JP4104464B2 - 魚卵様食品及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然のイクラに酷似した外観と食感を有する魚卵様食品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、天然のイクラに外観や食感が似ている魚卵様食品の開発が行われている。例えば特開昭60−83570号公報(特許文献1)及び特開昭61−21070号公報(特許文献2)には、魚卵様食品の内部構造を目玉様に形成するために、ゲル状皮膜の粒体内に油相原料と水相原料からなる原料液を封じ込め、これらをさらに加工する提案がなされている。
また、特開平9−149775号公報(特許文献3)には、皮膜強度を天然イクラに近づけるため、皮膜の含水率を調節する提案がなされている。さらに、特開平7−99941号公報(特許文献4)には、風味を改善するために醤油で風味付けする提案がなされている。
【0003】
しかしながら、外観や皮膜の強度、風味については、ある程度天然のイクラに近づける工夫がなされており、評価されるものの、従来技術で得られた魚卵様食品は、食べた時の内腔液の口溶け感が悪いという問題点があった。天然イクラを食するとプチプチとしたイクラ表皮の食感の後にイクラ内部の液状物が口の中に広がり、とろりとした口溶け感が得られる。このとろりとした口溶け感が充分に再現できていないために、従来技術で得られた魚卵様食品は天然イクラと同等の美味しさが得られていなかった。
また、従来技術で得られた魚卵様食品は、冷凍保管した場合、解凍後に多量の離水(ドリップ)が生じて、外観や食感が著しく損なわれるという問題点があった。この離水を防ぐ方法としては、特開平9−201179号公報(特許文献5)に皮膜の含水率を調節する方法が提案されている。しかし、この方法は、公知の製法の配合を一部調節するだけで、冷凍保管による離水を減らすことができる点が評価できるものの、冷凍保管による形状と食感の変化を十分に抑えることができていない。
【0004】
このような状況下、本発明者は、まず、魚卵様食品に天然イクラ特有のとろりとした口溶け感を付与するために、魚卵様食品の内腔液を取り出して、様々な物質を加えてテストを行った。
その結果、4糖以上の糖類が糖組成の60%以上を占めるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を内腔液に加えると、意外にも、天然イクラに酷似したとろりとした口溶け感が得られることを見出した。
【0005】
この知見に基づき、本発明者は、魚卵様食品の内腔に上述の糖を含有させる製造方法の検討を開始した。
魚卵様食品の代表的な製造方法に、塩化カルシウムを含むゾル状体をアルギン酸アルカリ金属水溶液中に滴下し、アルギン酸カルシウム皮膜を製して魚卵様食品を得る方法がある。本発明者は、最初に、この製造方法において滴下液に上述の糖類を加えることを試みた。しかし、この糖類を加えると、滴下液の粘稠性が変わるためか、滴下した時にきれいな球形が得られないばかりでなく、滴下する時の滴下口からの液切れも悪くなり滴下液の液量がバラついて、工業的生産では均一な大きさの粒体が得られないという問題点が生じた。このため、天然イクラ特有のとろりとした口溶け感を有する魚卵様食品は得られなかった。
【0006】
そこで、次に、本発明者は、アルギン酸カルシウム皮膜を外皮とする粒体を上述の糖類を含む水溶液に浸漬して、その内腔にこの糖類を染み込ませることを試みた。しかし、この糖類を含む水溶液に浸漬したところ、浸透圧によるためか、粒体が脱水されて外皮にしわができしぼんでしまうという問題点が生じ、天然イクラ特有のとろりとした口溶け感を有する魚卵様食品は得られなかった。水溶液中のアルギン酸カルシウム皮膜は1〜2糖程度の分子量の小さい糖を透過することが知られているが、分子量が相対的に大きい糖類は容易にアルギン酸カルシウム皮膜を透過しないものと思われた。
【0007】
【特許文献1】
特開昭60−83570号公報
【特許文献2】
特開昭61−21070号公報
【特許文献3】
特開平9−149775号公報
【特許文献4】
特開平7−99941号公報
【特許文献5】
特開平9−201179号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、天然イクラ特有のとろりとした口溶け感を有し、さらに、冷凍保管して解凍した後も離水(ドリップ)が極めて少なく、凍結前と同様な外観及びとろりとした口溶け感を有する魚卵様食品及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するため、どのようにして上述の糖類、すなわち、4糖以上の糖類が糖組成の60%以上を占めるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を魚卵様食品の内腔に含有させるか更に鋭意研究したところ、意外にも、水溶性ナトリウム塩と上述の糖類を含む水溶液にアルギン酸カルシウム皮膜を有する粒体を浸漬すると内腔液にこの糖類が浸透することを見出した。これは、水溶液中に水溶性ナトリウム塩が加わると、皮膜の骨格を形成するアルギン酸カルシウムの架橋構造の一部が切り離されて皮膜の網の目が相対的に大きくなり、4糖以上の糖類が糖組成の60%以上を占めるような上述の糖類であっても皮膜を透過しやすくなるためであると推察される。
さらに好ましいことに、この上述の糖類を内腔に含有させた魚卵様食品は、とろりとした口溶け感を有するばかりでなく、冷凍保管後に解凍しても、生じる離水(ドリップ)が極めて少なく、凍結前と同様の外観及びとろりとした口溶け感を有することを見出し、遂に本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)アルギン酸カルシウム皮膜を外皮とする魚卵様食品において、その内腔に4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含有した魚卵様食品、
(2)魚卵様食品がイクラ様食品である(1)記載の魚卵様食品、
(3)(1)または(2)記載の魚卵様食品が冷凍されてなる魚卵様食品、
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の魚卵様食品を用いた調理食品、
(5)(1)乃至(3)のいずれかに記載の魚卵様食品を用いた冷凍調理食品、(6)水溶性カルシウム塩水溶液とアルギン酸アルカリ金属水溶液との化学ゲル化反応によりアルギン酸カルシウム皮膜を製する魚卵様食品の製造方法において、アルギン酸カルシウム皮膜を有する粒体を製した後、この粒体を水溶性ナトリウム塩と4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含む水溶液に浸漬する工程、次いで水溶性カルシウム塩水溶液に浸漬する工程を有する魚卵様食品の製造方法、
(7)塩化カルシウムを含むゾル状体をアルギン酸アルカリ金属水溶液中に滴下してアルギン酸カルシウム皮膜を有する粒体を得る工程と、この粒体を集めて水晒しする工程からなる魚卵様食品の製造方法において、水晒しする工程の後にこの粒体を水溶性ナトリウム塩と4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含む水溶液に浸漬する工程、次いで塩化カルシウム水溶液に浸漬する工程を有する魚卵様食品の製造方法、
(8)魚卵様食品がイクラ様食品である(6)または(7)記載の魚卵様食品の製造方法、
(9)(6)乃至(8)のいずれかに記載の製造方法により得られた魚卵様食品を更に冷凍する魚卵様食品の製造方法、
(10)(6)乃至(9)のいずれかに記載の製造方法により得られた魚卵様食品を用いた調理食品、
(11)(6)乃至(9)のいずれかに記載の製造方法により得られた魚卵様食品を用いた冷凍調理食品、
を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明を説明する。なお、本発明において「%」は全て「質量%」を意味する。
本発明でアルギン酸アルカリ金属とは、多糖類として褐藻類に多く含まれるアルギン酸の塩類をいい、例えばアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等をいう。
また、水溶性カルシウム塩とは、食用に供し得る水に溶解する性質を有するカルシウム塩であればいずれのものでもよく、例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム或いはこれらの化合物の水和物等を用いればよい。
【0012】
本発明で外皮とは、アルギン酸カルシウムで形成される粒体の最外層の皮膜のことであり、アルギン酸アルカリ金属と水溶性カルシウム塩による公知のアルギン酸カルシウム粒体形成反応で形成される粒体の最外殻の皮膜をいう。例えば、塩化カルシウム水溶液をアルギン酸ナトリウム水溶液に滴下して得られる粒体は、塩化カルシウム水溶液を内層とし、アルギン酸カルシウムの皮膜を外層とした柔らかい粒体として形成される。本発明では、この外層の皮膜を外皮といい、塩化カルシウム水溶液の内層に相当する部分を内腔という。
なお、本発明でアルギン酸カルシウム皮膜とは、アルギン酸カルシウムのみからなる皮膜ばかりでなく、アルギン酸カルシウムに加えて他の皮膜構成成分が混在している皮膜も含む。ここで他の皮膜構成成分とは、アルギン酸のカルシウム塩以外の多価金属塩、例えば、マグネシウム塩、アルミニウム塩等や、カルシウム等の二価のアルカリ土類金属でゲル化したペクチン等が挙げられる。
【0013】
本発明で水溶性ナトリウム塩とは、食用に供し得る水に溶解する性質を有するナトリウム塩であればいずれのものでもよく、例えば、塩化ナトリウム、塩化ナトリウムを主成分とする食塩、L−グルタミン酸ナトリウム、5´−イノシン酸ナトリウム、5´−グアニル酸ナトリウム等の調味料や酢酸ナトリウム等のpH調整材等を用いることができる。
【0014】
本発明でオリゴ糖とは、ブドウ糖、果糖等の単糖類の分子が2〜10個直鎖状あるいは分岐状に結合した、少糖類と称される糖類である。このような糖類は、単糖類の結合数により2糖類、3糖類等と称され、例えば、2糖類としては、ショ糖、マルトース、イソマルトース、ニゲロース、コウジビオース等、3糖類としては、マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース等、4糖類としては、マルトテトラオース、イソマルトテトラオース等が挙げられる。
本発明におけるオリゴ糖は、上記のような高純度に精製したものばかりでなく、2〜10糖類の混合物を主成分とした糖類であれば特に限定するものではない。ここで、2〜10糖類の混合物を主成分とした糖類とは、市販のオリゴ糖が2〜7糖類を主成分としていることから、2〜7糖類が糖組成の70%以上をしめる糖類を意味する。
また、澱粉糖化物とは、澱粉を加水分解して得られる中間生成物の混合物である。
【0015】
上述したオリゴ糖及び澱粉糖化物は、いずれも非還元型の糖類であり、本発明においてこれらの還元物とは、水素添加等の還元処理して得られる還元型オリゴ糖及び還元型澱粉糖化物、つまり糖アルコールのことである。
本発明では、上述の糖類の内、4糖以上の糖類が糖組成の60%以上、好ましくは5糖以上の糖類が糖組成の50%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を用いる必要がある。
このような特定の糖類を魚卵様食品の内腔に含有させることにより、天然イクラ特有のとろりとした口溶け感を有し、さらに、冷凍保管後に解凍しても離水(ドリップ)が極めて少なく、凍結前と同様な外観及び食感を有する魚卵様食品を得ることができる。
【0016】
本発明は、上述の糖類を魚卵様食品の内腔に含有させるために、製法に特徴があることから、その製法に基づいてさらに詳しく説明する。なお、本発明品は天然イクラのようなとろりとした口溶け感を有することから、イクラ様食品を中心に説明する。
最初に、アルギン酸カルシウム皮膜を有する粒体を製する。この粒体を得る方法は公知の方法で良いが、代表的な製造方法に基づき説明する。
【0017】
まず、粒体の内腔部の水相原料を用意する。粒体の皮膜の形成にはカルシウム成分が必要なので、原料液には、水溶性カルシウム塩(代表的には塩化カルシウム)又はこれを清水等に溶解した水溶性カルシウム塩水溶液(代表的には塩化カルシウム水溶液)を添加する必要がある。塩化カルシウムの添加量は清水に対して0.5%以上、通常は1%程度である。
このときに、水相原料にグルコースやショ糖等の低分子の糖類を比重調整用として加えておくと、後述の滴下工程で、水滴が液中に沈下しやすいので望ましい。
さらに、この水相原料に粘性を付与しておくと、後述の適下工程で大きさのそろったきれいな球状の粒体を得ることが出来る。粘性を付与するには、ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、澱粉、化工澱粉、湿熱処理澱粉、ゼラチン等の増粘材の一種または二種以上を添加すればよく、添加量は清水を含めた水相原料に対して0.5〜3.0%程度が望ましい。
【0018】
次に、この水相原料をミキサー中で攪拌しながら、油相原料を注加して乳化状の原料液を得る。そして、この原料液をアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等のアルギン酸アルカリ金属の水溶液中に滴下して、アルギン酸カルシウム皮膜を外皮とする粒体を形成する。この粒体の形成方法は公知の方法で行えばよく、例えば原料液を直径6mm程度の水滴としてアルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下し、お互いに付着させないようにしながら粒体を逐次形成させる。
このようにして原料液を水溶液中に滴下すると、原料液の水滴は水溶液中に沈下し、1〜5分間浸漬しておくと、アルギン酸カルシウム皮膜を外皮とした液中から取り出す際にも破れにくい粒体が形成される。
【0019】
得られた粒体は湯晒しして、内腔液の塩化カルシウムと低分子の糖類の濃度を低下させると共に油相と水相を分離して目玉状の外観を形成させる。この湯晒しにより、カルシウム成分による苦みと低分子の糖類による甘みを減らすことができる。
【0020】
このようにして製したアルギン酸カルシウム皮膜を有する粒体を、水溶性ナトリウム塩と4糖以上の糖類が糖組成の60%以上、好ましくは5糖以上の糖類が糖組成の50%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含む水溶液に浸漬する。水溶性ナトリウム塩を含むことにより、上述の糖類であっても粒体の内腔液に浸透させることができる。
浸漬する水溶液のナトリウムの濃度は、3〜10%程度が好ましい。これよりもナトリウムが少ないと、上述の糖類を内腔液に浸透させる効果が充分に得られず、これよりも多いとアルギン酸カルシウムからなる皮膜が弱くなりすぎて、破れやすい傾向があるからである。水溶性ナトリウム塩として、塩化ナトリウムを主成分とする食塩を用いる場合、水溶液中に食塩を15%配合すると、ナトリウムがおよそ6%配合されることになる。
また、浸漬する水溶液の糖濃度は、固形分として30〜60%程度が好ましい。例えば、4糖以上の糖類が糖組成の約70%(5糖以上の糖類が糖組成の約60%)をしめているオリゴ糖[フジオリゴG67、日本食品化工(株)製]を用いる場合は、このオリゴ糖の固形分が72%程度であるので、水溶液中にこのオリゴ糖を70%配合すると、水溶液中の糖濃度はおよそ50%となる。
この水溶液を製する際には、この水溶液を40〜60℃程度に加熱しながら、上述の水溶性ナトリウム塩と糖類を配合すると、これらを容易に溶解させることができるので好ましい。
【0021】
粒体と浸漬する水溶液の割合は、100kgの粒体を20〜50kg程度の水溶液に浸漬する割合が好ましい。この割合であれば、粒体を均一に水溶液中に分散させることができる。
また、浸漬時間は長時間でも構わないが、30分〜1時間程度の浸漬で充分に粒体の内腔に上述の糖類が浸透し、とろりとした食感を付与することができる。なお、この水溶液を40〜60℃程度に加熱しながら粒体を浸漬すると、上述の糖類をより短時間に粒体の内腔に浸透させることができる。
【0022】
最後に、魚卵様食品を水溶性カルシウム塩水溶液に浸漬して、アルギン酸カルシウム皮膜が破れないように強化する。皮膜が強化されるのは、水溶性カルシウム塩のカルシウム成分が、皮膜を通して粒体内に拡散する際、アルギン酸カルシウムの架橋構造からなる粒体の皮膜が濃密な架橋構造に補強、強化されるためと推察される。水溶性カルシウム塩の濃度は目的とする皮膜強度が得られるように適宜調節すれば良い。
【0023】
なお、本発明において、アルギン酸皮膜を有する粒体を水溶性ナトリウム塩と4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含む水溶液に浸漬する工程、次いで水溶性カルシウム塩水溶液に浸漬する工程を有するとは、アルギン酸カルシウム皮膜を有する粒体を水溶性ナトリウム塩と4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含む水溶液に浸漬し、次いでこの粒体が浸漬されている水溶液に水溶性カルシウム塩または水溶性カルシウム塩水溶液の少なくともどちらか一方を添加する工程も含む。
また、本発明において、アルギン酸皮膜を有する粒体を水溶性ナトリウム塩と4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含む水溶液に浸漬する工程、次いで塩化カルシウム水溶液に浸漬する工程を有するとは、上述の方法と同様、アルギン酸カルシウム皮膜を有する粒体を水溶性ナトリウム塩と4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含む水溶液に浸漬し、次いでこの粒体が浸漬されている水溶液に塩化カルシウムまたは塩化カルシウム水溶液の少なくともどちらか一方を添加する工程も含む。
【0024】
調味成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、好みのものを適宜選択して用いればよく、例えば、鮭の卵の塩蔵品であるイクラ様風味に仕上げるには、食塩、砂糖等の調味料、鮭肉から抽出したエキス、カキエキス等のエキス、クチナシ色素等の食用色素等を適量用いれば良い。
また、油相原料とは、大豆油、サラダ油、魚油、ラード等の動植物油脂の一種又は二種以上をいい、好みによりカロチン等の脂溶性色素、トコフェノール等の脂溶性保存料、EPA、DHA等の脂溶性フレーバー等を加えたものを用いることができる。
【0025】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づきさらに説明するが、本発明はこれらの実施例でなんら限定されることはない。
実施例1
イ.水相原料の調整
キサンタンガム0.2kg、ローカストビーンガム0.9kg、グルコース13kg、ゼラチン0.4kg、ショ糖脂肪酸エステル0.02kg及び塩化カルシウム1kgを清水84.48kg中に加え、攪拌しながら80℃に加熱して水相原料を得た。ロ.乳化状の原料液の調整
得られた水相原料89.9kgをミキサー内に投入し、攪拌しながらβカロチン0.1kgを溶解させたサラダ油10kgを注加して乳化状の原料液を得た。
【0026】
ハ.粒体の形成
この乳化状の原料液を内径5mmのノズルを通して直径6mmの水滴とし、毎分100個の速さで1%アルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下して、液中に2分間浸漬し、原料液をアルギン酸カルシウム皮膜を外皮とした粒体として逐次成形した。
ニ.湯晒し
この粒体を75℃の湯中に60分間晒した。晒しはじめて10分間で乳化液は油相と水相にきれいに分離した。
【0027】
ホ.糖液浸漬
4糖以上の糖類が糖組成の約70%(5糖以上の糖類が糖組成の約60%)をしめているオリゴ糖[フジオリゴG67、日本食品化工(株)製]70kgと清水8.9kgを混合して40℃に加熱したものに、食塩15kg、L−グルタミン酸ナトリウム3kg、鮭抽出液3kg及びクチナシ色素0.1kgを加え、撹拌して糖液を得た。この糖液の糖含量は、50%程度であり、ナトリウム含量は、6%程度であった。
この40℃に加熱した糖液に湯晒しした粒体を30分間浸漬した。
ヘ.塩化カルシウム水溶液浸漬
次に糖液から取り出した粒体を0.5%の塩化カルシウム水溶液に浸漬した後、表面を軽く水洗したところ、天然のイクラ特有のとろりとした口溶け感を有する魚卵様食品が得られた。
ト.冷凍品の製造
さらに、この魚卵様食品を小袋詰めにして−20℃に急速凍結し、冷凍流通用の製品とした。冷凍品を解凍したところ、冷凍前と同様、天然のイクラ特有のとろりとした口溶け感を有する冷凍した魚卵様食品が得られた。
【0028】
次に、上記の製法で製した本発明の魚卵様食品及び解凍した魚卵様冷凍食品と天然イクラ(市販品)との食感の違いをパネル数10名で比較したところ、全てのパネラーが本発明品と天然イクラとの違いを識別できず、すべて天然イクラであると判定した。
【0029】
実施例2
イ.原料液の調整と粒体の成形
内径1.0mm及び内径5.0mm及び内径8.5mmの3本のノズルを組合せた3重管状ノズルを使用し、内径1.0mmのノズルよりβカロチンで着色すると共に、サーモンフレーバーを加えたサラダ油を、また内径5.0mmのノズルよりカラギーナン1.0%、ローカストビーンガム0.5%、ゼラチン1.0%を含む水溶液をクチナシ色素で着色したものを、また内径8.5mmのノズルより外皮用ゾルとして、アルギン酸ナトリウム1.5%を含むゾルを、各々大気中に放出して粒体を形成し、これを2%塩化カルシウム水溶液中に滴下してそのまま30秒放置し、粒体の外側より化学ゲル化反応を行った。このゲル化した粒体を取出して水洗し、アルギン酸カルシウム皮膜を有する粒体を得た。
【0030】
ロ.糖液浸漬
オリゴ糖[フジオリゴG67、日本食品化工(株)製]70kgと清水8.9kgを混合して40℃に加熱したものに、食塩15kg、L−グルタミン酸ナトリウム3kg、鮭抽出液3kg及びクチナシ色素0.1kgを加え、撹拌して糖液を得た。この糖液の糖含量は、50%程度であり、ナトリウム含量は、6%程度であった。
この40℃に加熱した糖液に成形した粒体を30分間浸漬した。
ハ.塩化カルシウム水溶液浸漬
次に糖液から取り出した粒体を0.5%の塩化カルシウム水溶液に浸漬した後、表面を軽く水洗したところ、天然のイクラ特有のとろりとした口溶け感を有する魚卵様食品が得られた。
ニ.冷凍品の製造
さらに、この魚卵様食品を小袋詰めにして−20℃に急速凍結し、冷凍流通用の製品とした。冷凍品を解凍したところ、冷凍前と同様、天然のイクラ特有のとろりとした口溶け感を有する冷凍した魚卵様食品が得られた。
【0031】
次に、上記の製法で製した本発明の魚卵様食品及び解凍した魚卵様冷凍食品と天然イクラ(市販品)との食感の違いをパネル数10名で比較したところ、全てのパネラーが本発明品と天然イクラとの違いを識別できず、すべて天然イクラであると判定した。
【0032】
実施例3
実施例1の糖液浸漬工程において、オリゴ糖に換えて4糖以上の糖類が糖組成の約70%(5糖以上の糖類が糖組成の約60%)をしめている糖アルコール[エスイー100、日研化学(株)製]を用いた他は、実施例1と同じ製法と配合で魚卵様食品を得た。
得られた魚卵様食品は、天然のイクラ特有のとろりとした口溶け感を有するものであった。
さらに、この魚卵様食品を小袋詰めにして−20℃に急速凍結し、冷凍流通用の製品とした。冷凍品を解凍したところ、冷凍前と同様、天然のイクラ特有のとろりとした口溶け感を有する冷凍した魚卵様食品が得られた。
【0033】
次に、上記の製法で製した本発明の魚卵様食品及び解凍した魚卵様冷凍食品と天然イクラ(市販品)との食感の違いをパネル数10名で比較したところ、全てのパネラーが本発明品と天然イクラとの違いを識別できず、すべて天然イクラであると判定した。
【0034】
実施例4
実施例1の糖液浸漬工程において、オリゴ糖に換えて4糖以上の糖類が糖組成の約70%(5糖以上の糖類が糖組成の約60%)をしめている澱粉糖化物[パインデックス#3、松谷化学工業(株)製]を用いた他は、実施例1と同じ製法と配合で魚卵様食品を得た。
得られた魚卵様食品は、天然のイクラ特有のとろりとした口溶け感を有するものであった。
さらに、この魚卵様食品を小袋詰めにして−20℃に急速凍結し、冷凍流通用の製品とした。冷凍品を解凍したところ、冷凍前と同様、天然のイクラ特有のとろりとした口溶け感を有する冷凍した魚卵様食品が得られた。
【0035】
次に、上記の製法で製した本発明の魚卵様食品及び解凍した魚卵様冷凍食品と天然イクラ(市販品)との食感の違いをパネル数10名で比較したところ、全てのパネラーが本発明品と天然イクラとの違いを識別できず、すべて天然イクラであると判定した。
【0036】
実施例5
実施例1と同じ製法で得た冷凍していない魚卵様食品50g、あるいは、冷凍した魚卵様食品の解凍品50gを米飯200gにのせてイクラ丼様の調理食品を2種類製した。これらを食したところ、2種類とも天然イクラを用いたイクラ丼と同じように、天然イクラ特有のとろりとした口溶け感を有するたいへん美味しいものであった。
さらに、これら2種類のイクラ丼様の調理食品をふた付きの容器に詰め、−20℃に急速凍結して冷凍流通用の製品2種類を製した。これらの冷凍品をふたをつけたまま容器ごと90℃に加熱した蒸し機で30分間程度加熱して、解凍と加熱を行った。
これを食したところ、2種類とも天然イクラを用いたイクラ丼と同じように、天然イクラ特有のとろりとした口溶け感を有するたいへん美味しいものであった。
【0037】
【比較例】
比較例1
イ.水相原料の調整
キサンタンガム0.2kg、ローカストビーンガム0.9kg、グルコース13kg、ゼラチン0.4kg、ショ糖脂肪酸エステル0.02kg及び塩化カルシウム1kgを清水84.48kg中に加え、攪拌しながら80℃に加熱して水相原料を得た。ロ.原料液の調整
得られた水相原料89.9kgをミキサー内に投入し、攪拌しながらβカロチン0.1kgを溶解させたサラダ油10kgを注加して乳化状の原料液を得た。
【0038】
ハ.粒体の形成
この原料液を内径5mmのノズルを通して直径6mmの水滴とし、毎分100個の速さで1%アルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下して、液中に2分間浸漬し、原料液をアルギン酸カルシウム皮膜を外皮とした粒体として逐次成形した。
ニ.湯晒し
この粒体を75℃の湯中に60分間晒した。晒しはじめて10分間で乳化液は油相と水相にきれいに分離した。
【0039】
ホ.調味液浸漬
食塩15kg、L−グルタミン酸ナトリウム3kg、鮭抽出液3kg、塩化カルシウム0.5kg及びクチナシ色素0.1kgを清水78.4kgに加え、撹拌して40℃に加熱し調味液を得た。この40℃に加熱した調味液に湯晒しした粒体を30分間浸漬した。
得られた魚卵様食品は、外観はイクラに似ているものの、天然イクラに比べて、口溶け感が劣るものであった。
ヘ.冷凍品の製造
さらに、この魚卵様食品を小袋詰めにして−20℃に急速凍結し、冷凍流通用の製品とした。冷凍品を解凍したところ、離水(ドリップ)が生じた。また、天然イクラに比べて、口溶け感が劣る冷凍した魚卵様食品であった。
【0040】
比較例2
イ.水相原料の調整
オリゴ糖[フジオリゴG67、日本食品化工(株)製]40kg、キサンタンガム0.2kg、ローカストビーンガム0.9kg、ゼラチン0.4kg、ショ糖脂肪酸エステル0.02kg及び塩化カルシウム1kgを清水57.48kg中に加え、攪拌しながら80℃に加熱して水相原料を得た。
ロ.原料液の調整
得られた水相原料89.9kgをミキサー内に投入し、攪拌しながらβカロチン0.1kgを溶解させたサラダ油10kgを注加して乳化状の原料液を得た。
【0041】
ハ.粒体の形成
この原料液を内径5mmのノズルを通して1%アルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下したところ、適下した時にきれいな球形が得られないばかりでなく、ノズルからの液切れも悪くなり、適下液の大きさがバラつき、均一な大きさの粒体が得られなかった。
【0042】
比較例3
イ.水相原料の調整
キサンタンガム0.2kg、ローカストビーンガム0.9kg、グルコース13kg、ゼラチン0.4kg、ショ糖脂肪酸エステル0.02kg及び塩化カルシウム1kgを清水84.48kg中に加え、攪拌しながら80℃に加熱して水相原料を得た。
ロ.原料液の調整
得られた水相原料89.9kgをミキサー内に投入し、攪拌しながらβカロチン0.1kgを溶解させたサラダ油10kgを注加して乳化状の原料液を得た。
【0043】
ハ.粒体の形成
この原料液を内径5mmのノズルを通して直径6mmの水滴とし、毎分100個の速さで1%アルギン酸ナトリウム水溶液中に滴下して、液中に2分間浸漬し、原料液をアルギン酸カルシウム皮膜を外皮とした粒体として逐次成形した。
ニ.湯晒し
この粒体を75℃の湯中に60分間晒した。晒しはじめて10分間で乳化液は油相と水相にきれいに分離した。
【0044】
ホ.調味液浸漬
食塩15kg、L−グルタミン酸ナトリウム3kg、鮭抽出液3kg、塩化カルシウム0.5kg及びクチナシ色素0.1kgを清水78.4kgに加え、撹拌して40℃に加熱し調味液を得た。この40℃に加熱した調味液に湯晒しした粒体を30分間浸漬して魚卵様食品を得た。
へ.糖液浸漬
オリゴ糖[フジオリゴG67、日本食品化工(株)製]70kgと清水30kgを混合して40℃に加熱した糖液に、調味液から取り出した魚卵様食品を浸漬したところ、魚卵様食品の外皮に多数のしわが生じてしぼんでしまい、天然のイクラとはまったく異なる外観となった。
【0045】
【発明の効果】
本発明の魚卵様食品はその内腔に4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含有しているので、外観や風味ばかりでなく、とろりとした口溶け感までもが天然イクラに酷似している。さらに、冷凍保管後に解凍しても、生じる離水(ドリップ)が極めて少なく、冷凍保管が可能であるため、近年需要が拡大している冷凍食品用の素材としても使用することができる。
また、本発明の魚卵様食品の製造方法によって、はじめて、上述の糖をその内腔に含有した魚卵様食品の大量生産が可能になり、安価に天然イクラそっくりの食品を製造し供給できる。

Claims (11)

  1. アルギン酸カルシウム皮膜を外皮とする魚卵様食品において、その内腔に4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含有することを特徴とする魚卵様食品。
  2. 魚卵様食品がイクラ様食品である請求項1記載の魚卵様食品。
  3. 請求項1または2記載の魚卵様食品が冷凍されてなる魚卵様食品。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の魚卵様食品を用いた調理食品。
  5. 請求項1乃至3のいずれかに記載の魚卵様食品を用いた冷凍調理食品。
  6. 水溶性カルシウム塩水溶液とアルギン酸アルカリ金属水溶液との化学ゲル化反応によりアルギン酸カルシウム皮膜を製する魚卵様食品の製造方法において、アルギン酸カルシウム皮膜を有する粒体を製した後、この粒体を水溶性ナトリウム塩と4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含む水溶液に浸漬する工程、次いで水溶性カルシウム塩水溶液に浸漬する工程を有することを特徴とする魚卵様食品の製造方法。
  7. 塩化カルシウムを含むゾル状体をアルギン酸アルカリ金属水溶液中に滴下してアルギン酸カルシウム皮膜を有する粒体を得る工程と、この粒体を集めて水晒しする工程からなる魚卵様食品の製造方法において、水晒しする工程の後にこの粒体を水溶性ナトリウム塩と4糖以上の糖類が糖組成の60%以上をしめるオリゴ糖、澱粉糖化物、またはこれらの還元物の少なくとも一種以上を含む水溶液に浸漬する工程、次いで塩化カルシウム水溶液に浸漬する工程を有することを特徴とする魚卵様食品の製造方法。
  8. 魚卵様食品がイクラ様食品である請求項6または7記載の魚卵様食品の製造方法。
  9. 請求項6乃至8のいずれかに記載の製造方法により得られた魚卵様食品を更に冷凍する魚卵様食品の製造方法。
  10. 請求項6乃至9のいずれかに記載の製造方法により得られた魚卵様食品を用いた調理食品。
  11. 請求項6乃至9のいずれかに記載の製造方法により得られた魚卵様食品を用いた冷凍調理食品。
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