JP4103101B2 - 除細動用電極および除細動システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、心臓外科手術中の電気的除細動に使用される電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来は、心臓外科手術中、心室細動に陥った患者に電気的除細動を施す際には、2本の内用パドル電極を用いている。これは、図10に示すように開胸器1により開かれた状態の開胸部から2本の内用パドル電極2を体内に挿入し、それらの電極部2cを心臓15の両側に当て、この状態で除細動器3により電極部2c間に電流を流し、心臓15に電気的刺激治療を施すものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように心臓外科手術中に除細動を行う場合、過去に心臓手術を受けた患者の再手術では心臓に癒着があったり、最近行われるようになった低侵襲心臓手術(MICS)等では大きく開胸しないため、2本の内用パドル電極の電極部を両方共、心臓付近まで挿入できない場合がある。このような場合はやむをえず滅菌されていない体外用パドル電極を用いて除細動を行っている。このため、胸部の滅菌状態を維持できないので、感染のおそれや再滅菌の必要性が生じるという欠点があった。
【0004】
また、たとえ2本の内用パドル電極の電極部を心臓付近まで挿入できたとしても、開胸部が狭いためその操作は困難なことが多く、更に操作の途中で電極部同士が接触し、通電時、心臓に電流が流れず、除細動できないということが起こる。
【0005】
本発明はこのような欠点に鑑みてなされたものであり、その目的は、除細動を安全に、かつ簡単な操作で行うことができ、さらに心臓手術中、感染が生じないようにすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、1対の電極を有し、そのうちの一方の電極は心臓表面に直接当てるための内用パドル電極であり、他方の電極は体表面に貼るための貼着型電極である除細動用電極であって、前記内用パドル電極および前記貼着型電極にそれぞれ一端を接続されたリード線と、前記リード線のそれぞれの他端を保持しこれらと除細動器を接続するコネクタとを有し、さらに前記コネクタには、このコネクタに接続された除細動用電極は体内式であることを前記除細動器に知らせるための識別信号を作成する識別信号作成回路が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この除細動用電極を使う場合、予め貼着型電極を患者の背中に貼着しておき、手術中に心室細動が生じた際に内用パドル電極の電極部を患者の心臓に直接当てる。
【0008】
そして、これらの電極を通して除細動器から心臓に電流を流す。
【0009】
除細動器は、接続された電極が体内式であることを認識し、それに応じて出力エネルギーを制限することができる。
【0010】
請求項2の発明は、上記の除細動用電極において前記内用パドル電極の電極支持体は、曲げ方向に作用する外力が、ある大きさ以上のときはそれに応じて曲り、その大きさに満たないときはそのときの形状を維持することを特徴とする。
【0011】
この構成により、操作者は内用パドル電極の電極支持体を所望の形状に折り曲げて使用することができる。
【0012】
請求項3の発明は、除細動システムであって、上記のいずれかの除細動用電極と、この除細動用電極に接続される除細動器とから成る。
【0013】
このシステムにおいて、予め患者の背中に粘着型電極を貼着しておくならば、心臓手術中、除細動の必要性が生じた場合、一方の電極である内用パドル電極の電極部を心臓に当てるだけで、除細動器から供給される電流を心臓に流すことができる。除細動器は、接続された電極が体内式であることを認識し、それに応じて出力エネルギーを制限することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の除細動システムを示したものである。この図に示すように本システムは、体表面に貼るための貼着型の使い捨て電極6と、心臓表面に直接当てるための内用パドル電極2と、除細動器3とを備えている。使い捨て電極6には、リード線7の一端が取付けられ、そのリード線7の他端はコネクタ8aが取り付けられている。コネクタ8aに対し着脱自在となっているコネクタ8bには、リード線9の一端が取付けられている。内用パドル電極2にはリード線10の一端が取付けられている。リード線9の他端とリード線10の他端は共にコネクタ11に取り付けられている。コネクタ11は、除細動器3の電力供給用端子に対し着脱自在となっている。内用パドル電極2、リード線10、リード線9、コネクタ8bおよびコネクタ11は一体化しており、その詳細を図2に示す。
【0015】
図2に示すように、内用パドル電極2は、把持部2aと、この把持部2aの一端に取り付けられた棒状の電極支持体2bと、電極支持体2bの先端に設けられた電極部2cから成る。電極部2cはほぼ円盤状であり、その背面のほぼ中央に電極支持体2bの先端が取り付けられている。電極部2cの生体に当接する面は電極支持体2bの長手方向に対し傾斜した状態にされている。
【0016】
一方、図1に示した使い捨て電極6、リード線7およびコネクタ8aは一体化しており、その詳細を図3に示す。この図に示すように、使い捨て電極6はシート状の基盤部6aと、その一方の面に貼着されたシート状の電極部6bとを備えている。前記一方の面であって電極部6bが貼着されていない箇所には粘着層6cが形成されている。
【0017】
次に本システムの作用を、使用方法と共に説明する。まず予め内用パドル電極2の全体を滅菌しておく。そしてこれから行われる心臓外科手術が、例えば低侵襲心臓手術のように開胸部を狭くして行う手術である場合、その手術前に、使い捨て電極6を患者の背中に貼っておく(図1参照)。そして手術が開始され、図4に示すように患者の心臓15付近の胸部が開胸器1により開かれた状態にあるとき、患者に心室細動が発生すると、操作者は、図1に示すようにコネクタ8aとコネクタ8bを接続し、コネクタ11と除細動器3を接続する。次に操作者は図4に示すように、内用パドル電極2を持ってその電極部2cを患者の心臓15の表面15aに直接当てる。
【0018】
そして操作者は除細動器3を操作して、内用パドル電極2と使い捨て電極6との間に電流を流して心臓を刺激し、除細動治療を行う。このときの通電エネルギーは、例えば10ジュール程度とし、心室細動が直らない場合にはさらにエネルギーを増やし、例えば20ジュールで再度治療を試みるようにする。
【0019】
本システムによれば、一方の電極は使い捨て電極6であって、コネクタ8aとコネクタ8bの部分で容易に外すことができるので、後処理が簡単である。
【0020】
本システムにおける内用パドル電極2の電極部2cは、生体に当接する面が上記のように電極支持体2bの長手方向に対し傾斜している。その角度が図5の(a)〜(e)に示すように種々異なるものを複数本備え、それらを状況に応じて使い分けると便利である。通常は図5(d)に示す30度が好適である。また、電極部2cの直径は25mm〜75mm程度が適しているが、患者が平均的な大人であれば、電極部2cの直径は65mmが好適である。また、電極支持体2bに対する電極部2cの取付け位置は、図5(f)に示すように電極部2cの端部でも良い。
【0021】
また、図6に示すように、内用パドル電極2の電極支持体2bは、曲げ方向に外力が作用したときその外力が、ある大きさ以上になるとそれに応じて曲り、次にその大きさに満たなくなるとそのときの形状を維持する構成としても良い。例えば、電極支持体2bを構成する素材にそのような性質のものを用いたものでも良いし、関節を持つ構造のものでも良い。いずれにせよ、操作者が手でその電極支持体2bを所望の形状に曲げたあとはその形状を維持するものである。そして、その維持の強さは、患者の心臓に電極部2cを押し当てた程度では容易に曲がらない程度のものとする。このような構造の電極支持体2bによれば、図5に示したような電極部2の角度が異なるものを各種とり揃えなくとも、1本の内用パドル電極2で同じ機能を果たせることになり、収納、保管が容易となる。
【0022】
具体的な例を図7(a)に示す。この例では、電極支持体2bは導電性を有する2つの棒状部材21、22と、これらを繋ぐステンレス製のベロ−ズ23と、ベロ−ズ23内で2つの棒状部材21、22を電気的に接続するテフロン外皮のリード線24とから成る。棒状部材21の先端には電極部2cが取り付けられており、棒状部材22の基端は把持部2a(図6参照)に取り付けられている。この電極支持体2bを製造するには、図7(b)に示すように、まず電極部2cが取り付けられた棒状部材21に予めベロ−ズ23を被せておき、次に棒状部材21と、棒状部材22とをリード線24で接続する。次にベロ−ズ23を棒状部材21、22の両方にかかる所定位置までずらし、その両端をかしめ、ベロ−ズ23を棒状部材21、22に固定する。次に、電極面(装着面)を除く電極部2cと電極支持体2b全体をテフロンコーティングする。こうして製造された電極支持体2bによればベローズ23を曲げることにより電極部2cを把持部2aに対し所望の角度に変えることができる。
【0023】
一方、使い捨て電極6は図8に示すように、2つでも良い。ただし、このコネクタ8cの内部では一対のリード線7のリード部が互いに接続されており、コネクタ8aに対してはコネクタ8cも上記のコネクタ8bと同じように接続されるようになっている。
【0024】
また、図9に示すように、除細動器3に接続されるコネクタ11の内部に、電力供給用の端子11a,11bの他、電極の種類を識別する信号を作成する識別信号作成回路16を設けても良い。この例では2つの端子16a,16bとそれらの端子間に接続された抵抗器16cから成っている。したがって、このコネクタ11が除細動器3に接続されると、電力供給のための接続がなされる他、識別信号の検出のための接続がなされる。これによって、除細動器3は、電力供給を行う前に、抵抗器16cに電流を流して電極の種類を識別し、その識別結果に応じて出力エネルギーを設定することができる。本システムの例では、抵抗器16cの抵抗値は内用パドル電極すなわち体内式であることに対応している。このように除細動器に接続されるコネクタに識別信号作成回路があれば、除細動器は、出力するエネルギーを、電極の種類に応じた大きさに設定することができる。これによって、除細動器の操作が簡素化されるとともに操作者および患者に対する安全性を高めることができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、心臓に電気的刺激を与える除細動処置を行う際、電極部同士が接触することがないので、短絡が生じることはなく、患者および操作者に対して極めて安全である。さらに除細動器は、接続された電極が体内式であることを認識し、それに応じて出力エネルギーを制限することができる。
【0026】
また、低侵襲心臓手術のように開胸部が狭い場合であっても、簡単な操作で患者の心臓に直接電流を流すように電極部を配置することができる。このため、迅速かつ効果的な除細動処置を行うことができる。
【0027】
また、手術途中、外用パドル電極を使うことがなくなるので、胸部の清潔領域は保たれ、感染のおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の除細動システムの全体構成を示す図。
【図2】図1に示した内用パドル電極の詳細を示す図。
【図3】図1に示した粘着型の使い捨て電極の詳細を示す図。
【図4】内用パドル電極の使用状態を示す図。
【図5】電極支持体に対する電極部の傾斜が異なる各種の内用パドル電極を説明するための図。
【図6】電極支持体の構成が異なる内用パドル電極を説明するための図。
【図7】図6に示した電極支持体の具体的構成を示す図。
【図8】粘着型の使い捨て電極の他の例を示す図。
【図9】除細動器に接続されるコネクタの内部を説明するための図。
【図10】従来の体内式の除細動処置を説明するための図。
【符号の説明】
2 内用パドル電極
6 使い捨て電極
3 除細動器
11 コネクタ
Claims (3)
- 1対の電極を有し、そのうちの一方の電極は心臓表面に直接当てるための内用パドル電極であり、他方の電極は体表面に貼るための貼着型電極である除細動用電極であって、
前記内用パドル電極および前記貼着型電極にそれぞれ一端を接続されたリード線と、前記リード線のそれぞれの他端を保持しこれらと除細動器を接続するコネクタとを有し、さらに前記コネクタには、このコネクタに接続された除細動用電極は体内式であることを前記除細動器に知らせるための識別信号を作成する識別信号作成回路が設けられていることを特徴とする除細動用電極。 - 前記内用パドル電極の電極支持体は、曲げ方向に外力が作用したときその外力が、ある大きさ以上になるとそれに応じて曲り、次にその大きさに満たなくなるとそのときの形状を維持することを特徴とする請求項1に記載の除細動用電極。
- 請求項1または請求項2に記載の除細動用電極と、この除細動用電極が接続される除細動器とから成る除細動システム。
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