JP4099614B2 - 褐変化が防止されるアミノ酸の製造方法 - Google Patents

褐変化が防止されるアミノ酸の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアミノ酸の褐変化防止法に関する。さらに詳細には、固体状態にある蛋白を含有する植物蛋白原料を酵素により加水分解してアミノ酸を取得する工程において、加水分解法を特定して実施することにより、取得されるアミノ酸が褐変化することのない、あるいは取得されるアミノ酸が褐変状態に至る時間を顕著に延長可能な褐変化防止法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
固体状態にある植物蛋白を含有する蛋白原料を酵素により加水分解してアミノ酸を取得する方法については、既に多数の方法が知られている。
【0003】
例えば特開昭51−35461号公報には、可溶性窒素指数が50以下の変性脱脂大豆にpH9〜12の範囲でアルカリプロテア−ゼを2時間作用せしめ、蛋白質由来の窒素成分の70%以上を可溶化抽出して固液分離を行う第1工程と、抽出された溶液にペプチダーゼを密閉容器内で40〜60℃にて作用せしめて加水分解する第2工程との結合を特徴とする調味液の製造法が記載されている。
【0004】
また特開平6−125734号公報には、微生物を固体培養した麹の有機溶媒浸漬物から得られ、上記麹の自己消化によるエキソ型ペプチダーゼ酵素を含有する酵素剤、及び動植物性蛋白質原料に、蛋白可溶化酵素を作用させ、次いで上記エキソ型ペプチダーゼ酵素含有酵素剤を作用させる蛋白調味液の製法が記載されている。
【0005】
また特開平9−75032号公報には、醤油麹をアルコール存在下に仕込み、35〜45℃で酵素分解する際に、分解終了時のアルコールの濃度を2%以下になるよう強制的に蒸散させ、この分解液を発酵熟成させる調味料の製造法が記載されている。
【0006】
さらに特開平9−121807号公報には、麹菌の培養と該麹菌の培養物に含まれる酵素による培地中の蛋白質の加水分解を食塩非存在下又は低食塩存在下で同時に、且つ一段階に実施した後、必要により固液分離することで、醤油香、醸造香がなく、酸分解型調味料特有の香気を有する高グルタミン酸含有汎用調味料が記載されている。
【0007】
しかしながら、これら従来の方法により製造されたアミノ酸を保存した場合、比較的短期間の内に着色が発生し、次いで速やかに褐変化してしまう結果、その商品価値は著しく減少してしまうと云う問題点が残されていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明にあっては、従来、解決が困難視されてきた、固体状態にある植物蛋白を含有する蛋白原料を酵素により加水分解して取得されるアミノ酸の褐変化を防止し、長期間に亙ってその商品価値を安定に維持する方法を確立することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、種々の植物蛋白を含有する蛋白原料の酵素による加水分解方法、およびその条件と取得されるアミノ酸の褐変化との関係について多数の実験を重ね、鋭意研究の結果、以下の(1)〜(3)に記載する新たな知見を得た。
【0010】
(1)アミノ酸の褐変化の発生および進行は、加水分解反応直後の反応生成物中に含有される還元糖の濃度と密接な関係を有する。すなわち、還元糖の濃度が高い場合には、褐変化は反応直後から発生し、通常の保存環境の下でも褐変化は急速に進行する。
【0011】
(2)一旦、褐変化が発生すると、褐変化の進行を阻止するための実効的な方法を見出すことは極めて困難である。
【0012】
(3)加水分解方法およびその条件を特定することにより、加水分解反応直後の反応生成物中に含有される還元糖の濃度を所定の濃度以下に抑止可能であり、しかも、この特定される加水分解方法およびその条件の下では、蛋白自体の加水分解反応速度および取得するアミノ酸中の各アミノ酸の混合構成比には、実質的な変化は認められない。
【0013】
本発明者等は、上記の課題を解決するために、これらの新知見に基づき特許請求の範囲の各項に記載する発明を完成した。
【0014】
即ち、請求項1に記載の発明による褐変化防止されるアミノ酸の製造方法は、糖質を含有する植物性蛋白原料を、糸状菌培養物を使用して液体反応系内で酵素加水分解反応に付してアミノ酸を取得するに際し、植物性蛋白原料と糸状菌培養物を混合後、当初通気および攪拌を行いながら15℃以上39℃以下の温度範囲内で5〜10時間反応を行い、次いで通気を停止して40℃以上60℃以下の温度範囲内で反応を終了することを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に記載の発明による褐変化防止されるアミノ酸の製造方法は、前記植物性蛋白原料が、小麦グルテン、コーングルテン、脱脂大豆およびこれらの処理物からなる群から選択された原料であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項に記載の発明による褐変化防止されるアミノ酸の製造方法は、前記反応終了時に取得する反応生成物中における還元糖の存在比を反応生成物中に含有する全固形分に対し5重量%以下に調整することを特徴とする。
【0018】
また、請求項に記載の発明による褐変化防止されるアミノ酸の製造方法は、前記糸状菌培養物の調製および植物性蛋白原料の加水分解反応を深部培養槽型反応装置内で行うことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明において使用する原料は、糖質を含有する植物性の蛋白原料である。すなわち、少なくとも部分的に固体状態にある可食性の植物性の蛋白を高含量に含有し、且つ、澱粉、澱粉以外の多糖、各種の糖、例えばグルコース、フラクトース、シュクロース、ガラクトースなどの糖質を共存している植物性の蛋白原料である。
【0020】
これら使用する植物性蛋白原料の形態には特に限定なく、粉末、顆粒、小片、水性溶媒中に分散状態にある分散液あるいはペースト状物など各種の形態の原料が使用される。また、植物性の蛋白原料である限り、その起源、由来には限定されない。
【0021】
植物性蛋白原料として具体的には以下の原料が例示される。すなわち、小麦グルテン、コーングルテン、脱脂大豆、分離大豆蛋白、馬鈴薯分離蛋白、およびこれらの植物性蛋白原料の処理物である。これら各種の植物性蛋白原料の内、小麦グルテンおよび脱脂大豆は、本発明において特に重要な蛋白原料である。
【0022】
酵素により植物性蛋白原料を加水分解する処理は、殺菌処理を行った蛋白原料あるいは静菌状態に保持した蛋白原料を水性溶媒中に分散し、該水性溶媒中、蛋白加水分解活性の高い糸状菌培養物とを接触させて、蛋白原料を加水分解する反応を行う工程である。
【0023】
加水分解反応の初期の段階で通気攪拌を行い、一定時間経過後、反応系内の状態が所定の状態に在ることを確認した後、反応温度を明瞭な変化を以て高温度域にシフトして接触を継続する態様を採用することが重要である。この点は従来行われてきた蛋白原料を酵素で加水分解する方法と顕著に相違する点であり、本発明の方法の主要な特徴となっている。
【0024】
この態様を具体的に実施するため、加水分解反応装置あるいは反応槽には、少なくとも温度調節設備、通気設備および攪拌設備を設置する必要がある。反応に際して、通気量は、通常、1/1vvm以下で充分である。攪拌設備は当該反応装置の規模に応じ、原料分散液あるいは反応系の粘性などの負荷に充分に耐えられるものであれば、特に制限なく各種の攪拌機器を使用できる。例えば、アミノ酸生産発酵に使用されている深部培養装置は、特に好適な反応装置である。
【0025】
使用する蛋白原料は、原料の殺菌時および加水分解反応の直前に、攪拌操作に支障を来さない程度に粉砕あるいは微粉砕される。殺菌処理は発酵工業において行われている通常の方法、装置により行われる。加水分解反応を雑菌の汚染なく実施するためには、酵素源である糸状菌の培養を非汚染条件下に行い、また反応工程における雑菌対策、工程管理を完璧に行うことは当然のことである。
【0026】
加水分解反応に使用する糸状菌培養物としては、生産する蛋白加水分解酵素活性が予測出来る蛋白加水分解酵素生産能の高い糸状菌の分離株を増殖させて新たに調製した培養物が適当である。
【0027】
蛋白加水分解酵素生産能の高い糸状菌としては、その分類学上の位置を問うことなく各種の糸状菌を利用出来るが、目的とする製品が食品用途であることを考慮して、従来より食品分野あるいは醸造分野で利用されてきた糸状菌、特に麹菌を選択するとよい。蛋白加水分解反応を実施する際、麹菌は分解反応の工程管理上あるいは反応生成物の精製、後処理の面でも好都合である。
【0028】
この麹菌は、市販の米麹、醤油醸造用麹から新たに分離して菌株特性を固定した菌株を使用してもよい。また、これらの微生物の寄託保存株を使用してもよいことは述べるまでもない。
【0029】
加水分解反応に使用する蛋白加水分解酵素活性の高い糸状菌培養物は、通常、液体麹の形態で殺菌済の蛋白原料分散液に添加、混合される。液体麹を構成する原料は、加水分解すべき蛋白原料と同一であっても相違していてもよいが、加水分解を雑菌汚染の無い状態で行う場合は、調製した液体麹の中に雑菌が混在してはならない。このため、液体麹用の蛋白原料の殺菌には、特に注意を払う必要がある。
【0030】
なお、加水分解反応系において、殺菌処理が効果的に行われていない危惧のある場合、あるいは殺菌処理を充分に行い得ない事情のある時は、同系内に雑菌の増殖を抑止する静菌物質を共存させて加水分解反応を行うことも可能である。
【0031】
この際に加水分解反応系に共存させる静菌物質としては、食塩、エタノール、酢酸エチルが挙げられる。また、共存させる態様としては、これらの静菌物質の適量を系内に添加する場合の他に、エタノールについてはエタノールを効果的に生成する能力を有する酵母を系内に共存させる場合もあり得る。
【0032】
何れの静菌物質を共存させる場合にあっても、加水分解反応終了後に反応混合物より、静菌物質を分離、除去する必要がある。この分離、除去処理は、取得したアミノ酸の品質を低下することなく、効果的に実施することには相当の困難を伴い、また、経済的にも有利とは云えない。特に食塩を完全に分離、除去するためには、そのために新たな設備を要することになるので、やむなく食塩を相当程度混在するアミノ酸を取得することになる。このような製品の用途は、自ずと限定されることになる。
【0033】
図1(a)は各反応時間経過後の各温度での加水分解系内におけるグルタミン酸の生成蓄積濃度GH(単位mg/dL)を示す折れ線図である。また、図1(b)は各反応時間経過後の各温度での加水分解系内におけるグルコースの生成蓄積濃度Glc(単位mg/dL)を示す折れ線図である。
【0034】
図1(a)と図1(b)とを比較して見ると明瞭に看取できるように、加水分解反応の途上で反応温度を意図的に変化することにより、蛋白の加水分解反応速度、即ちグルタミン酸の生成蓄積濃度に代表されるアミノ酸の生成速度に実質的に影響を及ぼすことなく、グルコースの生成蓄積濃度に代表される糖の量、特に還元糖の量を選択的に減少させることが可能であることが理解できる。また、最終的に取得される反応生成物中に存在する糖の量および糖の濃度を所定の水準以下に調整することも可能であることが理解できる。
【0035】
図1(a)では、グルタミン酸の生成蓄積濃度は反応温度の上昇および反応時間の経過に従って上昇していることが判る。一方、図1(b)では、36〜39℃以下の反応温度では、反応時間の経過に従って(5〜10時間経過後に)グルコースの生成蓄積濃度は急激に減少している。このことは、36〜39℃以下の反応温度条件下では、一旦生成したグルコースが、反応時間の経過に従って、糸状菌によって速やかに分解、消費されている事情を推定できる。
【0036】
即ち、殺菌済の植物性蛋白原料と糸状菌培養物、液体麹を加水分解反応装置内で混合後、当初通気および攪拌を行いながら15℃以上39℃以下、好ましくは25℃以上38℃以下の温度範囲で反応を行い、次いで40℃以上60℃以下、好ましくは41℃以上50℃以下の温度範囲で反応を終了することにより、蛋白の加水分解反応速度、即ち、アミノ酸の生成速度に実質的に影響を及ぼすことなく、加水分解反応系内に生成し蓄積、混在する糖の量、特に還元糖の量を選択的に減少させ、最終的に取得される反応生成物中に存在する還元糖の存在比を反応生成物中に含有する全固形分に対し5%以下に調整することが可能である。
【0037】
更に、前記の15℃以上39℃以下の温度範囲で行う反応から40℃以上60℃以下の温度範囲で行う反応に移行する時点を、反応開始後反応終了に至る所要全時間中、反応開始後10%以上60%未満の経過時点に設定することにより、蛋白の加水分解反応速度、即ち、アミノ酸の生成速度に実質的に影響を及ぼすことなく、加水分解反応系内に生成し蓄積、混在する糖の量、特に還元糖の量を選択的に減少させ、最終的に取得される反応生成物中に存在する還元糖の存在比を反応生成物中に含有する全固形分に対して5%以下に調整することができる。
【0038】
この様にして、取得される反応生成物中に存在する還元糖の存在比を反応生成物中に含有する全固形分に対して5%以下に調製した加水分解反応生成物(即ち製品)は、褐変化することなく長期間に亙って安定した品質を維持できる。
【0039】
図2には、上記の製品と、加水分解反応途上で反応温度の変化を行わずに全過程を一貫して45℃で行って得た対照品とについて行った加熱虐待試験の結果を折れ線図により図示してある。
【0040】
図2の縦軸は545nm波長光の吸収度の上昇程度を、横軸は105℃に保持した時間を示す。また、図2中の白ぬき矢印は、該矢印の下向きの長さが示す様に製品において大幅に褐変化を抑止できたことを示す。
【0041】
この加熱虐待試験は、各々ブリックス20%濃度に調整した製品の溶液および対照品の溶液を、密閉下にて105℃に6時間保持する条件で実施された。尚、この試験条件は、常温で12カ月保存した状態に相当し、製品は12カ月の保存に対しても、褐変化することなく安定した品質を維持できることを示唆する。
【0042】
上記の加水分解反応に関する2種類の温度範囲条件の設定、温度範囲条件を変更する時点の設定ならびに最終反応生成物中に含有する還元糖の存在比については、多種類の植物性蛋白原料および種菌菌株の異なる複数の液体麹を使用し種々の条件を変化させて行った多数の試行実験で取得した結果から、帰納的に特定されたものである。
【0043】
また、此等の多数の試行実験の結果から、上記の2種類の温度範囲条件については、両者間に可及的明確な相違を設定することが望ましく、即ち、当初は比較的低温で加水分解反応を開始し温度を変更した後は比較的高温で実施することが望ましい。さらに、多くの場合、加水分解反応の全所要時間は24時間程度であることを考慮して、温度範囲条件を変更する時点は、反応を開始後8時間程度経過した時点、すなわち予想される全所要時間に対し約30%程度経過した時点に設定すると好結果を得ることが判明した。さらに最終反応生成物中に含有する還元糖の存在比は全固形分に対し5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。即ち、存在比5%の数値はその上限を示すものである。
【0044】
従って、特定の植物性蛋白原料および特定の液体麹を使用し加水分解反応を行う場合の2種類の温度範囲条件および設定すべき変更時点の具体的な数値については、該特定蛋白原料について予備的な試行実験を行って、上記の条件範囲内での最適な条件、数値を決定しておく必要がある。
【0045】
上記の加水分解反応条件下に取得される加水分解物液は麹菌菌体を分散している淡黄色、半透明の液体である。また、該分散液に活性炭を添加し、脱色、脱臭処理後に固液分離を行って取得される淡黄色、透明の液体は、濃厚なうま味を有するアミノ酸液であり、特定の嫌味あるいは異臭を混在していない。
【0046】
加水分解反応により取得される酵素分解アミノ酸液は、その儘でも調味料素材等として利用されるが、多くの場合、更に脱色、脱臭処理、例えば活性炭処理、あるいは濃縮処理などの精製処理を経過して製品とする。あるいは利用目的に応じて、濃縮ペースト、微フレーク状粉末、噴霧乾燥粉末、顆粒、キューブ状ブロックに加工して製品とする。尚、加水分解反応工程で食塩などの静菌物質を使用していない製品は、容易には褐変化しないと云う特性に加えて、広範囲の利用用途にも適合可能と云う汎用性の特性をも兼ね備えている。
【0047】
以下、本発明の具体的な実施例を説明する。尚、以下の各実施例は本発明の技術範囲を限定するものではない。
【0048】
【実施例】
実施例1=褐変化し難い小麦グルテン加水分解物液の製造=
(小麦グルテンの乳化前処理)
衝撃剪断方式による乳化処理を行う乳化機、ホモミックラインミル[特殊機化工(株)製品]に接続した1000L容のタンクに市水400Lを導入した。該タンク中の水を加熱し、水温が95℃に達した時に同乳化機の運転を開始し、タンク中に活性小麦グルテンの粉末20kgを投入した。運転開始後、30分間で小麦グルテンは完全に乳化状態の分散液となり、同時に小麦グルテン特有の粘弾性は消失した。また、顕微鏡弱拡大視野下での観察では、分散液には小麦グルテンの凝塊(所謂、ダマ)の混入や気泡の取込みは全く見出し得なかった。
【0049】
尚、同乳化分散液中の小麦グルテン粒子粒径は平均150μm、最小10μm〜最大900μm、また小麦グルテン粒子の濃度は50g/Lであった。
【0050】
(液体麹用脱脂大豆の殺菌処理)
未変性脱脂大豆[東洋製油(株)製品]を微粉砕した脱脂大豆粉末3kgを、アミノ酸生産用深部培養発酵槽型反応装置中に導入した水温25℃の市水200L中に攪拌しながら投入し、気泡の取込みがない均一な脱脂大豆粉末分散液を取得した。次いで該分散液を120℃で20分間の過熱水蒸気加熱により、バッチ方式で加熱殺菌した。
【0051】
(液体麹の調製)
この加熱殺菌した脱脂大豆粉末分散液に、予め5L容のファメンター・ジャーに収容した1.5%脱脂大豆粉末を含有する培地に胞子を10個/mL濃度に接種して培養した麹菌アスぺルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae、ATCC 15240)の種菌培養液1(容量)%量を植菌した。植菌後、1/4vvmの通気、520rpmの攪拌下、30℃に24時間培養して、液体麹を取得した。
【0052】
(液体麹の評価)
取得した液体麹のプロテアーゼ活性は304単位/mLであり、麹菌以外の微生物の混入、増殖を認め得なかった。
【0053】
(小麦グルテンの加水分解)
上記の方法により取得した乳化状態にある小麦グルテンの分散液の全量を、アミノ酸生産発酵に使用している1kL容の発酵槽に移行した。次いで該小麦グルテンの分散液を120℃で20分間過熱水蒸気加熱により、バッチ方式で加熱殺菌した。加熱殺菌後、同分散液の液温が50℃まで低下した時に、上記の液体麹の半量を添加し、反応開始時より最初の8時間迄は1/4vvm、200rpmの通気攪拌条件下、液温を35℃に制御し、また8時間以降反応終了時の24時間迄は通気を行うことなく液温を45℃に制御して、加水分解反応を行った。
【0054】
尚、反応期間中、反応系におけるグルタミン酸濃度を指標とするアミノ酸の生成濃度は、反応開始時より順次増加した。一方、反応系内のグルコース濃度を指標とする還元糖の濃度は、反応開始後3時間迄は急速に増加し、以降8時間迄は最大値をほぼ維持して推移したが、8時間以降反応系の液温を上昇して45℃に維持、制御しながら反応を続行する間に、還元糖の濃度は急速に減少し、反応終了時の24時間目には、グルコース濃度は反応生成物中の全固形分重量比1.0%以下に減少した。
【0055】
(比較対照のために実施した小麦グルテンの加水分解)
上記方法に準じて取得した乳化状態にある小麦グルテンの分散液200Lを、アミノ酸発酵に使用している1kL容の発酵槽に移行した。次いで該小麦グルテンの分散液を、120℃で20分間過熱水蒸気加熱を行うバッチ方式により加熱殺菌した。加熱殺菌後、同分散液の液温が50℃まで低下した時に、上記の液体麹の半量を添加し、反応開始時より反応終了時の24時間迄の全反応期間中、攪拌通気下に、途中で反応温度を変化することなく、液温を一定の45℃に制御して、加水分解反応を行った。
【0056】
なお、反応期間中、反応系におけるグルタミン酸濃度を指標とするアミノ酸の生成濃度は反応開始時より順次増加した。一方、反応系内のグルコース濃度を指標とする還元糖の濃度も、反応開始後3時間迄に急速に増加し、8時間以降反応終了時の24時間目迄、ほぼ最大値を維持して推移し、反応終了時の24時間目には、グルコース濃度は6.6%に達した。尚、全反応期間を通じて、グルタミン酸濃度の増加傾向は、反応経過途上で液温を上昇して制御した上記の場合に比較して、常時、やや低い傾向で推移することを認めた。
【0057】
(取得した加水分解物の保存試験)
上記の方法により取得した小麦グルテンの試験加水分解反応生成物(以下、試験品)および比較対照のために実施した小麦グルテンの対照加水分解生成物(以下、対照品)を、各々遠心分離により麹菌体を分離除去後、醸造用顆粒活性炭層内を流下させて精製した加水分解物を取得した。これらの精製加水分解物を、各々500mL容の摺合わせ栓を有する透明な無色のガラス瓶に、上部に空間が生じない様に充填した。
【0058】
特に温度制御を行っていない室内で、散光下に保存した各瓶試料について、充填直後、1週間経過後、2週間経過後、1月経過後、3月経過後、6月経過後および12月経過後における目視観察による褐変化の発生状態および進行状態並びにこれらの各保存期間経過後における摺合わせ栓を解放した直後の香気の変化の状態をまとめて表1に示す。表1中、褐変化の欄における+の数は褐変化の状態が最も進行した状態を5、褐変化が僅かに認められる状態を1とする5段階の評価の表示であり、また香気の欄における+の数は褐変化に伴う刺激臭、所謂「焦げ臭」が著しく生じている状態を5、「焦げ臭」が微かに認められる状態を1とする5段階の評価の表示である。なお、評価は5名のパネリストにより行い、各パネリストの付した評価点を平均し四捨五入した評価点に基いて、+の数で表示してある。
【0059】
【表1】
Figure 0004099614
【0060】
表1に示す通り、試験品では、12月経過後にあっても、褐変化の程度は微弱であり、また「焦げ臭」の発生も殆ど認められず、充分に商品としての価値を維持しているものと判定された。これに対し対照品では、瓶に充填直後、既に褐変化の兆候があり、微弱ながら「焦げ臭」の存在を認め、1月経過後には、褐変化および「焦げ臭」は明瞭であり、3月経過後には、褐変化および「焦げ臭」は共に著しく、最早、商品としての価値を著しく損なっているものと判定された。
【0061】
実施例2=他の植物蛋白原料から褐変化し難い加水分解物の製造=
コーングルテンおよび脱脂大豆から、実施例1の方法に準じて、褐変化し難い加水分解物の製造した。
【0062】
(植物蛋白原料の前処理)
米国ミネソタ州産の粉末状コーングルテンを、実施例1の方法に準じて乳化処理した。また、未変性脱脂大豆[東洋製油(株)製品]を微粉砕後、同様に実施例1の方法に準じて乳化処理した。何れの乳化処理品にも、凝塊(所謂、ダマ)の発生あるいは気泡の取込み、存在は全く認められなかった。
【0063】
(液体麹の調製)
実施例1の方法に準じて、脱脂大豆粉末より液体麹を調製した。
【0064】
(植物蛋白原料の加水分解)
コーングルテンの乳化分散液または脱脂大豆の乳化分散液を、各々30kL容の発酵槽に移行して殺菌し、分散液の液温が50℃まで低下した時に、上記の液体麹を実施例1に準じて各々の発酵槽に添加した。加水分解反応の条件は、実施例1の場合に同じく、反応開始時より最初の8時間迄は通気攪拌下に液温を35℃に制御し、また、8時間以降反応終了時の24時間迄は、通気を行うことなく液温を45℃に制御して加水分解反応を行った。加水分解反応終了時の反応生成物中のグルコース濃度は、反応生成物中全固形分重量比0.9%であった。
【0065】
(比較対照のために実施した植物蛋白原料の加水分解)
上記の方法に準じて取得したコーングルテンの乳化分散液または脱脂大豆の乳化分散液を、各々30kL容の発酵槽に移行して殺菌し、分散液の液温が50℃まで低下した時に、上記の液体麹を各々の発酵槽に添加した。加水分解反応は、攪拌下、反応開始時より反応終了時の24時間迄、途中で反応温度を変化することなく、液温を一定の45℃に制御して実施した。加水分解反応終了時の反応生成物中のグルコース濃度は、全固形分重量比6.4%であった。
【0066】
(取得した加水分解物の保存試験)
実施例1の方法と条件に準じて取得された加水分解物の保存試験を行った。その比較対照結果をまとめて表2および表3に示す。
【0067】
【表2】
Figure 0004099614
【0068】
【表3】
Figure 0004099614
【0069】
表2および表3に示す通り、コーングルテン試験品あるいは脱脂大豆試験品の何れもが、12月経過後にあっても褐変化の程度は微弱であり、また「焦げ臭」の発生も殆ど認められず、充分に商品としての価値を維持しているものと判定された。これに対し、傾向に僅かな相違があるものの、コーングルテン対照品あるいは脱脂大豆対照品の両者とも、瓶に充填直後から既に褐変化の兆候があり、微弱ながら「焦げ臭」の存在を認め、1月経過後には、褐変化および「焦げ臭」は明瞭であり、3月経過後には、褐変化および「焦げ臭」は共に著しく、商品としての価値を著しく損なっているものと判定された。
【0070】
【発明の効果】
以上に説明した通り、本発明の方法により植物蛋白原料を糸状菌培養物を使用し液体反応系内で加水分解を行って取得したアミノ酸は、長期間に亙って褐変化すること無く、安定した商品価値を維持可能であると云う効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】a図は種々の反応温度を採用した場合の加水分解反応系におけるグルタミン酸の生成蓄積濃度と反応時間との関係を示す折れ線図、b図は種々の反応温度を採用した場合の加水分解反応系におけるグルコースの生成蓄積濃度と反応時間との関係を示す折れ線図である。
【図2】加水分解反応温度条件を反応途上で変化させた製品と変化させない対照品について行った加熱虐待試験における吸光度の増加に著差のあることを示す折れ線図である。

Claims (4)

  1. 糖質を含有する植物性蛋白原料を、糸状菌培養物を使用して液体反応系内で酵素加水分解反応に付してアミノ酸を取得するに際し、植物性蛋白原料と糸状菌培養物を混合後、当初通気および攪拌を行いながら15℃以上39℃以下の温度範囲内で5〜10時間反応を行い、次いで通気を停止して40℃以上60℃以下の温度範囲内で反応を終了することを特徴とする褐変化防止されるアミノ酸の製造方法。
  2. 前記植物性蛋白原料が、小麦グルテン、コーングルテン、脱脂大豆およびこれらの処理物からなる群から選択された原料であることを特徴とする請求項1に記載の褐変化防止されるアミノ酸の製造方法。
  3. 前記反応終了時に取得する反応生成物中における還元糖の存在比を反応生成物中に含有する全固形分に対し5重量%以下に調整することを特徴とする請求項1に記載の褐変化防止されるアミノ酸の製造方法。
  4. 前記糸状菌培養物の調製および植物性蛋白原料の加水分解反応を深部培養槽型反応装置内で行うことを特徴とする請求項1に記載の褐変化防止されるアミノ酸の製造方法。
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