭酸カリウム存在下、1,2−ジブロモエタンと反応させて、1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステルを得る方法が記載されている。しかし、この方法で用いる1,2−ジブロモエタンは毒性が高く、また、高価で大量に入手するのは困難であるという欠点がある。
【0003】
1,2−ジクロロエタンを用いた例としては、例えばRuss.Chem.Bl.,43,1,84−88,(1994)には電気分解を用いた例が記載されている。しかし、電気分解を行うための特殊な設備が必要であり、生産性が低いという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、医薬中間体として有用な1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体を安価に、かつ効率的に製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、塩基及びアルカリ金属のハロゲン化物の存在下、アセト酢酸エステル誘導体等のβ−ケトエステル誘導体と安価で入手容易な1,2−ジクロロエタンとを反応させることにより、対応する1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体を簡易に製造できることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、塩基及びアルカリ金属のハロゲン化物の存在下、下記式(1)
【化3】
Figure 0004108311
[式中、R1は水素原子又は炭化水素基を示し、R2は炭化水素基を示す]
で表されるβ−ケトエステル誘導体を1,2−ジクロロエタンと反応させて、下記式(2)
【化4】
Figure 0004108311
[式中、R1及びR2は前記に同じ]
で表される1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体を得ることを特徴とする1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体の製造法を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
前記式(1)で表されるβ−ケトエステル誘導体において、R1は水素原子又は炭化水素基を示し、R2は炭化水素基を示す。
【0008】
前記R1及びR2における炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらが複数個結合した基が含まれる。
【0009】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜10(好ましくは1〜4)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜10(好ましくは2〜4)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜10(好ましくは2〜4)程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0010】
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0011】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。
また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0012】
本発明では、R1がC1-4の脂肪族炭化水素基であるのが好ましく、特にメチル基であるのが好ましい。また、R2はC1-4の脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。
【0013】
1,2−ジクロロエタンの使用量は、式(1)で表されるβ−ケトエステル誘導体1モルに対して、一般に0.8モル以上(例えば0.8〜3モル程度)である。
【0014】
反応は、塩基の共存下で行われる。塩基としては、例えば、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属の炭酸水素塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の水素化物(例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム等)、アルカリ土類金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)などの無機塩基;トリエチルアミン等のアミン類、ピリジン等の含窒素複素環化合物などの有機塩基などが挙げられる。中でも、アルカリ金属の炭酸塩が好ましく、特に、炭酸カリウムが好ましく用いられる。これらの塩基は、単独で又は2種類以上組み合わせて使用できる。
【0015】
塩基の使用量は、塩基の種類によって異なるが、式(1)で表されるβ−ケトエステル誘導体1モルに対して、一般に0.5〜4モル、好ましくは0.6〜2.5モル程度である。例えば、塩基としてアルカリ金属の炭酸塩を用いる場合には、β−ケトエステル誘導体1モルに対して、通常0.5〜2モル、好ましくは0.6〜1.5モル程度、塩基としてアルカリ金属の水酸化物を用いる場合には、β−ケトエステル誘導体1モルに対して通常2〜4モル、好ましくは2〜2.5モル程度用いられる。
【0016】
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。溶媒としては、反応の進行を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。具体的には、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;ベンゾニトリルなどのニトリル;ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフランなどの鎖状又は環状エーテルなどが挙げられる。好ましい溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのグリコールエーテル類などの極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は1種で、又は2種以上混合して用いられる。1,2−ジクロロエタン(反応剤)を過剰量用いて溶媒とすることもできる。
【0017】
なお、溶媒を混合して用いる場合は、これらの溶媒の混合比率が、反応時間や収率に大きな影響を与えることがある。具体的には、1,2−ジクロロエタンとN,N−ジメチルアセトアミド等の極性溶媒を組み合わせて用いる場合、1,2−ジクロロエタンの割合が大きすぎると反応時間は長くなり、N,N−ジメチルアセトアミド等の極性溶媒の割合が大きすぎると反応時間は短くなるが収率は低下する傾向にある。従って、これらの溶媒の混合比率は、例えば、1,2−ジクロロエタン:N,N−ジメチルアセトアミド等の極性溶媒=1:3〜5:1(重量比)が好ましく、さらに好ましくは1:1〜5:3である。溶媒の使用量としては、例えば、式(1)で表されるβ−ケトエステル誘導体の仕込み量に対して2倍量〜30倍量(重量)であり、好ましくは4倍量〜10倍量(重量)程度である。
【0018】
本発明においては、反応時間の短縮及び収率向上のために、系にアルカリ金属のハロゲン化物を添加する。アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、アルカリ金属の塩化物(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等)、アルカリ金属の臭化物(例えば、臭化ナトリウム、臭化カリウム等)、アルカリ金属のヨウ化物(例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等)等が挙げられる。これらのアルカリ金属のハロゲン化物は単独で、又は2種類以上組み合わせて使用できる。アルカリ金属のハロゲン化物の使用量は、式(1)で表されるβ−ケトエステル誘導体1モルに対して0.01〜1.0モル、好ましくは0.03〜0.2モル程度である。
【0019】
反応温度は、式(1)で表されるβ−ケトエステル誘導体の種類に応じて適当に選択できる。反応温度は、例えば、60〜150℃、好ましくは80〜100℃程度である。
【0020】
反応圧力は、常圧、加圧下の何れであってもよい。反応は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。
【0021】
反応により、式(1)で表されるβ−ケトエステル誘導体に対応する式(2)で表される1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステルが生成する。
【0022】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段により、又はこれらを組合せることにより分離精製できる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、医薬中間体などとして有用な1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体を、安価に効率よく製造することができる。
【0024】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
NMRスペクトルは、日本電子JNM―EX270を用い、270MHz(1H−NMR)にてテトラメチルシランを内部標準として測定した。また結合定数(Hz)はJで示す。
【0025】
実施例1
[1−アセチル−1−シクロプロパンカルボン酸エチルの製造]
炭酸カリウム165.6g、1,2−ジクロロエタン390.0g、N,N−ジメチルアセトアミド234.0g、ヨウ化カリウム5.0g、アセト酢酸エチル78.0gを混合し、100℃で4時間反応させた。これを室温まで冷却し、濾過して得られた濾液を5重量%塩酸で2回洗浄した後、有機層を水で洗浄した。この有機層を減圧濃縮に付して1,2−ジクロロエタンを留去した後、減圧蒸留により80℃20mmHgの留分として、1−アセチルー1−シクロプロパンカルボン酸エチル31.7gを無色液体として得た。
[スペクトルデータ]
1H−NMR(CDCl3)δ:1.27−1.32(t,3H,J=6.75,C 3CH2O),1.47(s,4H,CC 2 2),2.47(s,3H,C 3COC),4.17−4.25(q,2H,CH3 2O)
【0026】
実施例2
[1−アセチル−1−シクロプロパンカルボン酸メチルの製造]
炭酸カリウム662.4g、1,2−ジクロロエタン1161.2g、N,N−ジメチルアセトアミド696.7g、ヨウ化カリウム33.2g、アセト酢酸メチル464.5gを混合し、100℃で13時間反応させた。これを室温まで冷却し、濾過して得られた濾液を5重量%塩酸で2回洗浄した後、有機層を水で洗浄した。水層を合わせて1,2−ジクロロエタン999.7gで抽出した。有機層を合わせて減圧濃縮に付して1,2−ジクロロエタンを留去した後、減圧蒸留により75℃20mmHgの留分として、1−アセチルー1−シクロプロパンカルボン酸メチル160.1gを無色液体として得た。
[スペクトルデータ]
1H−NMR(CDCl3)δ:1.48(s,4H,cyclopropane),2.48(s,3H,C 3COC),3.75(s,3H,CH3O)

Claims (1)

  1. 塩基及びアルカリ金属のハロゲン化物の存在下、下記式(1)
    Figure 0004108311
    [式中、R1は水素原子又は炭化水素基を示し、R2は炭化水素基を示す]
    で表されるβ−ケトエステル誘導体を1,2−ジクロロエタンと反応させて、下記式(2)
    Figure 0004108311
    [式中、R1及びR2は前記に同じ]
    で表される1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体を得ることを特徴とする1−アシル−1−シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体の製造法。
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