以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
[構成]
図1〜3は、本発明の第1の実施の形態における可変ゲインアンプ回路の具体例を示した図である。
図1の可変ゲインアンプ回路は、差動対をなすトランジスタT1及びT2のそれぞれのゲートが入力Vi+及びVi−(バイアスVB)に接続され、該トランジスタT1及びT2のソースに吸込み電流回路Isが接続され、該トランジスタT1及びT2のそれぞれのドレインに、一端が電源VDDに接続される負荷抵抗RL1及びRL2が接続されて構成される差動アンプの、前記差動対トランジスタT1及びT2のそれぞれのソースと吸込み電流回路Isとの間に、トランジスタT3及びT4のドレイン及びソースを挿入接続し、該トランジスタT3及びT4のゲートにゲイン制御電圧Vgcを接続して構成する。
MOSトランジスタT1及びT2は飽和領域で動作し、MOSトランジスタT3及びT4は線形領域(飽和しづらい短チャンネルMOSが望ましい)で動作をするように、トランジスタT1及びT2とトランジスタT3及びT4のゲート形状を設定してある。
[動作]
図1のMOSトランジスタT1及びT2は飽和領域で動作し、MOSトランジスタT3及びT4は線形領域で動作するように、トランジスタT1及びT2とトランジスタT3及びT4のゲート形状を設定してあるので、MOSトランジスタT1及びT2は差動アンプのアクティブ増幅素子として動作し、MOSトランジスタT3及びT4は、MOSトランジスタT1及びT2のソースに接続される負帰還用抵抗として動作(図1の破線内)する。
MOSトランジスタT1及びT2のトランスファコンダクタンスGm1とゲートとソース間電圧VGS1とは、自身の形状と、自身に流れるバイアス電流(吸込み電流Isの1/2)とにより決定され、該トランジスタのソース電位は、ゲートバイアス電圧VBから前記ゲート・ソース間電圧VGS1を差し引くことで求められ、固定の電圧Vs1になる。即ち、
Vs1=VB−VGS1
である。
一方、MOSトランジスタT3及びT4は、ドレイン・ソース間の電位差がほぼゼロになるようなゲートサイズ設定により線形領域動作、すなわち、可変抵抗素子Rs3及びRs4として動作(通常、RS3=Rs4)する。その抵抗値Rs3は、自身の形状と自身のゲートとソース間に印加される電圧VGS3とにより決定される。該ゲート・ソース間電圧VGS3は、前記ゲイン制御電圧Vgcから前記固定の電圧Vs1を差し引いた値となる。即ち、
VGS3=Vgc−Vs1=Vgc−(VB−VGS1)=Vgc−VB+VGS1
である。したがって、ゲイン制御電圧Vgc(あるいは、ゲートバイアス電圧VB)を変化させることによりトランジスタT3及びT4のゲート・ソース間電圧VGS3を変化させることができ、その結果、トランジスタT3及びT4の抵抗Rs3及びRs4を変化させることができる。
以上、トランジスタT1〜T4を含めた差動回路のトランスファコンダクタンスGm及び差動電圧ゲインAは、
Gm=1/(Rs3+Rs4+2/Gm1)
A=Gm×(RL1+RL2)=(RL1+RL2)/(Rs3+Rs4+2/Gm1)
となり、ゲイン制御電圧Vgc(あるいは、ゲートバイアス電圧VB)を変化させることによりトランスファコンダクタンスGm及び差動電圧ゲインAを変化させることができ、該差動回路は可変ゲインアンプとして動作する。
図2の可変ゲインアンプ回路は、図1の回路の吸い込み電流回路Isを2つに分割(電流値1/2)して、トランジスタT1及びT2のそれぞれのソースに接続した構成で、基本的には図1と同様に動作する。図2の回路では、トランジスタT3及びT4にバイアス電流が流れないので、該トランジスタのソース・ドレイン間線形動作領域としては±両電圧領域が使えるので、可変インピーダンス動作の線形性が良く入出力間の線形性が良好になる。
図1及び図2の可変ゲインアンプ回路では、トランジスタT3及びT4のゲート・ソース間電圧VGS3をゼロに近づけると、前記抵抗Rs3及びRs4が限りなく増大し、前記差動電圧ゲインAが限りなくゼロに近づいていくが、図3のように、前記トランジスタT3及びT4で構成する可変抵抗に並列に固定抵抗Rsを接続しておくと、該抵抗と前記トランジスタT3及びT4の並列合成抵抗は、固定抵抗値Rsより小さくならないので、この構成の可変ゲインアンプは最小ゲインを持つことになる。
図1のトランジスタT1及びT2のソース間に、固定抵抗Rsを接続しても同様効果が得られる。
トータルゲイン及び可変ゲイン幅を大きく取れるように可変ゲインアンプを多段接続する構成において、該可変ゲインアンプの入力レベルを最小レベルから大きくしていく場合、各段のゲインを一様に下げるよりも後段側から順にゲインを下げる方が、ゲインを下げると雑音特性に大きな影響がある初段アンプのゲインを確保でき、信号/雑音比が向上する。このような構成にするには、図3のような、最小ゲインを持つ可変ゲインアンプが必要となる。
トランジスタT3及びT4は、可変抵抗として動作すると説明してきたが、現実のMOSトランジスタでは、ゲート・ソース間及びゲート・ドレイン間に容量成分があり、この容量が合成される(直列接続容量)形で、前記可変抵抗に並列接続される。この容量と可変抵抗の時定数で決まる周波数を極として高域ピーキングが生じる。
図3の可変ゲインアンプ回路のように、トランジスタT3及びT4の各ゲートにゲート抵抗RG1及びRG2を接続すると、前記のゲート・ソース間及びゲート・ドレイン間合成容量のピーキング効果を軽減できる。
図2及び図3の可変ゲインアンプ回路のトランジスタT3及びT4は、合成した値が同じであれば、1個のトランジスタに置き換えても良いし、逆に、3個以上複数個を、直列、あるいは、並列接続としても良い。前記のゲート・ソース間及びゲート・ドレイン間合成容量のピーキング効果等を考慮して、適宜な選択設定をする。
図1〜3の可変ゲインアンプ回路例は、N−MOS素子で構成しているが、P−MOSでの構成、P−MOS、N−MOSの混成構成、接合形電界効果素子を用いた構成としても良い。トランジスタT1及びT2に関しては、バイポーラ形トランジスタとしても良い。トランジスタT3及びT4に関しては、N−MOS素子とP−MOS素子とを組みあわせても良い。また、短チャンネル形にすると、最小抵抗値が下げられるし、飽和特性が弱まるか無くなるため、可変抵抗として使える領域が広がる。
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)差動回路が電源とグランド間に立て積みされないので、最小動作電源電圧が下がる。(図4及び図5の構成との比較)
(2)アンプ動作となる差動対トランジスタ(T1とT2)に常に全吸込み電流(Is)を流す構成なので、ゲインを下げても出力ダイナミックレンジが一定で、小さくなることがない。(図6の構成との比較)
(3)ゲインを下げるに伴い、入力の線形入力範囲が広くなる。(図6の構成との比較)
(4)吸い込み電流Isと負荷抵抗RL1及びRL2で決定される出力ダイナミックレンジ範囲内であれば、入出力間の線形性(或いは大小関係の一様性)が保たれる。(図6の構成との比較)
(5)最小ゲインが無限小となる構成も、固定値の最小ゲインを持つ構成も、実現できる。
[第2の実施の形態]
[構成]
図8(a)〜(d)は、本発明の第2の実施の形態に於けるAM変調信号受信回路の具体例を示す図である。
図8(a)のAM変調信号受信回路は、ピーク値入力端子からの入力電圧Vpが内蔵基準値より大なる場合にゲインを下げ、小なる場合にゲインを上げ、このゲインで入力AM変調信号Viを増幅して出力信号Voを出力するゲインコントロールアンプ部GCA−Bと、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力信号Voを包絡線検波する包絡線検波回路SDetと、この包絡線検波回路SDetの出力と基準電圧VR2とを比較して比較結果信号TCOを出力する比較回路Compと、この比較回路Comp出力信号TCOを制御入力として、比較回路Compの出力信号が大振幅入力状態に対応する出力信号の時にゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力信号Voのピーク値を検出する状態となって、この検出ピーク値Vpをゲインコントロールアンプ部GCA−Bのピーク値入力端子に出力し、比較回路Compの出力信号TCOが小振幅入力状態に対応する出力信号に変化した時には、変化直前の検出ピーク値Vpを保持して、この保持検出ピーク値Vpをゲインコントロールアンプ部GCA−Bのピーク値入力端子に出力するピーク検出回路PDetとから構成される。
前述の入力AM変調信号Viは、図7に例示される、バーアンテナLと、同調キャパシターCと、プリアンプPAと、等により生成される。ゲインコントロールアンプ部GCA−Bと、包絡線検波回路SDetの構成は、図7と同様である。
図8(a)のピーク検出回路PDetは、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力信号を整流する整流回路Rec1と、この整流回路Rec1の出力とグランド(或いは電源)間に接続する放電経路用抵抗R1(或いは定電流回路I1としても良い)と、整流回路Rec1の出力に導通端子の一端を接続し、比較回路Compの出力信号TCOを制御入力として、比較回路Compの出力信号TCOが大振幅入力状態に対応する出力の時に導通状態になり比較回路Compの出力信号TCOが小振幅入力状態に対応する出力に変化した時に非導通状態になるトランスファゲートTG1と、このトランスファゲートTG1の導通端子の他端とゲインコントロールアンプ部GCA−Bのピーク値入力端子に一端が接続され他端がグランド(或いは電源)に接続されるピークホールド容量C1とより構成される。
図8(b)は、図8(a)の放電経路用抵抗R1を、放電経路用定電流回路I1に置き換えられることを示している。
[動作]
図8(a)のAM変調信号受信回路が受信するAM変調信号Viは、定常受信状態では大振幅状態と小振幅状態の2つの状態のみが存在し、大振幅状態を受信している時は比較回路Comp出力TCOを”H”状態(あるいは”L”状態)とし、小振幅状態を受信している時は比較回路Comp出力TCOを”L”状態(あるいは”H”状態)とする。送信所からの距離によって受信するAM変調信号Viのレベルは大きく変動する。
大振幅状態と小振幅状態の2つの状態のみが存在するAM変調信号Viの具体的な例として、従来回路の説明でも述べた通信総合研究所から送信される標準電波がある。
図8(a)の回路では、比較回路Compの出力TCOが”H”状態(あるいは”L”状態)の時、ピーク検出回路PDet内のトランスファゲートTG1が導通となるので、ピーク検出回路PDetは通常のピーク検出回路として動作する。従って、ピーク検出回路PDetとゲインコントロールアンプ部GCA−Bとは連携して通常のAGCアンプとして動作するので、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅Voが一定となるように制御される。
比較回路Compの出力信号TCOが”L”状態(あるいは”H”状態)の時は、ピーク検出回路PDet内のトランスファゲートTG1が非導通となるので、このトランスファゲートTG1が非導通となる直前のピークホールド容量C1への蓄積電荷に基づく固定した電圧がピーク検出回路PDetの出力Vpとして出力される。
図7の従来回路で、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅が大きくなった場合のピーク検出回路PDetの出力応答は整流回路Rec1のオン抵抗(小抵抗)とピークホールド容量C1との小時定数の速い応答となるが、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅が小さくなった場合のピーク検出回路PDetの出力応答の方は放電経路用抵抗R1(大抵抗)とピークホールド容量C1との大時定数での遅い応答となる。
ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅が小さくなった場合の応答を早めるには、放電経路用抵抗R1(大抵抗)とピークホールド容量C1との時定数を小さくすれば良いが、こうすると、AM変調波の小振幅状態を受信中に、ピーク検出回路PDetの出力Vpが急速に小さくなるので、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bのゲインが急速に増大することになり、小振幅状態の受信時間が長い場合(図35の”M”など)ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力信号Voも急速に増大していき、小振幅入力状態にもかかわらず前記包絡線検波回路SDet出力が基準電圧VR2(比較器Compのスレッショルド電圧)を超え、比較器Compの出力信号TCOが大振幅入力状態に相当する”H”状態(あるいは”L”状態)へと反転してしまい誤動作となる。
このような該誤動作を防ぐために、図7の回路では、放電経路用抵抗R1とピークホールド容量C1とのホールド時定数は、数ビット分に相当するような大きい時定数に設定する必要がある。
標準電波に重畳される時刻コードは、1bit/secと非常に遅いので、数ビット分の時間でも非常に長い時間となる。
図8(a)の回路では、電源投入時はピークホールド容量C1の蓄積電荷がゼロなので、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bは最大ゲインの状態で受信を始め、このゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅VoはAGC安定状態の振幅より必ず大きいレベルから始まる。このため、この出力を検波した検波出力信号は必ず基準電圧VR2より大となるため、比較器Compの出力信号TCOが大振幅入力状態に相当する”H”状態(あるいは”L”状態)となって、トランスファゲートTG1が導通となり、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅Voが大きいこともプラスしてピークホールド容量C1への充電が急速に行われ、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの制御電圧Vpが急上し、それによりゲインが急低し、高速にAGC安定状態に達する。
小振幅入力状態になると、検波出力は基準電圧VR2より小となり、比較器Compの出力信号TCOが”L”状態(あるいは”H”状態)となって、トランスファゲートTG1が非導通となり、ピークホールド容量C1の充放電が停止し、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの制御電圧Vpが固定値となり、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bは固定ゲイン動作となり、小振幅入力状態の継続時間の長短に関係なく安定した小振幅受信動作が行われる。
再び、大振幅受信状態になると、検波出力信号は基準電圧VR2より大となり、比較器Compの出力信号TCOが”H”状態(あるいは”L”状態)に戻り、トランスファゲートTG1が導通に戻り、出力振幅を一定値に調整する通常のAGC動作に戻る。以後、前述の動作が継続される。
小振幅入力状態ではピークホールド容量C1の充放電が停止するので、放電経路用抵抗R1とピークホールド容量C1のホールド時定数を小さくしても安定したAGC動作ができる。
この時定数を小さくすると、電源オンからの受信時のAGC安定状態に達する時間を短縮でき、また、フェージング等による受信レベル変動に対する応答が早くゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力信号Voの振幅が安定する。
図8(a)の回路例では、放電経路用として抵抗R1を用いたが、この抵抗の代わりに放電経路用として定電流回路I1を用いてもよい(この例は、図示していない)。
また、図8(a)の回路例では、ピークホールド容量C1の充放電動作をオン/オフするトランスファゲートTG1を用いたが、図8(c)では、放電経路用抵抗R1に流れる放電電流をオン/オフするトランスファゲートTG1として、小振幅入力状態におけるピークホールド容量C1の放電を停止させるようにして、図8(a)と同等の効果を得ている。
図8(d)では、放電経路用定電流回路I1に流れる放電電流I1をオン/オフする構成として、図8(a)と同等の効果を得ている。
トランスファゲートは、NチャンネルタイプとPチャンネルタイプを組み合わせた形にすると、このトランスファゲートのオン/オフ時における、ゲートとチャンネル間の容量の充放電によるピークホールド容量C1の充電電荷の変動(Vpの変動につながる)を軽減できる。
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、下記の効果が得られる。
(1)放電経路用抵抗R1(或いは定電流回路I1の定電流I1)とピークホールド容量C1で決定されるAGC用ホールド時定数決定に、小振幅入力状態の継続時間を考慮する必要がないので、ホールド時定数を小さくでき、ピークホールド容量C1を、小容量化できる。
(2)AGC用ホールド時定数を小さくできるので、大振幅入力状態でのAGC応答を高速化できる。
(3)(2)により、電源オンからの受信時のAGC安定状態に達する時間を短縮でき、また、フェージング等による受信レベル変動に対する応答が早くゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力Voの振幅が安定する。
(4)小振幅入力状態の継続時間が長い場合でも、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bのゲインが増大していく現象が発生せず、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力信号Voの振幅を固定振幅に保持できるので、小振幅入力状態の継続時間が長い場合でも比較器Compの出力信号TCOの誤動作が生じない。
(5)小振幅入力状態の継続時間が長い場合でも、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bのゲインが増大していく現象が発生しないので、比較器Compの出力信号TCOのパルス幅誤差が小さくなる。
[第3の実施の形態]
[構成]
図9(a)〜(e)は、本発明の第3の実施の形態におけるAM変調信号受信回路の具体例を示した図である。
第3の実施の形態のAM変調信号受信回路は、第1の構成として、第2の実施の形態のAM変調信号受信回路において、ピーク検出回路PDetのピークホールド容量C1に、放電経路用抵抗R1(或いは放電経路用定電流回路I1)より小さな電流を流す第2の放電経路R3(或いは定電流I3)を付加した構成(図9(a))を示す。
図9(b)は、図9(a)の第2の放電経路用抵抗R3を、第2の放電経路用定電流回路I3に置き換えられることを示している。
第2の構成としては、比較器Compの出力信号TCOを入力して時計動作等を行う図示しないマイコン等からの制御信号HS−AGCと比較器Compの出力信号TCOとをOR合成してトランスファゲートTG1の導通/非導通を制御する構成(図9(c))を示す。
第3の構成としては、比較器Compの出力信号TCOを入力して時計動作等を行う図示しないマイコン等からの制御信号RESETにより、ピークホールド容量C1を強制放電させる構成(図9(d))を示す。
第4の構成としては、比較器Compの出力信号TCOが、大振幅受信時に相当する出力状態に変化した時には直ちに”0”を出力し、小振幅受信時に相当する出力状態に変化してからは、所定の時間が経過した時に”1”を出力するタイマー回路TMを設け、該タイマー回路TMの出力と、比較器Compの出力信号TCO出力とを、OR合成した信号でトランスファゲートTG1の導通/非導通を制御する構成(図9(e))を示す。
[動作]
図8(a)のAM変調信号受信回路では、小振幅受信中に電波時計の向きが変更されたなど、AGC動作が追随できない状態で受信レベルが大きく低下し、大振幅受信時の前記包絡線検波回路SDet出力が基準電圧VR2を超えられない状態になると、トランスファゲートTG1が非導通状態のままとなり、永続的にAGC動作とならずゲインコントロールアンプ部GCA−Bのゲインが固定され、比較器Comp論理出力TCOは小振幅受信時に相当する出力状態に固定されることになる。
このような場合、図9(a)の回路では、前記第2の放電経路用抵抗R3(あるいは第2の放電経路用定電流回路I3)に流れる微小電流が、ピークホールド容量C1の蓄積電荷を放電させてゲインコントロールアンプ部GCA−Bのゲインをゆっくりと増大させて正常なAGC動作に復帰させ、比較器Compの出力信号TCOの固定状態から脱却する。
図9(c)の回路では、図示しないマイコン等が、比較器Comp論理出力TCOが前記の小振幅受信時に相当する出力状態に固定されたと判断した場合に、前記トランスファゲートTG1を強制導通させる制御信号HS−AGCを出力し、この制御信号HS−AGCがOR合成部を通ってトランスファゲートTG1を強制的に導通状態にさせて正常なAGC動作に復帰させ、比較器Compの出力信号TCOの固定状態から脱却する。
図9(d)の回路では、図示しないマイコン等が、比較器Comp論理出力TCOが小振幅受信時に相当する出力状態に固定されたと判断した場合に、ピークホールド容量C1を強制放電させる制御信号RESETを出力し、ピークホールド容量C1を強制放電させてゲインコントロールアンプ部GCA−Bを初期の大ゲイン状態に戻し、正常なAGC動作に復帰させ、比較器Compの出力信号TCOの固定状態から脱却する。
前記制御端子RESETを、従来の回路(図7)で説明した電源回路Regの制御端子PONに接続(図9(d)破線)して、PON/RESET端子としておき、各部への電源供給をオフ(PON端子からの制御)する時に、合わせてピークホールド容量C1を強制放電(RESET端子からの制御)させる構成としてもよい。
図9(e)の回路では、比較器Compの出力信号TCOが小振幅受信時に相当する出力状態に変わって後、前記所定の時間以内(例えば、1sec以内)に比較器Compの出力信号TCOが大振幅受信時に相当する出力状態に、その都度変化していればタイマー回路TM出力は“0”状態が継続し、前記OR合成結果は、比較器Compの出力信号TCOと同じとなり、図8(a)の動作説明と同様な動作となる。
前記所定の時間を超えても比較器Compの出力信号TCOが大振幅受信時に相当する出力状態とならない(前記の障害状態に陥った)場合、タイマー回路TM出力が“1”に反転し、OR合成部を通った該“1”信号がトランスファゲートTG1を強制導通させることで、従来回路と同様なAGC動作になり、比較器Compの出力信号TCOの固定状態から脱却する。比較器Compの出力信号TCOとして大振幅受信時に相当する出力状態が現れるまで、タイマー回路TM出力“1”状態が継続し従来回路と同様なAGC動作が継続する。従来回路と同様なAGC動作が継続する中で大振幅受信時に相当する出力状態が現れると、直ちにタイマー回路TM出力は“0”状態となり、冒頭の図8(a)と同様な動作に戻る。
図9(c)〜(e)の回路では、トランスファゲートTG1と放電経路用抵抗R1とを、図8(b)〜(d)のように置き換えても同じ効果が得られる。また、図9(a)〜図9(e)までの回路方式を併用しても良い。
尚、図25に示した回路図は、図9(c),(e)におけるOR回路とトランスファゲートTG1の回路が、二つのトランスファゲートTG1及びTG2の並列回路に置き換え可能であることを示す回路例である。
また、図28に示した回路図は、図9(e)のタイマー回路TMの具体例を示したものであり、図28のQiが"H"入力に変化した時はトランジスタT1によりコンデンサCに急速充電され、Qoが急速に"L"に変わる。Qiが"L"入力に変化した時は、トランジスタT1がオフし、定電流回路の定電流IsによるコンデンサCの放電が開始され、Qoが該放電時間(前記の所定時間に相当する)を置いて"H"に変わる。該放電時間(所定時間)以内にQiが"H"入力に変化すれば、トランジスタT1によりコンデンサCが再び急速充電されるので、Qoが"L"に維持される。
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態の効果に加えて、受信中に、AGC動作が追随できない状態で受信レベルが低下し、比較器Compの出力信号TCOが小振幅受信時に相当する出力状態に固定されてしまった(誤動作状態)場合に、該状態から脱出して正常動作に戻ることができるという効果がある。
[第4の実施の形態]
[構成]
図10(a)〜(d)は、本発明の第4の実施の形態におけるAM変調信号受信回路の具体例を示した図である。
第4の実施の形態のAM変調信号受信回路では、第2、或いは、第3の実施の形態のAM変調信号受信回路において、AM変調信号受信回路のピーク検出回路PDetのピークホールド容量C1の充放電を、外部制御信号AGCHにより強制的に停止させる機能を付加して構成する。
図10(a)に示すAM変調信号受信回路例は、第2の実施の形態の図8(a)の回路において、比較器Compの出力信号TCOと外部制御信号AGCHとをAND合成し、このAND合成した信号でトランスファゲートTG1を制御する例を示している。
比較器Compの出力信号TCOと外部制御信号AGCHとをAND合成し、このAND合成した信号にてトランスファゲートTG1を制御する方法は、また、図9(d)についても適用できるし、図8(b),(d)に順じた適用もできる。(図示せず)
図10(b)に示すAM変調信号受信回路例は、第3の実施の形態の図9(a)の回路において、トランスファゲートTG1及び第2の放電経路用抵抗R3(或いは第2の放電経路用定電流回路I3)の接続と、ピークホールド出力となるピークホールド容量C1端子との接続点に、第2のトランスファゲートTG2を挿入し、この第2のトランスファゲートTG2の導通/非導通を、外部制御信号AGCHにて制御する例を示している。
図10(c)に示すAM変調信号受信回路例は、第3の実施の形態の図9(c)の回路において、比較器Compの出力信号TCOと前述の外部制御信号HS−AGCのOR合成出力と、外部制御信号AGCHとをAND合成し、このAND合成出力にてトランスファゲートTG1を制御する例を示している。
図10(c)の外部制御信号HS−AGCを、図9(e)に示すタイマー回路TMにおきかえれば、同様に適用できる。
尚、図26に示した回路は、図10(a)、図10(c)のAND回路とトランスファゲートTG1の回路を、2つのトランスファゲートTG1及びTG2の直列回路に置き換えが可能であることを示す回路例である。
また、図27に示した回路は、図10(b)の具体的な回路例であり、図27の可変ゲインアンプGCA(1段構成の例)とゲインコントロールアンプDAとで、図10(b)のゲインコントロールアンプブロックGCA−Bを構成している。
[動作]
外部制御信号AGCHが”L”となっている間、図10(a)及び図10(c)の回路ではトランスファゲートTG1が、図10(b)の回路では第2のトランスファゲートTG2が、それぞれ非導通となり、ピークホールド容量C1の充放電経路が切断状態となり、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bを固定ゲイン動作とすることができる。
時分秒の針表示をステッピングモータなどで駆動する電波時計では、駆動時に大きなノイズが発生する可能性があり、AGC動作用のピークホールド容量C1を小さくしてAGC応答速度を改善する第2及び第3の実施の形態の回路のAM変調信号増幅経路に、このノイズが重畳すると、ピークホールド容量C1の充電電荷量が異常となり、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅が異常になる場合が起こり得る。
こうしたノイズ発生タイミングは予測がつけられるので、このタイミング時に、外部制御信号AGCHを”L”とすれば、ピークホールド容量C1の充電電荷量が異常となることを防止でき、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅を正常に保つことができる。
第2〜第4の実施の形態では、ハード的に、前記トランスファゲートTG1や、第2のトランスファゲートTG2を制御する例を示してきたが、比較器Compの出力信号TCOを入力して時計動作等をしているマイコン(図示しない)等が十分な動作速度を持っているならば、比較器Compの出力信号TCOが前記の小振幅受信時に相当する出力となっている時には、該マイコン等からの制御信号AGCHを使ってトランスファゲートTG1を非導通にさせる等、制御の全てを該マイコン等で行っても良い。図10(d)のAM変調信号受信回路は、その例を示している。
以上説明したように、第4の実施の形態によれば、第2及び第3の実施の形態の効果に加えて、時分秒の針表示用ステッピングモータ駆動時ノイズなど、大振幅ではあるが発生タイミングが予測可能なノイズのAGCに与える影響を軽減できるという効果がある。
[第5の実施の形態]
[構成]
図11(a)、(b)は、本発明の第5の実施の形態におけるAM変調信号受信回路の具体例を示した図である。
図11(a)に示す第5の実施の形態におけるAM変調信号受信回路では、第2〜第4の実施の形態のAM変調信号受信回路において、比較器Compの出力信号TCOを遅延させる遅延回路Dと、この遅延回路Dの出力信号から所定の時間幅のパルスを出力するモノステーブルマルチバイブレーターMMと、該モノステーブルマルチバイブレーターMMの出力と比較器Compの出力信号TCOとを切り換えて前記トランスファゲートTG1の制御信号とする切り換えスイッチSとを付加して構成する。
図11(b)に示す第5の実施の形態におけるAM変調信号受信回路では、第2〜第4の実施の形態のAM変調信号受信回路において、比較器Compの出力信号TCOを遅延させる遅延回路Dと、この遅延回路Dの出力信号から所定の時間幅のパルスを出力するモノステーブルマルチバイブレーターMMと、該モノステーブルマルチバイブレーターMMの出力と比較器Compの出力信号TCOとをAND処理するAND回路と、該AND回路出力と比較器Compの出力信号TCOとを切り換えて前記トランスファゲートTG1の制御信号とする切り換えスイッチSとを付加して構成する。
図11(a)の回路は、ピーク検出回路PDetの出力から基準電圧VR2を生成できることも示した図であり、図8(a)〜図10(d)に示すように、独立した基準電圧VR2としてもよい。また、前記トランスファゲートTG1の代わりに、図8(c)の例のように、放電経路用定電流回路I1に流れる放電電流I1をオン/オフする構成としても良い。
[動作]
第5の実施の形態におけるAM変調信号受信回路では、第2〜第4の実施の形態におけるAGC方法の他に、切換スイッチSにより該遅延回路D及びモノステーブルマルチバイブレーターMMを介する経路とすることにより、比較器Compの出力TCOが大振幅入力状態に対応する出力に変化してから、前記遅延回路Dが設定する遅延時間をおいて、前記モノステーブルマルチバイブレーターMMによって設定される所定のパルス幅時間だけ、前記トランスファゲートTG1(あるいはオン/オフ可能な定電流I1)が導通状態となり、この導通状態の間だけAGC動作をさせ、その他の時間領域では、ピーク検出回路PDetが直前の状態を保持しゲインコントロールアンプ部GCA−Bのゲインを固定にするAGC方法が行える。
遅延回路Dは、所定の待ち時間をつくるものであり、モノステーブルマルチバイブレーターで構成してもよい。切換スイッチも、前述の2方法のAGCが使えるようにするものであり、他の論理構成や複数のトランスファゲートを用いた構成にしてもよい。この切換制御は、このAM変調信号受信回路に付属するマイコン等で行う。
図11(a)の回路では、スイッチSを比較器Compの出力信号TCOを直接前記トランスファゲートTG1の制御に使う側としてアイドル受信を開始し、比較器Compの出力信号TCOが"H"/"L"の交番出力となる状態を確認できるようになったところで、スイッチSを遅延回路D及びモノステーブルマルチバイブレーターMMを介する経路となる接続に切り換えて本受信を行う。これにより、比較器Compの出力信号TCOの"H"出力の継続時間が正確な受信("L"出力の継続時間も正確になる)を実現することができる。
以下、その動作を詳述する。
電波時計用のAM変調信号受信回路では、帯域外雑音を除去して最小レベル側の受信感度を高めるために帯域幅10Hz前後の狭帯域のバンドパスフィルタBPFが使用され、そのため、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力信号のピーク値の包絡線が帯域幅10Hz前後の狭帯域に対応した緩やかな変化(変化に100msec前後の時間を要する)となる。
図36に、前記ゲインコントロールアンプ部GCA−B内のバンドパスフィルタBPFの入出力の波形例を模式的に示す。図36の、領域Aは小振幅入力状態の最後尾部分、領域Bは大振幅入力状態に変わりバンドパスフィルタBPFの帯域制限特性(帯域幅10Hz前後の狭帯域)によって暫時振幅が増加していく部分、領域Cは大振幅入力が継続しAGC制御により出力振幅Voが所定のレベル(レベル一定状態)に安定制御されている部分、領域Dは小振幅入力状態に変わりバンドパスフィルタBPFの帯域制限特性によって暫時振幅が減少していく部分、領域Eは小振幅入力状態の初頭部分、であり、領域Eから所定の時間後は領域Aに接続し、繰り返される。
従来回路のAGC動作、及び、第2〜4の各実施の形態のAM変調信号受信回路のトランスファゲートTG1の導通状態におけるAGC動作(通常のAGC動作)は、前記ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅Voを、常にC領域に示される振幅に揃えようと動作する。すなわち、C領域以外の振幅の小さい領域では、AGC回路の時定数で制限される応答速度でC領域の振幅目指して振幅が増大する。
従って、従来回路のAGC動作の前記ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅Voは、図36の、E領域振幅よりA領域振幅の方が大きく、B領域の立ち上がりはバンドパスフィルタBPFの帯域制限特性がありながらもAGC動作により加速され、C領域の立ち下がりはバンドパスフィルタBPFの帯域制限特性による緩い立ち下がりがAGC動作により更に減速される。この現象により、比較器Compの入力基準電圧VR2を、C領域のレベルとその1/10のレベル(日本の標準電波受信の場合)の中位に対応する値に設定すると、比較器Compの出力信号TCOは、大振幅に対応する側のパルス幅が必ず伸びる(td1<td2)ことになる。
図35からも解かるように、大振幅に対応する論理出力TCOのパルス幅で”M”/”0”/”1”を識別するので、パルス幅の正確さが該識別の正確さにつながっていく。
第2〜4の各実施の形態におけるAGC動作でも、比較器Compの出力信号TCOが小振幅に対応する出力になっている前記領域では、前記ゲインコントロールアンプ部GCA−Bが固定ゲインになっており、この間は、前記ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅Voの振幅増大現象が生じないが、領域B後半と領域D前半では比較器Compの出力信号TCOが大振幅に対応する出力になっており、やはり前記の振幅増大現象が生じることになり、従来回路より大幅に改善はされているものの、大振幅に対応する側のパルス幅が必ず伸びることになる。
従来の回路でこの振幅増大現象による影響を抑えるためには、振幅増大現象が生じる間のAGC回路の時定数(前記ピーク検出回路PDetの時定数、あるいは、低域通過フィルターLPFの時定数)を、バンドパスフィルタBPFの帯域制限特性による緩い立ち上り立ち下り時間より、十分大きく設定しておく必要がある。
更に、微小入力まで受信範囲を広げるためには、AGCアンプの最大ゲインを大きくし、可変ゲイン範囲を広げる必要がある。この改善をすると、前記ピーク検出回路PDetの出力Vpの変化に対するゲインの変化が大きくなるので、前記振幅増大現象を抑えるためには、AGC回路の時定数を更に大きくする必要が生じる。
図11(a)の回路において、前記遅延回路Dの遅延時間をおおむね領域Bに相当する時間に設定し、モノステーブルマルチバイブレーターMMのパルス幅を大振幅の最小継続時間(図35の”M”符合に相当する時間)に設定しておくと、完全フラットレベルとなる前記C領域の最小継続時間だけ通常のAGC動作をさせ、その他の時間は前記ゲインコントロールアンプ部GCA−Bを固定ゲイン動作させることができ、前期の振幅増大現象を完全になくすことができるので、大振幅状態と小振幅状態の時間幅が正確なものになる。
完全フラットレベルとなる前記C領域の最小継続時間だけ通常のAGC動作をさせるだけなので、前記最大ゲイン、あるいは、可変ゲイン範囲を大きくしても、AGCの時定数を大きくする必要がない。
このように、ピーク検出回路PDetの時定数を大幅に小さくすることが可能となり、AGCレスポンスの高速化と時定数容量C1の低容量化が実現する。
図11(a)の回路で受信回路の電源オン直後に、いきなり前記遅延回路D等を介する本受信とすると、前期の領域Eから領域Aの小振幅入力状態でAGC動作が行われ、小振幅入力状態のゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅Voを図36のC領域に相当するレベルに合わせてゲインを固定にしてしまう可能性がある。この状態では、比較器Compの入力が常に大振幅入力状態に対応する入力レベル以上となってしまうため、比較器Compの出力信号TCOも大振幅入力状態に対応するレベルに固定されてしまうこと(誤動作)になる。
前記アイドル受信は、まず大振幅入力状態を選び出して、該状態の出力振幅Voを前記C領域に相当するレベルに合わせるAGC状態をつくる。その後に前記遅延回路D等を介する本受信を行うことで、比較器Compの出力信号TCOのパルス幅が正確な受信が可能になる。
また、基準電圧VR2は包絡線検波回路SDetの出力ピーク値とボトム値との中間値に設定するのが最適である。図11(a)の回路では、ピーク検出回路PDetの保持容量が小さくても、ピーク検出回路PDetの出力VPが、従来回路、あるいは、第2〜4の実施の形態に比べて安定であり、ピーク検出回路PDetから基準電圧VR2を決める方法がより有効になる。
遅延回路Dの遅延時間は、おおむね領域Bに相当する時間に設定され、この間のゲイン増大による出力振幅Voの過剰な振幅増大を防止するものである。基準電圧VR2を固定値にするなど、この間のゲイン増大による前期出力振幅Voの振幅増大が問題にならない構成では、前記遅延回路Dを省略しても良い。
また、何らかの原因で前記モノステーブルマルチバイブレーターMMが誤パルスを発した場合にAGC動作が異常動作となってしまうが、図11(b)に示すように、モノステーブルマルチバイブレーターMMの出力と比較器Compの出力信号TCOとをAND合成する構成とすると、何らかの原因でモノステーブルマルチバイブレーターMMが誤パルスを発した場合の誤動作を防止できる。
以上説明したように、第5の実施の形態によれば、下記の効果が得られる。
(1)前記ピーク検出回路PDetの時定数を大幅に小さくすることが可能となり、AGCレスポンスの高速化と該時定数容量C1の低容量化が実現する。
(2)定数前記ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの出力振幅が安定に制御され、大振幅状態小振幅状態の時間幅が正確になる。
(3)ピーク検出回路PDetから基準電圧VR2を決める方法が有効になる。
(4)可変ゲインアンプの最大ゲイン、可変ゲイン範囲を大きくするのに伴うAGC時定数の増大を防止できる。
(5)上記(1)〜(4)により、受信レベル範囲の広い、誤動作の少ないAM信号受信回路を実現できる。
[第6の実施の形態]
[構成]
図12は、本発明の第6の実施の形態におけるAM変調信号受信回路の具体例を示した図である。
図12のAM変調信号受信回路は、複数局の同時受信が可能なAM変調信号受信回路であり、キャリア周波数f1の電波を同調受信するアンテナコイルL1及び同調容量C1等とで構成する第1の同調回路と、この第1の同調回路の出力信号を増幅して出力するプリアンプPA1と、キャリア周波数f2の電波を同調受信するアンテナコイルL2及び同調容量C2等とで構成する第2の同調回路と、この第2の同調回路の出力信号を増幅して出力するプリアンプPA2と、プリアンプPA1とプリアンプPA2の出力を加算して出力する加算回路Addと、外部DC制御電圧Vpが上昇するとゲインを下げ、下降するとゲイン上げて加算回路Addの出力を入力信号Viとして増幅し中心周波数がf1の帯域幅Δf1の帯域信号Vo1及び中心周波数がf2の帯域幅Δf2の帯域信号Vo2とを抽出して出力するゲインコントロールアンプ部GCA−Bと、帯域信号Vo1を整流し、ピーク保持キャパシターC1に充電する整流回路Rec1aと帯域信号Vo2を整流し、ピーク保持キャパシターC1に充電する整流回路Rec1bとピーク保持キャパシターC1の充電電荷を放電させる放電抵抗R1とで構成し、この保持キャパシターC1の充電電圧をゲインコントロールアンプ部GCA−BにDC制御電圧Vpとして出力するピーク検出回路PDetと、帯域信号Vo1を整流しピーク保持キャパシターC2に充電する整流回路Rec2aと、帯域信号Vo2を整流しピーク保持キャパシターC2に充電する整流回路Rec2bと、ピーク保持キャパシターC2の充電電荷を放電させる放電抵抗R2とで構成しピーク保持キャパシターC2の充電電圧を包絡線検波出力として出力する包絡線検波回路SDetと、この包絡線検波回路SDetの出力と基準電圧VR2とを比較して比較信号TCOを出力する比較器Compとより構成する。
尚、図21は、本実施の形態に於ける前記加算回路の具体例を示したもので、
プリアンプPA1及びPA2の出力を破線内回路で差動電流信号に変換し、ワイヤード電流加算し、加算した電流を負荷抵抗RL1及びRL2にて電圧信号に変換している。
ゲインコントロールアンプ部GCA−Bは、制御電圧Vpを図示しない内部基準電圧VR1と比較してゲインを制御し入力信号Viを増幅する可変ゲインアンプブロックGCAbと、中心周波数がf1の帯域幅Δf1の帯域信号Vo1を抽出する手段としてバンドパスフィルタBPF1と、中心周波数がf2の帯域幅Δf2の帯域信号Vo2を抽出する手段としてバンドパスフィルタBPF2とを、含んで構成している。
従来回路基本構成例(図7)説明で記したと同様に、前記プリアンプPA1とPA2を可変ゲインアンプとし、AGC動作ループに組み込んでもよい、また、各バンドパスフィルタBPFと各整流回路Recとの間には、バンドパスフィルタBPFの終端条件を満足し各整流回路Recを駆動するバッファ回路があるが、当業者にとっては容易に類推できることであるので図12では省略している。
[動作]
アンテナコイルL1はバーアンテナ構造をしている場合、あるいは、外部アンテナに接続される場合があるが、キャリア周波数f1近傍の電波を受信し電圧(電流)信号に変換する、アンテナコイルL1と同調容量C1はキャリア周波数f1に同調しており共振動作により周波数f1の電圧(電流)信号を強調し、プリアンプPA1は更にこの電圧(電流)信号を増幅し、加算回路Addに出力する。
アンテナコイルL2と同調容量C2とプリアンプPA2も、前記同様に、キャリア周波数f2の電波を受信し、電圧(電流)信号に変換・増幅して加算回路Addに出力する。
加算回路Addは、キャリア周波数f1及びキャリア周波数f2の増幅された電圧(電流)信号をアナログ加算して前記ゲインコントロールアンプ部GCA−Bに出力する。
可変ゲインアンプブロックGCAbは、外部DC制御Vpを一定にするようなゲインで加算回路Addの出力Viを増幅し、バンドパスフィルタBPF1は増幅した信号から中心周波数がf1の帯域幅Δf1の帯域信号Vo1を抽出し出力する。同様に、バンドパスフィルタBPF2は増幅した信号から中心周波数がf2の帯域幅Δf2の帯域信号Vo2を抽出し、出力する。
帯域信号Vo1は整流回路Rec1aを通り、帯域信号Vo2は整流回路Rec1bを通り、整流されてピーク保持キャパシターC1に充電され充電電荷によりDC制御Vpが生成される。
この充電動作と放電抵抗R1によりピーク保持キャパシターC1の充電電荷をR1×C1の時定数で放電させる動作とでピーク検出回路PDetとしての機能となる。
ここで、前記帯域信号Vo1とVo2の電圧振幅は、一般に、一方が他方より大きいので、ピーク検出回路PDetの出力Vpは、大きい側の振幅レベルのみで決まり、小さい側の振幅レベルには依存しない。
ゲインコントロールアンプ部GCA−Bとピーク検出回路PDetとで、AGC動作を行うが、ピーク検出回路PDetの出力信号Vpが、2つの帯域信号の大きい側の振幅レベルのみに依存するので、AGC動作としては、大きい側の振幅レベルを一定にするように動作し、小さい側のレベルは、そのゲインで増幅される。したがって、受信振幅レベルの比が出力振幅の比として維持される。
包絡線検波回路SDetでは、帯域信号Vo1は整流回路Rec2aを通り、帯域信号Vo2は整流回路Rec2bを通り、整流されてピーク保持キャパシターC2に充電される。この充電動作と、放電抵抗R2によりピーク保持キャパシターC2の充電電荷をR2×C2の時定数で放電させる動作とで包絡線検波回路SDetとしての機能となる。
ピーク検出回路PDetでの説明同様に、包絡線検波回路SDetの出力は、前記帯域信号Vo1とVo2の電圧振幅の大きい側の振幅レベルを連ねたものになる。この包絡線検波回路SDetの出力と基準電圧VR2とを比較器Compにて比較して比較信号TCOに変換する。
日本の標準電波として、福島県(40KHz)と佐賀県(60KHz)から同一タイムコードを同一時刻に同一AM変調で送信している。この2局の電波信号を国内で受信した場合、受信点までの到達距離の差による時間差が生じることになるが、その差は数msec程度であり、図35の標準電波波形例でも判るように、各ビットの時間幅が数100msecオーダーであるのに対しては無視できるので、この2局を同時受信してもタイムコードが崩れることはない。
受信入力レベルが極端に小さい側は、見えるレベルに増幅されずに結果的に無視され、受信入力レベルが似通っている場合は、フェージング現象などで受信入力レベルが個別に揺らいでも、常に受信状況の良い側が自動的に選択されて受信されることになるので、安定した受信が実現する。
以上説明したように、第6の実施の形態によれば、下記の効果が得られる。
(1)受信入力レベルが極端に小さい側の入力信号は無視され、受信入力レベルが似通っている場合は、フェージング現象などで受信入力レベルが揺らいでも安定した受信が実現する。
(2)2局同時受信回路であるが共用部が多いので、部品点数や消費電力の増加が少ない。
(3)2局を個別に受信し良い方の結果を採用する方法に比べて、短時間での受信が実現する。
(4)2局を個別に受信する方法に比べ、上記(2)及び(3)により、トータルの消費電力が減少する。
[第7の実施の形態]
[構成]
図13は、本発明の第7の実施の形態におけるAM変調信号受信回路の具体例を示した図である。
図13の複数局同時受信AM変調信号受信回路は、前述の第6の実施の形態における複数局同時受信AM変調信号受信回路において、ゲインコントロールアンプ部GCA−Bの、中心周波数がf1の帯域幅Δf1の帯域信号Vo1を抽出するバンドパスフィルタBPF1と、中心周波数がf2の帯域幅Δf2の帯域信号Vo2を抽出するバンドパスフィルタBPF2との出力を加算する第2の加算回路Add2を付加し、この第2の加算回路Add2の出力を、ピーク検出回路PDetと包絡線検波回路SDetとに入力する構成としている。
従来回路基本構成例(図7)の説明と同様に、プリアンプPA1とPA2を可変ゲインアンプとし、AGC動作回路に組み込んでもよい。
尚、図21は、本実施の形態に於ける前記加算回路Add1,Add2の具体例を示したもので、プリアンプPA1及びPA2の出力を破線内の回路で差動電流信号に変換し、ワイヤード電流加算し、加算した電流を負荷抵抗RL1及びRL2にて電圧信号に変換している。
[動作]
複数局同時受信AM変調信号受信回路としての基本的動作は、前述の第6の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
第7の実施の形態では、バンドパスフィルタBPF1の出力Vo1と、バンドパスフィルタBPF2の出力Vo2とを、第2の加算回路Add2にて加算している。
周波数の異なる波のアナログ加算合成例を図37から図41に示す。図37から図41は、それぞれ振幅値0.5のsin波を、初期位相を変えて合成した例であるが、おおむね2波の差の周波数の頻度で、各振幅値の和の振幅値が現れる。その結果、合成された振幅値が所定のレベルとなるようにAGC動作が行われ、この振幅値のピーク値の包絡線に基づく検波が行われる。
第6の実施の形態では、2つのプリアンプPA1とPA2の入力換算雑音が加算されて出力に現れる(雑音が増加する)が、第7の実施の形態では、おおむね2波の和の振幅となるため、その分、可変ゲインアンプが低いゲインで動作すればすむようになるので、雑音増加が軽減される。
また、2波を同じゲインで増幅するので、第6の実施の形態と同様に、受信入力レベルが極端に小さい側は、見えるレベルに増幅されずに結果的に無視され、受信入力レベルが近い場合は、フェージング現象などで受信入力レベルが個別に揺らいでも、常に受信状況の良い側を中心に加算されて受信するので、安定した受信が実現する。
更に、2局同時受信回路であるが共用部が多いので、部品点数や消費電力の増加が少ない。
また、2局を個別に受信して良い方の結果を採用する方法に比べて、半分の時間で受信でき、前記と合わせ考えると全受信に要する消費電力も少なくてすむことになる。
また、第2〜5の実施の形態を適用すると、それぞれの効果がそのまま効果となって現れる。
また、電波の取りこみ方法については、アンテナコイルをバーアンテナにしても、外部アンテナからアンテナケーブルで引き込んでもよい。
以上説明したように、第7の実施の形態によれば第6の実施の形態の効果に加えて、雑音が軽減される効果がある。
[第8の実施の形態]
[構成]
図14は、本発明の第8の実施の形態におけるAM変調信号受信回路の具体例を示した図である。
図14のAM変調信号受信回路は、前記第6の実施の形態のAM変調信号受信回路において、アンテナコイルL1及びアンテナコイルL2をバーアンテナとし、水平面上に直交するように配置する、また、アンテナコイルL1と同調容量C1の同調周波数と、アンテナコイルL2と同調容量C2の同調周波数とを、同一同調周波数fとし、プリアンプPA2の出力位相を正相/逆相に切り換える位相切換スイッチSを、プリアンプPA2の出力と加算回路Addの入力端子との間に挿入して構成する。
この実施の形態においては、同調周波数fが単一なので、図14のAGC回路内にあるバンドパスフィルタBPFは単一でよく、AGC回路以降は、従来回路もしくは第2〜5の実施の形態の回路と同様の回路を用いることができる。
従来回路基本構成例(図7)の説明と同様に、プリアンプPA1とPA2が可変ゲインアンプであり、AGC回路に組み込まれていてもよい。
尚、図22、23はプリアンプPA2の極性切換を含む加算回路の具体例であり、図22の加算回路においては、トランスファゲートTG1又はTG2のいずれかを導通状態にすることにより、プリアンプPA2の正相又は逆相の出力と、プリアンプPA1の出力とを加算する。また、図23の加算回路においては、トランジスタT5及びT6のいずれかを導通状態にすることにより、トランジスタT3及びT4の差動対か、トランジスタT1及びT2の差動対かの、いずれかがアクティブ状態となり、プリアンプPA2の出力が、正相又は逆相でプリアンプPA1の出力と加算される。
[動作]
2つのアンテナコイルL1及びL2、同調容量C1及びC2、2つのプリアンプPA1及びPA2で構成する受信部は、同一周波数の受信、すなわち、同一送信局からの送信電波を受信し出力する。
2つの直交配置されたバーアンテナの相互間距離が送信電波の波長より十分に小さければ、2つのアンテナコイルL1及びL2に生じる受信電圧は、コイルの巻腺方向により同相か逆相かのいずれかになり、電波到来方向に対する角度θ(θは、0〜360度。図16参照)によって、受信レベルだけが変わる。
アンテナコイルL1の受信レベルを、V1=Vo×cosθとすると、アンテナコイルL2の受信レベルは、V2=Vo×sinθとなり、単純加算(V=V1+V2)すると大きさが等しく位相が逆となり加算結果がゼロとなる角度が生じるが、前記位相切換スイッチSを操作して常に同位相となるように加算(V=|V1|+|V2|)すると、加算Vは常に、Vo〜1.4Voとなる。(図42参照)
壁掛けの電波時計等は、設置壁等の向きによって電波時計内のバーアンテナ方向が決められることになり、単一バーアンテナであると角度によっては全く受信できなくなってしまうが、本実施の形態によるAM変調信号受信回路を用いることにより、いかなる角度であっても、単一のバーアンテナを最良の方向に向けて得られる受信レベル以上の受信感度が得られる。
スイッチSの操作は、該電波時計設置後あるいは電源電池交換後など、初めての受信時は、切り換えてプリアンプPA2の正相/逆相における受信の良好度をテストし、以後の受信は、前回受信で良好であった位相で受信を試みて受信に成功すれば、この受信成功タイムコードを使用し、失敗した場合に位相を反転して受信を試みるようにする。
この実施の形態においても、第2〜5の実施の形態を適用すると、それぞれの効果がそのまま生きることになる。
以上説明したように、第8の実施の形態によれば、AM変調信号受信回路がいかなる方向を向いていても、単一のバーアンテナを最良の方向に向けて得られる受信レベル以上の受信感度が得られる。
[第9の実施の形態]
[構成]
図15は、本発明の第9の実施の形態におけるAM変調信号受信回路の具体例を示した図である。
図15のAM変調信号受信回路は、第7の実施の形態におけるAM変調信号受信回路において、アンテナコイルL1及びアンテナコイルL2をバーアンテナとし、水平面上に直交するように配置する。また、アンテナコイルL1と同調容量C1の同調周波数と、アンテナコイルL2と同調容量C2の同調周波数とを、同一同調周波数f1とし、同調容量C1にスイッチS1で接続がオン/オフできる同調容量C3を付加し、同調容量C2にスイッチS2で接続がオン/オフできる同調容量C4を付加し、アンテナコイルL1と同調容量C1およびC3との同調周波数と、アンテナコイルL2と同調容量C2およびC4との同調周波数とを、同一同調周波数f2とし、プリアンプPA2の出力位相を正相/逆相に切り換える位相切換スイッチSを、プリアンプPA2の出力と加算回路Addの入力端子との間に挿入して構成する。
周波数の異なる波のアナログ加算合成例を図37から図41に示す。図37から図41は、それぞれ振幅値0.5のsin波を、初期位相を変えて合成した例であるが、おおむね2波の差の周波数の頻度で、各振幅値の和の振幅値が現れる。その結果、合成された振幅値が所定のレベルとなるようにAGC動作が行われ、この振幅値のピーク値の包絡線に基づく検波が行われる。
尚、図22、23はプリアンプPA2の極性切換を含む加算回路の具体例であり、図22の加算回路においては、トランスファゲートTG1又はTG2のいずれかを導通状態にすることにより、プリアンプPA2の正相又は逆相の出力と、プリアンプPA1の出力とを加算する。また、図23の加算回路においては、トランジスタT5及びT6のいずれかを導通状態にすることにより、トランジスタT3及びT4の差動対か、トランジスタT1及びT2の差動対かの、いずれかがアクティブ状態となり、プリアンプPA2の出力が、正相又は逆相でプリアンプPA1の出力と加算される。
[動作]
スイッチS1およびS2のオン/オフの組み合わせで、プリアンプPA1に接続する同調周波数とプリアンプPA2に接続する同調周波数とを、双方が同調周波数f1もしくはf2に、あるいは、一方が同調周波数f1であり他方が同調周波数f2に、自由に選択できる。
また、スイッチSにて、プリアンプPA2の出力位相を正相/逆相に、自由に選択できる。
従って、スイッチSおよびS1およびS2のオン/オフの組み合わせで、実施の形態7の受信方法も、同調周波数f1もしくはf2に対する実施の形態8の受信方法も、いずれも可能になる。
スイッチSおよびS1およびS2の操作は、電波時計設置後あるいは電源電池交換後など、初めての受信時は、切り換えて受信の良好度をテストし、以後の受信は、前回受信で良好であったオン/オフ組み合わせで受信を試み、受信に成功すれば該受信成功タイムコードを使用し、失敗した場合にオン/オフの組み合わせを変えて受信を試みるようにする。各組み合わせの成功率を記憶しておき、成功率の高い組み合わせを優先するようにすると効率的である。
この実施の形態においても、前述の第2〜5の実施の形態を適用すると、それぞれの効果がそのまま生きることになる。
以上説明したように、第9の実施の形態においては、スイッチSおよびS1およびS2のオン/オフの組み合わせで、実施の形態7の受信方法も、同調周波数f1もしくはf2に対する実施の形態8の受信方法も、いずれも可能になり、この2つの実施の形態の効果を合わせた効果が得られる。
[第10の実施の形態]
[構成]
図17は、本発明の第10の実施の形態におけるAM変調信号受信回路の具体例を示した図である。
図17のAM変調信号受信回路は、差動入力アンプをプリアンプPAとして使用する、従来回路および第2〜9の実施の形態におけるAM変調信号受信回路において、このプリアンプPAの入力バイアスを、アンテナコイルLに設けたセンタータップから供給する構成としている。
[動作]
AM変調信号受信回路としての動作は、前述の各実施の形態と同様であるので説明を省略する。AM変調信号受信回路の入力最小感度を向上させるには、プリアンプPAを低雑音化する必要がある。従来回路のように、差動入力の双方にバイアス回路を設けバイアス供給する方法や、作動入力の一方側にバイアス回路を設け、他方はアンテナコイルを介してバイアスを供給する方法では、バイアス回路の発する熱雑音等をそのままプリアンプで増幅することになり、この雑音が混入する。
アンテナコイルLのセンタータップより差動入力プリアンプPAの入力にバイアスを供給する方法では、バイアス回路の発する雑音は、差動入力アンプのコモンモード入力雑音となり、差動入力プリアンプPAの出力には現れなくなる。従って、バイアス回路の発する熱雑音等を除去したAM変調信号受信回路を実現できる。
以上説明したように、第10の実施の形態によれば、第2〜9の実施の形態における効果に加えて、バイアス回路の発する熱雑音等を除去したAM変調信号受信回路を実現できる。
[第11の実施の形態]
[構成]
図18(a)〜(d)は、本発明の第11の実施の形態におけるAM変調信号用検波回路の具体例を示した図である。
第11の実施の形態におけるAM変調信号用検波回路は、従来回路、及び、第2〜10の実施の形態におけるAM変調信号受信回路の検波回路SDetに対応する回路である。
図18(a)のAM変調信号用検波回路は、前記従来回路、及び、第2〜第10の実施の形態におけるAM変調信号受信回路のAGC回路の出力信号Voからキャリア周波数成分を抽出し該周波数のクロックパルスCLを出力するタイミング抽出部と、このタイミング抽出部からのクロックパルスCLを受けてサンプリングクロックパルスSCLを出力するクロック生成部と、比較基準電圧VR2を出力する基準電圧設定部と、サンプリングクロックパルスSCLの入力時にAGC回路の出力信号Voと比較基準電圧VR2とをサンプリング比較して比較信号TCOを出力し次のサンプリングクロックパルスSCLが入力されるまで保持するサンプリング比較保持部とから構成される。
図18(b)のAM変調信号用検波回路は、前記基準電圧設定部を、基準電圧発生回路で構成し、タイミング抽出部を、AGC回路の出力信号Voをリミット増幅するリミットアンプLIMと、このリミットアンプLIMの出力をトリガーとしてクロックパルスCL出力する第1のモノマルチバイブレータMM1とで構成し、クロック生成部を、第1のモノマルチバイブレータMM1のクロックパルスCLを受けてサンプリングクロックパルスSCLを発生する第2のモノマルチバイブレータMM2で構成し、サンプリング比較保持部を、一端をグランドに接続する保持容量Cと、サンプリングクロックパルスSCL入力時にAM変調信号受信回路のAGC回路の出力Voと保持容量Cの他端とを導通状態にさせるトランスファゲートTGと、保持容量Cの他端電圧と比較基準電圧VR2とを比較する比較器Compとで構成している。
第1のモノマルチバイブレータMM1は、タイミング位相を合わせるための所定の待ち時間をつくるものであり、遅延回路で構成してもよい。
図18(c)のAM変調信号用検波回路は、基準電圧設定部を、AGC回路内のピーク検出回路PDet(図示せず)の出力Vpを分圧して基準電圧VR2を出力する分圧回路で構成し、タイミング抽出部を、AGC回路の出力Voの位相を進相(遅相)させて出力Vo1を出力する第1の移相回路PS1と、AGC回路の出力Voの位相を遅相(進相)させて出力する第2の移相回路PS2と、この第2の移相回路PS2の出力をリミット増幅してクロックパルスCLを出力するリミットアンプLIMで構成し、クロック生成部を、クロックパルスCLを反転・遅延させる遅延回路Dtと、この遅延回路Dtの出力とクロックパルスCLをNOR或いはAND合成してサンプリングクロックパルスSCLとして出力する論理合成回路NOR/ANDとで構成し、サンプリング比較保持部を、差動入力に応じて出力信号TCOが決定され入力開放状態では開放直前の出力状態を保持するヒステリシス形比較器Compと、サンプリングクロックパルスSCLが入力された時に導通状態となって第1の移相回路PS1の出力Vo1と基準電圧VR2とをヒステリシス形比較器Compの差動入力に接続するトランスファゲートTGとで構成されている。
第1の移相回路PS1と、第2の移相回路PS2とは、リミットアンプLIMの遅延を含めて、図29に示すように、位相がπ/2ずれた波形を得るためのものであり、第2の移相回路PS2による移相(遅相)と、リミットアンプLIMの遅延とで位相をπ/2ずらすことができる場合、第1の移相回路PS1を省略できる。
図18(d)のAM変調信号用検波回路は、サンプリング比較保持部を、第1の移相回路PS1の出力Vo1と基準電圧VR2とを比較して比較結果信号を出力する比較器Compと、この比較器Compの出力をデータ入力DとしサンプリングクロックパルスSCLをクロック入力CKとし論理出力QをAM変調信号用検波回路の出力信号TCOとして出力するDタイプフリップフロップとより構成し、タイミング抽出部を、水晶振動子等を用いたタンク同調回路を含み出力CLのタイミングを安定化させる構成としている。
図18(b)〜図18(d)の各部は、それぞれ機能が独立しており、図面間で入れ換えてもよい。
前記クロックCL、或いは、前記サンプリングクロックパルスSCLを外部に取り出して、図示しない機器で受信信号からの再生クロックとして利用することもできる。
[動作]
この実施の形態における検波回路の動作を説明する波形を、図29に示す。前記従来回路、及び、第2〜10の実施の形態におけるAM変調信号受信回路のAGC回路のAM変調信号出力Voは、大振幅状態か、小振幅状態かの2状態のみをとる。(図29の1段目の波形参照)
図18(a)の基本回路では、基準電圧設定部は、AM変調信号出力Voの大振幅状態のピーク値(又はボトム値)と小振幅状態のピーク値(又はボトム値)との中間となる電圧を基準電圧値VR2として出力する。
タイミング抽出部は、AM変調信号出力Voから、立ち上がりエッジ(又は立ち下がりエッジ)が、AM変調信号出力Voのピーク値近辺(又はボトム値近辺)にタイミングを合わせた(AM変調信号出力Voから位相がπ/2ずれる)キャリア周波数のクロックパルスCLを生成する。
クロック生成部は、前記キャリア周波数クロックパルスCLから、AM変調信号出力Voのピーク値近辺(又はボトム値近辺)のタイミング時に、サンプリングクロックパルスSCLを出力する。
サンプリング比較保持部は、前記サンプリングクロックパルスSCLが”H”(又は”L”)の時、AM変調信号出力Voと、基準電圧値VR2とをサンプリング比較して比較結果を信号TCOとして出力し、前記サンプリングクロックパルスSCLが”L”(又は”H”)の時、サンプリングクロックパルスSCLの変化直前の比較結信号TCOを保持する。
以上の動作により、AM変調信号出力信号Voの大振幅状態のピーク値(又はボトム値)と小振幅状態のピーク値(又はボトム値)を、サンプリングクロックパルスSCLのタイミングで抽出し、この包絡線にあたる信号が得られ、大振幅状態か小振幅状態かの2状態のAM変調信号出力Voから、この状態に対応する2値の論理信号TCOを取り出すことができる。
整流器Rec2とコンデンサC2と抵抗R2を用いた従来の検波回路SDetでは、標準電波タイムコード(図35参照)の大振幅と小振幅の2状態のAM変調波形のキャリア周波数成分を除去すべくC2とR2の積で決まる時定数を大きくすると、大振幅状態から小振幅状態に移行する場合の包絡線に、いわゆる「ダレ」を生じ、その結果比較器Compの大振幅状態に相当する出力信号TCOの時間幅が広がってしまうことになる。(図30参照)
第11の実施の形態に於ける検波回路では、各キャリア振幅のピーク値(又はボトム値)を次々にサンプリングしていくので、比較器Compの大振幅状態に相当する出力信号TCOの時間幅に前記のような「ダレ」を生じず、正確なTCOの時間幅が得られる。
また、図18(c)や図18(d)に示すようなサンプリング比較保持部を用いれば、検波回路SDetのコンデンサC2のような容量素子を不要にでき、IC化に適している。
AM変調信号出力信号Voから位相をπ/2ずらす移相回路例を図31および図32に示す。これら移相回路や、π/2相当の時間幅をつくるモノステーブルマルチバイブレーターに容量素子が必要になるが、これらは、キャリア周波数の1/4程度の時間領域に関係する値であり、小容量ですむのでIC化できる可能性が高い。
以上説明したように、第11の実施の形態における検波回路によれば、以下の効果が得られる。
(1)大振幅と小振幅の2状態の時間幅で送信される標準電波タイムコードを受信する際に、従来の包絡線検波回路に比べて、正確な時間幅の検波出力が得られる。
(2)従来の包絡線検波回路に必要だった容量素子を不要にできる。
[第12の実施の形態]
[構成]
図19(a),(b)は、本発明の第12の実施の形態に於けるAM変調信号用検波回路の具体例を示した図である。
第12の実施の形態におけるAM変調信号用検波回路は、第11の実施の形態におけるサンプリング比較保持部を、基準電圧VR2とAGC回路の出力信号Vo(或いは前記第1の移相回路PS1の出力Vo1)とを比較し比較結果信号を出力する比較器Compと、この比較器Compの出力をデータDとし前記サンプリングクロックパルスSCLをクロックCKとする奇数nビットのシリアルインパラレルアウトのシフトレジスターSHRと、該シフトレジスターSHRのパラレル出力Q1〜Qnの”H”/”L”出力を多数決処理し”H”出力のビット数が多い場合は”H”を”H”出力のビット数が少ない場合は”L”を出力する多数決回路で構成する。
[動作]
第12の実施の形態における検波回路の動作は、多数決処理を除けば、第11の実施の形態における検波回路と同様なので説明を省略する。
サンプリングクロックパルスSCLのタイミングで前記AM変調信号出力信号Voに雑音が重畳されていると、比較器Compの出力が誤出力状態(TCO出力が、いわゆる歯抜け状態になる)となることがあるが、平均値を取ることでこの誤出力状態となることを防止、ないしは、軽減できる。
また、AM変調信号出力Voの振幅が、AGC回路内の狭帯域バンドパスフィルタBPFの影響で緩やかに増大減小をしていれば、シフトレジスターSHRのパラレル出力の”H”/”L”の多数決判定が逆転するタイミングは、立ち上がり立ち下がり共に、パラレルビット数の1/2にサンプリング速度を乗じた時間だけ正確に遅れるので、シフトレジスターSHRのビット数を増やしても、時間補正をすることにより正確なAM変調信号出力Voの変化点の時間が求められる。
図33に多数決回路例を示す。電波時計等では、前記論理出力TCOをマイコン等で取り込んで時刻情報に変換していく。マイコン等による論理出力取り込みを前提にするならば、図34に示すように、直接に前記シフトレジスターSHRの並列ビット出力(あるいはシリアルビット出力)を取り込み処理するようにしてもよい。
デジタルビットの多数決処理は、アナログ信号の平均化処理にも通じ、図18(b)の容量Cの前に、抵抗Rを接続してCRによる平均値回路(図19(b)参照)として、AM変調信号出力Voを平均化して基準電圧VR2と比較するようにしても良い。
以上説明したように、第12の実施の形態における検波回路においては、前記AM変調信号出力Voに雑音が重畳されている場合に、比較器Compの出力が誤出力状態となるのを防止、ないしは、軽減できる。
図20の回路は、第11の実施の形態あるいは第12の実施の形態に於ける検波回路に、第5の実施の形態における受信回路の考えをプラスしたものであり、AGC回路内のピーク検出回路PDetの、整流器Rec1及び放電経路用抵抗R1を不要にでき、ピークホールド容量C1もICに内蔵できる程度まで低容量化できる。
外部電源VDDより前記各回路への電源供給を、制御信号PONにより制御(動作オン状態と待機スタンバイ状態の創出、或いは、供給電源電圧の定電圧化など)できる電源回路Regの使用は、前記第2〜12の各実施の形態に適用し有効である。