JP4106968B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電動パワーステアリング装置では、操舵軸におけるトーションバーより入力側の入力軸及び出力側の出力軸における舵角の相対差からトルクTが算出される。そして、このトルクTを小さくするようにモータを駆動して操舵補助力を生じさせる。従って、ドライバの操舵負担は軽減され、軽い操舵力で操舵を行うことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる軽い操舵力であっても、例えば曲がりくねった山岳道を長時間にわたって走行する場合などには、左右への頻繁かつ急激な操舵・保舵が必要となり、ドライバの負担は増大する。
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、頻繁かつ急激なハンドル操作を必要とする場合でも、操舵・保舵負担の軽い電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、操舵部材から操向車輪に至る操舵系にモータの回転力を付与して操舵アシストを行う電動パワーステアリング装置において、前記操舵部材に連結される入力軸と、前記入力軸にトーションバーを介在させて連結された出力軸と、前記入力軸の回転に応じた信号を出力する入力軸回転検出手段と、前記出力軸の回転に応じた信号を出力する出力軸回転検出手段と、前記入力軸回転検出手段及び出力軸回転検出手段の各出力に基づいて、前記入力軸と出力軸との間で伝達されるトルク及び、前記入力軸及び出力軸のそれぞれについて角変位に基づく角速度及び角加速度を算出する演算手段と、前記トルクに応じた操舵補助力を求め、この補助力を、前記モータを駆動することにより生じさせる駆動制御手段とを備え、前記駆動制御手段は、前記角速度及び前記角加速度から前記入力軸及び出力軸のどちらが動的に優位であるかを判定し、前記出力軸より入力軸の方が動的に優位な場合であって前記入力軸への入力量が所定値以上であるとき、前記補助力よりさらに大きな補助力を順アシスト方向に発生させるように前記モータを駆動するとともに、前記入力軸より前記出力軸の方が動的に優位であると前記角速度及び前記角加速度から判定される場合、前記トルクを滅殺する方向に操舵補助力を付与するように前記モータを駆動するものである(請求項1)。
【0005】
上記のように構成された電動パワーステアリング装置(請求項1)では、出力軸より入力軸の方が動的に優位な場合であって入力軸への入力量が所定値以上であるとき、すなわち、外乱ではなくドライバ入力の場合であって急激なハンドル操作がされている場合、駆動制御手段は、通常の補助力よりさらに大きな補助力を順アシスト方向に発生させるようにモータを駆動する。この結果、通常の操舵補助よりも入出力軸間のトルクに対する補助力が大きくなり、その分、ドライバの操舵トルクが小さくなる。
【0006】
上記電動パワーステアリング装置(請求項1)において、入力量の要素には、角変位及び角速度が含まれ、双方が共に所定値以上である場合に、入力量が所定値以上であるとするものであってもよい(請求項2)。
この場合、入力軸の角変位及び角速度が共に所定値以上であることを条件としていることにより、ドライバが急激なハンドル操作をしている状態を確実に検出することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態による電動パワーステアリング装置の構造を模式的に示す図である。当該装置は、例えば自動車に搭載され、操舵部材(ハンドル)1とピニオン2との間に、操舵軸3を介在させたものである。操舵軸3は、その中心に設けられたトーションバー31と、トーションバー31の入力側(上方)に固定された入力軸32と、トーションバー31の出力側(下方)に固定された出力軸33と、入力軸32に外嵌された第1ターゲット板34と、出力軸33に固定された第2ターゲット板35及び第3ターゲット板36とを備えている。入力軸32と出力軸33とは互いに同軸に配置されているが、相互には直接接続されず、トーションバー31を介して接続されている。また、第1ターゲット板34、第2ターゲット板35及び第3ターゲット板36も、互いに同軸に配置されている。
【0008】
上記各ターゲット板34〜36は、平歯車状の形態を成し、磁性体から成る外周の歯が周方向に等間隔で凹凸ターゲットを形成している。歯数は、第1ターゲット板34と第2ターゲット板35とが同数N(例えば36)で、第3ターゲット板36はNとは互いに素(1以外の公約数をもたない)である数(例えば35)である。
なお、上記の各ターゲット板34〜36は、入力軸32や出力軸33とは別体であって外嵌される構造であるが、入力軸32や出力軸33を磁性体とし、対応するターゲット板34〜36と一体に形成してもよい。
【0009】
出力軸33にはウオームホイール4が取り付けられ、これが、モータ6の出力軸に取り付けられたウオーム5と噛み合っている。モータ6の回転は、ウオーム5及びウオームホイール4を介してピニオン2に伝達され、操舵補助力となる。ピニオン2の回転は、ラック7の直線運動に変換され、左右のタイロッド8を介して操向車輪9が転舵される。
【0010】
上記各ターゲット板34〜36の外周の歯に対向して、3段2列に6個の磁気センサA1,B1,A2,B2,A3,B3が配置され、これらはセンサボックス10に収められている。センサボックス10は車体の所定位置に固定されている。センサA1,B1は、第1ターゲット板34の外周の互いに異なる周方向位置に対向して配置されている。同様に、センサA2,B2は、第2ターゲット板35の外周の互いに異なる周方向位置に対向して配置され、センサA3,B3は、第3ターゲット板36の外周の互いに異なる周方向位置に対向して配置されている。
【0011】
上記磁気センサA1〜A3,B1〜B3は、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁界の作用により抵抗が変化する特性を有する素子を用いたもので、対向する各ターゲット板34〜36の外周の凹凸に応じて周期的に変化する信号電圧を出力する。従って、磁気センサA1,B1の出力は、入力軸32及び第1ターゲット板34の角変位に対応したものとなり、磁気センサA2,B2の出力は、出力軸33及び第2ターゲット板35の角変位に対応したものとなる。同様に、磁気センサA3,B3の出力は、出力軸33及び第3ターゲット板36の角変位に対応したものとなる。
【0012】
磁気センサA1〜A3,B1〜B3の出力は、CPUを内蔵する制御装置21に入力される。制御装置21は、ソフトウェア処理によって達成される演算手段21aと、駆動制御手段21bとを機能的に含んでおり、演算手段21aにより、磁気センサA1,B1の出力から入力軸32及び第1ターゲット板34の角変位θ1が算出される。同様に、磁気センサA2,B2の出力から出力軸33及び第2ターゲット板35の角変位θ2が算出される。また、制御装置21には、車速センサ22によって検出された車速の信号が入力される。モータ6は、制御装置21によって駆動制御される。
【0013】
図2は、上記トーションバー31、入力軸32、出力軸33、各ターゲット板34〜36、及び、磁気センサA1〜A3,B1〜B3を模式的に表した図である。第1ターゲット板34は、入力軸32と共に回転し、外周の凹凸により磁気センサA1,B1の出力信号が変化する。すなわち、第1ターゲット板34と磁気センサA1,B1とは、入力軸32の回転に応じた信号を出力する入力軸回転検出手段を構成している。ここで、磁気センサA1とB1との配置の、対向する凹凸に対する電気角における位相差は、π/2であるように設定されている。従って、磁気センサA1,B1からの出力信号(電圧)は、図3に示すように、常にπ/2ずれている。このようにする理由は、波形の極大値及び極小値で非線形な変化が現れるため、2つの磁気センサA1,B1の出力信号をπ/2ずらすことで、一方の信号が非線形領域のときは他方の線形領域の信号を用いることができるからである。なお、位相差はπ/2に限定されないことはいうまでもない。
【0014】
同様に、第2ターゲット板35は、出力軸33と共に回転し、外周の凹凸により磁気センサA2,B2の出力信号が変化する。すなわち、第2ターゲット板35と磁気センサA2,B2とは、出力軸33の回転に応じた信号を出力する出力軸回転検出手段を構成している。また同様に、磁気センサA2とB2との配置の、対向する凹凸に対する電気角における位相差は、π/2であるように設定されている。
【0015】
一方、第3ターゲット板36も、出力軸33と共に回転し、外周の凹凸により磁気センサA3,B3の出力信号が変化する。また同様に、周方向における磁気センサA3及びB3の位置は、それぞれ磁気センサA2及びB2と同じである。ここで、第3ターゲット板36の歯数(=35)が第2ターゲット板35の歯数(=36)より1少ないことにより、磁気センサA3,B3の出力は、磁気センサA2,B2の出力と比べて、出力軸33の回転量(2π/36)当たりに((2π/36)−(2π/35))の位相ずれを生じ、出力軸33の1回転で元に戻る。従って、予め出力軸33の絶対回転位置と上記位相のずれとの関係を調べてテーブル化しておくことにより、位相ずれから出力軸33の絶対回転位置を割り出すことができる。このようなテーブルは、制御装置21に内蔵されている。
【0016】
次に、上記のように構成された電動パワーステアリング装置の動作について説明する。なお、上記絶対回転位置の情報は、車輪の向きを考慮したより精密な制御に用いられるが、このことは本発明の本質的事項ではないので、以下の説明においては省略する。
図4は、制御装置21において実行される動作のフローチャートの一例である。主として、ステップS1〜S5は演算手段21a、ステップS6〜S8は駆動制御手段21bとしての動作である。
【0017】
まず、キースイッチ(図示せず。)のオン操作により制御装置21に電源が供給され、図4のフローチャートの処理が開始される。制御装置21は、ステップS1において、磁気センサA1〜A3,B1〜B3の各出力を所定のサンプリング周期で取り込み、これに基づいて前述の角変位θ1,θ2を得た後、ステップS2において、入力軸32と出力軸33との間の相対回転角度すなわち(θ1−θ2)の絶対値を算出する。この値はトーションバー31の捻れ角であり、入力軸32と出力軸33との間で伝達されるトルクに相当する。そして制御装置21は、この値が所定の不感帯の範囲内にあるかどうかを判断する(ステップS3)。ここで、範囲内のときはステップS1へ戻り、範囲外のときはステップS4へ進む。続いて制御装置21は、車速センサ22の出力から車速を算出し(ステップS4)、角変位θ1,θ2を時間でそれぞれ微分して角速度ω1,ω2を算出し、さらに微分して角加速度ω1’,ω2’を算出する(ステップS5)。
【0018】
次に制御装置21は、入力軸32及び出力軸33のそれぞれについての角変位に基づく情報から、入力軸32と出力軸33のどちらが動的に優位な状態であるかを判定する(ステップS6)。ここで、「動的に優位な」とは、より能動的な方を意味する。具体的には、不感帯を超えて入力軸32と出力軸33との間に付与されているトルクが、路面から伝わる外乱によって生じているものか、あるいは、ドライバ入力すなわちドライバのハンドル操作によって生じているものかを判定する。この判定は、角速度の比較又は角加速度の比較によって行われる。角速度は角変位の周波数と同じ意味を持ち、一般に能動的な方が、より高い周波数となるからである。また、角加速度は角変位の方向に付与される力を意味し、一般に能動的な方が強い力を付与しているからである。
【0019】
すなわち、制御装置21は、ω1>ω2か又はω1’>ω2’であればドライバ入力であると判定して順アシストの動作ステップへ進み(ステップS8〜S10)、そのいずれでもない場合(ω1≦ω2かつω1’≦ω2’)は外乱であると判定して逆アシストの動作を行う(ステップS7)。このように、角速度比較及び角加速度比較を行って論理和的判断をすることにより、角速度(周波数)と力の両面から入力軸32及び出力軸33のどちらが優位にあるかを的確に判定することができる。ここで、逆アシストとは、外乱によって生じるトルクを減殺する方向にモータ6から操舵補助力を付与することである。なお、外乱によって操舵感覚の悪化が問題となるのは一般的に高速走行時である。従って、車速が一定の速度に達していない場合には、ステップS7において逆アシストの動作を見送るようにしてもよい。
【0020】
一方、ドライバ入力と判定されてステップS8に進んだ場合、制御装置21は、入力軸32の角変位θ1及び角速度ω1がそれぞれ所定値未満であるか否かを判定する。所定値とは例えば、θ1=π/4、ω1=π/秒である。いずれも所定値未満であれば、ステップS9において、順アシスト(1)の動作が行われる。これは、通常の順アシスト動作であり、駆動制御手段21bが所定のアシストマップを参照して、相対回転角度に対応する入出力軸間のトルクに相応の補助力が発生するように、モータに駆動電流が供給される。なお、順アシストには車速も考慮され、速度感応型の操舵補助が行われる。
【0021】
また、ステップS8において、θ1及びω1が共に所定値以上(例えば、θ1≧π/4で、ω1≧π/秒)であれば、所定の入力量以上のハンドル操作がされているとして、順アシスト(2)の動作が行われる。θ1及びω1が共に所定値以上であることを条件としていることにより、ドライバが急激なハンドル操作をしている状態を確実に検出することができる。上記順アシスト(2)では、順アシスト(1)より強いアシストが行われ、上記アシストマップにおけるトルク相応の補助力より所定レベル増大させた補助力を発生させるように、モータに駆動電流が供給される。この結果、図5及び図6に示すように、順アシスト(1)よりも順アシスト(2)の方が、トルク(実線)に対する補助力が大きくなり、その分ドライバの操舵トルクが小さくなる。従って、ドライバは、より楽に操舵を行うことができ、山岳道等の頻繁かつ急激なハンドル操作を必要とする場合でも操舵・保舵負担の軽い電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【0022】
なお、ステップS8における判定においては、θ1及びω1が共に所定値以上であるという条件に、さらに角加速度ω1’が所定値以上であるとする条件を加えてもよい。この場合には、入力軸32に付与されている力を考慮して、さらに慎重な判定を行うことができる。判定要素の優先順位としては、角速度ω1、角変位θ1、角加速度ω1’の順が好ましいと考えられる。
【0023】
なお、上記実施形態では平歯車状のターゲット板34〜36を用いたが、これに代えてスリット状の多数の孔が周方向に等間隔で形成されたリング状のターゲットや、外周面に磁極のN・Sを交互に配置したターゲットを用いてもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1の電動パワーステアリング装置によれば、外乱ではなくドライバ入力の場合であって急激なハンドル操作がされている場合、駆動制御手段は、通常の補助力よりさらに大きな補助力を順アシスト方向に発生させるようにモータを駆動するので、通常の操舵補助よりも入出力軸間のトルクに対する補助力が大きくなり、その分、ドライバの操舵トルクが小さくなる。従って、ドライバは、より楽に操舵を行うことができ、山岳道等の頻繁かつ急激なハンドル操作を必要とする場合でも操舵・保舵負担の軽い電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【0025】
請求項2の電動パワーステアリング装置によれば、入力軸の角変位及び角速度が共に所定値以上であることを条件としていることにより、ドライバが急激なハンドル操作をしている状態を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による電動パワーステアリング装置の構造を模式的に示す図である。
【図2】上記電動パワーステアリング装置におけるトーションバー、入力軸、出力軸、各ターゲット板、及び、磁気センサを模式的に表した図である。
【図3】上記電動パワーステアリング装置における磁気センサからの出力信号(電圧)を示すグラフである。
【図4】上記電動パワーステアリング装置における制御装置において実行される動作のフローチャートである。
【図5】上記電動パワーステアリング装置における順アシスト(1)のトルク波形の一例を示すグラフである。
【図6】上記電動パワーステアリング装置における順アシスト(2)のトルク波形の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
3 操舵軸
6 モータ
21a 演算手段
21b 駆動制御手段
31 トーションバー
32 入力軸
33 出力軸
34 第1ターゲット板
35 第2ターゲット板
A1,A2,B1,B2 磁気センサ
Claims (2)
- 操舵部材から操向車輪に至る操舵系にモータの回転力を付与して操舵アシストを行う電動パワーステアリング装置において、
前記操舵部材に連結される入力軸と、
前記入力軸にトーションバーを介在させて連結された出力軸と、
前記入力軸の回転に応じた信号を出力する入力軸回転検出手段と、
前記出力軸の回転に応じた信号を出力する出力軸回転検出手段と、
前記入力軸回転検出手段及び出力軸回転検出手段の各出力に基づいて、前記入力軸と出力軸との間で伝達されるトルク及び、前記入力軸及び出力軸のそれぞれについて角変位に基づく角速度及び角加速度を算出する演算手段と、
前記トルクに応じた操舵補助力を求め、この補助力を、前記モータを駆動することにより生じさせる駆動制御手段とを備え、
前記駆動制御手段は、前記角速度及び前記角加速度から前記入力軸及び出力軸のどちらが動的に優位であるかを判定し、前記出力軸より入力軸の方が動的に優位な場合であって前記入力軸への入力量が所定値以上であるとき、前記補助力よりさらに大きな補助力を順アシスト方向に発生させるように前記モータを駆動するとともに、前記入力軸より前記出力軸の方が動的に優位であると前記角速度及び前記角加速度から判定される場合、前記トルクを滅殺する方向に操舵補助力を付与するように前記モータを駆動することを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記入力量の要素には、角変位及び角速度が含まれ、双方が共に所定値以上である場合に、入力量が所定値以上であるとする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
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