JP4093333B2 - 熱物性測定方法と装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難導電性の薄板やフィルム、液体、気体などの物質の熱拡散率や熱伝導率、体積比熱、熱浸透率の熱物性を測定する方法と装置、並びにその測定と同時に示差熱分析を行なう装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、樹脂成形品の成形の際の金型内での樹脂の挙動や樹脂成形品の応力を解析するため、樹脂の熱拡散率や熱伝導率などの熱物性を正確に把握することの要望がある。熱拡散率の測定方法として、板状の試料に光吸収膜を設けてこれに間欠的にレーザを照射し、該吸収膜に生じる瞬間的な熱の波動が該試料の他面に伝わる時間と温度を測定するレーザフラッシュ法や、薄板やフィルムなどの薄い難導電性の被測定材料の両面に導電性の薄膜を形成あるいは密着させ、その片面の薄膜を交流電源に接続して通電により発熱する発熱体とし、他面の薄膜を抵抗式温度計の電気抵抗として組み込み、片面の薄膜で発生する交流発熱の波形と、該温度計で測定される温度波形の位相差を求め、この位相差と交流電流の周波数との関係式から該被測定試料の厚さ方向の熱拡散率を求める交流ジュール熱法(交流法、acカロリーメータ法、交流加熱法とも呼ばれている。特開平6−130012号公報参照)が知られている。
【0003】
このうち交流ジュール熱法は、被測定試料の量がわずかで済む利点があり、その導電性の薄膜は、金などの金属薄膜をオングストローム台の厚さで被測定試料に直接スパッタリングや蒸着により形成され、被測定試料自体にスパッタリングや蒸着で薄膜を直接形成できないときは、図1及び図2に示すように、導電性の薄膜a、aをスパッタリングなどで2枚の板ガラスなどの平板の媒質b、bの片面に形成し、被測定試料cの両面にこれら媒質b、bを密着させることにより薄膜a、aが密着される。そして、この方法の測定には、図3に示したような、片面の薄膜aに周波数fのsin波の交流電流を与える交流信号発振器dと、他面の薄膜aの温度波形を増幅するロックインアンプeと、位相差を求めて周波数との関係から熱拡散率を算出する演算器gを備えた装置が使用され、被測定試料cは温度制御器hで温度制御された炉i内に設置される。
【0004】
この交流ジュール熱法の測定原理は次の通りである。片面の薄膜aに周波数fの交流電力を与えることにより波状の交流熱が発生し、その熱は被測定試料の厚さ方向に伝播してその裏面へ到達し、裏面温度が交流的に変化する。この裏面温度の変化(温度波)は他面の薄膜の電気抵抗に変化を与え、この抵抗変化を電圧変化として読み取ることにより測定できる。他面の薄膜aには交流増幅器の1種であるロックインアンプeが接続されており、これにより印加した周波数fで固定して入力波形と、試料cの厚みを通して伝播することにより位相遅れを生じた出力波形との位相差Δφを求める。一次元の熱伝導を仮定して熱伝導方程式を解くと、試料cによる位相差Δφは次式で表される(橋本寿正、他;第25回記念熱測定討論会講演要旨集、(1989)p.3104B)。
Δφ=−kd−π/4−β=−(πf/α)1/2・d−π/4−β (1)
β=tan-1{exp(-2kd)sin(-2kd)/〔[(ξ+1)/(ξ−1)]2−exp(-2kd)cos(2kd)〕 (2)
ξ=c√α/CS√αS、k=√(ω/2α)=√(πf/α)
ここで添字sは媒質または基盤を示し、dは被測定試料の厚さ、αは被測定試料の熱拡散率、βは被測定試料と周囲の媒質に関係する量で、もし媒質bが被測定試料と同じ熱浸透率(=√λCPρ;λは熱伝導率、CPは定圧比熱、ρは密度)をもつとすると、β=0となる。また被測定試料が(πf/α)1/2・d>1の場合には、第2項のβは第1項に比べて無視できる程に小さく、実験誤差範囲で次の近似式が成り立つ。
Δφ≒−(πf/α)1/2・d−π/4 (3)
したがって、周波数fを変えて位相差Δφを測定し、周波数fの平方根〜位相差をプロットすれば、β=0の条件が成り立つ範囲では、図4に示されるような直線が得られ、この直線の勾配は、π/αに一致するから、勾配から被測定試料の熱拡散率が求められる。
【0005】
また、被測定試料は図2に示すような単一層に限らず、図5に示すような多層試料であってもよく、層間の熱接触抵抗が無視できる場合には、前記と同様の解析の結果、p番目の層による温度波の位相差ΔφPは、近似的にΔφP=(πf/αP)1/2・dP と表すことができる(荒木信幸、他;第17回日本熱物性シンポジュウム講演論文集、(1996)p.31−34)。この式の添え字Pは、p番目の層を示す(p=1,2,3,…)。
【0006】
熱拡散率は被測定試料自体の温度により変化するので、熱拡散率の温度依存性を知ることの要望があり、その依存性を求めるための一法として、1つの周波数f1を固定して前記(1)式より直ちに熱拡散率を求め、被測定試料温度対熱拡散率のプロットを得る方法がある(橋本寿正;第29回熱測定討論会講演要旨集、(1993)p.222−223)。しかし、この方法では、100℃以上では0.2℃/min以下の昇温速度に制限されるという制約がある。他の方法として、定速昇温−冷却−昇温−冷却を繰り返し、各昇温の際に周波数fを変えて位相差をそれぞれ測定し、各温度毎の周波数の平方根対位相差のプロットから熱拡散率を求める方法があるが、この方法も毎回の昇温過程が被測定試料内で全く同じメカニズムで進行しているという保証はなく、物によっては昇温融解の過程で内部構造の変質する可能性があり、したがって現象に対して測定結果が忠実に反映していないという問題を残している。更に他の方法として、被測定試料を各温度に定温制御して一定温度に保ち、その間に周波数fを変えて測定を行い、その温度における熱拡散率を求め、次により高い温度に保持して測定を繰り返すという方法があるが、この方法も融解やガラス転移の過程で一定の温度に保持されている間に内部構造の変質の可能性があり、前記の方法と同様の問題を残している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したレーザフラッシュ法や交流ジュール熱法は熱拡散率の測定方法であり、熱伝導率は直接求めることができず、熱伝導率λ(=αCPρ)を求めるには、熱拡散率αを求めたのち別の測定法または別の測定装置で定圧比熱CPと密度ρを測定して計算により求めなければならない。しかも、これらの方法では気体の熱拡散率を求めることができず、液体の熱拡散率も特別の容器を使用したり特殊な測定方法でないと測定ができない不都合があった。
【0008】
また、レーザフラッシュ法では、試料が厚さ0.1mm以下或いは5mm以上であったり、ダイヤモンドのように熱拡散率が大きい試料、レーザ光が透過するガラスなどの試料、大きさが3mm以下の試料、については測定が困難か不可能で、試料についての制約が多い欠点がある。交流ジュール熱法は、測定時間にある程度の時間を要するために、試料の急速な昇温および冷却過程の熱拡散率の変化を測定することが困難である。
【0009】
さらに、熱拡散率の温度依存性を求める従来の方法は、被測定試料温度についての熱拡散率は得られても、実際の昇温または冷却の過程における真の値とは異なる可能性があり、その改良が要望されている。
【0010】
本発明は、固体、液体のみならず気体の熱拡散率、熱伝導率を同時に測定でき、熱浸透率や体積比熱も測定できる方法と装置を提供すること、測定時間が短く融解または凝固過程の固体と液体の混合状態の試料の熱物性を連続的に測定でき、透光性試料や厚さがナノメータ単位の薄膜から数ミリメートルの薄板まで広い厚さ範囲の試料の熱物性を測定できる方法と装置を提供すること、熱拡散率の測定と同時に示差熱分析できる装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明では、薄い難導電性の被測定試料の片面に交流電力を与えて交流熱を発生させ、該交流熱による該試料の他面の波状の温度変化を抵抗式温度計の電圧の変化により測定し、与えた交流電力の波形と測定した電圧の波形の位相差に基づき該試料の熱拡散率等の熱物性を算出する測定方法に於いて、該交流熱を一定周波数の任意波形の交流電力を与えて発生させ、測定される電圧の波形をn次の高調波成分に分解するとともにその各次の高調波の波形について該任意波形に対する振幅比および位相差を求め、求めた振幅比および位相差から該試料の熱拡散率や熱伝導率、熱浸透率或いは体積比熱の熱物性の少なくとも1つを求めることにより、上記の目的を達成するようにした。該任意波形には0より大きく1より小さいデューティ比をもつ矩形波を使用し、該電圧の波形の分解はフーリエ変換により行われる。
【0012】
上記目的は、請求項3或いは請求項4に記載の構成をもつ装置により達成され、流体の熱物性の測定は請求項5或いは請求項6の構成を有する方法や装置により的確に行える。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明すると、図6に於いて符号1は温度コントローラ2により昇温・冷却・一定温度保持に制御された炉、3は該炉1内に置かれた高分子材料や無機材料、セラミックスなどの難導電性の薄板、薄膜、フィルムなどの薄い被測定試料を示す。この被測定試料3の両面に、通電により発熱し且つ温度変化により電気抵抗が変化する金などの金属材料の薄膜6、7を片面に形成したガラスなどの絶縁材料製の基板4、5を当接させた。各基板4、5の詳細は図7に示す如くであり、各薄膜6、7はスパッタリング或いは蒸着により厚さ10〜5000オングストローム、10Ω〜10KΩの抵抗値になるように形成され、各基板4、5の当接で各薄膜6、7が該試料3の両面に直接密着する。各薄膜6、7は、リード薄膜8を介してリード線9に接続され、一方の薄膜6はファンクションシンセサイザー11で制御された交流電源10に接続される。該電源10はファンクションシンセサイザー11により制御されて例えば任意波形として図8のようなデューティ比aが0<a<1の矩形波16の交流電力を出力し、薄膜6はこの矩形波に対応した温度波を発生する。そして、その温度波は被測定材料3の厚さ方向に伝わり、もう一方の薄膜7を加熱する。該他方の薄膜7は直流電源12に接続されて抵抗式温度計を構成し、該薄膜7に補償器13及びロックインアンプ14を介してパーソナルコンピュータなどの演算器15に接続し、該薄膜7で検出される電圧の矩形波をn次の高調波に分解するフーリエ変換器17を該補償器13の前方に介在させた。尚、被測定試料3が溶解性のある場合、図9のようにスペーサ30、30を一方の基板に設けておき、該試料が溶解してもその厚さが変わらないようにした。
【0014】
本発明の特徴は、従来の交流ジュール熱法が、被測定試料への熱入力として、周波数を変えたいくつかのサイン波の交流熱を加えるのに対して、熱入力としてフーリエ変換でn次の周波数の波形に分解できる1つの周波数の波形例えば矩形波の熱を与え、熱出力としてn次の周波数の温度波を検出し、それぞれの温度波の位相差を測定することにより被測定試料の熱拡散率を求めるようにした点に存し、従来法に比べて極めて短時間に熱拡散率を求めることができ、これに伴い被測定試料の昇温過程または冷却過程での熱拡散率や熱伝導率を容易に求めることができる。
【0015】
本発明の適切な実施例によれば、熱入力として1つの周波数の矩形波を与えるのみであり、熱出力の検出と解析に10波長程度を検出し、n次の高調波としてn=10程度をとるとしても、f=2Hzでは約1℃/min、f=200Hzでは100℃/minの昇温速度でも測定可能になり、実際の熱分析の昇温速度で或いはより一層高速で昇温させながら熱拡散率の変化を追跡できる。
【0016】
図6の装置を使用して被測定試料3を熱分析する場合、まず該電源10から次式(4)で表され図8の波形を有する矩形波の交流を金属抵抗Rの薄膜6に与える。
【0017】
【表4】
【0018】
ここでV0は矩形波の振幅電圧、mは自然数、aは矩形波のデューティ比で0<a<1である。
【0019】
このV(t)をフーリエ変換し、角周波数空間で表すと次式(5)のように示される。
【0020】
【表5】
【0021】
この電圧によるジュール熱はq(t)=V2/(S・R)であるので、(5)式の高次項の線形結合として(6)式が得られる。Sは加熱面の面積すなわち薄膜6の面積である。
【0022】
【表6】
【0023】
薄膜6で発生する熱すなわち熱入力が厚さdの被測定試料3内を一次元熱流で伝わると仮定して、高次項のそれぞれについて熱伝導方程式を解くと、厚さdの面へ伝わる温度波T(d、t)は線形結合を仮定して(7)式が得られる。
【0024】
【表7】
【0025】
薄膜6からの熱入力の各n次の温度波に対する温度出力(熱出力)の位相遅れ(位相差)は、近似的に前記(2)式と同様に次式(8)がなりたつ。
Δφn=−(nπf/αn)1/2・d−π/4−anπ …(8)
そして、位相差が測定されることによって、各n次の温度波について平方根〜位相差をプロットすることができ、従来の交流ジュール熱法と同様にβ=0の条件がなりたつ範囲では直線的なプロットになるので、その勾配から被測定試料3の熱拡散率が求まる。
【0026】
また、振幅からも熱拡散率を求めることもできる。即ち、周波数fの基本波の振幅をA1、n次の高調波の振幅をAnとすると、(7)式から
【0027】
【表9】
【0028】
従って、(9)式の対数からkdが得られ、波数k(熱拡散長さの逆数)から熱拡散率αが求められる。尚、図8のような矩形波16以外の三角波、サイン波等の任意の波形についても同様の結果が得られる。
【0029】
次に基板4の体積比熱と熱拡散率が既知であり、さらに被測定試料3の熱拡散率も既知である場合、(5)式の振幅電圧および(10)式から被測定試料3の体積比熱(または熱伝導率)を求めることができる。(10)式のRは抵抗、Eは検出回路の直流電源電圧、RDは検出回路のダミー抵抗値である。
【0030】
【表10】
【0031】
(10)式を用いて被測定試料3の体積比熱を精度よく求める方法がいくつかある。その内の一つは熱入力qを変えて熱出力の振幅を測定し、横軸にq、縦軸に振幅をとり、そのプロットして得られる直線の勾配Zを測定する。次に被測定試料を基板4と同一材料で同様に測定し、プロットして得られた直線の勾配ZSを求める。この勾配の比は、C、α、CS、αSの関数なので、CS、αSが既知であれば、Cは(11)式より計算で求められる。添え字のsは、基板4を表す。
【0032】
【表11】
【0033】
ここで体積比熱Cと熱拡散率αおよび熱浸透率Eなどの関係式をまとめておく。
λ=α・CP・ρ=α・C
E=(λ・CP・ρ)1/2=(λ・C)1/2=C・(α)1/2
本発明によれば、被測定試料が液体や気体の流体であってもその熱拡散率、熱伝導率、熱浸透率の測定が可能であり、この場合、図10に示すようなガラスなどの絶縁板18の両面に、金などの通電発熱し温度による抵抗変化のある金属薄膜19、20をスパッタ等により形成した測定プローブ23を用い、該プローブ23を図11に示すようなポリエチレンなどの絶縁体の容器21内の液体22もしくは気体中に浸漬し、該金属薄膜19、20から延びるリード線24、25を図6と同様に電源10とフーリエ変換器17、演算器15などに接続して測定が行われる。該絶縁板18の比熱と熱拡散率を予め本発明の上記方法により知っておき、一方の金属薄膜に電源から矩形波の交流電力を与え、他方の金属薄膜から温度波を検出し、前記の関係式から位相差を測定すれば、液体もしくは気体の熱拡散率を求めることができ、位相差と振幅比を測定すれば、液体もしくは気体の熱伝導率および比熱を容易に求めることが出来る。尚、比熱と熱伝導率が既知の標準液体または標準気体を測定プローブ23の較正用として用意し、測定値を較正することが必要である。
【0034】
また、被測定試料3の熱拡散率の測定と同時にこの試料3の示差熱分析を行うことが可能であり、この場合には、温度コントローラ2で昇温・冷却が制御された炉1内の被測定試料3の抵抗式温度計を図12に示すようにブリッジ回路26で構成し、直流電源12に対して被測定試料3の他面の薄膜7と導電性の示差熱分析用標準物質からなる薄い標準薄膜27とを電気抵抗として直列に接続し、該ブリッジ回路26の電圧計28を演算器15に接続する。この場合、薄膜7から直流変化成分と交流変化成分を同時に検出することができ、被測定試料3の昇温・冷却中に融解などの吸発熱を伴う相転移が生じると、被測定試料3と標準薄膜27との間に温度差が生じ、その差を電圧計28で測定し、その温度差を演算器15で積分することにより被測定試料3の示差熱分析を行える。すなわち、薄膜7から検出される電圧変化をその抵抗の絶対値である直流変化成分と、温度波による抵抗値の位相変化である交流変化成分が同時に測定されるから、温度環境が同一となり正確な熱分析を行える。
【0035】
【実施例】
実施例1
厚さ26ミクロンのポリエチレンの薄膜の被測定試料3の両面に、図9に示す構成の、片面に金を200オングストロームの厚さでスパッタして薄膜6、7を形成したガラス製の基板4、5を密着させ、これを図6の装置の温度コントローラ2により27℃一定に保持した炉1に収容し、薄膜6に電源10から周波数62Hzでデューティ比が50%の矩形波を与えた。該薄膜6、7の抵抗は50Ωである。この場合、各矩形波の電圧及び他方の薄膜7で検出される温度波を11次の高調波にフーリエ変換器17で分解した。そして各高調波についての位相差を前記関係式に基づき演算器15で算出したプロットは図13の如くとなった。比較のために従来のサイン波の周波数を変えて測定した周波数の平方根〜位相差のプロットを同図に併記した。本発明の方法により得られたプロットを結ぶ直線Aの勾配すなわち熱拡散率は、サイン波の直線Bと平行しており、正しい熱拡散率が求められていることがわかる。
【0036】
実施例2
図12の装置を使用してC25(ノーマルパラフィン)の熱拡散率と示差熱分析を行った。この場合、ガラス基板5にはNiの薄膜7を形成し、基板4には金の薄膜6を形成した。また、ガラス基板31に標準物質薄膜27としてNiの薄膜を形成した。炉1の温度は15〜95℃に変化させ、ヒータとなる薄膜6への投入電力を5種に変えた結果は図14の通りであり、各種熱物性を同時測定可能とするためには0.06W/mm2程度が最適電力であることがわかる。尚、熱拡散率の結果については省略した。
【0037】
実施例3
図10に示した測定プローブ23を使用して空気と流動パラフィン(流パラ)の熱拡散率、熱伝導率を求めた。この測定の較正のために熱伝導率および熱拡散率が判明しているエタノール及びトルエンを基準物質として用意した。測定装置は図6と同じもので、同図の被測定試料と基板の代わりに測定プローブ23が設けられ、その各リード線は電源とフーリエ変換器、直流電源、ロックインアンプなどに接続される。測定は、まず図11に示した空の容器内に測定プローブ23を入れ、実施例1の場合と同様に矩形波の周波数25Hzの交流電流を投入し、温度波を測定しフーリエ変換して位相差を求め同時に振幅比を求めた。位相差からは空気、流動パラフィンおよびエタノールの熱拡散率が実施例1の場合と同様にして求まる。この測定の際、交流電流の通電量を次第に増加させると図15の振幅比の直線的プロットCが求まる。そして容器に流動パラフィンを入れ同様の測定を行うと、直線的プロットDが求まり、容器にエタノールを入れて同様の測定を行うと直線的プロットEが求まる。そしてこれらの直線的プロットC、Dの勾配と直線的プロットEの勾配の比を求め、位相差から求まる熱拡散率との関係式から体積比熱Cおよび熱伝導率λが求められる。
【0038】
この場合、空気の熱拡散率は位相差から2.2×10-5m2/sと算出され、エタノールに対する空気の勾配の比は1.6であるから、体積比熱は1.2×103kg/K・m・s2と求まり、熱伝導率は0.026W/m・kと求まる。また、流動パラフィンの熱拡散率は位相差から0.64×10-7m2/sと算出され、エタノールに対する流動パラフィンの勾配の比は0.94であるから、体積比熱は2.2×106kg/K・m・s2と求まり、熱伝導率は0.14W/m・kと求まる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように本発明の方法によるときは、被測定試料の片面の薄膜に任意波形の交流電力を与えて発熱させ、該被測定試料の他面の薄膜で測定される温度波の電圧をn次の高調波に分解するとともにその各次の高調波の波形について該任意波形に対する振幅比および位相差を求め、求めた振幅比および位相差から該試料の熱拡散率や熱伝導率、熱浸透率或いは体積比熱の熱物性を求めるようにしたので、1度の測定で短時間に熱物性を求めることができると共に気体の熱拡散率、熱伝導率を測定でき、融解または凝固過程の固体と液体の混合状態の試料の熱物性を連続的に測定でき、さらに、広い厚さ範囲の被測定試料の熱物性を測定できる効果があり、請求項3,4の装置によれば本発明の方法を適切に実施でき、請求項6の構成とすることにより、示差熱分析も熱拡散率などの熱物性の測定と同時に測定することが可能になる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の熱拡散率測定方法の分解説明図
【図2】図1の測定部の側面図
【図3】従来の熱拡散率測定装置の説明図
【図4】従来の装置により測定される位相差〜周波数の関係図
【図5】従来の測定可能な多層試料の側面図
【図6】本発明の装置の説明図
【図7】本発明の方法に使用した基板の斜視図
【図8】本発明の方法に使用される矩形波の線図
【図9】本発明の方法に使用した他の基板の斜視図
【図10】本発明の流体の熱物性測定用の測定プローブの斜視図
【図11】図10の測定プローブの使用状態の斜視図
【図12】本発明の熱物性及び示差熱分析の同時測定装置の説明図
【図13】本発明による測定例の線図
【図14】本発明による示差熱分析の1例の線図
【図15】本発明による流体の熱分析例の線図
【符号の説明】
3 被測定試料、4・5・31 基板、6・7 薄膜、10 交流電源、11 ファンクションシンセサイザー、14 ロックインアンプ、15 演算器、16任意波形、17 フーリエ変換器、23 測定プローブ、26 ブリッジ回路、27 標準薄膜、28 電圧計、
Claims (6)
- 薄い難導電性の被測定試料の片面に交流電力を与えて交流熱を発生させ、該交流熱による該試料の他面の波状の温度変化を抵抗式温度計の電圧の変化により測定し、与えた交流電力の波形と測定した電圧の波形の位相差に基づき該試料の熱拡散率等の熱物性を算出する測定方法に於いて、該交流熱を一定周波数の任意波形の交流電力を与えて発生させ、測定される電圧の波形をn次の高調波成分に分解するとともにその各次の高調波の波形について該任意波形に対する振幅比および位相差を求め、求めた振幅比および位相差から該試料の熱拡散率や熱伝導率、熱浸透率或いは体積比熱の熱物性の少なくとも1つを求めることを特徴とする熱物性測定方法。
- 上記任意波形は0より大きく1より小さいデューティ比をもつ矩形波で、上記の分解をフーリエ変換により行うことを特徴とする請求項1に記載の熱物性測定方法。
- 薄い難導電性の被測定試料の両面に導電性の薄膜を形成若しくは密着させ、その片面の薄膜に交流電力を与えて交流熱を発生させる電源を接続し、該試料の他面の薄膜によりこれを電気抵抗とする抵抗式温度計を構成し、該抵抗式温度計の出力部にその出力波形と交流電力の波形の振幅幅および位相差を算出して熱拡散率、熱伝導率、体積比熱或いは熱浸透率のうちの少なくとも1つの熱物性を算出する演算器をロックインアンプを介して接続した熱物性測定装置に於いて、該電源を任意波形の交流電力を発生する電源で構成し、該抵抗式温度計の出力部にその出力波形をn次の高調波成分に分解するフーリエ変換器を接続し、該フーリエ変換器を介して該演算器に接続したことを特徴とする熱物性測定装置。
- 上記抵抗式温度計を、上記被測定試料の他面の薄膜と導電性の示差熱分析用標準物質からなる薄い標準薄膜とを直流電源に対して直列に接続したブリッジ回路を備えた抵抗式温度計で構成し、該ブリッジ回路の電圧計にその測定値をもとに上記被測定試料の吸発熱を算出する演算器を接続し、該被測定試料および標準薄膜を温度制御された炉内に収容したことを特徴とする請求項3に記載の熱物性測定装置。
- 熱拡散率と熱伝導率が既知の非導電性の薄板の両面に導電性の薄膜を形成した測定プローブを流体の被測定試料に浸漬けし、該薄板の片面の薄膜に一定周波数の任意波形の交流電力を与えて交流熱を発生させ、該交流熱により該薄板の他面に発生する波状の温度変化を該他面の薄膜の電気抵抗変化による電圧の変化として測定する際にその電圧の波形をn次の高調波成分に分解してその各次の高調波の波形について該任意波形に対する振幅比および位相差を求め、求めた振幅比および位相差に基づき熱拡散率や熱伝導率、体積比熱および熱浸透率の熱物性の少なくとも1つを算出し、その算出値を該測定プローブによりその熱物性値が既知の標準物質を測定して較正することを特徴とする流体の熱物性測定方法。
- 熱拡散率と熱伝導率が既知の非導電性の薄板の両面に導電性の薄膜を形成した測定プローブの片面の薄膜に、任意波形の交流電力を該片面の薄膜に与えて交流熱を発生させる電源を接続し、該測定プローブの他面の薄膜によりこれを電気抵抗とする抵抗式温度計を構成し、該抵抗式温度計の出力部にその出力波形と交流電力の波形の振幅比および位相差を算出して熱拡散率、熱伝導率、体積比熱或いは熱浸透率のうちの少なくとも1つの熱物性を算出する演算器をロックインアンプを介して接続した熱物性測定装置に於いて、該電源を任意波形の交流電力を発生する電源で構成し、該抵抗式温度計の出力部にその出力波形をn次の高調波成分に分解するフーリエ変換器を接続し、該フーリエ変換器を介して該演算器に接続したことを特徴とする流体の熱物性測定装置。
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