JP4105429B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」とも称する。)に関する。さらに詳しくは、民生用および工業用の表示機器(ディスプレイ)あるいはプリンターヘッドの光源等に用いて好適な有機EL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の有機EL素子の一例が、文献1:「特開平4−297076号公報」に開示されている。この文献1に開示された有機EL素子60は、図10に示すように、陰極層58と透明電極である陽極層50との間に、三層の有機膜52,54および56を挟んだ有機膜積層を構成している。そして、三層の有機膜のうち、陰極層58と接する第1の有機膜52には、ドナー性不純物がドープされており、一方、陽極層50と接する第2の有機膜54にはアクセプタ不純物がドープされている。このアクセプタ不純物としては、CN置換化合物およびキノン化合物(例えばクロラニル)が使用されている。そして、第1の有機膜52と第2の有機膜とに挟まれた第3の有機膜を発光層56としている。この発光層56には、第1および第2の有機膜52および54によってキャリアが閉じ込められる。そのため、この有機EL素子60は、低い駆動電圧において、高い発光輝度(発光効率)を得ることができる。
【0003】
また、従来の有機EL素子の他の一例が、文献2:「Digest of Thechnical Papers(ダイジェスト・オブ・テクニカル・ペイパーズ) SID' 97,p.775,1997」に開示されている。この文献2に開示された有機EL素子は、電子輸送層を、8−ヒドロキシキノリンAl錯体(Alq錯体)にLiを添加した材料で構成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、文献1に開示された有機EL素子において、アクセプタ不純物として用いられるCN置換化合物やキノン化合物は、電子輸送性に優れているものの、アクセプター性が強く、その電子親和力は3.7eV以上と高い値である。したがって、これらのアクセプタ不純物は、発光域を構成する化合物と反応して、電荷移動錯体または励起錯体(エキシプレックス)を形成しやすい傾向がある。そのため、有機EL素子の発光輝度が低下したり、寿命が短いという問題があった。
【0005】
また、文献1に開示された有機EL素子において、ドナー性不純物がドープされた第1の有機層の電子親和力と、発光域の電子親和力との差は、0.5eV以上と大きな値としてある。このため、発光域と第1の有機層との接合がブロッキング接合となり、第1の有機層から発光域への電子注入が不良となりやすく、結果として、有機EL素子の発光効率がさらに低下するという問題があった。
【0006】
一方、文献2に開示された有機EL素子においても、Alq錯体は窒素原子を含んでおり、このAlq錯体とLi化合物とからなる電子輸送層は電子輸送性に優れているものの、電荷移動錯体またはエキシプレックスを形成しやすく、また駆動電圧が高いという傾向がある。したがって、文献1に開示された有機EL素子と同様に、有機EL素子の発光輝度が低下しやすく、寿命が短いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の発明者らは上記問題を鋭意検討したところ、電子注入域において窒素原子を含まない芳香族環化合物を使用するか、あるいは、窒素原子を含んだ芳香族環化合物を使用した場合であっても、特定の還元性ドーパントを組合わせて使用することにより、有機EL素子の駆動電圧を低減し、発光輝度を向上させるとともに、長寿命化が図れることを見出した。すなわち、本発明は、駆動電圧が低く発光輝度が高い上に、寿命の長い有機EL素子の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の有機EL素子(第一の発明)は、
少なくとも陽極層、発光域、電子注入域および陰極層を順次に積層した構造を有し、電子注入域のガラス転移点を100℃以上の値とするとともに、
電子注入域に、窒素原子を含まない芳香族化合物と、下記式(1)で表わされる還元性ドーパントとを含有しており、
さらに、電子注入域の電子親和力を1.8〜3.6eVの範囲としてある。
Ar・・・(1)
(ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換または置換の炭素数10〜40の芳香族環化合物を表す。)
【0009】
このように、電子注入域に、窒素原子を含まない芳香族環化合物を使用することにより、優れた電子注入性が得られるとともに、隣接する発光域の構成材料と反応することを抑制することができる。すなわち、窒素原子を含まない芳香族環化合物は、炭素および水素からなる芳香族環化合物、または炭素、水素および酸素からなる芳香族環化合物から構成されており、窒素含有芳香族環や電気吸引基(例えば−CN基、−NO2基、アミド基、イミド基)といった窒素含有基を含んでいない。したがって、電子注入域と発光域との界面に、発光効率の低い電荷移動錯体またはエキシプレックスが発生することを効率的に抑制することができる。
【0010】
また、電子注入域に窒素原子を含まない芳香族化合物とともに、
Ar
(ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換または置換の炭素数10〜40の芳香族環化合物を表す。)
からなる還元性のドーパントを含有することにより、窒素原子を含まない芳香族化合物が有する芳香族環を効率的に還元して、アニオン状態とすることができる。
したがって、発光効率の低い電荷移動錯体またはエキシプレックスの発生をより有効に防止して、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化を図ることができる。
【0011】
さらに、このように電子注入域の電子親和力を制限することにより、優れた電子注入性が得られるとともに、電子注入域と発光域との界面において、電荷移動錯体またはエキシプレックスが発生することを抑制し、さらには、電子注入域と発光域とのブロッキング接合の発生も抑制することができる。したがって、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化をさらに図ることができる。
【0012】
また、電子注入域のガラス転移点を100℃以上とすることにより、有機EL素子の耐熱温度を、例えば85℃以上とすることができる。したがって、発光時に電流注入層から発光域への電流注入によるジュール熱により、電子注入域が短時間で破壊される傾向が少なくなり、有機EL素子の長寿命化をより図ることができる。
【0013】
また、第一の発明の有機EL素子を構成するにあたり、還元性ドーパントが、アントラセン、ナフタレン、ジフェニルアントラセン、ターフェニル、クォーターフェニル、キンクフェニル、および、セクシフェニルからなる群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形成された基を含有することが好ましい。
【0014】
また、第一の発明の有機EL素子を構成するにあたり、芳香族環化合物が、アントラセン、フルオレン、ペリレン、ピレン、フェナントン、クリセン、テトラセン、ルブレン、ターフェニレン、クォーターフェニレン、セクシフェニレンおよびトリフェニレンからなる群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形成された基を含有することが好ましい。
【0015】
また、第一の発明の有機EL素子を構成するにあたり、還元性ドーパントの仕事関数を3.0eV以下とすることが好ましい。
このように、仕事関数が3.0eV以下の還元性ドーパントを使用することにより、還元能力を十分に発揮させて、駆動電圧の低減、発光輝度の向上や長寿命化を図ることができる。
【0016】
また、第一の発明の有機EL素子を構成するにあたり、電子注入領域のエネルギーギャップを2.7eV以上とすることが好ましい。
このように、電子注入領域のエネルギーギャップを大きくしておけば、電子注入領域にホールが移動することを有効に防止することができる。したがって、電子注入域自体が発光することを回避することができる。
【0017】
また、第一の発明の有機EL素子を構成するにあたり、芳香族化合物と還元性ドーパントとの添加比率を1:20〜20:1(モル比)の範囲とすることが好ましい。
芳香族化合物と還元性ドーパントとの添加比率が1:20〜20:1(モル比)の範囲外となると、有機EL素子の発光輝度が低下したり、寿命が短くなる傾向がある。
【0018】
また、第一の発明の有機EL素子を構成するにあたり、発光域と電子注入域とに、窒素原子を含まない同一種類の芳香族化合物を含有することが好ましい。
両域に、このように同一種類の芳香族化合物を含有することにより、優れた密着性が得られ、電子注入領域から発光域にスムーズに電子が移動できるとともに、機械的強度を向上させることができる。
【0019】
また、第一の発明の有機EL素子を構成するにあたり、あるいは後述する第二の発明の有機EL素子を構成するにあたり、陰極層と電子注入域との間および陽極層と発光域との間、あるいはいずれか一方に界面層を設けることが好ましい。このように界面層を設けることにより、発光輝度や半減寿命の値を著しく向上させることができる。
【0020】
また、本発明の別の有機EL素子(第二の発明)は、
少なくとも陽極層、発光域、電子注入域および陰極層を順次に積層した構造を有しており、電子注入域に、電子輸送性化合物と、仕事関数が2.9eV以下の
Ar
(ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換または置換の炭素数10〜40の芳香族環化合物を表す。)
からなる還元性ドーパントとを含み、
かつ、電子注入域の電子親和力を1.8〜3.6eVの範囲としてある。
【0021】
このように電子注入域に、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントを含有することにより、電子輸送性化合物が酸化した場合にも、効率的に還元してアニオン状態とすることができる。したがって、電荷移動錯体またはエキシプレックスの発生を有効に防止して、有機EL素子における駆動電圧の低減、発光輝度の向上や長寿命化を図ることができる。
すなわち、第二の発明においては、還元性ドーパントの還元能力が高いために、第一の発明と異なり、電子輸送性化合物に窒素含有芳香族環や電気吸引基といった窒素含有基(窒素原子)を含んでいたとしても、発光域の構成材料と反応することを抑制できるという利点がある。
【0022】
また、このように電子注入域の電子親和力を制限することにより、電子注入域と発光域との界面において、電荷移動錯体またはエキシプレックスが発生することを抑制できると共に、電子注入域と発光域とのブロッキング接合の発生も抑制することができる。したがって、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化をさらに図ることができる。
【0023】
また、第二の発明の有機EL素子を構成するにあたり、還元性ドーパントが、アントラセン、ナフタレン、ジフェニルアントラセン、ターフェニル、クォーターフェニル、キンクフェニル、および、セクシフェニルからなる群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形成された基を含有することことが好ましい。
【0024】
また、第二の発明の有機EL素子を構成するにあたり、電子輸送性化合物が、含窒素複素環化合物を含むことが好ましい。
含窒素複素環化合物は、電子輸送性に優れており、電子注入性がさらに向上するためである。
【0025】
また、第二の発明の有機EL素子を構成するにあたり、含窒素複素環化合物が、含窒素錯体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体およびトリアゾール誘導体からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であることが好ましい。
【0026】
また、第二の発明の有機EL素子を構成するにあたり、電子輸送性化合物と還元性ドーパントとの添加比率を1:20〜20:1(モル比)の範囲とすることが好ましい。
電子輸送性化合物と還元性ドーパントとの添加比率が1:20〜20:1(モル比)の範囲外となると、有機EL素子の発光輝度が低下したり、寿命が短くなる傾向がある。
【0027】
また、第二の発明の有機EL素子を構成するにあたり、電子注入域のガラス転移点を100℃以上とすることが好ましい。
このように電子注入域のガラス転移点を100℃以上とすることにより、有機EL素子の耐熱温度を上げて、有機EL素子の長寿命化を図ることができる。
【0028】
また、第二の発明の有機EL素子を構成するにあたり、発光域と電子注入域とに、同一種類の電子輸送性化合物を使用することが好ましい。
両域に、このように同一種類の電子輸送性化合物を含有することにより、優れた密着性が得られ、電子注入領域から発光域にスムーズに電子が移動できるとともに、機械的強度を向上させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。
なお、参照する図面は、この発明が理解できる程度に各構成成分の大きさ、形状および配置関係を概略的に示してあるに過ぎない。したがって、この発明は図示例にのみ限定されるものではない。また、図面では、断面を表すハッチングを省略する場合がある。
【0030】
<第一の実施形態>
まず、図1を参照して、本発明の有機EL素子における第一の実施形態について説明する。図1は、有機EL素子100の断面図であり、陽極層10、発光域12、電子注入域14および陰極層16を、基板上(図示せず。)に順次に積層した構造を有していることを表している。
以下、第一の実施形態における特徴的な部分である電子注入域14を中心に説明する。したがって、その他の構成部分、例えば、陽極層10、発光域12および陰極層16等の構成や製法については簡単に説明するものとし、言及していない部分については、有機EL素子の分野において一般的に公知な構成や製法を採ることができる。
【0031】
(1)電子注入域
(芳香族化合物)
第一の実施形態における電子注入域は、窒素原子を含まない芳香族環化合物、すなわち、炭素(C)および水素(H)からなる芳香族環化合物、または、炭素(C)、水素(H)および酸素(O)からなる芳香族環化合物を含有している。なお、炭素および水素からなる芳香族環化合物と、炭素、水素および酸素からなる芳香族環化合物とは、それぞれ単独で使用しても良いし、あるいは組み合わせて使用しても良い。
【0032】
ここで、好ましい窒素原子を含まない芳香族環化合物としては、例えば、アントラセン、フルオレン、ペリレン、ピレン、フェナントレン、クリセン、テトラセン、ルブレン、ターフェニレン、クォーターフェニレン、セクシフェニレン、トリフェニレン、ピセン、コロネル、ジフェニルアントラセン、ベンツ[a]アントラセンおよびビナフタレンからなる群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形成された基を含有するものが挙げられる。
【0033】
また、窒素原子を含まない芳香族化合物は、これらの芳香族のうち、三つ以上の環が縮合した芳香族環、例えばアントラセン等を含有することがより好ましい。このように三つ以上の環が縮合した芳香族環を有することにより、電子移動性が高まって、有機EL素子の発光輝度を向上させたり、高速応答性を高めることができる。
【0034】
また、窒素原子を含まない芳香族化合物は、スチリル置換された芳香族環、ジスチル置換された芳香族環またはトリススチリル置換された芳香族環より形成された基を含有するとさらに良い。
このようにスチリル置換された芳香族環を有することにより、有機EL素子の発光輝度や寿命をより向上させることができる。
【0035】
ここで、スチリル置換された基を含有する芳香族環化合物としては、例えば、下記の(1)式に示す構造式で表される化合物を使用することが好ましい。
【0036】
【化1】
Figure 0004105429
【0037】
上記の(1)式において、nは縮合数を表し、n=1〜4である。また、Rは、水素原子または炭素数が6〜40の芳香族基(芳香族環)である。また、Arは、炭素数が6〜40の芳香族基であり、ArおよびArは、それぞれ水素原子または炭素数が6〜40の芳香族基である。そして、Ar、ArおよびArの少なくとも一つは、芳香族基である。さらに、この芳香族基は、三つ以上の環が縮合または連結していることが望ましい。
【0038】
また、ジスチル置換された基を含有する芳香族環化合物は、例えば、下記の(2)式に示す構造式で表される化合物を使用することが好ましい。
Ar−L−Ar…(2)
上記の(2)式において、Lは、炭素数6〜30のアリーレン基である。このアリーレン基としては、例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセンディールが好ましく、さらには、アリーレン基の構造として、単結晶であることが望ましい。
また、ArおよびArとしては、例えば、ジフェニルアントラセン、ジフェニルピレンが望ましい。
【0039】
また、上記の(1)式または(2)式に示す化合物を、置換基でさらに置換することが好ましい。このような置換基としては、例えば、炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数が1〜30のアルキルオキシ基、炭素数が6〜30のアリールアルキル基、ジアリールアミノ基、N−アルキルカルバゾリル基またはN−フェニルカルバゾリル基が望ましい。これらの置換基で置換することにより、発光効率の低い錯体の発生を効率的に抑制することができる。
【0040】
(還元性ドーパント)
第一の実施形態における電子注入域は、還元性ドーパントを含有していることを特徴とする。ここで、還元性ドーパントとは、芳香族化合物が酸化された場合に、それを還元できる物質と定義される。したがって、還元性ドーパントは、一定の還元性を有するものであれば特に制限されるものではないが、具体的に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物または希土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの物質であることが好ましい。
【0041】
好ましいアルカリ金属としては、例えば、Li(リチウム、仕事関数:2.93eV)、Na(ナトリウム、仕事関数:2.36eV)、K(カリウム、仕事関数:2.3eV)、Rb(ルビジウム、仕事関数:2.16eV)およびCs(セシウム、仕事関数:1.95eV)が挙げられる。なお、括弧内の仕事関数の値は、化学便覧(基礎編II,P493,日本化学会編)に記載されたものであり、以下同様である。
また、好ましいアルカリ土類金属としては、例えば、Ca(カルシウム、仕事関数:2.9eV)、Mg(マグネシウム、仕事関数:3.66eV)、Ba(バリウム、仕事関数:2.52eV)、およびSr(ストロンチウム、仕事関数:2.0〜2.5eV)があげられる。なお、ストロンチウムの仕事関数の値は、フィジィックス オブ セミコンダクターデバイス(N.Y.ワイロー1969年,P366)に記載されたものである。
また、好ましい希土類金属としては、例えば、Yb(イッテルビウム、仕事関数:2.6eV)、Eu(ユーロビウム、仕事関数:2.5eV)、Gd(ガドニウム、仕事関数:3.1eV)およびEn(エルビウム、仕事関数:2.5eV)があげられる。
【0042】
また、好ましいアルカリ金属酸化物としては、例えば、LiO、LiOおよびNaOがあげられる。
また、好ましいアルカリ土類金属酸化物としては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeOおよびMgOがあげられる。
【0043】
また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaFおよびKFといったフッ化物のほかに、LiCl、KClおよびNaClが挙げられる。
また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgFおよびBeFといったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0044】
また、好ましい還元性ドーパントとして、アルカリ金属が配位した芳香族化合物も挙げられる。このアルカリ金属が配位した芳香族化合物は、例えば、下記の(3)式に示す構造式で表される。
Ar…(3)
ただし、上記の(3)式中のMは、アルカリ金属を表す。また、Arは、炭素数10〜40の芳香族環化合物である。この(3)式で表される芳香族環化合物としては、例えば、アントラセン、ナフタレン、ジフェニルアントラセン、ターフェニル、クォーターフェニル、キンクフェニル、セクシフェニルおよびこれらの誘導体があげられる。
【0045】
次に、電子注入域における還元性ドーパントの添加量について説明する。還元性ドーパントの添加量を、電子注入域を構成する材料全体を100重量%としたときに、0.01〜50重量%の範囲とすることが好ましい。還元性ドーパントの添加量が、0.01重量%未満となると、有機EL素子の発光輝度が低下したり、寿命が短くなる傾向がある。一方、還元性ドーパントの添加量が50重量%を超えると、逆に、発光輝度が低下したり、寿命が短くなる傾向がある。
したがって、発光輝度や寿命のバランスがより良好となる観点から、還元性ドーパントの添加量を0.2〜20重量%の範囲とすることがより好ましい。
【0046】
また、還元性ドーパントの添加量に関して、芳香族環化合物と還元性ドーパントとの添加比率を1:20〜20:1(モル比)の範囲とすることが好ましい。電子輸送性化合物と還元性ドーパントとの添加比率がこれらの範囲外となると、有機EL素子の発光輝度が低下したり、寿命が短くなる傾向がある。
したがって、芳香族環化合物と還元性ドーパントとの添加比率を1:10〜10:1(モル比)の範囲とすることがより好ましく、1:5〜5:1の範囲とすることがさらに好ましい。
【0047】
(電子親和力)
また、第一実施形態における電子注入域の電子親和力を1.8〜3.6eVの範囲とすることが好ましい。電子親和力の値が1.8eV未満となると、電子注入性が低下し、駆動電圧の上昇,発光効率の低下をまねく傾向があり、一方で、電子親和力の値が3.6eVを超えると、発光効率の低い錯体が発生しやすくなったり、ブロッキング接合の発生を効率的に抑制することができる。
したがって、電子注入域の電子親和力を、1.9〜3.0eVの範囲とすることがより好ましく、2.0〜2.5eVの範囲とすることがさらに好ましい。
【0048】
また、電子注入域と発光域との電子親和力の差を1.2eV以下の値とすることが好ましく、0.5eV以下の値とすることがより好ましい。この電子親和力の差が小さいほど、電子注入域から発光域への電子注入が容易となり、高速応答可能な有機EL素子とすることができる。
【0049】
(ガラス転移点)
また、第一実施形態における電子注入域のガラス転移点(ガラス転移温度)を、100℃以上とするのが好ましく、より好ましくは、105〜200℃の範囲とすることである。
このように電子注入域のガラス転移点を制限することにより、有機EL素子100の耐熱温度を容易に85℃以上とすることができる。したがって、発光時に、電流注入層から発光域へ電流が注入されてジュール熱が発生したとしても、電子注入域が短時間で破壊される傾向が少なくなり、有機EL素子の長寿命化を図ることができる。
なお、電子注入域のガラス転移点は、電子注入域を構成する成分について、示差熱走査型熱量計(DSC)を用い、窒素気流中、昇温速度10℃/分の条件で加熱した場合に得られる比熱変化曲線から、比熱の変化点として求めることができる。この点、他の実施形態や実施例においても同様である。
【0050】
(エネルギーギャップ)
また、第一実施形態における電子注入域のエネルギーギャップ(バンドギャップエネルギー)を2.7eV以上とすることが好ましく、3.0eV以上とすることがより好ましい。
このように、エネルギーギャップの値を所定値以上、例えば2.7eV以上と大きくしておけば、正孔が発光域を超えて電子注入域に移動することが少なくなる。したがって、正孔と電子との再結合の効率が向上し、有機EL素子の発光輝度が高まるとともに、電子注入域自体が発光することを回避することができる。
【0051】
(電子注入域の構造)
また、第一実施形態における電子注入域の構造についても、特に制限されるものではなく、一層構造に限らず、例えば、二層構造または三層構造であっても良い。
また、電子注入域の厚さについても、特に制限されるものではないが、例えば0.1nm〜1μmの範囲とするのが好ましく、1〜50nmの範囲とするのがより好ましい。
【0052】
(電子注入域の形成方法)
次に、電子注入域を形成する方法について説明する。電子注入域の形成方法については、均一な厚さを有する薄膜層として形成出来れば特に制限されるものではないが、例えば、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法を適用することができる。
なお、窒素原子を含まない芳香族環化合物と、還元性ドーパントとは同時蒸着することが好ましいが、この蒸着法については、第六の実施形態において詳述する。
【0053】
また、電子注入域と、発光域の形成方法を一致させることが好ましい。例えば、発光域を蒸着法で形成する場合には、電子注入域も蒸着法で形成するのが好ましい。このように同一方法で製膜すると、電子注入域と発光域とを連続的に製膜できるので、設備の簡略化や精算時間の短縮を図る上で有利である。
また、電子注入域と発光域とが酸化される機会が少なくなるので、有機EL素子における発光輝度を向上させることも可能となる。
【0054】
(2)発光域
(構成材料)
発光域の構成材料として使用する有機発光材料は、以下の3つの機能を併せ持つことが好ましい。
(a)電荷の注入機能:電界印加時に陽極あるいは正孔注入層から正孔を注入することができる一方、陰極層あるいは電子注入域から電子を注入することができる機能。
(b)輸送機能:注入された正孔および電子を電界の力で移動させる機能。
(c)発光機能:電子と正孔の再結合の場を提供し、これらを発光につなげる機能。
ただし、上記(a)〜(c)の各機能全てを併せもつことは、必ずしも必要ではなく、例えば正孔の注入輸送性が電子の注入輸送性より大きく優れているものの中にも有機発光材料として好適なものがある。本発明の目的の一つは、発光域への電子の移動を促進して、電圧を低下させるものである。
【0055】
このような有機発光材料としては、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤や、スチリルベンゼン系化合物、8−キノリノール誘導体を配位子とする金属錯体が好適に挙げられる。
また、ジスチリルアリーレン骨格の有機発光材料、例えば4,4’一ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル)等をホストとし、当該ホストに青色から赤色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系あるいはホストと同様の蛍光色素をドープしたものも、有機発光材料として好適である。
【0056】
また、優れた密着性が得られ、電子注入領域から発光域にスムーズに電子が移動できるとともに、機械的強度を向上させることができる観点から、発光域の構成材料と電子注入域の構成材料とを部分的に一致させ、窒素原子を含まない同一種類の芳香族環化合物を両域に使用することが好ましい。
なお、発光域と電子注入域とで、同一種類の芳香族環化合物が、それぞれにおいて50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。
【0057】
(形成方法)
次に、発光域を形成する方法について説明する。例えば、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法を適用することができる。
また、上述したように、電子注入域と発光域とは、同一方法で形成することが好ましく、例えば、電子注入域を蒸着法で製膜する場合には、発光域も蒸着法で製膜することが好ましい。
【0058】
また、発光域は、気相状態の材料化合物から沈着されて形成された薄膜や、溶液状態または液相状態の材料化合物から固体化されて形成された膜である、分子堆積膜とすることが好ましい。通常、この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは、凝集構造や高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。さらには、樹脂等の結着剤と有機発光材料とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、発光域を形成することができる。
【0059】
(発光域の膜厚)
このようにして形成された発光域の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、5nm〜5μmの範囲であることが好ましい。発光域の膜厚が5nm未満となると、発光輝度が低下する傾向があり、一方、発光域の膜厚が5μmを超えると、印加電圧の値が高くなる傾向がある。したがって、発光域の膜厚を10nm〜3μmの範囲とすることがより好ましく、20nm〜1μmの範囲とすることがさらに好ましい。
【0060】
(3)電極
(陽極層)
陽極層としては、仕事関数の大きい(例えば、4.0eV以上)金属、合金、電気電導性化合物またはこれらの混合物を使用することが好ましい。具体的には、インジウムチンオキサイド(ITO)、インジウム銅、スズ、酸化亜鉛、金、白金、パラジウム等の一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
また、陽極層の厚さも特に制限されるものではないが、10〜1000nmの範囲とするのが好ましく、10〜200nmの範囲とするのがより好ましい。
さらに、陽極層に関しては、発光域から発射された光を外部に有効に取り出すことが出来るように、実質的に透明、より具体的には、光透過率が10%以上であることが好ましい。
【0061】
(陰極層)
一方、陰極層には、仕事関数の小さい(例えば、4.0eV未満)金属、合金、電気電導性化合物またはこれらの混合物を使用することが好ましい。具体的には、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、リチウム、ナトリウム、銀等の一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
また陰極層の厚さも特に制限されるものではないが、10〜1000nmの範囲とするのが好ましく、10〜200nmの範囲とするのがより好ましい。
【0062】
(4)その他
また、図1には示さないが、有機EL素子への水分や酸素の侵入を防止するための封止層を、素子全体を覆うように設けることも好ましい。
好ましい封止層の材料としては、テトラフルオロエチレンと、少なくとも一種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体;共重合主鎖中に環状構造を有する合フッ素共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレンまたはクロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体;吸収率1%以上の吸水性物質;吸水率0.1%以下の防湿性物質;In,Sn,Pb,Au,Cu,Ag,Al,Ti,Ni等の金属;MgO,SiO,SiO,GeO,NiO,CaO,BaO,FeO,Y,TiO等の金属酸化物;MgF,LiF,AlF,CaF等の金属フッ化物;パーフルオロアルカン,パーフルオロアミン,パーフルオロポリエーテル等の液状フッ素化炭素;および当該液状フッ素化炭素に水分や酸素を吸着する吸着剤を分散させた組成物等が挙げられる。
【0063】
また、封止層の形成にあたっては、真空蒸着法、スピンコート法、スパッタリング法、キャスト法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励超イオンプレーティング法)、反応性スパッタリング法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法等を適宜採用することができる。
【0064】
<第二の実施形態>
次に、本発明の有機EL素子における第二の実施形態について説明する。
第二の実施形態は、第一の実施形態と同様に、図1に表されるように、陽極層10、発光域12、電子注入域14および陰極層16を、基板上(図示せず。)に順次積層した構造を有している。
そして、第二の実施形態は、第一の実施形態と異なり、電子注入域14が、電子輸送性化合物と、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとから構成されている点で異なっている。したがって、以下の説明では電子輸送性化合物および仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントについて中心的に説明するものとし、その他の構成については、第一の実施形態と同様の構成および有機EL素子の分野において一般的に公知な構成を採ることができる。
【0065】
(電子輸送性化合物)
第二の実施形態における電子注入域には、電子輸送性化合物として、第一の実施形態と同様の、窒素原子を含まない芳香族環化合物を含有することもできるし、さらに、含窒素複素環化合物を含有する有機化合物(単に、含窒素複素環化合物と称する場合がある。)を含むことも好ましい。
すなわち、第二の実施形態においては、第一の実施形態と異なり、特に還元性の高い還元性ドーパントを使用しているために、陰極から注入された電子を発光域に伝達する機能を有している化合物であれば、広く使用することができ、電子輸送性化合物として含窒素複素環化合物を使用したとしても、発光域の材料と反応することを効率的に抑制することができる。したがって、電子注入域において、電荷移動錯体またはエキシプレックスの発生を有効に防止して、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化を図ることができる。
【0066】
ここで、電子注入域に使用する含窒素複素環化合物は、窒素原子を有する複素環を有する化合物と定義されるが、具体的に、含窒素錯体や含窒素環化合物が挙げられる。含窒素錯体や含窒素環化合物は、電子親和力が2.7eV以上と大きく、また、電荷移動度も10−6cm/V・S以上と速いためである。
このうち、好ましい含窒素錯体として、8−キノリノール誘導体を配位子とする金属錯体、例えば、下記式(4)で表されるトリス(8−キノリノール)Al錯体、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)Al錯体、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)Al錯体、トリス(2−メチル−8−キノリノール)Al錯体、トリス(5−メチル−8−キノリノール)Al錯体、トリス(8−キノリノール)Zn錯体、トリス(8−キノリノール)In錯体、トリス(8−キノリノール)Mg錯体、トリス(8−キノリノール)Cu錯体、トリス(8−キノリノール)Ca錯体、トリス(8−キノリノール)Sn錯体、トリス(8−キノリノール)Ga錯体およびトリス(8−キノリノール)Pb錯体等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0067】
【化2】
Figure 0004105429
【0068】
また、含窒素錯体のうち、好ましいフタロシアニン誘導体として、例えばメタルフリーフタロシアニン、Cuフタロシアニン、Liフタロシアニン、Mgフタロシアニン、Pbフタロシアニン、Tiフタロシアニン、Gaフタロシアニン、CuOフタロシアニン等の1種単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0069】
また、好ましい含窒素環化合物としては、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、キノキサリン誘導体およびキノリン誘導体からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を挙げることができる。
これらのうち、好ましいオキサジアゾール誘導体の代表例を、下記(5)式および(6)式に、好ましいチアジアゾール誘導体の代表例を、下記(7)式に、好ましいトリアゾール誘導体の代表例を、下記(8)式に、キノキサリン誘導体の代表例を、下記(9)式に、およびキノリン誘導体の代表例を、下記(10)式に、それぞれ示す。
【0070】
【化3】
Figure 0004105429
【0071】
【化4】
Figure 0004105429
【0072】
【化5】
Figure 0004105429
【0073】
【化6】
Figure 0004105429
【0074】
【化7】
Figure 0004105429
【0075】
【化8】
Figure 0004105429
【0076】
さらに、アントロン誘導体、フレオレニリメタン誘導体、カルボジイミド、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物や、あるいは特開昭59−194393号に発光層材料として記載の電子伝達性化合物を使用することも好ましい。
【0077】
(仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパント)
第二の実施形態における電子注入域は、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントを含有している。ここで、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとは、仕事関数が2.9eV以下であり、かつ、電子輸送性化合物が酸化された場合にも、一定の還元ができる物質と定義される。
したがって、仕事関数が2.9eV以下であれば、第一の実施形態において例示した還元性ドーパントである、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物または希土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0078】
また、より具体的に、仕事関数が2.9eV以下である好ましい還元性ドーパントとしては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)およびCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)、およびBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられる。
【0079】
これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、RbまたはCsであり、最も好ましいのは、Csである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0080】
また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら二種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRbあるいはCsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0081】
次に、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントの添加量について説明する。この還元性ドーパントの添加量は、第一の実施形態と同様に、電子注入域を構成する材料に対して、0.1〜50重量%の範囲内の値であることが好ましく、1〜20重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントの添加量に関して、電子輸送性化合物と還元性ドーパントとの添加比率を1:20〜20:1(モル比)の範囲とすることが好ましい。電子輸送性化合物と還元性ドーパントとの添加比率がこれらの範囲外となると、有機EL素子の発光輝度が低下したり、寿命が短くなる傾向がある。
したがって、電子輸送性化合物と還元性ドーパントとの添加比率を1:10〜10:1(モル比)の範囲とすることがより好ましく、1:5〜5:1の範囲とすることがさらに好ましく、最も好ましいのは、1:3〜3:1の範囲とすることである。
【0082】
(電子親和力)
また、第二実施形態における電子注入域の電子親和力を、第一の実施形態と同様に、1.8〜3.6eVの範囲とすることが好ましく、1.9〜3.0eVの範囲とすることがより好ましく、2.0〜2.5eVの範囲とすることがさらに好ましい。電子親和力の値がこれらの範囲外となると、発光効率の低い錯体が発生しやすくなったり、ブロッキング接合の発生を抑制することが困難となる傾向がある。
なお、電子注入域の電子親和力は、電子注入域を構成する電子輸送性化合物や還元性ドーパントの種類あるいは混合比率等を変更することにより、適宜調節することができる。
【0083】
また、第二実施形態における電子注入域においても、第一の実施形態と同様に、電子注入域の電子親和力と、発光域の電子親和力との差を0.5eV以下の値とすることが好ましく、0.2eV以下の値とすることがより好ましい。この電子親和力の差が小さいほど、電子注入域から発光域への電子注入が容易となり、高速応答可能な有機EL素子とすることができるためである。
【0084】
(ガラス転移点について)
また、第二実施形態における電子注入域のガラス転移点についても、第一の実施形態と同様に、100℃以上の値とするのが好ましく、より好ましくは、105〜200℃の範囲内の値とすることである。
【0085】
<第三の実施形態>
次に、図2を参照して、この発明の第三の実施形態について説明する。
図2は、第三の実施形態にかかる有機EL素子102の断面図であり、陽極層10、正孔注入輸送層18、発光域12、電子注入域14および陰極層16を順次に積層した構造を有している。
そして、この有機EL素子102は、陽極層10と発光域12との間に、正孔注入輸送層18を挿入してある点を除いては、第一および第二の実施形態の有機EL素子100と同一の構造を有している。
したがって、以下の説明は、第三の実施形態における特徴的な部分である正孔注入輸送層18についてのものであり、その他の構成部分、例えば電子注入域14等については、第一または第二の実施形態と同様の構成とすることができる。
【0086】
第三の実施形態における正孔注入輸送層18は、正孔注入層と実質的に同じように正孔をスムーズに注入する機能を有しているほか、注入された正孔を効率的に輸送する機能をも有している。したがって、正孔注入輸送層18を設けることにより、正孔の注入および発光域への移動が容易となり、有機EL素子の高速応答が可能となる。
【0087】
ここで、正孔注入輸送層18は、有機材料または無機材料で形成されている。好ましい有機材料としては、例えば、ジアミン化合物、含ジアミンオリゴマーおよび含チオフェンオリゴマーをあげることができる。また、好ましい無機材料としては、例えば、アモルファスシリコン(α−Si)、α−SiC、マイクロクリスタルシリコン(μC−Si)、μC−SiC、II−VI族化合物、III−V族化合物、非晶質炭素、結晶質炭素およびダイヤモンドをあげることができる。
【0088】
なお、正孔輸送層18は、一層構造に限らず、例えば、二層構造または三層構造であっても良い。
また、正孔輸送層18の厚さについて特に制限されるものではないが、例えば0.5nm〜5μmの範囲とするのが好ましい。
【0089】
<第四の実施形態>
次に、図3を参照して、この発明の第四の実施形態について説明する。
図3は、第三の実施形態にかかる有機EL素子104の断面図であり、陽極層10、正孔注入輸送層18、発光域12、電子注入域14、第一の界面層20および陰極層16を順次に積層した構造を有している。
【0090】
この有機EL素子は、電子注入域14と陰極層16との間に、第一の界面層20を挿入してある点を除いては、第三の実施形態の有機EL素子102と同一の構造を有している。
したがって、以下の説明は、第四の実施形態における特徴的な部分である第一の界面層についてのものであり、その他の構成部分については、第一〜三の実施形態と同様の構成あるいは有機EL素子の分野において一般的に公知な構成とすることができる。
【0091】
第四の実施形態における第一の界面層は、電子注入性を高める機能を有している。したがって、第一の界面層を設けることにより、電子の注入および発光域への移動が容易となり、有機EL素子の高速応答が可能となる。
ここで、第一の界面層は、電子注入性を有する材料、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルカリ金属が含有されたアモルファスまたはアルカリ金属が含有されたマイクロクリスタルを用いることが好ましい。
より具体的に、好ましいアルカリ金属化合物としては、例えば、LiF、LiO、LiOおよびLiClがあげられる。また、好ましいアルカリ土類金属化合物としては、例えば、BaO、SrO、MgO、MgF、SrClがあげられる。
【0092】
また、第一の界面層は、一層構造に限らず、例えば、二層構造また構造であっても良い。さらに、第一の界面層の厚さについても特に制限されるものではないが、例えば0.1nm〜10μmの範囲とするのが好ましい。
【0093】
<第五の実施形態>
次に、図4を参照して、この発明の第五の実施形態について説明する。
図4は、第五の実施形態における有機EL素子106の断面図であり、陽極層10、第二の界面層20、正孔注入輸送層18、発光域12、電子注入域14および陰極層16を順次に積層した構造を有している。
【0094】
この有機EL素子106は、陽極16と正孔注入輸送層18との間に、第二の界面層20を挿入してある点を除いては、第三の実施形態の有機EL素子102と同一の構造を有する。したがって、以下の説明は、第四の実施形態における特徴的な部分である陽極16と正孔注入輸送層18との間に設けられた第二の界面層20についてのものであり、その他の構成部分については、第一〜四の実施形態と同様の構成あるいは有機EL素子の分野において一般的に公知な構成とすることができる。
【0095】
第五の実施形態における第二の界面層20は、陽極16からの正孔注入性を高める機能を有している。したがって、第二の界面層を設けることにより、正孔の注入および発光域への移動が容易となり、有機EL素子の高速応答が可能となる。
【0096】
ここで、第二の界面層の構成材料としては、ポリアニリン、非晶質炭素またはフタロシアニン類などを用いることができる。また、第二の界面層は、一層構造に限らず、例えば、二層構造また構造であっても良い。さらに、第二の界面層の厚さについても特に制限されるものではないが、例えば0.5nm〜5μmの範囲とするのが好ましい。
【0097】
<有機EL素子の製造方法>
次に、図7〜9を参照して、本発明の有機EL素子の製造方法について説明する。
具体的には、電子注入域等が大面積であっても構成材料の組成比を均一とし、有機EL素子の駆動電圧のばらつきを低下させ、寿命の均一化を図ることができるとともに、省スペース可が可能な有機EL素子の製造方法を説明する。
【0098】
すなわち、図7および図8に示すような真空蒸着装置201を一例として用い、基板203に対向して配置した複数の蒸着源212A〜212Fから、異なる蒸着材料を同時に蒸発させて製膜を行う有機EL素子用薄膜層の蒸着方法であって、基板203に、当該基板203を自転させるための回転軸線213Aを設定し、蒸着源212A〜212Fをそれぞれ基板203の回転軸線213Aから離れた位置に配設し、基板203を自転させながら蒸着を行う。
【0099】
ここで、図7および図8に示す真空蒸着装置201は、真空槽210と、この真空槽210内の上部に設置された、基板203を固定するための基板ホルダ211と、この基板ホルダ211の下方に対向配置された、蒸着材料を収容するための複数(6個)の蒸着源212A〜212Fとを含んで構成されている。この真空槽210は、排気手段(図示せず。)により、内部を所定の減圧状態に維持できるようになっている。なお、蒸着源の数は、図面上6つ示されているが、これに限定されるものではなく、5つ以下であってもよく、あるいは7つ以上であってもよい。
【0100】
また、基板ホルダ211は、基板203の周縁部を支持する保持部212を備え、真空槽210内で、基板203を水平に保持するように構成されている。この基板ホルダ211の上面の中央部分には、基板203を回転(自転)させるための回転軸部213が垂直方向に立設されている。この回転軸部213には、回転駆動手段であるモータ214が接続され、モータ214の回転動作により、基板ホルダ211に保持された基板203が、当該基板ホルダ211とともに回転軸部213を回転中心として自転するようになっている。すなわち、基板203の中心には、回転軸部213による回転軸線213Aが垂直方向に設定されている。
【0101】
次に、このように構成された真空蒸着装置201を用いて、電子注入域14を基板203上に製膜する方法について、具体的に説明する。
まず、図7および図8に示すような平面正方形状の基板203を用意し、この基板203を基板ホルダ211の保持部212に係止して水平な状態とする。
【0102】
ここで、電子注入域14を製膜するにあたり、仮想円221上で、隣接する二つの蒸着源212Bおよび212Cに、電子輸送性化合物と電子注入性材料とをそれぞれ収容した後、排気手段により、真空槽210内を所定の真空度、例えば1.0×10−4Paになるまで減圧する。
【0103】
次いで、蒸着源212Bおよび212Cを加熱して、各蒸着源212Bおよび212Cからそれぞれ電子輸送性化合物および還元性ドーパントを同時に蒸発させるとともに、モータ214を回転駆動させて、基板203を回転軸線213Aに沿って所定速度、例えば1〜100rpmで回転させる。このようにして、基板203を自転させながら電子輸送性化合物および還元性ドーパントを共蒸着して電子注入域14を製膜する。
このとき、図8に示すように、蒸着源212Bおよび212Cは、基板203の回転軸線213Aから、水平方向に所定距離Mだけずれた位置に設けられているので、基板203の回転により、電子輸送性化合物および還元性ドーパントの基板203への入射角度を規則的に変化させることができる。
したがって、蒸着材料を基板203に対して一様に付着させることができ、電子注入域14の膜面内で、蒸着材料の組成比が均一、例えば、濃度ムラが±10%(モル換算)である薄膜層を確実に製膜することができる。
また、このように蒸着を実施することにより、基板203を公転させなくてもよいので、そのスペースや設備が不要になり、最小限のスペースで経済的に製膜を行うことができる。
なお、基板を公転させるとは、基板以外に存在する回転軸の周りを回転させることをいい、自転させる場合よりも広い空間が必要となる。
【0104】
また、この製造方法を実施するにあたり、基板203の形状は特に限定されないが、例えば、図7および図8に示すように、基板203が短形平板状である場合、この基板203の回転軸線213Aを中心とする仮想円221の円周上に沿って複数の蒸着源212A〜212Eを配設し、仮想円221の半径をM、基板203の一辺の長さをLとしたときに、M>1/2×Lを満足することが望ましい。なお、基板203の辺の長さがそれぞれ同一でなく、異なる場合には、最も長い辺の長さをLとする。
このように構成することにより、複数の蒸着源212A〜212Fから、基板203に対する蒸着材料の入射角度を互いに同一にできるので、蒸着材料の組成比をより容易に制御することができる。
また、このように構成することにより、蒸発材料が、基板203に対して一定の入射角度をもって蒸発されるため、垂直に入射することがなくなり、膜面内における組成比の均一性を一層向上させることができる。
【0105】
また、この製造方法を実施するにあたり、図7に示すように、複数の蒸着源212A〜212Fを、基板203の回転軸線213Aを中心とする仮想円221の円周上に配設の方法は、本発明の電子輸送性化合物と還元性ドーパントのように2種類以上の材料からなる混合域を均一の組成比で作成する場合には、それらの蒸着源を互いに近接した位置に設けることが望ましい。また、組成比を厚さ方向に異ならせる場合には、互いに離れた位置に設けることが望ましい。例えば、蒸着源の数をnとしたときに各蒸着源を円の中心から360°/nの角度で配設してもよい。
【0106】
次に、この製造方法により製膜した薄膜層の均一性についてより詳細に説明する。一例として、電子輸送性化合物としてAlqを用い、還元性ドーパントとしてCsを用い、図9に示す基板203を5rpmで回転させながら、厚さ約1000オングストローム(設定値)の薄膜層を以下の条件で同時蒸着した。
Alqの蒸着速度: 0.2nm/s
Csの蒸着速度: 0.03nm/s
Alq/Csの膜厚:1000オングストローム(設定値)
【0107】
次いで、図9に示すガラス基板203上の測定点(4A〜4M)における、薄膜層の膜厚を蝕針式膜厚計を用いて測定するとともに、Cs/Alの組成比をX線光電子分光装置(ESCA)を用いて測定した。
なお、図9に示すガラス基板203上の測定点(4A〜4M)は、基板203の表面を、予め16等分して、一辺の長さPが50mmの正方形の区画を設定し、これらの区画における任意の角部(13箇所)としたものである。得られた結果を表1に示す。
【0108】
【表1】
Figure 0004105429
【0109】
一方、203を回転させないほかは、この製造方法と同様に、厚さ約1000オングストローム(設定値)の薄膜層を形成した。なお、蒸着条件については、上述したとおりである。次いで、得られた薄膜層の測定点(4A〜4M)におけるの膜厚およびCs/Alの組成比を測定した。その結果を表2に示す。
【0110】
【表2】
Figure 0004105429
【0111】
これらの結果から明らかなように、この製造方法を用いた場合、基板203上の測定点(4A〜4M)にて、膜厚が1008〜1091オングストロームの範囲内という極めて均一な厚さで、かつ、Cs/Alの組成比(モル比)が1.0〜1.10(−)の範囲内という極めて均一な組成比である薄膜層が得られたことを確認した。
一方、この製造方法と異なる製造方法を用いた場合、基板203上の測定点(4A〜4M)にて、膜厚が884〜1067オングストロームの範囲内であり、Cs/Alの組成比が0.6〜1.2(−)の範囲内であることが確認された。
【0112】
以上、説明した実施形態においては、この発明を特定の条件で構成した例について説明したが、この実施形態は、種々の変更を行うことができる。例えば、上述した実施形態においては、発光域と、電子注入域とを個別に設けたが、発光域と電子注入域とを併せて一つの層としても良い。また、陰極層と陽極層との間に、任意好適な層を介在させても良い。
【0113】
【実施例】
[実施例1]
次に、図5および図7、8を参照しながら、この発明の実施例1について説明する。図5に示す実施例1の有機EL素子102aの構造は、図2に示す第三の実施形態における有機EL素子102の構造に相当する。ただし、実施例1の有機EL素子102aにおいては、正孔注入輸送層18を、順次に積層された正孔注入層18aと正孔輸送層18bとをもって構成している点で、第三の実施形態における有機EL素子102と異なる。
【0114】
(1)有機EL素子の製造準備
実施例1の有機EL素子102aを製造するにあたっては、まず、厚さ1.1mm、縦200mm、横200mmの透明なガラス基板22上に、陽極層10としてITOの透明電極膜を形成した。以下、このガラス基板10と陽極層10とを併せて基板30(図7および図8では、203)とする。続いて、この基板30をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、さらに、N(窒素ガス)雰囲気中で乾燥させた後、UV(紫外線)およびオゾンを用いて10分間洗浄した。
【0115】
次いで、基板30を、図8に示すように、真空蒸着装置201における真空槽210の基板ホルダ211に装着するとともに、正孔注入層18a構成する正孔注入性有機物(HI−1)を蒸着源212Aに、正孔輸送層18bを構成する正孔注入性輸送有機物(HT−1)を蒸着源212Bに、電子注入域および発光域を構成する窒素を含まない芳香族環化合物(EM−1)を蒸着源212Cに、電子注入域を構成する還元性ドーパント(Li)を蒸着源212Dに、陰極を構成する金属(Al)を蒸着源212Eにそれぞれ収容した。
なお、(11)式で表されるHI−1、(12)式で表されるHT−1および(13)式で表されるEM−1の構造式をそれぞれ以下に示す。
また、EM−1のガラス転移点は、105℃であり、それを含む電子注入域の電子親和力は、2.8eVであった。
【0116】
【化9】
Figure 0004105429
【0117】
【化10】
Figure 0004105429
【0118】
【化11】
Figure 0004105429
【0119】
(2)有機EL素子の製造
次いで、真空槽210内を、5×10−5Pa以下の真空度になるまで減圧した後、基板30の陽極層10上に、正孔注入層18a、正孔輸送層18b、発光域12、電子注入域14および陰極層16を、この順で順次積層して有機EL素子102aを得た。なお、このとき、正孔注入層18aの形成から陰極層16の形成までの間は、一度も真空状態を破ることなく有機EL素子102aを作製した。
【0120】
より具体的には、蒸着源212AからHI−1を下記条件で蒸発させて、陽極層10上に正孔注入層18aを蒸着し、続いて蒸着源212BからHT−1を蒸発させて、正孔注入層18a上に、正孔輸送層18bを蒸着した。これらの蒸着時には、基板30は、特に加熱も冷却もしなかった。
HI−1の蒸着速度:0.1〜0.3nm/s
HI−1の膜厚: 60nm
HT−1の蒸着速度:0.1〜0.3nm/s
HT−1の膜厚: 20nm
【0121】
次いで、蒸着源212Cから、有機発光材料としてのEM−1を正孔注入層18a製膜時と同様の条件で蒸発させて、正孔輸送層18b上に有機発光域12を蒸着した。
EM−1の蒸着速度:0.1〜0.3nm/s
EM−1の膜厚: 40nm
【0122】
次いで、蒸着源212Cおよび蒸着源212Dから、以下に示す条件で、それぞれEM−1およびLiを同時に蒸発させて、有機発光域12上に電子注入域14を製膜した。
EM−1の蒸着速度: 0.1〜0.3nm/s
Liの蒸着速度: 0.05〜0.01nm/s
EM−1/Liの膜厚:20nm
【0123】
なお、同時蒸着は、上記製造方法によって行った。すなわち、蒸着源212Cおよび212Dは、基板30(203)の回転軸線213Aから、水平方向に30mmずれた位置にそれぞれ設けられており、その状態で加熱して、各蒸着源212Bおよび212CからそれぞれEM−1およびLiを同時に蒸発させるとともに、モータ214を回転駆動させて、基板203を回転軸線213Aに沿って5rpmで自転させながら電子注入域14を製膜した。
【0124】
最後に、蒸着源212Dから、以下の条件でAlを蒸発させて、電子注入域14上に陰極層16を蒸着した。
Alの蒸着速度: 1nm/s
Alの膜厚: 200nm
【0125】
(3)有機EL素子の評価
得られた有機EL素子102aにおける陰極層16をマイナス(−)電極、陽極層10をプラス(+)電極として、両電極間に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、下記の表1に示すように、1.0mA/cmであり、そのときの輝度は40cd/cmであり、発光色は青色であった。
また、この素子102aの半減寿命は、1000時間であった。なお、半減寿命とは、輝度が最大輝度の半値になるまでに要する時間をいう。例えば、実施例1では、輝度が最大輝度40cd/cmからその半値の20cd/cmになるまでに要する時間をいう。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0126】
【表3】
Figure 0004105429
【0127】
[実施例2]
次に、この発明の実施例2について説明する。実施例2の有機EL素子の構造は、実施例1の有機EL素子102aの構造と同様であり、実施例1と同様に製造した。ただし、実施例2においては、電子注入域に、還元性ドーパントとして、Li金属の代わりに、Ca(カルシウム)金属を添加した。
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、下記の表1に示すように、1.2mA/cmであり、輝度は50cd/mであった。また、実施例2の有機EL素子の半減寿命は、1500時間であった。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0128】
[実施例3]
次に、この発明の実施例3について説明する。実施例3の有機EL素子の構造は、実施例1の有機EL素子102aの構造と同様であり、実施例1と同様に製造した。ただし、実施例3においては、電子注入域に、還元性ドーパントとして、Li金属の代わりに、Na(ナトリウム)金属を添加した。
【0129】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、下記の表1に示すように、1.0mA/cmであり、輝度は60cd/mであった。また、実施例3の有機EL素子の半減寿命は、1600時間であった。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0130】
[実施例4]
次に、この発明の実施例4について説明する。実施例4の有機EL素子の構造は、実施例1の有機EL素子102aの構造と同様であり、実施例1と同様に製造した。ただし、実施例4においては、電子注入域に、還元性ドーパントとして、Li金属の代わりに、K(カリウム)金属を、EM−1 1モルに対して、1.3モル添加した。
【0131】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、下記の表3に示すように、4.0mA/cmであり、発光輝度は146cd/mであった。また、実施例4の有機EL素子の半減寿命は、1800時間であった。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0132】
[実施例5〜7]
次に、この発明の実施例5〜7について説明する。実施例5〜7の有機EL素子の構造は、実施例1の有機EL素子102aの構造と同様であり、実施例1と同様に製造した。ただし、実施例5〜7においては、電子注入域に、還元性ドーパントとして、Li金属の代わりに、Cs(セシウム)金属を、EM−1 1モルに対して、1モル(実施例5)、1.5モル(実施例5)、4.0モル(実施例7)をそれぞれ添加した。
【0133】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、実施例5においては40mA/cmであり、実施例6においては38mA/cmであり、実施例7においては25mA/cmであった。検討した範囲では、Cs金属の添加量が少ないほど、若干、電流密度が高い傾向が見られた。
また、このときの発光輝度は、実施例5においては1000cd/cmであり、実施例6においては1300cd/cmであり、実施例7においては1100cd/cmであった。
また、有機EL素子の半減寿命については、実施例5においては2500時間であり、実施例6においては3000時間であり、実施例7においては1700時間であった。
【0134】
[実施例8]
次に、この発明の実施例8について説明する。実施例8の有機EL素子の構造は、実施例1の有機EL素子102aの構造と同様であり、実施例1と同様に製造した。ただし、実施例8においては、電子注入域に、還元性ドーパントとして、Li金属の代わりに、CsとNaの混合物を、それぞれEM−1 1モルに対して、1.0モルおよび0.5モル添加した。
【0135】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、40mA/cmであり、発光輝度は1000cd/cmであった。また、実施例9の有機EL素子の半減寿命は、2500時間であった。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0136】
[実施例9]
次に、この発明の実施例9について説明する。実施例9の有機EL素子の構造は、実施例1の構造と同様である。ただし、実施例9では、電子注入域の材料に、EM−1の代わりに、下記の(14)式に示すジフェニルアントラセンダイマー(DFAD)を用いた。この場合の電子注入域のガラス転移点をDSCにより測定したところ、120℃であった。なお、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0137】
【化12】
Figure 0004105429
【0138】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、1.5mA/cmであり、輝度は60cd/cmであった。また、実施例9の有機EL素子の半減寿命は、1800時間であった。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0139】
[実施例10]
次に、この発明の実施例10について説明する。実施例10の有機EL素子の構造は、実施例1の有機EL素子の構造と同様である。ただし、実施例10においては、電子注入域の材料に、EM−1の代わりに、(4)式に示すAlqを用いるとともに、還元性ドーパントとして、Li金属の代わりに、Cs(セシウム)金属を使用し、Alq 1モルに対して、1.0モルとなるような比率で添加した。この場合の電子注入域のガラス転移点をDSCにより測定したところ、180℃であった。また、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0140】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、25mA/cmであり、輝度は500cd/cmであった。また、実施例10の有機EL素子の半減寿命は、2500時間であった。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0141】
[実施例11]
次に、この発明の実施例11について説明する。実施例11の有機EL素子の構造は、実施例1の有機EL素子の構造と同様である。ただし、実施例11においては、発光域および電子注入域の材料に、EM−1の代わりに、(4)式に示すAlqを用いるとともに、還元性ドーパントとして、Li金属の代わりに、Na(ナトリウム)金属を使用し、Alq 1モルに対して、0.5モルとなるような比率で添加した。また、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0142】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、3mA/cmであり、輝度は200cd/cmであった。また、実施例11の有機EL素子の半減寿命は、3000時間であった。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0143】
[実施例12]
次に、この発明の実施例12について説明する。実施例12の有機EL素子の構造は、実施例1の有機EL素子の構造と同様である。ただし、実施例12においては、電子注入域の材料に、EM−1の代わりに、(9)式に示すキノキキサリン化合物(H1)を用いるとともに、還元性ドーパントとして、Li金属の代わりに、Cs金属を使用し、H1 1モルに対して、1.0モルとなるような比率で添加した。
【0144】
この場合の電子注入域のガラス転移点をDSCにより測定したところ、103℃であった。また、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0145】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、5mA/cmであり、輝度は700cd/cmであった。また、実施例12の有機EL素子の半減寿命は、1000時間であった。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0146】
[実施例13]
次に、この発明の実施例13について説明する。実施例13の有機EL素子の構造は、実施例1の有機EL素子の構造と同様である。ただし、実施例13においては、電子注入域の材料に、EM−1の代わりに、下記(15)式に示すオキサジアゾール化合物(H2)を用いるとともに、還元性ドーパントとして、Li金属の代わりに、Sr金属を使用し、H2 1モルに対して、1.0モルとなるような比率で添加した。この場合の電子注入域のガラス転移点をDSCにより測定したところ、101℃であった。また、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0147】
【化13】
Figure 0004105429
【0148】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、1.5mA/cmであり、輝度は200cd/cmであった。また、実施例13の有機EL素子の半減寿命は、2000時間であった。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0149】
[実施例14]
次に、図6を参照して、実施例14について説明する。実施例14の有機EL素子の構造は、第四の実施形態にかかる有機EL素子104の構造とほぼ同様である。ただし、実施例14では、第一の界面層20として、厚さ5nmのBaO(酸化バリウム)層を、蒸着速度0.1nm/sで、真空蒸着により形成した。なお、第一の界面層20以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0150】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、2.0mA/cmであり、輝度は140cd/cmであった。また、実施例5の有機EL素子の半減寿命は、2500時間であった。それぞれ得られた結果を表4に示す。
したがって、第一の界面層20を介在させることにより、電流密度、輝度、および半減寿命が実施例1よりも向上したことが分かった。
【0151】
【表4】
Figure 0004105429
【0152】
[実施例15]
次に、この発明の実施例15について説明する。実施例15の有機EL素子の構造は、実施例14の構造と同様である。ただし、実施例15では、第一の界面層20として、BaO層の代わりに、厚さ5nmのLiF(フッ化リチウム)層を真空蒸着により形成した。なお、第一の界面層20以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0153】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、2.2mA/cmであり、発光輝度は150cd/cmであった。また、実施例15の有機EL素子の半減寿命は、3000時間であった。それぞれ得られた結果を表4に示す。
【0154】
[実施例16]
次に、この発明の実施例16について説明する。実施例16の有機EL素子の構造は、実施例14の有機EL素子の構造と同様である。ただし、実施例16では、第一の界面層20として、BaO層の代わりに、厚さ5nmのSrO(酸化ストロンチウム)層を真空蒸着により形成した。なお、第一の界面層20以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0155】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、2.0mA/cmであり、輝度は100cd/cmであった。また、実施例16の有機EL素子の半減寿命は、2000時間であった。それぞれ得られた結果を表4に示す。
【0156】
[比較例1]
次に、比較例1について説明する。比較例1の有機EL素子の構造は、実施例1の構造と同様である。ただし、比較例1では、電子注入域の材料に、「EM−1」の代わりに、下記の(16)式に示すトリニトロフルオレノン(TNF)を用いた。この場合の電子注入域の電子親和力は、4.1eVであった。なお、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0157】
【化14】
Figure 0004105429
【0158】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、0.1mA/cmであり、輝度は観測されなかった。
比較例1の有機EL素子では、電子注入域の電子親和力が4.1eVと高いため、TNFが発光域の材料と反応して錯体を形成したか、または、発光域で生成した励起状態が電子注入域へ移動して失活したものと考えられる。
【0159】
[比較例2]
次に、比較例2について説明する。比較例2の有機EL素子の構造は、実施例1の構造と同様である。ただし、比較例2では、電子注入域の材料に、「EM−1」の代わりに、下記の(17)式に示すジフェノキノンを用いた。この場合の電子注入域のガラス転移点は、50℃であった。なお、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0160】
【化15】
Figure 0004105429
【0161】
そして、有機EL素子に、実施例1と同様に7Vの電圧を印加した。このときの電流密度は、0.2mA/cmであり、輝度は一瞬2cd/mを得たが、すぐに消光した。それぞれ得られた結果を表3に示す。
比較例2の有機EL素子では、電子注入域の材料が窒素原子を含んでおり、ガラス転移点も50℃と低いため、ジュール熱のため電子注入域が破壊されたものと考えられる。
【0162】
[比較例3]
次に、比較例3について説明する。比較例3の有機EL素子の構造は、実施例1の構造と同様である。ただし、比較例3では、電子注入域の材料に、「EM−1」の代わりに、下記の(18)式に示す窒素含有化合物を用いた。この場合の電子注入域のガラス転移点は、62℃であった。なお、電子注入域の以外の各層は、実施例1と同一の材料および膜厚とした。
【0163】
【化16】
Figure 0004105429
【0164】
そして、有機EL素子に、6Vの直流電圧を印加した。このときの電流密度は、1.0mA/cmであり、輝度は90cd/mを得た。しかし、有機EL素子の半減寿命はわずか200時間であった。また、発光スペクトルを観測したところ、赤色発光するスペクトル成分が生じていた。それぞれ得られた結果を表3に示す。
【0165】
比較例3で使用した(18)式の窒素含有化合物は、アクセプター性が強いため、発光域の材料と相互作用して、消光をもたらす可能性が強いと考えられる。また、分子量が300以下であって、ガラス転移点が低い化合物は、発光域と容易に混合しやすく、その結果、相互作用して消光をもたらしたと考えられる。
【0166】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の第一の発明によれば、電子注入域と発光域との界面に、発光効率の低い電荷移動錯体またはエキシプレックスが発生することを抑制できるとともに、電子注入域から発光域へ電子を注入する上で好ましくないブロッキング接合の発生を抑制することもできる。
したがって、この発明によれば、発光効率の向上を図ることができ、さらには長寿命化した有機EL素子を提供することができる。
【0167】
また、本発明の第二の発明によれば、窒素原子を含まない芳香族環化合物を使用した場合はもちろんのこと、窒素原子を含んだ芳香族環化合物を使用した場合であっても、電子注入域と発光域との界面に、発光効率の低い電荷移動錯体またはエキシプレックスが発生することを抑制できるとともに、電子注入域から発光域へ電子を注入する上で好ましくないブロッキング接合の発生を抑制することもできる。
したがって、第二の発明によれば、より自由度が高く、発光効率の向上を図ることができ、さらには長寿命化した有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一および第二の実施形態における有機EL素子の断面図である。
【図2】第三の実施形態における有機EL素子の断面図である。
【図3】第四の実施形態における有機EL素子の断面図である。
【図4】第五の実施形態における有機EL素子の断面図である。
【図5】実施例1における有機EL素子の断面図である。
【図6】実施例2における有機EL素子の断面図である。
【図7】本発明の有機EL素子を製造するための真空蒸着装置例の斜視図である。
【図8】図7における真空蒸着装置の断面図である。
【図9】基板における測定点の説明に供する図である。
【図10】従来の有機EL素子の断面図である。
【符号の説明】
10 陰極層
12 発光域
14 電子注入域
16 陽極層
18 正孔注入輸送層
18a 正孔注入層
18b 正孔輸送層
20 第一の界面層
22 ガラス基板
20 第二の界面層
30 基板
50 陰極
52 第一の有機膜
54 第二の有機膜
56 第三の有機膜、発光域
58 陽極
60 有機EL素子
100、102,102a、104、04a、106 有機EL素子
201 真空蒸着装置
203 基板
210 真空槽
211 基板ホルダ
212 蒸着源
213 回転軸部
213A 回転軸線
214 モータ
221 仮想円

Claims (17)

  1. 少なくとも陽極層、発光域、電子注入域および陰極層を順次に積層した構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記電子注入域のガラス転移点を100℃以上の値とし、
    かつ、前記電子注入域に、窒素原子を含まない芳香族化合物と、下記式で表される還元性ドーパントとを含有し、
    さらに、前記電子注入域の電子親和力を1.8〜3.6eVの範囲とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Ar
    (ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換または置換の炭素数10〜40の芳香族環化合物を表す。)
  2. 請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記還元性ドーパントが、アントラセン、ナフタレン、ジフェニルアントラセン、ターフェニル、クォーターフェニル、キンクフェニル、および、セクシフェニルからなる群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形成された基を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 請求項1または2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記芳香族化合物が、アントラセン、フルオレン、ペリレン、ピレン、フェナントレン、クリセン、テトラセン、ルブレン、ターフェニレン、クォーターフェニレン、セクシフェニレンおよびトリフェニレンからなる群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形成された基を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記芳香族化合物が、スチリル置換された芳香族環、ジスチル置換された芳香族環からなる群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形成された基を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記還元性ドーパントの仕事関数を3.0eV以下の値とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記電子注入域のエネルギーギャップを2.7eV以上とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記芳香族化合物と還元性ドーパントとの添加比率を1:20〜20:1(モル比)の範囲とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光域と前記電子注入域とに、窒素原子を含まない同一種類の芳香族化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記陰極層と前記電子注入域との間および前記陽極層と前記発光域との間、あるいはいずれか一方に、界面層を設けることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 少なくとも陽極層、発光域、電子注入域および陰極層を順次に積層した構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記電子注入域に、電子輸送性化合物と、仕事関数が2.9eV以下の下記式で表される還元性ドーパントを含有し、
    かつ、該電子注入域の電子親和力を1.8〜3.6eVの範囲とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Ar
    (ただし、Mはアルカリ金属、Arは無置換または置換の炭素数10〜40の芳香族化合物を表す。)
  11. 請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記還元性ドーパントが、アントラセン、ナフタレン、ジフェニルアントラセン、ターフェニル、クォーターフェニル、キンクフェニル、および、セクシフェニルからなる群から選択される少なくとも一つの芳香族環より形成された基を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  12. 請求項10または11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記電子輸送性化合物が、含窒素複素環化合物を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  13. 請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記含窒素複素環化合物が、含窒素錯体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体およびトリアゾール誘導体からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  14. 請求項10〜13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記芳香族化合物と還元性ドーパントとの添加比率を1:20〜20:1(モル比)の範囲とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  15. 請求項10〜14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記電子注入域のガラス転移点を100℃以上の値とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  16. 請求項10〜15のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光域と前記電子注入域とに、同一種類の電子輸送性化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  17. 請求項10〜16のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記陰極層と前記電子注入域との間および前記陽極層と前記発光域との間、あるいはいずれか一方に、界面層を設けることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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