JP4100914B2 - 揺動軸受 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、斜板式の油圧ポンプや油圧モータに組み込まれたスワッシュプレート等の可動部材を揺動自在に支持する揺動軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
斜板式の油圧ポンプや油圧モータ等の装置は、装置内に組み込まれたスワッシュプレートの角度を調整することにより、ポンプの吐出量を調整したり、モータの運転速度を変更したりすることができる。このスワッシュプレートの角度調整にはすべり方式と転がり方式とがあり、転がり方式では凸円弧状面を有するスワッシュプレートを揺動自在に支持する揺動軸受が組み込まれている。
【0003】
この揺動軸受としては、ハウジング等の固定部材に固定され、凹円弧状の転走面を有する軌道輪と、この凹円弧状転走面に沿って配列されたころと、凹円弧状転走面に沿って円弧状に延び、各ころを転動自在に保持する保持器とから成り、スワッシュプレート等の凸円弧状面を有する可動部材を各ころに当接させて揺動自在に支持するタイプのものが、従来から一般的に用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の揺動軸受は、軌道輪と保持器が別体の部品として製造されているので、油圧ポンプや油圧モータ等の装置の組立ての際に別々に組み込む必要があり、この組込作業が面倒で手間がかかる。また、保持器の位置を確認しながら組み込むことが難しいため、保持器の組込位置に誤差が生じやすく、装置の運転中に軸受やスワッシュプレート等の可動部材の組立不良によるトラブルをおこすこともある。
【0005】
そこで、この発明の課題は、揺動軸受を斜板式油圧ポンプ等の装置に組み込む際の作業性を改善するとともに、装置の組立精度を向上させることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明は、固定部材に固定され、凹円弧状の転走面を有する軌道輪と、この凹円弧状転走面に沿って配列されたころと、凹円弧状転走面に沿って円弧状に延び、前記各ころを転動自在に保持する保持器とから成り、凸円弧状面を有する可動部材を前記各ころに当接させて揺動自在に支持する揺動軸受において、前記保持器を前記軌道輪に揺動可能に係合させる手段と、前記保持器の軌道輪の周方向端からの抜け止め手段とを設けて、前記軌道輪と保持器とを一体化した構成を採用した。
【0007】
すなわち、保持器を軌道輪に揺動可能に係合させて、軌道輪と保持器とを一体化することにより、組込作業を簡単にするとともに、保持器の組込位置の誤差を少なくした。
【0008】
前記保持器を前記軌道輪に揺動可能に係合させる手段は、前記軌道輪の少なくとも一側端に前記ころの端面に沿って張り出す鍔部を設け、前記保持器に前記鍔部と係合する係合部を設けて、前記保持器がその係合部で係合部と対向する位置に配されたころとともに前記鍔部を把持しながら、鍔部に案内されて揺動するようにしたものとすることができる。
【0009】
また、前記保持器の軌道輪の周方向端からの抜け止め手段としては、前記軌道輪と保持器のうちの一方の部材を他方の部材よりも周方向に長く形成し、一方の部材の周方向両端部に他方の部材の周方向端面と間隔をおいて対向するストッパを設けたもの、あるいは前記軌道輪に所定の周方向長さを有する溝を設け、この溝が設けられた位置に前記保持器を係合させて、前記保持器が前記溝の周方向端面で周方向移動量を規制されるようにしたものを採用することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図4に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1乃至図3は第1の実施形態を示す。この揺動軸受は、図1(a)、(b)に示すように、凹円弧状の転走面1aを有する軌道輪1と、転走面1aに沿って配列されたころ2と、転走面1aに沿って円弧状に延び、各ころ2を転動自在に保持する保持器3とから成り、軌道輪1を固定部材(図示省略)に固定し、凸円弧状面を有する可動部材(図示省略)を、各ころ2に当接させて揺動自在に支持するようにしたものである。なお、軌道輪1は、鋼材からの削り出しにより成形されているが、鋼板をプレス加工して成形するようにしてもよい。
【0011】
前記軌道輪1の一側端には、各ころ2の端面に沿って張り出す鍔部4が周方向全長にわたって設けられている。一方、前記保持器3には、その周方向一端から約30°回転した位置に、軌道輪1の鍔部4と係合する係合部5が設けられている。この係合部5は、断面が鉤状で、その先端部が鍔部4の外側面の湾曲部に沿うように形成されている。これによって、保持器3は、その係合部5で係合部5と対向する位置に配されたころ2とともに鍔部4を把持しながら、鍔部4に案内されて揺動するようになっている。
【0012】
また、軌道輪1は、保持器3よりも周方向に長く形成されて、その周方向両端部に保持器3の周方向端面と間隔をおいて対向するストッパ6が設けられており、このストッパ6で保持器3の軌道輪1周方向端からの抜け落ちを防止するようになっている。
【0013】
すなわち、この揺動軸受では、保持器3を軌道輪1に揺動可能に係合し、保持器3が軌道輪1周方向端から抜け落ちないようにして、軌道輪1と保持器3とを一体化している。従って、斜板式油圧ポンプ等の装置への組込作業を簡単に行うことができ、保持器の組込位置の誤差も少ない。
【0014】
図2は、保持器と軌道輪との係合方法の変形例を示す。図2(a)に示す変形例では、軌道輪7の鍔部8の先端に、周方向に沿って延びる外向きの凸部8aが形成されており、この凸部8aに保持器9の係合部10の鉤先10aが引っ掛かって、保持器9が軌道輪7と係合するようになっている。
【0015】
また、図2(b)に示す変形例では、軌道輪11の両側端に鍔部12が、保持器13の両側端に鍔部12と係合する係合部14がそれぞれ設けられて、保持器13が両側で軌道輪11と係合するようになっている。鍔部12および係合部14の形状は、図1に示した例と同じである。なお、鍔部12を軌道輪11の両側端に設け、係合部14は保持器13の一側端のみに設けるようにしてもよい。
【0016】
図3は、保持器の軌道輪周方向端からの抜け止め方法の変形例を示す。この変形例では、保持器15の方が軌道輪16よりも長く形成されており、その周方向両端部に軌道輪16の周方向端面と間隔をおいて対向するストッパ17が設けられている。
【0017】
図4(a)、(b)は、第2の実施形態を示す。この揺動軸受は、軌道輪18の鍔部19を保持器20の揺動量よりも僅かに長い範囲で外側面から所定の深さだけ削り込んで、鍔部19を半径方向に貫通する溝19aを設け、この溝19aを設けた位置に保持器20の係合部21を係合させたもので、軌道輪18の周方向両端部には図1(a)で示したようなストッパは設けられていない。その他の部分の構成は、溝19aの位置での保持器20と軌道輪18との係合方法を含めて、第1の実施形態の図1の例と同じである。
【0018】
すなわち、この実施形態では、保持器20が設計揺動量を越えて周方向に移動したときには、その係合部21が鍔部19の溝19aの周方向端面で係止されるので、軌道輪18の周方向両端部にストッパを設けることなく、保持器20の軌道輪18周方向端からの抜け落ちを防止することができる。
【0019】
上述した各実施形態では、保持器の周方向一端から約30°回転した位置に設けた係合部を軌道輪の鍔部に係合させたが、軌道輪と保持器とを係合させる位置については、種々の選択が可能であり、周方向の複数の位置で係合させるようにしてもよい。
【0020】
また、軌道輪の鍔部は、必ずしも周方向全長にわたって設ける必要はなく、少なくとも係合部の周方向移動可能範囲に設けられておればよい。
【0021】
さらに、軌道輪と保持器との係合手段は、上述したように保持器の係合部を軌道輪の鍔部に係合させる方法に限らず、保持器を軌道輪に揺動可能に係合させることができれば、どのような手段を採用してもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、この発明の揺動軸受は、保持器を軌道輪に揺動可能に係合するとともに軌道輪周方向端から抜け落ちないようにして、軌道輪と保持器とを一体化したものであるから、斜板式油圧ポンプ等の装置へ簡単に組み込むことができ、組込作業時間の短縮により装置の製造コストを削減することができる。
【0023】
また、保持器の組込位置の誤差が少ないので、軸受やスワッシュプレート等の可動部材の組立不良が少なくなり、装置運転中のトラブルを減少させることができる。
【0024】
さらに、軸受を単体で製品として出荷する場合にも、軌道輪と保持器とを針金等で一体に結束する必要がなく、出荷時の梱包作業時間の短縮と結束部材の削減により軸受のコストを削減できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】aは第1の実施形態の揺動軸受の一部切欠き正面図、bはaのI−I線に沿った断面図
【図2】a、bは、それぞれ図1(b)に対応して図1の揺動軸受の変形例を示す断面図
【図3】図1の揺動軸受の別の変形例を示す正面図
【図4】aは第2の実施形態の揺動軸受の正面図、bはaのIV−IV線に沿った断面図
【符号の説明】
1 軌道輪
1a 転走面
2 ころ
3 保持器
4 鍔部
5 係合部
6 ストッパ
7 軌道輪
8 鍔部
8a 凸部
9 保持器
10 係合部
10a 鉤先
11 軌道輪
12 鍔部
13 保持器
14 係合部
15 保持器
16 軌道輪
17 ストッパ
18 軌道輪
19 鍔部
19a 溝
20 保持器
21 係合部

Claims (1)

  1. 固定部材に固定され、凹円弧状の転走面を有する軌道輪と、この凹円弧状転走面に沿って配列されたころと、凹円弧状転走面に沿って円弧状に延び、前記各ころを転動自在に保持する保持器とから成り、凸円弧状面を有する可動部材を前記各ころに当接させて揺動自在に支持する揺動軸受において、前記軌道輪の少なくとも一側端に前記ころの端面に沿って張り出す鍔部を設け、前記保持器に前記鍔部と係合する係合部を設けて、前記保持器がその係合部で係合部と対向する位置に配されたころとともに前記鍔部を把持しながら、鍔部に案内されて揺動するようにし、前記保持器の軌道輪の周方向端からの抜け止め手段を設けて、前記軌道輪と保持器とを一体化したことを特徴とする揺動軸受。
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