JP4097935B2 - ジェットポンプ中間部支持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設けられたジェットポンプのインレットミキサを中間部で支持する調整ねじの支持機能喪失時等に、その調整ねじの代替として支持機能を与えるジェットポンプ中間部支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
軽水炉としての沸騰水型原子炉は、図5の縦断面図に示すように構成される。原子炉圧力容器1内には炉心3が収容され、この炉心3が冷却材2で浸漬されている。炉心3は円筒状の炉心シュラウド10内に図示しない複数の燃料集合体および制御棒等を配設して構成される。
【0003】
原子炉圧力容器1内の炉水(冷却材)2は、下部から炉心2内を上方に向かって流通する。冷却材2は炉心3内を上昇する際に核反応熱を受けて昇温昇圧され、水と蒸気の二相流状態になる。気液二相流となった冷却材2は、炉心3の上方に設置された気水分離器4に流入し、この気水分離器4で水と蒸気とに分離される。気液分離された蒸気は、気水分離器4の上方に設置された蒸気乾燥器5に導入されて、ここで乾燥され、乾き蒸気となる。この乾き蒸気は主蒸気となって原子炉圧力容器1に接続された蒸気気管6を介して、図示しない蒸気タービンに送られて発電に供される。
【0004】
一方、気液分離された水は、炉心3と原子炉圧力容器1との間のトーラス状あるいはスリーブ状のダウンカマ部7に案内され、このダウンカマ部7を下降して炉心3下部に案内される。また、このダウンカマ部7で炉心シュラウド10の外周には、複数のジェットポンプ11が設置されている。
【0005】
他方、炉心3の下部には制御棒案内管8が設置されており、この制御棒案内管8の下方に、制御棒駆動機構9が設置される。制御棒駆動機構9は、前記制御棒案内管8を介して、図示しない制御棒を炉心3内へ挿入および引抜く出し入れ制御を行って炉出力制御を行っている。また、原子炉圧力容器1の外部には、図示しない原子炉再循環ポンプを備えた原子炉再循環系が2系統設置されており、この原子炉再循環系の再循環ポンプ作動により、原子炉圧力容器1内の炉水3は図示しない原子炉再循環系を通って原子炉圧力容器1内に戻され、再循環水入口ノズル13を経てジェットポンプ11に導かれる。このジェットポンプ11では周囲の炉水を巻き込んで炉心3下部に送り込むようになっている。すなわち、原子炉再循環ポンプからジェットポンプ11に供給された駆動水により、ジェットポンプ11は冷却材2を炉心3下部を経て炉心3内に強制循環させるようになっている。
【0006】
ジェットポンプ11は、図6の要部斜視図に示すように、中央にライザ管12を備え、このライザ管12は原子炉圧力容器1に原子炉再循環ポンプから供給される冷却材2を、再循環入口ノズル13を介して導入する。前記ライザ管12の上部には、トランジッションピース14を介して左右1対のエルボ15a,15bが接続されて、これらエルボ15a,15bのそれぞれには混合ノズル16a,16bを介して、インレットスロート17a,17bが接続されている。これらのインレットスロート17a,17bの下部には、ディフューザ18a,18bがそれぞれ接続され、上部の混合ノズル16a,16bから、冷却材2が噴射されると、周囲から炉水を巻き込むようになっている。この噴射された冷却材2および巻き込まれた炉水は、インレットスロート17a,17b内にて混合され、その後ディフューザ18a,18bにて静水頭の回復が行われる。
【0007】
ジェットポンプ11においては、原子炉再循環ポンプから送り込まれる冷却材3の流れにより、流体振動が発生するので、これに対処するためにライザ管12は、下端を再循環入口ノズル13に溶接されており、また上端はライザブレース20を介して、原子炉圧力容器1に固定されている。なお、ジェットポンプ11における上端部のエルボ15a,15bには、ライザ管12を介して供給される駆動水の流入水圧が作用する。この流入水圧はエルボ15a,15bの他端に接続する図示しないノズルから、インレットスロート17a,17bおよびディフューザ18a,18b内に向かって駆動水が噴出されるので、この駆動水の噴出水圧等の反力が上向きに作用する。
【0008】
インレットスロート17a,17bは、上端が混合ノズル16a,16bおよびエルボ15a,15bを介して、トランジッションピース14に機械的に接続されるとともに、下端がディフューザ18a,18bの上端に挿入されている。また、ディフューザ18a,18bの下端は、原子炉圧力容器1に溶接されたシュラウドサポート20に固定されており、さらに、ライザ管12の下端は原子炉圧力容器1に固定された再循環入口ノズル13に接続されている。また、インレットスロート17a,17bは、ライザ管12に固着されたライザブラケット25により支持される。これにより、ライザ管12およびインレットスロート17a,17bが振動することを防止している。この支持方法の詳細を図7に示す。
【0009】
図7はジェットポンプ11のライザブラケット25近傍の断面図である。インレットスロート17a,17bはライザブラケット25a,25bの中に入り込み、横方向をインレットスロート17a,17b1体当り2体の調整ねじ30a,30b,30c,30dで支持され、また1体のウエッジ31a,31bで支持されている。この支持はそれぞれ接触していることで機能している。
【0010】
また、調整ねじ30a,30b,30c,30dとウエッジ31a,31bはインレットスロート17a,17bを120°ピッチで等配になる位置で支持し、全ての方向に対し支持ができるようになっている。
【0011】
このように、ジェットポンプ11においては、冷却材2を加圧して炉心3内に循環させるために、流体振動が他の炉内機器に比較して大きく作用することから、的確な支持が要求されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
万一、ジェットポンプに対して、たとえば流体振動が増加した場合、インレットスロート17a,17bの中間部を支持している調整ねじ30a,30b,30c,30d若しくはウエッジ31a,31bに損傷が発生し、支持機能の喪失が考えられる。支持機能が喪失すると、ジェットポンプ11全体の振動モードが変化し、変位量の増加によりジェットポンプ11の強度的に問題となる部位に過大な荷重が発生し、ジェットポンプ11が破損することが想定される。
【0013】
従って、原子炉の出力を制御するジェットポンプ11が、そのような状態になることは、ジェットポンプ11のみならず他の構造物にも悪影響を与えることも考えられて、好ましいことではない。
【0014】
本発明の目的とするころは、原子炉圧力容器内に設置されたジェットポンプのインレットスロートを中間部において、支持している調整ねじが何らかの要因によりインレットスロートとの間に隙間を生じ、その支持機能を喪失した場合、遠隔で支持装置を取り付け、機器の健全性を確保することができるジェットポンプ中間部支持装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、請求項1に係る発明では、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設けられたジェットポンプのライザとインレットミキサを中間部で支持するジェットポンプ中間部支持装置であって、ライザブラケットに取り付けられるフレームと、このフレームに摺動可能に取り付けられ、前記インレットミキサとの間の距離が調整可能とされた調整クサビと、前記フレームの前記ライザブラケットに対する移動を制限する押付クサビと、この押付クサビを前記フレームに押付けて固定する固定クサビとを具備したことを特徴とするジェットポンプ中間部支持装置を提供する。
【0016】
請求項2に係る発明では、請求項1記載のジェットポンプ中間部支持装置において、調整クサビを、インレットミキサを中間部で支持する調整ねじを跨ぐ位置に2個取り付けたことを特徴とするジェットポンプ中間部支持装置を提供する。
【0017】
請求項3に係る発明では、請求項1または2記載のジェットポンプ中間部支持装置において、押付クサビは、インレットミキサを中間部で支持するライザブラケットの調整ねじを取り付けているブロックを挟み込む位置に2個取り付けたことを特徴とするジェットポンプ中間部支持装置を提供する。
【0018】
請求項4に係る発明では、請求項1から3までのいずれかに記載のジェットポンプ中間部支持装置において、押付クサビの移動を制御する固定クサビは、自重による押付け力を生じ得る重量を有することを特徴とするジェットポンプ中間部支持装置を提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るジェットポンプ中間部支持装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は本実施形態によるジェットポンプ中間部支持装置をジェットポンプに装着した状態を示す要部斜視図である。図2は同装着状態を示す全体平面図であり、図3は同装着状態を示す部分断面図である。図4は図3の側面図である。
【0022】
これらの図に示すように、本実施形態では、ライザブラケット25に取り付けられるフレーム31を備えている。このフレーム31は一体構造物であり、ライザブラケット25の外周側に沿う部分と、その両端部から立上り、ライザブラケット25の内方に垂下する部分と、この垂下部分から互いに対向する方向に一定長延在する部分とにより構成されている。このフレーム31のライザブラケット25内方で対向する部分に、各1対ずつの調整クサビ32(32a,32b)、固定クサビ33(33a,33b)および押付クサビ34(34a,34b)が取り付けられている。
【0023】
調整クサビ32は、下端側が肉薄となる傾きを有する縦型のものであり、傾きの形成された面に、縦方向に沿う台形状の溝(蟻溝)35が設けられている。この溝35が、フレーム31と一体に構成された傾斜部材36の台形状の突起37に嵌合し、斜面に沿って移動可能となっている。
【0024】
押付クサビ34は調整クサビ32に隣接して配置される下端側が厚肉となる傾きを有する小形な縦型のものものであり、傾きの形成された面に台形状の突起40を有するとともに、下面に溝41が設けられている。この溝41がフレーム31に設けた上向きの突起42と嵌合しあい、フレーム31上を水平の移動のみを可能としている。また、押付クサビ34の台形状の突起40は固定クサビ33に設けられた台形状の溝43と嵌合し、固定クサビ33が垂直方向に移動することにより押付クサビ34をライザブラケット25に押し付け、これによりフレーム31を固定するようになっている。固定クサビ33は押付クサビ34と接触する反対側の面44をフレーム31と接触することにより、押付クサビ34の反力を受け持ち、またフレーム31に設けた溝45に入り込むことにより、全体が不安定となることを解消できるようにしてある。
【0025】
次に、上記構成のジェットポンプ中間部支持装置の作用について説明する。本ジェットポンプ中間部支持装置は、ライザブラケット25の羽根27を回避して取り付ける必要があり、またライザブラケット25とインレットスロート17の間に取り付けを行うため、調整クサビ32を上に持ち上げた状態にしてライザブラケット25の上部よりインレットスロート17とブラケット25との隙間に挿入可能なようにする。
【0026】
また、固定クサビ33を上に持ち上げた状態にし、これにより押付クサビ34との間の距離が大きくし、ブラケット25のブロック部に入り込める状態にする。以上の操作は、図に示さない専用取り扱い装置によって行うことができる。
【0027】
その後、調整ねじ30dを跨ぐ位置に、本ジェットポンプ中間部支持装置を挿入し、調整クサビ32を下に落とし込む。
【0028】
それにより、調整クサビ32がインレットスロート17bを押し付けるとともに、フレーム31がその反力で移動し、結果としてライザブラケット25とインレットスロート17との間に押し付け力を発生させる。
【0029】
調整クサビ32が取り付け終了後、固定クサビ33を下に落とし込む。それにより台形溝で嵌合している押付クサビ34が移動し、ブラケット25のブロック部を押付、フレーム31の横方向の固定を実施する。
【0030】
なお、以上の実施形態では、各クサビの位置調整後の浮き上がり防止等は特に実施しない例を示したが、必要により、浮き上がり防止機能を設けても良い。
【0031】
以上のように、本実施形態では、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設けられたジェットポンプ11のライザ管12とインレットスロート17とを中間部で支持するものにあって、ライザ管12のブラケットに取り付けられるフレーム31と、このフレーム31に摺動可能に取り付けられ、インレットスロート17との間の距離が調整可能とされた調整クサビ32と、フレーム31の移動を制限する押付クサビ34と、この押付クサビを固定する固定クサビ33とを具備したことにより、ジェットポンプ11の調整ねじ30dとインレットスロート17の間に隙間等が生じた場合に、ライザブラケット25とインレットスロート17との間の隙間を埋めることにより、ジェットポンプ11のインレットミキサを強固に支持することができる。したがって、インレットミキサの取外し等を行う必要がなく、ジェットポンプ11の振動モードを健全な状態に復旧することができる。
【0032】
なお、調整クサビ32を、調整ねじ30を跨ぐ位置に2個取り付けたことにより、より確実な支持が得られる。また、押付クサビ34は、ライザブラケット25の調整ねじ30を取り付けているブロックを挟み込む位置に2個取り付けることで、さらに支持の確実化が向上できる。
【0033】
また、押付クサビ34の移動を制御する固定クサビ33は、自重による押付け力を生じ得る重量を有することで、離脱が確実に防止され、支持の確実化が一層向上できる。また、各クサビはボルト等を不使用とした組立て構成であるため、作業が遠隔で容易に、能率よく行える。
【0034】
さらにまた、インレットミキサ等の構造物を装着した状態で組立て可能な構成としたことにより、構造物の取外しを不用とし、遠隔操作を一層容易にすることができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、ジェットポンプの調整ねじとインレットミキサとの間に隙間等が生じた場合に、本装置を取り付け、ブラケットとインレットミキサとの間の隙間を埋めることにより、ジェットポンプのインレットミキサを強固に支持することができる。したがって、インレットミキサの取外し等を行う必要がなく、ジェットポンプの振動モードを健全な状態に復旧できることにより、原子力発電プラントの稼働率向上に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るジェットポンプ中間部支持装置の一実施形態を示す要部斜視図。
【図2】本発明に係るジェットポンプ中間部支持装置の全体平面図。
【図3】前記実施形態における装置装着状態を示す部分断面図。
【図4】図3の側面図。
【図5】沸騰水型原子炉を示す縦断面図。
【図6】ジェットポンプを示す要部斜視図。
【図7】ジェットポンプの中間部支持構造を示す拡大図。
【符号の説明】
1 原子炉圧力容器
2 冷却材
3 炉心
4 気水分離器
5 蒸気乾燥器
6 主蒸気管
8 制御棒案内管
9 制御棒駆動機構
10 炉心シュラウド
11 ジェットポンプ
12 ライザ管
13 再循環入口ノズル
14 トランジションピース
15a,15b エルボ
16a,16b 混合ノズル
17a,17b インレットスロート
18a,18b ディフューザ
20 ライザブレース
25 ライザブラケット
27 羽根
30 調整ねじ
31 フレーム
32 調整クサビ
33 固定クサビ
34 押付クサビ
35 溝
36 傾斜部材
Claims (4)
- 沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設けられたジェットポンプのライザとインレットミキサを中間部で支持するジェットポンプ中間部支持装置であって、ライザブラケットに取り付けられるフレームと、このフレームに摺動可能に取り付けられ、前記インレットミキサとの間の距離が調整可能とされた調整クサビと、前記フレームの前記ライザブラケットに対する移動を制限する押付クサビと、この押付クサビを前記フレームに押付けて固定する固定クサビとを具備したことを特徴とするジェットポンプ中間部支持装置。
- 請求項1記載のジェットポンプ中間部支持装置において、調整クサビを、インレットミキサを中間部で支持する調整ねじを跨ぐ位置に2個取り付けたことを特徴とするジェットポンプ中間部支持装置。
- 請求項1または2記載のジェットポンプ中間部支持装置において、押付クサビは、インレットミキサを中間部で支持するライザブラケットの調整ねじを取り付けているブロックを挟み込む位置に2個取り付けたことを特徴とするジェットポンプ中間部支持装置。
- 請求項1から3までのいずれかに記載のジェットポンプ中間部支持装置において、押付クサビの移動を制御する固定クサビは、自重による押付け力を生じ得る重量を有することを特徴とするジェットポンプ中間部支持装置。
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