JP4105324B2 - ハロゲン化銀写真感光材料の製造方法および該製造方法で製造されたハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は溶液安定性の高い状態で色素溶液を使用するハロゲン化銀感光材料の製造方法および、その製造方法によって製造された高感度なハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からハロゲン化銀写真感光材料の高感度化のために、多大な努力がなされてきた。分光増感のために用いられる増感色素は、ハロゲン化銀写真感光材料の性能に大きな影響を与えることが知られている。増感色素においては、構造上のわずかな違いが、感度・かぶり・保存安定性などの写真性能に大きな影響を与えるが、その効果を事前に予測することは困難であり、従来から多くの研究者は数多くの増感色素を合成し、その写真性能を調べる努力をしてきた。
【0003】
ハロゲン化銀写真感光材料の感度向上の方法として、ハロゲン化銀に吸着させる増感色素量を増やすことがある。十分な量の増感色素を添加するために、高濃度の色素溶液を使用するか、あるいは溶解させることなく微粒子分散状のものを添加することが可能である。高濃度の色素溶液を調製できるのは、用いる溶媒に対して溶解性の良い色素を用いた場合に限られる。加熱や添加剤添加などの手段も安定な色素の場合に限られ、一般的に安定でない赤外増感色素の場合には溶解中に分解などを伴うことが多い。また、微粒子分散された色素を用いた場合には、ハロゲン化銀に吸着し難い色素は十分な量を吸着させることが難しい。
【0004】
ハロゲン化銀写真感光材料の高感度化の方法として、増感色素のLUMOを高くする方法があるが、同時にHOMOも高くなり色素の安定性が低下してしまう。このことは高HOMO色素となる赤外増感色素の場合に顕著である。なかでも、オキサゾール、2−オキサゾリン、4−オキサゾリンあるいはオキサゾリジン構造を有するポリメチン色素においては、調液時における溶液安定性が低いために、高感度となることがわかっていても使用することが困難であった。
【0005】
また、ハロゲン化銀写真感光材料の製造時において、増感色素は溶液としてハロゲン化銀乳剤に添加することが多い。色素溶液としては、溶解性が優れていることと合わせて、溶液中での色素の安定性も優れていることが求められているが、加えてハロゲン化銀乳剤に添加した際に写真性能などに悪影響を与えないことが必須であるため、実際に使用できる溶媒は限られている。
【0006】
一方で、ハロゲン化銀写真感光材料の製造工程における、色素溶液の調液から実際に乳剤に添加されるまでに経過する時間は、数時間から数日に及ぶことがある。特に大量製造時には長時間にわたって写真特性が安定することが必須であり、溶液安定性が低いものを使用した場合、添加までの時間および添加にかかる時間によって性能が安定しないことになる。
【0007】
したがって、分子設計としては高感度化が期待できる増感色素を、安定性の高い溶液状態で使用することさえできれば、従来にない高感度感光材料が得られることになるが、現状ではそのような方法は見出されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明で規定する特定の構造を有するポリメチン色素を、溶解性および溶液安定性が高い状態で使用してハロゲン化銀写真感光材料を製造すること、およびその方法によって分光感度が高いハロゲン化銀写真感光材料を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は下記手段によって解決される。
(1)支持体上の少なくとも一方の層にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤が、少なくとも1種の下記一般式( II )で表わされるメチン化合物によって分光増感されており、その化合物は炭素数2以上のアルコールの溶液として乳剤に添加されたことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
一般式( II )
【0010】
【化2】
【0011】
式中、L 1 、L 2 、L 3 、L 4 およびL 5 は置換基を有してもよいメチン基を表わす。p 1 は0を表わす。n 1 は2以上4以下の整数を表わす。Z 1 はチアゾール環またはベンゾチアゾール環を形成するのに必要な原子群を表し、Z 2 はベンゾオキサゾリン環を形成するのに必要な原子群を表わす。ただし、Z 1 およびZ 2 に芳香族環が縮環していてもよい。R 1 はアルキル基、アリール基または複素環基を表わし、R 2 はアルコキシアルキル基またはアリーロキシアルキル基を表わす。M 1 は置換アリールスルホン酸イオン、アリールジスルホン酸イオンおよびアルキルスルホン酸イオンから選択される電荷均衡対イオンを表わし、m 1 は分子の電荷を中和するのに必要な0以上4以下の数を表わす。
(2)前記一般式( II )で表わされるメチン化合物の全てが、炭素数2以上のアルコールの溶液として乳剤に添加されたことを特徴とする上記(1)に記載のハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
(3)前記Mが、アルキルスルホン酸イオンであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
(4)前記炭素数2以上のアルコールが、エタノールであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
(6)前記ハロゲン化銀感光材料が、熱現像用ハロゲン化銀感光材料であることを特徴とする上記(5)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、色素の溶媒として用いる炭素数2以上のアルコールとしては、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、フッ素アルコールなどが挙げられる。好ましくはエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールであり、特に好ましくはエタノールである。
【0013】
以下に本発明に使用する一般式(II)の化合物について詳細に説明する。
【0017】
一般式(II)において、Z 2 はベンゾオキサゾリン環を形成するのに必要な原子群を表す。
【0018】
Z 2 上には置換基を有してもよく、置換基をVとするとVで示される置換基としては特に制限はないが、例えば、ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素)、メルカプト基、シアノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、ヒドロキシ基、炭素数1から10、好ましくは炭素数2から8、さらに好ましくは炭素数2から5のカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、モルホリノカルボニル)、炭素数0から10、好ましくは炭素数2から8、さらに好ましくは炭素数2から5のスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ピペリジノスルホニル)、ニトロ基、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から8のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−フェニルエトキシ)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、さらに好ましくは炭素数6から10のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−メチルフェノキシ、p−クロロフェノキシ、ナフトキシ)、
【0019】
炭素数1から20、好ましくは炭素数2から12、さらに好ましくは炭素数2から8のアシル基(例えばアセチル、ベンゾイル、トリクロロアセチル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数2から12、さらに好ましくは炭素数2から8のアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、炭素数1から20、好ましくは炭素数2から12、さらに好ましくは炭素数2から8のアシルアミノ基(例えばアセチルアミノ)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から8のスルホニル基(例えばメタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニルなど)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から8のスルフィニル基(例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から8のスルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ、エタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなど)、
【0020】
アミノ基、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から12、さらに好ましくは炭素数1から8の置換アミノ基(例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、ベンジルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ)、炭素数0から15、好ましくは炭素数3から10、さらに好ましくは炭素数3から6のアンモニウム基(例えばトリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基)、炭素数0から15、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から6のヒドラジノ基(例えばトリメチルヒドラジノ基)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から6のウレイド基(例えばウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から6のイミド基(例えばスクシンイミド基)、炭素数1から20、好ましくは炭素数1から12、さらに好ましくは炭素数1から8のアルキルまたはアリールチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、カルボキシエチルチオ、スルホブチルチオ、フェニルチオなど)、炭素数2から20、好ましくは炭素数2から12、さらに好ましくは炭素数2から8のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、さらに好ましくは炭素数6から8のアリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、
【0021】
炭素数1から18、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から5の無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)、炭素数1から18、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から5の置換アルキル基(ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、ベンジル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノメチル、また、ここでは好ましくは炭素数2から18、さらに好ましくは炭素数3から10、特に好ましくは炭素数3から5の不飽和炭化水素基(例えばビニル基、エチニル基、1−シクロヘキセニル基、ベンジリジン基、ベンジリデン基)も置換アルキル基に含まれることにする。)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から15、さらに好ましくは炭素数6から10の置換または無置換のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、p−カルボキシフェニル、p−ニトロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、p−シアノフェニル、m−フルオロフェニル、p−トリル)、
【0022】
炭素数1から20、好ましくは炭素数2から10、さらに好ましくは炭素数4から6の置換されても良いヘテロ環基(例えばピリジル、5−メチルピリジル、チエニル、フリル、モルホリノ、テトラヒドロフルフリル)が挙げられる。また、ベンゼン環、ナフタレン環やアントラセン環が縮合した構造をとることもできる。
【0023】
Z 2 上の置換基として好ましいものは上述のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、シアノ基、スルホニル基、及びベンゼン環縮合であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、スルホニル基、及びベンゼン環縮合であり、特に好ましくはメチル基、フェニル基、メトキシ基、塩素原子、臭素原子、沃素原子、及びベンゼン環縮合である。最も好ましくは、メチル基、フェニル基、塩素原子、臭素原子、沃素原子である。
【0024】
R 2 はアルコキシアルキル基またはアリーロキシアルキル基を表わす。炭素原子は1から18、好ましくは1から7、特に好ましくは1から4のアルキル基に、アルコキシ基またはアリーロキシ基が置換したアルキル基が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、例えば、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチルが、アリーロキシアルキル基としては、例えば2−フェノキシエチル、2−(1−ナフトキシ)エチルが挙げられる。
【0025】
R 2 として好ましくはアリーロキシアルキル基であり、さらに好ましくは2−(1−ナフトキシ)エチル基である。
【0026】
M 1 は色素のイオン電荷を中性にするために必要であるとき、陽イオン又は陰イオンの存在を示すために式の中に含められているものであり、置換アリールスルホン酸イオン、アリールジスルホン酸イオンおよびアルキルスルホン酸イオンから選択される電荷均衡対イオンを表わす。置換アリールスルホン酸イオンとしては、例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロルベンゼンスルホン酸イオンが、アリールジスルホン酸イオンとしては、例えば1,3−ベンゼンスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオンが、アルキルスルホン酸イオンとしては、例えば、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオンが挙げられる。好ましくは、p−トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオンである。特に好ましくはメタンスルホン酸イオンである。
【0027】
m 1 は分子の電荷を中和するのに必要な0以上4以下の数を表わし、分子内で塩を形成する場合に0である。
【0030】
式中、L1 、L2 、L3 、L4 およびL5 は置換基を有してもよいメチン基を表わす。p1 は0を表わす。n1 は2以上4以下の整数を表わす。Z1 はチアゾール環またはベンゾチアゾール環を形成するのに必要な原子群を表わす。ただし、Z1およびZ2に芳香族環が縮環していてもよい。R 1 はアルキル基、アリール基または複素環基を表わす。
【0031】
L1 、L2 、L3 、L4 およびL5 はそれぞれ独立にメチン基を表す。これらは置換基を有していてもよく、置換基としては例えば置換もしくは無置換の炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から5のアルキル基(例えばメチル、エチル、2−カルボキシエチル)、置換もしくは無置換の炭素数6から20、好ましくは炭素数6から15、さらに好ましくは炭素数6から10のアリール基(例えばフェニル、o−カルボキシフェニル)、置換もしくは無置換の炭素数3から20、好ましくは炭素数4から15、さらに好ましくは炭素数6から10の複素環基(例えばN,N−ジエチルバルビツール酸基)、ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、フッ素、沃素)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から5のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、さらに好ましくは炭素数1から5のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から15、さらに好ましくは炭素数6から10のアリールチオ基(例えばフェニルチオ)、炭素数0から15、好ましくは炭素数2から10、さらに好ましくは炭素数4から10のアミノ基(例えば、N,N−ジフェニルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノ、N−メチルピペラジノ)などが挙げられる。また他のメチン基と環を形成してもよく、あるいはZ1またはZ2と共に環を形成することもできる。
【0032】
p1は0を表わす。
【0033】
n1は2以上4以下の整数を表わすが、特に好ましくは3以上4以下であり、最も好ましくは3である。n1が2以上の時、メチン基が繰り返されるが同一である必要はない。
【0034】
Z1で形成されるチアゾール環またはベンゾチアゾール環には、芳香族環が縮環していても良い。芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環などや、ピラジン環、チオフェン環などの複素芳香族環でも良い。
【0035】
Z 1 で形成される環として、好ましくはベンゾチアゾール環である。
【0039】
以下に本発明の一般式(II)で表される化合物の具体例を示すが、本発明の範囲はこれらのみに限定されるものではない。
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0045】
本発明の一般式(II)で表される化合物は、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topicsin heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,partB,1977刊、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、などに記載の方法に基づいて合成することができる。
【0046】
本発明の一般式(II)(以下、本発明の化合物)で表される化合物は、単独で用いても良いが、他の分光増感色素と併用しても良い。
【0047】
次に本発明のハロゲン化銀写真感光材料について詳しく説明する。
【0048】
本発明の化合物(又、その他の増感色素についても同様)を本発明のハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用である事が認められている乳剤調製の如何なる工程中であってもよい。例えば、米国特許2,735,766号、同3,628,960号、同4,183,756号、同4,225,666号、特開昭58−184142号、同60−196749号等に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/及び脱塩前の時期、脱塩工程中及び/または脱塩後から化学熟成の開始前迄の時期、特開昭58−113920号等に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後塗布迄の時期の乳剤が塗布される前なら如何なる時期、工程に於いて添加されても良い。また、米国特許4,225,666号、特開昭58−7629号等に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば、粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加しても良く、分割して添加する化合物及び化合物の組み合わせの種類をも変えて添加されても良い。
【0049】
本発明の化合物の添加量としては、ハロゲン化銀粒子の形状、サイズにより異なるが、ハロゲン化銀1モル当たり、1×10-6〜8×10-3モルで用いることができる。例えば、ハロゲン化銀粒子サイズが0.2〜1.3μmの場合には、ハロゲン化銀1モル当たり、2×10-6〜3.5×10-3モルの添加量が好ましく、7.5×10-6〜1.5×10-3モルの添加量がより好ましい。
【0050】
本発明の化合物は、炭素数2以上のアルコールの溶液として乳剤に添加される。特にエタノール溶液として添加されることが好ましい。
本発明の化合物以外の分光増感色素を併用する場合には、その色素は直接乳剤中へ分散することができる。また、これらはまず適当な溶媒、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、メチルセロソルブ、アセトン、水、ピリジンあるいはこれらの混合溶媒などの中に溶解され、溶液の形で乳剤中へ添加することもできる。この際、塩基や酸、界面活性剤などの添加物を共存させることもできる。また、溶解に超音波を使用することもできる。また、この化合物の添加方法としては米国特許第3,469,987号などに記載のごとき、該化合物を揮発性の有機溶媒に溶解し、該溶液を親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭46−24185号などに記載のごとき、水溶性溶剤中に分散させ、この分散物を乳剤中へ添加する方法、米国特許第3,822,135号に記載のごとき、界面活性剤に化合物を溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法、特開昭51−74624号に記載のごとき、レッドシフトさせる化合物を用いて溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法、特開昭50−80826号に記載のごとき、化合物を実質的に水を含まない酸に溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法などが用いられる。その他、乳剤中への添加には米国特許第2,912,343号、同3,342,605号、同2,996,287号、同3,429,835号などに記載の方法も用いられる。
【0051】
また、本発明の化合物は、鮮鋭度、色分解能向上などの目的のための種々のフィルター染料、イラジェーション防止染料またはアンチハレーション用染料等として用いることができる。
この化合物は慣用の方法でハロゲン化銀写真感光材料層、フィルター層および/またはハレーション防止層などの塗布液に含有させることができる。染料の使用量は写真層を着色させるに充分な量でよく、当業者は容易にこの量を使用目的に応じて適宜選定できる。一般には、光学濃度が0.05ないし3.0の範囲になるように使用するのが好ましい。
添加時期は塗布される前のいかなる工程でもよい。
また、染料イオンと反対の荷電をもつポリマーを媒染剤として層に共存させ、これを染料分子との相互作用によって、染料を特性層中に局在化させることもできる。
ポリマー媒染剤としては例えば米国特許2,548,564号、同4,124,386号、同3,625,694号、同3,958,995号、同4,168,976号、同3,445,231号に記載されているものなどを挙げることができる。
【0052】
本発明における分光増感において有用な強色増感剤は、例えば米国特許3,511,664号、同3,615,613号、同3,615,632号、同3,615,641号、同4,596,767号、同4,945,038号、同4,965,182号、同4,965,182号等に記載のピリミジルアミノ化合物、トリアジニルアミノ化合物、アゾリウム化合物などであり、その使用法に関しても上記の特許に記載されている方法が好ましい。
【0053】
本発明のハロゲン化銀感光材料に使用しうるハロゲン化銀は、臭化銀、沃臭化銀、沃塩臭化銀、塩臭化銀および塩化銀のいずれであってもよい。好ましいハロゲン化銀は臭化銀、塩臭化銀、沃塩臭化銀、または特開平2−42号に記載されている高塩化銀である。
また、以下に感光材料の構成、処理などについて述べるが、特開平2−42号に記載の構成、処理は特に高塩化銀において好ましく用いられる。
また、特開昭63−264743号に記載の構成、処理は特に塩臭化銀において好ましく用いられる。
【0054】
ハロゲン化銀粒子は内部と表層とが異なる相をもっていても、均一な相から成っていてもよい。また潜像が主として表面に形成されるような粒子(例えばネガ型感光材料)でもよく、粒子内部に主として形成されるような粒子(例えば、内部潜像型感光材料)、または予めかぶらせた粒子(例えば直接ポジ型感光材料)であってもよい。
前記の種々のハロゲン組成、晶癖、粒子内構造、形状および分布を有するハロゲン化銀粒子は、各種用途の感光性写真材料(要素)に於て使用される。
【0055】
写真感光材料中のハロゲン化銀粒子は、立方体、14面体、菱12面体のような規則的(regular) な結晶体を有するものでもよく、また球状、平板状などのような変則的(irregular)な結晶形をもつもの、あるいはこれらの結晶形の複合形をもつものでもよい。種々の結晶形の粒子の混合から成ってもよい。
【0056】
本発明のハロゲン化銀感光材料に使用しうるハロゲン化銀乳剤で好ましいものは、本発明に開示する増感色素を吸着せしめた、より表面積/体積比の高い平板状ハロゲン化銀粒子であり、アスペクト比(ハロゲン化銀粒子の円相当直径/粒子厚み)は3以上1000以下、8以上1000以下、8以上100以下、15以上80以下、20以上80以下の順に好ましい。ここでのアスペクト比が3以上1000以下であるとは、アスペクト比(ハロゲン化銀粒子の円相当直径/粒子厚み)が3以上1000以下のハロゲン化銀粒子が乳剤中の全ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上存在することを意味する。好ましくは、70%以上、特に好ましくは85%以上存在する乳剤である。平板状粒子の厚さは、0.2μm未満、好ましくは0.1μm未満、より好ましくは0.07μm未満である。平板状粒子はガフト著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Gutoff,Photographic Science and Engineering), 第14巻、248 〜257 頁(1970 年);US4,434,226 号、同4,414,310 、同4,433,048 、同4,439,520 及びGB2,112,157 に記載の方法により簡単に調整できる。
【0057】
本発明の化合物は、増感剤、増感色素、フィルター、アンチハレーションあるいはイラジェーション防止等の目的で下記の如き用途の感光材料に用いられる。これらの色素は感光性乳剤層以外に、中間層、保護層、バック層など所望の層に添加できる。
本発明の化合物は、種々のカラー及び白黒用のハロゲン化銀写真感光材料に用いられる。
さらに詳しくは、カラーポジ用感光材料、カラーペーパー用感光材料、カラーネガ用感光材料、カラー反転用感光材料(カプラーを含む場合もあり、含まぬ場合もある)、直接ポジ用ハロゲン化銀写真感光材料、製版用写真感光材料(例えばリスフィルム、リスデュープフィルムなど)、陰極線管ディスプレイ用感光材料、X線記録用感光材料(特にスクリーンを用いる直接及び間接撮影用材料)、銀塩拡散転写プロセス(Silver Salt diffusion transfer process) に用いられる感光材料、カラー拡散転写プロセスに用いる感光材料、ダイ・トランスファー・プロセス(imhibition process) に用いる感光材料、銀色素漂白法に用いる感光材料、熱現像用感光材料等に用いられる。
【0058】
本発明に用いられるハロゲン化銀写真乳剤は、ピー・グラフキデス(P.Glafkides)著「シミー・エ・フィジーク・フォトグラフィーク(Chimie et Physique Photograhique 」(ポールモンテル(Paul Montel)社刊、1967年)、ジー・エフ・デフェイン(G.F.Duffin) 著「フォトグラフィク・エマルジョン・ケミストリー(Photographic Emulsion Chemistry)」(ザ・フォーカルプレス(The Focal Press) 刊、1966年)、ヴィ・エル・ツエリクマンら(V.L.Zelikman et al.)著「メーキング・アンド・コーティング・フォトグラフィク・エマルジョン(Making and Coating Photographic Emulsion) 」(ザ・フォーカルプレス(The Focal Press) 刊、1964年)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0059】
またハロゲン化銀粒子の形成時には粒子の成長をコントロールするためにハロゲン化銀溶剤として例えばアンモニア、ロダンカリ、ロダンアンモン、チオエーテル化合物(例えば米国特許第3,271,157号、同3,574,628号、同3,704,130号、同4,297,439号、同4,276,374号など)、チオン化合物(例えば特開昭53−144319号、同53−82408号、同55−77737号など)、アミン化合物(例えば特開昭54−100717号など)などを用いることができる。
ハロゲン化銀粒子形成または物理熟成の過程において、カドミウム塩、亜鉛塩、タリウム塩、イリジウム塩またはその錯塩、ロジウム塩またはその錯塩、鉄塩または鉄錯塩などを共存させてもよい。
本発明に用いられる内部潜像型ハロゲン化銀乳剤としては例えば米国特許2,592,250号、同3,206,313号、同3,447,927号、同3,761,276号、及び同3,935,014号等に記載があるコンバージョン型ハロゲン化銀乳剤、コア/シェル型ハロゲン化銀乳剤、異種金属を内蔵させたハロゲン化銀乳剤を挙げることができる。
【0060】
ハロゲン化銀乳剤は、通常は化学増感される。化学増感のためには、例えば、エイチ・フリーザー(H.Frieser)編「ディ・グランドラーゲン・デア・フォトグラフィッシェン・プロヅェッセ・ミット・ジルベルハロゲニーデン(Die Grundlagen der Photographischen Prozesse mit Silberhalogeniden) 」、アカデミッシェ フェアラーグス社(Akademische Verlagsgesellschaft)社、(1968年)675〜734頁に記載の方法を用いることができる。
すなわち、活性ゼラチンや銀と反応し得る硫黄を含む化合物(例えば、チオ硫酸塩、チオ尿素類、メルカプト化合物類、ローダニン類)を用いる硫黄増塩感法;セレン増感法;還元性物質(例えば、第一すず塩、アミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物)を用いる還元増感法;貴金属化合物(例えば、金錯塩のほか、Pt、Ir、Pdなどの周期律表VIII族の金属の錯塩)を用いる貴金属増感法等を単独または組合せて用いることができる。
【0061】
本発明に用いられる写真感光材料には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のカブリを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類たとえば米国特許第3,954,478号、同4,942,721号、特開昭59−191032号などに記載されているベンゾチアゾリウム塩、また特公昭59−26731号に記載されているその開環体、ニトロインダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベンズイミダゾール類(特にニトロ−またはハロゲン置換体);ヘテロ環メルカプト化合物類たとえばメルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)、メルカプトピリミジン類;カルボキシル基やスルホン基などの水溶性基を有する上記のヘテロ環メルカプト化合物類;チオケトン化合物たとえばオキサゾリンチオン;アザインデン類たとえばテトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類);ベンゼンチオスルホン酸類;ベンゼンスルフィン酸;特開昭62−87957号に記載されているアセチレン化合物等;などのようなカブリ防止剤または安定剤として知られた多くの化合物を加えることができる。
【0062】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料はシアンカプラー、マゼンタカプラー、イエローカプラーなどのカラーカプラー及びカプラーを分散する化合物を含むことができる。
すなわち発色現像処理において芳香族1級アミン現像薬(例えば、フェニレンジアミン誘導体や、アミノフェノール誘導体など)との酸化カップリングによって発色しうる化合物を含んでもよい。例えば、マゼンタカプラーとして、5−ピラゾロンカプラー、ピラゾロベンズイミダゾールカプラー、シアノアセチルクマロンカプラー、開鎖アシルアセトニトリルカプラー等があり、イエローカプラーとして、アシルアセトアミドカプラー(例えばベンゾイルアセトアニリド類、ピバロイルアセトアニリド類)等があり、シアンカプラーとして、ナフトールカプラーおよびフェノールカプラー等がある。これらのカプラーは分子中にバラスト基とよばれる疎水基を有する非拡散のものが望ましい。カプラーは銀イオンに対し4当量性あるいは2当量性のどちらでもよい。また色補正の効果をもつカラードカプラー、あるいは現像にともなって現像抑制剤を放出するカプラー(いわゆるDIRカプラー)であってもよい。
またDIRカプラー以外にも、カップリング反応の生成物が無色であって現像抑制剤を放出する無呈色DIRカップリング化合物を含んでもよい。
【0063】
本発明の写真感光材料には感度上昇、コントラスト上昇、または現像促進の目的で、例えばポリアルキレンオキシドまたはそのエーテル、エステル、アミンなどの誘導体、チオエーテル化合物、チオモルフォリン類、四級アンモニウム塩化合物、ウレタン誘導体、尿素誘導体、イミダゾール誘導体、3−ピラゾリドン類などを含んでいてもよい。
本発明のハロゲン化銀感光材料にはフィルター染料として、あるいはイラジェーション防止その他の種々の目的で、本発明のメチン化合物以外に、種々の染料を含んでいてもよい。
この様な染料には、例えば英国特許第506,385号、同1,177,429号、同1,311,884号、同1,338,799号、同1,385,371号、同1,467,214号、同1,433,102号、同1,553,516号、特開昭48−85130号、同49−114420号、同52−117123号、同55−161233号、同59−111640号、特公昭39−22069号、同43−13168号、同62−273527号、米国特許第3,247,127号、同3,469,985号、同4,078,933号等に記載されたピラゾロン核やバルビツール酸核を有するオキソノール染料、米国特許第2,533,472号、同3,379,533号、英国特許第1,278,621号、特開平1−134447号、同1−183652号等記載されたその他のオキソノール染料、英国特許第575,691号、同680,631号、同599,623号、同786,907号、同907,125号、同1,045,609号、米国特許第4,255,326号、特公昭59−211043号等に記載されたアゾ染料、特開昭50−100116号、同54−118247号、英国特許第2,014,598号、同750,031号等に記載されたアゾメチン染料、米国特許第2,865,752号に記載されたアントラキノン染料、米国特許第2,533,009号、同2,688,541号、同2,538,008号、英国特許第584,609号、同1,210,252号、特開昭50−40625号、同51−3623号、同51−10927号、同54−118247号、特公昭48−3286号、同59−37303号等に記載されたアリーリデン染料、特公昭28−3082号、同44−16594号、同59−28898号等に記載されたスチリル染料、英国特許第446,583号、同1,335,422号、特開昭59−228250号等に記載されたトリアリールメタン染料、英国特許第1,075,653号、同1,153,341号、同1,284,730号、同1,475,228号、同1,542,807号等に記載されたメロシアニン染料、米国特許第2,843,486号、同3,294,539号、特開平1−291247号等に記載されたシアニン染料などが挙げられる。
【0064】
このような染料の拡散を防止するために以下の方法を用いることができる。
例えば、解離したアニオン性染料と反対の電荷をもつ親水性ポリマーを媒染剤として層に共存させ、染料分子との相互作用によって染料を特定層中に局在化させる方法が、米国特許2,548,564号、同4,124,386号、同3,625,694号等に開示されている。
また、水に不溶性の染料固体を用いて特定層を染色する方法が、特開昭56−12639号、同55−155350号、同55−155351号、同63−27838号、同63−197943号、欧州特許第15,601号等に開示されている。
また、染料が吸着した金属塩微粒子を用いて特定層を染色する方法が米国特許第2,719,088号、同2,496,841号、同2,496,843号、特開昭60−45237号等に開示されている。
【0065】
本発明の写真感光材料には塗布助剤、帯電防止、スベリ性改良、乳化分散、接着防止および写真特性改良(たとえば現像促進、硬調化、増感)など種々の目的で種々の界面活性剤を含んでもよい。
本発明を実施するに際しては、その他添加剤がハロゲン化銀乳剤または他の親水性コロイドと共に用いられる、例えば、退色防止剤、無機もしくは有機の硬膜剤、色カブリ防止剤、紫外線吸収剤、媒染剤、可塑剤、ラテックスポリマー、マット剤などを挙げることができる。具体的には、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)Vol.176(1978、XI)、D−17643などに記載されている。
また、本発明に用いられる写真感光材料には、保護コロイドとしてゼラチン等の親水性ポリマーが用いられる。
完成(finished) ハロゲン化銀乳剤等は、適切な支持体、例えばバライタ紙、レジンコート紙、合成紙、トリアセテートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、その他のプラスチックベースまたはガラス板の上に塗布される。
【0066】
写真像を得るための露光は通常の方法を用いて行なえばよい。すなわち、自然光(日光)、タングステン電灯、蛍光灯、水銀灯、キセノンアーク灯、炭素アーク灯、キセノンフラッシュ灯、陰極線管フライングスポットなどの公知の多種の光源をいずれでも用いることができる。露光時間は通常カメラで用いられる1/1000秒から1秒の露光時間はもちろん、1/1000秒より短い露光、たとえばキセノン閃光灯や陰極線管を用いた1/104 〜1/106 秒の露光を用いることもできるし、1秒より長い露光を用いることもできる。必要に応じて色フィルターで露光に用いられる光の分光組成を調節することができる。露光にレーザー光を用いることもできる。また電子線、X線、γ線、α線などによって励起された蛍光体から放出する光によって露光されてもよい。
本発明を用いて作られる感光材料の写真処理には、例えばリサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)176号第28〜30頁(RD−17643)に記載されているような、公知の方法及び公知の処理液のいずれをも適用することができる。この写真処理は、目的に応じて、銀画像を形成する写真処理(黒白写真処理)、あるいは色素像を形成する写真処理(カラー写真処理)のいずれであってもよい。処理温度は普通18℃から50℃の間に選ばれるが、18℃より低い温度または50℃を越える温度としてもよい。
【0067】
本発明で用いてもよい磁気記録を担持したハロゲン化銀写真感光材料(以下「感材」ともいう。)は、特開平6−35118号、特開平6−17528号、発明協会公開技報94−6023に詳細に記載される予め熱処理したポリエステルの薄層支持体、例えば、ポリエチレン芳香族ジカルボキシレート系ポリエステル支持体で、50μm〜300μm、好ましくは50μm〜200μm、より好ましくは80〜115μm、特に好ましくは85〜105μmを40℃以上、ガラス転移温度以下の温度で1〜1500時間熱処理(アニール)し、特公昭43−2603号、特公昭43−2604号、特公昭45−3828号記載の紫外線照射、特公昭48−5043号、特開昭51−131576号等に記載のコロナ等の表面処理し、USP5,326,689号に記載の下塗りを行い必要に応じUSP2,761,791号に記載された下引き層を設け、特開昭59−23505号、特開平4−195726号、特開平6−59357号記載の強磁性体粒子を塗布すれば良い。
なお、上述した磁性層は特開平4−124642号、特開平4−124645号に記載されたストライプ状でも良い。
更に、必要に応じ、特開平4−62543号の帯電防止処理をし、最後にハロゲン化銀乳剤を塗布した物を用いる。ここで用いるハロゲン化銀乳剤は特開平4−166932号、特開平3−41436号、特開平3−41437号を用いる。
こうして作る感材は特公平4−86817号記載の製造管理方法で製造し、特公平6−87146号記載の方法で製造データを記録するのが好ましい。その後、またはその前に、特開平4−125560号に記載される方法に従って、従来の135サイズよりも細幅のフィルムにカットし、従来より小さいフォーマット画面にマッチするようにパーフォレーションを小フォーマット画面当たり片側2穴せん孔する。
こうして出来たフィルムは特開平4−157459号のカートリッジ包装体や特開平5−210202号実施例の図9記載のカートリッジ、またはUSP4,221,479号、フィルムパトローネやUSP4,834,306号、US4,834,366号、USP5,226,613号、USP4,846,418号記載のカートリッジに入れて使用する。
ここで用いるフィルムカートリッジまたはフィルムパトローネはUSP4,848,693号、USP5,317,355号の様にベロが収納できるタイプが光遮光性の観点で好ましい。
さらには、USP5,296,886号の様なロック機構を持ったカートリッジやUSP5,347,334号に記載される使用状態が表示されるカートリッジ、二重露光防止機能を有するカートリッジが好ましい。
また、特開平6−85128号に記載の様にフィルムを単にカートリッジに差し込むだけで容易にフィルムが装着されるカートリッジを用いても良い。
こうして作られたフィルムカートリッジは次に述べるカメラや現像機、ラボ機器を用いて合目的に撮影、現像処理、色々な写真の楽しみ方に使用できる。
例えば、特開平6−8886号、特開平6−99908号に記載の簡易装填式のカメラや特開平6−57398号、特開平6−101135号記載の自動巻き上げ式カメラや特開平6−205690号に記載の撮影途中でフィルムの種類を取り出し交換できるカメラや特開平5−293138号、特開平5−283382号に記載の撮影時の情報、例えば、パノラマ撮影、ハイヴィション撮影、通常撮影(プリントアスペクト比選択の出来る磁気記録可能)をフィルムに磁気記録出来るカメラや特開平6−101194号に記載の二重露光防止機能を有するカメラや特開平5−150577号に記載のフィルム等の使用状態表示機能の付いたカメラなどを用いるとフィルムカートリッジ(パトローネ)の機能を充分発揮できる。
この様にして撮影されたフィルムは特開平6−222514号、特開平6−222545号に記載の自現機で処理するか、処理の前または最中または後で特開平6−95265号、特開平4−123054号に記載のフィルム上の磁気記録の利用法を用いても良いし、特開平5−19364号記載のアスペクト比選択機能を利用しても良い。
現像処理する際シネ型現像であれば、特開平5−119461号記載の方法でスプライスして処理する。
また、現像処理する際または後、特開平6−148805号記載のアッタヂ、デタッチ処理する。
こうして処理した後で、特開平2−184835号、特開平4−186335号、特開平6−79968号に記載の方法でカラーペーパーへのバックプリント、フロントプリントを経てフィルム情報をプリントへ変換しても良い。
更には、特開平5−11353号、特開平5−232594号に記載のインデックスプリント及び返却カートリッジと共に顧客に返却しても良い。
【0068】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
例示化合物9、13それぞれ5mgを10mlメスフラスコに量り取り、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールで溶解して全体を10mlにした。この時目視で色素の溶解性を評価した。溶液になったものを○、少し溶け残ったものを△、全く溶解しなかったものを×と表わした結果を表1に示す。完全に溶解しなかったものについては、濾過した溶液を次の溶液安定性試験に用いた。
色素溶液を密栓して、暗所下、10℃および25℃恒温槽で保存した。この溶液を3日後および6日後に少量取り出し、分光光度計で極大吸収波長の吸光係数を測定し、調液直後の値と比較することで溶液安定性を評価した。調液直後の吸光係数を100とした結果、および6日経時後の吸光係数が調液直後のものと比べて95%以上であるものを◎、90%以上であるものを○、80%以上であるものを△、79%以下であるものを×として評価した結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1から、オキサゾール、2−オキサゾリン、4−オキサゾリンあるいはオキサゾリジン構造を含む色素は、メタノール溶液に比べて、エタノール、イソプロパノールおよびn−ブタノール溶液の場合、溶液安定性に優れていることがわかる。特にエタノール溶液の場合には溶解度と溶液安定性の両方を満足する色素溶液が得られることがわかる。
【0072】
(実施例2)
下記に示す方法で試料を調製した。
(1)乳剤の調製
平均分子量15000のゼラチンを含む水溶液(水1200ml、ゼラチン7.0g、KBr4.5gを含む)を30℃に保って攪拌しながら、1.9M AgNO3 水溶液と1.9M KBr水溶液を25ml/minで70秒間のダブルジェット法により添加して平板状粒子の核を得た。この乳剤の内400mlを種晶とし、これに不活性ゼラチン水溶液650ml(ゼラチン20g、KBr1.2gを含む)を添加して75℃に昇温し、40分間熟成した。そしてAgNO3 水溶液(AgNO3 1.7gを含む)を1分30秒間かけて添加し、続いてNH4NO3 (50wt%)水溶液7.0mlとNH3 (25wt%)7.0mlを添加し、さらに40分間熟成した。
【0073】
次に乳剤をHNO3(3N)でpH7にしてKBr1.0gを添加した後、1.9M AgNO3 水溶液366.5mlとKBr水溶液を、続いて1.9M AgNO3 水溶液53.6mlとKBr(KIを33.3mol %含む)水溶液を、そして1.9M AgNO3 水溶液160.5mlとKBr水溶液をpAgを7.9に保ちながら添加して、乳剤1を得た。
【0074】
得られた乳剤は、中間殻に沃化銀含有率が最も高い領域を有する三重構造粒子であり、アスペクト比の平均が2.8であり、アスペクト比3以上の平板状粒子の全投影面積に占める割合は26%であった。粒子サイズの変動係数は7%であり、粒子サイズの平均は球相当径で0.98μmであった。
【0075】
乳剤1を通常のフロキュレーション法により脱塩後、銀1mol に対して4.1×10-4molの増感色素を添加し、その存在下で金・硫黄・セレン増感を最適に行った。
【0076】
増感色素の添加方法は、例示色素9をメタノールおよびエタノールに溶解し、調液後すぐに添加したもの、およびそれぞれの溶液を密栓して暗所下室温で3日保存した後に添加したもの、合計4種の乳剤を作成した。以下の操作は4種とも同様におこなった。
【0077】
(2)塗布試料の作製
下塗り層を設けてあるトリアセチルセルロースフィルム支持体に、表2に示すような乳剤層および保護層を塗布し、試料を作成した。
調液後すぐに添加したもののうち、メタノール溶液で添加したものを試料1、エタノール溶液で添加したものを試料2、3日後に添加したもののうち、メタノール溶液で添加したものを試料3、エタノール溶液で添加したものを試料4とした。
【0078】
【表2】
【0079】
これらの試料にセンシトメトリー用露光(1/100秒)を与え、下記のカラー現像処理を行った。
【0080】
次に、処理液の組成を記す。
(発色現像液) 母液(g) 補充液(g)
ジエチレントリアミン五酢酸 1.0 1.1
1−ヒドロキシエチリデン−1,1 −ジホスホン酸 3.0 3.2
亜硫酸ナトリウム 4.0 4.4
炭酸カリウム 30.0 37.0
臭化カリウム 1.4 0.7
ヨウ化カリウム 1.5 mg −
ヒドロキシルアミン硫酸塩 2.4 2.8
4−〔N−エチル−N−β−ヒドロキシエチルア
ミノ〕−2−メチルアニリン硫酸塩 4.5 5.5
水を加えて 1.0リットル 1.0リットル
pH 10.05 10.05
(漂白液) 母液(g) 補充液(g)
エチレンジアミン四酢酸第二鉄ナトリウム三水塩 100.0 120.0
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 10.0 11.0
臭化アンモニウム 140.0 160.0
硝酸アンモニウム 30.0 35.0
アンモニア水(27%) 6.5ml 4.0ml
水を加えて 1.0リットル 1.0リットル
pH 6.0 5.7
(定着液) 母液(g) 補充液(g)
エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 0.5 0.7
亜硫酸ナトリウム 7.0 8.0
重亜硫酸ナトリウム 5.0 5.5
チオ硫酸アンモニウム水溶液(70%) 170.0ml 200.0ml
水を加えて 1.0リットル 1.0リットル
pH 6.7 6.6
(安定液) 母液(g) 補充液(g)
ホルマリン(37%) 2.0ml 3.0ml
ポリオキシエチレン−p−モノノニルフェニル
エーテル(平均重合度10) 0.3 0.45
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.05 0.08
水を加えて 1.0リットル 1.0リットル
pH 5.8−8.0 5.8 −8.0
【0081】
処理済みの試料を濃度測定し、フレッシュ感度を評価した。
感度は被り濃度より0.2高い濃度を与える露光量の逆数で定義し、各試料の感度は試料1の値を100とした相対値で評価した。結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
本発明の色素溶液を用いることによって、溶液経時後に添加した場合でも調液直後に添加したものと変わらない高い感度を与えるハロゲン化銀写真感光材料を与えることがわかる。
【0088】
【発明の効果】
溶解度および溶液安定性の高い色素溶液を使用できることによって、溶液経時後にハロゲン化銀乳剤に色素溶液を添加した場合でも、調液直後に添加したものと同様の、高感度なハロゲン化銀写真感光材料を製造することができる。
Claims (6)
- 支持体上の少なくとも一方の層にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤が、少なくとも1種の下記一般式( II )で表わされるメチン化合物によって分光増感されており、その化合物は炭素数2以上のアルコールの溶液として乳剤に添加されたことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
一般式( II )
- 前記一般式( II )で表わされるメチン化合物の全てが、炭素数2以上のアルコールの溶液として乳剤に添加されたことを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
- 前記Mが、アルキルスルホン酸イオンであることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
- 前記炭素数2以上のアルコールが、エタノールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
- 前記ハロゲン化銀感光材料が、熱現像用ハロゲン化銀感光材料であることを特徴とする請求項5に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP08248899A JP4105324B2 (ja) | 1999-03-25 | 1999-03-25 | ハロゲン化銀写真感光材料の製造方法および該製造方法で製造されたハロゲン化銀写真感光材料 |
Applications Claiming Priority (1)
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