JP4106400B2 - 厚さ計測装置および厚さ計測方法 - Google Patents
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Description
変位センサを用いる変位計測手法は、膜を形成する前の物質表面の位置と、形成された膜の表面の位置との差から膜の厚みを算出するものであるが、変位センサの基準面と物質表面の相対的な位置を常に正確に設置しなくては相対的な比較ができなくなるため、高精度な位置決め技術が必要となるし、膜形成の前後で計測を行わなければならず手間がかかるという問題がある。また、計量的手法では、膜形成前後の物質の質量を測定するだけであるから、高度な技術は必要としないが、膜が形成される物質の質量に対して膜の質量が軽い場合、例えば物質の厚さに比べて膜の厚さが薄い場合等には精度良く計測することができないという問題がある。
従来例1の技術は、物質に接触させた超音波探触子を振動させることによって物質内に超音波を入射するものである。このため、超音波探触子の振動周波数を変化させて、膜に入射される超音波の周波数を変化させれば、膜の共振周波数を求めることができ、この共振周波数から膜厚を求めることができる。そして、超音波探触子を接触させた部分の厚さを測定できるから、所定の位置の厚さを確実に測定できる。
また、従来例2の技術は、物質に接触させた超音波探触子からパルス状の超音波を物質内に入射させるものである。このため、入射された超音波に起因して膜内に発生する振動を解析すれば、膜の共振周波数を求めることができ、この共振周波数から膜厚を求めることができる。そして、超音波探触子を接触させた部分の厚さを測定できるから、所定の位置の厚さを確実に測定できる。
従来例3の技術は、電磁超音波センサによって膜内に渦電流を発生させ、この渦電流に起因する膜の機械的振動によって膜内に振動を発生させるものである。このため、膜内に発生する振動を解析すれば、膜の共振周波数を求めるものであるから、従来例2の技術と同様に、一回の測定で膜厚を求めることができ、この共振周波数から膜厚を求めることができる。
また、従来例3の技術は、電磁超音波センサを膜に接触させなくても膜内に渦電流を発生させることができるため、非接触で膜厚を測定することも可能であるが、渦電流が発生する領域を狭くすることは困難であり、また測定される厚さは渦電流が形成された領域の平均値となるため、局所の厚さを測定することはできない。また、渦電流を発生させなければならないので、厚さを測定することができる物質は強磁性体や導電材料に限られ、それ以外の素材の厚さを測定することはできない。そして、電磁超音波センサによって膜内に発生させることができる振動の周波数は、せいぜい10MHz程度であり、理論上は、0.1mm程度の膜まで測定できるものの、実際の装置としては5mm以下の膜厚を測定することは困難である。さらに、膜に発生させる振動のエネルギに比べて電磁超音波センサに加えるエネルギは非常に大きいためエネルギ効率が悪く、電磁超音波センサに高電流を流さなければならないため、その設備も大型化してしまうという問題がある。
第2発明の厚さ測定装置は、物質の厚さを測定する測定装置であって、前記物質に振動を発生させる振動発生手段と、該振動発生手段によって発生された前記物質内の振動を検出する振動検出手段と、該振動検出手段が検出した振動から、前記物質の共振周波数を算出する周波数解析手段とからなり、前記振動発生手段が、前記物質に向けて、該物質が吸収しうる波長の光を照射する光照射部を備えており、前記物質に照射される光が、パルス光であり、前記光照射部が、複数回、パルス光を照射する場合において、前記振動検出手段を、前記光照射部が光を照射するタイミング毎に異なる位置に配置する移動手段を備えており、前記周波数解析手段が、前記光照射部が一のパルス光を照射してから前記振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、前記光照射部が他のパルス光を照射してから前記振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、前記振動検出手段が各パルス光により前記物質内部に発生した振動を検出する各測定位置における音速計測距離とに基づいて前記物質内の音速を算出する音速解析部を備えていることを特徴とする。
第3発明の厚さ測定装置は、請求項1または2記載の発明において、前記物質に照射される光を集光する集光器を備えていることを特徴とする。
第4発明の厚さ測定装置は、請求項1記載の発明において、前記物質に照射される光が、パルス光であることを特徴とする。
第5発明の厚さ測定装置は、請求項1または2記載の発明において、前記振動検出手段が、前記物質内の振動を非接触で検出しうる非接触型振動検出器であることを特徴とする。
第6発明の厚さ測定装置は、請求項1または2記載の発明において、前記非接触型振動検出器が、光干渉方式振動計であることを特徴とする。
第7発明の厚さ測定方法は、物質の厚さを測定する測定方法であって、
振動発生手段の光照射部から、物質に向けて、物質が吸収しうる波長の光を照射し、物質に光のエネルギを吸収させることによってその内部に振動を発生させ、複数の振動検出手段によって物質内部に発生した振動を検出し、周波数解析手段によって、検出された振動を周波数解析して物質の共振周波数を算出し、光照射部が光を照射してから各振動検出手段が検出した振動を検出するまでの時間遅れと各振動検出手段の音速計測距離とに基づいて物質内の音速を算出し、算出された共振周波数と算出された物質内の音速とに基づいて、物質の厚さを算出することを特徴とする。
第8発明の厚さ測定方法は、物質の厚さを測定する測定方法であって、振動発生手段の光照射部から、物質に向けて、パルス光を複数回照射し、物質にパルス光のエネルギを吸収させることによってその内部に振動を発生させ、光照射部がパルス光を照射するタイミング毎に、移動手段によって振動検出手段を異なる位置に配置して、振動検出手段によって各パルス光により物質内部に発生した振動を検出し、周波数解析手段によって、検出された振動を周波数解析して物質の共振周波数を算出し、光照射部が一のパルス光を照射してから振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、光照射部が他のパルス光を照射してから振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、振動検出手段が各パルス光により物質内部に発生した振動を検出する各測定位置における音速計測距離とに基づいて物質内の音速を算出し、算出された共振周波数と算出された物質内の音速とに基づいて、物質の厚さを算出することを特徴とする。
第9発明の厚さ測定方法は、請求項7または8記載の発明において、集光器によって光を集光して物質に照射させることを特徴とする。
第10発明の厚さ測定方法は、請求項7記載の発明において、前記物質に照射される光が、パルス光であることを特徴とする。
第2発明によれば、振動発生手段の光照射部が物質が吸収しうる波長の光を照射するため、照射された光のエネルギを吸収した物質が物質内で熱エネルギに変換される。このため、熱エネルギを吸収した物質の熱膨張と、熱の放出拡散による収縮が発生し、物質内において振動が発生するので、その振動を振動検出手段によって検出し、周波数解析手段によって共振周波数を算出すれば、その共振周波数から物質の厚さを検出することができる。よって、振動発生手段を物質に接触させなくても物質の厚さを測定することができるから、所望の位置の物質の厚さを、広範囲でも簡単に測定することができる。しかも、音速解析部によって物質内部の音速を算出することができるから、物質の厚さの測定精度を高くすることができる。
第3発明によれば、光を集光して物質に照射するから、局所にのみ光のエネルギを供給することができる。すると、物質の厚さ方向の振動は、光が照射された部分とその近傍のみで発生させることができるから、物質の局所の厚さを正確に測定することができる。そして、光を集光する割合、言い換えれば光を照射する範囲を調整して、光のエネルギを吸収する領域を調整することができるから、所望の領域の平均的な厚さを測定することが可能である。
第4発明によれば、パルス光を照射すれば、物質内に広い範囲の周波数成分を含む振動を発生させることができるから、測定できる物質の厚さの範囲を広くすることができる。そして、物質内に発生する振動は、パルス光の幅を狭してその波形をデルタ関数に近づければ近づけるほど高周波成分を含むことになるので、パルス光の幅を狭くすれば非常に厚さの薄い物質であっても測定することができる。
第5発明によれば、完全に非接触な状態で物質の厚さを測定することができるから、測定する物質の表面を汚染したり傷つけたることなく物質の厚さを測定することができる。よって、例えば、Si単結晶引き上げ炉の炭素るつぼ等の表面に施された黒色のカーボン皮膜などのように汚染物質の付着が許されないもの等であっても、その品質を低下させることなく、厚さの計測を行なうことができる。
第6発明によれば、光干渉式振動計から照射させる光を集光して、その焦点を、振動検出手段の光照射部の光が照射されている箇所の近傍に配置すれば、物質内に発生する厚さ方向の振動を検出することができるから、厚さ方向の共振周波数を検出する精度を高くすることができる。
第7発明によれば、振動発生手段の光照射部が物質が吸収しうる波長の光を照射するため、照射された光のエネルギを吸収した物質が物質内で熱エネルギに変換される。このため、熱エネルギを吸収した物質の熱膨張と、熱の放出拡散による収縮が発生し、物質内が振動が発生するので、その振動を振動検出手段によって検出し、周波数解析手段によって共振周波数を算出すれば、その共振周波数から物質の厚さを検出することができる。よって、振動発生手段を物質に接触させなくても物質の厚さを測定することができるから、所望の位置の物質の厚さを、広範囲でも簡単に測定することができる。しかも、音速解析部によって物質内部の音速を算出することができるので、物質の厚さの測定精度を高くすることができる。
第8発明によれば、振動発生手段の光照射部が物質が吸収しうる波長の光を照射するため、照射された光のエネルギを吸収した物質が物質内で熱エネルギに変換される。このため、熱エネルギを吸収した物質の熱膨張と、熱の放出拡散による収縮が発生し、物質内が振動が発生するので、その振動を振動検出手段によって検出し、周波数解析手段によって共振周波数を算出すれば、その共振周波数から物質の厚さを検出することができる。よって、振動発生手段を物質に接触させなくても物質の厚さを測定することができるから、所望の位置の物質の厚さを、広範囲でも簡単に測定することができる。しかも、音速解析部によって物質内部の音速を算出することができるから、物質の厚さの測定精度を高くすることができる。
第9発明によれば、光を集光して物質に照射するから、局所にのみ光のエネルギを供給することができる。すると、物質の厚さ方向の振動は、光が照射された部分とその近傍のみで発生させることができるから、物質の局所の厚さを正確に測定することができる。そして、光を集光する割合、言い換えれば光のエネルギを吸収する領域を調整することができるから、所望の領域の平均的な厚さを測定することが可能である。
第10発明によれば、パルス光を照射すれば、物質内に広い範囲の周波数成分を含む振動を発生させることができるから、測定できる物質の厚さの範囲を広くすることができる。そして、物質内に発生する振動は、パルス光の幅を狭してその波形をデルタ関数に近づければ近づけるほど高周波成分を含むことになるので、パルス光の幅を狭くすれば非常に厚さの薄い物質であっても測定することができる。
本発明の厚さ測定装置は、物質内に振動を発生させ、その振動から物質の共振周波数を求めることによって物質の厚さを測定する装置であって、物質に振動を発生させる方法として、光を物質に照射したときに光のエネルギが物質内で熱エネルギに変換される、いわゆる光熱変換効果を利用したことに特徴を有するものである。
なお、光に変えて、電磁波を照射させた場合であっても、光熱変換効果と同様に、電磁波のエネルギを物質内で熱エネルギに変換させることができるが、光も電磁波の一種と考えられるので、以下には、光を照射する場合のみを説明する。
図3に示すように、所定の波長の光を物質Mの膜Sの表面に照射した場合、その膜Sを構成する成分が、照射される光に対して不透明である場合、言い換えれば、照射された光が膜Sを完全に透過しない場合には、照射された波長に対する膜Sの分光吸収率に応じて光のエネルギが膜に吸収される。
すると、膜Sで吸収された光エネルギーは膜Sの表面層内で熱エネルギに変換され、膜表面から以下の深さ(以下、熱拡散長μという)に、熱が発生する。
膜Sの表面層内で熱が発生すると、その膜Sの表面層が熱膨張しやがて放射や熱の周囲への拡散によって収縮する。言い換えれば、膜Sの表面層が膜厚方向に振動するため、この振動が膜内を伝播することになる。膜S内を伝播する振動は、膜Sと空気との界面や、膜Sと膜Sが形成されている基板材料Bとの界面等、音響インピーダンスの相対的な差が存在する界面において反射されるため、2つの界面の間の膜Sは、膜Sの表面層の熱膨張と収縮によって発生した振動に起因して、その膜Sの厚さに対応する共振が発生することになる。
ところで、音響インピーダンスZは、物質の密度ρと音速cに基づいて以下の式で求められる。
Z=ρc (密度ρと音速c )
すると、膜Sの音響インピーダンスよりも基板材料Bの音響インピーダンスが大きい場合、膜S内には、膜Sと空気との界面は自由端を有し、膜Sと基板材料Bとの界面に固定端を有する共振が発生する(図3(B))。この共振は、その波長の(2n-1)/4倍が膜厚Dとなるから、共振周波数をfとすると、膜厚Dは、以下の式(1)から求めることができるのである。
D=((2n-1)/4)*(V/f) (V:膜内の音速) (1)
なお、各共振周波数の波長は、最も低い周波数である基本周波数(図3ではf1)の波長の(2n-1)/4倍となるが、他の共振周波数は基本周波数f1に比べて強度が弱いため、基本周波数f1のみを使用すれば膜厚Dを算出することができるが、複数の共振周波数(図3ではf2、f3、f4等)を利用すれば、測定精度を向上させることも可能である。
図1において、符号Mは、基板材料Bの表面に厚さを測定する膜Sが形成されている物質を示している。
図1に示すように、この物質Mの膜Sの近傍には、本実施形態の厚さ測定装置1の振動発生手段10の光照射部11が配設されている。この光照射部11は、物質Mの膜Sに光を照射するためのものであり、この光照射部11は物質Mに照射する光を発振する光供給部12に接続されている。
この光供給部12は、例えば、ArF(フッ化アルゴン)レーザや窒素レーザ、CO2レーザ、YAGレーザ等のパルス発振レーザ等であるが、膜Sが吸収しうる波長のパルス光を、光熱変換効果による振動を発生させることができる十分な光強度で光照射部11に供給することができる光源であれば、特に限定はない。
L=((2n−1)/2)*(V/f) (3)
そして、片側の板端面が支持されている場合には、両端面での共振波形は固定端となり下記式(4)によって膜Sの長手方向の長さを測定することができる。
L=((2n−1)/4)*(V/f) (4)
但し、この式(3)、式(4)に用いる音速Vは横波、若しくは板波の音速である。そして、膜Sの長手方向と幅方向長さに差がある場合には、膜Sの長手方向だけでなく、膜Sの長手方向と幅方向長さに応じた共振周波数を生じるから、両方を求めることも可能である。
そして、光照射部11から照射される光をミラーで反射させたり、プリズム等で屈曲させれば、光の光路を容易に変更できるから、膜Sの厚さを測定する位置を容易に変更することができ、広範囲の厚さ計測に容易に対応することができる。
そして、膜S内に発生する振動は、パルス光の半値幅を狭くすれば、膜S内に発生される振動が高周波成分を含むことになる。パルス光の波形の照射時間、つまりその半値幅が短ければ短いほどデルタ関数に近づくことになるが、一般に、デルタ関数をフーリエ変換して周波数成分を見ると、全ての周波数成分が含まれていることが知られている。つまり、パルス光の半値幅を短かくしてデルタ関数に近づければ、より高周波の成分を含む波形となり、膜S内で共振を発生させることができる周波数を高くできる。言い換えれば、共振の波長を短くできるから、厚さの薄い膜Sであっても測定することができる。例えば、薄いフィルム(約数十μm)等にコーティングされた10μm程度の厚さの膜や、アルミ板や銅板等の表面にコーティングされた膜、ガラスの表面にコーティングされた膜などであっても測定可能である。
さらになお、光供給部12から照射される光は膜Sがそのエネルギを吸収しうる波長であればよいが、ArF レーザを使用すれば、ArF レーザから照射される193 nmの光を透過する物体はフッ化カルシュームぐらいであるから、大半の物質の厚さ測定に本発明を適用できるので好適である。
とくに、振動検出手段13として、光干渉方式によるレーザドップラー振動計等の光干渉式振動計を使用すれば、振動検出手段13から照射させる光を集光して、その焦点を、振動検出手段10の光照射部11の光が照射されている箇所の近傍に配置することも可能となる。すると、膜Sに発生する厚さ方向の振動を直接検出することができるから、厚さ方向の振動を検出する感度を向上させることができる。
さらになお、膜Sの表面に対する検出器の接触による汚染や、配線取り回し、膜Sと接触機構の煩雑さ等に特段の問題が無ければ、振動検出手段13として接触式のAE(Acoustic Emission)センサー等でもよい。
そして、本実施形態の厚さ測定装置1を使用すれば、その表面層に熱を吸収させさえすればその内部に共振を発生させてその厚さを測定できるから、従来のある厚さ測定方法では計測が困難であった厚さが100μmよりも厚いガラスであっても、その厚さを測定することができる。
D=((2n-1)/2)*(V/f) (V:膜内の音速) (2)
そして、この場合には、振動検出手段13を、光照射部11との間に物質Mを挟むように配置しておけば、物質M内に発生するその厚さ方向の振動を直接測定することができるから、振動検出手段13が検出した振動波形から物質Mの厚さ方向の共振周波数を精度よく求めることとができ、物質Mの厚さの測定精度高くすることができる。。
図5に示すように、膜Sが複数の層S1〜S3を有する場合には、膜S内の振動は、各層の境界面においても振動の反射が生じ、各層の内部にそれぞれ共振が発生するから、振動検出手段13が検出した振動波形を解析すれば、各層の共振周波数を算出することができ、各層の厚さを計測することができる。
そして、隣接する二層間境界における反射率は、各層を構成する物質の成分密度から決定される音響インピーダンスをZ1、Z2とすると以下の式で決定される。
反射率=(Z1−Z2)/(Z1+Z2)
つまり、各層の境界面の反射率が100%でなければ、各層内で共振するモード(以下、基本共振モードという)だけでなく、複数の膜にまたがって共振するモード(以下、複数膜共振モードという)も発生する(図5)。すると、図6に示すように、基本共振モードとして、層S1、層S2、層S3のそれぞれの厚さに対応するf1〜f3の共振周波数を有する共振が発生し、複数膜共振モードとして、層S1と層S2を合わせた厚さ、層S2と層S3を合わせた厚さ、層S1〜層S3を合わせた厚さに、それぞれ対応するf4〜f6の共振周波数を有する共振が発生する。振動検出手段13が検出した振動波形には、これら全ての共振振動が含まれるから、振動波形を解析して、各共振周波数を算出すれば、各層の膜厚を算出することが可能となり、複数膜共振モードを利用することによって、各層の膜厚の測定精度を高くすることができる。
なお、各層S1〜3に発生する共振や複数の膜にまたがって発生する共振は、共振が形成される層とその層を挟む層の音響インピーダンスの相対的な差によって二層間境界において自由端になる場合と固定端になる場合が考えられる。例えば、層S2に共振が形成される場合には、層S2の音響インピーダンスが層S1および層S3の音響インピーダンスよりも大きい場合には、層S2に形成される共振は両端が自由端となるし(図9(A))、逆に、層S2の音響インピーダンスが層S1および層S3の音響インピーダンスよりも小さい場合には、層S2に形成される共振は両端が固定端となる(図9(B))。よって、式(2)によって共振している層の厚さを求めることができる。
そして、層S2の音響インピーダンスが、層S1の音響インピーダンスより小さく層S3の音響インピーダンスより大きい場合には、層S2に形成される共振は、層S1との境界が自由端となり層S3との境界が固定端となる(図2参照)から、式(1)によって共振している層の厚さを求めることができる。
そして、局所の膜厚を測定できるから、膜の厚さの局所的な分布を計測することも可能となり、膜厚の均一性を検査することも可能である。
また、集光器に光を集光する割合を調整する機能を設けておけば、光を集光する割合、言い換えれば光のエネルギを吸収する領域を調整することができる。すると、所望の領域の平均的な膜Sの厚さも測定することが可能である。
さらに、光を集光すれば膜Sや物質Mに照射される光のエネルギ密度を高くすることができるから、光供給部12の出力を低くしても、膜Sや物質Mに照射される光の強度を、光熱変換効果による振動を膜Sや物質M内に発生させることができる十分な光強度とすることができる。よって、装置をコンパクトにすることができ、計測に必要なエネルギを少なくすることができる。
そして、測定された音速は横波、つまり基板材料Bの表面に沿った方向の音速であるから、音速解析部16によって横波の音速を縦波の音速、つまり膜の厚さ方向の音速に変換して、この縦波の音速を利用して膜Sの厚さを算出すれば、膜Sの厚さの測定精度をさらに高くすることができる。
なお、強度分布を正確に計測することが難しかったり、光源の種類によってはガウス分布していない場合もあるが、このような場合には、レンズ等を用いて光を集光したり、絞りを用いて光束を狭めれば、光が照射される範囲と計測範囲を狭くすることができ、音速計測距離の誤差を小さくすることができる。
さらに、図8に示すように、複数の振動検出手段13を設けておけば、一回だけパルス光を照射しても、パルス光を照射してから各振動検出手段13が振動を検出するまでの時間遅れと、各振動検出手段13音速計測距離とから膜S内部の音速を算出することができる。
10 振動発生手段10
11 光照射部
13 振動検出手段
15 周波数解析手段
16 音速解析部
Claims (10)
- 物質の厚さを測定する測定装置であって、
前記物質に振動を発生させる振動発生手段と、
該振動発生手段によって発生された前記物質内の振動を検出する振動検出手段と、
該振動検出手段が検出した振動から、前記物質の共振周波数を算出する周波数解析手段とからなり、
前記振動発生手段が、前記物質に向けて、該物質が吸収しうる波長の光を照射する光照射部を備えており、
前記振動検出手段が、複数設けられており、
前記周波数解析手段が、
前記光照射部が光を照射してから各振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、各振動検出手段の音速計測距離とに基づいて前記物質内の音速を算出する音速解析部を備えている
ことを特徴とする厚さ測定装置。 - 物質の厚さを測定する測定装置であって、
前記物質に振動を発生させる振動発生手段と、
該振動発生手段によって発生された前記物質内の振動を検出する振動検出手段と、
該振動検出手段が検出した振動から、前記物質の共振周波数を算出する周波数解析手段とからなり、
前記振動発生手段が、前記物質に向けて、該物質が吸収しうる波長の光を照射する光照射部を備えており、
前記物質に照射される光が、パルス光であり、
前記光照射部が、複数回、パルス光を照射する場合において、前記振動検出手段を、前記光照射部が光を照射するタイミング毎に異なる位置に配置する移動手段を備えており、
前記周波数解析手段が、
前記光照射部が一のパルス光を照射してから前記振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、前記光照射部が他のパルス光を照射してから前記振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、前記振動検出手段が各パルス光により前記物質内部に発生した振動を検出する各測定位置における音速計測距離とに基づいて前記物質内の音速を算出する音速解析部を備えている
ことを特徴とする厚さ測定装置。 - 前記物質に照射される光を集光する集光器を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の厚さ測定装置。 - 前記物質に照射される光が、パルス光である
ことを特徴とする請求項1記載の厚さ測定装置。 - 前記振動検出手段が、前記物質内の振動を非接触で検出しうる非接触型振動検出器である
ことを特徴とする請求項1または2記載の厚さ測定装置。 - 前記非接触型振動検出器が、光干渉方式振動計である
ことを特徴とする請求項1または2記載の厚さ測定装置。 - 物質の厚さを測定する測定方法であって、
振動発生手段の光照射部から、物質に向けて、物質が吸収しうる波長の光を照射し、物質に光のエネルギを吸収させることによってその内部に振動を発生させ、
複数の振動検出手段によって物質内部に発生した振動を検出し、
周波数解析手段によって、
検出された振動を周波数解析して物質の共振周波数を算出し、
光照射部が光を照射してから各振動検出手段が検出した振動を検出するまでの時間遅れと各振動検出手段の音速計測距離とに基づいて物質内の音速を算出し、
算出された共振周波数と算出された物質内の音速とに基づいて、物質の厚さを算出する
ことを特徴とする厚さ測定方法。 - 物質の厚さを測定する測定方法であって、
振動発生手段の光照射部から、物質に向けて、パルス光を複数回照射し、物質にパルス光のエネルギを吸収させることによってその内部に振動を発生させ、
光照射部がパルス光を照射するタイミング毎に、移動手段によって振動検出手段を異なる位置に配置して、振動検出手段によって各パルス光により物質内部に発生した振動を検出し、
周波数解析手段によって、
検出された振動を周波数解析して物質の共振周波数を算出し、
光照射部が一のパルス光を照射してから振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、光照射部が他のパルス光を照射してから振動検出手段が振動を検出するまでの時間遅れと、振動検出手段が各パルス光により物質内部に発生した振動を検出する各測定位置における音速計測距離とに基づいて物質内の音速を算出し、
算出された共振周波数と算出された物質内の音速とに基づいて、物質の厚さを算出する
ことを特徴とする厚さ測定方法。 - 集光器によって光を集光して物質に照射させる
ことを特徴とする請求項7または8記載の厚さ測定方法。 - 前記物質に照射される光が、パルス光である
ことを特徴とする請求項7記載の厚さ測定方法。
Priority Applications (3)
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