JP4106448B2 - 落石から構築物を防護する方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネルの明かり巻き部(抗門コンクリート)、道路、鉄道、パイプライン、水路などの構築物を落石から防護するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばトンネルの明かり巻き部を落石から防護するための方法として、防護柵を設けたり、明かり巻き部の上部を覆う発砲スチロールなどの緩衝材料を装備したり、或は明かり巻き部のコンクリート厚を大きくするなどの対策が執られている。
【0003】
防護柵は、明かり巻き部の上方において岩盤から斜め方向へ立ち上げて明かり巻き部を覆うように設置されるが、その高さには限度があるため落石が防護柵を飛び越えてしまうことがあり、明かり巻き部が長い場合には全部をカバーしきれないという問題がある。
【0004】
また、緩衝材料の装備の場合、緩衝材料が受ける落石のエネルギーを受け止めることができるよう、緩衝材料を支持する明かり巻き部のコンクリート厚を大きくとる必要があるが、厚みを増すための空間、特に足回りの空間を周辺に確保できない場合が多く、またコンクリート材料の使用量を増大することになる。このことは、明かり巻き部のコンクリート厚を大きくして落石防護対策とする場合にも該当する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の落石防護法の有する欠点を排除し、上記構築物を大エネルギーの落石から確実に防護する方法を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、張力を受けた際に摩擦抵抗を生じながら長手方向へ伸長してその摩擦抵抗により張力発生エネルギーを吸収する構成を持たせたワイヤロープを使用し、防護すべき構築物の上方に上記のワイヤロープを落石の落下方向へ向けて張り渡してその上端と下端を確固に固定し、このようなワイヤロープを複数本並列配置して防護すべき構築物の上部を覆い、各ワイヤロープに持たせる摩擦抵抗を、ワイヤロープの並列中の配置位置によって異ならせることを特徴とする。
【0007】
このように形成すると、複数本の並列配置ワイヤロープで構成され構築物上を覆っている、いわゆる防護ネット上に落石が落下した際、受衝ネット部分を構成する各ワイヤロープには張力が及ぼされ、この張力がワイヤロープが有する摩擦抵抗に抗してワイヤロープを引き伸ばし、ワイヤロープを撓ませるとき、落石のエネルギーが吸収され、防護ネット下方にある構築物、例えばトンネルの明かり巻き部は落石の直撃から回避される。ワイヤロープは上端を岩盤に固定され、下端を、例えば明かり巻き部に連設したロックシェッドに固定することができるので、固定のための設備を新たに構築したり、新たな空間を確保する必要はない。そして、各ワイヤロープに持たせられる摩擦抵抗を、ワイヤロープの並列中の配置位置によって異ならせてあることにより、防護ネット上に落下した後の落石の転落方向を変えることができる。即ち、落石は、摩擦抵抗が大きく、撓み量の少ないワイヤロープから、摩擦抵抗が比較的小さく、大きく撓むワイヤロープの方へ防護ネット上で次第に転動方向を変えて行くので、落石を最終的に所望の箇所へもたらすことができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、並列に配置されたワイヤロープがチェーンによって横方向に次々に連結され、チェーンによるこの横方向の連結がワイヤロープの上端から下端の範囲で複数の箇所に亙って行われていることを特徴とする。このように形成すると、隣接するワイヤロープ間の間隔が落石衝突の際に拡がることがないので、落石を確実に受け止め、そのエネルギーを吸収することができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、並列に配置されたワイヤロープの一群の上面が目の細かい金網によって覆われていることを特徴とする。このように形成すると、比較的小さな落石がワイヤロープ間を通過して下方の構築物上に落下することが防止できる。
【0011】
請求項4記載の発明は、並列に配置されたワイヤロープの一群を一層として、同群が多層に亙って設けられていることを特徴とする。このように構成することにより、大きな落石に対して多重の防護措置がとられるので、大きな落石の発生が予想される箇所での防護対策を万全にすることができる。
【0012】
請求項5記載の発明は、トンネルの出入り口に設けた明かり巻き部を落石から防護する場合において、各ワイヤロープの上端が明かり巻き部上方の岩盤にロックボルトにて固定され、下端が明かり巻き部に付設したロックシェッド等に固定されていることを特徴とする。このように構成することにより、ワイヤロープのネットにより明かり巻き部の上部を完全に覆い、これを充分に防護することができる。
【0013】
請求項6記載の発明は、各ワイヤロープが複数のロープ片から成っており、各ロープ片の端部に互いに重ね合わされた部分を設け、この重ね合わされた部分において、滑り摩擦を発生させる態様で両ロープを掴持する緩衝具によって、双方のロープ片が連結されていることを特徴とする。このように構成することにより、各ワイヤロープを効果的に、摩擦抵抗を発生させながら長手方向へ伸長させる構成とすることができる。
【0014】
請求項7記載の発明は、落石発生の惧れのある傾斜地若しくはその付近に造られた構築物の上方において傾斜地上方から下方へ張り渡され、同構築物を覆って横方向へ並列し、且つそれぞれ上端と下端を固定された複数のワイヤロープを有し、各ワイヤロープが、張力を受けた際に摩擦抵抗を生じながら長手方向へ伸長してその摩擦抵抗により張力発生エネルギーを吸収する構成を有し、各ワイヤロープに持たせる摩擦抵抗を、ワイヤロープの並列中の配置位置によって異ならせていることを特徴とする。このように構成することにより、複数本のワイヤロープが摩擦抵抗を生じながら撓んで落石のエネルギーを吸収するので、大きな落石から構築物を確実に防護することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施の形態について詳細に説明する。図は、本発明方法をトンネルの明かり巻き部防護のために実施した場合の実施の形態を示しており、図1は設置状態の側面図、図2は図1のA部の拡大尺図、図3は設置状態の平面図、図4は図3中のB部の拡大尺図である。
【0016】
図1において、符号1はトンネルの明かり巻き部を示し、トンネル自体は図の左方へ延びており、明かり巻き部1の前方(図1の右方)には鋼製のロックシェッド2が設けてある。明かり巻き部1の左上方は落石発生の虞がある山腹ないし斜面へ続いている。
【0017】
明かり巻き部1の上部には、この明かり巻き部を覆って、斜面の上から下へ延びる多数本のワイヤロープを一定間隔置きに山腹に沿って並列して成る防護ネットが配設され、図1では3層の防護ネット3A、3B、3Cのワイヤロープの内のそれぞれ1本だけが示されている。
【0018】
各ワイヤロープ3A1、3B1、3C1の上端は岩盤4にロックボルト5によって固定され、下端はロックボルト6を介して上記のロックシェッド2に固定されている。なお、図1において、符号7はロックシェッド2の上部に配備されたサンドマット、符号8はサンドマット7の上部に配備された発砲スチロール等の緩衝部材である。緩衝部材8の上部にはH型鋼9A、9B、9Cが配置され、このH型鋼に各ワイヤロープの下端がロックボルト用Uボルトにより結合されている。各H型鋼は、ロックボルト6A、6B、6Cによりロックシェッド2に結合されている。
【0019】
防護ネット3Aは図3に示すように、ワイヤロープ3A1、3A2、3A3・・・を簾のように並列して成り、隣接するワイヤロープ3A1、3A2、3A3・・・は次々にチェーン11によって連結され、相互に離隔しないように保持されている。このワイヤロープ列の上面には小石等の小落下物を受け止めるための網(例えば金網)12が配設され、この網は結合コイル13によって要所要所で各ワイヤーロープに結合されている。防護ネット3B及び3Cも防護ネット3Aと同様の構成を有している。
【0020】
各ワイヤロープは上記のように、張力を受けた際に摩擦抵抗を生じながら長手方向へ伸長して、その摩擦抵抗により張力発生エネルギーを吸収する構成を有しており、この構成は具体的には図2および図4に示すような中間緩衝装置を用いて成るものである。この中間緩衝装置はそれ自体公知のものであるが、以下ワイヤロープ3A1を例に執って簡単に説明すると、そこに設けられる中間緩衝装置3A1Kは、互いに一部が重なり合った2本のロープ片3A1aおよび3A1bと、一方のロープ片3A1aの端部にストッパー3A1aSによって保持された緩衝具3A1aKと、他方のロープ片3A1bの端部にストッパー3A1bSによって保持された緩衝具3A1bKとから成っており、緩衝具3A1aKおよび3A1bKは向い側にあるロープ片3A1aおよび3A1bをそれぞれ締め付け力をもって掴み、ロープ片との間で摩擦を持ちながら摺動することができるようになされている。従って、ワイヤロープ3A1が落石による衝撃を受け、同ロープに張力が発生すると、ロープ片3A1aおよび3A1bは互いに引き合う状態になり、張力が緩衝具3A1bKおよび/または3A1bKとロープ片との間の摩擦力を越えると、緩衝具とロープ片との間に滑りが発生し、緩衝具3A1bKおよび3A1bKは互いに接近する方向に移動する。従って、ワイヤロープ3A1全体は摩擦抵抗力を発生しながら伸長するので、落石によるエネルギーを吸収するように作用する。
【0021】
中間緩衝装置は上記の構成のものの他、幾つかのものが提案されており、それらも本発明方法を実施するために、ワイヤロープに組み込んで使用することができる。
【0022】
また、上記中間緩衝装置は予想される落石の状況に応じて、一本のワイヤロープに1個ないし複数個組み込まれ、しかも、落石による衝撃を最初に受ける箇所に組み込みむことが好ましい。
【0023】
上記中間緩衝装置によりもたらされる摩擦抵抗力を、防護ネット中において、ワイヤロープ毎に順次変えることによって、落石の転落方向を、摩擦抵抗力の小さいワイヤロープ方向へ指向し、落石の最終到達箇所を任意に決めるようにすることができる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の落石防護方法は、既設の構築物に対し、その上部にワイヤロープを張り渡すだけで所望の防護対策を講じることができ、更にワイヤロープの上端及び下端の固定箇所を現場の状況に応じて自由に選定でき、更に大きな落石エネルギーに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法により形成した落石防護装置の側面図である。
【図2】図1中のA部の拡大尺図である。
【図3】図1に示した落石防護装置の平面図である。
【図4】図3中のB部の拡大尺図である。
【符号の説明】
1…トンネルの明かり巻き部
2…ロックシェッド
3A、3B、3C…防護ネット
3A1、3B1、3C1…ワイヤロープ
4…岩盤
5…ロックボルト
6…ロックボルト
11…チェーン
12…網
13…結合コイル
3A1K…中間緩衝装置
3A1a、3A1b…ロープ片
3A1aK、3A1bK…緩衝具
Claims (7)
- 張力を受けた際に摩擦抵抗を生じながら長手方向へ伸長してその摩擦抵抗により張力発生エネルギーを吸収する構成を持たせたワイヤロープを使用し、防護すべき構築物の上方に上記のワイヤロープを落石の落下方向へ向けて張り渡してその上端と下端を確固に固定し、このようなワイヤロープを複数本並列配置して防護すべき構築物の上部を覆い、各ワイヤロープに持たせる摩擦抵抗を、ワイヤロープの並列中の配置位置によって異ならせることを特徴とする、落石から構築物を防護する方法。
- 並列に配置されたワイヤロープがチェーンによって横方向に次々に連結され、チェーンによるこの横方向の連結がワイヤロープの上端から下端の範囲で複数の箇所に亙って行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 並列に配置されたワイヤロープの一群の上面を目の細かい金網によって覆うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
- 並列に配置されたワイヤロープの一群を一層として、同群を多層に亙って設けることを特徴とする、請求項1ないし3の一つに記載の方法。
- トンネルの出入り口に設けた明かり巻き部を落石から防護する場合において、各ワイヤロープの上端を明かり巻き部上方の岩盤にロックボルトにて固定し、下端を明かり巻き部に付設したロックシェッド等に固定することを特徴とする、請求項1ないし4の一つに記載の方法。
- 各ワイヤロープが複数のロープ片から成っており、各ロープ片の端部に互いに重ね合わされた部分を設け、この重ね合わされた部分において、滑り摩擦を発生させる態様で両ロープを掴持する緩衝具によって、双方のロープ片が連結されていることを特徴とする、請求項1ないし5の一つに記載の方法。
- 落石発生の惧れのある傾斜地若しくはその付近に造られた構築物の上方において傾斜地上方から下方へ張り渡され、同構築物を覆って横方向へ並列し、且つそれぞれ上端と下端を固定された複数のワイヤロープを有し、各ワイヤロープが、張力を受けた際に摩擦抵抗を生じながら長手方向へ伸長してその摩擦抵抗により張力発生エネルギーを吸収する構成を有し、各ワイヤロープに持たせる摩擦抵抗を、ワイヤロープの並列中の配置位置によって異ならせていることを特徴とする、落石から構築物を防護する装置。
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