JP4108252B2 - 電子デバイス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、実空間転送(Real Space Transfer;RST)電子デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
実空間転送等は、狭い半導体層内でキャリアが層に平行な電界により加速され、高い平均エネルギーを得てホットキャリアになるプロセスを説明するものである。これらのキャリアは、エネルギーバリアを貫通して隣接する層内にトンネル現象で入り込む。異なる移動度を有する平行な層の間のキャリアの再分散は、負性差分抵抗(negative differntial resistance;NDR)となる。このNDRは、ホットチャネルからそれよりも冷たいチャネル(クーラーチャネル)内にホットキャリアが実空間転送する結果であり、これにより電界(電圧)を上げてもソース−ドレイン間の電流が減少することになる。ガリウム砒素とシリコンゲルマニウムをベースにしたヘテロ接合構造においては、比較的低いヘテロ接合バリアにより、チャネル内のキャリアは、通常FET構造のソース/ドレインの電界により加速されることになる。これらのキャリアは、バリアを通して(トンネル現象で)実空間転送ができるほど十分高いエネルギーに加速される。この効果は様々な構造体で利用され、実空間ダイオードおよび負性抵抗電界効果型トランジスタ(negative resistance field effect transistors;NEREFT)として知られる3端子と4端子デバイスを含む様々な構造体で利用されている。NERFETにおいては、ヘテロ接合電界効果型トランジスタのチャネル内で加速された電子がゲートあるいはバックゲート電極に集められる(このような転送がRSTによりチャネルに対し直交方向である)。
【0003】
図4は、通常の電荷注入トランジスタ(charge injection transistor;CHINT)を示す。このデバイスは、ソース401とドレイン402とコレクタ403とを有する。図4に示したCHINTにおいては、コレクタ層はSixGe1-x製で、バリア層はSi製で、チャネルはSixGe1-x製であり、III−Vベースのヘテロ構造CHINTは、本明細書に記載した方法で機能する。次に動作について説明すると平行移送は、デバイスのソースからドレインへ行われる。印加電界(バイアス)が十分大きくなると上部層404内のキャリアは、ソース−ドレイン電界で加熱され、大部分がドレイン402に達しないことになる。代わりにキャリアは、バリア層405を通り越してコレクタ層406内にRSTにより注入される。Si/Si−Geヘテロ接合は、高速論理のアプリケーションと発振アプリケーションのRSTベースのデバイスに対し、用いられるよう開発されてきた。シリコン−シリコンゲルマニウムのヘテロ構造が実際的には興味のあるところであるが、その理由は、電荷注入デバイスの標準CMOS論理デバイスや他のデバイスへの集積が可能であり、かつシリコンゲルマニウムに起因したRSTデバイスに対する欠点が存在するからである。このためシリコンゲルマニウムが現在のCMOS処理シーケンスに容易に組み込まれ製造の複雑さの問題は、シリコンゲルマニウムの構造に対し依然として残る。さらにまたシリコンとシリコンゲルマニウムとの間の電位バリアは、0.1eVのオーダーであり、歪んだSixGe1-xチャネルとSiバリアとの間のバンドギャップの不連続性のほとんど大部分が価電子帯に入り、SiGeのRSTに基づいたベースは、ホットホールをキャリアとして頼ることになる。これはキャリアが電子の場合よりも好ましくないがその理由は、ホールの移動度は電子の移動度よりも低いからである。
【0004】
電荷注入トランジスタがGaAs/AlGaAsの2つの化学式ヘテロ構造体とInGaAs/InAlAsの2つの化学式ヘテロ構造体を含むIII−Vヘテロ構造体を用いて製造されている。III−Vベースのヘテロ接合により達成されたある種の利点はあるが、この構造に対しては依然として欠点もある。ガリウム砒素構造体はより高価であり、複雑な製造ステップと材料の要件によりシリコンよりも製造が困難である。さらにまたAlGaAs/GaAsヘテロ接合とInGaAs/InAlAsのヘテロ接合を用いてRSTベースのデバイスを製造しているが2つの層の間の電位バリアは、それぞれ0.3eVから0.5eVのオーダーである。Si/SiGeとIII−VのCHINTデバイスの詳細は、Functional Devices Based on Real Transfer in Si/SiGe Structure,IEEE Transactions on Electron Devices,Vol.43,No.10,October 1996,to Mastrapasqua,et al,p1671-1677とHigh Transconductance and Large Peak-to-Valley Ratio of Negative Differential Conductance in Three Terminal InGaAs/InAlAs Real -Space Trasfer Devices, Applied Physics Letters Vol.57,1990,to Mensz,et al,を参照のこと。
【0005】
従ってリーク電流の問題は、ガリウム砒素ベースのデバイスに対し欠点となっている。かくしてGaAsとSiGeベースのヘテロ接合RSTデバイスの適応性は、製造に関連する問題、移動度の問題、リーク電流の問題のために中断されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、RSTデバイスの性能を向上させながら、シリコンMOS処理シーケンスに容易に組み込むことのできるRSTベースのデバイス構造体を提供すことである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1バリア層の導電バンドエネルギーレベルが第2バリア層の導電バンドよりも0.5eV以上大きい電荷注入トランジスタを提供することである。この第1バリア層は、ホットキャリアのトンネル現象を発生させるほど薄い。第2バリア層は、それよりも厚くかつリーク電流を低減させる。本発明の一実施例においては高k(誘電率)の誘電材料を第2バリア層として用い、20Å以下の厚さを有する成長した二酸化シリコン層を第1バリア層として用いている。高kの誘電体材料と二酸化シリコンのRSTと薄い二酸化シリコンとの間のバリア高さの差が高品質のインタフェイスを提供し、チャネル内の移動度が高くなりこれによりRST電流を大きくできる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例を図3を参照にして説明する。同図において基板層301は、ドレイン接触領域305と接地ソース306とを有する。この実施例においては基板は、好ましくはシリコンで酸化されている。その下のSiO2の成長層とSiO2のストレスのない層を第1バリア層302として示す。高kの誘電層303は、五酸化タンタルである。コレクタ接触点304は、金属(例;タングステン)のような導体あるいは他の適宜の材料の導体である。ソース−ドレイン電界により低電界の状態においても平行移送が引き起こされ、そして高電界条件においては、チャネルに直交するキャリアの注入が行われる。このため並列電流はIpで表され、電子を加熱することにより得られる注入電流およびSiO2製のバリア層を通る注入電流は、Iiで表される。本発明の電荷注入トランジスタは、第2バリア層の導電体よりも0.5eV以上大きな導電体エネルギーレベルを有する第1バリア層を有する。この第1バリア層は、ホットキャリアのトンネル現象を発生させるのに十分な程度に薄い。第2バリア層は、それよりも厚くリーク電流を低減させる。
【0009】
この実施例の電荷注入トランジスタの物理現象は、図2の導電体のダイアグラムを見ることにより理解できる。このトランジスタは、コレクタ電流の制御とソースとドレイン間の電圧を加熱することによるドレイン電流の現象に基づいている。シリコン層(領域IV)はホット電子を有し、これは二酸化シリコン(領域III)のバリアをオーバーカムする例えばエネルギー203をもって、あるいはエネルギー201をもってトンネルで抜ける。二酸化シリコンの層は、薄く20Å(2.0nm)以下のオーダーである。これらの電子は、コレクタ接点で最終的に終了するのに十分なエネルギーを有する(この実施例においては領域と代表的な金属)。しかし202で示すようなエネルギーを有する電子はSiO2と高k層(領域III)をトンネリングする確率が非常に低い(低透過係数)。かくしてリーク電流は、本発明の構造により低減できる。
【0010】
エミッタ層内のキャリアは、ソースドレイン電界により加熱されたホット電子の大部分はドレインには到着せず、コレクタ層内に注入され、その結果大きな負性差抵抗が発生することになる。図2に示すI−Vの特性は、様々なコレクタ電圧VSに対するドレイン電流ID対ドレイン電圧VD(接地ソースに対し)を示し、そしてこれがドレイン電流ID 様々なコレクタ電圧VS、そしてソース電位に対するドレイン電流ID対ドレイン電圧VD(接地ソースに対し)との関係を示す。図1,2から判るようにドレインのバイアス電圧が増加するとドレイン電流(平行移送からの)は、図1の点Bまで増加する。二酸化シリコン製バリア層にかかる注入電流(図2の202,203)がキャリアの移送に対し支配的になると、ドレイン電流は図1の点Cまで、そして谷に到達するまで急速に減少する。I−V特性は、その性質上漸近的でカーブの平坦領域は、フィールドスクリーニングとドレイン−コレクタ電界の現象に起因すると考えられる。この電界スクリーニング(field screening)はドレイン領域で生成されたデプレーション領域の結果である。そしてドレイン電流の飽和となると理論的に考えられている。ドレイン電流が飽和すると基板に対する反転(diverted)注入された電荷を必然的に飽和する。本発明の電荷注入トランジスタは、領域BとCの間で動作する。ピークと谷との比率が増加するとこのデバイスは、スイッチあるいは高周波発信器として用いることができる。本発明の他のアプリケーションは、当業者には公知であろう。
【0011】
図3の実施例に示す電荷注入トランジスタは、米国特許出願第08/995,435号と第09/339,895号に開示された材料と技術を用いて形成できる。基板301は、酸化可能な層で、例えばシリコン製である。これは基板の上にエピタキシャル成長させたシリコン層の上に単結晶シリコン製基板である。二酸化シリコンの層をその上に成長させる。この実施例において酸化物の成長は、3−5Åの厚さを有し、一方をその下に成長したストレスのない酸化物層は、3−8Åのオーダーの厚さを有する。この成長層とストレスのない層は、第1バリア層として302で表される。高kの誘電体層303が第1バリア層302の上に標準技術により堆積され、この高kの誘電体層303は、Ta25,ZrO2,TiO2とペロブスカイト型の材料である。この層の厚さは、3−100Å(この層は1000Åの厚さでも良いが)のオーダーの厚さを有し、本明細書では第2バリア層と称する。ソースとドレインは、ドープしたn+で、チャネルはドープしたn-、p-あるいはnであり、このデバイスは好ましくはエンハンストモードデバイスである。ソースとドレインとタブは、標準(通常使用される)技術を用いて形成される。他の材料および他の構造体も本発明を実行するのに用いることができる。このため本発明の基本的な要件は、薄くかつ高電位のバリア材料(第1バリア層)と厚く低電位のバリア材料(第2バリア層)との間の接合で、RSTを実現する接合である。CHINTは第1バリア層と第2バリア層との間の電位差が0.5eV以上のときに十分に機能する。したがって他の材料もRSTを実現でき、その結果CHINTとなり得る。シリコンは代表的な基板材料であるが、他の材料も基板として用いることができ、上記の特性を有する第1バリア層として機能する他の材料を用いることができる。例えば、基板はIII−V化合物半導体あるいはSiGe製基板である。
【0012】
前掲の米国特許出願で議論したように本発明の重要な点は、結晶相の変換温度を越える温度に高k誘電体材料層を露出するのを回避する必要がある点である。リーク電流の問題は、高k誘電体層が結晶化したときに発生する。本発明の高k誘電体層は、リーク電流を回避するのに必要なものである。この層が結晶化により、リーク電流を発生しやすくなると好ましくない影響が表れる。前掲の特許出願で議論したように、相変換温度を上げてデバイスの製造中に結晶化を回避することである。Ta25が高k材料であるような実施例においては、成長酸化物層の酸化/高密度化は、Ta25の相変換温度を850℃のオーダーまで上昇させる結果となる。この温度をさらに950℃のオーダーまで上昇させることは、前掲の特許出願に開示されたドーピングあるいはイオン注入を用いて得られる。
【0013】
【発明の効果】
以上述べたように、高kの誘電体層と薄い酸化物層の両方の層のインターフェイスは、ガリウム砒素あるいはシリコンゲルマニウムに基づいた公知の電荷注入トランジスタに比較して優れた電荷注入トランジスタを提供できる。本発明は従来のシリコン処理技術に容易に適用できる。本発明によれば他の電荷注入デバイスに比較して処理が複雑でなく、材料のコストおよび処理プロセスおよび環境面での利点が、従来のガリウム砒素ベースのデバイスに対して得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による負性差分抵抗を示す電流−電圧(I−V)カーブを表すグラフ
【図2】本発明の一実施例によるエネルギーバンド図を表す図
【図3】本発明による電荷注入トランジスタ構造の断面図
【図4】従来技術に関わるガリウム砒素またはシリコンゲルマニウムの電荷注入トランジスタ構造の断面図
【符号の説明】
201 エネルギー
202 エネルギー
203 エネルギー
301 基板層
302 第1バリア層
303 高kの誘電体層
304 コレクタ接触点
305 ドレイン接触領域
306 接地ソース
401 ソース
402 ドレイン
403 コレクタ
404 上部層
405 バリア層
406 コレクタ層

Claims (10)

  1. ソースとドレインを有する基板上に配置され、2nm以下の厚さを有する第1バリア層と、
    前記第1バリア層上の、高k誘電体酸化物の第2バリア層であって、前記第1バリア層が、前記第2バリア層の伝導帯よりも0.5eVより大きい伝導帯エネルギーレベルを有するものとなっている第2バリア層と、
    前記第2バリア層上に配置された層であって、この層に対して、前記ソースと前記ドレインの間の電界により加熱されたホットキャリアが前記第1バリア層を横切って注入されるようになっている層と、
    を備えることを特徴とする電子デバイス。
  2. 前記第1バリア層が、二酸化シリコン製の成長層とその下の二酸化シリコン製のストレスのない層を含む請求項1記載の電子デバイス。
  3. 前記第2バリア層が、Ta25,ZrO2およびペロブスカイト型材料のグループから選択された材料製である請求項1記載の電子デバイス。
  4. 前記第2バリア層の相変換温度が、電子デバイスの製造中に相変換が起きない程度に高いことを特徴とする請求項1記載の電子デバイス。
  5. 前記第2バリア層の厚さが、3nmないし100nmの範囲である請求項1記載の電子デバイス。
  6. ソースとドレインを有するシリコン層と前記シリコン層の上に配置された、2nm以下の厚さを有するSiO2製の第1バリア層と、
    前記SiO2製の第1バリア層の上に配置された高k誘電体材料の第2バリア層であって、前記第1バリア層が、前記第2バリア層の伝導帯よりも0.5eVより大きいエネルギーレベルを有するものとなっている第2バリア層と、
    前記高k誘電体材料の第2バリア層の上に配置されたコレクタ層であって、このコレクタ層に対して、前記ソースと前記ドレインの間の電界により加熱されたホットキャリアが前記第1バリア層を横切って注入されるようになっているコレクタ層と、
    を備えることを特徴とする電荷注入トランジスタ(CHINT)。
  7. 前記第2バリア層が、Ta25,ZrO2およびペロブスカイト型材料のグループから選択された材料製である請求項6記載の電荷注入トランジスタ。
  8. 前記SiO2製の第1バリア層が、成長された二酸化物とその下のSiO2製のストレスのない層を含む請求項6記載の電荷注入トランジスタ。
  9. 前記第2バリア層の相変換温度が、電子デバイスの製造中に相変換が起きない程度に高いことを特徴とする請求項6記載の電荷注入トランジスタ。
  10. 前記第2バリア層の厚さが、3nmないし100nmの範囲である請求項6記載の電荷注入トランジスタ。
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