JP4096363B2 - 鼻又は眼の充血治療剤 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、鼻又は眼の微小血管収縮作用を有し、血圧への影響が小さい3’−(2−アミノ−1−ヒドロキシエチル)−4’−フルオロメタンスルホンアニリド(以下、化合物(1)という)を有効成分とする鼻又は眼の充血治療剤に関する。
背景技術
鼻の充血は、風邪、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎又は枯草熱などの疾患の特徴となっている。鼻の充血は、鼻の粘膜の血管の拡張によって起こされ、その結果、鼻腔を覆う組織の腫脹を生じる。鼻の粘膜の微小血管は、α1−アドレナリン受容体に富むことが知られている。また、眼の充血は、アレルギー性結膜炎などの特徴となっている。眼の充血は、結膜の血管の拡張によって起こされる。
オキシメタゾリン、ナファゾリン、アミデフリンなどのα1−アドレナリン受容体作動薬は、鼻の粘膜の微小血管を収縮させることにより、鼻の組織の充血を軽快させる。これらの薬物は、眼の充血も軽快させる。
鼻微小血管の充血の治療に用いられる上記のα1−アドレナリン受容体作動薬は、不眠、興奮などの中枢神経系の副作用又は昇圧、動悸、不整脈などの循環器系の副作用が強いことが問題となっていた。
発明の開示
本発明の目的は、鼻又は眼の微小血管収縮作用を有し、同時に血圧上昇などの副作用が少ないか、認められない、鼻又は眼の充血治療剤を提供することにある。
本発明者らは、化合物(1)及びその光学異性体、並びにそれらのいずれかの薬学的に許容される塩が上記目的を達成することを見出して本発明を完成した。
化合物(1)の薬学的に許容される塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、燐酸などの鉱酸の塩、酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機酸の塩を挙げることができる。
本発明に係る化合物は、優れた鼻の微小血管収縮作用を有する。また、本発明に係る化合物は、血圧などへの影響が少ない。このことが本発明に特徴的である。本発明に係る化合物は、結膜の微小血管収縮作用も有し、血圧などに影響が少ない、眼の充血治療剤としても有用である。
本発明に係る化合物を医薬として投与する場合、本発明に係る化合物は、そのまま又は医薬的に許容される無毒性かつ不活性の担体中に、例えば0.01〜99.5%、好ましくは0.5〜90%含有する医薬組成物として、人を含む動物に投与される。
本発明に係る医薬組成物の担体としては、固形、半固形又は液状の希釈剤、充填剤及びその他の処方用の助剤一種以上が用いられる。医薬組成物は、投与単位形態で投与することが望ましい。本発明医薬組成物は、経口投与、静脈内投与、経皮投与、鼻内投与又は点眼により投与することができる。これらの投与方法に適した剤型で投与されるのはもちろんである。鼻の充血に対しては、ネブライザーや点鼻による投与又は経口投与が特に好ましい。眼の充血に対しては、点眼による投与又は経口投与が特に好ましい。
本発明に係る化合物の鼻又は眼の充血治療剤としての用量は、年齢、体重等の患者の状態、投与経路、病気の性質と程度等を考慮した上で設定することが望ましい。通常は、成人に対して本発明化合物の有効成分量としては、1日あたり、0.01〜1000mg/ヒトの範囲、好ましくは0.1〜10mg/ヒトの範囲が一般的である。
場合によっては、これ以下で足りるし、また逆にこれ以上の用量を必要とすることもある。また1日2〜3回に分割して投与することもできる。
経口投与は固形又は液状の用量単位、例えば、末剤、散剤、錠剤、糖衣剤、カプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、液剤、乳濁剤、シロップ剤、ドロップ剤、舌下錠その他の剤型により行うことができる。
鼻内投与は、液剤、懸濁剤、乳濁剤などを点鼻又はスプレーにより行うことができる。適当な液体媒質としては、水、プロピレングリコールなどの医薬として使用可能なアルコール類又はゴマ油若しくは落花生油などの医薬として使用可能な植物油を挙げることができる。また、鼻内投与は、軟膏、ゲルその他の剤型によって行うこともできる。鼻内投与のための投与形態は、滅菌してもよく、必要に応じて保存剤、安定化剤、乳化剤、等張化剤又は緩衝化剤のような助剤を含有してもよい。
点眼による投与は、液剤、懸濁剤、乳濁剤などにより行うことができる。適当な液体媒体としては、水又はプロピレングリコールなどの医薬として使用可能なアルコール類を挙げることができる。点眼による投与のための投与形態は、滅菌するのが一般的であり、必要に応じて保存剤、安定化剤、乳化剤、等張化剤又は緩衝化剤のような助剤を含有してもよい。
本発明医薬組成物には、他の薬剤、例えば、他の鼻又は眼の充血抑制剤を配合又は併用することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明化合物に係る試験例及び製剤例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。
なお、試験例及び製剤例中、化合物(1)の光学異性体の塩である(R)−(−)−3’−(2−アミノ−1−ヒドロキシエチル)−4’−フルオロメタンスルホンアニリド塩酸塩を化合物(1A)として表示する。
試験例1
鼻粘膜微小血管に対する作用
1群5〜6例の雌雄雑種成犬(体重7-18kg)をペントバルビタールナトリウム(35mg/kg、i.v.)で麻酔し、塩化カリウム水溶液の静脈内注射で心停止させて、鼻中隔及び甲介を摘出した。これらを、速やかに、予め95%O2+5%CO2を通気した氷冷クレブス−重炭酸塩(Krebs-bicarbonate)液に浸した。メスを用いて、鼻中隔と甲介から微小血管を含む粘膜組織を分離し、これから5×15mmの短冊状標本を作製した。標本はクレブス(Krebs)液を含む組織浴槽中に懸垂し、95%O2+5%CO2を通気して37℃に保ち、0.5gの負荷をかけ、15-20分毎にKrebs液を交換しながら約1時間平衡化した。
被験薬物(化合物(1A)及び対照薬(ノルエピネフリン))の濃度−反応曲線は、神経内取り込み阻害薬であるデスメチルイミプラミン(3×10-7M)、神経外組織への取り込み阻害薬であるヒドロコルチゾン(8.7×10-6M)及びβ−アドレナリン受容体拮抗薬であるプロプラノロール(3×10-7M)の存在下で被験薬物を累積し、標本を収縮させることにより得た。その濃度−反応曲線よりpD2値を算出した(pD2値=-log(ED50値(M)))。結果を表1に示す。
Figure 0004096363
本発明に係る化合物が、ノルエピネフリンと同程度の強い鼻粘膜微小血管収縮作用を有していることが明かである。
試験例2
血圧に対する作用
1群3〜6例の雄ウサギ(体重1.4〜3.1kg)を用いて、絶食条件下でウレタン1-1.2g/kgの皮下投与による麻酔下に試験を行った。胃直上の腹部を正中切開した後、0.5%メチルセルロース水溶液に懸濁した被験薬物(化合物(1A)、アミデフリン)の所要量を0.5ml/kgの容量で十二指腸内に投与し、投与後経時的に血圧の変化を測定した。血圧は、大腿動脈に刺入した血圧測定用カニューレを用いて測定した。結果を表2に示す。
Figure 0004096363
アミデフリンには薬効発現に必要と考えられる投与量で強い昇圧作用が見られたが、本発明に係る化合物は有効量でほとんど血圧に影響しないことが明かである。
試験例3
急性毒性試験
マウス(ddy系 雄、6〜8週齢)は1群4匹として、ラット(SD系 雄、6〜7週齢)は1群6匹として使用した。
投与前日(16〜18時間)から絶食した動物に経口ゾンデを用いて、10ml/kgの容量で各々所要量の被験薬物(化合物(1A)、アミデフリン)を経口投与した。薬物投与後は自由に餌と水の摂取が行える状態に戻し、一般症状及び死亡例の出現の有無を2週間観察した。被験薬物は0.5%メチルセルロースを含む生理食塩液に懸濁して経口投与した。結果を表3に示す。
Figure 0004096363
化合物(1A)投与群では死亡例は観察されず、異常所見も認められなかった。本発明に係る化合物がアミデフリンよりも安全性が高いことが明らかである。
製剤例1
錠剤(内服錠)
処方1錠120mg中
化合物(1A) 1mg
乳糖 60mg
トウモロコシデンプン 30mg
結晶セルロース 20mg
ヒドロキシプロピルセルロース 7mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
この割合の混合末を打錠成形し内服錠とする。
製剤例2
液剤(点鼻、点眼用)
滅菌精製水9kgに化合物(1A)10g、エデチン酸二ナトリウム塩・二水和物5g、塩化ナトリウム68g、塩化ベンズアルコニウム1.25g、クエン酸4.38g、リン酸一水素ナトリウム・二水和物64.8g、ヒドロキシプロピル−メチルセルロース10gを溶解する。得られる溶液に滅菌精製水を加えて10Lとし、慎重に混合し、化合物(1A)を0.1%含有する液剤とする。
産業上の利用可能性
以上に示したように、本発明に係る化合物は、鼻又は眼の充血治療剤として有用である。

Claims (2)

  1. 3’−(2−アミノ−1−ヒドロキシエチル)−4’−フルオロメタンスルホンアニリド若しくはその光学異性体又はそれらいずれかの薬学的に許容される塩を有効成分とする鼻の充血治療剤。
  2. 3’−(2−アミノ−1−ヒドロキシエチル)−4’−フルオロメタンスルホンアニリド若しくはその光学異性体又はそれらいずれかの薬学的に許容される塩を有効成分とする眼の充血治療剤。
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