JP4093406B2 - 架空電線防護管 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
この発明は、架空配電線を樹木等の接触から守るために架空配電線に被せる内外二層構造の架空電線防護管に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、図5に示すように、架空配電線1を樹木2等の接触から守るために、架空配電線1に適宜本数の架空電線防護管3を連結しつつ被せることが行われている。図6にこの種の従来の架空電線防護管3の詳細構造を示す。(a)はその正面図であり、(b)は(a)のA−A拡大断面図およびその一部の拡大図である。
【0003】
この電線防護管3は、図6(a)に示すように、電線に横から被せるための開閉結合部4cを有する円形断面をなす防護管本体4と、この防護管本体4の一端側に設けられた連結用突出部5と、他端側に融着された筒状継手部6とを備えている。隣接する電線防護管3同士の連結は、一方の電線防護管3の筒状継手部6を他方の電線防護管3の端部に被せてその連結用突出部5と係合させることで行われる。
前記防護管本体4は、図6(b)に示すように、二色押出しで一体成形された内層4aと外層4bとからなる内外二層構造となっており、内層4aと外層4bとを異なる色とするすることで、外層4bが樹木等との擦れ合いによって摩耗して外層4bと異なる色の内層4aが露出した時、摩耗が進行していることをを目視で判断できる。このような構造と目的から、一般に、内層4aを摩耗検知層、外層4bを耐摩耗層と呼んでいる。
【0004】
架空電線防護管3の構造上最も重要な防護管本体4に必要な性能は、電気絶縁性能と耐摩耗性能である。従来のポリエチレン製の電線防護管3では、防護管本体4の内層4a、外層4bともに電気絶縁性能と耐摩耗性能の両方を有するポリエチレンのバージン材を用いていた。
【0005】
架空電線防護管は、電気設備技術基準によって、その耐摩耗性を、「(規定された試験方法により)内層は500回以上の耐摩耗性を有すること。」と規定され、さらに、耐電圧性能の観点から、「内層肉厚は1mm以上、全体肉厚2mm以上」と規定されている。
したがって、従来の架空電線防護管はすべて、電気設備技術基準に沿って内層肉厚を1mm+αにしているが、ポリエチレン製の場合、この肉厚で耐摩耗性能500回を十分満たすことができる。なお、押出成形に用いる一般的なポリエチレンであれば、実力的には肉厚0.5mmあれば耐摩耗性能1000〜3000回が見込める。
【0006】
前記の通り、肉厚に関して「内層肉厚は1mm以上、全体肉厚2mm以上」と規定されているが、従来の電線防護管3では、内外層のそれぞれの肉厚は、内層4aは重要な電気絶縁性能を担うため余裕を見て厚め(1.0〜2.0mm)に設定し、また、ポリエチレン製ならば厚みが0.5mm程度あれば十分な耐摩耗性能を有することから、電気絶縁性能に関係ない外層4bは、内層4aより薄め(0.5〜0.8mm)に設定している。なお、押出成形に際して長手方向に肉厚のバラツキが若干生じることを考慮しても、外層4bの厚みは1.0mm以下であった。
また、全体肉厚については、あまり肉厚を厚くすると作業性の悪化や、重量アップ、材料費のコストアップとなるため、従来の架空電線防護管では、全体肉厚を2.7mm程度以内(つまり2.0〜2.7mm)としている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の通り電線防護管に必要な性能は電気絶縁性能と耐摩耗性能であるが、内層4aには電気絶縁性能と耐摩耗性能の両方を要求しており、電気設備技術基準第86条の解釈には保証が必要な規格値および試験方法まで規定されている。
一方、外層4bには電気絶縁性能は必要無く、ある程度の耐摩耗性能があれば良い。それにも拘わらず、従来は外層4bにも内層4aと同様の電気絶縁性能を有するバージン材を用いており、プラスチック廃材を使用して環境対策に寄与するということは行われていなかった。現在、架空電線防護管の撤去品はリサイクル対象とはなっておらず、おのずと産業廃棄物となってしまうのが現状である。
【0008】
このような現状において、本願発明者は、架空電線防護管に配電機材のプラスチック廃材を利用することを検討した。配電機材の樹脂としてポリエチレンが広く使用されており、そして、架空電線防護管の材料としてもポリエチレンが広く使用されいることから、ポリエチレン製の架空電線防護管にポリエチレン廃材を利用できれば、廃物利用の推進に大きく貢献できる。そこで、ポリエチレン廃材に焦点を絞って、架空電線防護管への廃材利用を研究した。
【0009】
ところで、押出成形では、材料(樹脂)の流動性を適切に設定することが重要であるが、内外二層構造の防護管本体の二色押出成形の場合は特に、内外層の材料の流動性を適切にすることが重要であり、材料の流動性が悪くなると、薄い肉厚で押出成形することが困難になる。
従来の架空電線防護管のように内外層ともにバージン材を用いる場合は、その特性が知られているので、樹脂の押出成形性に大きく関係するメルトインデックス(MI)が最適な材料を選定して用いることが容易であり、したがって、薄い肉厚で押出成形することの困難はあまりない。
しかし、再生ポリエチレンを利用する場合、配電機材のポリエチレン廃材からなる再生ポリエチレンと一言に言っても、その再生ポリエチレンは、多様な製品のポリエチレン廃材をまとめて再生するものなので、再生ポリエチレンの材料ロット毎に不純物の量にバラツキがあり、その不純物の量のバラツキによっては、メルトインデックスが非常に小さくなる(=流動性が悪くなる)場合がある。
本願発明者は、現実に発生している配電機材のポリエチレン廃材から再生した大量の再生ポリエチレンを用いて、防護管本体を押出成形する際の押出成形性について検討した。内層にポリエチレンバージン材、外層に再生ポリエチレンを用い、内外二層構造の防護管本体を外層肉厚を種々異ならせた押出成形で試作した結果、現実に発生している配電機材のポリエチレン廃材100%の再生ポリエチレンを用いた押出成形では、外層肉厚が0.8mm以下になると成形性が大幅に悪くなるが、1.0mm以上であれば特に問題なく成形できることが分かった。
【0010】
本発明は上述の知見に基づいてなされたもので、材料品質にバラツキが生じやすい再生ポリエチレンであっても安定した押出成形ができるようにして、配電機材のポリエチレン廃材からの再生ポリエチレンを架空電線防護管の製造に利用可能にし、これにより産業廃棄物の排出の削減、自然環境破壊の防止に寄与するとともに、コストダウンを図ることが可能な架空電線防護管を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明は、二色押出しで一体成形された内層と外層とからなる内外二層構造の防護管本体の一端側に連結用突出部、他端側に筒状継手部を備えた、架空配電線を樹木等の接触から守るために架空配電線に被せる架空電線防護管であって、
電線に横から被せるための開閉結合部を有して使用状態では円形断面をなす前記防護管本体の前記内層は、電気絶縁性能および耐摩耗性能を共に具備するポリエチレンバージン材からなる厚さ1.0〜2.0mmの層であり、前記外層は、多種類の配電機材のポリエチレン廃材のみから再生した再生ポリエチレンからなる厚さ1.0〜1.7mmの層であり、内層と外層との合計厚さが2.0〜2.7mmであることを特徴とする。
なお、前記の「多種類の配電機材のポリエチレン廃材のみから再生した再生ポリエチレン」とは、実質的にポリエチレン廃材のみから再生した再生ポリエチレンであればよく、形式的に微量のバージン材を混ぜたものを除外するものではない。
【0012】
請求項2は、請求項1の架空電線防護管において、連結用突出部が防護管本体の外層と同じ再生ポリエチレンで外層と一体成形されたことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態の架空電線防護管13の正面図および左右の側面図、図2は同底面図、図3は隣接する2つの架空電線防護管13を連結した状態を示した図、図4は図1のA−A拡大断面図とその一部拡大図である。
図示の通り、この架空電線防護管13は、電線に横から被せるための開閉結合部14cを有する円形断面をなす防護管本体14と、この防護管本体14の一端側に設けられたテーパ状の連結用突出部15と、他端側に設けられた筒状継手部16とを備えている。連結用突出部5は後工程で防護管本体14の端部に一体モールドするか、別途成形したものを融着等で固定する。筒状継手部6は別途成形したものを融着等で固定する。筒状継手部16は、連結用突出部15を受け入れ易いように先端がラッパ状部16aとなり、内部に連結用突出部15と係合可能な拡大中空部17が形成されている。
図5のように架空配電線1に適宜本数の電線防護管13を連結しつつ被せて、架空配電線1を樹木2等の接触から守る。隣接する電線防護管13同士の連結は、図3に示すように、一方の電線防護管13の連結用突出部5側の端部を他方の電線防護管13の筒状継手部6に差し込み、連結用突出部5を拡大中空部17に係合させて行う。
【0014】
前記防護管本体4は、図4に示すように、二色押出しで一体成形された内層4aと外層4bとからなる内外二層構造となっており、内層14aと外層4bとを異なる色とすることで、外層4bが樹木等との擦れ合いによって摩耗して外層4bと異なる色の内層4aが露出した時、摩耗が進行していることをが目視で判断できる。
【0015】
本発明では、防護管本体14をポリエチレンの押出しにより成形するが、内層14aには、電気絶縁性能および耐摩耗性能を共に具備するポリエチレンバージン材を用い、外層14bには、配電機材のポリエチレン廃材のみによる再生ポリエチレンを用いた二色押出しにより成形する。そして、その際、内層14aの厚みを1.0〜2.0mm、外層14bの厚みを1.0〜1.7mmとし、かつ、内層と外層との合計厚さを2.0〜2.7mmにする。
なお、連結用突出部5も、防護管本体14の外層14bと同じ再生ポリエチレンを用いて成形すると、ポリエチレン廃材の有効利用およびコストダウンの点で好ましい。
ここで、配電機材とは、配電設備において恒久的に配備される電線被覆、絶縁カバーやシース類等の配電機材の他、建築工事用防護管、防護シート等の配電系統の工事用として臨時的に用いられるポリエチレン製機材も含まれる。
【0016】
上記の架空電線防護管13において、ポリエチレンバージン材からなる厚み1.0〜2.0mmの内層14aは、「500回以上の耐摩耗性」および「内層肉厚は1mm以上」という電気設備技術基準を十分満たす。
【0017】
配電機材のポリエチレン廃材のみによる再生ポリエチレンからなる厚み1.0〜1.7mmの外層14bは、内層肉厚が1.0mm以上であるから、「全体肉厚2mm以上」という電気設備技術基準を満たす。この外層14bは、ある程度の耐摩耗性能を有していればよく、電気絶縁性能を特に要求されないので、不純物の混入などで電気絶縁性能に若干のバラツキが生じてしまう配電機材のポリエチレン廃材100%の再生ポリエチレンを用いても、架空電線防護管としての性能に問題は生じない。また、外層14bの肉厚は従来より厚いので、外層14bの耐摩耗性能が問題となることもない。
このように配電機材のポリエチレン廃材を使用することにより、配電機材のポリエチレン材料が産業廃棄物として焼却処理される量を減らすことができる。
産業廃棄物の排出削減は、産業廃棄物の焼却処理時に生じる二酸化炭素による地球オゾン層の破壊、またダイオキシン類の有害ガスの発生を削減することになり、自然環境破壊の防止に大きく寄与することになるというメリットがある。
コストもポリエチレンバージン材と比べて安価なため、製品のコストダウンにもなるというメリットもある。
【0018】
上記架空電線防護管13の防護管本体14を押出成形する場合、1個の押出ダイを共有する2個の押出シリンダの一方に内層14aとなるポリエチレンバージン材、他方に外層14bとなる再生ポリエチレンを供給して、可塑化、溶融した後、押出ダイから押出して、内外二層構造の防護管本体14を成形する。この押出成形では、内外層の材料の流動性を適切にすることが重要であり、材料の流動性が悪くなると、薄い肉厚で押出成形することが困難になる。
先に述べたように、再生ポリエチレンを利用する場合、不純物の量にバラツキがあり、メルトインデックスが非常に小さくなる(=流動性が悪くなる)場合があるので、従来の防護管本体のように、外層の肉厚が0.5〜0.8mm程度では成形性が悪く、良好な押出成形品が得られない場合が生じるが、外層の肉厚が1.0mm以上であれば、再生ポリエチレンの品質のバラツキを考慮しても、ほとんどの場合、良好なメルトインデックスを確保することができ、良好の押出成形をすることができる。なお、押出成形に際して長さ方向に肉厚のバラツキがある程度生じるが、長手方向のバラツキで最も薄くなるとろでも1.0mm以上にする。
なお、成形性だけを考慮すれば、外層の肉厚はある程度は厚くてもよいが、市販の架空電線防護管の全体肉厚が2.7mm程度以下なので、この2.7mmという数値を全体肉厚の実用上の上限とみることができ、その場合、内層の最小肉厚1.0mmを考慮すると、外層肉厚は最大1.7mmとなる。
よって、本発明では外層14bの肉厚を1.0〜1.7mmとしている。
【0019】
なお、連結用突出部5の材料として、防護管本体14の外層14bと同じ再生ポリエチレンを用いると、ポリエチレン廃材の有効利用およびコストダウンの点で有利である。
【0020】
【発明の効果】
本発明の架空電線防護管によれば、防護管本体の内層をポリエチレンバージン材、外層を配電機材のポリエチレン廃材のみによる再生ポリエチレンで形成するとともに、外層の厚さを1.0〜1.7mmとしたので、材料品質にバラツキが生じやすい再生ポリエチレンであっても、この再生ポリエチレンによる外層を安定して押出成形することが可能となる。これにより、現実に発生している配電機材のポリエチレン廃材を架空電線防護管の製造に実際に利用することが可能となり、産業廃棄物の排出の削減、自然環境破壊の防止に寄与するとともに、バージン材と比べて安価な再生ポリエチレンを用いることによるコストダウンを図ることができる。
【0021】
請求項2のように、連結用突出部も再生ポリエチレンにより防護管本体の外層と一体成形すると、廃材の有効利用および製品のコストダウンをさらに図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の架空電線防護管の正面図および左右の側面図である。
【図2】図1の架空電線防護管の底面図である。
【図3】隣接する2つの架空電線防護管を連結した状態を示した図である。
【図4】図1のA−A拡大断面図およびその一部の拡大図である。
【図5】架空配電線に架空電線防護管を被せた状況を説明する図であり、本発明および従来例に共通する。
【図6】従来の架空電線防護管を示すもので、(a)はその正面図、(b)は(a)のA−−A拡大断面図およびその一部の拡大図である。
【符号の説明】
13 電線防護管
14 防護管本体
14a 内層
14b 外層
14c 開閉結合部
15 連結用突出部
16 筒状継手部
16a ラッパ状部
17 拡大中空部
Claims (2)
- 二色押出しで一体成形された内層と外層とからなる内外二層構造の防護管本体の一端側に連結用突出部、他端側に筒状継手部を備えた、架空配電線を樹木等の接触から守るために架空配電線に被せる架空電線防護管であって、
電線に横から被せるための開閉結合部を有して使用状態では円形断面をなす前記防護管本体の前記内層は、電気絶縁性能および耐摩耗性能を共に具備するポリエチレンバージン材からなる厚さ1.0〜2.0mmの層であり、前記外層は、多種類の配電機材のポリエチレン廃材のみから再生した再生ポリエチレンからなる厚さ1.0〜1.7mmの層であり、内層と外層との合計厚さが2.0〜2.7mmであることを特徴とする架空電線防護管。 - 前記連結用突出部が防護管本体の外層と同じ再生ポリエチレンで外層と一体成形されたことを特徴とする請求項1記載の架空電線防護管。
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