JP3881061B2 - 腎臓疾患予防・治療剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、腎臓疾患予防・治療剤に関し、更に詳しくは、急性腎不全に代表される腎臓疾患の予防・治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
腎不全とは、腎機能が高度に障害され、生体の内部環境を正常に保持できなくなった状態をいい、中でも、腎機能の急激な悪化により窒素代謝物の蓄積など体液の恒常性を維持できなくなる急性腎不全は、透析療法の進歩した今日でも依然として死亡率は高く、予後の悪い疾患である。
急性腎不全の治療剤としては、尿細管流量を増し、尿細管内にできる円柱を洗い流して尿細管の閉塞を防ぐことで、腎機能の回復を期待する目的で、ループ利尿剤や浸透圧利尿剤が使われているが、これらは使い方次第で、それぞれ聴力障害や心不全・肺水腫等の重篤な副作用を誘発する危険性がある。そのためより有効でかつ安全な急性腎不全の治療ないしは予防薬の開発が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は腎疾患、特に腎不全の予防・治療剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、後記一般式(1)で表される化合物もしくはその酸付加塩又はそれらの水和物が、腎臓疾患、特に腎不全に対する強力な予防・治療作用を有し、更には虚血−再灌流によって発生した浮腫形成も強力に抑制することを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち本発明は、次の一般式(1)
【0006】
【化2】
【0007】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、低級アルコキシル基を示し、A及びA′は、同一又は異なって、低級アルキレン基を示す)
で表される化合物もしくはその酸付加塩又はこれらの水和物を有効成分として含有する腎臓疾患予防・治療剤を提供するものである。
【0008】
本発明で用いられる前記一般式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)という)は、公知の化合物であり、例えば特開平3-2144号公報に記載されている。この公報には、当該化合物が脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血、一過性脳虚血発作、脳血管障害に伴う脳機能障害などの改善あるいは進展防止のために有効に使用できる脳保護剤として有用であることが示されているが、本剤が腎臓疾患に対する予防・治療に適用できるか否かは示唆されていない。
【0009】
【発明の実施の形態】
化合物(1)において、式中R1〜R6で示される低級アルコキシル基としては、炭素数1〜6のものが好ましく、特にメトキシル基、エトキシル基、n-プロポキシル基、イソプロポキシル基などが好ましい。また、A及びA′で示される低級アルキレン基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が好ましく、特にトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基などが好ましい。
【0010】
これらのうち、化合物(1)としては、R1〜R6がメトキシル基で、A及びA′がテトラメチレン基のもの、特にN,N′-ビス[4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブチル]ホモピペラジンが好ましいものとして挙げられる。
【0011】
化合物(1)は、例えば特開平3-2144号公報に記載の方法、好ましくは該公報に記載の方法(1)に従って製造することができる。
【0012】
本発明においては、これら化合物(1)のほか、その酸付加塩又はこれらの水和物を用いることもできる。かかる酸付加塩は常法により得ることができ、酸付加塩の酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸;酢酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、クエン酸、フマール酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸などが挙げられる。
【0013】
本発明の予防・治療剤は、このような化合物(1)もしくはその酸付加塩又はこれらの水和物を有効成分とするものであり、この有効成分を単独で、又は薬学的に許容される担体、例えば賦形剤、結合剤、希釈剤等を用いて錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、注射剤、坐剤等の任意の剤型とすることができる。これらの製剤は公知の方法で製造することができる。例えば経口投与用製剤とする場合には、化合物(1)等を澱粉、マンニトール、乳糖等の賦形剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤;結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤;タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;軽質無水ケイ酸等の流動性向上剤などを適宜組み合わせて処方することにより製造することができる。
【0014】
本発明の予防・治療剤の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状等によって異なるが、化合物(1)として、通常成人の場合、1日0.1〜1,000mgを1〜3回に分けて投与するのが好ましい。また、体外循環の場合は、化合物(1)の濃度が1nM〜1mMの範囲になるように調整するのが好ましい。
【0015】
本発明の予防・治療剤は、腎疾患を患った又は患うと予測される患者には、経口投与あるいは全身投与して用いることができ、また腎臓外科手術における動静脈遮断及び再灌流を受けようとしている又は受けている患者には、経口投与あるいは全身投与するか、又はこのような患者の体外循環に添加して用いることができる。さらに、腎移植手術に際しては、臓器提供者に経口投与あるいは全身投与し、摘出臓器の保存液中に添加し、被移植患者にも手術前後に経口投与あるいは全身投与して用いることが好ましい。
【0016】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0017】
製造例1
N,N′-ビス[4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブチル]ホモピペラジン・2塩酸塩の製造:
1-クロル-4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブタン 7.5g、ホモピペラジン 1.3g、炭酸カリウム 4.5g及びヨウ化カリウム 5.3gをジメチルホルムアミド 4.2mlに加え、100℃で1時間攪拌した。反応液を食塩水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を希塩酸で抽出し、水層を酢酸エチルで洗浄したのち、水酸化ナトリウムで塩基性として、エーテルで抽出した。エーテル層を食塩水で洗浄し、乾燥したのち、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより遊離塩基4.7gが得られた。
このものを常法により塩酸塩とし、メタノール−エーテルより再結晶することにより、融点191〜194℃(分解)の目的物3.2gを得た。
【0018】
1H-NMR(CDCl3);δ
2.60(4H,br.t,J=8Hz),
3.82(6H,s),
3.86(12H,s),
6.37(4H,s)
IR(KBr);cm-1
1587, 1238, 1122
【0019】
実施例1
(ラット急性腎不全モデルに対する血漿クレアチニン量抑制効果)
N,N′-ビス[4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブチル]ホモピペラジン・2塩酸塩(以下試験化合物という)が、ラット急性腎不全に及ぼす影響を調べた。
ペントバルビタール麻酔下において、ラットの右腎臓を摘出した後に、左背側部を切開し、左腎動脈及び左腎静脈を露出させ、腎交感神経を傷つけないように左腎動脈を分離させた。左腎動脈をマイクロクリップで30分間遮断し、その後クリップを開放して急性腎不全モデルを作製した。クリップ開放24時間経過後に、動脈血を約5ml抜き、直ちに遠心にかけて、上清成分である血漿を採取した。血漿中のクレアチニンの量を急性腎不全の指標とした。クレアチニンの量はJaffe 法により求めた。試験化合物はクリップ装着10分前に、体重1kgあたり3mgを静脈内投与した。
【0020】
なお、対照として、試験化合物の溶媒として使用した生理食塩水を試験化合物の投与方法と同様に投与した溶媒投与群を設け、試験化合物群の結果と比較した。またクリップ装着を施さず溶媒投与のみを行った偽手術群を設けた。
【0021】
図1に示したように、偽手術群の血漿クレアチニン量が0.85±0.04mg/dlであるのに対して、溶媒投与群では、3.35±0.59mg/dlと血漿クレアチニン量の上昇が顕著に認められた。一方、試験化合物投与群では、血漿クレアチニン量が2.34±0.07mg/dlと溶媒投与群と比較して血漿クレアチニン量の抑制が認められた。従って、急性腎不全時に上昇する血漿クレアチニン量が、試験化合物投与により抑制されたことから、本化合物が急性腎不全の発症に対する予防作用を有することが確認された。
【0022】
実施例2
(腎臓の虚血−再灌流による浮腫形成抑制作用)
N,N′-ビス[4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブチル]ホモピペラジン・2塩酸塩(以下試験化合物という)が、ラット腎臓における虚血−再灌流による浮腫の形成に及ぼす影響を調べた。
Pellerらの方法〔J. Clin. Invest., 74, 1156-1164(1984)〕に従い、ラット左腎動静脈をクリップで30分間虚血を負荷し、再灌流24時間後に、腎水分含量を指標にして腎障害に対する試験化合物の効果を調べた。腎水分含量の測定はStewart-Wallance〔Brain, 62, 426-438(1939)〕及びElliott and Jasper〔Am. J. Physiol., 157, 122-129(1949)〕の乾燥重量法に従った。試験化合物は腎動静脈閉塞10分前及び再灌流直後の2回、各3mg/kgを静脈内投与した。再灌流24時間後に左腎臓を摘出し、湿重量及び乾燥重量を測定し、次式に従って腎水分含量を算出した。
【0023】
【数1】
腎水分含量(%)=(腎湿重量−腎乾燥重量)/腎湿重量×100
【0024】
なお、対照として試験化合物の溶媒(生理食塩水)のみを投与した薬物非投与群(Control群)を設け、また腎動静脈を剥離し、虚血負荷を施さない偽手術群(Sham群)を設け、試験化合物投与群と比較した。
【0025】
図2に示したように、Sham群の腎水分含量は76.82%であったが、虚血−再灌流処置を施したControl群のそれは78.04%と、1.22%の顕著な上昇が観察された。これに対し、試験化合物投与群では77.10%と、水分含量の増加が抑制された。Sham群に比したControl群の水分含量増加率を100%とすると、試験化合物は虚血−再灌流による水分含量の増加を77%抑制した。
また、結果は示していないが、試験化合物は再灌流直後の1回投与のみでも虚血−再灌流による水分含量の増加を著しく抑制した。
以上のことから、試験化合物は腎臓の虚血−再灌流による浮腫形成に対して強力な抑制作用を有することが確認された。
【0026】
実施例3
(急性毒性試験)
約10週令のSlc:ウィスター系雄性ラット1群5匹を用いた。試験化合物を5%アラビアゴムに懸濁して300又は1000mg/kg経口投与後0.5、1、2及び4時間の各時期に行動観察を行い、その後3日間動物を飼育し観察した。
その結果、本試験化合物は300及び1000mg/kg経口投与によって行動異常並びに死亡を認めなかった。
【0027】
実施例4(カプセル剤)
【表1】
【0028】
上記成分を常法により混合したのちゼラチンカプセルに充填し、カプセル剤を得た。
【0029】
実施例5(錠剤)
【表2】
【0030】
上記成分を常法により混合し錠剤を得た。
【0031】
実施例6(注射剤)
N,N′-ビス[4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブチル]ホモピペラジン・2塩酸塩100mg及び塩化ナトリウム900mgを約80mlの注射用蒸留水に溶かし、次いで得られた溶液に注射用蒸留水を加え、総量100mlにする。これを無菌濾過したのち遮光アンプル10本に分注、シールし、無菌の注射剤を得た。
【0032】
【発明の効果】
本発明の予防・治療剤は、優れた急性腎不全の予防・治療作用及び腎臓における虚血−再灌流障害に対して強力な抑制作用を有し、しかも毒性の少ないものであり、腎臓疾患の予防又は治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラット急性腎不全モデルにおける血漿クレアチニン抑制作用を示す図である。
【図2】腎臓の虚血−再灌流による浮腫形成に対する抑制作用を示す図である。
Claims (2)
- N,N′-ビス[4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブチル]ホモピペラジンもしくはその酸付加塩又はこれらの水和物を有効成分として含有する腎臓疾患予防・治療剤。
- 腎臓疾患が腎不全である請求項1記載の予防・治療剤。
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JPH09124487A JPH09124487A (ja) | 1997-05-13 |
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1996
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