JP4093331B2 - 自動二輪車のフレーム構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ステアリング軸が旋回可能に設けられるヘッドパイプを有する自動二輪車のフレームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車のフレームは、例えばステアリング軸が旋回可能に設けられるヘッドパイプを有し、このヘッドパイプの上部に後方に延びるタンクレールの前側を接続し、下部に後方でかつ斜め下方に延びるダウンチューブの前側を接続し、タンクレールの後部とダウンチューブの後部をリヤブラケットを介して接続し、このフレームにエンジンを搭載するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、タンクレールは、例えば外観性を向上させるためにアルミニウム合金で広幅に形成し、ダウンチューブは細幅で目立たないようにして所定の強度が得られるように鉄で形成する場合があり、またダウンチューブを鉄で形成することで低重心化やコスト低減を図る場合がある。
【0004】
このように、ヘッドパイプに接続されるタンクレールとダウンチューブ等のフレーム部材の材質が異なる場合には、ヘッドパイプに溶接で固定することができず、例えばヘッドパイプとタンクレールとを同じ材質で形成して溶接する場合には、ダウンチューブはボルト等によりヘッドパイプに締付固定しなければならず、溶接のように強い接合強度を得ることができなかった。特に、ヘッドパイプと、タンクレール及びダウンチューブ等のフレーム部材との接続部には、走行時に応力が作用する部分であり、強い接合強度が要求される。
【0005】
この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、ヘッドパイプを分割してそれぞれが異なった材料により形成することで、それぞれが異なった材料のフレーム部材をヘッドパイプに溶接可能で強い接合強度を得ることができ、しかも分割部へ作用する応力を小さいものとすることができる自動二輪車のフレームを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0007】
請求項1記載の発明は、『ステアリング軸が旋回可能に設けられるヘッドパイプと、このヘッドパイプの上部より
車両後方に延びるタンクレールと、前記ヘッドパイプの下部より車両後方に延びるダウンチューブとを有する自動二輪車のフレームにおいて、
前記ヘッドパイプは、その上下の軸方向略中間位置にて2分割され、それぞれが異なった材料により形成された上下の分割パイプで形成され、
下側の分割パイプを、上側の分割パイプに連結された構成とし、
前記タンクレールの前端は、前記上側の分割パイプのみに溶接され、
前記ダウンチューブの前端は、前記下側の分割パイプのみに溶接され、
前記タンクレールは、前記上側の分割パイプと同材料とし、
前記ダウンチューブは、前記下側の分割パイプと同材料としたことを特徴とする自動二輪車のフレーム。』である。
【0008】
この請求項1記載の発明によれば、異種の材料を組合せた複合フレームを構成するにあたり、ヘッドパイプの分割パイプとそれぞれの分割パイプに接続されるフレーム部材とを同材料としたことにより、溶接が可能で強い接合強度を得ることができる一方、ヘッドパイプの分割パイプをその上下の軸方向略中間位置にて2分割構造としたので、この分割部へ作用する応力を小さいものとすることができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、『前記上側の分割パイプ及びこれに接続される前記タンクレールの材質を、前記下側の分割パイプ及びこれに接続される前記ダウンチューブより比重の軽い材質としたことを特徴とする請求項1記載の自動二輪車のフレーム』である。
【0010】
この請求項2記載の発明によれば、異種の材料を組合せた複合フレームを構成するにあたり、上側の分割パイプ及びこれに接続されるタンクレールの材質を、下側の分割パイプ及びこれに接続されるダウンチューブより比重の軽い材質とすることで、低重心化を図ることができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、『前記上側の分割パイプ及びこれに接続される前記タンクレールの材質を、アルミニウム合金とし、前記下側の分割パイプ及びこれに接続される前記ダウンチューブの材質を鉄としたことを特徴とする請求項2記載の自動二輪車のフレーム』である。
【0012】
この請求項3記載の発明によれば、異種の材料を組合せた複合フレームを構成するにあたり、タンクレールの外観性を向上させるためにアルミニウム合金で広幅に形成し、またダウンチューブを細幅で目立たないようにして所定の強度が得られるように鉄で形成し、またダウンチューブを鉄で形成することで低重心化やコスト低減を図ることができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、『前記ヘッドパイプの分割部は圧入により連結されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動二輪車のフレーム』である。
【0014】
この請求項4記載の発明によれば、上下の分割パイプを圧入により簡単かつ確実に連結することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、『前記ヘッドパイプの分割部は、上下の分割パイプに対しこれと同心上に形成されたネジによる螺合により連結されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動二輪車のフレーム』である。
【0016】
この請求項5記載の発明によれば、上下の分割パイプをネジによる螺合により簡単かつ確実に連結することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の自動二輪車のフレームの実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は自動二輪車の側面図、図2は自動二輪車のヘッドパイプ部の側面図、図3は自動二輪車のフレーム部の側面図、図4はフレームの平面図、図5はフレームの後部の底面図、図6はフレームの後部の背面図、図7はヘッドパイプの断面図である。
【0018】
この自動二輪車1のフレーム2は、ヘッドパイプ3と、タンクレール4と、ダウンチューブ5と、リヤアームブラケット6と、リヤアーム7を支承するピボット軸8と、シートレール9と、バックステー11とにより構成される。
【0019】
ヘッドパイプ3にはハンドル12のステアリング軸10が装着され、その両側に、ステアリング軸10に固定されたアッパーブラケット13及びアンダーブラケット14を介してフロントフオーク15が装着される。フロントフオーク15には前輪16が軸支され、リヤアーム7には後輪17が軸支されている。
【0020】
左右2本のタンクレール4の前側は、ヘッドパイプ3に接続され、この左右2本のタンクレール4間に燃料タンク18が支持される。この燃料タンク18の後方に隣接してシート19が装着され、このシート19はシートレール9上に配置されている。
【0021】
ダウンチューブ5は、前側チューブ5aと、この前側チューブ5aに接続された左右一対の後側チューブ5bから構成され、前側チューブ5aの前側はヘッドパイプ3に接続されている。ダウンチューブ5の後側チューブ5bの後側と、タンクレール4の後側とにリヤアームブラケット6が接続されている。
【0022】
リヤアームブラケット6は、左右一対の上部ブラケット6aと下部ブラケット6bとを有し、上部ブラケット6aと下部ブラケット6bは溶接されている。左右一対の上部ブラケット6aは、その上側の間に連結ブラケット6cが溶接により連結され、また左右一対の上部ブラケット6aの外側には、接続ブラケット6dが溶接により設けられている。
【0023】
左右一対のタンクレール4の後部4aの内側に、左右一対の上部ブラケット6aの接続ブラケット6dを位置させ、左右一対のタンクレール4の後部4aの外側よりボルト100を接続ブラケット6dに螺着して固定される。
【0024】
下部ブラケット6bの下側の間には、連結パイプ6eが溶接により固定され、この連結パイプ6eに左右一対の後側チューブ5bの後側が溶接により固定されている。また、下部ブラケット6bの下側と、左右一対の後側チューブ5bの後側との間に、側部フレーム6fを溶接して固定されている。
【0025】
連結パイプ6eには、リンクブラケット101が溶接され、このリンクブラケット101と、リヤアーム7のリンクブラケット102との間にリンク機構103が設けられている。リンク機構103には、リヤクッション110の下部110aが支持され、リヤクッション110の上部110bは連結ブラケット6cに設けられた支持ブラケット111に支持されている。
【0026】
リヤアーム7の前側は下部ブラケット6bの間に掛け渡されたピボット軸8に回動可能に支持され、リヤアーム7はリンク機構103、リヤクッション110を介して上下に揺動可能に設けられている。
【0027】
フレーム2のヘッドパイプ3、左右のタンクレール4、ダウンチューブ5及びリヤアームブラケット6で囲まれる空間にエンジン23が配置される。エンジン23は2サイクルエンジンが用いられ、気筒が略鉛直方向に延びるように配置されている。エンジン23の前側と下側は、後側チューブ5bの取付ブラケット120、121に支持され、エンジン23の後側は、リヤアーム7と共にこれらを貫通すると同時に下部ブラケット6bに掛け渡されたピボット軸8に支持されている。
【0028】
エンジン23の上部後側は、リヤアームブラケット6の連結ブラケット6cに設けられた取付ブラケット122に支持され、エンジン23の上部前側は、前側チューブ5aに設けられた取付ブラケット123に支持されている。
【0029】
エンジン23の後側には、気化器130が接続され、この気化器130には吸気管131を介してエアクリーナ132が接続されている。また、エンジン23の前側には、排気管133が接続され、この排気管133はエンジン23の前側で屈曲してエンジン23の側方を通り後方へ延びている。エンジン23の前側上方には、ラジエータ140が前側チューブ5aに取り付けて配置されている。また、左右のタンクレール4には、フロントサイドカバー141がラジエータ140の両側を覆うように取り付けられている。さらに、シートレール9の両側には、リヤサイドカバー142が取り付けられている。
【0030】
この自動二輪車1のフレーム2は、そのヘッドパイプ3をその上下の軸方向略中間位置にて2分割で、それぞれが異なった材料により形成された上下の分割パイプ150,151が連結された構成とし、ヘッドパイプ3の分割部は圧入により連結される。即ち、下側の分割パイプ151は、上下の取付部151a,151bと、この上下の取付部151a,151bに溶接された連結部151cから構成され、上側の分割パイプ150の下部が上部の取付部151aに圧入されている。ヘッドパイプ3の分割部は、圧入により連結され、圧入長さはヘッドパイプ3の応力に応じて任意に設定でき、しかも上下の分割パイプ150,151を圧入による簡単かつ確実に連結することができる。
【0031】
分割パイプ150の上部150a内には、図示しないベアリングが挿着され、下の取付部151b内には、図示しないベアリングが挿着され、これらのベアリングによりステアリング軸10が旋回可能に支持される。
【0032】
左右一対のタンクレール4の前側4bは、上側の分割パイプ150に溶接され、更にタンクレール4の前側4bの内側と上側の分割パイプ150との間に補強プレート160が溶接されて補強されている。
【0033】
また、左右一対のタンクレール4の前側4bには、取付部材161を貫通させて溶接して固定され、取付部材161の頭部161aはタンクレール4の内側に突出している。ダウンチューブ5の前側チューブ5aには、補強パイプ162が溶接され、この補強パイプ162の取付部162aを取付部材161の頭部161aに当てがい、締付ビス163により締付固定されている。
【0034】
それぞれの分割パイプ150,151に接続されるフレーム部材、即ち分割パイプ150とタンクレール4とは同材料とし、分割パイプ151とダウンチューブ5とは同材料としている。このように異種の材料を組合せた複合フレームを構成するにあたり、ヘッドパイプ3の分割パイプ150,151とそれぞれの分割パイプ150,151に接続されるフレーム部材とを同材料としたことにより、溶接が可能で強い接合強度を得ることができる一方、ヘッドパイプ3の分割パイプ150,151をその上下の軸方向略中間位置にて2分割構造としたので、この分割部へ作用する応力を小さいものとすることができる。
【0035】
即ち、フロントフオーク15からステアリング軸10にかかる荷重は、上部のベアリングを介して分割パイプ150に、さらに分割パイプ150からタンクレール4にかかり、一方、ステアリング軸10にかかる荷重は、下部のベアリングを介して分割パイプ151にかかり、さらに分割パイプ151からダウンチューブ5にかかり、このタンクレール4とダウンチューブ5にかかる荷重の方向が逆方向であるため、分割パイプ150と分割パイプ151の分割部へ作用する応力が小さい。
【0036】
また、この実施の形態では、上側の分割パイプ150及びこれに接続されるフレーム部材であるタンクレール4の材質を、下側の分割パイプ151及びこれに接続されるフレーム部材であるダウンチューブ5より比重の軽い材質とし、より具体的には上側の分割パイプ150及びこれに接続されるフレーム部材であるタンクレール4の材質を、アルミニウム合金とし、下側の分割パイプ151及びこれに接続されるフレーム部材であるダウンチューブ5の材質を鉄としている。
【0037】
このように、異種の材料を組合せた複合フレームを構成するにあたり、上側の分割パイプ150及びこれに接続されるフレーム部材の材質を、下側の分割パイプ151及びこれに接続されるフレーム部材より比重の軽い材質とすることで、低重心化を図ることができる。
【0038】
この自動二輪車1のフレーム2は、そのヘッドパイプ3部の組立は、まず分割パイプ150と分割パイプ151とを圧入により接合し、この分割パイプ151にダウンチューブ5の前側チューブ5aを溶接して連結する。次に、前側チューブ5aに補強パイプ162を溶接し、この補強パイプ162をタンクレール4に締付ビス163により締付固定する。このように、前側チューブ5aに補強パイプ162を溶接するときに、溶接火花によりタンクレール4が傷付かないようにしてタンクレール4を分割パイプ150に溶接して組み立てる。
【0039】
図8はヘッドパイプの他の実施の形態を示す断面図である。この実施の形態のヘッドパイプ3の分割部は、分割パイプ150に雌螺子150bが形成され、分割パイプ151の取付部151aに雄螺子151a1が形成されている。このように上下の分割パイプ150,151に対しこれと同心上に形成されたネジによる螺合により連結され、上下の分割パイプ150,151をネジによる螺合により簡単かつ確実に連結することができ、螺合長さはヘッドパイプ3の応力に応じて任意に設定できる。
【0040】
この実施の形態でも、図7に示すヘッドパイプ3部の組立と同様な手順で、先ず上下の分割パイプ150,151をネジによる螺合を行ない、最後に分割パイプ150にタンクレール4を溶接して組み立てることが、さらに上下の分割パイプ150,151の螺合による位置のずれに関係なくタンクレール4を溶接できる点で好ましい。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明では、異種の材料を組合せた複合フレームを構成するにあたり、ヘッドパイプの分割パイプとそれぞれの分割パイプに接続されるフレーム部材とを同材料としたことにより、溶接が可能で強い接合強度を得ることができる一方、ヘッドパイプの分割パイプをその上下の軸方向略中間位置にて2分割構造としたので、この分割部へ作用する応力を小さいものとすることができる。
【0042】
請求項2記載の発明では、異種の材料を組合せた複合フレームを構成するにあたり、上側の分割パイプ及びこれに接続されるタンクレールの材質を、下側の分割パイプ及びこれに接続されるダウンチューブより比重の軽い材質とすることで、低重心化を図ることができる。
【0043】
請求項3記載の発明では、異種の材料を組合せた複合フレームを構成するにあたり、タンクレールの外観性を向上させるためにアルミニウム合金で広幅に形成し、またダウンチューブを細幅で目立たないようにして所定の強度が得られるように鉄で形成し、またダウンチューブを鉄で形成することで低重心化やコスト低減を図ることができる。
【0044】
請求項4記載の発明では、上下の分割パイプを圧入により簡単かつ確実に連結することができる。
【0045】
請求項5記載の発明では、上下の分割パイプをネジによる螺合により簡単かつ確実に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動二輪車の側面図である。
【図2】自動二輪車のヘッドパイプ部の側面図である。
【図3】自動二輪車のフレーム部の側面図である。
【図4】フレームの平面図である。
【図5】フレームの後部の底面図である。
【図6】フレームの後部の背面図である。
【図7】ヘッドパイプの断面図である。
【図8】ヘッドパイプの他の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 自動二輪車
2 フレーム
3 ヘッドパイプ
4 タンクレール
5 ダウンチューブ
10 ステアリング軸
23 エンジン
150,151 上下の分割パイプ
Claims (5)
- ステアリング軸が旋回可能に設けられるヘッドパイプと、このヘッドパイプの上部より車両後方に延びるタンクレールと、前記ヘッドパイプの下部より車両後方に延びるダウンチューブとを有する自動二輪車のフレームにおいて、
前記ヘッドパイプは、その上下の軸方向略中間位置にて2分割され、それぞれが異なった材料により形成された上下の分割パイプで形成され、
下側の分割パイプを、上側の分割パイプに連結された構成とし、
前記タンクレールの前端は、前記上側の分割パイプのみに溶接され、
前記ダウンチューブの前端は、前記下側の分割パイプのみに溶接され、
前記タンクレールは、前記上側の分割パイプと同材料とし、
前記ダウンチューブは、前記下側の分割パイプと同材料としたことを特徴とする自動二輪車のフレーム。 - 前記上側の分割パイプ及びこれに接続される前記タンクレールの材質を、前記下側の分割パイプ及びこれに接続される前記ダウンチューブより比重の軽い材質としたことを特徴とする請求項1記載の自動二輪車のフレーム。
- 前記上側の分割パイプ及びこれに接続される前記タンクレールの材質を、アルミニウム合金とし、前記下側の分割パイプ及びこれに接続される前記ダウンチューブの材質を鉄としたことを特徴とする請求項2記載の自動二輪車のフレーム。
- 前記ヘッドパイプの分割部は圧入により連結されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動二輪車のフレーム。
- 前記ヘッドパイプの分割部は、上下の分割パイプに対しこれと同心上に形成されたネジによる螺合により連結されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の自動二輪車のフレーム。
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