JP4095240B2 - 二次電池の放電電圧推定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池を所定の電流で放電させる場合の電圧を推定するための放電電圧推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のイグニッションキーを操作してエンジンの始動用モータを回転させると(クランキング)、車両のバッテリーからは大電流が流れ出して電圧が急速に低下する。この場合、バッテリーの充電量が不足していると、電圧は大きく低下し、始動用モータはクランキング不能になる。従って、始動用モータの起動前に、バッテリーにクランキングが可能な程度の電力が充電されているか否かを測定しておきたいという要望がある。
【0003】
特に、近年、不要な排気ガスの放出を抑制するため、短時間の駐停車でもエンジンをアイドリング状態にすることなく停止することが推奨されている。しかし、例えば信号待ち等の停車時にエンジンを停止させた場合、自動車を再発進すべくクランキングを行ってもバッテリーの容量不足でエンジンが再始動できないと、自動車を再発進させ得なくなり、交通渋滞を招く等の問題を生ずる。このため、エンジンを停止させる前に、次回のクランキングに足る電力がバッテリーに充電されているか否かを常に把握しておくことが必要となる。
【0004】
このような要望に応えるには、電解液の比重センサーを利用することも考えられている。これは、鉛蓄電池においては電解液中の硫酸が反応物質であり、その濃度、すなわち電解液の比重によってバッテリーの残存容量を推定することができるからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法では、バッテリー中の硫酸濃度が平衡状態に達している場合には正確に残存容量を推定することはできるものの、実際に放電電流が流れている場合には、推定結果は著しく不正確になるという問題がある。なぜなら、放電中には電極の活物質近傍の硫酸は消費されて濃度が部分的に低下しており、比重センサーで測定される濃度とは誤差が生じてしまうからである。しかも、比重センサーで測定される個所の硫酸濃度と、活物質近傍の硫酸濃度との誤差は、放電電流の大きさによって変化するから、その補正も簡単ではない。さらには、この方法では、電解液が十分に存在している場合と、減液してしまった場合とでは、誤差が著しく大きくなり、また、遊離電解液が少ない密閉式鉛蓄電池では利用できないという問題もある。
【0006】
一方、バッテリーの使用に伴う充放電量を積算して残存容量を把握しようとする試みもある。例えば、特開平8−240647号公報では、バッテリーから電力が供給されている間はバッテリーから流れ出る電流と、バッテリーの端子電圧とを収集して近似直線関数を求め、その近似直線関数に従い残存容量(SOC)を計算する方法が開示され、特開平11−38107号公報には、充放電電流と温度とを検出し、温度に応じて充放電電気量を補正しつつSOCを積算する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、この種の残存容量の推定方法では、特にクランキングのように大電流を取り出すような使い方が可能か否かを判定するには不十分であった。同じ容量が残っているとしても、その電力を取り出す直前の放電電流がどの程度であるかによって、実際に取り出し得る最大電力が相違してしまうからである。その原因は、やはり硫酸の局部的な濃度低下にあると考えられる。前述したように、放電中は活物質近傍の硫酸は消費されており、その結果、濃度差によって硫酸が電極近くに向かって拡散して行く。放電電流が大きいと、硫酸の拡散速度が消費に追い付かず、活物質近傍の硫酸の低濃度化はますます進み、クランキング時に取り出し得る電力はどんどん低下してしまうのである。
【0008】
すなわち、クランキング時に取り出し得る電力量は、電池のSOC(充電状態)によって一律に決定されるのではなく、クランキング直前の放電電流がどの程度であったかによっても大きく影響を受けてしまうのである。従来の残存容量推定方法では、この点が全く配慮されていなかったため、特にクランキングのような高率放電が可能か否かを判定するには不十分であったのである。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、自動車のクランキング時における二次電池の放電電圧を正確に推定することができる二次電池の電圧推定装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は二次電池によって始動用モータを駆動してエンジンのクランキングを行う自動車における前記二次電池の放電電圧を推定する二次電池の放電電圧推定装置において、予め低率放電を一定時間行って放電終期の電圧を測定し、その後引き続き前記クランキングによる放電を想定した所定の大電流による高率放電を短時間行わせて放電終期の電圧を測定し、この測定を繰り返し行うことにより把握された前記二次電池の電流・電圧の線的関係を記憶する記憶手段と、前記二次電池の放電電流を検出する電流検出回路と、前記二次電池の放電時の電圧を検出する電圧検出回路と、前記クランキングを行う前であって前記エンジンの回転中において前記電流検出回路により検出されたその時点の電流及び前記電圧検出回路により検出された同時点の電圧に基づいて前記電流・電圧の線的関係群を構成するいずれか一つの線的関係を特定することにより前記クランキング時の放電電圧を取得する放電電圧取得手段と、この放電電圧取得手段により取得された前記放電電圧を所定値と比較して比較結果を出力する演算部とを備えるところに特徴を有する。
【0011】
【発明の作用】
本発明者らの研究によれば、所定の電流で放電を行おうとする前の電流と電圧とから、所定の電流で放電を行った際に示す電圧を推定することが可能な特定の電圧・電流線を作成することが可能であることが判明した。
この線的関係は、基本的には、その線上の一点により特定される電流・電圧状態から連続して放電電流を変化させた場合に、電池の示す電圧がその上を移動するような線であって、例えば、以下の方法により作成できる。
すなわち、ある一つの電流値(以下、説明上、始点電流という)で放電を行った場合の放電電圧を測定し、次いでこれに続けて予め定めた特定の電流値(以下、説明上、終点電流という)で放電を行い、このときの放電電圧を測定する。これによって、電流と電圧とを軸とするグラフ中に二つの点(以下、説明上、始点電流に対応する点を始点、終点電流に対応する点を終点という)が作成される。同じ測定を種々の充電状態において種々の始点電流で行い、グラフ中にこれらの点をプロットする。これによって、測定数に応じた数の始点と、各始点に対応する終点が得られるが、終点はいくつかが重なり、近似的に同一始点電流において得られた異なる値の電圧値の数と同じ数の終点が得られる。そして、同じ終点にたどり着く各始点を結ぶことで上記特定の電流・電圧線が複数本得られる。
また、ある一つの電流値で放電を行った場合の放電電圧と、このときの電池の内部抵抗を測定し、同様の測定を種々の充電状態と電流値とで行い、これら電流と電圧を軸とするグラフ中にプロットし、同じ内部抵抗を示した各点を結ぶことによっても同様に複数の電流・電圧線が得られる。
そして、これら電流・電圧線群は、電池の温度や劣化状態が同じであれば、ほぼ同じであるため、予めこのような電流・電圧線群を把握しておき、所定の電流での放電を行おうとする前の電流及び電圧から前記電流・電圧の線的関係群を構成するいずれか一つの線的関係を特定することにより、所定電流での放電時の放電電圧を推定することが可能となる。
なお、線的関係の特定は、例えば電池温度や劣化状態を特定した後、これに対応する線的関係群を特定し、続いて、所定電流放電前の電流と放電電圧を測定し、特定された線的関係群の中からこの測定点が乗る線を選び出すことで特定することができる。また、所定電流での放電前の電流と放電電圧、このときの内部抵抗を測定し、予め把握された電流・電圧線群の中から、その測定点が乗り、かつ内部抵抗が一致する線を選び出すことでも一つの線を特定することができる。なお、線を特定する際の所定電流放電前の電流と放電電圧は、できるだけ所定電流での放電に時間的に近い時点のものがよく、間に放電の停止や充電動作が入らずに連続して行われる状態での時点を選ぶのが望ましい。
さらに、所定電流での放電時の放電電圧は、特定された線から所定の電流に対応する電圧を見いだすことで推定され、小電流から大電流に移行する場合であっても、大電流から小電流に移行する場合であっても推定が可能である。
このような予め把握した線的関係に基づく電圧の推定方法は、電圧の推定を行う二次電池が極端に劣化した電池ではなく、推定範囲の放電電流も極端に小さかったり、大きかったりしない場合には、さらに簡略化した方法とすることができる。すなわち、このような場合には、後に述べるように線的関係が直線的関係に近似されるからである。
なお、本発明の推定方法、推定装置は、特に二次電池が鉛電池の場合に精度良く用いることができるものであり、以下に述べる線的関係を用いるのに好ましい放電電流としては、例えば鉛蓄電池において0.1C以上、20C以下である。
さて、直線的関係に近似される場合には、本発明の推定方法は、二次電池を所定の電流で放電させる場合の放電電圧を推定するための方法であって、予め任意の電流で放電させたときの放電電圧に基づき電流・電圧の直線的関係を把握し、前記所定の電流での放電を行おうとする前の電流及び電圧から前記電流・電圧の直線的関係群を構成するいずれか一つの直線的関係を特定することにより前記所定電流での放電時の放電電圧を推定することを特徴とする二次電池の放電電圧推定方法となるのであるが、この方法は低率放電から高率放電に移行する場合に特に好ましいため、この場合に基づいて以下説明する。
【0012】
対象とする二次電池について、ある電流で一定時間放電して(これを便宜上「低率放電」と呼ぶ)放電終期の電圧を測定する。その後、例えばクランキングによる放電を想定した所定の大電流による放電(「高率放電」と呼ぶ)を行わせて所定時間後、例えば放電1秒後の放電電圧を測定する。この測定結果を、例えば横軸を電流とし、縦軸を電圧としたグラフにプロットすると、低率放電と高率放電との2つの点から1本の直線が得られる。その直線の傾きは、この電池の内部抵抗を表している。このような測定を高率放電の電流を一定にして次々と行うと、様々な充電状態における電流・電圧の多数の線的関係が得られる。そして、同じ劣化状態の電池で、同じ温度という条件下では、高率放電時の放電電圧が同等であったものは、その電圧とその前に各電池が様々な低率放電の電流で示した放電電圧とを結ぶ直線が重なることが発見された。ここで、高率放電を行うまでに様々な電流値で行った低率放電によって放電された容量は各電流値によってまちまちであった。
【0013】
このことは、高率放電の放電電圧がある値を示すときの活物質近傍の電解液濃度に達するまでに取り出せる容量が、低率放電の電流によって相違することを表している。従って、低率放電によって活物質近傍の電解質濃度がある値CAになった電池と、ある容量だけ放電して充分に安定するまで放置したときに活物質近傍の電解液濃度がその値CAになったものとは、同一直線上に位置するものと考えられる。
そうすると、例えば様々な充電状態における電流・電圧を多数求めて直線的関係を予め把握しておけば、低率放電時の電流・電圧が判れば、その電池が上記直線的関係のうちのいずれに当てはまるかが決定可能であるから、その直線的関係に従って高率放電時の放電電圧を推定することができる。
ところで、直線的関係となる場合には、電圧を予測したい所定電流での放電の前に、異なる2種類の放電電流とその時の放電電圧が判れば、これによりその時点でその電池が何れの直線的関係に従うかが判るため、この場合には多数の直線的関係を把握することができる。すなわち、ある時点における放電電流とこのときの放電電圧が特定されると、直線的関係が一つに決まるのであるが、この状態から引き続いて異なる大きさの放電電流に移行した場合に得られる放電電圧もこの同じ直線的関係の上にあるため、予め直線的関係が把握されていなくとも、これら連続する二点を測定することにより、結果的に直線的関係を特定でき、これに基づいて所定の電流での放電電圧を推定できるのである。従って、二種類の放電電流とその時の放電電圧との組み合わせから把握する場合には、これら二種類の点はできるだけ時間的に近い点で測定するのがよく、さらには連続して測定するのが好ましい。
また、直線的関係が得られる場合の直線の傾きは、電池の内部抵抗に対応していると考えられるから、一つの点とその点が得られた時点での電池の内部抵抗が判れば、直線的関係を一つに特定できる。従って、この場合にも、多数の直線的関係を把握しておく必要はなく、任意の放電電流とその時の放電電圧との組み合わせと電池の内部抵抗とから直線的関係を把握することができる。この場合、内部抵抗は、任意の放電電流とその時の放電電圧との組み合わせを測定した時点にできるだけ近い時点で測定するのが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明を自動車のバッテリー容量警告装置に適用した一実施形態について図面を参照して説明する。
<電流・電圧の線的関係の把握>
本実施形態では、電圧2V、5時間率で定格容量20Ahの密閉式鉛蓄電池を対象としている。
まず、例えば25℃において、ある電流IAで一定時間の低率放電を行い、放電終期の電圧VAを測定し、その後、引き続き電流IB(=200A)の高率放電を1秒間行って放電電圧VBを測定した。ここで、電流IAは、10,40,70,100Aとし、放電電圧VAが10mV刻みで変化するような時間で十数点行った。従って、各放電時の放電容量は様々に異なる。これらの測定結果を横軸を電流、縦軸を電圧としたグラフに(IA,VA),(IB,VB)をプロットし、それらの点を線で結ぶ。
【0015】
低率放電がIA=10Aである場合を例示すると図1に示す通りである。IA1=10Aで10分間放電させると、VA1=2.026Vとなった。その後、引き続きIB1=200Aで放電すると、VB1=1.769Vになった。これらの点をグラフにプロットし、その点を結ぶラインL1を作成する。次に、引き続きIA2=10Aで、放電電圧がVA2=2.016Vになるまで放電し、引き続きIB2=200Aで1秒放電すると、VB2=1.746Vとなった。これらの点をグラフにプロットしてラインL2を形成した。このラインL1,L2は異なる充電状態(SOC)における電流・電圧の線的関係を示している。このように順次放電させる同様の作業を繰り返し、計10本のラインを作成した。
【0016】
次に、低率放電をIA=40A,70A,100Aとし、高率放電をIB=200A、1秒とした場合についても、同様に測定して同一のグラフにプロットすると、図2に示すように、高率放電の1秒後電圧VBが同一であるものは、その電圧VBとその前に各電池が10〜100Aの各放電電流IAで示していた放電電圧VAとを結ぶ直線がほぼ重なる。
また、0℃、50℃においても同様の測定を行い、その結果を図3及び図4に示し、さらに、JIS D 5301の軽負荷寿命試験を7680サイクル行い、若干劣化した電池についても、上述と同様の測定を25℃で行い、その結果を図5に示した。これらの図では、図2のものと傾きが異なり、それぞれの状態に対応した別の直線群となるものの、各直線がほぼ重なり、直線的関係が得られるのは同じである。
【0017】
これらのグラフから、低率放電時の電流・電圧が判れば、その電池の今の状態が電流・電圧の多数の直線的関係群のうちのいずれに当てはまるかが決定可能であることが判る。そして、その直線的関係(1本のグラフ)が特定されれば、それに基づいて高率放電時の放電電圧を推定できることが判る。
【0018】
<高率放電時の放電電圧の推定>
図6はバッテリー容量警告装置の一例を示す。ここで、二次電池10は例えば密閉式鉛蓄電池で、放電電流が小さな低率負荷21と放電電流が大きな高率負荷22とにそれぞれスイッチ23,24を介して接続されている。低率負荷21は自動車のオーディオ装置やエアコン、各種ランプ等の電装品を示しており、負荷電流が例えば10〜100Aの範囲で不規則に変動する。また、高率負荷22はエンジンの始動用モータを意味しており、例えば200Aが1秒程度の短時間流される。
【0019】
二次電池10の出力ラインには電流センサ31が設けられて電流検出回路32によって二次電池10の放電電流を測定可能になっており、また、電圧検出回路33によってそのときの放電電圧も測定可能である。さらに、二次電池10の近傍には温度センサー34が設けられ、温度測定回路35によって二次電池10の温度を検出することができる。これらの各検出回路32,33,35からの検出信号は演算部36に入力され、ここで関数記憶部37に記憶した関数を参照して次のようにして高率放電時の放電電圧が推定され、その結果に応じて警告表示部38が駆動される。
【0020】
上記関数記憶部37には例えば図7に実線及び破線で示す多数の一次関数群が記憶されている。
【0021】
さて、スイッチ23が閉じていて低率負荷21に負荷電流が流れているときに、高率放電時の放電電圧推定要求が演算部36に与えられると、演算部36はその時点で電流検出回路32及び電圧検出回路33から電流及び電圧の測定結果を受け取り、その電流・電圧に合致する1つの一次関数を特定する。例えば、図7に示す多数の一次関数群が対象となっている場合に、低率負荷21に流れている放電電流が50Aで、その時の放電電圧が1.9Vであったときには、一次関数f7が特定される。すると、演算部36は、その一次関数f7に高率放電の放電電流200Aを代入して、VB=1.63Vを取得し、これを基準値(例えば1.7V)と比較する。ここで、基準値としてはクランキングに最低限必要な電圧が記憶されており、この場合、推定された電圧VB=1.63Vが基準値よりも低いから、警告信号を警告表示部38に出力する。これにより、警告表示部38にてエンジンを停止させないように警告する表示が点灯される。
また、例えば放電電圧推定要求が出された時点で、放電電流が100Aで放電電圧が1.9Vであると(この場合には、上述の例に比べて充電状態が高いことになる)、その電流・電圧から特定される一次関数はf1となるから、そのf1に高率放電の放電電流200Aを代入してVB=1.77Vが取得される。すると、この推定電圧は基準値よりも高く、エンジンを停止しても直ちにクランキング可能であるから、演算部36は警告信号を出力せず、警告表示部38には警告表示がされない。
【0022】
このように本実施形態によれば、低率放電の放電電流がどのような値であったとしても、その時点での電流・電圧が決まれば、そのまま高率放電に移行した場合の放電電流を高い精度で予測することができる。従って、二次電池10の充電状態が不足していてクランキングが不能になりそうな場合には、警告表示部38にて警告表示がなされる。これにより、十分な充電量がないのに運転者がエンジンを停止させてしまってエンジンの再始動ができなくなるといった事態を未然に防止することができる。
【0023】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施の態様も含み、これらも本発明の技術的範囲に属する。
(1)上記実施形態では、関数記憶部37に多数の一次関数を記憶しておき、高率放電時の放電電圧をその一次関数群から特定されたものを利用して演算するようにしたが、これに限られず、図8に示すように関数記憶部37に代えてテーブル記憶部41を設け、電流検出回路32及び電圧検出回路33からの放電電流及び放電電圧に応じて読み取り処理部42がテーブル記憶部41に記憶したテーブルから所定の値を読み出すようにしてもよい。これによれば、演算処理が不要となるから、高速処理が可能となる。
なお、この実施形態で、高率放電時の放電電圧の値自体を必要とする場合には、テーブルは低率放電の放電電圧と放電電流とを列見出し及び行見出しとして高率放電時の放電電圧の値を記入した表を構成すればよい。また、放電電圧の値自体を必要とせず、例えばアイドリングストップ制御のためにアイドリングストップの可否だけを出力すればよい場合には、その表の放電電圧の値に代えてアイドリングストップの可否を記入した表構造とすればよい。
(2)上記実施形態では、低率放電時の電流及び電圧を測定し、それらの双方から一次関数群のうちのいずれかを特定するようにしたが、低率放電の電流が一定である場合には、電圧だけを測定してその値から一次関数群のいずれかを特定するようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、二次電池10の内部抵抗を1日に1回測定するようにしたが、測定頻度はこれに限られるものではない。また、測定方法も、異なる2種類の放電電流と放電電圧との組み合わせから求めるに限らず、二次電池10が放電状態にないときに外部電圧を印加し、このときに流れる電流を測定することにより内部抵抗を測定してもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、予め電流・電圧の線的関係を把握しておき、放電途中で所定電流の放電に変化させるときに、前記所定電流の放電前の電流及び電圧から前記電流・電圧のいずれかの線的関係を特定するから、放電時の放電電圧を正確に推定することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】25℃における高率放電の実験結果を示すグラフ
【図2】25℃において種々の電流で低率放電させているときに高率放電に移行したときの実験結果を示すグラフ
【図3】0℃において種々の電流で低率放電させているときに高率放電に移行したときの実験結果を示すグラフ
【図4】50℃において種々の電流で低率放電させているときに高率放電に移行したときの実験結果を示すグラフ
【図5】劣化した電池で25℃において種々の電流で低率放電させているときに高率放電に移行したときの実験結果を示すグラフ
【図6】本実施形態の高率放電の放電電圧推定装置を示すブロック図
【図7】上記実施形態における一次関数群を示すグラフ
【図8】他の実施形態に係る高率放電の放電電圧推定装置を示すブロック図
【符号の説明】
10……二次電池
31……電流センサ
34……温度センサー
35……温度測定回路
36……演算部
37……関数記憶部
41……テーブル記憶部
42……処理部
Claims (1)
- 二次電池によって始動用モータを駆動してエンジンのクランキングを行う自動車における前記二次電池の放電電圧を推定する二次電池の放電電圧推定装置において、
予め低率放電を一定時間行って放電終期の電圧を測定し、その後引き続き前記クランキングによる放電を想定した所定の大電流による高率放電を短時間行わせて放電終期の電圧を測定し、この測定を繰り返し行うことにより把握された前記二次電池の電流・電圧の線的関係を記憶する記憶手段と、前記二次電池の放電電流を検出する電流検出回路と、前記二次電池の放電時の電圧を検出する電圧検出回路と、前記クランキングを行う前であって前記エンジンの回転中において前記電流検出回路により検出されたその時点の電流及び前記電圧検出回路により検出された同時点の電圧に基づいて前記電流・電圧の線的関係群を構成するいずれか一つの線的関係を特定することにより前記クランキング時の放電電圧を取得する放電電圧取得手段と、この放電電圧取得手段により取得された前記放電電圧を所定値と比較して比較結果を出力する演算部とを備えることを特徴とする二次電池の放電電圧推定装置。
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