JP4093016B2 - フラッシュランプ用の電極ユニットとその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光パルスによる紫外線殺菌の光源として利用されるフラッシュランプとその電極ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
紫外線殺菌の光源としては、殺菌に有効とされる波長254nmの紫外線を効率良く放射し、ランプ寿命も長い低圧水銀ランプが一般的に使用されているが、該ランプは、紫外線出力が低いため短時間で大量の被処理物を殺菌処理することができず、また、高出力を得ようとすればランプの使用本数を多くしなければならないので、その設置スペースが大きくなり、更に、被処理物の光透過率が低い場合や、菌が高濃度で存在して被処理物の表面等に重なり合って付着している場合、菌がバイオフィルムを生成してその中に潜んでいる場合、あるいは厚い皮膜で覆われた芽胞菌等のように紫外線の被照射耐性が高い菌の場合には、滅菌レベル(99.9999%以上の殺菌)の殺菌効果を得ることができないという欠点があった。
【0003】
このため、加熱殺菌に適さない食品、飲料、医薬品等やその容器、包装資材等の殺菌処理は、薬液を用いて行なうのが一般的であるが、薬液を使用すると、殺菌処理した被処理物の表面に付着残存する薬液を洗浄除去しなければならないので、被処理物を無菌水で洗浄する洗浄設備や、その無菌水を作って供給する給水設備、使用済みの薬液が含まれた排水を無害化する排水処理設備等が必要となり、それらの設備費やランニングコストが嵩むと同時に、設備の設置スペースも著しく大きくなるという問題があった。また、近時は、世界的な環境保全運動の高まりに伴って、薬液を使用しない無公害な殺菌処理技術の開発が待望されている。
【0004】
以上のような事情に鑑みて、低圧水銀ランプよりも高出力、高照度の紫外線を放射するフラッシュランプ(閃光放電灯)を用いた殺菌処理技術が種々提案されている。この技術は、例えば図4に示すようなキセノンフラッシュランプ40によって瞬間的に高照度の紫外線を照射するもので、該ランプ40は、希ガスのキセノンガスを封入したガラス製発光管41の両端に一対の電極ユニット42、43が対向して配置された構造になっている。
【0005】
発光管41は、紫外線透過率の高い石英ガラスによって円筒形に成形され、その両端に配置される各電極ユニット42、43は、夫々電極リード棒44、45の外周に溶着された封止用ガラス46、47によって、キセノンガスが封入された発光管41の端部を気密に封止すると同時に、その発光管41の端部に固定されるようになっている。
【0006】
電極ユニット42の電極リード棒44は、電極(陽極)となる先端部48をバルク状に成形加工したタングステンロッドで形成され、また、電極ユニット43の電極リード棒45は、先端に電極(陰極)となる電子放出性物質の燒結体49が固着されたタングステンロッドで形成されている。
【0007】
以上の如く構成されたキセノンフラッシュランプ40は、電極リード棒44、45の後端部に接続されたリード線(図示せず)を介してパルス電力が供給されると、発光管41内に生ずる瞬間的な放電プラズマ中でキセノンガスが励起されて、殺菌効果を奏する200〜300nmの短波長紫外線を強力に発するようになっている。
【0008】
これにより、例えば発光長250mm、発光管外径10mm(内径8mm)のキセノンフラッシュランプ40を用いた殺菌試験では、該ランプの中心から被処理物の表面までの照射距離を100mmとしたときに、その被処理物の表面に付着した微生物の滅菌処理に必要なランプ出力と照射回数は、枯草菌芽胞の場合:500Jを6回又は2000Jを1回で足り、また、黒麹カビの場合:500Jを16回又は2000Jを3回で足り、その処理時間も、僅か数秒〜数十秒で足りるという優れた殺菌効果を奏することが確認されている。
【0009】
なお、上記フラッシュランプ40と同様、光パルス殺菌に用いられる従来のフラッシュランプは、いずれもガラス製発光管の両端に一対の電極ユニットが対向して配置され、各電極ユニットは、電極リード棒の先端に電極が設けられ、その電極リード棒の外周に発光管の端部を封止する封止用ガラスが溶着された基本構造を有する点で共通しており(例えば、特許文献1参照)、電子放出性物質の燒結体を電極(陰極)とする電極ユニットも、従来品は一定の太さを有する電極リード棒の先端に電極が設けられ、その電極リード棒の外周に発光管の端部を封止する封止用ガラスが溶着された基本構造において共通している。
【0010】
【特許文献1】
特許第2723573号公報(第1−3頁、第1−3図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】

しかし、大量の被処理物を短時間で殺菌処理するために、上記フラッシュランプ40を1秒間に数回という短いインターバルで連発的に発光させると、燒結体49で成る電極ユニット43の電極が短期間で放電不能となる不具合が生じて、ランプ寿命が著しく短くなるという問題があり、これがフラッシュランプによる光パルス殺菌の実用化と普及を妨げる大きな要因の一つとなっていた。
【0012】
電極が放電不能となる原因を究明すると、主たる原因は二つあり、その一つは、フラッシュランプ40を連発的に発光させると、該ランプの点灯・消灯に伴って電極リード棒45が頻繁に熱膨張と収縮を繰り返し、その膨張収縮作用によるストレスで電極リード棒45の先端に固着された燒結体49が割れるためであると判明した。
【0013】
つまり、フラッシュランプ40は、瞬間的に大電流を流して高出力で発光させるために、電極となる燒結体49は、大型化され、また、ランプ点灯の際に先端部が1000℃以上の高温に達する電極リード棒45は、その熱膨張によってガラス製発光管41の封止部に歪みやクラックが生じないようにするため、例えば先端部の温度が1200℃に達しても、封止用ガラス47が溶着された発光管41の封止部付近における温度は150〜200℃程度となるように、全体的に太くて熱容量の大きいタングステンロッドで形成されている。しかし、電極リード棒45が太ければ、その先端部の熱膨張量が大きいので、ランプの点灯・消灯に伴う膨張収縮によって先端部に固着された燒結体49が受けるストレスも大きくなり、そのストレスで燒結体49が割れて放電不能となるおそれがある。
【0014】
また、電極が放電不能となるもう一つの原因は、燒結体49が分解して不活性化することにある。そして、燒結体49が分解する原因を究明したところ、電極ユニット43の製造過程で、電子放出性物質の粉末を電極形の圧粉塊にプレス成形して電極リード棒45の先端に取り付け、その圧粉塊を真空熱処理炉内で千数百度に加熱して燒結させ、これにより先端に燒結体49が固着生成された電極リード棒45を真空熱処理炉から取り出した際に、燒結体49が大気に触れてその表面に大気中の水分が吸着され、次いで、先端に燒結体49が固着された電極リード棒45の後端側に封止用ガラス47となるビーズ状のガラスを外嵌して、これを水素雰囲気中で加熱して電極リード棒45の外周に溶着させる際に、その熱で、燒結体49の表面に吸着された水分と水素が該燒結体49の内部に拡散するため、フラッシュランプ40の点灯動作時に燒結体49の内部から水分及び水素ガスが放出されることが原因であると判明した。
【0015】
そこで本発明は、フラッシュランプによる光パルス殺菌技術の実用化と普及を図るために、電極リード棒の先端に固着された燒結体が割れたり、分解して不活性化することを確実に防止し、フラッシュランプの寿命を飛躍的に向上させることを技術的課題としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、電極リード棒の先端に電極となる電子放出性物質の燒結体が固着され、その電極リード棒の外周にガラス製発光管の端部を気密に封止する封止用ガラスが溶着された電極ユニットにおいて、前記電極リード棒が、先細に形成され、その先端に前記燒結体が固着された細ロッドと、外周に前記封止用ガラスが溶着された太ロッドとを継手で接合させて成ることを特徴とする。
【0017】
本発明の電極ユニットを用いたフラッシュランプは、これを連発的に発光させたときに、電極となる燒結体が固着された電極リード棒の先端が1000℃以上の高温に達しても、電極リード棒は先細に形成されているため、その先端における熱膨張の絶対量は小さい。したがって、電極リード棒の先端に固着された燒結体がランプの点灯・消灯に伴う電極リード棒の膨張収縮作用によって受けるストレスも小さいので、そのストレスで燒結体が割れるおそれがない。また、先細に形成された電極リード棒は、先端側の熱容量が小さく、後端側の熱容量が大きいので、燒結体が固着された先端部分が高温に達しても、封止用ガラスが溶着された部分の温度は低く抑えられて、その部分の熱膨張量は小さいので、ガラス製発光管の封止部に熱膨張による歪みやクラックを生ずるおそれもない。
【0019】
次に、請求項の発明は、電極リード棒の先端に電極となる電子放出性物質の燒結体が固着され、その電極リード棒の外周にガラス製発光管の端部を気密に封止する封止用ガラスが溶着された電極ユニットの製造方法において、前記電極リード棒を細ロッドと太ロッドの2パーツに分かち、その細ロッドの先端に前記燒結体を固着させる加工を施し、太ロッドの外周に前記封止用ガラスを溶着させる加工を施して、当該両ロッドを継手で接合することを特徴する。
【0020】
本発明方法によれば、電極ユニットの電極リード棒が細ロッドと太ロッドを継手で接合して組み立てられるので、電極ユニットの製造過程で、細ロッドの先端に固着された燒結体が、太ロッドの外周に封止用ガラスを溶着させる水素雰囲気中で加熱されることを回避して、その燒結体の内部に水分と水素が拡散することを確実に防止できる。したがって、ランプの点灯動作時に燒結体の内部から水分や水素ガスが放出されて該燒結体が分解するおそれがない。また、電極リード棒は、燒結体を固着させる部分が熱膨張の絶対量が小さい細ロッドで成るから、ランプの点灯・消灯に伴う膨張収縮作用によって燒結体が割れるおそれが少ない。更に、封止用ガラスを溶着させる部分が細ロッドより熱容量の大きい太ロッドで成るため、細ロッドの先端が高温に達しても太ロッドの温度は低く抑えられてその熱膨張量は小さいので、該太ロッドの外周に溶着された封止用ガラスで封止されたガラス製発光管の封止部に歪みやクラックが生ずるおそれが少ない。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面によって具体的に説明する。
図1は本発明によるフラッシュランプの一例を示す断面図、図2はそのフラッシュランプに用いる電極ユニットの断面図、図3はフラッシュランプの点灯回路を示す図である。
【0022】
図1のフラッシュランプ1は、紫外線透過率の良い石英ガラスで成形されたガラス製発光管2の内部にキセノンガスが常温で約40kPa封入されると共に、その発光管2の両端に一対の電極ユニット3及び4が対向して配置されている。
【0023】
電極ユニット3は、電極(陽極)となる先端部6をバルク状に成形加工したタングステンロッドで成る電極リード棒5の外周にガラス製発光管2の片端部を気密に封止する封止用ガラス7が溶着されている。
【0024】
一方、電極ユニット4は、電極リード棒8の先端に電極(陰極)となる電子放出性物質の燒結体9が固着されると共に、その電極リード棒8の外周にガラス製発光管2の他端部を気密に封止する封止用ガラス10が溶着されている。
【0025】
そして、電極ユニット4は、図2の如く、電極リード棒8が、先端に燒結体9が固着された細ロッド11と、外周に封止用ガラス10が溶着された太ロッド12とで形成され、これら両ロッド11及び12が継手13で接合される構造になっている。
【0026】
つまり、電極ユニット4は、電極リード棒8を例えば共にタングステンロッドで成る細ロッド11と太ロッド12の2パーツに分ち、細ロッド11には予めその先端に電子放出性物質の燒結体9を固着させる加工を施し、太ロッド12には予めその外周に封止用ガラス10を溶着させる加工を施してから、それら両ロッド11及び12を継手13で接合することにより製造されている。
【0027】
なお、燒結体9は、タングステン粉末及びタングステンとアルカリ土類金属の複合酸化物の粉末を電極の形にプレス成形した圧粉塊を細ロッド11の先端に取り付け、その圧粉塊を1600℃で真空燒成させて形成されている。また、封止用ガラス10は、太ロッド12に外嵌したビーズ状のガラスを水素雰囲気中で加熱してその太ロッド12の外周に溶着させたものである。
【0028】
継手13は、例えば線径0.8mmのタングステン線によって、内径0.98mmの小径コイル部SCと内径1.68mmの大径コイル部LCとを連続的に形成した段型のタングステンコイルで成り、片側の小径コイル部SC内に外径1.0mmの細ロッド11の端部を嵌め入れると共に、反対側の大径コイル部LC内に外径1.7mmの太ロッド12の端部を嵌め入れて、両ロッド11及び12を接合させるようになっている。
【0029】
以上のように、電極ユニット4は、電極リード棒8が、先端に燒結体9が固着された細ロッド11と、外周に封止用ガラス10が溶着された太ロッド12とを継手13で接合させる構造になっているため、封止用ガラス10を溶着させる際に、その封止用ガラス10と一緒に燒結体9が水素雰囲気中で加熱されて該燒結体9の内部に水分と水素が拡散することを回避でき、これにより、フラッシュランプ1の点灯動作時に燒結体9の内部から水分や水素ガスが放出されて燒結体9が分解することを防止できるので、ランプ寿命が飛躍的に向上し、フラッシュランプ1を図3の回路を用いて点灯させる寿命試験によれば、1000万回の点灯でも焼結体9が分解することなく安定した点灯特性を示すことが確認された。
【0030】
すなわち、図3に示すフラッシュランプ1の点灯回路は、充電用コンデンサ14、充電用電源15、波形調整用コイル16及びトリガ発生回路17とで構成され、まず、充電用電源15からコンデンサ14に直流電圧が印加されて、500Jの充電エネルギーが蓄えられる(充電電圧2000V、コンデンサ容量250μF)。そして、トリガ発生回路17に点灯信号が入力されると、スイッチSが閉じてパルス状のトリガ電圧(ピーク電圧15kV、半値幅2μs)が誘起され、該トリガ電圧がフラッシュランプ1の電極間に印加されると、発光管2の内部に封入されたキセノンガスの一部が電離して種放電が生じ、コンデンサ14に蓄えられた電荷が一気に流れて、瞬間的に高強度の光パルスが発せられる。なお、電流は波形調整用コイル16で制御されるが、本寿命試験におけるピーク電流は800Aとした。
【0031】
この点灯回路によりフラッシュランプ1を1秒間に2回の頻度で点灯させて、コンベアにより30m/minの速度でランプ長手方向に連続的に搬送されるゼリー物質の包装容器(口径60mm、深さ45mm、底面径50mm)を一回の照射で枯草菌芽胞を99.9%殺菌することができる照射距離10mmで毎分480個の割合で殺菌処理すると、燒結体9で成る電極の温度が上昇して1200℃で動作するようになる。
【0032】
燒結体9は、水分または水素の介在によって分解しやすいが、本発明のフラッシュランプ1は、その焼結体9で成る電極が高温動作しても、該燒結体9がその内部からの水分や水素ガスの放出によって分解することがない。
【0033】
したがって、例えば図4に示す従来のフラッシュランプ40は、100万回の点灯で燒結体49が分解して不点灯となるものがあり、200万回の点灯では燒結体49の分解により不点灯となる確率が約5%にも達するのに対し、上記の如く構成されたフラッシュランプ1は、1000万回の点灯でも燒結体9の分解による不活性化が原因で不点灯となることはなかった。
【0034】
そして、上記の如くランプ寿命に各段の差異がある従来品のフラッシュランプ40と本発明品のフラッシュランプ1を各々1万回ずつ点灯動作(エージング)させた後、その発光管を真空チャンバ内で破壊して、マススペクトル分析装置により封入ガスの全圧中の不純ガス分圧から発光管内に混入している水分と水素ガスの量を求めた結果、表1のとおり、本発明品は、ランプ1本当たりの水分と水素の混入量が従来品に比べて桁違いに少ないことが確認された。
【0035】
【表1】
Figure 0004093016
【0036】
表1の実験データは、図1の燒結体9に吸着された水分及び水素の量が、図4の燒結体49に吸着された量より各段に少ないことを示している。これにより、電極ユニット4の構造及び製造方法に工夫を凝らして電極となる燒結体9の内部に水分や水素を拡散させないようにすれば、その燒結体9が早期に分解して不活性化することがなく、フラッシュランプの寿命が飛躍的に向上することが実証されている。
【0037】
更に、上記の如くフラッシュランプ1を連発的に発光させると、燒結体9で成る電極先端の温度が上昇して1200℃で動作するようになり、燒結体9が固着された電極リード棒8の先端部は、ランプの点灯・消灯に伴って膨張と収縮を繰り返すが、その先端部は熱膨張の絶対量が小さい細ロッド11で形成されているため、燒結体9に加わる膨張収縮のストレスは小さいので、その燒結体9がランプの点灯動作時に割れるおそれが少ない。
【0038】
また、電極リード棒8は、外周に封止用ガラス10を溶着した部分が、先端に燒結体を固着した細ロッド11より熱容量の大きい太ロッド12で形成されているため、細ロッド11の先端が高温に達しても太ロッド12の温度は低く抑えられて、該太ロッド12の熱膨張量は小さいので、封止用ガラス10で封止されたガラス製発光管2の端部に歪みやクラックを生ずるおそれが少ない。特に、細ロッド11と太ロッド12をタングステンコイルで成る継手13によって接合すれば、該継手13の放熱作用で太ロッド12の温度をより低く抑えることができるため、該太ロッド12の熱膨張量が更に低減されて、ガラス製発光管2の封止部に歪みやクラックを生ずることが確実に防止される。
【0039】
なお、実験によれば、図4に示す従来のフラッシュランプ40は、燒結体49を外径5mm、全長6mmとし、電極リード棒45を外径1.7mmとして、これを図3の点灯回路によりランプ出力500J、ピーク電流800Aの条件で100万回点灯させると、電極リード棒45の外周に溶着された封止用ガラス47により封止されたガラス製発光管41の端部にクラック等は生じないものの、電極リード棒45の先端に固着された燒結体49に約50%の確率で割れが生じた。
【0040】
これに対し、図1に示すように電極リード棒8が継手13で接合した細ロッド11と太ロッド12とで成るフラッシュランプ1は、上記と同じ通電条件で100万回点灯させても、表2に示す如く、細ロッド11の外径が1.0mm以下であれば、ランプ10本中1本も燒結体9に割れを生ずることがなく、また、表3に示す如く、太ロッド12の外径が1.7mm以上であれば、該太ロッド12の外周に溶着された封止用ガラス10で封止されたガラス製発光管2の封止部にクラックを生ずるものが1本もなかった。
【0041】
【表2】
Figure 0004093016
【0042】
【表3】
Figure 0004093016
【0043】
なお、表2の実験データは、外径0.5〜2.0mmの細ロッドをいずれも外径2.0mmの太ロッドと接合させたときのものであり、また、表3の実験データは、外径1.2〜5.0の太ロッドをいずれも外径1.0mmの細ロッドと接合させたときのものである。
【0044】
上記実験データに基づき、細ロッド11の外径を1.0mm以下に選定し、太ロッド12の外径を1.7mm以上に選定したフラッシュランプ1を図3の点灯回路を用いて1秒間に2回の頻度で点灯させる寿命試験を実施したところ、1000万回の点灯でも安定した点灯特性を示すことが確認された。
【0045】
以上のとおり、電極ユニット4の電極リード棒8が、先端に燒結体9が固着された細ロッド11と、外周に封止用ガラス10が溶着された太ロッド12とを継手13で接合して成る場合は、フラッシュランプ1の点灯動作時に燒結体9が割れることを防止できると同時に、電極ユニット4の製造過程で燒結体9の内部に水分や水素を拡散させないようにして、その焼結体9がランプの点灯動作時に分解することも防止できるので、フラッシュランプ1の寿命と信頼性が飛躍的に向上する。
【0046】
なお、電極リード棒8は、細ロッド11と太ロッド12がタングステンコイルで成る継手13によって接合されているが、この継手13は、タングステン以外の導電性耐熱材料で成形された例えばモリブデンコイル等を用いても良い。また、継手は、細ロッド11と太ロッド12とを互いに接合させることができる機構になっていれば良く、コイルに限らずスリーブあるいはネジその他の手段を用いるものであっても良い。
【0047】
また、電極リード棒8の膨張収縮による燒結体9の割れと、発光管封止部のクラックの発生を防止するだけなら、細ロッド11と太ロッド12を溶接手段により接合して先細の電極リード棒とする場合や、電極リード棒8を1本のタングステンロッドで形成して、該ロッドの先端に切削加工を施すことにより先細の電極リード棒とする場合でも良い。ただし、前者の場合は、熱容量の異なる細ロッド11と太ロッド12の溶接部が馴染まないために、製品不良率が高くなり、ランプの点灯動作時に燒結体9が細ロッド11と共に落下するおそれがあると同時に、溶接の際に、燒結体9が大気中で熱的作用を受けて変質するおそれもある。また、後者の場合は、高硬度のタングステンロッドを切削する高価な加工装置が必要となるばかりか、封止用ガラス10を溶着させる際に、燒結体9が水素雰囲気中で熱的作用を受けることを避けられないという不利があるので、細ロッド11と太ロッド12を継手13で接合して先細の電極リード棒8を形成するのが最も好ましい。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、光パルス殺菌に用いる高出力のフラッシュランプを短いインターバルで連続的に点灯させても、電極となる電子放出性物質の燒結体が短期間で割れたり、分解して不活性化するおそれがなくなり、そのランプ寿命が飛躍的に向上するので、光パルス殺菌技術の実用化と普及に資することができるという大変優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるフラッシュランプの一例を示す断面図
【図2】本発明による電極ユニットの一例を示す断面図
【図3】本発明によるフラッシュランプの点灯回路を示す図
【図4】従来のフラッシュランプとその電極ユニットを示す断面図
【符号の説明】
1……………フラッシュランプ 10……………封止用ガラス
2……………ガラス製発光管 11……………細ロッド
4……………電極ユニット 12……………太ロッド
8……………電極リード棒 13……………継手
9……………電子放出性物質の燒結体

Claims (4)

  1. 電極リード棒の先端に電極となる電子放出性物質の燒結体が固着され、その電極リード棒の外周にガラス製発光管の端部を気密に封止する封止用ガラスが溶着された電極ユニットにおいて、前記電極リード棒(8)が、先細に形成され、その先端に前記燒結体(9)が固着された細ロッド(11)と、外周に前記封止用ガラス(10)が溶着された太ロッド(12)とを継手(13)で接合させて成ることを特徴とする電極ユニット。
  2. 前記細ロッド(11)が外径1.0mm以下のタングステンロッドで成り、前記太ロッド(12)が外径1.7mm以上のタングステンロッドで成る請求項記載の電極ユニット。
  3. 前記継手(13)が、片側の小径コイル部(SC)に前記細ロッド(11)の端部を嵌め入れ、反対側の大径コイル部(LC)に前記太ロッド(12)の端部を嵌め入れて、両ロッド(11、12)を接合させる段型のタングステンコイルで成る請求項1又は2記載の電極ユニット。
  4. 電極リード棒の先端に電極となる電子放出性物質の燒結体が固着され、その電極リード棒の外周にガラス製発光管の端部を気密に封止する封止用ガラスが溶着された電極ユニットの製造方法において、前記電極リード棒(8)を細ロッド(11)と太ロッド(12)の2パーツに分かち、その細ロッド(11)の先端に前記燒結体(9)を固着させる加工を施し、太ロッド(12)の外周に前記封止用ガラス(10)を溶着させる加工を施して、当該両ロッド(11、12)を継手(13)で接合することを特徴する電極ユニットの製造方法。
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