JP4658366B2 - 熱物性測定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱物性測定装置及び熱物性測定方法に関し、特に、半導体デバイスなどに用いられる絶縁薄膜の熱伝導率を測定する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体デバイスなどに用いられる絶縁薄膜の厚さ方向の熱伝導率を求める方法として、薄膜が形成された試料を交流加熱し、その温度変化から薄膜の熱伝導率を求める3ω法という方法が知られている。
【0003】
以下で、3ω法について図面を参照しながら説明する。
図9、図10の符号140に、3ω法に用いられ、測定対象となる薄膜が形成された試料を示す。図9は試料140の平面図であり、図10は図9のX−X線断面図である。この試料140は、シリコン等の基板141の表面に測定対象となる絶縁性の薄膜142が形成され、その表面には、長さ1mm、幅10μm、厚さ20nmの幅狭の帯状の金属薄膜143と、金属膜からなる四個の接続端子1441〜1444とが配置されている。四個の接続端子1441〜1444は金属薄膜143の長手方向に沿って列設されており、各接続端子1441〜1444と金属薄膜143とは、薄膜142表面に形成されたプローブ1451〜1454により電気的に接続されている。
【0004】
かかる試料140を用いて、試料140表面に形成された薄膜142の厚さ方向の熱伝導率を測定するには、まず、交流電源103と測定器104とを用意し、図13に示すように、四個の接続端子1441〜1444のうち、両端の接続端子1441、1444に交流電源103を接続し、それらの間の接続端子1442、1443に測定器104を接続する。図13は測定状態を示す平面図であり、図14は図13のZ−Z線断面図である。
【0005】
この状態で交流電源103を起動すると、金属薄膜143に、一定電流で周波数ωの交流電圧が印加される。すると、金属薄膜143の電気抵抗により金属薄膜143にジュール熱が発生する。かかるジュール熱により金属薄膜143は発熱する。ジュール熱によって金属薄膜143の温度は上昇するが、ジュール熱は、図14の符号170にその熱流を示すように、薄膜142を介して基板141へと逃げるので、金属薄膜143の温度上昇は、基板141と薄膜142にどれほど熱が逃げるかに依存する。
【0006】
金属薄膜143に一定電流の電圧が印加されると、接続端子1412、1443の間には、金属薄膜143の電気抵抗に応じた一定電圧が生じる。また、金属薄膜143の温度変化により金属薄膜143の電気抵抗が変化すると、その変化分を含めた電圧が接続端子1412、1443の間に生じる。
【0007】
上述したように、金属薄膜143に周波数ωの交流電圧が印加されて温度が上昇すると、金属薄膜143の温度上昇の周波数は2ωとなり、この2ωが交流電圧の周波数ωに重畳され、2ω+ω=3ωの周波数成分と、2ω−ω=ωの周波数成分とが生成される。接続端子1412、1443間に生じた電圧は、これらの周波数成分3ω、ωを含んでおり、この電圧が測定器104に入力される。測定器104の内部には、図示しない検波器が設けられており、接続端子1412、1443間に生じた電圧を検波して、周波数3ωの成分のみを抽出する。
【0008】
測定器104は、抽出された周波数3ωの電圧から、その電圧に応じた金属薄膜143の温度を求めるように構成されている。金属薄膜143の温度は上昇するが、試料140は図示しない冷却器に接触しており、金属薄膜143の温度は所定温度以上には上昇せず、ほぼ一定の温度で安定して、熱系が定常状態になるようになっている。熱系が定常状態になり、金属薄膜143の温度がほぼ一定値で安定したら、その際の金属薄膜143の温度を求める。
【0009】
次いで、上述した測定と同様の測定を、図11、図12の符号150に示す試料について行う。図11は試料150の平面図であり、図12は図11のY−Y線断面図である。この試料150は、図9、図10の試料140とほぼ同様の構成であるが、基板141の表面に薄膜142が形成されておらず、上述した金属薄膜143、接続端子1441〜1444及びプローブ1451〜1454が直接基板141の表面に形成された点で試料140と異なる。このように、薄膜142が設けられていない試料150を用意し、その金属薄膜143に周波数ωの交流電圧を印加する。基板141は上述したようにシリコンからなり、電気抵抗は高いので、金属薄膜143に交流電圧を印加して電流を供給しても、その電流は金属薄膜143にしか流れない。こうして、上述した試料140の測定と同様に、金属薄膜143に交流電圧を印加し、試料150の熱系が定常状態に達したら、その状態での金属薄膜143の温度を求める。
【0010】
以上のようにして、薄膜が形成された試料140と薄膜が形成されていない試料150とについて、金属薄膜143の温度が求められたら、以下のようにして熱伝導率を求める。
【0011】
最初に、薄膜が形成されていない試料150について熱伝導状態を解析する。
図14に示すように、金属薄膜143が発熱することで生じるジュール熱の熱流170は、基板141内部では、金属薄膜143から、その周囲の縦方向及び横方向へと二次元的に流れるものとすることができるので、二次元の熱流モデルで扱うことができる。この場合の熱伝導方程式の解は、
【0012】
【数1】
Figure 0004658366
【0013】
で示される。
【0014】
上述したように、金属薄膜143の幅はごく小さく、b<1であり、上式(1)は、b<1のときには
【0015】
【数2】
Figure 0004658366
【0016】
と展開することができる。なお、ここでηはη=0.923である。こうして求められた上式(2)が、上式(1)の近似解となる。以上のようにして、温度振幅が求められる。
【0017】
次に、薄膜142が形成された試料140について熱伝導状態を解析する。この試料140では、薄膜142を単なる熱抵抗として扱い、かつ薄膜142はごく薄いため、薄膜142内部を流れる熱流は金属薄膜143から基板141の底面へと直線的に流れるものとしており、薄膜142を流れる熱流について一次元熱流モデルを用いている。すると、試料140についての熱伝導方程式の解は、
【0018】
【数3】
Figure 0004658366
【0019】
で示される。上式(2)、(3)より、薄膜142の内部における熱伝導率λfは、
【0020】
【数4】
Figure 0004658366
【0021】
で示される。なお、上式(4)でΔTres、ΔTsresは、それぞれac温度ΔT、ΔTsの振幅(in phase)を示している。ここでac温度ΔT、ΔTsとは、試料140、150において定常状態における金属薄膜143のac温度である。
以上のようにして、薄膜142内部における熱伝導率λfを求めている。
【0022】
しかしながら、上述した3ω法では、以下に示すような問題が生じていた。
まず、3ω法においては、上述したように狭い幅の金属薄膜143から放出される熱を解析するために二次元熱流モデルを用いている。二次元熱流モデルの熱伝導方程式の解は複雑であるため、厳密解を求めることは出来ず、近似解を得ることになる。従って、熱伝導方程式の解が厳密でないため、熱伝導率λfの測定精度が低くなってしまう。
【0023】
また、試料140の解析においては、実際には熱流が水平面内にも流れている薄膜142内部において、熱流が鉛直方向のみに流れるものとして扱い、一次元熱流モデルを用いているので、その分の誤差も、測定精度の低下に影響する。
【0024】
また、金属薄膜143に周波数ωの交流電圧を印加すると、交流電圧の高調波成分のうち周波数3ωの成分が、測定器104に入力される電圧の周波数3ωの成分と干渉してしまうので、交流電圧の周波数ωをあまり高くすると干渉の影響が大きくなり、精度良い温度測定ができなくなってしまうという問題があった。
実際に精度良く測定可能な周波数ωの上限は10kHz程度であった。
【0025】
さらに、上述した二種類の試料140、150を形成する際に、各試料140、150ごとに、フォトリソグラフィ法等の方法により微細パターンの金属薄膜143や、接続端子1441〜1444やプローブ1451〜1454等を形成する必要があったため、多大な費用と手間がかかってしまっていた。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、薄膜の熱伝導率を精度良く測定することができる技術を提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項記載の発明は、熱物性測定方法であって、第一の基板の表面に測定対象の絶縁性薄膜が形成され、前記絶縁性薄膜の表面に第一の金属薄膜が形成された第一の試料と、第二の基板の表面に第二の金属薄膜が形成された第二の試料を用い、前記第一、第二の金属薄膜に交流電圧を印加して発熱させ、前記第一、第二の金属薄膜から前記第一、第二の基板にそれぞれ流れる熱流を発生させ、前記第一、第二の金属薄膜の温度を上昇させた後、熱定常状態にした状態で前記第一、第二の金属薄膜にそれぞれレーザ光を照射し、反射光の強度から、前記第一の金属薄膜の第一の温度と前記第二の金属薄膜の第二の温度とを測定し、前記第一、第二の温度の差から、前記絶縁性薄膜の熱伝導率を求める工程を有する。
請求項記載の発明は、請求項記載の熱物性測定方法であって、前記第一、第二の基板にはシリコン基板を用いる。
請求項記載の発明は、請求項又は請求項のいずれか1項記載の熱物性測定方法であって、前記第一、第二の金属薄膜の幅は、前記レーザ光のスポット径の十倍以上に広くされている。
請求項記載の発明は、請求項乃至請求項のいずれか1項記載の熱物性測定方法であって、複数の測定位置において、前記第一、第二の金属薄膜の温度を測定する。
【0028】
本発明の熱物性測定装置によれば、通電手段で測定対象物に交流電圧を印加して発熱させ、照射手段で測定対象物に照射された光の反射光を光検出手段で検出し、その検出結果に基づいて、測定手段で測定対象物の温度を求めている。
【0029】
このように本発明では、測定対象物である金属薄膜に交流電圧を印加して加熱させている点では従来と同様であるが、金属薄膜の両端に現れる電圧を測定して電気的に金属薄膜の温度を求めていた従来とは異なり、金属薄膜の表面に光を照射して反射光を検出することで、光学的に測定対象物の温度を求めているので、従来のように、加熱するために印加する交流電圧と、測定する電圧とが干渉することはないので、従来と異なり印加する交流電圧の周波数に上限はなく、幅広い周波数範囲の交流電圧を印加して温度測定をすることができる。
【0030】
なお、本発明の熱物性測定装置において、光をレーザ光としてもよい。
また、本発明の熱物性測定装置において移動手段を設け、測定対象物を、照射手段又は光検出手段のいずれか一方又は両方に対して相対的に移動させられるように構成してもよい。このように構成することにより、光を照射する箇所を移動させ、測定対象物中の複数箇所の温度などを測定することができる。
【0031】
また、本発明の熱物性測定方法によれば、基板の表面に絶縁性の薄膜を形成し、薄膜表面に幅広の金属薄膜を形成して測定対象物を形成し、その後、金属薄膜表面の測定位置に、例えばレーザ光をスポット状に照射し、その反射光を検出して、測定位置における金属薄膜の温度を求めている。
【0032】
このように、幅広の金属薄膜の測定位置に光をスポット状に照射してその測定位置における温度を求めると、金属薄膜に交流電圧が印加されることで生じるジュール熱は、薄膜を介して基板内部に流れるが、ごく小さい測定位置においては、その熱流はほとんど金属薄膜から基板裏面へと一直線に流れるものとすることができるので、簡単な一次元熱流モデルを用いて熱伝導状態を解析することができる。このため、熱伝導方程式やその解が簡単になり、二次元熱流モデルを用いて複雑な解の近似解を求めなければならなかった従来に比して、精度良く熱伝導などの熱物性を測定することができる。
【0033】
なお、本発明の熱物性測定方法において、複数の測定位置において、金属薄膜の温度を求めるように構成してもよい。このように構成することにより、金属薄膜の複数位置における温度を求め、面内における温度分布を求めることができる。また、各測定位置における温度から、薄膜の熱伝導率を測定する場合には、各測定位置における薄膜の熱伝導率の面内分布を求めることもできる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下で図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1の符号1に、本発明の一実施形態の熱物性測定装置を示す。
この熱物性測定装置1は、測定室2を有している。
【0035】
測定室2の内部底面には、XYステージ23が設けられている。XYステージ23の表面は平坦にされ、後述する試料を載置することができるようになっている。このXYステージ23は移動手段の一例であって、測定室2外部に配置された移動制御装置25に接続されており、移動制御装置25を駆動すると、試料を載置した状態で水平面内に移動することができるように構成されている。
【0036】
測定室2の内部上方には、レーザ照射装置12が配置されている。このレーザ照射装置12は、照射手段の一例であって、半導体レーザ光源3と、集光レンズ4とを有しており、半導体レーザ光源3を起動して発光させると、そのレーザ光が集光レンズ4で集光された後、XYステージ23の表面の所定位置にスポット状に照射されるように構成されている。
【0037】
かかる構成の測定装置1を用いて、絶縁薄膜の熱伝導率を求める方法について以下で説明する。
【0038】
図2、図3の符号40に、測定対象となる絶縁薄膜が形成された試料を示す。
図2は試料40の平面図であり、図3は図2のA−A線断面図である。この試料40は、シリコン等の基板41の表面に測定対象である絶縁性の石英薄膜42が形成され、その表面には、長さ10mm、幅3mm、厚さ20nmのニッケルから成る幅広の帯状の金属薄膜43が設けられている。
【0039】
かかる試料40をまず測定室2内に入れ、XYステージ23の表面に載置する。測定室2内部には、二本のプローブ241、242が設けられており、試料40がXYステージ23の表面に載置されたら、金属薄膜43の両側の位置でプローブ241、242が金属薄膜43上に立てられ、金属薄膜43の表面に接触する。プローブ241、242は、測定室2の外部に配置された交流電源21に接続されており、プローブ241、242と金属薄膜43が接触した後に交流電源21を起動すると、金属薄膜43に周波数ωの交流電圧が印加される。
【0040】
すると、金属薄膜43の電気抵抗により金属薄膜43にジュール熱が発生する。このジュール熱は交流電圧により交流的に発生する。かかるジュール熱により、金属薄膜43は昇温するが、発生したジュール熱は、図8の符号70にその熱流を示すように、金属薄膜43から石英薄膜42を通って基板41へと逃げるので、金属薄膜43の温度変化は、基板41と石英薄膜42の熱伝導状態に依存する。
【0041】
交流電圧が金属薄膜43に印加されたら、半導体レーザ光源3を発光させ、XYステージ23の表面に向けてレーザ光を照射する。XYステージ23の表面には試料40が配置されているので、レーザ光は試料40の表面に照射される。このときレーザ光の試料40表面におけるスポット径は、金属薄膜43の幅の十分の一以下になっており、ここでは100μmとしている。照射されたらXYステージ23を水平移動させ、金属薄膜43のほぼ中心の所定位置にレーザ光が照射されるようにする。その状態の平面図を図6に示し、図8、図7に図6のC−C線断面図とD−D線断面図をそれぞれ示す。図6の符号80は、レーザ光が照射された領域を示している。
【0042】
こうして照射されたレーザ光は、金属薄膜43で反射されるが、金属薄膜43の反射率は、金属薄膜43の温度により変化し、その反射率の変化により、反射光の強度も変化する。測定室2の内部上方には光検出装置13が配置され、反射光は、この光検出装置13方向に反射されるようになっており、光検出装置13は、後述するように温度に応じて変化する反射光の強度に応じた大きさの電圧を生成している。
【0043】
光検出装置13は、光検出手段の一例であって、集光レンズ5と、光学フィルタ6と、受光装置7とを有しており、反射光は集光レンズ5で集光され、光学フィルタ6で光学的なノイズが除去された後に、受光装置7に受光されるようになっている。受光装置7はPINフォトダイオードとI−V増幅器を備え、反射光はこのPINフォトダイオードで電流に変換され、I−V増幅器で電圧変換された後に増幅され、反射光の強度に応じた大きさの電圧が生成される。
受光装置7は、測定室2の外部に配置された測定装置22に接続されており、反射光の強度に応じた電圧は測定装置22に出力される。
【0044】
測定装置22は測定手段の一例であって、同期検波器33と信号発生器34と演算装置35とを有しており、反射光の強度に応じた大きさの電圧は、同期検波器33に出力される。同期検波器33には、信号発生器34から周波数2ωの正弦波交流信号が出力されており、この交流信号が反射光の強度に応じた大きさの電圧と乗算されることにより、反射光の強度に応じた大きさの電圧から、周波数2ωの成分が抽出され、演算装置35に出力される。
【0045】
演算装置35は、入力された電圧から、その電圧に応じた金属薄膜43の温度を求めるように構成されている。金属薄膜43の温度は上昇するが、図示しない冷却器により、金属薄膜43の温度は所定温度以上には上昇せず、ほぼ一定の温度で安定して、熱系が定常状態になるようになっている。熱系が定常状態になり、金属薄膜43の温度がほぼ一定値で安定したら、演算装置35は金属薄膜43の温度を求める。
【0046】
試料40について、定常状態における金属薄膜43の温度が求められたら、上述した測定と同様の測定を、図4、図5の符号50に示す試料について行う。図4は試料50の平面図であり、図5は図4のB−B線断面図である。この試料50は、図4、図5の試料40とほぼ同様の構成であるが、基板41の表面に石英薄膜42が形成されておらず、上述した金属薄膜43が直接基板41の表面に形成された点で試料40と異なる。このように、石英薄膜42が設けられていない試料50に周波数ωの交流電圧を印加する。
【0047】
基板41は上述したようにシリコンからなり、電気抵抗は高いので、金属薄膜43に交流電圧を印加して電流を供給しても、その電流は金属薄膜43にしか流れない。こうして、上述した試料40の測定と同様に、金属薄膜43に交流電圧を印加し、定常状態における金属薄膜43の温度を求める。
こうして、薄膜が形成された試料40と薄膜が形成されていない試料50とについて定常状態の温度が求められたら、以下に示すようにして熱伝導率を求める。
【0048】
最初に、薄膜が形成されていない試料50について熱伝導状態を解析する。この試料50においては金属薄膜43の幅は広く、しかも、レーザ光が照射されて温度変化が測定される個所は、金属薄膜43のごく狭い領域であって、しかも金属薄膜43のほぼ中心の領域であるため、この測定個所においては、ジュール熱の熱流は金属薄膜43から基板41の裏面方向へと鉛直方向に流れると考えてよく、熱は一次元的に流れるとすることができ、一次元熱流モデルを用いることができる。この一次元熱流モデルにおける熱伝導方程式の解は、
【0049】
【数5】
Figure 0004658366
【0050】
で示される。
【0051】
これに対し、石英薄膜42が形成された試料40については、上述したように、測定個所における熱流は鉛直方向に一次元的に流れるので、一次元熱流モデルを用いることができ、また、石英薄膜42は単なる熱抵抗として扱うことができる。この場合における熱伝導方程式の解は、
【0052】
【数6】
Figure 0004658366
【0053】
で示される。上式(5)、(6)より、石英薄膜42内部の熱伝導率λfは、
【0054】
【数7】
Figure 0004658366
【0055】
で示される、なお、上式(7)でΔTres、ΔTsresは、それぞれac温度ΔT、ΔTsの振幅(in phase)を示している。ここでac温度ΔT、ΔTsとは、試料40、50においてそれぞれ定常状態に達したときの金属薄膜43のac温度を示す。
【0056】
このように、本実施形態では、幅広い金属薄膜43の表面の、しかもほぼ中央の位置に、スポット径の小さいレーザ光を照射して、その小さな照射領域における金属薄膜43の温度を測定しているので、一次元熱流モデルを用いることができる。従って、熱伝導方程式の解が簡単になり、しかも、二次元熱流モデルを用いていた従来と異なり、近似解でなく厳密解を求めることができるので、近似解を用いて測定結果としていた従来に比して、測定精度が高くなる。
【0057】
また、光学的に温度変化を測定しているので、金属薄膜に周波数ωの交流電圧を印加して加熱し、その金属薄膜に生じる電圧を電気的に測定していた従来と異なり、金属薄膜に印加する交流電圧の周波数を高くしても、測定される信号との間で干渉を起こすことがない。従って、印加する交流電圧の周波数には上限がなく、従来に比して高周波の交流電圧を印加して測定することができる。
【0058】
さらに、金属薄膜43は、比較的幅が広く形状も簡単な短冊状に形成されているので、フォトリソグラフィ法等で細密な金属薄膜を形成していた従来と異なり、例えばスクリーン印刷等の簡単な方法でも形成可能であるため、従来に比して簡単でかつ安価に試料を製造することができる。
【0059】
以上は、測定個所が一箇所の場合における薄膜の熱伝導率の測定について説明したが、XYステージを移動させ、金属薄膜43の長手方向の中心線に沿った複数の箇所にレーザ光を照射し、それぞれの箇所における温度を上述したように求め、各測定個所に熱伝導率λfを求めることにより、薄膜の厚さ方向の熱伝導率λfの面内分布を求めることもできる。
【0060】
また、本実施形態では、試料表面におけるレーザ光のスポット径を100μmとしているが、本発明のレーザ光のスポット径はこれに限られるものではなく、金属薄膜43の幅の十分の一以下になっていればよい。
【0061】
また、XYステージ23を設けて、試料40、50をレーザ照射装置12や光検出装置13に対して移動させることにより、試料40、50表面でレーザ光を照射する位置を変えているが、本発明はこれに限られるものではなく、試料40、50は動かさないままでレーザ照射装置12や光検出装置13を移動させることで、レーザ光を照射する位置を変えてもよい。
【0062】
【発明の効果】
熱伝導率を精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱物性測定装置を説明する図
【図2】本発明の熱物性測定方法に用いられる試料を説明する第1の平面図
【図3】本発明の熱物性測定方法に用いられる試料を説明する第1の側面図
【図4】本発明の熱物性測定方法に用いられる試料を説明する第2の平面図
【図5】本発明の熱物性測定方法に用いられる試料を説明する第2の側面図
【図6】本発明の熱物性測定方法を説明する平面図
【図7】本発明の熱物性測定方法を説明する側面図
【図8】本発明の熱物性測定方法における熱流を説明する図
【図9】従来の熱物性測定方法に用いられる試料を説明する第1の平面図
【図10】従来の熱物性測定方法に用いられる試料を説明する第1の側面図
【図11】従来の熱物性測定方法に用いられる試料を説明する第2の平面図
【図12】従来の熱物性測定方法に用いられる試料を説明する第2の側面図
【図13】従来の熱物性測定方法を説明する図
【図14】従来の熱物性測定方法における熱流を説明する図
【符号の説明】
1……熱物性測定装置 11……発振器 12……レーザ照射装置(照射手段) 13……光検出装置(光検出手段) 21……交流電源(通電手段)
22……測定装置(測定手段) 23……XYステージ(移動手段)

Claims (4)

  1. 第一の基板の表面に測定対象の絶縁性薄膜が形成され、前記絶縁性薄膜の表面に第一の金属薄膜が形成された第一の試料と、
    第二の基板の表面に第二の金属薄膜が形成された第二の試料を用い、
    前記第一、第二の金属薄膜に交流電圧を印加して発熱させ、前記第一、第二の金属薄膜から前記第一、第二の基板にそれぞれ流れる熱流を発生させ、前記第一、第二の金属薄膜の温度を上昇させた後、熱定常状態にした状態で前記第一、第二の金属薄膜にそれぞれレーザ光を照射し、反射光の強度から、前記第一の金属薄膜の第一の温度と前記第二の金属薄膜の第二の温度とを測定し、
    前記第一、第二の温度の差から、前記絶縁性薄膜の熱伝導率を求める熱物性測定方法。
  2. 前記第一、第二の基板にはシリコン基板を用いる請求項記載の熱物性測定方法。
  3. 前記第一、第二の金属薄膜の幅は、前記レーザ光のスポット径の十倍以上に広くされた請求項又は請求項のいずれか1項記載の熱物性測定方法。
  4. 複数の測定位置において、前記第一、第二の金属薄膜の温度を測定する請求項乃至請求項のいずれか1項記載の熱物性測定方法。
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