JP4107733B2 - 超音波イメージング・システム用のbモード処理装置および検出後像処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的には、人体組織および血液の超音波イメージングに関するものである。具体的には、本発明は、Bモード超音波像の品質を改善するための方法に関するものである。
【0002】
【発明の背景】
通常の超音波イメージング・システムは、超音波ビームを送信し且つ検査対象物体(被検体)からの反射されたビームを受信するために使用される超音波トランスジューサのアレイを有する。超音波イメージングのために、該トランスジューサ・アレイは典型的には一列に配列され且つ別々の電圧で駆動される多数のトランスジューサを有する。印加される電圧の時間遅延(または位相)および振幅を選択することによって、個々のトランスジューサを制御することにより、これらのトランスジューサが発生する超音波が組み合わさって、好ましいベクトル(ビーム)方向に沿って進行し且つビームに沿った選ばれた点に収束される正味の超音波を形成することが出来る。同じ解剖学的情報を表すデータを取得するために複数のファイアリング(firing)を使用することが出来る。各々のファイアリングのビーム形成パラメータを変えて、最大焦点の変更を行い、或いは例えば各々のビームの焦点を前のビームの焦点に対してシフトしながら同じ走査線に沿って相次いでビームを送信することによって、各々のファイアリングに対して受信データの内容を変えるようにすることが出来る。印加電圧の時間遅延および振幅を変えることによって、物体を走査するための平面内でビームをその焦点と共に動かすことが出来る。
【0003】
同じ原理は、トランスジューサが反射された音波を受信するために用いられるとき(受信モード)にも適用される。受信トランスジューサで発生された電圧は、正味の信号が被検体内の1つの焦点から反射された超音波を表すように加算される。送信モードの場合と同様に、超音波エネルギのこの焦点合わせされた受信は、各々の受信トランスジューサからの信号に対して別々の時間遅延(および/または位相シフト)と利得を与えることによって達成される。
【0004】
図1は、4つのサブシステム、すなわち、ビーム形成装置2、Bモード処理装置4、走査変換器/表示制御器6およびカーネル8を有する従来の超音波イメージング・システムを示す。システムの制御はカーネル8に集中しており、カーネルはオペレータ・インターフェース10を介してオペレータ入力を受け入れて、種々のサブシステムを制御する。主制御器12がシステム・レベル制御機能を実行する。これは、オペレータ・インターフェース10を介してオペレータからの入力およびシステム状態変化を受け入れて、適切なシステム変更を直接的に又は走査制御器を介して行う。システム制御母線14が主制御器からサブシステムへのインターフェイスを構成する。走査制御シーケンサ16が、ビーム形成装置2、システム・タイミング発生器24、Bモード処理装置4および走査変換器6に実時間(音響ベクトル・レート)制御入力を供給する。走査制御シーケンサ16は、ホストによって、音響フレーム(acoustic frame)取得のためのベクトル・シーケンスおよび同期化のオプションを持つようにプログラミングされる。走査変換器は、ホストによって定められたベクトル・パラメータを、走査制御母線18を介してサブシステムへ送り出す。
【0005】
主データ路が、トランスジューサ20からビーム形成装置2へのアナログRF入力で始まる。ビーム形成装置2はアナログ信号を一連のディジタル・サンプルに変換して、2つの加算ディジタル受信ビームを出力する。これらの出力は図1に複素I,Qデータとして示されているが、一般的には無線周波または中間周波データであってよい。I,QデータはBモード処理装置4に入力されて、処理されたベクトル(ビーム)データとして走査変換器/表示制御器6へ出力される。走査変換器は、処理されたベクトル・データを受け入れて、画像を表示するためにビデオ表示信号をカラー・モニタ22へ出力する。
【0006】
図2について説明すると、従来の超音波イメージング・システムは、複数の別々に駆動されるトランスジューサ素子26を有するトランスジューサ・アレイ20を含み、各々のトランスジューサ素子26はビーム形成装置2の送信部で発生されたパルス波形によって付勢されたときに超音波エネルギのバーストを発生する。被検体から反射されてトランスジューサ・アレイ20へ戻る超音波エネルギは、各々の受信トランスジューサ素子26によって電気信号に変換されて、一組の送受切替え(T/R)スイッチ28を介してビーム形成装置2の受信部へ別々に印加される。T/Rスイッチ28は、典型的には、送信部の電子回路によって発生された高電圧から受信部の電子回路を保護するようにダイオードで構成される。送信信号によりダイオードが作動されて、受信部への信号を遮断または制限する。
【0007】
ビーム形成装置2の送信部および受信部はオペレータによる命令に応答したビーム形成装置制御器(図示していない)の制御の下に作動される。トランスジューサ・アレイ20の素子は、発生される超音波エネルギがビームの形で方向付けられ又はステアリングされるように駆動される。これを達成するため、複数のパルス発生器30にそれぞれの時間遅延が与えられる。各々のパルス発生器30はT/Rスイッチを介してそれぞれのトランスジューサ素子に接続される。送信集束用の時間遅延は好ましくはルックアップ・テーブル32から読み出される。送信集束用の時間遅延を通常のように適切に調節することにより、超音波ビームは軸線Yから角度θだけ離れた方向に向けられ且つ一定の距離(レンジ)Rの所に集束される。相次ぐ励起の送信集束用の時間遅延を漸進的に変えることによりセクター走査が実行される。従って、角度θが増分的に変えられて、送出されるビームが相次ぐ方向にステアリングされる。
【0008】
超音波ビームに沿って相次ぐ距離に位置する物体から反射された超音波エネルギの各バーストによりエコー信号が作成される。エコー信号は各々のトランスジューサ素子26によって別々に検知され、特定の時点におけるエコー信号振幅のサンプルが特定の距離で生じる反射の量を表す。しかしながら、反射点Pと各トランスジューサ素子26との間の伝搬経路の差により、これらのエコー信号は同時に検出されず、またそれらの振幅は等しくない。ビーム形成装置2の受信部は各々の受信信号に適切な時間遅延を与えて、それらの加算して、角度θの方向を向いた超音波ビームに沿って距離Rに位置する点Pから反射された全超音波エネルギを正確に表す単一のエコー信号を構成する。これを達成するため、複数の受信チャンネル34にそれぞれの受信焦点用の時間遅延が与えられる。受信焦点用の時間遅延は好ましくはルックアップ・テーブル38から読み出される。受信チャンネルはまた、受信パルスに対してアポダイゼーション(apodization)およびフィルタリングを行うための回路(図示していない)を有する。時間遅延された受信信号は次いで受信加算器36内で加算される。
【0009】
図2について説明すると、ビーム形成装置2の受信部は、時間利得制御部および受信ビーム形成部を有する。時間利得制御部は各々の受信チャンネル34に対するそれぞれの増幅器40、および時間利得制御(TGC)回路42を含む。各増幅器40は入力がそれぞれのトランスジューサ素子26に結合されていて、受信したエコー信号を増幅する。増幅器40の増幅度はTGC回路42によって制御され、TGC回路42はポテンショメータ44の手による操作によって設定される。
【0010】
受信ビーム形成部は別々の受信チャンネル34を含み、各々の受信チャンネル34は対応する増幅器40からアナログ・エコー信号を受け取る。各々の増幅された信号はそれぞれの受信チャンネル内の一対の直角検出器に送られ、そこでは混合用基準周波数が90°異なっている。この基準周波数は送信パルスの周波数と同じにされているので、受信チャンネル内の低域フィルタからの出力は90°異なる位相を持つ複素(IおよびQ)信号になる。これらの信号は一連のディジタル化された出力値としてI母線45aおよびQ母線45b(または等価なRF母線)を介して出力される。これらのIおよびQベースバンド信号の各々は、特定の距離Rにおけるエコー信号包絡線の復調されたサンプルを表す。これらのサンプルは、加算点36aおよび36bで他の受信チャンネル34の各々からのIおよびQサンプルと加算されたときに、その結果の加算信号がステアリングされたビーム(θ)に沿った距離Rに位置する点Pから反射されたエコー信号の大きさおよび位相を表すように、遅延される。
【0011】
Bモード処理装置4に含まれている検出器46が、加算点45aおよび45bからビーム・サンプルを受け取る。各々のビーム・サンプルIおよびQ値は、点(R,θ)からの反射波の大きさの同相成分および直角成分を表す信号である。検出器46は、ベースバンド・データの包絡線を表す量(I2 +Q2 )1/2 を計算する。ビーム・サンプルがRFデータである場合、信号の包絡線は、標準的な整流器とその後の低域フィルタによって得ることが出来る。Bモード機能は、エッジ強調および対数圧縮のような幾つかの付加的な処理(以後、「検出後像処理」と呼ぶ)により、信号の包絡線の時間変化振幅をグレースケールで映像化する。
【0012】
走査変換器6(図1参照)がBモード処理装置4から表示データを受け取って、該データを表示のための所望の像に変換する。具体的に述べると、走査変換器6は、極座標(R−θ)セクタ形式またはデカルト座標線形アレイからの音響像データを、適切にスケーリングされたデカルト座標表示画素データへビデオ速度で変換する。この走査変換された音響データが次いで表示モニタ22で表示するために出力され、表示モニタ22は信号の包絡線の時間変化振幅をグレースケールで映像化する。
【0013】
超音波イメージングでは、スペックル(斑点)と呼ばれる固有のイメージング・アーティファクトを生じる問題がある。スペックルは、複数の受信エコーの干渉パターンから生じる像中のぶち又は斑点である。この斑点は主に音響的干渉パターン内のゼロ(null)によって引き起こされるが、像中の他の異常、例えば不規則な電子ノイズも斑点を生じさせることがある。音響的ゼロは、全ダイナミック・レンジの超音波像を表示するのに必要な対数圧縮によって強調される。これらの音響的ゼロは像中の黒孔(ブラックホール)として現れる。像の品質を改善するためにはスペックルを最少にすることが望ましい。
【0014】
検出後像処理は一般に、ダイナミック・レンジ(対数)圧縮、低域フィルタリングおよびエッジ強調フィルタリングよりなる。これらは異なるスキャナで異なる順序で配列されるが、通常は逐次的に実施される。従来では、低域フィルタがデータのダウンサンプリングの前にエイリアシングを防止するように設計されるが、低域フィルタはまた広帯域イメージング・システムにおいてスペックル低減の役割を演じる。エッジ強調フィルタリングには、対数圧縮されたデータに作用する高域フィルタが通常使用される。
【0015】
実際の解剖学的構造の検出された像は通常は(エッジからの)大きな反射信号および(軟組織からの)低い振幅のスペックルを含む。従って、低域フィルタおよび高域フィルタが単純にそれらの役割を果たした場合、常に低域フィルタがエッジを不鮮明にし且つ高域フィルタがスペックルを強調する傾向がある。逐次的な処理構成の場合、低域フィルタおよび高域フィルタがそれぞれの悪影響を及ぼさないようにするのは非常に困難である。従って、対立する作用を持つスペックル平滑化とエッジ強調との両方について最良の結果を得ることは出来ない。
【0016】
図4乃至図6は、超音波イメージング・システムにおける逐次的な検出後像処理のための従来の構成を示す。図4に示されている第1の構成は、アナログ・システムで使用される検出後像処理法と類似するものであり、対数圧縮手段48、エッジ強調用の高域フィルタ50および低域フィルタ52を有する。低域フィルタ52は典型的には4次乃至6次のIIRフィルタであり、遮断周波数は走査変換前のデシメーション・レート(decimation rate)に従って設定される。この第1の構成の利点は、高域フィルタ50が対数圧縮された像のエッジを強調するのに有効なことである。もし検出された像が高域フィルタリングの後に対数圧縮された場合には、エッジ強調効果が対数圧縮によって低減される可能性がある。第1の構成の欠点は、対数圧縮後の低域フィルタがエイリアシング防止を意図して使用されていて、スペックルの低減に余り効果がないことである。
【0017】
図5は第2の構成を示している。この構成の実施では、デシメーション手段またはレート変換器がエッジ強調用の高域フィルタ50の前に現れることがある。従って、低域フィルタ52はスペックル平滑化およびエイリアシング防止の両方を行うようにすることが出来る。第2の構成の利点は、低域フィルタがスペックル低減のために(非線形圧縮より前に)最適に配置されることである。第2の構成の欠点は、低域フィルタがエッジを不鮮明にする傾向があり、高域フィルタが背景のスペックルを強調することがあり、また信号帯域幅が対数圧縮の後で再び拡大するので低域フィルタの位置が最適でないことである。
【0018】
図6は第3の構成を示している。第2の構成と同様に、デシメーションまたはレート変換がエッジ強調用の高域フィルタリングの前に現れる。主な改善は、エッジ強調フィルタの適応性にあり、エッジ強調フィルタは典型的には並列の高域フィルタおよび全域通過通路を有する。第3の構成の利点は、適応エッジ強調用フィルタが振幅の差に基づいてエッジをスペックルから区別しようとすることであり、またこのエッジ強調用フィルタが大きな振幅のエッジのみを強調する傾向があることである。第3の構成の欠点は、処理される信号が適応エッジ強調用フィルタに達する前にエッジが低域フィルタによって既に不鮮明にされていることであり、また適応機構の位置が最適でないこと、すなわちエッジの振幅とスペックルの振幅との間の差が対数圧縮によって既にかなり低減されていることである。
【0019】
(図示していない)第4の構成によれば、RFスペクトルが2つ以上のサブバンドに分割されて、それぞれのサブバンドが別々に検出される。検出後の非コヒーレント像の加算がスペックルを低減する有効な方法である。しかしながら、この形式の周波数合成は、図5に示されている第2の構成の場合と同じ統計的性能を持つ。検出後の非コヒーレント像の加算はスペックルを低減することが出来るが、RFスペクトルの分割が第2の構成における低域フィルタと同様な分解能劣化(エッジ不鮮明化)作用を持つ。
【0020】
【発明の概要】
本発明は、超音波イメージング・システムにおける検出後像処理の際にBモード像の適応強調を行うための方法および装置である。スペックル平滑化およびエッジ強調はBモード検出後像処理装置の設計において相容れない要件を課す。スペックルを平滑化することの出来る低域フィルタが、検出された像の中のエッジを不鮮明にする傾向がある。エッジ強調用の高域フィルタが、背景のスペックルを強調し又は平滑化用のフィルタの効果を相殺する傾向がある。更に、最適推定理論によれば、スペックル平滑化は非線形圧縮の前に行うのが最良であり、またエッジ強調用フィルタリングは対数圧縮の後に行うのがより効果的であることが示されている。これらの理由により、従来のBモード超音波イメージング・システムにおける逐次的検出後像処理方法では、対立する作用を持つスペックル平滑化とエッジ強調との両方について最良の結果を得ることは出来ない。
【0021】
本発明は、並列の信号通路に基づいた検出後像処理法を利用して適応Bモード像強調を提供する。この処理法による並列信号通路は、像の中のエッジを選択的に強調する高域フィルタ通路と、背景のスペックルだけを選択的に平滑化する低域フィルタ通路とを含む。従来の逐次的検出後像処理法と比較して、本発明による処理法は主に1つの追加の対数演算を必要とし、ハードウエアでもソフトウエアでも実施することが出来る。
【0022】
本発明の好ましい態様による適応Bモード像強調装置では、スペックルを平滑化する低域フィルタとエッジ強調する高域フィルタとが、包絡線検出器の出力に接続された並列の信号通路に配置される。高域フィルタの信号通路の信号は、高域フィルタリングの前に対数圧縮される。低域フィルタの信号通路の信号は、低域フィルタリングの後に対数圧縮される。低域フィルタリングされた信号および高域フィルタリングされた信号にそれぞれの重み係数が適応重み付け手段によって加えられる。適応重み付け手段は処理装置またはルックアップ・テーブルの形を取ることが出来る。低域フィルタリングされ重み付けされた信号および高域フィルタリングされ重み付けされた信号は加算され、次いで、随意選択により、デシメーションおよび走査変換の前にエイリアシング防止用低域フィルタに入力される。
【0023】
一般的には、適応重み付けおよび加算演算全体は、両方の低域フィルタリングされた信号および高域フィルタリングされた信号が入力として利用できれば、ルックアップ・テーブルの形で実施することが出来る。
【0024】
【発明の実施の形態】
図7は、本発明による適応Bモード像強調装置54を示す。適応Bモード像強調装置54は、図3に示した形式の包絡線検出器(すなわち、検出器46)からの出力を受け取るようにBモード処理装置に設けられる。本発明の好ましい実施態様によれば、適応Bモード像強調装置54は、従来の構成の利点を組み合わせ且つ従来の構成の欠点を排除した並列通路構成を有する。この適応Bモード像強調装置54は、単に図6に示されているもののような適応エッジ強調用フィルタではなく、むしろスペックル低減用フィルタリングおよび対数圧縮を含むより一般的な検出後像強調法である。また、図7に示されている最も一般的な形において、適応Bモード像強調装置54は一次元処理またはベクトル毎の処理に制限されず、二次元像処理のための二次元フィルタを使用することも出来る。
【0025】
本発明の方法によれば、Bモード処理装置内の包絡線検出器からの出力が第1の対数圧縮手段48aおよび第1の低域フィルタ52aに供給されると共に、適応重み付け手段56の第1の入力に供給される。対数圧縮機能48aはソフトウエア・プログラム可能なルックアップ・テーブル内に設けることが好ましい。対数圧縮されたデータがエッジ強調用高域フィルタ50に供給されると共に、適応重み付け手段56の第2の入力に供給される。対数圧縮され高域フィルタリングされたデータが、乗算手段58aに供給されるると共に、適応重み付け手段56の第3の入力に供給される。
【0026】
低域フィルタ52aは有限インパルス応答(FIR)フィルタであるのが好ましい。低域フィルタリングされたデータが第2の対数圧縮手段48bに供給されると共に、適応重み付け手段56の第4の入力に供給される。対数圧縮機能48bもソフトウエア・プログラム可能なルックアップ・テーブル内に設けることが好ましい。対数圧縮され低域フィルタリングされたデータが、乗算手段58bに供給されると共に、適応重み付け手段56の第3の入力に供給される。
【0027】
適応重み付け手段56は、用途に応じて、図7に示された5つのデータ入力の任意の組合せを使用し得る。重みの割り当ては1組の式またはルックアップ・テーブルのいずれかによって特定することが出来る。適応重み付け手段56は、第1の乗算手段58aに第1の重みW1を出力し且つ第2の乗算手段58bに第2の重みW2を出力する。重みW1およびW2の和は1に等しい。乗算手段58aは、高域フィルタ50から出力されたエッジ強調された信号と重みW1との積を表す信号を出力する。乗算手段58bは、対数圧縮手段48bから出力されたスペックル低減された信号と重みW2との積を表す信号を出力する。これらの乗算器の出力が次いで加算手段60で加算される。圧縮され低域フィルタリングされた信号および圧縮され高域フィルタリングされた信号の両方が入力として使用される場合、全体の適応重み付け機能56、58aおよび58b並びに加算演算60をルックアップ・テーブルの形で実施することも可能である。加算された信号は、次いで随意選択のエイリアシング防止用低域フィルタ52bに供給される。この代わりに、加算された信号は、走査変換の前にデシメーション手段に供給するか、または走査変換器に直接供給することが出来る。
【0028】
最も簡単な場合、適応重み付け手段56は低域フィルタ52aからの出力にのみ基づいて重みを割り当てることが出来る。出力が大きい(エッジの)場合、エッジ強調用フィルタの出力に対する重みはより大きくなり、平滑化(不鮮明化)は最小にされる。振幅が小さい(スペックルの)場合、平滑化され圧縮された出力に対する重みは比較的大きくすべきである。
【0029】
別の例として、腹部の走査において嚢腫の境界を検出するためには、適応重み付け手段はエッジ強調用高域フィルタの出力と対数圧縮された低域フィルタの出力との間の差を監視する。大きな差が存在する(境界の)場合、エッジ強調用高域フィルタの出力の一層大きい重みを割り当てる。
【0030】
従来技術と異なり、図7に示した適応Bモード像強調装置54は2つの別々の低域フィルタ52aおよび52bを有する。一方の低域フィルタ52aは平滑化用フィルタであって、適応Bモード像強調装置54の一部を構成する。また他方の低域フィルタ52bはエイリアシング防止用フィルタであって、随意選択により適応Bモード像強調装置54とデシメーション手段または走査変換器との間に設けられる。低域フィルタ52aおよび52bは、信号処理システム内の異なる箇所でそれぞれ最も良く異なる機能を果たすので、分離されている。
【0031】
一定タップのFIRフィルタ(1Dベクトル処理のためのボックスカー)が好ましいスペックル低減用低域フィルタである。というのは、該フィルタが、下側に位置する後方散乱エネルギの最大尤度推定値であると示された検出された包絡線信号の平均値を与えるからである。
【0032】
エッジ強調用高域フィルタ50は、FIRフィルタであるとは限らない。高域フィルタは、フィルタの過渡的出力が非常に小さくなるようにそのデータ入力が圧縮されたダイナミック・レンジを持つので、IIRフィルタを使用して実施することが出来る。
【0033】
本発明の広義の概念による適応重み付けは、図7に示されているような、検出器出力、対数圧縮された検出器出力、高域フィルタ50の出力、低域フィルタ52aの出力および対数圧縮された低域フィルタ出力の内の1つ以上の関数であってよい。
【0034】
従来技術と比べて、適応Bモード像強調装置54は主に1つの追加の対数演算を必要とし、計算の負担およびハードウエアのコストを大幅に増大することはない。
更に、適応Bモード像強調装置54は、ハードウエア(例えば、個別部品またはASIC)またはソフトウエア(例えば、ディジタル信号処理装置またはペンティアムプロ)のいずれかで実施することが出来る。
【0035】
上記の好ましい実施態様は例示の目的で開示された。超音波イメージング・システムの分野の当業者には種々の変更および変形を容易になし得よう。このような全ての変更および変形は特許請求の範囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実時間超音波イメージング・システム内の主要な機能のサブシステムを示すブロック図である。
【図2】図1のシステムに含まれているパルス発生および受信サブシステムの詳細を示すブロック図である。
【図3】図1のシステムに含まれているビーム形成装置およびBモード処理装置の部分をそれぞれ形成する受信器および検出器を示すブロック図である。
【図4】逐次的検出後像処理法の従来の構成を示すブロック図である。
【図5】逐次的検出後像処理法の従来の構成を示すブロック図である。
【図6】逐次的検出後像処理法の従来の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の好ましい実施態様による適応Bモード像強調法を示すブロック図である。
【符号の説明】
2 ビーム形成装置
4 Bモード処理装置
6 走査変換器/表示制御器
8 カーネル
10 オペレータ・インターフェース
12 主制御器
14 システム制御母線
16 走査制御シーケンサ
18 走査制御母線
20 トランスジューサ
22 カラー・モニタ
24 システム・タイミング発生器
48a、48b 対数圧縮手段
50 高域フィルタ
52a、52b 低域フィルタ
54 適応Bモード像強調装置
56 適応重み付け手段
58a、58b 乗算手段
60 加算手段
Claims (9)
- 超音波イメージング・システム用のBモード処理装置において、
包絡線検出器、
前記包絡線検出器の出力を受け取るように接続された入力を持つ第1の対数圧縮手段、
前記第1の対数圧縮手段の出力を受け取るように接続された入力を持つエッジ強調用の高域フィルタ手段、
前記包絡線検出器の出力を受け取るように接続された入力を持つスペックル平滑化用の第1の低域フィルタ手段、
前記第1の低域フィルタ手段の出力を受け取るように接続された入力を持つ第2の対数圧縮手段、並びに
前記包絡線検出器の出力、前記第1の対数圧縮手段の出力、前記高域フィルタ手段の出力、前記第1の低域フィルタ手段の出力および前記第2の対数圧縮手段の出力のうちの少なくとも1つの出力に接続された入力手段を持つと共に、前記高域フィルタ手段からの信号出力に第1の重み係数を適用した値と前記第1の低域フィルタ手段からの信号出力に第2の重み係数を適用した値との和を表す出力手段を持ち、前記第1および第2の重み係数が前記少なくとも1つの出力から受け取った信号の関数として決定される適応像強調手段、を含んでいることを特徴とするBモード処理装置。 - 前記適応像強調手段は、前記少なくとも1つの出力に接続された入力手段を持つと共に、第1および第2の重み係数をそれぞれ出力する第1および第2の出力を持つ適応重み付け手段、前記適応重み付け手段の第1の出力に接続された第1の入力および前記高域フィルタ手段の出力を受け取るように接続された第2の入力を持ち、これらの第1および第2の入力に受け取った信号の積を表す信号を出力する第1の乗算手段、前記適応重み付け手段の第2の出力に接続された第1の入力および前記第2の対数圧縮手段の出力を受け取るように接続された第2の入力を持ち、これらの第1および第2の入力に受け取った信号の積を表す信号を出力する第2の乗算手段、並びに前記第1および第2の乗算手段の出力をそれぞれ受け取るように接続された第1および第2の入力を持ち、これらの第1および第2の入力に受け取った信号の和を表す信号を出力する加算手段を有している請求項1記載のBモード処理装置。
- 前記適応像強調手段は、前記少なくとも1つの出力に接続されたアドレス入力を持つルックアップ・テーブルを有している請求項1記載のBモード処理装置。
- 更に、前記適応像強調手段の出力を受け取るように接続された入力を持つ第2のエイリアシング防止用低域フィルタ手段を含んでいる請求項1記載のBモード処理装置。
- 超音波イメージング・システムにおける検出後像処理方法において、
包絡線を表す一連のディジタル・サンプルを対数圧縮して、一連の対数圧縮ディジタル・サンプルを作成するステップ、
記一連の対数圧縮ディジタル・サンプルを高域フィルタリングして、エッジを強調した像を表す一連の高域フィルタリング対数圧縮ディジタル・サンプルを作成するステップ、
包絡線を表す前記一連のディジタル・サンプルを低域フィルタリングして、スペックルを低減した一連の低域フィルタリング・ディジタル・サンプルを作成するステップ、
前記一連の低域フィルタリング・ディジタル・サンプルを対数圧縮して、一連の対数圧縮した低域フィルタリング・ディジタル・サンプルを作成するステップ、並びに
前記一連の高域フィルタリング対数圧縮ディジタル・サンプルに第1の重み係数を適用したものと前記一連の対数圧縮した低域フィルタリング・ディジタル・サンプルに第2の重み係数を適用したものとの和を表す像強調信号を作成するステップ、を含んでいることを特徴とする検出後像処理方法。 - 前記第1および第2の重み係数が、包絡線を表す前記一連のディジタル・サンプル、前記一連の対数圧縮ディジタル・サンプル、前記一連の高域フィルタリング対数圧縮ディジタル・サンプル、前記一連の低域フィルタリング・ディジタル・サンプルおよび前記一連の対数圧縮した低域フィルタリング・ディジタル・サンプルのうちの少なくとも1つの関数として決定される請求項5記載の検出後像処理方法。
- 更に、前記像強調信号を低域フィルタリングするステップを含む請求項5記載の検出後像処理方法。
- 超音波イメージング・システムにおいて、
複数の圧電トランスジューサ素子を有するトランスジューサ・アレイ、
複数のビーム形成チャンネルを有するビーム形成装置、前記圧電トランスジューサ素子と前記ビーム形成チャンネルとを結合するスイッチング手段、
前記ビーム形成装置からの受信ビームを表す一連のディジタル・サンプルを受け取るように結合されていて、包絡線を表す一連のディジタル・サンプルを出力する包絡線検出器、包絡線を表す前記一連のディジタル・サンプルを対数圧縮して、一連の対数圧縮ディジタル・サンプルを作成する手段、
前記一連の対数圧縮ディジタル・サンプルを高域フィルタリングして、エッジを強調した像を表す一連の高域フィルタリング対数圧縮ディジタル・サンプルを作成する手段、
包絡線を表す前記一連のディジタル・サンプルを低域フィルタリングして、スペックルを低減した一連の低域フィルタリング・ディジタル・サンプルを作成する手段、
前記一連の低域フィルタリング・ディジタル・サンプルを対数圧縮して、一連の対数圧縮した低域フィルタリング・ディジタル・サンプルを作成する手段、
前記一連の高域フィルタリング対数圧縮ディジタル・サンプルに第1の重み係数を適用したものと前記一連の対数圧縮した低域フィルタリング・ディジタル・サンプルに第2の重み係数を適用したものとの和を表す像強調信号を作成する手段、並びに
前記像強調信号から導き出した像を表示する手段、を含んでいることを特徴とする超音波イメージング・システム。 - 前記第1および第2の重み係数が、包絡線を表す前記一連のディジタル・サンプル、前記一連の対数圧縮ディジタル・サンプル、前記一連の高域フィルタリング対数圧縮ディジタル・サンプル、前記一連の低域フィルタリング・ディジタル・サンプルおよび前記一連の対数圧縮した低域フィルタリング・ディジタル・サンプルのうちの少なくとも1つの関数として決定されている請求項8記載の超音波イメージング・システム。
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